(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024113376
(43)【公開日】2024-08-22
(54)【発明の名称】インソール
(51)【国際特許分類】
A43B 17/14 20060101AFI20240815BHJP
【FI】
A43B17/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023018311
(22)【出願日】2023-02-09
(71)【出願人】
【識別番号】523046372
【氏名又は名称】谷野 瑞穂
(71)【出願人】
【識別番号】523046383
【氏名又は名称】東 良高
(74)【代理人】
【識別番号】100178331
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 宏二
(72)【発明者】
【氏名】谷野 瑞穂
(72)【発明者】
【氏名】東 良高
【テーマコード(参考)】
4F050
【Fターム(参考)】
4F050EA11
(57)【要約】
【課題】 理想的な重心移動が自然にできるようになるインソールを提供することである。
【解決手段】 靴底型の樹脂製のベース板b上に隙間なく貼り付けられる、土踏まずに対応する第1支持片1と、第1支持片1において立方骨側で第1支持片に隣接する第2支持片2と、第2支持片2に隣接し、立方骨に対応する第3支持片3と、足指位置に対応し、ベース板bの先端に沿った足指支持片6と、足指支持片に隣接してベース板の幅方向全長に渡る第4支持片4と、第4支持片4と第2支持片2との間に位置する第5支持片5と、踵の外周に沿った踵外周支持片7と、踵の中央位置に対応した踵中央支持片8とを備え、全ての支持片の厚みを等しくするとともに、第2支持片2及び第4支持片4、第5支持片5及び足指支持片6、第3支持片3及び踵外周支持片7、第1支持片1、踵中央支持片8の順に、硬度が低くなるように設定されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
靴底型の樹脂製のベース板と、
上記ベース板上に隙間なく貼り付けられ、全ての厚みが等しい複数の樹脂製の支持片とからなり、
靴の内側に挿入して用いるインソールであって、
上記支持片には、
使用者の踏まずに対応する位置で、上記ベース板の内側縁に沿った第1支持片と、
上記第1支持片において上記使用者の立方骨側で上記第1支持片に隣接する第2支持片とを備え、
上記第2支持片の硬度が、上記第1支持片の硬度より高く設定されたことを特徴とするインソール。
【請求項2】
上記使用者の立方骨に対応し、上記第2支持片を境に上記第1支持片と反対側に設けられた第3支持片を備え、
上記第3支持片の硬度は、上記第1支持片の硬度と上記第2支持片の硬度との間に設定された請求項1に記載のインソール。
【請求項3】
上記使用者の足指位置に対応し、上記ベース板の先端に沿った足指支持片と、
足指の付け根に対応し、上記足指支持片に隣接して上記ベース板の幅方向全長に渡る第4支持片と
を備え、
上記第4支持の硬度は、上記足指支持片の硬度より高く設定された請求項1又は2に記載のインソール。
【請求項4】
上記第4支持片と上記第2支持片との間に第5支持片を備え、
上記第4支持片の硬度及び上記第2支持片の硬度が同等に設定されるとともに、
上記第5支持片の硬度は、上記足指支持片の硬度と同等であって、上記第2支持片及び第4支持片の硬度より低く設定された請求項3に記載のインソール。
【請求項5】
上記使用者の踵の外周に沿った位置に設けられた踵外周支持片と、
上記踵外周支持片の内側で、上記踵の中央位置に対応して設けられた踵中央支持片と
を備え、
上記踵外周支持片の硬度は、上記踵中央支持片の硬度より高く設定された請求項1に記載のインソール。
【請求項6】
靴底型の樹脂製のベース板と、
上記ベース板上に隙間なく貼り付けられ、全ての厚みが等しい複数の樹脂製の支持片とを備え、
靴の内側に挿入して用いるインソールであって、
上記支持片には、
使用者の土踏まずに対応する位置で、上記ベース板の内側縁に沿った第1支持片と、
上記第1支持片において上記使用者の立方骨側で上記第1支持片に隣接する第2支持片と、
上記使用者の立方骨に対応し、上記第2支持片を境に上記第1支持片と反対側に設けられた第3支持片と、
上記使用者の足指位置に対応し、上記ベース板の先端に沿った足指支持片と、
上記足指支持片に隣接して上記ベース板の幅方向全長に渡る第4支持片と
上記第4支持片と上記第2支持片との間に位置する第5支持片と、
上記使用者の踵の外周に沿った位置に設けられた踵外周支持片と、
上記踵外周支持片の内側で、上記踵の中央位置に対応して設けられた踵中央支持片と
を備え、
上記第4支持片の硬度は第2支持片の硬度と同等、
上記足指支持片の硬度は第5支持片の硬度と同等、
上記踵外周支持片の硬度は上記第3支持片の硬度と同等に設定されるとともに、
これらの硬度は、上記第2支持片及び第4支持片、上記第5支持片及び足指支持片、上記第3支持片及び踵外周支持片、上記第1支持片、踵中央支持片の順に、硬度が低くなるように設定されたインソール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、靴の中に挿入して用いるインソールに関する。
【背景技術】
【0002】
規制靴の履き心地や、歩行しやすさを改善するために、靴内に挿入して用いるインソールがある。このようなインソールとしては、例えば、靴底形状のベース板に、土踏まずに合わせた隆起部を形成し、この隆起部で土踏まずを持ち上げて足のアーチを支えるようにしたものが知られている(特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-054733号公報
【特許文献2】特開2003-038204号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように、土踏まずに対応した隆起部を備えたインソールでは、隆起部によって足の縦方向アーチが形成される。しかし、インソールの隆起部で下方から支持された土踏まずは形状が固定化して、縦方向アーチの弾力が発揮されないことがある。そのため、足に違和感があったり、歩行時に、スムーズな重心移動が行なわれなかったりするという問題があった。
この発明の目的は、理想的な重心移動が自然にできるようになるインソールを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の発明は、靴底型の樹脂製のベース板と、上記ベース板上に隙間なく貼り付けられ、全ての厚みが等しい複数の樹脂製の支持片とからなり、靴の内側に挿入して用いるインソールであって、上記支持片には、使用者の踏まずに対応する位置で、上記ベース板の内側縁に沿った第1支持片と、上記第1支持片において上記使用者の立方骨側で上記第1支持片に隣接する第2支持片とを備え、上記第2支持片の硬度が、上記第1支持片の硬度より高く設定されている。
【0006】
第2の発明は、上記使用者の立方骨に対応し、上記第2支持片を境に上記第1支持片と反対側に設けられた第3支持片を備え、上記第3支持片の硬度は、上記第1支持片の硬度と上記第2支持片の硬度との間に設定されている。
【0007】
第3の発明は、上記使用者の足指位置に対応し、上記ベース板の先端に沿った足指支持片と、足指の付け根に対応し、上記足指支持片に隣接して上記ベース板の幅方向全長に渡る第4支持片とを備え、上記第4支持の硬度は、上記足指支持片の硬度より高く設定されている。
【0008】
第4の発明は、上記第4支持片と上記第2支持片との間に第5支持片を備え、上記第4支持片の硬度及び上記第2支持片の硬度が同等に設定されるとともに、上記第5支持片の硬度は、上記足指支持片の硬度と同等であって、記第2支持片及び第4支持片の硬度より低く設定されている。
【0009】
第5の発明は、上記使用者の踵の外周に沿った位置に設けられた踵外周支持片と、上記踵外周支持片の内側で、上記踵の中央位置に対応して設けられた踵中央支持片とを備え、上記踵外周支持片の硬度は、上記踵中央支持片の硬度より高く設定されている。
【0010】
第6の発明は、靴底型の樹脂製のベース板と、上記ベース板上に隙間なく貼り付けられ、全ての厚みが等しい複数の樹脂製の支持片とを備え、靴の内側に挿入して用いるインソールであって、上記支持片には、使用者の土踏まずに対応する位置で、上記ベース板の内側縁に沿った第1支持片と、上記第1支持片において上記使用者の立方骨側で上記第1支持片に隣接する第2支持片と、上記使用者の立方骨に対応し、上記第2支持片を境に上記第1支持片と反対側に設けられた第3支持片と、上記使用者の足指位置に対応し、上記ベース板の先端に沿った足指支持片と、上記足指支持片に隣接して上記ベース板の幅方向全長に渡る第4支持片と上記第4支持片と上記第2支持片との間に位置する第5支持片と、上記使用者の踵の外周に沿った位置に設けられた踵外周支持片と、上記踵外周支持片の内側で、上記踵の中央位置に対応して設けられた踵中央支持片とを備え、上記第4支持片の硬度は第2支持片の硬度と同等、上記足指支持片の硬度は第5支持片の硬度と同等、上記踵外周支持片の硬度は上記第3支持片の硬度と同等に設定されている。
そして、これら支持片の硬度は、上記第2支持片及び第4支持片、上記第5支持片及び足指支持片、上記第3支持片及び踵外周支持片、上記第1支持片、踵中央支持片の順に、硬度が低くなるように設定されている。
【発明の効果】
【0011】
第1の発明によれば、土踏まずに対応する第1支持片が隣接する第2支持片より硬度が低くなるように設定されているため、足裏の中央から、内側(土踏まず側)に向かう足の回内を誘導することができる。このような回内がうまく誘導されれば、歩行時の重心移動の軌跡が第1指(拇趾)上を通り、第1指(拇趾)で最後にしっかりと地面を蹴ることができる。
【0012】
第2の発明によれば、適度な硬度の第3支持片によって立方骨を支えることができる。また、歩行開始時には、中央の第2次支持片より硬度が低い第3支持側が接地しやすく、足の外側(立方骨側)が接地する回外から回内への移行がスムーズにできる。
【0013】
第3の発明によれば、足指の付け根に対応する第4支持片の硬度が。足指部分に対応する足指支持片よりも高いので、歩行時に足指の付け根の部分で地面を蹴って強い反発力を得ることができる。指先で地面を蹴るよりも、より強く蹴ることができ、指先に負担を掛けずに強い推進力を得ることができる。
【0014】
第4の発明によれば、硬度が等しい第2支持片と第4支持片との間に、相対的に硬度が低い第5支持片が設けられていることによって、足の中央付近に比べて、その後方と前方とでより強い反発力を発揮させることができる。そのため、歩行時に踵から指先方向へ重心が移動する過程で、足の縦方向アーチに沿った重心移動がよりスムーズにできる。
【0015】
第5の発明によれば、踵の中心部に対して外周部分の硬度が高く設定されているため、踵の中心部が下方に下がっても外周部が支持片に接触し、広い面積で荷重を支えることができる。特に歩行のスタート時に踵の外側部分を地面に押しつけて前へ向かう強い推進力を得ることができる。
【0016】
第6の発明によれば、踵の外側から着地し、回外から回内へのスムーズな移行と、力強い蹴りによって推進力を得ることができ、しかも足に過度な負担をかけることがない。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、実施形態のインソールの平面図である。
【
図3】
図3は、実施形態のインソールと足の骨との位置関係を示した平面図である。
【
図4】
図4は、実施形態における各支持片の硬度の測定値を示した表である。
【
図5】
図5は、実施形態のインソールを使用した歩行時の、重心の移動軌跡を示した平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[実施形態]
この発明の一実施形態について説明する。
図1は、この実施形態のインソールSの平面図である。
図2は、
図1のインソールSのII-II線の断面図、
図3は、インソールSと足との位置関係を示した平面図、
図4は支持片の硬度の測定値を示した表、
図5は、使用者の歩行時における重心の移動軌跡を示した平面図である。
なお、
図1~3,5には右足用のインソールSを示しているが、左足用のインソールは、右足用のインソールSを線対称位置に移動させた形状である。左右のインソールは、互いに対称位置関係になる各部分の構成や機能は同じなので、以下では右足用インソールSについて説明し、左用の説明は省略する。
【0019】
この実施形態のインソールSは、
図1,2に示すように、薄板状のベース板b上に複数の薄板状の支持片1~8を並べて接着し、全体としても薄板状の平板を構成している。この実施形態では、ベース板bを使用者の足の骨格に基づいて8個のエリアに分割し、それぞれのエリア形状に一致する平面形状の支持片1~8を設けている。なお、
図3に、インソールSと使用者の足の骨との相対位置関係を示している。
【0020】
ベース板bは、樹脂製の板部材を靴底型状にしたものである。この実施形態では、厚さが1〔mm〕の発泡ポリウレタン製の平板で形成されている。
なお、このベース板bにおいて、支持片1~8を貼り付け使用者の足裏に接触する側を上面b1とし、靴底側を下面b2とする。
【0021】
ベース板bの上面b1上に配置される支持片1~8は、全て同一の厚さ約3〔mm〕であるが、それぞれに硬度が異なる部材で形成されている。支持片1~8は、全て同一の厚さであるため、支持片1~8の表面は平坦面になる。
なお、各支持片の硬度は、発泡ポリウレタン板の発泡率によって制御されている。ただし、支持片1~8の硬度の調整は、樹脂素材の種類や厚みなどによっても行なうことができる。
【0022】
上記インソールSには、
図1,3に示すように、足の土踏まず9に対応する位置に、ベース板bの内側縁に沿った形状の第1支持片1と、この第1支持片1の外側に隣接し、やや踵側よりに位置した第2支持片2とを備え、さらに上記第2支持片2より外側で立方骨10に対応する位置に第3支持片3を備えている。ここで、第2支持片2は、後述の第5支持片5と後述の踵外周支持片7との間に位置されるが、その中間部位が分断されて2つのエリアに分かれている。ただし、第2支持片2は一体化していてもよい。
そして、これら3つの支持片1~3は、中央の第2支持片2の硬度が最も高く設定され、次に第3支持片3、第1支持片1の順に硬度が低くなるように設定されている。
【0023】
また、インソールSの先端であって5本の足指に対応する位置には、足先に沿った形状の足指支持片6が設けられている。この足指支持片6と上記第2支持片との間には、第4支持片4及び第5支持片5が設けられている。
第4支持片4は、上記足指支持片6に隣接し、足指の付け根となる基節骨11(
図3参照)を支持するようにベース板bの幅方向全長にわたって上面b1上に配置されている。
第5支持片5は、上記第4支持片4と第2支持片2との間で、ベース板bの長手方向の略中央に位置し、上記第1支持片1とベース板bの外側縁との間に配置されている。
そして、足指支持片6の硬度よりも第4支持片4の硬度が高く設定されている。
【0024】
また、この実施形態では、足指支持片6と第5支持片5の硬度を同等にし、第4支持片4と第2支持片2の硬度を同等にしている。具体的は、足指支持片6と第5支持片5とを同一素材で形成し、第4支持片4と第2支持片2とを同一素材で形成している。
【0025】
さらに、踵に対応する部分には、U字状の踵外周支持片7とその内側の踵の中央位置に対応する長円状の踵中央支持片8とが設けられている。そして、使用者の踵の外周に接触する踵外周支持片7の硬度を、踵中央支持片8よりも高くしている。
この実施形態では、上記踵外周支持片7の硬度を立方骨10(
図3参照)に対応させた上記第3支持片3と同じ材質で形成して第3支持片3と同等の硬度にしている。そして、これらより高度が低い素材で踵中央支持片8が形成されている。そのため、上記全ての支持片1~8のうち踵中央支持片8が、最も硬度が低く、柔らかくなる。
【0026】
上記した8個の支持片1~8の硬度は、
図4の表に示すとおりである。この測定値は、アスカーゴム硬度計C型で、それぞれ、インソールS上で測定した値である。測定値のポイント値が大きいほど、固いことを示す。
この表に示すように、第2支持片2と第4支持片4は70〔ポイント〕、第5支持片5と足指支持片6は65〔ポイント〕、第3支持片3と踵外周支持片7は55〔ポイント〕、第1支持片1は35〔ポイント〕、踵中央支持片8は30〔ポイント〕である。そして、同一素材で形成された支持片は、同一硬度を実現している。
【0027】
ただし、上記した同一素材で形成された支持片同士は、同等の硬度を備えていればよく、必ずしも同一素材で形成する必要はない。なお、ここでいう同等の硬度とは、同程度のあるいは同ランクの硬度という意味であって、完全同一でないものも、含むものとする。
【0028】
[作用・効果等]
この実施形態のインソールSを靴に挿入して用いた場合の効果を説明する。
インソールSは、足の土踏まず9に対応した第1支持片1の硬度に対し、その外側に隣接する第2支持片2の硬度が高くされている。そのため、歩行時には、硬度が高い第2支持片2側から第1支持片1側への足の回内が起こりやすくなる。
【0029】
上記のような回内によって、重心が第1指12を通り抜けるような歩行がやりやすくなる。その結果、他の指より力強い第1指12によってより強く地面をけることができる。
また、先端側の足指支持片6よりも、第4支持片4の硬度が高く設定されているので、指先ではなく、指の付け根部分(基節骨11)で荷重を支え、強い反発力を前方への推進力とすることができる。
なお、
図3には、二点鎖線によって第1指12及び第2指13のおおよその位置を示している。
【0030】
さらに、最も硬度が高い、第4支持片4と第2支持片2との間に、これら支持片2,4より少し硬度が低い第5支持片5を設けることによって、より硬い第2支持片2の反発力を利用でき、重心が後方(踵側)から足先側へ移動する際に推進力を得やすくしている。
【0031】
また、踵外周支持片7が踵中央支持片8よりも固いため、踵の中央部が下方に下がっても外周部が踵外周支持片7に接触し、広い面積で荷重を支えることができる。
特に、スタート時には、踵外周支持片7において踵の外側部分を地面に押しつけて前へ向かう強い推進力を得ることができる。
【0032】
このように、この実施形態のインソールSを使用すれば、踵の外側から着地し、回外から回内へスムーズに移行し、第1指12で強く地面を蹴って進む、理想的な歩行に近づけることができる。このような理想的な歩行の際には、すなわち、重心は、踵のやや外側から足先に向かう過程で、足の回外及び回内によって足の内側である第1指12の方向に曲がる、
図5に示した実線の曲線C1のようになる。
【0033】
一方、推進力が弱く、足のアーチが不完全で理想的な歩行ができない被験者の重心の移動軌跡は、
図5に破線で示した曲線C2のようになる。この曲線は、被験者が上記インソールSの代わりに、ベース板bと同一素材のみで形成したインソールを使用して測定している。
この曲線C2は、踵の外側ではなく、踵の中央を通り、第2指13までほぼ直線的に連続している。つまり回内が起こらず、第1指12で地面を強く蹴ることができていない。
このような被験者が上記インソールSを使用したところ、重心の移動は理想的な曲線C1に矯正された。
なお、上記曲線C1,C2は、Footmaxx社製の足圧測定器によって計測した。
【0034】
上記のように、この実施形態のインソールSでは、スムーズな回内を誘導するため、硬度が高い第2支持片2と、硬度が低い第1支持片1との硬度差が必要である。回内誘導のためには、足の外側で立方骨10に対応して位置する第3支持片3は必須ではなく、その部分を第2支持片2で構成してもよい。
ただし、上記のように、第2支持片2よりも硬度が低い第3支持片3を設けることで、歩行スタート時の回外を誘導することもできる。そして、第3支持片3の硬度は、第1支持片1よりも高く軟らか過ぎないため、立方骨10を適度に支えることができる。また、第3支持片3が、より高度が低い第1支持片1側へ回転する回内運動をやりにくくすることもない。
【0035】
上記インソールSは、ベース板bの上面b1上に、均一厚さの支持片を敷き詰めることによって、その表面が平坦面になっている。このように、使用者の足裏に接触する面に凹凸がないため、足裏に、凹凸による刺激や違和感を与えることがない。各支持片の硬度差によって、無意識のうちに、使用者の歩行を理想的な歩行に近づけることができる。上記硬度差も、極端にする必要はない。特に、踏まずに対応した第1支持片1が他の支持片から突出せず隆起していないので、土踏まずの形状を固定化することも抑制し、縦方向アーチの弾力を発揮させることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
様々な既成靴に挿入して使用することができる。
【符号の説明】
【0037】
S インソール
b ベース板
1~5 第1~第5支持片
6 足指支持片
7 踵外周支持片
8 踵中央支持片
9 土踏まず
10 立方骨
11 (足指の付け根)基節骨
12 第1指
13 第2指