(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024113375
(43)【公開日】2024-08-22
(54)【発明の名称】試料中の測定対象物を検出する免疫測定方法
(51)【国際特許分類】
G01N 33/543 20060101AFI20240815BHJP
G01N 33/545 20060101ALI20240815BHJP
G01N 33/483 20060101ALI20240815BHJP
G01N 21/64 20060101ALI20240815BHJP
【FI】
G01N33/543 515A
G01N33/543 575
G01N33/545 Z
G01N33/543 597
G01N33/483 C
G01N21/64 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023018310
(22)【出願日】2023-02-09
(71)【出願人】
【識別番号】000230962
【氏名又は名称】日本光電工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】中村 勘彦
(72)【発明者】
【氏名】金 大憲
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 禎司
【テーマコード(参考)】
2G043
2G045
【Fターム(参考)】
2G043AA01
2G043BA16
2G043CA04
2G043DA02
2G043EA01
2G043NA01
2G043NA02
2G045FA37
2G045FB03
2G045FB12
(57)【要約】
【課題】非特異的反応を検出可能な免疫測定方法を提供すること。
【解決手段】試料中の測定対象物を検出する免疫測定方法であって、前記測定対象物に対する特異的結合物質を固定した蛍光粒子および前記測定対象物に対する特異的結合物質を固定したラテックス粒子と、試料と、を反応させて反応物を得、フローサイトメトリーを用いて前記反応物の大きさ情報および蛍光情報を得ることによって測定対象物を検出することを有する、免疫測定方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料中の測定対象物を検出する免疫測定方法であって、
前記測定対象物に対する特異的結合物質を固定した蛍光粒子および前記測定対象物に対する特異的結合物質を固定したラテックス粒子と、試料と、を反応させて反応物を得、
フローサイトメトリーを用いて前記反応物の大きさ情報および蛍光情報を得ることによって測定対象物を検出することを有する、免疫測定方法。
【請求項2】
前記蛍光粒子に固定した特異的結合物質と、前記ラテックス粒子に固定した特異的結合物質とが、異なる物質である、請求項1に記載の免疫測定方法。
【請求項3】
前記蛍光粒子に固定した特異的結合物質および前記ラテックス粒子に固定した特異的結合物質が、抗原または抗体である、請求項1または2に記載の免疫測定方法。
【請求項4】
前記蛍光粒子および前記ラテックス粒子の平均粒子径が0.5μm以上である、請求項1または2に記載の免疫測定方法。
【請求項5】
前記ラテックス粒子に対する前記蛍光粒子の平均粒子径比(蛍光粒子の平均粒子径(μm)/ラテックス粒子の平均粒子径(μm))が0.5~2.0である、請求項1または2に記載の免疫測定方法。
【請求項6】
前記大きさ情報および蛍光情報の2パラメーターヒストグラムから特異的反応を判別する、請求項1または2に記載の免疫測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は試料中の測定対象物を検出する免疫測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
免疫測定法とは、抗原抗体反応を利用して試料中の測定対象物を測定する方法であり、微量成分を特異的に、かつ、精度よく測定できることから、広く利用されている。
【0003】
このような免疫測定法の一つに、ラテックス凝集免疫比濁法が知られている。ラテックス凝集免疫比濁法は、測定対象物と抗体もしくは抗原等を結合したラテックス粒子を反応させることでラテックス粒子を凝集させ、凝集程度の差異を吸光度測定することにより測定対象物質量の測定を行う。このようなラテックス凝集免疫比濁法は、臨床検査などでも広く使用されている。
【0004】
ラテックス凝集反応では非特異的反応が起こる場合があることが知られている。このようなラテックス凝集反応の非特異的反応を抑制するために、例えば、特許文献1では、測定試薬に脂肪酸(塩)を含ませることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このようにラテックス凝集免疫法においては、非特異的反応が起こりうるため、正確な測定結果を得るためには、非特異的反応の影響を極力排除することが望まれる。
【0007】
また、従来のラテックス凝集反応では、測定対象物の測定可能な濃度に限界がある。さらには、例えば、測定対象物が血清/血漿に含まれるものである場合などは、成分の分離を行ったりするなどの前処理が必要となる。
【0008】
そこで本発明の一目的は、非特異的反応を検出可能な免疫測定方法を提供することである。
【0009】
本発明の他の目的は、測定の高感度化を図り、また測定対象による検体の前処理を不要とする免疫測定方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、試料中の測定対象物を検出する免疫測定方法であって、前記測定対象物に対する特異的結合物質を固定した蛍光粒子および前記測定対象物に対する特異的結合物質を固定したラテックス粒子と、試料と、を反応させて反応物を得、フローサイトメトリーを用いて前記反応物の大きさ情報および蛍光情報を得ることによって測定対象物を検出することを有する、免疫測定方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、非特異的反応が起こった場合であっても、特異的反応と切り分けることができるため、特異的反応の検出がより正確となる。また、本発明によれば、測定の高感度化を図り、また試料が例えば全血であっても試料の前処理を不要とする。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】左図はCRPポリクローナル抗体を感作した蛍光粒子を調製試料に対して反応させた反応物について、フローサイトメトリーを用いて得られた、前方散乱光(FS)および蛍光(FL)の2パラメーターヒストグラム(FS×FL 2サイトグラム)である。右図は、蛍光強度でのヒストグラムである。
【
図2A】全血を溶血処理した後の溶血サンプル(試料)について、フローサイトメトリーを用いて得られた、前方散乱光(FS)および蛍光(FL)の2パラメーターヒストグラム(FS×FL 2サイトグラム)である。
【
図2B】全血(試料)に対して、フローサイトメトリーを用いて得られた、前方散乱光(FS)および蛍光(FL)の2パラメーターヒストグラム(FS×FL 2サイトグラム)である。
【
図3】本発明の一態様によって大きさ情報と蛍光情報を取得した際に得られる2パラメーターヒストグラムのイメージ図である。
【
図4】トロポニンT抗体(TT503)を感作した蛍光粒子およびトロポニンT抗体(TT502)を感作したラテックス粒子を試料に反応させた反応物について、フローサイトメトリーを用いて得られた、前方散乱光(FS)と蛍光(FL)との2パラメーターヒストグラム(FS×FL 2サイトグラム)(RAWデータ)である。
【
図5】トロポニンT抗体(TT502)を感作した蛍光粒子およびトロポニンT抗体(TT503)を感作したラテックス粒子を試料に反応させた反応物について、フローサイトメトリーを用いて得られた、前方散乱光(FS)と蛍光(FL)との2パラメーターヒストグラム(FS×FL 2サイトグラム)(RAWデータ)である。
【
図6】トロポニンT抗体(TT503)を感作した蛍光粒子およびトロポニンT抗体(TT502)を感作したラテックス粒子を試料に反応させた反応物について、フローサイトメトリーを用いて得られた、前方散乱光(FS)と蛍光(FL)との2パラメーターヒストグラム(FS×FL 2サイトグラム)(解析データ)である。
【
図7】トロポニンT抗体(TT502)を感作した蛍光粒子およびトロポニンT抗体(TT503)を感作したラテックス粒子を試料に反応させた反応物について、フローサイトメトリーを用いて得られた、前方散乱光(FS)と蛍光(FL)との2パラメーターヒストグラム(FS×FL 2サイトグラム)(解析データ)である。
【
図8】実施例1、2で得られるデータにおける同時通過の集団を示す図である。
【
図9】
図5、
図7における解析データを説明するイメージ図である。
【
図10】トロポニンT抗体(TT503)を感作した蛍光粒子(小粒子径)およびトロポニンT抗体(TT502)を感作したラテックス粒子を試料に反応させた反応物について、フローサイトメトリーを用いて得られた、前方散乱光(FS)と蛍光(FL)との2パラメーターヒストグラム(FS×FL 2サイトグラム)である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態について、詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態のみには限定されず、特許請求の範囲内で種々改変することができる。また、本明細書において、範囲を示す「X~Y」は、XおよびYを含み、「X以上Y以下」を意味する。本明細書において、「Xおよび/またはY」とは、XおよびYの少なくとも一方を含むことを意味し、「X単独」、「Y単独」および「XおよびYの組み合わせ」を包含する。また、特記しない限り、操作および物性等の測定は室温(20~30℃)/相対湿度20~85%RHの条件で測定する。
【0014】
本発明の一態様は、試料中の測定対象物を検出する免疫測定方法であって、当該測定対象物に対する特異的結合物質を固定した蛍光粒子および当該測定対象物に対する特異的結合物質を固定したラテックス粒子と、試料と、を反応させて反応物を得、フローサイトメトリーを用いて前記反応物の大きさおよび蛍光強度を測定することによって測定対象物を検出することを有する、免疫測定方法である。ここで、免疫測定とは、上記反応物の濃度や量等を測定することを意味する。また、測定対象物の「検出」とは、測定対象物が試料中に存在するか否かを検出する任意の方法を指し、例えば、発現の検出、量の検出が挙げられる。
【0015】
本態様においては、フローサイトメトリーを用いる。フローサイトメトリーでは、反応液全体としての粒子の凝集の程度を測定するのではなく、凝集したラテックス粒子および/または蛍光粒子を1つの塊として一つずつ複数個測定するので、少しでも凝集があれば検出できる。また、フローサイトメトリーを用いることで、散乱光からの大きさ情報(前方散乱光(FS))および蛍光情報(FL)を得ることができる。ゆえに、本態様によれば高感度化が可能となる。
【0016】
また、ラテックス凝集免疫比濁法では、採取した血液(全血)をそのまま用いると、赤血球やヘモグロビン等の影響を受け、正確な定量測定を行うことができない。このため、例えば、血清中に含まれるものを測定する場合には、採取した血液を遠心分離するなど前処理を行っていた。このため測定時間が長くかかり、緊急の場合や遠心分離器の無い施設では測定が困難であった。
【0017】
本態様においては、試料中の測定対象物を認識可能な蛍光粒子とラテックス粒子とが、測定対象物に結合することで、凝集物を形成する。血球細胞は自家蛍光を有するが、当該凝集物は、蛍光粒子による強い蛍光情報を持つため、血球細胞の蛍光強度の弱い自家発光とは明確に区別がつく。よって、試料の前処理が不要となる。
【0018】
図1左図は、CRPポリクローナル抗体(日本バイオテスト研究所)を感作した蛍光粒子(Fluoresbrite Carboxylate Microspheres,0.75μm YG(ポリサイエンス社))を調製試料に対して反応させた反応物に対して、フローサイトメーター(BD FACS Via、ベクトン・ディッキンソン アンド カンパニー社製)を用いて得られた前方散乱光(FS)および蛍光(FL)との2パラメーターヒストグラム(スキャッタグラム)である。
図1右図は、蛍光強度でのヒストグラムである。ここで、調製試料は、高濃度CRP抗原(CLINIQA社、CRP Control Serum)を1%BSA含有生理食塩水で希釈したものであり、CRP抗原濃度は200μg/mLである。
図1左図においては3つの集団が存在しているが、一番サイズの小さい集団は、蛍光粒子が凝集していない集団、二番目のサイズの集団は、蛍光粒子がCRP抗原に2つ結合した集団、三番目のサイズの集団は、蛍光粒子がCRP抗原に3つ結合した集団である。そして、
図1においては、粒子が凝集していない一番サイズの小さい集団を未反応と、粒子が凝集している二番目のサイズ、三番目のサイズ以上の集団を反応とみなす。なお、
図1において、未反応、反応の境界を示す線は、例えば、蛍光強度を横軸、取り込み数(イベント数)を縦軸にしてヒストグラムを作成し(
図1右図)、となり合う粒子1つの集団の山と、粒子2つが結合した集団の山の裾が十分に下がったところの箇所で切り分けることができる。
図2Aは、全血(ヒト、健常者)を溶血処理した後の溶血サンプル(試料)について、フローサイトメトリーを用いて得られた、前方散乱光(FS)および蛍光(FL)の2パラメーターヒストグラム(FS×FL 2サイトグラム)である。
図2Bは、全血(試料)に対して、フローサイトメトリーを用いて得られた、前方散乱光(FS)および蛍光(FL)の2パラメーターヒストグラム(FS×FL 2サイトグラム)である。なお、ヒトからの全血試料の採取はすべて、インフォームドコンセントを行って提供者の意思を確認した後に実施した。
【0019】
図1と
図2の横軸の蛍光強度のスケールから理解されるように、血球細胞の自家蛍光の蛍光強度は、測定対象物と反応した凝集物の蛍光強度と比較して非常に弱い。このため、測定対象物と反応した凝集物は、
図1のヒストグラム内で血球細胞と明確に分けることができる。ゆえに、本態様の測定方法によれば、血液試料の前処理を行って成分の分離を行う必要がない。なお、上記
図1に示されるデータの取得における方法においては、本態様の理解を深めるために、ラテックス粒子を用いていないが、上記
図1の形式によって本発明の技術的範囲は何ら影響を受けるものではない。
【0020】
さらには、大きさ情報だけで測定対象物を検出する場合、粒子凝集物の集団と血液中の成分(例えば、血小板)の集団とが切り分けられない場合がある。本態様のように、蛍光粒子だけではなく、蛍光を発しないラテックス粒子を組み合わせることで、大きさ情報の他、蛍光情報も得られるので、試料中の非特異的成分と切り分けることが可能となる。
【0021】
【0022】
図3は、本態様によって大きさ情報と蛍光情報を取得した際に得られるイメージ図である。●がラテックス粒子、○が蛍光粒子となる。
図3において、縦軸は大きさ情報、横軸は蛍光情報となる。試料と反応させると、試料中の測定対象物を蛍光粒子および/またはラテックス粒子中の特異的結合物質が認識して凝集物を形成する。ラテックス粒子および蛍光粒子の粒子径がおおよそ同じである場合、下から粒子が凝集していない集団、粒子が2つ結合した集団、粒子が3つ結合した集団、粒子が4つ結合した集団の大きさの順に並ぶ。そして、横軸は蛍光強度の大きさとなるため、一番左から蛍光粒子が1つ存在する集団、蛍光粒子が2つ結合した集団、蛍光粒子が3つ結合した集団となる。通常、測定対象物は有意に小さい大きさ(おおよそ数100kDa以下)であるため、測定に影響を与えない。また、●のみの粒子または凝集体は、蛍光を発しないため、前方散乱光(FS)および蛍光(FL)の2パラメーターヒストグラムには表示されないが、ここでは理解を容易にするために、参考的に図示している。
【0023】
ラテックス粒子と蛍光粒子の2つの粒子が測定対象物に結合するように特異的結合物質を設計することで、測定対象物には、ラテックス粒子および蛍光粒子の双方が結合し、凝集物を形成しやすくなる。ゆえに、蛍光粒子に固定した特異的結合物質と、ラテックス粒子に固定した特異的結合物質とが、異なる物質であることが好ましい。一例として、蛍光粒子に固定された特異的結合物質およびラテックス粒子に固定された特異的結合物質が、双方ともモノクローナル抗体であり、抗体認識部位(エピトープ)が互いに異なる。
【0024】
このように、ラテックス粒子と蛍光粒子の双方が結合した凝集物が測定対象物と特異的に反応した反応物とみなすことができる。そして、ラテックス粒子のみ2つ以上凝集した凝集物(例えば、抗体同士の凝集体)や、蛍光粒子のみ2つ以上凝集した凝集物(例えば、抗体同士の凝集体)は非特異的反応となる(
図3参照)。よって、非特異的反応が生じた場合であっても、本態様によれば、特異的反応と切り分けて検出可能となる。
【0025】
本態様は、(1)反応工程:測定対象物に対する特異的結合物質を結合した蛍光粒子および測定対象物に対する特異的結合物質を結合したラテックス粒子と、試料と、を反応させて反応物を得る、(2)測定工程:フローサイトメトリーを用いて反応物の大きさおよび蛍光強度を測定することによって測定対象物を検出する、ことを有する。
【0026】
以下、各工程について説明する。
【0027】
(1)反応工程:測定対象物に対する特異的結合物質を固定した蛍光粒子および測定対象物に対する特異的結合物質を固定したラテックス粒子と、試料と、を反応させて反応物を得る。ここで反応とは、測定対象物と特異的結合物質が結合するようないかなる形式も含む。また、反応物とは、反応(接触)後に得られた凝集物を含む反応液全体を意図する。
【0028】
蛍光粒子と、ラテックス粒子と、は同時に反応させても、別々に(順次)反応させてもよい。
【0029】
蛍光粒子およびラテックス粒子と、試料とを反応させる際の反応温度は、通常4~50℃、好ましくは4~42℃、さらに好ましくは20~40℃であり、反応時間は、例えば、1~60分間であり、1~30分間であってもよい。
【0030】
蛍光粒子およびラテックス粒子の平均粒子径比は、反応性の観点から、蛍光粒子の平均粒子径(μm)/ラテックス粒子の平均粒子径(μm)=0.2~4.0であることが好ましく、0.5~2.0であることがより好ましい。
【0031】
なお、本明細書における平均粒子径は、統計上有意な数(例えば、少なくとも200個、好ましくは少なくとも300個)のサンプルについて透過型電子顕微鏡(TEM)像より調べられる粒子の粒子径の平均値である。ここで、「粒子径」とは、粒子の輪郭線上の任意の2点間の距離のうち、最大の距離を意味するものとする。
【0032】
以下、本工程に用いられる材料について説明する。
【0033】
<試料>
測定対象の試料は、例えば、被験者から採取された生体試料である。
【0034】
本明細書において、「被験者」は、動物であれば特に限定されないが、例えば、哺乳動物等が挙げられる。哺乳動物としては、例えば、霊長類、実験用動物、家畜、ペット等が挙げられ特に限定されるものではないが、具体的には、例えば、ヒト、サル、ラット、マウス、ウサギ、ウマ、ウシ、ヤギ、ヒツジ、イヌ、ネコなどが挙げられる。好ましくは、被験者はヒトである。
【0035】
また、生体試料について特に制限はなく、従来臨床検査において一般的に用いられている生体試料が用いられうる。生体試料としては、例えば、被験者である動物由来の組織、細胞、細胞抽出成分、体液等が挙げられる。組織としては、脾臓、リンパ節、腎臓、肺、心臓、肝臓等が、細胞としては、脾細胞、リンパ細胞、好中球、単球、マクロファージ、樹状細胞、抗体産生細胞等が、体液としては、血液試料のほか、腹水、体腔液、尿、汗、脊髄液、唾液、鼻腔ぬぐい液、鼻咽頭ぬぐい液等が挙げられる。なかでも、生体試料は好ましくは血液試料、尿、唾液、鼻腔ぬぐい液、鼻咽頭ぬぐい液であり、より好ましくは血液試料である。
【0036】
「血液試料」としては、特に制限されないが、本態様においては、特別な前処理をすることなく測定対象物を検出することができる。したがって、生体試料として、全血試料は好適な形態である。ここで、全血試料とは、被験者から採取した血液であって、血清や血漿を分離する処理を行っていないものを意味する。
【0037】
生体試料は、被験者から採取直後のものを測定に用いることが好ましいが、保存したものを用いてもよい。生体試料の保存方法としては、測定対象物が変化しない条件であれば特に制限はなく、例えば0~10℃の凍結しない程度の低温条件、暗所条件および無振動条件下が好ましい。
【0038】
試料は、緩衝液(希釈液)で希釈してもよい。緩衝液と混合して希釈することで、免疫凝集反応を効率的に行わせることができる。緩衝液としては、例えば、リン酸緩衝液、炭酸緩衝液、トリス緩衝液、グリシン緩衝溶液、トリシン緩衝液等を使用することができる。緩衝液のpHは、例えば、6~8.5である。緩衝液には、PEGやプルロニック等の増感剤、BSAなどのタンパク質安定剤、アジ化ナトリウムなどの防腐剤を使用してもよい。試料を緩衝液で希釈する場合の希釈倍率は、試料の形態などを考慮して適宜設定すればよいが、例えば10~80倍である。
【0039】
<蛍光粒子>
蛍光粒子としては、特に限定されるものではないが、例えば、蛍光色素、蛍光顔料および希土類等を含む、ポリマー粒子(例えばポリスチレン粒子)、シリカ粒子、および、シリコン粒子などが挙げられる。これらは、市販品も利用可能である。また、特異的結合物質(例えば、抗体)との反応性を向上させるために、蛍光粒子は、表面にカルボキシル基、アミノ基、メチル基、チオール基、ヒドロキシル基、ビオチン、PEG(ポリエチレングリコール)鎖を有することが好ましい。
【0040】
蛍光粒子に含まれうる蛍光色素としては、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、ローダミン、テキサスレッド、テトラメチルローダミン、カルボキシローダミン、フィコエリスリン(PE)などが挙げられる。
【0041】
本態様においては、大きさ情報を得ることができる蛍光を発する物質は「粒子」である。ここで、フローサイトメトリーにて大きさの情報を取得するためには、使用するレーザーの波長より粒子の平均粒子径が大きいことが好ましい。一般的に使用されるレーザーの波長は488nm(青色)、640nm(赤色)であるため、(特異的結合物質結合前の)蛍光粒子の平均粒子径は、0.5μm以上であることが好ましい。また、(特異的結合物質結合前の)蛍光粒子の平均粒子径は、10μm以下であることが好ましく、試薬の調製の際に分散液を作製しやすい、粒子数を多くすることができるなどの理由から、3μm以下であることがより好ましく、1μm以下であってもよい。
【0042】
蛍光粒子に特異的結合物質を固定する方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、カルボキシル基が導入された蛍光粒子を、カルボジイミドによって活性化し、抗体中のアミノ基と結合させるなどの方法が挙げられる。このような活性化は、市販のキットを用いて行ってもよい。
【0043】
蛍光粒子は通常懸濁液として使用され、溶媒としては、水、緩衝液等が用いられ、水であることが好ましい。緩衝液としては、上記で記載したものが挙げられる。
【0044】
<ラテックス粒子>
ラテックス粒子としては、通常公知のものを用いることができ、例えば、スチレン、塩化ビニル、アクリロニトリル、酢酸ビニル、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル等のビニル系モノマーを重合させてなる単一重合体(例えば、ポリスチレン、メタクリル酸重合体、アクリル酸重合体等)からなる粒子、ブタジエン系共重合体(例えば、スチレン-ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート-ブタジエン共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体等)からなる粒子、それ以外の共重合体(例えば、スチレン-スチレンスルホン酸塩共重合体、メタクリル酸エステル共重合体、アクリル酸エステル共重合体、塩化ビニル-アクリル酸エステル共重合体等)からなる粒子が挙げられる。
【0045】
ラテックス粒子に特異的結合物質を固定する方法は、公知の方法に準じて行えばよく、例えば、特異的結合物質が抗体である場合、抗体とラテックス粒子とを緩衝液中で懸濁させ、25℃で1時間反応させた後、遠心分離、ブロッキング処理等、通常この分野で行われる処理により得ることができる。また、抗体とラテックス粒子とを化学結合により固相する方法(例えば、カルボキシル基が導入されたラテックス粒子を、カルボジイミドによって活性化し、抗体中のアミノ基と結合させるなどの方法)や、ビオチン-アビジン反応により抗体を固定化する方法も選択できる。
【0046】
フローサイトメトリーにて大きさの情報を取得するためには、使用するレーザーの波長より粒子の粒径が大きいことが好ましい。一般的に使用されるレーザーの波長は488nm(青色)、640nm(赤色)であるため、(特異的結合物質結合前の)ラテックス粒子の平均粒子径は、0.5μm以上であることが好ましい。また、(特異的結合物質結合前の)ラテックス粒子の平均粒子径は、10μm以下であることが好ましく、試薬の調製の際に分散液を作製しやすい、粒子数を多くすることができるなどの理由から、3μm以下であることがより好ましく、1μm以下であってもよい。
【0047】
ラテックス粒子は通常懸濁液として使用され、溶媒としては、水、緩衝液等が用いられ、水であることが好ましい。緩衝液としては、上記で記載したものが挙げられる。
【0048】
<特異的結合物質>
特異的結合物質としては、抗体、改変抗体、抗原、アプタマー、リガンド分子、リガンドミミックス、リガンドとの結合に競合する阻害剤、接着分子に対して結合する細胞外基質や接着因子、それらのミミックス(mimics)、酵素に対する基質、当該酵素の阻害剤、当該酵素に対してアロステリック効果を及ぼす物質、糖鎖に対して結合するレクチン、ホルモンや神経伝達物質といったシグナル物質やその受容体、アビジンやビオチン等が挙げられる。抗体としては、IgG、IgA、IgD、IgE、IgM等が挙げられる。なお、抗体はモノクローナル抗体であることが好ましい。ここで、IgGとしては、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4等が挙げられる。IgAとしては、IgA1、IgA2等が挙げられる。IgMとしては、IgM1、IgM2等が挙げられる。改変抗体としては、Fab、F(ab’)2、scFv等が挙げられる。好適な態様は、反応性の観点から、蛍光粒子に固定した特異的結合物質およびラテックス粒子に固定した特異的結合物質が、抗原または抗体であり、より好ましくは抗体である。
【0049】
蛍光粒子に結合する特異的結合物質とラテックス粒子に結合する特異的結合物質とは、測定対象物の異なる位置に結合することが好ましい。同じ位置に結合すると、両者の結合が競合し、蛍光粒子およびラテックス粒子の両方が結合できない可能性がある。例えば、特異的結合物質が抗体である場合、蛍光粒子に結合する特異的結合物質とラテックス粒子に結合する特異的結合物質は、測定対象物の異なる部位を認識する異なる2種の抗体である。当該2種の抗体は、各々モノクローナル抗体であることが好ましい。
【0050】
測定対象物に対する特異的結合物質を固定した蛍光粒子、測定対象物に対する特異的結合物質を固定したラテックス粒子における「固定」とは、特異的結合物質が直接に蛍光粒子またはラテックス粒子に結合している場合だけではなく、他の分子結合やリンカーを介して間接的に特異的結合物質が蛍光粒子またはラテックス粒子に結合している場合を含む。
【0051】
<測定対象物>
測定対象物は特に限定されず、タンパク質、ペプチド型ホルモンなどのペプチド、核酸(DNA、RNA)、脂質等である。
【0052】
タンパク質としては、例えば、血漿タンパク質、血清タンパク質、リポタンパク質、糖タンパク質、ホルモン、腫瘍マーカー、アポタンパク質、ウイルス抗原、自己抗体、疾患マーカー等が挙げられる。
【0053】
血漿タンパク質や血清タンパク質としては、例えば、免疫グロブリン(IgG、IgA、IgM、IgD、IgE)、補体成分(C3、C4、C5、C1q)、CRP、α1-アンチトリプシン、α1-マイクログロブリン、β2-マイクログロブリン、ハプトグロビン、トランスフェリン、セルロプラスミン、フェリチンなどが挙げられる。
【0054】
ホルモンとしては、例えば、下垂体ホルモン(LH、FSH、GH、ACTH、TSH、プロラクチン)、甲状腺ホルモン(T3、T4、サイログロブリン)、カルシトニン、副甲状腺ホルモン(PTH)、副腎皮質ホルモン(アルドステロン、コルチゾール)、性腺ホルモン(hCG、エストロゲン、テストステロン、hPL)、膵・消化管ホルモン(インスリン、C-ペプチド、グルカゴン、ガストリン)等が挙げられる。
【0055】
腫瘍マーカーとしては、例えば、α-フェトプロテイン(AFP)、癌胎児性抗原(CEA)、CA19-9、CA125、CA15-3、SCC抗原、前立腺酸性ホスファターゼ(PAP)、PIVKA-II、γ-セミノプロテイン、TPA、エラスターゼI、神経特異エノラーゼ(NSE)、免疫抑制酸性タンパク(IAP)などが挙げられる。
【0056】
疾患マーカーとしては、例えば、クレアチニンキナーゼ(CK)、CKのアイソザイムであるCK-MB、ミオグロビン、心臓型脂肪酸結合蛋白(H-FABP)、ミオシン軽鎖(MLC)、心筋トロポニンT(TnT)、心筋トロポニンI(TnI)、心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)、脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)などが挙げられる。
【0057】
また、測定対象物が複合体である場合、例えば、四量体であるヘモグロビンの場合、特異的結合物質が結合できるように、単量体となるような前処理を行えばよい。
【0058】
(2)測定工程:フローサイトメトリーを用いて凝集物の大きさおよび蛍光強度を測定する。
【0059】
<フローサイトメトリー>
測定工程で使用できるフローサイトメーターは、特に制限されず、公知の機器を用いることができる。フローサイトメーターとしては、セルソーター(自動細胞解析分取装置)、セルアナライザー(自動細胞解析装置)、高分解能型セルアナライザー、高速型セルアナライザーなどが挙げられる。
【0060】
フローサイトメトリーの具体的な手順については、特に制限されず、従来公知の知見(例えば、特開2012-47594号公報、特開2014-23439号公報など)を適宜参照することができる。また、フローサイトメトリーは、フローサイトメーターの製造会社のプロトコルに従って、行うことができる。
【0061】
フローサイトメトリーにより、蛍光発光および前方散乱光に基づくデータを取得することができる。
【0062】
フローサイトメトリーの測定は以下の条件が好ましい。すなわち、励起光は、青色固体レーザー(波長λ=488nm)を用い、前方散乱光FSC(<15°)、及び蛍光粒子の蛍光波長に合わせて3種類の蛍光シグナルFL1~3のいずれか(または全て)を測定することが好ましい。なお、蛍光シグナルFL1~3を測定するために、緑の蛍光(FL1)には515~545nm、特に530nmの帯域フィルター(band pass filter)を使用することが好ましく、黄橙色の蛍光(FL2)には564~606nm、特に585nmの帯域フィルターを使用することが好ましく、赤色の蛍光(FL3)には655~800nm、特に670nmの長波長帯域フィルターを使用することが好ましい。
【0063】
順番に青色固体レーザー(λ488nm)を照射すると、レーザー光の軸に対して1.5°~19°の小さい角度で散乱する。これは前方散乱光(Forward Scattered Light:FSC)と呼ばれ、その散乱度は粒子の大きさにほぼ比例する。そして、例えば、前方散乱光パルス面積(FSC-A)と蛍光発光パルス面積(FL-A)で展開し、測定対象領域にゲーティングする。「ゲーティング」とは、サンプルの中の関心のある細胞集団だけを選び出し、その細胞のみのヒストグラムを作ることをいう(「ゲートを設定する」ともいう)。この際、例えば、同時通過(検出部を凝集体または粒子が2個以上通過してしまうこと)を解析から除く必要がある。そして、ゲーティングした領域の細胞をヒストグラムで展開し、例えば2パラメータヒストグラムなどを作成する。このように作成されたヒストグラムから、非特異的結合および特異的結合を切り分け、特異的反応を判別する。非特異的結合の切り分けは、上記
図3の説明の欄で記載したとおりである。そして、例えば、特異的結合と判別された集団の個数をカウントすると、測定対象物の量や濃度が測定できる。具体的には、既知の濃度の測定対象物について、本態様の方法により測定対象物について濃度(横軸)と特異的結合(反応物)の割合(縦軸)(反応物のカウント数/総カウント数(反応物のカウント数+未反応物のカウント数))との検量線を作成した後、目的試料について、本態様の方法により大きさ情報および蛍光情報から特異的結合(反応物)の割合を得て、上記検量線から目的試料中の測定対象物の濃度を算出することができる。さらに、本態様の方法によれば、測定について非特異的反応が存在することを検知することができる。
【実施例0064】
本発明の効果を、以下の実施例を用いて説明する。特記しない限り、各操作は、室温(20~30℃)で行われる。
【0065】
<参考例 CRPポリクローナル抗体を結合させた蛍光粒子を用いたフローサイトメトリー(測定感度、スキャッタグラムの検証)>
1.使用装置
フローサイトメーター:FACS Via
測定条件
流速:Fast(66μL/min)
測定量:50μL
スレッショルド:FSC:5000
2.抗体
CRPポリクローナル抗体(日本バイオテスト研究所)
3.粒子
蛍光粒子:Fluoresbrite Carboxylate Microspheres(2.5% Solids-Latex),0.75μm YG(ポリサイエンス社)、FL1で検出可能
4.試薬
・粒子試薬:0.1%(~0.2%)粒子濃度(w/v)(粒子に抗体を感作したものを使用)、粒子を蒸留水で分散
・希釈試薬:
(以下の希釈試薬の組成に増感剤を含む場合がある。増感剤としてはPEG20000(0.25~0.50%(w/v))、プルロニック(登録商標)F-127(1.0%(w/v))を使用)
【0066】
【0067】
5.測定手順
(1)希釈試薬:0.1%蛍光粒子溶液=100.6:60.9(v/v)の割合で混合した。
(2)(1)の反応液に2μLのサンプルを加えた。測定サンプルは、高濃度CRP抗原(CLINIQA社、CRP Control Serum)を1%BSA含有生理食塩水で希釈したものであり、CRP抗原濃度は200μg/mLである。
(3)37℃,90秒(~20分)反応させた。
(4)希釈試薬1998μLへ2μLの(2)を加えた。
(5)フローサイトメーターで測定し、前方散乱光(FS)と蛍光(FL)との2パラメーターヒストグラム(FS×FL 2サイトグラム)を得た。
【0068】
結果を
図1に示す。
図1において、蛍光粒子1個、2個、3個・・となるにつれ、大きさと蛍光強度が比例的に増加する。したがって、
図1において、蛍光強度が一番小さく、大きさが一番小さい集団が蛍光粒子1個の集団であり、順に、蛍光粒子2個の集団、蛍光粒子3個の集団となる。そして、蛍光粒子1個の集団は未反応物であり、蛍光粒子2個以上の集団が特異的反応物となる(測定対象物(CRP)と反応した凝集物である)。ゆえに、
図1のヒストグラム内で未反応物と反応物とが明確に分けられていることがわかる。
【0069】
<実施例1:トロポニンT抗体(TT503)を感作した蛍光粒子およびトロポニンT抗体(TT502)を感作した通常ラテックス粒子を用いた測定>
1.使用装置
フローサイトメーター:FACS Via
測定条件
流速:Fast(66μL/min)
測定量:50μL
スレッショルド:FSC:5000
2.抗体
トロポニンTモノクローナル抗体(TT-502、TT-503、日本バイオテスト研究所)
3.粒子
蛍光粒子:Fluoresbrite Carboxylate Microspheres,(2.5% Solids-Latex),0.75μm YG(ポリサイエンス社)、FL1で検出可能
ラテックス粒子:平均粒子径0.626μm(ポリスチレン系、日本光電工業)
4.試薬
・粒子試薬:0.1%(~0.2%)粒子濃度(w/v)(粒子に抗体を感作したものを使用)、粒子を下記に示す希釈試薬で分散
・希釈試薬:
(以下の希釈試薬の組成に増感剤を含む場合がある。増感剤としてはPEG20000(0.25~0.50%(w/v))、プルロニック(登録商標)F-127(1.0%(w/v))を使用)
【0070】
【0071】
5.測定手順
(1)希釈:測定サンプル=100.6:2(v:v)の割合で混合した。これをサンプルミックスとした。なお、測定サンプルは、トロポニンT抗原濃度が10μg/mL,7μg/mL,4μg/mL,1μg/mL,0μg/mLとした(希釈溶媒:25mM Tris,7M Urea,15mMメルカプトエタノール,5mM EDTA 2Na,pH7.5+/-0.1。抗原はSCRIPPS社、Troponin T,Human Heart, Lyophilized(カタログNo.T1514))。
(2)サンプルミックス68.4μLを適当なチューブへ移した。
(3)37℃でプレインキュベートした。
(4)トロポニンT抗体(TT503)を感作した0.1%(w/v)蛍光粒子(0.73μm)溶液20.3μLを68.4μLサンプルミックスに加えた。
(5)37℃で90秒反応させた。
(6)トロポニンT抗体(TT502)を感作した0.1%(w/v)ラテックス粒子(0.626μm)溶液20.3μLを(5)に加えた。
(7)37℃,90秒反応させた。
(8)希釈試薬1998μLへ2μLの(7)を加えた。
(9)フローサイトメーターで測定し、前方散乱光(FS)と蛍光(FL)との2パラメーターヒストグラム(FS×FL 2サイトグラム)を得た。
【0072】
結果を
図4、
図6に示す。
図4はRAWデータであり、
図6は、RAWデータのスキャッタグラムからラテックス粒子のみの反応、同時通過(検出部を通過した2個以上の粒子。フローサイトメトリーでは通常、粒子は一つずつ検出部を通過する。
図8の○部分)を除去し同一のゲートを適用したものである。
【0073】
<実施例2:トロポニンT抗体(TT502)を感作した蛍光粒子およびトロポニンT抗体(TT503)を感作した通常ラテックス粒子を用いた測定>
1.使用装置、2.抗体、3.粒子、4.試薬については、実施例1と同様のものを用いた。
【0074】
5.測定手順
(1)希釈:測定サンプル=100.6:2(v/v)の割合で混合した。これをサンプルミックスとする。なお、測定サンプルは、トロポニンT抗原濃度が10μg/mL,7μg/mL,4μg/mL,1μg/mL,0μg/mLとした(希釈溶媒:25mM Tris,7M Urea,15mMメルカプトエタノール,5mM EDTA 2Na,pH7.5+/-0.1。抗原はSCRIPPS社、Troponin T,Human Heart, Lyophilized(カタログNo.T1514))。
(2)サンプルミックス68.4μLを適当なチューブへ移した。
(3)37℃でプレインキュベートした。
(4)トロポニンT抗体(TT503)を物理吸着により感作した0.1%(w/v)ラテックス粒子(0.626μm)溶液20.3μLを68.4μLサンプルミックスに加えた。
(5)37℃で90秒反応させた。
(6)トロポニンT抗体(TT502)を化学結合により感作した0.1%(w/v)蛍光粒子(0.73μm)溶液20.3μLを(5)に加えた。
(7)37℃,90秒反応させた。
(8)希釈試薬1998μLへ2μLの(7)を加えた。
(9)フローサイトメーターで測定し、前方散乱光(FS)と蛍光(FL)との2パラメーターヒストグラム(FS×FL 2サイトグラム)を得た。
【0075】
結果を
図5、
図7に示す。
図5はRAWデータであり、
図7は、RAWデータのスキャッタグラムからラテックス粒子のみの反応、同時通過(検出部を通過した2個以上の粒子。フローサイトメトリーでは通常、粒子は一つずつ検出部を通過する。
図8の○部分)を除去し同一のゲートを適用したものである。
【0076】
図4、
図5のRAWデータから
図6,
図7のような解析データが作成できる。
図9は、解析データのイメージ図である。解析データの作成は特に限定されるものではないが、例えば以下の様な手順で行われる。(1)同時通過の集団を除去する。(2)大きさ情報、蛍光情報から、(ラテックス粒子を含まない)蛍光粒子1個のみの集団群を未反応として判別する(
図9未反応対照)。(3)蛍光情報から、蛍光粒子が1個存在する集団を特定し、(2)で未反応として判別された集団よりも大きさが大きい集団を特異的反応と判別する(
図9蛍光粒子1個と複数のラテックスが結合した領域、ここで複数とは、ラテックス粒子が1個以上結合していることを意味する)。(4)蛍光情報から蛍光粒子が2個存在する集団を特定する。(5)大きさ情報から、(ラテックス粒子を含まない)蛍光粒子2個のみの集団を特定する。(6)(4)、(5)と同様に蛍光粒子がn個存在する集団、(ラテックス粒子を含まない)蛍光粒子n個のみの集団を特定する。(7)(4)~(6)の情報から、(ラテックス粒子を含まない)蛍光粒子のみの集団を非特異的反応として判別する(
図9蛍光粒子の非特異反応が出てくる領域)。
以上の(1)~(7)の手順により、非特異的反応/特異的反応を判別することができる。
【0077】
トロポニンT抗体 TT502とTT503は抗原抗体反応でサンドイッチ反応が行えるペアである。TT502は事前の検証においてそれのみで抗原抗体反応でサンドイッチ反応が確認できたのでポリクローナル抗体の様な反応を示す。よって、TT502の抗体を感作した粒子はそれのみで凝集塊を作るため疑似的な非特異的反応が起こっているとしてみることができる。一方で、TT503抗体はそれのみでは凝集塊を作らないことを確認している。
【0078】
TT503感作蛍光粒子、TT502感作ラテックス粒子を使用した反応(実施例1)においては、疑似的な非特異的反応が蛍光を発しないラテックス粒子同士の凝集のため、縦軸粒子の大きさ、横軸蛍光強度としたスキャッタグラムでは当該凝集はほぼ表示されない。したがって、縦軸粒子の大きさ、横軸蛍光強度としたスキャッタグラム(
図6)では、非特異的反応は表示されず、主に特異的反応が表示される。
【0079】
逆に、TT502感作蛍光粒子、TT503感作ラテックス粒子を使用した反応(実施例2)では、疑似的な非特異的反応が蛍光粒子同士の凝集のため、縦軸粒子の大きさ、横軸蛍光強度としたスキャッタグラム(
図5、
図7)では、
図3のイメージ図で示されたような蛍光粒子同士の非特異的反応が表示される。このように、本測定方法によれば抗体同士の結合のような非特異的反応が生じた場合に、当該非特異的反応を検出できることがわかる。
【0080】
<実施例3.蛍光粒子サイズの検証>
1.使用装置、2.抗体、4.試薬については、実施例1と同様のものを用いた。
【0081】
3.粒子
蛍光粒子:Fluoresbrite Carboxylate Microspheres(2.5% Solids-Latex),0.20μm YG(ポリサイエンス社)、FL1で検出可能
ラテックス粒子:平均粒子径0.626μm(ポリスチレン系、日本光電工業)
5.測定手順
(1)希釈:測定サンプル=100.6:2(v/v)の割合で混合した。これをサンプルミックスとする。なお、測定サンプルは、トロポニンT抗原濃度が10μg/mL,7μg/mL,4μg/mL,1μg/mL,0μg/mLとした(希釈溶媒:25mM Tris,7M Urea,15mMメルカプトエタノール,5mM EDTA 2Na,pH7.5+/-0.1。抗原はSCRIPPS社、Troponin T,Human Heart, Lyophilized(カタログNo.T1514))。
(2)サンプルミックス68.4μLを適当なチューブへ移した。
(3)37℃でプレインキュベートした。
(4)トロポニンT抗体(TT503)を化学結合により感作した0.1%(w/v)蛍光粒子(0.19μm)溶液20.3μLを68.4μLサンプルミックスに加えた。
(5)37℃で90秒反応させた。
(6)トロポニンT抗体(TT502)を物理吸着により感作した0.1%(w/v)ラテックス粒子(0.626μm)溶液20.3μLを(5)に加えた。
(7)37℃,90秒反応させた。
(8)希釈試薬1998μLへ2μLの(7)を加えた。
(9)フローサイトメーターで測定し、前方散乱光(FS)と蛍光(FL)との2パラメーターヒストグラム(FS×FL 2サイトグラム)を得た。
【0082】
結果を
図10に示す。
図4(実施例1)と
図10(実施例3)の結果を比較すると、
図4のほうが蛍光強度が高く、また、解析にて血球細胞と分離する際に有利であると考えられる。これは、実施例1で用いた蛍光粒子の平均粒子径が0.5μm以上であることに起因すると考えられる。
【0083】
本発明の実施形態を詳細に説明したが、これは説明的かつ例示的なものであって限定的ではなく、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によって解釈されるべきであることは明らかである。
【0084】
本発明は、下記態様または形態を包含する。
【0085】
1.試料中の測定対象物を検出する免疫測定方法であって、
前記測定対象物に対する特異的結合物質を固定した蛍光粒子および前記測定対象物に対する特異的結合物質を固定したラテックス粒子と、試料と、を反応させて反応物を得、
フローサイトメトリーを用いて前記反応物の大きさ情報および蛍光情報を得ることによって測定対象物を検出することを有する、免疫測定方法。
【0086】
2.前記蛍光粒子に固定した特異的結合物質と、前記ラテックス粒子に固定した特異的結合物質とが、異なる物質である、1.に記載の免疫測定方法。
【0087】
3.前記蛍光粒子に固定した特異的結合物質および前記ラテックス粒子に固定した特異的結合物質が、抗原または抗体である、1.または2.のいずれかに記載の免疫測定方法。
【0088】
4.前記蛍光粒子および前記ラテックス粒子の平均粒子径が0.5μm以上である、1.~3.のいずれかに記載の免疫測定方法。
【0089】
5.前記ラテックス粒子に対する前記蛍光粒子の平均粒子径比(蛍光粒子の平均粒子径(μm)/ラテックス粒子の平均粒子径(μm))が0.5~2.0である、1.~4.のいずれかに記載の免疫測定方法。
【0090】
6.前記大きさ情報および蛍光情報の2パラメーターヒストグラムから特異的反応を判別する、1.~5.のいずれかに記載の免疫測定方法。