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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024113373
(43)【公開日】2024-08-22
(54)【発明の名称】一体成形方法、及び一体成形装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 39/44 20060101AFI20240815BHJP
   B29C 70/48 20060101ALI20240815BHJP
   B29C 39/10 20060101ALI20240815BHJP
   B29C 70/10 20060101ALI20240815BHJP
【FI】
B29C39/44
B29C70/48
B29C39/10
B29C70/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023018306
(22)【出願日】2023-02-09
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】松延 竜佑
【テーマコード(参考)】
4F204
4F205
【Fターム(参考)】
4F204AA36
4F204AC05
4F204AD16
4F204AG28
4F204AR20
4F204EA03
4F204EB01
4F204EB11
4F204EF05
4F204EK13
4F204EK17
4F205AA36
4F205AC05
4F205AD16
4F205AG28
4F205AR20
4F205HA06
4F205HA12
4F205HA27
4F205HA33
4F205HA37
4F205HB01
4F205HB11
4F205HF05
4F205HK05
(57)【要約】
【課題】剛性をより向上させた樹脂構造体の一体成形方法、及び樹脂構造体の一体成形装置を提供する。
【解決手段】樹脂製の本体部2と、本体部2の表面に沿って延設された、強化繊維40が不連続繊維42であるリブ3と、を有する樹脂構造体1の一体成形方法であって、樹脂製の第1材料31を金型11にセットする第1工程と、金型11の成形面12aに形成されたリブ3を成形する溝13に、不連続繊維42と樹脂R2とを含む第2材料32を注入する第2工程と、を備える。第2工程では、第2材料32を溝13の延在方向に沿って流れるように注入する。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂製の本体部と、前記本体部の表面に沿って延設された、強化繊維が不連続繊維であるリブと、を有する樹脂構造体の一体成形方法であって、
樹脂製の第1材料を金型にセットする第1工程と、
前記金型の成形面に形成された前記リブを成形する溝に、前記不連続繊維と樹脂とを含む第2材料を注入する第2工程と、
を備え、
前記第2工程では、前記第2材料を前記溝の延在方向に沿って流れるように注入する、一体成形方法。
【請求項2】
前記第2材料が含有する前記樹脂は熱硬化性樹脂である、請求項1に記載の一体成形方法。
【請求項3】
前記第2工程では、前記第2材料が前記溝の延在方向一側端部から注入される、請求項1に記載の一体成形方法。
【請求項4】
前記第1材料は連続繊維を含み、
前記第1材料のうち、前記リブを成形する前記溝上に配設された、前記第2材料が流れる方向における上流側の端部は、前記金型に固定されている、請求項1に記載の一体成形方法。
【請求項5】
前記第2工程では、前記第2材料は前記溝の内部に連通する注入口から注入され、
前記注入口は、前記溝のうち前記リブの先端部を成形する部分に隣接して配設されている、請求項1に記載の一体成形方法。
【請求項6】
前記第2工程では、前記第2材料は当該第2材料が固形の状態で収容される収容部に収容され、当該収容部に収容された前記第2材料を加熱する加熱部で加熱された前記第2材料が、前記溝に注入される、請求項2に記載の一体成形方法。
【請求項7】
樹脂製の本体部と、前記本体部の表面に沿って延設された、強化繊維が不連続繊維であるリブと、を有する樹脂構造体の一体成形装置であって、
樹脂製の第1材料がセットされる金型と、
前記不連続繊維と樹脂とを含む第2材料が延在方向に沿って流れるように注入される、前記金型の成形面に形成された前記リブを成形する溝と、
を備える、一体成形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一体成形方法、及び一体成形装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1が開示するサンドイッチ構造体は、スキン層と、コア層とから構成される。スキン層は、金属層、連続繊維とマトリックス樹脂とからなる繊維強化樹脂層、または不連続繊維と熱硬化性マトリックス樹脂とからなる繊維強化樹脂層のいずれか少なくとも1層を用いる。コア層は、不連続繊維とマトリックス樹脂とからなる流動コア層を含む。スキン層はコア層よりも曲げ弾性率が高い材料からなるとともに、スキン層の少なくとも一部の領域に貫通部が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】WO2017/115640号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、本体部と、本体部の表面に沿って延設されたリブとを備えた樹脂構造体を、強化繊維を含んだ樹脂を一体成形することにより形成する際に、リブの高さ方向と略平行な方向に強化繊維が配向される場合が有る。そのような場合には、例えばリブの高さ方向と平行な方向に入力された荷重に対する、当該樹脂構造体の剛性が不十分となるおそれが有った。
【0005】
本発明の目的は、剛性をより向上させた樹脂構造体の一体成形方法、及び一体成形装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る一体成形方法は、本体部と、リブと、を有する樹脂構造体の一体成形方法であって、第1材料を金型にセットする第1工程と、前記金型の溝に第2材料を注入する第2工程と、を備え、前記第2工程では、前記第2材料を前記溝の延在方向に沿って流れるように注入する。
【0007】
本発明の一態様に係る一体成形装置は、本体部と、リブと、を有する樹脂構造体の一体成形装置であって、第1材料がセットされる金型と、第2材料が延在方向に沿って流れるように注入される、前記金型の溝と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、剛性をより向上させた樹脂構造体の一体成形方法、及び一体成形装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態に係る一体成形方法、又は一体成形装置を用いて形成された樹脂構造体の斜視図である。
図2】実施形態に係る一体成形方法、又は一体成形装置を用いて形成された樹脂構造体の断面を示す図であって、図1のII-II線に沿った断面図である。
図3】実施形態に係る一体成形装置の下型と、溝と、注入口と、収容部と、押圧部と、の位置的関係を示す概略平面図である。
図4】実施形態に係る一体成形装置の上型と、下型と、溝と、注入口と、収容部と、押圧部と、の位置的関係を示す図であって、図3のIV-IV線に沿った概略断面図である。
図5】実施形態に係る一体成形装置の上型と、下型と、溝と、注入口と、の位置的関係を示す図であって、図4のV-V線に沿った概略断面図である。
図6】実施形態に係る一体成形方法について説明するための説明図であって、金型に連続繊維が配設され、収容部に第2材料が収容された状態を示す、図4に相当する概略断面図である。
図7】実施形態に係る一体成形方法について説明するための説明図であって、収容部に収容された第2材料を溝に注入する際の、一体成形装置の動作例を示す、図4に相当する概略断面図である。
図8】実施形態に係る一体成形方法について説明するための説明図であって、溝に第2材料が注入された状態を示す、図4に相当する概略断面図である。
図9】実施形態に係る一体成形方法について説明するための説明図であって、一体成形された樹脂構造体が取り出された一体成形装置を示す図4に相当する概略断面図と、金型から取り出された樹脂構造体を示す図2に相当する概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、実施形態に係る一体成形方法、及び一体成形装置について説明する。なお、以下の説明では同一の機能を有する要素については同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0011】
実施形態に係る一体成形方法、及び一体成形装置は、図1及び図2に例示される樹脂構造体1を形成する際に適用することができる。樹脂構造体1は樹脂を成形することにより形成された部材である。図に例示された樹脂構造体1は本体部2と、リブ3と、を備える。また、樹脂構造体1は、本体部2とリブ3とを一体成形することにより形成されている。なお、樹脂構造体1の形状は図示された例に限定されず、例えば樹脂構造体1の用途に応じて適宜設定されてもよい。
【0012】
なお、図に示されたZ軸方向は本体部2の厚さ方向と平行な方向である。X軸方向はリブ3が延在する方向であって、Y軸及びZ軸の各々と直交する。Y軸方向はX軸及びZ軸の各々と直交する方向である。また、図示された例では、Z軸正方向が上方に相当し、Z軸負方向が下方に相当する。
【0013】
本体部2は樹脂構造体1の本体を構成する部分であって、図示された例ではXY面上に延在する板状の形状を有する。平面視において、本体部2は略矩形の形状を備えてもよい。なお、本体部2の形状は図示された例に限定されず、樹脂構造体1の形状、用途等に応じて適宜設定されてもよい。樹脂構造体1では、本体部2には所定の方向からの荷重が入力される場合が有る。例えば、下方を向いた荷重が本体部2の上面2aに入力される場合が有る。上面2aは本体部2の上方側を構成する面である。また、下面2bにはリブ3が形成されている。下面2bは本体部2の下方側を構成する面である。
【0014】
リブ3は樹脂構造体1において、本体部2の表面に沿うように延設された部分である。図に例示されたリブ3は下面2bに沿うように延設されており、X軸方向に延在する。また、リブ3は下面2bから下方に向けて延出するように形成されている。そのため、リブ3の下方側の端部が先端部3aを形成してもよい。
【0015】
なお、リブ3の延出方向が高さ方向に相当する。リブ3は、その幅方向において所定の寸法を有し、延在方向に垂直な断面において略矩形の形状を備えてもよい。なお、当該幅方向は、リブ3の延在方向及び高さ方向に垂直な方向である。図に例示されたリブ3の延在方向における寸法は、幅方向における寸法よりも長い。即ち、リブ3の延在方向が長手方向に相当する。また、図示された例では、Z軸方向が当該高さ方向に相当し、Y軸方向が当該幅方向に相当する。
【0016】
リブ3を備えることにより、樹脂構造体1の剛性がより向上される。即ち、リブ3によって本体部2が補強される。なお、リブ3の形状は図示された例に限定されない。リブ3の形状は、樹脂構造体1の用途、形状等に応じて適宜設定されてもよい。例えば、リブ3は平面視において湾曲しながら延在してもよい。即ち、リブ3は本体部2の表面に沿うように湾曲しながら延在してもよい。また、図示された例では本体部2には3つのリブ3が形成されているが、これに限定されない。本体部2に形成されるリブ3の数は、樹脂構造体1の形状に応じて適宜設定されてもよい。
【0017】
本体部2は後述する樹脂製の第1材料31(図8参照)を成形することにより形成されている。本体部2は強化繊維40を含んでもよい。また、リブ3は強化繊維40を含む後述する第2材料32(図8参照)を成形することにより形成されている。強化繊維40の材質は特に限定されず、公知の繊維を用いることができる。例えば強化繊維40は炭素繊維、アラミド繊維、又はガラス繊維であってもよい。本体部2が有する強化繊維40として炭素繊維を用いることにより、本体部2の剛性をより向上させることができる。また、リブ3が有する強化繊維40として炭素繊維を用いることにより、リブ3の剛性をより向上させることができる。なお、強化繊維40の繊維径は特に限定されない。
【0018】
図2に例示された本体部2が有する強化繊維40は連続繊維41であってもよい。これにより、本体部2の剛性をより向上させることができる。連続繊維41は本体部2のX軸負方向側の端部から、X軸正方向側の端部にかけて、X軸方向と略平行な方向に連続的に延在している。即ち、連続繊維41はX軸方向と略平行に配向されてもよい。なお、連続繊維41の延在方向は図示された例に限定されない。例えば、連続繊維41はXY平面において湾曲するように延在してもよい。また、連続繊維41は本体部2におけるZ軸方向の位置が滑らかかつ連続的に変化するように延在してもよい。即ち、連続繊維41はZ軸方向に湾曲するように延在してもよい。
【0019】
また、図に例示されたリブ3が有する強化繊維40は、リブ3の長手方向と略平行に延在している。即ち、強化繊維40はリブ3の長手方向と略平行に配向されている。また、リブ3が有する強化繊維40の繊維長は、長手方向におけるリブ3の長さよりも短い。即ち、リブ3が有する強化繊維40は不連続繊維42である。このような不連続繊維42を含むことにより、高さ方向に入力された荷重に対する、リブ3の剛性を向上させることができる。そのため、例えば下方に向いた荷重に対する樹脂構造体1の剛性をより向上させることができる。不連続繊維42の繊維長は特に限定されず、例えばリブ3の長手方向の寸法に応じて適宜設定されてもよい。なお、不連続繊維42の延在方向は図示された例に限定されない。例えば、不連続繊維42はXY平面において湾曲するように延在してもよい。また、不連続繊維42はリブ3の高さ方向における位置が滑らかかつ連続的に変化するように延在してもよい。即ち、不連続繊維42はZ軸方向に湾曲するように延在してもよい。
【0020】
なお、不連続繊維42は、その配向方向と、リブ3の延在方向とのなす角が45°以下となるように配向されてもよい。即ち、不連続繊維42の配向方向と、リブ3の長手方向とが形成する角度のうち、小さい方の角度が45°以下となるように、不連続繊維42が配設されてもよい。これにより、高さ方向に入力された荷重に対するリブ3の強度を向上させることができる。また、当該角度は20°以下であってもよい。これにより、高さ方向に入力された荷重に対するリブ3の強度をより確実に向上させることができる。
【0021】
なお、「配向方向」とは不連続繊維42が配向している方向である。ここで、繊維配向パラメータfpに基づく不連続繊維42の配向方向の定義について説明する。繊維配向パラメータfpは、次の方法で求めることができる。まず、リブ3から、評価対象となる不連続繊維42を含む、面方向に平行な面を切り出す。そして、この面を光学顕微鏡等で観察し、所定の測定領域で視認し得るすべての不連続繊維42(繊維数:N本)の基準線に対する角度θiを測定する。ここで、角度θiは、基準線から反時計回りを正とし、-90°より大きく90°以下の角度とする。
【0022】
次に、得られた角度θiを、次式(1)に代入する。
fp=2×Σ(cosθi/N)-1 ・・・式(1)
ただし、i=1~N
【0023】
基準線の方向は、評価対象となっている所定の測定領域内の不連続繊維42に対して、その繊維配向パラメータfpに最大値を与えるように選択される。選択された方向は、当該評価対象となっている不連続繊維42の配向方向として定義される。
【0024】
次に、図3図5を参照しながら、実施形態に係る一体成形装置10について説明する。一体成形装置10を用いることにより、樹脂構造体1を形成することができる。
【0025】
なお、説明のため、図3における紙面左右方向を一体成形装置10の前後方向とし、紙面上下方向を一体成形装置10の幅方向とし、紙面に垂直な方向を一体成形装置10の上下方向とする。一体成形装置10の前後方向を単に「装置前後方向」と称し、幅方向を単に「装置幅方向」と称し、一体成形装置10の上下方向を単に「装置上下方向」と称する。また、各図中のFR,RRは、装置前後方向における前方、後方のそれぞれを示す。LH,RHは、装置幅方向における左方、右方のそれぞれを示す。UP,DNは、装置上下方向における上方、下方のそれぞれを示す。以下の説明では、装置前後方向前方、後方、装置幅方向左方、右方、装置上下方向上方、下方を、それぞれ単に「装置前方」「装置後方」「装置左方」「装置右方」「上方」「下方」と称する。なお、図3では上型15の表示を省略した。
【0026】
一体成形装置10は、金型11を備える。金型11は、樹脂構造体1を一体成形するための型である。金型11には、樹脂製の第1材料31がセットされる。金型11にセットされる際、第1材料31を構成する樹脂R1は固化した状態であっても、溶融した状態であってもよい。また、第1材料は連続繊維41を含んでもよい。金型11の後述する溝13には第2材料32が注入される。第2材料32は少なくとも不連続繊維42と後述する樹脂R2とを含有する。金型11内に配設された第1材料31と第2材料32とを一体成形することにより、樹脂構造体1が成形される。
【0027】
図4及び図5に例示されるように、金型11は下型12と、上型15と、を備えてもよい。下型12は金型11の下方側を構成する金型である。上型15は金型11の上方側を構成する金型である。なお、金型11の構成は図示された例に限定されない。例えば、金型11は下型12及び上型15の他、樹脂構造体1の所定部分を成形するための他の型を備えてもよい。また、例えば形成しようとする樹脂構造体1の形状に応じて、金型11の形状を適宜設定してもよい。
【0028】
図示された例では、下型12は上方に向けて開口し、全体として有底箱形の形状を有する。下型12内の壁面の少なくとも一部は成形面12aを構成している。成形面12aは金型11内に充填された材料を所定の形状に成形する面であり、図示された例では、空間S1及び空間S2を画成している。
【0029】
空間S1は第1材料31を配設可能な領域である。図に例示された空間S1は下型12の内部における上方側の空間を構成し、装置前後方向に延在してもよい。空間S1は装置前後方向に垂直な断面において略矩形の形状を有してもよい。空間S1の形状は本体部2を成形可能な形状に形成されている。一体成形装置10で樹脂構造体1が成形された際には、空間S1において本体部2が形成される。
【0030】
空間S2は第2材料32を配設可能な領域である。図に例示された空間S2は下型12の内部における下方側の空間を構成する。空間S2は装置前後方向に垂直な断面において略矩形の形状を有し、装置前後方向に延在してもよい。空間S2の形状はリブ3を成形可能な形状に形成されている。一体成形装置10で樹脂構造体1が成形された際には、空間S2においてリブ3が形成される。空間S2の少なくとも一部は溝13の壁面によって画成されている。
【0031】
溝13は金型11のうちリブ3を成形する部分であり、成形面12aに形成されている。図示された例では、溝13は成形面12aのうち、本体部2の下面2bを成形する成形面12bの一部を、下方に向けて凹ませることにより形成されている。そのため、溝13は壁面13b、壁面13c、及び底面13dを備える。壁面13bは空間S2の装置左方側を画成する。壁面13cは空間S2の装置右方側を画成する。底面13dは空間S2の下方側を画成する。また、溝13は上方に向けて開口しており、空間S2の上方側は空間S1の下方側に連通している。なお、図示された例では3つの溝13が形成されているが、これに限定されない。溝13の数は例えば成形しようとする樹脂構造体1の形状に応じて適宜設定されてもよい。
【0032】
空間S2に第2材料32を配設する際には、溝13の延在方向に沿って流れるように第2材料32が注入される。図に例示された一体成形装置10では、樹脂構造体1を成形した際に、装置前後方向に延在するようにリブ3が成形される。そのため、溝13は装置前後方向に延在している。
【0033】
図に例示された下型12には注入口14が形成されている。注入口14は溝13の内部に連通する開口であり、図示された例では、装置前後方向に延在する。注入口14は後述する壁部23の所定領域を装置前後方向に貫通するように開口させることによって形成されてもよい。注入口14の装置後方側は後述する収容部21と連通する。第2材料32を下型12に配設する際には、注入口14から溝13の内部に向けて第2材料32が注入される。
【0034】
図示された例のように、注入口14は溝13の延在方向である装置前後方向における、装置後方側の端部13aに形成されてもよい。もっとも、注入口14の位置は図示された例に限定されない。例えば収容部21の位置に応じて、溝13の装置前方側の端部に注入口14が形成されてもよい。注入口14は、溝13のうちリブ3の先端部3a(図1参照)を成形する部分に直接隣接して配設されてもよい。図示された例では、溝13の壁面13b,13cの下方側の部分、及び底面13dが先端部3aを成形する。そのため、注入口14は溝13の内部における下方側の領域に連通するように配設されている。
【0035】
上型15は、上方から下型12に組み合わせることにより、下型12の上方側の開口を閉塞する部材である。下型12と上型15とを組み合わせることにより、下型12内部の空間S1,S2が密閉される。上型15は所定の厚さと共に装置前後方向に延在する板状の形状を有してもよい。また、図示された例では、上型15の下面15aのうち、装置前方側の所定領域が成形面12aの一部を構成する。より詳細には、下型12と上型15とが組み合わされた状態において、下面15aの少なくとも一部の領域が空間S1の上方側を画成する。そのため、一体成形装置10で樹脂構造体1を成形する際には、下面15aが本体部2の上面2aを成形する。
【0036】
上型15は固定部16aを備えてもよい。固定部16aは空間S1に配設された第1材料31の少なくとも一部を金型11に直接的に又は間接的に固定する。図に例示された固定部16aは上型15の下面15aから下方に向けて延出しており、装置幅方向に所定の範囲で延在している。また、下型12と上型15とが組み合わされた状態において、固定部16aは空間S1における装置後方側に配設され、空間S1に配設された第1材料31の装置後方側を、金型11に固定する。図示された例では、空間S1における装置後方側は、溝13に第2材料32を注入する際に第2材料32が流れる方向における上流側に相当する。即ち、固定部16aは、第1材料31のうち第2材料32が流れる方向における上流側の部分を金型11に固定してもよい。当該上流側の部分は、第1材料31の端部であってもよい。
【0037】
上型15は固定部16bを備えてもよい。固定部16bは空間S1に配設された第1材料31の少なくとも一部を金型11に直接的に又は間接的に固定する。図に例示された固定部16bは上型15の下面15aから下方に向けて延出しており、装置幅方向に所定の範囲で延在している。また、下型12と上型15とが組み合わされた状態において、固定部16bは空間S1における装置前方側に配設され、空間S1に配設された第1材料31の装置前方側を金型11に固定する。図示された例では、空間S1における装置前方側は、溝13に第2材料32を注入する際に第2材料32が流れる方向における下流側に相当する。即ち、固定部16bは、第1材料31のうち第2材料32が流れる方向における下流側の部分を金型11に固定してもよい。当該上流側の部分は、第1材料31の端部であってもよい。
【0038】
なお、固定部16a,16bの形状は特に限定されない。例えば、固定部16a,16bは装置幅方向に延在する、断面矩形の長尺部材であってもよい。なお、固定部16a,16bの第1材料31と接触する部分には、所定の凹凸が形成されてもよい。これにより、第1材料31をより確実に金型11に固定することができる。また、一体成形装置10は例えば固定部16aのみを備えてもよく、固定部16a,16bの他、更に固定部を備えてもよい。また、第1材料31を金型11に固定する方法は固定部16a,16bを用いた方法に限定されない。例えば、下型12の成形面12aに形成された、第1材料31の移動を規制する規制部によって、第1材料31が金型11に固定されてもよい。その場合には一体成形装置10は固定部16a,16bを備えなくてもよい。
【0039】
なお、固定部16a、固定部16bは、下面15aから下方に向けて突出する凸部であってもよい。例えば、当該凸部は下面15aから下方に向けて突出するピンであってもよい。当該凸部は、下型12と上型15とが組み合わされた状態において、平面視で溝13と重なるように形成されてもよい。また、当該凸部は、下型12と上型15とが組み合わされた状態において、平面視で成形面12bとは重ならないように形成されてもよい。即ち、当該凸部は、第1材料31のうちリブ3を成形する溝13上に配設された部分を金型11に固定してもよい。なお、当該凸部を複数、互いに所定の距離を隔てるように装置幅方向に並列配置することで、固定部16aを構成してもよい。固定部16aを構成する当該凸部の数は特に限定されず、例えば、下型12に形成された溝13の数に応じて、当該凸部の数を設定してもよい。
【0040】
上型15には開口部17が形成されてもよい。図に例示された開口部17は上型15の所定領域を上下方向に貫通するように開口することにより形成されてもよい。下型12と上型15とが組み合わされた状態において、空間S1と金型11の外部とは開口部17を介して連通する。これにより、開口部17を介して金型11の内部に、例えば後述する樹脂R1を注入することができる。
【0041】
一体成形装置10は収容部21と、押圧部22と、を有してもよい。
【0042】
収容部21は第2材料32を収容可能な空間であり、図示された例では、空間S2よりも装置後方に配設されている。第2材料32は収容部21に固形の状態で収容されてもよい。空間S2と収容部21とは壁部23によって仕切られている。また、空間S2と収容部21とは注入口14を介して連通する。
【0043】
押圧部22は収容部21に収容された第2材料32を所定の方向から押圧することができる。図示された例では、押圧部22としてのシリンダーが、収容部21に直接隣接するように配置されている。また、シリンダーは、収容部21の装置後方において装置前後方向に移動可能に配設されてもよい。これにより、収容部21に収容された第2材料32をシリンダーで押圧し、第2材料32を注入口14から溝13に注入することができる。なお、図示された例では、シリンダーが第2材料32を押圧する際の方向である押圧方向は装置前方に相当する。
【0044】
押圧部22は、突出部24を備えてもよい。突出部24はシリンダーのうち第2材料32を押圧する押圧面から、注入口14に向けて突出するように形成されている(図3及び図4参照)。突出部24の形状は図示された例に限定されず、例えば、注入口14に嵌合可能な形状に設定されてもよい。即ち、突出部24は押圧部22に形成された、注入口14に嵌合可能な部分であってもよい。これにより、収容部21に収容された第2材料32をシリンダーで押圧し、第2材料32を注入口14から溝13に注入した際に、注入口14に突出部24が嵌合する。即ち、注入口14の開口を閉塞するように、注入口14の内部空間に突出部24が配設される。これにより、注入口14の内部空間に第2材料32が残存することを抑制することができる。そのため、例えば後述する第3工程において第2材料32の加熱加圧成形を行った際に、注入口14の内部空間において第2材料32が固化することを抑制でき、金型11から樹脂構造体1をより容易に取り出すことができる。なお、図3に示された例ではシリンダーには3つの突出部24が形成されているが、これに限定されない。例えば、注入口14の数に応じて突出部24の数を設定してもよい。
【0045】
突出部24は、シリンダーが第2材料32の溝13への注入が完了した状態において、壁部23からシリンダーの押圧方向に突出してもよい。図8に例示された後述する第2工程では、シリンダーの押圧面が装置前方に向けて変位することにより、収容部21に配設された第2材料32を溝13に注入する。そして、第2材料32の溝13への注入が完了した状態において、シリンダーの押圧面と、壁部23とが略当接している。このとき、突出部24は壁部23から押圧方向である装置前方に向けて突出してもよい。即ち、第2工程において第2材料32の溝13への注入した際に、突出部24は壁部23よりも溝13の内部に向けて突出してもよい。これにより、第3工程において第2材料32の加熱加圧成形を行った際に、注入口14の内部空間において第2材料が固化することをより確実に抑制でき、金型11から樹脂構造体1をより容易に取り出すことができる。なお、第2材料32の溝13への注入が完了した状態における当該押圧面の位置は図示された例に限定されない。例えば、第2材料32の溝13への注入が完了した状態において、シリンダーの押圧面と壁部23との間には隙間が形成されていてもよい。当該押圧面の位置はシリンダーの可動範囲により定まる。そのため、例えばシリンダーが押圧方向に最も変位した状態において、突出部24は壁部23よりも溝13の内部に向けて突出してもよい。
【0046】
また、一体成形装置10は加熱部20を備えてもよい。加熱部20は収容部21に収容された第2材料32を加熱可能な部分であり、例えばヒーターであってもよい。加熱部20の構造、及び位置は特に限定されず、例えば公知のヒーターを、第2材料32を加熱可能な任意の位置に取付けてもよい。
【0047】
なお、図示された例では、加熱部20、収容部21、及び押圧部22は一体成形装置10の装置後方側において、下型12と一体となるように配設されているが、これに限定されない。例えば、加熱部20、収容部21、及び押圧部22を備えた装置を、下型12と分離して別個に設けてもよい。その場合には、例えば当該装置と下型12とを配管で接続し、配管内の流路を介して収容部21と空間S2とを連通させてもよい。
【0048】
次に、図6図8を参照しながら、実施形態に係る一体成形方法の一例について説明する。当該一体成形方法は、第1工程と、第2工程と、を備える。第1工程は第1材料31を金型11にセットする工程である。第2工程は溝13に第2材料32を注入する工程である。なお、第1工程及び第2工程の実施の順序は特に限定されない。例えば、第1工程が実施された後に第2工程が実施されてもよく、第2工程が実施された後に第1工程が実施されてもよい。また、当該一体成形方法は第3工程を備えてもよい。第3工程は第1材料31と第2材料32との一体成形を行う工程である。
【0049】
第1工程では、成形面12bに樹脂製の第1材料31がセットされる。これにより、下型12の空間S1に第1材料31が配設される。第1材料31は連続繊維41を含んだ材料であってもよい。
【0050】
第1工程で金型11にセットされる第1材料31は、例えば固化した樹脂R1により構成されたシート材や、連続繊維41を有するプリプレグであってもよい。プリプレグは、連続繊維41にマトリックス樹脂としての樹脂R1を含侵させて成形することにより形成されてもよい。また、第1材料31は当該シート材又はプリプレグを積層することにより構成されてもよい。
【0051】
図6及び図7に示された例では、ドライファブリックである連続繊維41が空間S1に配設されている。このような場合には、第1材料31は後述する注入工程で注入される溶融状態の樹脂R1により構成されてもよい。即ち、注入工程が第1工程に相当してもよい。また、注入工程は予め第2工程が行われた後に行われてもよい。なお、注入工程において注入された溶融状態の樹脂R1は連続繊維41に含侵される。このように、第1材料31は連続繊維41を含んでもよい。
【0052】
連続繊維41は、強化繊維束を一方向に配向させて積層し、又は互いに角度を変えて積層してステッチ糸で結束することにより構成されてもよい。また、連続繊維41はステッチ糸を用いずに強化繊維束同士を熱融着させて保形することにより構成されてもよい。また、連続繊維41は強化繊維の織物から構成されてもよい。このような連続繊維41はドライファブリックとも称される。
【0053】
次に、下型12と上型15とを組み合わせて金型11内部の空間S1,S2を密閉する。図示された例では、上型15を矢印Aに示すように下方に移動させる。これにより、図7に例示するように下型12の上方側の開口が閉塞される。その際、金型11に第1材料31がセットされている場合には、固定部16aが第1材料31の装置後方側を、空間S1において金型11に固定してもよい。このとき、第1材料31のうち、溝13上に配設された部分が、金型11の内部において固定されてもよい。また、第1材料31のうち第2材料32が流れる方向における上流側の端部が、金型11の内部において固定されてもよい。ここで、金型11内部に固定される第1材料31は、第1工程で金型11にセットされた樹脂製のシート材や、プリプレグであってもよい。
【0054】
また、図6及び図7に例示されるように、空間S1に連続繊維41が配設された場合には、固定部16aが連続繊維41の装置後方側を、空間S1において金型11に固定してもよい。このとき、連続繊維41のうち、溝13上に配設された部分が、金型11の内部において固定されてもよい。また、連続繊維41のうち第2材料32が流れる方向における上流側の端部が、金型11の内部において固定されてもよい。また、図示された例では第1材料31である溶融状態の樹脂R1が連続繊維41を含有することとなる。そのため、第1材料31のうち、連続繊維41の第2材料32が流れる方向における上流側の端部が、金型11の内部において固定される。
【0055】
次に、図7及び図8を参照しながら第2工程について説明する。第2工程では、溝13の内部に第2材料32が注入される。これにより、下型12の空間S2に第2材料32が配置される。第2材料32は不連続繊維42と樹脂R2とを含んだ材料である。
【0056】
第2材料32は、図7に例示されるように、予め収容部21に収容されてもよい。第2材料32はマトリックス樹脂としての樹脂R2に不連続繊維42が分散された材料であってもよい。第2材料32は粘性を有する、ブロック状に成形された材料であってもよい。即ち、第2材料32は固形の状態で収容部21に収容されてもよい。例えば、SMC(Sheet Molding Compound)を第2材料32として用いてもよい。また、不連続繊維42は一方向に配向されることなく、第2材料32に分散されていてもよい。即ち、第2材料32は等方性材料であってもよい。なお、収容部21には複数の第2材料32が収容されてもよい。また、図6及び図7に示す例では第2材料32に含有される不連続繊維42の表示を省略した。
【0057】
樹脂R2は特に限定されず、公知の熱硬化性樹脂、又は熱可塑性樹脂を用いることができる。例えば、樹脂R2はエポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ポリウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂等の熱硬化性樹脂であってもよい。また、樹脂R2はポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリスチレン樹脂、ABS樹脂(アクリロニトリル、ブタジエン及びスチレンのコポリマー)、PEKK樹脂(ポリエーテルケトンケトン)等の熱可塑性樹脂であってもよい。また、樹脂R2として熱硬化性樹脂を用いることにより、成形されたリブ3の耐熱性及び剛性をより向上させることができる。
【0058】
第2工程では、第2材料32を溝13の延在方向に沿って流れるように注入する。図7に示す例では、矢印Bに示すように押圧部22が収容部21に配設された第2材料32を装置前方に向けて押圧する。これにより、第2材料32は図中の矢印Cに示すように注入口14を通って溝13の内部に向けて注入される。即ち、第2材料32は溝13の端部13aから注入されてもよい。
【0059】
なお、第2材料32は、溝13のうち、その延在方向における端部13aとは反対側の端部から注入されることなく、端部13aのみから注入されてもよい。換言すれば、第2材料32は、溝13の延在方向において一方向に流れるように、溝13に注入されてもよい。図示された例では、注入口14を通った第2材料32は、装置前後方向において装置前方に向けて流れるように注入される。
【0060】
第2工程では、第2材料32を加熱する加熱部20で加熱された第2材料32が、溝13に注入されてもよい。図示された例では、予め収容部21で加熱された第2材料32が溝13に注入される。収容部21には第2材料32が固形の状態で収容されていてもよい。所定温度まで加熱することにより、第2材料32を溶融させ、より流動性を高めることができる。なお、溶融した第2材料32を溶融材料32aと称する。なお、第2材料32を溶融させる際の温度は特に限定されず、例えば樹脂R2の溶融温度に応じて適宜設定されてもよい。樹脂R2が熱硬化性樹脂の場合には、樹脂R2の溶融温度以上、かつ硬化温度未満の温度に第2材料32を加熱してもよい。
【0061】
図8に例示されるように、加熱された第2材料32が注入されることにより空間S2には溶融材料32aが充填される。即ち、空間S2に第2材料32が充填される。ここで、溶融材料32aは注入口14を通って装置前方に向けて流れながら空間S2に注入されるため、溶融材料32aが含有する不連続繊維42は溶融材料32aが流れる方向に向けて配向される。図示された例では、溝13内部における溶融材料32aが含有する不連続繊維42は、溝13の延在方向である装置前後方向と略平行な方向に配向されている。
【0062】
なお、不連続繊維42の配向は図示された例に限定されない。図に例示された断面において、注入口14近傍に配設された不連続繊維42のように、溝13に注入された第2材料32は、装置前後方向に対して所定の角度をなすように配向された不連続繊維42を含んでもよい。
【0063】
一体成形装置10では注入口14が溝13内部の下方側の領域に連通するように形成されている。そのため、溝13に注入された第2材料32の下方側に含有された不連続繊維42を、より確実に溝13の延在方向に配向させることができる。
【0064】
また、図7及び図8に示された例では、空間S1にドライファブリックが配設されている。そのため、溝13に第2材料32が注入された後に、矢印Dに示すように開口部17から溶融状態の樹脂R1を注入する注入工程を実施する。これにより、連続繊維41に樹脂R1が含侵されると共に、下型12の空間S1に樹脂R1が充填される。即ち、金型11に樹脂製の第1材料31である溶融状態の樹脂R1がセットされる。なお、第1材料31が樹脂製のシート材や、プリプレグから構成されている場合には、注入工程を省略してもよい。これにより、樹脂構造体1をより簡易な工程で成形することができる。また、一体成形装置10に開口部17を形成しなくてもよく、樹脂R1を収容する部分も設けなくてよいため、一体成形装置10をより簡易な構造にすることができる。
【0065】
樹脂R1は特に限定されず、樹脂R2と同様に、公知の熱硬化性樹脂、又は熱可塑性樹脂を用いることができる。なお、熱硬化性樹脂を樹脂R1として用いることにより、本体部2の耐熱性及び剛性をより向上させることができる。また、ある実施形態では、樹脂R1をエポキシ樹脂とし、樹脂R2を不飽和ポリエステル樹脂としてもよい。即ち、樹脂R1及び樹脂R2は熱硬化性樹脂であってもよい。これにより、本体部2とリブ3とをより確実に一体成形することができる。また、樹脂構造体1の剛性をより向上させることができる。
【0066】
次に、図8を参照しながら第3工程について説明する。第3工程では、金型11内部に配設された第1材料31及び第2材料32の加熱加圧成形を行うことにより、金型11の成形面12aに倣った形状の樹脂構造体1を形成する。樹脂R1は空間S1に倣った形状に成形され、本体部2を構成する。樹脂R2は空間S2に倣った形状に成形され、リブ3を構成する。ここで、リブ3は溝13により成形されため、樹脂構造体1が一体成形された際に、金型11内におけるリブ3の延在方向は装置前後方向である。即ち、金型11内において、リブ3の延在方向と溝13の延在方向とは一致する。
【0067】
また、空間S1と空間S2とは連通するため、樹脂R1と樹脂R2とが一体成形される。即ち、第1材料31と第2材料32との一体成形が行われる。これにより、本体部2と、本体部2の下面2bに沿うように延設されたリブ3とが一体成形され、樹脂構造体1が構成される。なお、当該一体成形を行う際の金型11の加熱条件又は冷却条件は特に限定されず、例えば樹脂R1及び樹脂R2の成分に応じて、適宜設定されてもよい。
【0068】
第3工程の後、図9に例示されるように下型12と上型15とが分離され、金型11内から樹脂構造体1が取り出される。なお、金型11から取り出した樹脂構造体1を、所望の形状にトリミングしてもよい。例えば、図に示されるように線L1及び線L2において樹脂構造体1のX軸方向における端部を切除してもよい。これにより、不連続繊維42がより均一な方向に配向されたリブ3を有する樹脂構造体1を得ることができる。即ち、より剛性を向上させた樹脂構造体1を形成することができる。
【0069】
なお、第3工程で第1材料31及び第2材料32の加熱加圧成形を行う際には、第2材料32は溶融していなくてもよい。例えば、溝13に配設された第2材料32を、所定の温度に加熱又は冷却されることにより固化した状態又は粘性を有する状態とし、その後、第1材料31と第2材料32との一体成形を行ってもよい。
【0070】
以下、実施形態に係る一体成形方法、及び一体成形装置の作用効果について説明する。
【0071】
(1)実施形態に係る一体成形方法は、樹脂製の本体部2と、本体部2の表面に沿って延設された、強化繊維40が不連続繊維42であるリブ3と、を有する樹脂構造体1の一体成形方法である。当該方法は、樹脂製の第1材料31を金型11にセットする第1工程と、金型11の成形面12aに形成されたリブ3を成形する溝13に、不連続繊維42と樹脂R2とを含む第2材料32を注入する第2工程と、を備える。第2工程では、第2材料32を溝13の延在方向に沿って流れるように注入する。実施形態に係る一体成形方法によれば、第2工程において第2材料32の不連続繊維42は、溝13の延在方向に沿うようにして溝13の内部に配設される。そのため、成形されたリブ3が含有する不連続繊維42は、リブ3の高さ方向と交差し、かつリブ3の延在方向に沿うように配設される。これにより、リブ3の高さ方向と平行な方向に入力された荷重に対する樹脂構造体1の剛性をより向上させることができる。
【0072】
(2)第2材料32が含有する樹脂R2は熱硬化性樹脂であってもよい。これにより、樹脂R2を成形することにより得られるリブ3の剛性をより向上させることができる。
【0073】
(3)第2工程では、第2材料32が溝13の延在方向一側端部13aから注入されてもよい。これにより、リブ3にウェルドラインが形成されることを抑制することができる。そのため、リブ3の剛性をより向上させることができる。
【0074】
(4)第1材料31は連続繊維41を含み、第1材料31のうち、リブ3を成形する溝13上に配設された、第2材料32が流れる方向における上流側の端部は、金型11に固定されてもよい。これにより、第2工程において流れる第2材料32との摩擦に起因する、金型11内部に配設された連続繊維41の配向方向の乱れを抑制することができる。そのため、本体部2の剛性をより向上させることができる。また、第1材料31のうちリブ3を成形する溝13上に配設された部分を、金型11内部においてに固定することができる。これにより、第1材料31を固定する際に、被固定部に上下方向の過大な荷重が入力されることを抑制することができる。その結果、成形された樹脂構造体1の外観をより向上させることができる。更に、第1材料31が連続繊維41を含有する場合であっても、第2材料32を溝13の延在方向に沿って流れるように注入される。そのため、第1材料31と第2材料32とを一体成形する際に、連続繊維41がリブ3の高さ方向と略平行な方向に湾曲した状態で成形されることを抑制することができる。これにより、リブ3の高さ方向と平行な方向に入力された荷重に対する樹脂構造体1の剛性をより向上させることができる。
【0075】
(5)第2工程では、第2材料32は溝13の内部に連通する注入口14から注入され、注入口14は、溝13のうちリブ3の先端部3aを成形する部分に隣接して配設されてもよい。これにより、溝13のうち先端部3aを成形する部分に注入された不連続繊維42は、溝13の延在方向に沿うように配設される。そのため、成形されたリブ3の先端部3aにおいて、より確実にリブ3の延在方向に沿うように配向された状態で不連続繊維42が含有されることとなる。即ち、不連続繊維42をより均一にリブ3の延在方向に配向させた先端部3aを形成することができる。そのため、より剛性を向上させた樹脂構造体1を形成することができる。
【0076】
(6)第2工程では、第2材料32は当該第2材料32が固形の状態で収容される収容部21に収容され、収容部21に収容された第2材料32を加熱する加熱部20で加熱された第2材料32が、溝13に注入されてもよい。これにより、第2材料32を溶融させ、流動性をより高めた状態で溝13に注入することができる。また、不連続繊維42をより確実に第2材料32が流れる方向に向けて配向させることができる。更に、第2材料32は固形の状態で収容部21に収容すればよいため、より簡易な工程で樹脂構造体1を成形することができる。
【0077】
(7)実施形態に係る一体成形装置は、樹脂製の本体部2と、本体部2の表面に沿って延設された、強化繊維40が不連続繊維42であるリブ3と、を有する樹脂構造体1の一体成形装置である。当該装置は、樹脂製の第1材料31がセットされる金型11を備える。また、当該装置は、不連続繊維42と樹脂R2とを含む第2材料32が延在方向に沿って流れるように注入される、金型11の成形面12aに形成されたリブ3を成形する溝13を備える。実施形態に係る一体成形装置によれば、溝13に第2材料32を注入した際に、第2材料32の不連続繊維42は、溝13の延在方向に沿うように配設される。そのため、リブ3が含有する不連続繊維42は、リブ3の高さ方向と交差し、かつリブ3の延在方向に沿うように配設される。これにより、リブ3の高さ方向と平行な方向に入力された荷重に対する、樹脂構造体1の剛性をより向上させることができる。
【符号の説明】
【0078】
1 樹脂構造体
2 本体部
3 リブ
3a 先端部
10 一体成形装置
11 金型
12a 成形面
13 溝
13a 端部
14 注入口
20 加熱部
31 第1材料
32 第2材料
R2 樹脂
40 強化繊維
41 連続繊維
42 不連続繊維
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9