(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024113377
(43)【公開日】2024-08-22
(54)【発明の名称】エレベータの制御装置
(51)【国際特許分類】
B66B 1/06 20060101AFI20240815BHJP
B66B 3/00 20060101ALI20240815BHJP
【FI】
B66B1/06 A
B66B3/00 L
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023018312
(22)【出願日】2023-02-09
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-11-15
(71)【出願人】
【識別番号】000112705
【氏名又は名称】フジテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000970
【氏名又は名称】弁理士法人 楓国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】谷口 友宏
(72)【発明者】
【氏名】玉置 亜由美
(72)【発明者】
【氏名】井上 祐紀
【テーマコード(参考)】
3F303
3F502
【Fターム(参考)】
3F303CB24
3F502HB04
3F502JA56
3F502KA02
(57)【要約】
【課題】エレベータにおいて利用者が受け得る不快感を低減することが可能な制御技術を提供する。
【解決手段】制御装置は、次のようなエレベータに適用可能である。そのエレベータは、かごドア及び各階の乗場ドアに、各階への乗りかごの到着時に互いに対向した位置関係になる第1窓及び第2窓がそれぞれ設けられている。そして、制御装置は、位置判定処理部と、照度制御処理部と、を備える。位置判定処理部は、乗りかごが停止予定階に到着する前に、第1窓が、当該停止予定階の乗場ドアに設けられている第2窓と対向し始める対向開始位置に到達したか否か、を判定する。照度制御処理部は、乗りかごが停止予定階に到着する際に第1漸増処理を実行する照度制御処理部であり、当該第1漸増処理では、第1窓が対向開始位置に到達したと位置判定処理部が判定した場合に、その時点からの所定期間で、乗りかご内の照度を第1所定値から第2所定値まで漸増させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
かごドア及び各階の乗場ドアに、各階への乗りかごの到着時に互いに対向した位置関係になる第1窓及び第2窓がそれぞれ設けられており、且つ、前記乗りかご内の照度を調整することが可能なエレベータに適用可能な制御装置であって、
前記乗りかごが停止予定階に到着する前に、前記第1窓が、当該停止予定階の乗場ドアに設けられている前記第2窓と対向し始める対向開始位置に到達したか否か、を判定する位置判定処理部と、
前記乗りかごが前記停止予定階に到着する際に第1漸増処理を実行する照度制御処理部であり、当該第1漸増処理では、前記第1窓が前記対向開始位置に到達したと前記位置判定処理部が判定した場合に、その時点からの所定期間で、前記乗りかご内の照度を第1所定値から第2所定値まで漸増させる照度制御処理部と、
を備える、エレベータの制御装置。
【請求項2】
前記乗りかごに利用者が乗車しているか否か判定する乗車判定処理部、
を更に備え、
前記照度制御処理部は、前記乗りかごに利用者が乗車していないと前記乗車判定処理部が判定した場合であって、且つ、その乗りかごが前記停止予定階に到着する際に、前記第1漸増処理を実行する、請求項1に記載のエレベータの制御装置。
【請求項3】
前記照度制御処理部は、前記乗りかごに利用者が乗車していないと前記乗車判定処理部が判定した場合であって、且つ、その乗りかごが前記停止予定階以外の階を通過する際には、当該乗りかごの照度を、その乗りかごが通過する階の乗場の照度以下の値に制御する照度抑制処理を実行する、請求項2に記載のエレベータの制御装置。
【請求項4】
乗場の照度が基準値より低いか否かを判定する照度判定処理部、
を更に備え、
前記照度制御処理部は、前記停止予定階の乗場の照度が前記基準値より低いと前記照度判定処理部が判定した場合であって、且つ、その停止予定階に前記乗りかごが到着する際に、前記第1漸増処理を実行する、請求項1~3の何れかに記載のエレベータの制御装置。
【請求項5】
前記照度制御処理部は、前記乗りかごが前記停止予定階に到着する際に、前記第1漸増処理の実行によって当該乗りかご内の照度を前記第2所定値まで漸増させた場合、当該停止予定階への前記乗りかごの到着後、その階にて当該乗りかごに利用者が乗車した場合、又は、その階から当該乗りかごが移動を開始した場合に、その乗りかご内の照度を、前記第2所定値から第3所定値まで更に漸増させる第2漸増処理を実行する、請求項1~3の何れかに記載のエレベータの制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベータにおいて乗りかご内の照度を調整する制御技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のエレベータにおいては、乗りかご内の照度は、当該乗りかご内に設けられた照明装置の明るさによって決まる一定の照度になっていることが多かった。一方、乗場の照度は階ごとに異なっていることが多い。そして、乗りかご内と乗場との間に照度差があると、乗降口のドア(かごドア及び乗場ドア)が開いたときに、その照度差が、乗りかご内の利用者や乗場の利用者に対して眩しさや暗さといった不快感を与えることがあった。
【0003】
そこで、乗りかご内と乗場との照度差に目を徐々に順応させることを可能にするべく、乗降口のドアが開く速度(戸開速度)を当該照度差に応じて変化させる制御技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、乗降口のドア(かごドア及び乗場ドア)には、乗場からの乗りかご内の視認を可能にする防犯窓が設けられていることがある。このような防犯窓が設けられているエレベータにおいては、乗りかご内と乗場との間に照度差があると、乗降口のドアが開く前であっても、乗りかご内の利用者や乗場の利用者は、防犯窓を通じて、その照度差に起因した眩しさや暗さといった不快感を受けるおそれがある。
【0006】
そこで本発明の目的は、エレベータにおいて利用者が受け得る不快感を低減することが可能な制御技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る制御装置は、次のようなエレベータに適用可能である。そのエレベータは、かごドア及び各階の乗場ドアに、各階への乗りかごの到着時に互いに対向した位置関係になる第1窓及び第2窓がそれぞれ設けられており、且つ、乗りかご内の照度を調整することが可能である。そして、制御装置は、位置判定処理部と、照度制御処理部と、を備える。位置判定処理部は、乗りかごが停止予定階に到着する前に、第1窓が、当該停止予定階の乗場ドアに設けられている第2窓と対向し始める対向開始位置に到達したか否か、を判定する。照度制御処理部は、乗りかごが停止予定階に到着する際に第1漸増処理を実行する照度制御処理部であり、当該第1漸増処理では、第1窓が対向開始位置に到達したと位置判定処理部が判定した場合に、その時点からの所定期間で、乗りかご内の照度を第1所定値から第2所定値まで漸増させる。
【0008】
上記制御装置によれば、第1漸増処理の実行により、乗りかご1内の照度を、第1窓が対向開始位置に到達した時点からの所定期間で、第1所定値から第2所定値まで徐々に上昇させることができる。従って、乗場の利用者は、自身の目を、窓(第1窓及び第2窓)を通じて認識できる乗りかご1内の照度の変化に追従させて順応させることができる。換言すれば、乗りかご内の照度(=第2所定値)と乗場の照度との間に差(照度差)がある場合でも、当該乗場の利用者は、窓を通じて乗りかご内の照度に目を順応させることができる。よって、乗りかご内と乗場との照度差に起因して当該乗場の利用者が受け得る眩しさといった不快感を低減することが可能になる。
【0009】
上記制御装置は、乗りかごに利用者が乗車しているか否か判定する乗車判定処理部を更に備えていてもよい。この構成において、第1漸増処理は、乗りかごに利用者が乗車していないと乗車判定処理部が判定した場合であって、且つ、その乗りかごが停止予定階に到着する際に、照度制御処理部によって実行されてもよい。この構成によれば、乗りかご内の照度の変化によって生じ得る不快感を当該乗りかご内の利用者に与えてしまう、といったことがなくなる。
【0010】
上記制御装置において、照度制御処理部は、乗りかごに利用者が乗車していないと乗車判定処理部が判定した場合であって、且つ、その乗りかごが停止予定階以外の階を通過する際には、当該乗りかごの照度を、その乗りかごが通過する階の乗場の照度以下の値に制御する照度抑制処理を実行してもよい。この構成によれば、乗りかごが通過する階の乗場の利用者が、窓(第1窓及び第2窓)を通じて乗りかごから漏れ出た光を眩しく感じる、といったことがなくなる。
【0011】
上記制御装置は、乗場の照度が基準値より低いか否かを判定する照度判定処理部を更に備えていてもよい。この構成において、第1漸増処理は、停止予定階の乗場の照度が基準値より低いと照度判定処理部が判定した場合であって、且つ、その停止予定階に乗りかごが到着する際に、照度制御処理部によって実行されてもよい。この構成によれば、乗りかご内の照度を第2所定値にした状態のまま当該乗りかごを停止予定階に到着させたとすると、当該停止予定階の乗場の利用者が、乗りかご内と照度差に起因した眩しさを感じる可能性が高い場合にだけ、第1漸増処理を行うことが可能になる。よって、乗場の利用者が眩しさを感じる可能性がない場合にまで第1漸増処理を実行するといった無駄がなくなる。
【0012】
上記制御装置において、照度制御処理部は、乗りかごが停止予定階に到着する際に、第1漸増処理の実行によって当該乗りかご内の照度を第2所定値まで漸増させた場合、当該停止予定階への乗りかごの到着後、その階にて当該乗りかごに利用者が乗車した場合、又は、その階から当該乗りかごが移動を開始した場合に、その乗りかご内の照度を、第2所定値から第3所定値まで更に漸増させる第2漸増処理を実行してもよい。この構成によれば、第1漸増処理と第2漸増処理の2段階で乗りかご内の照度を第3所定値まで上昇させることにより、当該乗りかご内の照度を、第1漸増処理だけで第3所定値まで上昇させる場合よりもゆっくりと上昇させることができる。よって、利用者は、乗りかご内の照度(=第3所定値)に目を順応させやすくなる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、エレベータにおいて利用者が受け得る不快感を低減することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】エレベータの全体構成を例示した概念図である。
【
図2】(A)各階への乗りかごの到着時における第1窓と第2窓との位置関係を示した概念図、及び(B)第1窓が対向開始位置に到達したときの状態を示した概念図である。
【
図3】実施形態においてエレベータ制御装置が実行する制御処理を示したフローチャートである。
【
図4】第1変形例においてエレベータ制御装置が実行する制御処理を示したフローチャートである。
【
図5】第3変形例においてエレベータ制御装置が実行する制御処理を示したフローチャートである。
【
図6】第4変形例においてエレベータ制御装置が実行する制御処理を示したフローチャートである。
【
図7】第5変形例においてエレベータ制御装置が実行する制御処理を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[1]実施形態
[1-1]エレベータの全体構成
図1は、エレベータの全体構成を例示した概念図である。
図1の例では、エレベータは、乗りかご1と、各階に設けられた乗場2と、エレベータ制御装置3と、を備えている。このエレベータにおいて、乗降口のドアを構成する乗りかご1側のドア(かごドア10)及び各階の乗場2側のドア(乗場ドア20)には、
図2(A)に示されるように、各階への乗りかご1の到着時に互いに対向した位置関係になる第1窓10w及び第2窓20w(防犯や展望などの用途で設けられた窓)がそれぞれ設けられている。更に、このエレベータは、乗りかご1内の照度Qを調整することが可能となるように構成されている。そして、エレベータ制御装置3は、そのようなエレベータに適用可能な本発明の一実施形態を構成している。以下、各部の構成について具体的に説明する。
【0016】
<乗りかご>
乗りかご1には、かごドア10に加えて、当該乗りかご1内を照らす照明装置11と、行先階ボタン12と、乗車判定用センサ13と、が設けられている。
【0017】
本実施形態では、照明装置11は、蛍光灯やLEDなどの光源を備え、且つ、当該光源の明るさの調整(調光)が可能な照明装置である。そして、この照明装置11の明るさがエレベータ制御装置3によって制御されることにより、乗りかご1内の照度Qが調整される。
【0018】
行先階ボタン12は、乗りかご1に乗車した利用者が自身の行先階Fdを登録するためのボタンであり、行先階Fdごとに1つずつ設けられている。そして、乗りかご1内にて行先階ボタン12が押されるごとに、その行先階ボタン12に対応した行先階Fd(即ち、乗りかご1内にて登録された行先階Fd)が、停止予定階Fsとして乗りかご1に対応付けられていく。一方、当該停止予定階Fs(ここでは、登録された行先階Fd)のうちの乗りかご1の到着が完了したものは、当該乗りかご1との対応付けから消去されていく。このような停止予定階Fsについての乗りかご1との対応付け及び当該対応付けからの消去は、その乗りかご1を制御するエレベータ制御装置3によって管理される。
【0019】
乗車判定用センサ13は、乗りかご1に利用者が乗車しているか否かを判定するための判定用信号Sjを出力するセンサである。一例として、乗車判定用センサ13は、乗りかご1内の利用者の体重や人数に応じて変化する当該乗りかご1内の荷重を測定するロードセルである。他の例として、乗車判定用センサ13は、乗りかご1への乗車時又は乗りかご1からの降車時における利用者の通過を検知する光センサである。そして、判定用信号Sjは、後述のエレベータ制御装置3が行う乗車判定処理にて用いられる。尚、乗車判定用センサ13は、乗りかご1に利用者が乗車しているか否かを判定できる信号を出力できるものであれば、ロードセルや光センサに限定されない別のセンサに適宜変更されてもよい。
【0020】
<乗場>
各階の乗場2には、乗場ドア20に加えて、乗場呼びボタン21と、照度センサ22と、が設けられている。
【0021】
乗場呼びボタン21は、乗場2にて利用者が、その乗場2が設けられている階(乗車階Fe)まで乗りかご1を呼ぶためのボタンである。一例として、乗車階Feから上階と下階のどちらへ移動したいのかを利用者が選択できるように、上向き呼びボタンと下向き呼びボタン(但し、最下階では上向き呼びボタンのみ、また、最上階では下向き呼びボタンのみ)が、乗場呼びボタン21として設けられる。
【0022】
そして、上述した行先階Fdだけでなく、乗場呼びボタン21が押された階(即ち、乗場呼びが行われた階(乗車階Fe))も、停止予定階Fsとして乗りかご1に対応付けられていく。一方、当該停止予定階Fs(ここでは、乗場呼びが行われた階)のうちの乗りかご1の到着が完了したものは、当該乗りかご1との対応付けから消去されていく。このような停止予定階Fsについての乗りかご1との対応付け及び当該対応付けからの消去は、その乗りかご1を制御するエレベータ制御装置3によって管理される。
【0023】
照度センサ22は、乗場2の照度Qを測定するためのセンサである。ここで、乗場2の照度Qは、当該乗場2に設けられている照明装置の明るさや、その乗場2に別の場所から光(太陽光や照明光)が差し込む場合には当該光の明るさなどに依存する。このため、乗場2の照度Qは、階ごとに、更には時間帯ごとに異なっていることが多い。照度センサ22は、そのように階や時間帯ごとに変化する乗場2の照度Qを測定することができる。
【0024】
尚、照度センサ22は、乗りかご1内に設けられていてもよい。この場合、各階の乗場2の照度Qは、その階に乗りかご1が到着して乗降口のドア(かごドア10及び乗場ドア20)が開かれたときに、当該乗りかご1内の照度センサ22によって測定することができ、そのときの測定で得た測定値は、過去のデータ(履歴)として用いることができる。具体的には、乗りかご1内の照度センサ22で測定された各階の乗場2の照度Qは、過去のデータ(履歴)として、以下で説明するエレベータ制御装置3の記憶部31に保存することができる。そして、後述する照度制御処理内の第1漸増処理などで使用するパラメータ(第1所定値Qt1、第2所定値Qt2など)を設定する際や、当該照度制御処理内の照度判定処理を実行する際に、直近のデータや同時間帯のデータを、記憶部31から読み出して用いることができる。
【0025】
<エレベータ制御装置>
エレベータ制御装置3は、乗りかご1を制御する装置であり、記憶部31と制御部32とを備えている。尚、エレベータにおいて乗りかご1が複数設けられている場合には、エレベータ制御装置3は、当該複数の乗りかご1に対して1つずつ設けられ、自身に対応する乗りかご1を制御する。
【0026】
記憶部31は、ROMやRAMなどの記憶デバイスで構成された部分であり、当該記憶部31には、制御処理に必要な情報が保存される。
【0027】
本実施形態では、制御処理に必要な情報の1つとして、乗りかご1に対応付けられた停止予定階Fs(登録された行先階Fd又は乗場呼びが行われた階(乗車階Fe))が、記憶部31に保存されていく。具体的には、行先階Fdの登録又は乗場呼びがあった場合に、その都度、登録された行先階Fd又は乗場呼びが行われた階(乗車階Fe)が停止予定階Fsとして記憶部31に保存されていく。その一方で、当該停止予定階Fsのうちの乗りかご1の到着が完了したものは、記憶部31から削除されていく。このように、記憶部31への停止予定階Fsの保存及び消去により、乗りかご1に対応付けられている停止予定階Fsがリアルタイムで管理される。
【0028】
また、記憶部31には、制御処理に必要な情報として、照度センサ22が取得した各階の乗場2の照度Qなどの情報も保存される。尚、制御処理に必要な情報は、以下に説明する各種処理にて用いられる情報であり、必要に応じて、それらの情報の一部又は全部が記憶部31に保存される。
【0029】
制御部32は、CPUなどの処理デバイスで構成された部分であり、制御処理として、搬送処理と、乗車判定処理と、位置判定処理と、照度制御処理と、を実行する。以下、各処理の内容について具体的に説明する。尚、より詳細な内容(制御の流れなど)については後述する。
【0030】
搬送処理では、制御部32は、乗りかご1を、当該乗りかご1に対応付けられている停止予定階Fsへ順に移動させる。具体的には、制御部32は、パルスエンコーダ(不図示)の出力値に基づいて駆動モータ(不図示)を制御することにより、乗りかご1の位置や速度などを制御する。
【0031】
乗車判定処理では、制御部32は、乗りかご1に利用者が乗車しているか否かを判定する。具体的には、制御部32は、乗車判定用センサ13から判定用信号Sjを取得し、その判定用信号Sjのデータに基づいて、乗りかご1に利用者が乗車しているか否かを判定する。一例として、乗車判定用センサ13がロードセルである場合、制御部32は、当該ロードセルから得られる判定用信号Sjに基づいて、乗りかご1内の荷重が、乗りかご1が空の状態(利用者が乗車していない状態)であるときの値から増加したか否かを判断することにより、乗りかご1に利用者が乗車しているか否かを判定することができる。他の例として、乗車判定用センサ13が撮像センサである場合、制御部32は、当該撮像センサから得られる画像データを判定用信号Sjとして用い、当該判定用信号Sjに基づいて(具体例として判定用信号Sjを用いた画像認識により)、乗車した利用者の人数と、降車した利用者の人数とを検知することができる。そして、制御部32は、乗車した利用者の検知数が降車した利用者の検知数より多いか否かを判断することにより、乗りかご1に利用者が乗車しているか否かを判定することができる。
【0032】
位置判定処理では、制御部32は、乗りかご1が停止予定階Fsに到着する前に、第1窓10wが、当該停止予定階Fsの乗場ドア20に設けられている第2窓20wと対向し始める対向開始位置Pf(
図2(B)参照)に到達したか否か、を判定する。
【0033】
具体的には、対向開始位置Pfは、第1窓10wの端縁のうちの乗りかご1の進行方向において先頭になる部分が、第2窓20wに対向し始める位置である。また、制御部32は、対向開始位置Pfに対応した乗りかご1の位置Pfx(即ち、第1窓10wが対向開始位置Pfに到達したときの乗りかご1の位置)に当該乗りかご1が到達したか否かを判断することにより、第1窓10wが対向開始位置Pfに到達したか否かを判定する。ここで、対向開始位置Pfに対応した乗りかご1の位置Pfxは、階ごとに設定され、各階の位置Pfxの情報が記憶部31に予め保存される。
【0034】
照度制御処理は、乗りかご1が停止予定階Fsに到着する際に制御部32が実行する第1漸増処理を含んでいる。当該第1漸増処理では、制御部32は、位置判定処理にて「到達した(Yes)」と判定できた場合に、その時点からの所定期間Dtで、乗りかご1内の照度Qを第1所定値Qt1から第2所定値Qt2まで漸増させる。ここで、所定期間Dtは、乗りかご1が停止予定階Fsに到着するまでの期間である。尚、所定期間Dtは、乗りかご1が停止予定階Fsに到着してかごドア10が全開になるまでの期間に変更されてもよい。
【0035】
本実施形態では、制御部32は、乗りかご1が停止予定階Fsに到着する際に常に第1漸増処理を実行するのではなく、その乗りかご1が空の状態である場合にだけ、第1漸増処理を実行する。ここで、乗りかご1が空の状態であるか否かは、制御部32が、上述した乗車判定処理を適宜実行することによって判断することができる。具体的には、制御部32は、乗車判定処理にて「乗車していない(No)」と判定した場合には、その判定を以て、乗りかご1は「空の状態である(Yes)」と判断することができ、その一方で、乗車判定処理にて「乗車している(Yes)」と判定した場合には、その判定を以て、乗りかご1は「空の状態でない(No)」と判断することができる。
【0036】
乗りかご1が空の状態である場合(即ち、乗りかご1に利用者が乗車していない場合)には、乗りかご1内の照度Qを変化させたとしても、その変化によって生じ得る不快感を当該乗りかご1内の利用者に与えてしまう、といったことにはならない。一方、第1窓10wが対向開始位置Pfに到達した時点で乗りかご1内の照度Qが乗場2の照度Qzより高いと、乗場2の利用者は、第1窓10wが対向開始位置Pfに到達した直後に窓(第1窓10w及び第2窓20w)を通じて乗りかご1から漏れ出す光を眩しく感じるおそれがある。
【0037】
そこで、本実施形態では、窓から突然漏れ出した光を乗場2の利用者が眩しく感じて不快感を受けることがないように、上述した第1漸増処理において、第1所定値Qt1が、照明装置11を消灯にしたときの乗りかご1内の照度Qx(以下、「消灯時の照度Qx」と称す)又はそれに近い低照度に設定されている。また、第2所定値Qt2が、乗場2の照度Qzより高い値(本実施形態では、照明装置11を全灯にしたときの乗りかご1内の照度Qy(以下、「全灯時の照度Qy」と称す))に設定されており、当該第2所定値Qt2まで乗りかご1内の照度Qを徐々に上昇させることにより、乗場2の利用者は、窓を通じて乗りかご1内の照度Qに目を順応させることが可能になっている。このようにして、乗りかご1内と乗場2との照度差に起因して当該乗場2の利用者が受け得る眩しさといった不快感を低減することが可能になっている。尚、詳細については後述する。
【0038】
上述した搬送処理、乗車判定処理、位置判定処理、及び照度制御処理は、処理ごとに、制御部32内に構築される処理部によって実行される。
図1では、そのような処理部として、搬送処理部320、乗車判定処理部321、位置判定処理部322、及び照度制御処理部323が示されている。本実施形態では、当該処理部は、制御部32にプログラムを実行させることによってソフトウェアで構成される。そして、そのようなプログラムは、携帯可能な記憶媒体(例えば、フラッシュメモリ等)に読取可能な状態で保存され、当該記憶媒体から読み出されてインストールされたものがエレベータ制御装置3の記憶部31に保存されてもよいし、他のサーバなどにダウンロード可能に保存され、当該サーバからダウンロードされてインストールされたものが記憶部31に保存されてもよい。尚、上記の処理部は、エレベータ制御装置3内に回路を構築することによってハードウェアで構成されてもよい。
【0039】
[1-2]制御処理
上述したエレベータにおいて、乗場2の利用者が受け得る眩しさといった不快感を低減することを可能にする処理が、エレベータ制御装置3によって以下のとおり実行される。
【0040】
図3は、エレベータ制御装置3が実行する制御処理を示したフローチャートであり、次のような事象が現れた時点からの制御処理の流れを示したものである。その事象とは、乗りかご1が、何れかの階から、乗場呼びが行われた別の階(乗車階Fe)へ向けて、空の状態(利用者が乗車していない状態)で移動を開始したという事象である。ここで、この事象が現れたか否かの判断は制御部32によって行われ、その際、制御部32は、上述した乗車判定処理を適宜実行することにより、その判定結果を以て、乗りかご1が空の状態であるか否かを判断することができる。
【0041】
上記の事象が現れた場合、制御部32は、先ず、照明装置11の明るさを制御することにより、乗りかご1内の照度Qを第1所定値Qt1に一致させる(照度制御処理。ステップS101)。本実施形態では、第1所定値Qt1は、消灯時の照度Qx又はそれに近い低照度に設定されている。ここで、ステップS101の前から乗りかご1内の照度Qが第1所定値Qt1に一致していた場合には、ステップS101では、制御部32は、乗りかご1内の照度Qをそのまま維持する。
【0042】
その後、乗りかご1が停止予定階Fs(ここでは、乗場呼びが行われた階(乗車階Fe))に到着する前に、第1窓10wが、当該停止予定階Fsの乗場ドア20に設けられている第2窓20wと対向し始めると、その停止予定階Fsの乗場2の利用者は、それらの窓を通じて乗りかご1内の明るさを認識することが可能になる。本実施形態では、ステップS101にて乗りかご1内の照度Qが第1所定値Qt1(本実施形態では、消灯時の照度Qx又は低照度)に一致するように制御されているため、乗場2の利用者は、窓を通じて乗りかご1内の明るさを認識できるようになったとしても、その明るさを眩しく感じて不快感を受けることはない。
【0043】
一方、乗りかご1が停止予定階Fsに到着する時点、或いは、乗りかご1が停止予定階Fsに到着してかごドア10が全開になる時点までには、当該停止予定階Fsの乗場2の利用者が乗りかご1内を暗く感じて不快感を受けることがないように、乗りかご1内の照度Qを上昇させる必要がある。しかし、かごドア10が開く前であっても、乗場2の利用者は、窓(第1窓10w及び第2窓20w)を通じて乗りかご1内の照度Qの変化を認識できるため、乗りかご1内の照度Qを急激に上昇させてしまうと、その利用者は、乗りかご1内の照度Qの急激な変化に目を追従させることができず、乗りかご1内の照度Qに対して眩しさといった不快感を受けるおそれがある。
【0044】
そこで本実施形態では、制御部32は、第1窓10wが対向開始位置Pfに到達した時点から乗りかご1内の照度Qを漸増させる。以下、具体的に説明する。
【0045】
制御部32は、乗りかご1が停止予定階Fsに到着する前に、第1窓10wが対向開始位置Pfに到達したか否かを判定する(位置判定処理。ステップS102)。ここで、対向開始位置Pfは、第1窓10wが、停止予定階Fsの乗場ドア20に設けられている第2窓20wと対向し始める位置である。具体的には、制御部32は、パルスエンコーダ(不図示)の出力値から得られる乗りかご1の現在位置に基づいて、対向開始位置Pfに対応した乗りかご1の位置Pfx(即ち、第1窓10wが対向開始位置Pfに到達したときの乗りかご1の位置)に当該乗りかご1が到達したか否かを判断することにより、第1窓10wが対向開始位置Pfに到達したか否かを判定する。
【0046】
制御部32は、ステップS102にて「到達した(Yes)」と判定できるまで、当該ステップS102を繰り返し実行する。そして、制御部32は、ステップS102にて「到達した(Yes)」と判定できた場合、その時点からの所定期間Dtで、乗りかご1内の照度Qを第1所定値Qt1から第2所定値Qt2まで漸増させる(第1漸増処理。ステップS103)。本実施形態では、所定期間Dtは、乗りかご1が停止予定階Fsに到着するまでの期間である。また、第2所定値Qt2は、全灯時の照度Qyに設定されている。尚、所定期間Dtは、乗りかご1が停止予定階Fsに到着してかごドア10が全開になるまでの期間に変更されてもよい。
【0047】
第1漸増処理(ステップS103)によれば、乗りかご1内の照度Qを、第1窓10wが対向開始位置Pfに到達した時点からの所定期間Dtで、第1所定値Qt1(本実施形態では、消灯時の照度Qx又は低照度)から第2所定値Qt2(本実施形態では、全灯時の値)まで徐々に上昇させることができる。従って、乗場2の利用者は、自身の目を、窓(第1窓10w及び第2窓20w)を通じて認識できる乗りかご1内の照度Qの変化に追従させて順応させることができる。換言すれば、乗りかご1内の照度Q(=第2所定値Qt2)と乗場2の照度Qとの間に差(照度差)がある場合でも、当該乗場2の利用者は、窓を通じて乗りかご1内の照度Qに目を順応させることができる。よって、乗りかご1内と乗場2との照度差に起因して当該乗場2の利用者が受け得る眩しさといった不快感を低減することが可能になる。
【0048】
その後、制御部32は、乗りかご1が停止予定階Fsに到着したか否かを判断し(ステップS104)、「到着した(Yes)」と判定できるまで、当該ステップS104を繰り返し実行する。そして、制御部32は、ステップS104にて停止予定階Fsに「到着した(Yes)」と判断できた場合、その階で乗りかご1が空の状態になったか否かを判断する(ステップS105)。具体的には、制御部32は、利用者の乗降が完了したと推定される時点(例えば、停止予定階Fsへの到着から所定時間が経過した時点など)で乗車判定処理を実行することにより、そのときの判定結果を以て、乗りかご1が空の状態になったか否かを判断することができる。
【0049】
制御部32は、ステップS105にて「空の状態になっていない(No)」と判断した場合、照明装置11を全灯にしたまま(本実施形態では、乗りかご1内の照度Qを第2所定値Qt2に一致させたまま)維持する(ステップS106)。そして、制御部32は、乗りかご1が停止予定階Fsに停止するごとにステップS105を実行し、当該ステップS105にて「空の状態になった(Yes)」と判断できるまで、照明装置11を全灯にしたまま維持する(ステップS106)。これにより、乗りかご1内の照度Qの変化によって生じ得る不快感を当該乗りかご1内の利用者に与えてしまう、といったことがなくなる。
【0050】
制御部32は、ステップS105にて「空の状態になった(Yes)」と判定した場合には、制御処理を終了させる。
【0051】
[2]変形例
[2-1]第1変形例
上述した制御処理は、第1漸増処理が、乗りかご1が空の状態で向かう停止予定階Fsの乗場2の照度Qzが基準値Qs1より低い場合にだけ実行されるものに適宜変更されてもよい。ここで、基準値Qs1は、乗降口のドア(かごドア10及び乗場ドア20)を閉じた状態で、乗りかご1内の照度Qを第2所定値Qt2(例えば、全灯時の照度Qy)にする一方で、乗場2の照度Qzを低下させていったときに、乗場2の利用者が、当該乗場2との照度差に起因した眩しさを、窓(第1窓10w及び第2窓20w)を通じて感じ始める照度Qzである。
【0052】
図4は、第1変形例においてエレベータ制御装置3が実行する制御処理を示したフローチャートである。制御部32は、先ず、乗りかご1が向かう停止予定階Fsの乗場2の照度Qzが基準値Qs1より低いか否かを判定する(照度判定処理。ステップS100A)。ここで、照度判定処理は、位置判定処理などと同様、制御部32内に構築される処理部(照度判定処理部(不図示))によって実行される。
【0053】
そして、制御部32は、ステップS100Aにて「低い(Yes)」と判定した場合に、ステップS101からの処理を実行する。
【0054】
一方、制御部32は、ステップS100Aにて「低くない(No)」と判定した場合には、乗りかご1内の照度Qを第2所定値Qt2に一致させる(照度制御処理。ステップS100B)。その後、制御部32は、ステップS104からの処理を実行する。
【0055】
このような制御処理によれば、乗りかご1内の照度Qを第2所定値Qt2にした状態のまま当該乗りかご1を停止予定階Fsに到着させたとすると、当該停止予定階Fsの乗場2の利用者が、乗りかご1内との照度差に起因した眩しさを感じる可能性が高い場合にだけ、第1漸増処理を行うことが可能になる。よって、乗場2の利用者が眩しさを感じる可能性がない場合にまで第1漸増処理を実行するといった無駄がなくなる。
【0056】
[2-2]第2変形例
上述した第1漸増処理において、第1所定値Qt1及び第2所定値Qt2は、乗場2の利用者が窓(第1窓10w及び第2窓20w)を通じて乗りかご1内の照度Qに目を順応させることが可能になるものであれば、Qt1=Qx又は低照度、Qt2=Qyである場合に限らず、別の値に適宜変更されてもよい。
【0057】
一例として、第1所定値Qt1は、乗りかご1が空の状態で向かう停止予定階Fsの乗場2の照度Qzに設定されてもよい(Qt1=Qz)。停止予定階Fsの乗場2の利用者は、当該乗場2の照度Qzに目が慣れているため、同じ照度Qzの光が突然に目に飛び込んできたとしても眩しさを感じにいく。そして、その乗場2の照度Qzから乗りかご1内の照度Qを漸増させることにより、乗りかご1内の照度Qを、消灯時の照度Qxから上昇させる場合よりもゆっくりと上昇させることができる。よって、乗場2の利用者は、乗りかご1内の照度Q(=第2所定値Qt2)に目を順応させやすくなる。
【0058】
他の例として、第2所定値Qt2は、乗りかご1内の全灯時の照度Qyと停止予定階Fsの乗場2の照度Qz(<Qy)との間の照度Qr(Qz<Qr<Qy)に設定されてもよい(Qt2=Qr)。例えば、乗場2の照度Qzが全灯時の照度Qより著しく低い場合には、乗りかご1内の照度Qを所定期間Dtで漸増させたとしても、全灯時の照度Qyまで上昇させると、眩しさといった不快感を乗場2の利用者に与えてしまうおそれがある。このような場合、第2所定値Qt2を全灯時の照度Qyより低い値に設定しておくことにより、乗場2の利用者は、眩しさといった不快感を受けることなく、乗場2の照度Qzより高い乗りかご1内の照度Q(=Qr)に目を順応させることが可能になる。
【0059】
更なる他の例として、上記2つの例を組み合わせて、第1所定値Qt1を乗場2の照度Qzに設定し(Qt1=Qz)、且つ、第2所定値Qt2を照度Qrに設定してもよい(Qt2=Qr)。
【0060】
[2-3]第3変形例
第2所定値Qt2が照度Qr(Qz<Qr<Qy)に設定された場合、エレベータ制御装置3は、乗りかご1内の照度Qを第2所定値Qt2(=Qr)まで漸増させた後(第1漸増処理の実行後)、更に乗りかご1内の照度Qを第3所定値Qt3(>Qt2)まで上昇させる第2漸増処理を行ってもよい。
【0061】
図5は、第3変形例においてエレベータ制御装置3が実行する制御処理を示したフローチャートである。ここでは、第2所定値Qt2は照度Qr(Qz<Qr<Qy)に設定されている(Qt2=Qr)。また、第2漸増処理は、停止予定階Fsへの乗りかご1の到着後、その階にて当該乗りかご1に利用者が乗車した場合に実行される。以下、具体的に説明する。
【0062】
制御部32は、ステップS103(第1漸増処理)にて乗りかご1内の照度Qを第2所定値Qt2まで漸増させた後、乗りかご1が停止予定階Fsに到着したか否かを判断し(ステップS111)、「到着した(Yes)」と判定できるまで、当該ステップS111を繰り返し実行する。そして、制御部32は、ステップS111にて停止予定階Fsに「到着した(Yes)」と判断できた場合、その階にて乗りかご1に利用者が乗車したか否かを判断する(ステップS112)。具体的には、制御部32は、利用者の乗降が完了したと推定される時点(例えば、停止予定階Fsへの到着から所定時間が経過した時点など)で乗車判定処理を実行することにより、そのときの判定結果を以て、乗りかご1に利用者が乗車したか否かを判断することができる。
【0063】
制御部32は、ステップS112にて「乗車した(Yes)」と判断できた場合、乗りかご1内の照度Qを第2所定値Qt2から第3所定値Qt3まで漸増させる(第2漸増処理。ステップS113)。本変形例では、第3所定値Qt3は、乗りかご1内の全灯時の照度Qyに設定されている。また本変形例では、第2漸増処理(ステップS113)は、ステップS112にて「乗車した(Yes)」と判断された場合に、その時点から実行される。尚、第2漸増処理(ステップS113)は、乗りかご1への利用者の乗車後、当該乗りかご1が停止中の階からの移動を開始した場合に実行されてもよい。そして、制御部32は、ステップS113の実行後、ステップS104からの処理を実行する。
【0064】
一方、制御部32は、ステップS112にて「乗車していない(No)」と判断した場合、その判断を以て、乗りかご1は空の状態のままであると判断できる。この場合、制御部32は、制御処理を終了させる。
【0065】
このような制御処理によれば、第1漸増処理と第2漸増処理の2段階で乗りかご1内の照度Qを第3所定値Qt3(ここでは、全灯時の照度Qy)まで上昇させることにより、当該乗りかご1内の照度Qを、第1漸増処理だけで第3所定値Qt3まで上昇させる場合よりもゆっくりと上昇させることができる。よって、利用者は、乗りかご1内の照度Q(=第3所定値Qt3)に目を順応させやすくなる。
【0066】
[2-4]第4変形例
上述した第3変形例の制御処理は、第2漸増処理が、乗りかご1が空の状態で向かう停止予定階Fsの乗場2の照度Qzが基準値Qs2より低い場合にだけ実行されるものに適宜変更されてもよい。ここで、基準値Qs2は、乗場2の照度Qzが第3所定値Qt3(例えば、全灯時の照度Qy)より著しく低い場合であって、第1漸増処理にて乗りかご1内の照度Qを所定期間Dtで漸増させたとしても、第3所定値Qt3まで上昇させると、眩しさといった不快感を乗場2の利用者に与えてしまうような照度Qzの上限値である。
【0067】
図6は、第4変形例においてエレベータ制御装置3が実行する制御処理を示したフローチャートである。制御部32は、先ず、乗りかご1が向かう停止予定階Fsの乗場2の照度Qzが基準値Qs1より低いか否かを判定する(照度判定処理。ステップS121)。
【0068】
そして、制御部32は、ステップS121にて「低い(Yes)」と判定した場合に、第1所定値Qt1を消灯時の照度Qx(Qt1=Qx)、第2所定値Qt2を照度Qr(Qt2=Qr)、第3所定値Qt3を全灯時の照度Qy(Qt3=Qy)にそれぞれ設定し(ステップS122A)、その後、第2漸増処理を含んでいる
図5のステップS102からの処理を実行する。一方、制御部32は、ステップS121にて「低くない(No)」と判定した場合に、第1所定値Qt1を消灯時の照度Qx(Qt1=Qx)、第2所定値Qt2を全灯時の照度Qy(Qt2=Qy)にそれぞれ設定し(ステップS122B)、その後、第2漸増処理を含まない
図3のステップS102からの処理を実行する。
【0069】
このような制御処理によれば、乗りかご1が空の状態で向かう停止予定階Fsの乗場2の利用者が、第1漸増処理だけで第3所定値Qt3まで漸増させたとすると眩しさを感じる可能性が高い場合にだけ、更に第2漸増処理を行うことが可能になる。よって、第1漸増処理だけでも眩しさを低減できる場合にまで第2漸増処理を実行するといった無駄がなくなる。
【0070】
[2-5]第5変形例
第1所定値Qt1が、乗りかご1が空の状態で向かう停止予定階Fsの乗場2の照度Qzに設定された場合(Qt1=Qz)であって、乗りかご1が空の状態で停止予定階Fsへ向かう途中で少なくとも1つの階を通過する場合には、エレベータ制御装置3は、乗りかご1内の照度Qを、その乗りかご1が通過する階の乗場2の照度Qz以下の値に制御する照度抑制処理を実行してもよい。
【0071】
図7は、第5変形例においてエレベータ制御装置3が実行する制御処理を示したフローチャートである。ここでは、第1所定値Qt1は、乗りかご1が空の状態で向かう停止予定階Fsの乗場2の照度Qzに設定されている(Qt1=Qz)。
【0072】
制御部32は、ステップS101にて乗りかご1内の照度Qを第1所定値Qt1(=Qz)に一致させた後、乗りかご1が次の階を通過するか否かを判断する(ステップS131)。具体的には、制御部32は、次の階が、乗りかご1が向かっている停止予定階Fsであるか否か、を判断することにより、その判断結果を以て、当該乗りかご1が次の階を通過するか否かを判断することができる。具体的には、制御部32は、次の階は「停止予定階Fsでない(No)」と判断した場合には、その判断を以て、乗りかご1は次の階を「通過する(Yes)」と判断することができ、その一方で、次の階は「停止予定階Fsである(Yes)」と判断した場合には、その判断を以て、乗りかご1は次の階を「通過しない(No)」と判断することができる。
【0073】
制御部32は、ステップS131にて次の階を「通過する(Yes)」と判断した場合、乗りかご1内の照度Qを、その階(乗りかご1が通過する階)の乗場2の照度Qzp以下の値に制御する(照度抑制処理。ステップS132)。その後、制御部32は、乗りかご1が、ステップS131にて「通過しない(No)」と判断するまで、向かっている停止予定階Fs以外の階を通過するごとにステップS132を実行する。そして、制御部32は、ステップS131にて「通過しない(No)」と判断した場合に、ステップS102からの処理を実行する。このとき、乗りかご1内の照度Qが第1所定値Qt1より低くなっている場合には、制御部32は、乗りかご1内の照度Qを第1所定値Qt1に戻す。
【0074】
照度抑制処理(ステップS132)によれば、乗りかご1が通過する階の乗場2の利用者が、窓(第1窓10w及び第2窓20w)を通じて乗りかご1から漏れ出た光を眩しく感じる、といったことがなくなる。
【0075】
上述の実施形態及び変形例の説明は、すべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述の実施形態や変形例ではなく、特許請求の範囲によって示される。更に、本発明の範囲には、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【0076】
また、上述の実施形態や変形例からは、発明の対象として、エレベータの制御装置に限らず、その制御装置を構成する各部が部分的に抽出されてもよい。更に、当該制御装置で実行される制御処理やプログラムなどが個々に抽出されてもよいし、それらの一部が部分的に抽出されてもよい。
【符号の説明】
【0077】
1 乗りかご
2 乗場
3 エレベータ制御装置
Q 照度
10 かごドア
10w 第1窓
11 照明装置
12 行先階ボタン
13 乗車判定用センサ
20 乗場ドア
20w 第2窓
21 乗場呼びボタン
22 照度センサ
31 記憶部
32 制御部
Dt 所定期間
Fd 行先階
Fe 乗車階
Fs 停止予定階
Pf 対向開始位置
Qr、Qx、Qy、Qz、Qzp 照度
Sj 判定用信号
320 搬送処理部
321 乗車判定処理部
322 位置判定処理部
323 照度制御処理部
Pfx 位置
Qs1、Qs2 基準値
Qt1 第1所定値
Qt2 第2所定値
Qt3 第3所定値