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  • 特開-電池および電池製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024113379
(43)【公開日】2024-08-22
(54)【発明の名称】電池および電池製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 6/08 20060101AFI20240815BHJP
   H01M 4/06 20060101ALI20240815BHJP
   H01M 4/42 20060101ALI20240815BHJP
   H01M 4/50 20100101ALI20240815BHJP
【FI】
H01M6/08 A
H01M4/06 T
H01M4/06 E
H01M4/42
H01M4/50
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023018314
(22)【出願日】2023-02-09
(71)【出願人】
【識別番号】000237721
【氏名又は名称】FDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 雄也
(72)【発明者】
【氏名】都築 秀典
(72)【発明者】
【氏名】夏目 祐紀
【テーマコード(参考)】
5H024
5H050
【Fターム(参考)】
5H024AA03
5H024AA14
5H024BB08
5H024CC02
5H024CC14
5H024EE09
5H024FF09
5H024FF10
5H024FF31
5H024FF36
5H024HH01
5H050AA02
5H050BA04
5H050CA05
5H050CB13
5H050EA23
5H050EA24
5H050FA07
5H050GA13
5H050HA01
(57)【要約】
【課題】未放電状態で放置されたときに電池内に発生するガスの量を増加させることなく放電性能を向上させる。
【解決手段】電池1は、正極3と、亜鉛を含有する負極5と、正極3と負極5とが浸漬される電解液と、パーフルオロアルキル基を有する化合物であるフッ素系界面活性剤と、亜鉛イオンZn2+と錯体を形成する配位子化合物とを備えている。亜鉛の質量に対するフッ素系界面活性剤の質量の比率は、50ppm以上であり、かつ、500ppm以下である。亜鉛の質量に対する配位子化合物の質量の比率は、50ppm以上であり、かつ、500ppm以下である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極と、
亜鉛を含有する負極と、
前記正極と前記負極とが浸漬される電解液と、
パーフルオロアルキル基を有する化合物であるフッ素系界面活性剤と、
亜鉛イオンと錯体を形成する配位子化合物とを備え、
前記亜鉛の質量に対する前記フッ素系界面活性剤の質量の比率は、50ppm以上であり、かつ、500ppm以下であり、
前記亜鉛の質量に対する前記配位子化合物の質量の比率は、50ppm以上であり、かつ、500ppm以下である
電池。
【請求項2】
正極と、
亜鉛を含有する負極と、
前記正極と前記負極とが浸漬される電解液と、
パーフルオロアルキル基を有するフッ素系界面活性剤と、
亜鉛イオンと錯体を形成する配位子化合物とを備え、
前記亜鉛の質量に対する前記フッ素系界面活性剤の質量の比率は、50ppm以上であり、かつ、500ppm以下であり、
前記亜鉛の質量に対する前記配位子化合物の質量の比率は、50ppm以上であり、かつ、500ppm以下である
電池
を製造する電池製造方法であり、
前記配位子化合物を含有する電解液を前記正極に含侵させることと、
前記フッ素系界面活性剤を含有する電解液を用いて前記負極を作製すること
とを備える電池製造方法。
【請求項3】
正極と、
亜鉛を含有する負極と、
前記正極と前記負極とが浸漬される電解液と、
パーフルオロアルキル基を有するフッ素系界面活性剤と、
亜鉛イオンと錯体を形成する配位子化合物とを備え、
前記亜鉛の質量に対する前記フッ素系界面活性剤の質量の比率は、50ppm以上であり、かつ、500ppm以下であり、
前記亜鉛の質量に対する前記配位子化合物の質量の比率は、50ppm以上であり、かつ、500ppm以下である
電池
を製造する電池製造方法であり、
前記フッ素系界面活性剤を含有する電解液を用いて前記負極を作製すること
を備える電池製造方法。
【請求項4】
正極と、
亜鉛を含有する負極と、
前記正極と前記負極とが浸漬される電解液と、
パーフルオロアルキル基を有するフッ素系界面活性剤と、
亜鉛イオンと錯体を形成する配位子化合物とを備え、
前記亜鉛の質量に対する前記フッ素系界面活性剤の質量の比率は、50ppm以上であり、かつ、500ppm以下であり、
前記亜鉛の質量に対する前記配位子化合物の質量の比率は、50ppm以上であり、かつ、500ppm以下である
電池
を製造する電池製造方法であり、
前記配位子化合物を含有する電解液を前記正極に含侵させること
を備える電池製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の技術は、電池および電池製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リモコンや時計といった軽負荷機器から、デジタルカメラといった高負荷機器まで幅広い電流範囲で使用されるアルカリ乾電池が知られている。フッ素系界面活性剤が添加されたアルカリ乾電池が知られている(特許文献1~2)。また、キレート剤が添加されたアルカリ乾電池が知られている(特許文献3~6)。このようなアルカリ乾電池は、放電性能を向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平01-243373号公報
【特許文献2】国際公開第2012/046363号
【特許文献3】特開2000-149955号公報
【特許文献4】特開2008-021497号公報
【特許文献5】特開2017-188273号公報
【特許文献6】特開2022-090819号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、アルカリ乾電池は、フッ素系界面活性剤が添加されたときに、低負荷での放電性能が向上するものの、高負荷での放電性能が低下することがある。アルカリ乾電池は、キレート剤が添加されたときに、放電特性が向上するものの、未放電状態で放置されたときに電池内に発生するガスの量が増加することがある。
【0005】
開示の技術は、かかる点に鑑みてなされたものであって、未放電状態で放置されたときに電池内に発生するガスの量を増加させることなく放電性能を向上させる電池および電池製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様による電池は、正極と、亜鉛を含有する負極と、前記正極と前記負極とが浸漬される電解液と、パーフルオロアルキル基を有する化合物であるフッ素系界面活性剤と、亜鉛イオンと錯体を形成する配位子化合物とを備え、前記亜鉛の質量に対する前記フッ素系界面活性剤の質量の比率は、50ppm以上であり、かつ、500ppm以下であり、前記亜鉛の質量に対する前記配位子化合物の質量の比率は、50ppm以上であり、かつ、500ppm以下である。
【発明の効果】
【0007】
開示の電池および電池製造方法は、未放電状態で放置されたときに電池内に発生するガスの量を増加させることなく放電性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態の電池を示す断面図である。
図2図2は、未放電ガス量測定試験が実行される試験装置を示す側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本願が開示する実施形態にかかる電池について、図面を参照して説明する。なお、以下の記載により本開示の技術が限定されるものではない。また、以下の記載においては、同一の構成要素に同一の符号を付与し、重複する説明を省略する。
【0010】
[実施形態の電池1]
実施形態の電池1は、アルカリ乾電池であり、図1に示されているように、電池ケース2と正極3と負極5と集電棒6とセパレータ7とを備えている。図1は、実施形態の電池1を示す断面図である。電池ケース2は、正極缶11と負極端子板12と封口ガスケット14とを備えている。正極缶11は、金属に例示される導体から形成されている。正極缶11は、有底円筒形に形成され、側面部分15と底面部分16とを備えている。
【0011】
側面部分15は、筒形に形成され、円柱の側面に沿って配置されている。底面部分16は、概ね円板状に形成され、円柱の一方の底面に沿って配置されている。底面部分16は、底面部分16の縁が側面部分15の一方の端に隣接するように、側面部分15に一体に形成されている。正極缶11には、開口部17が形成されている。開口部17は、側面部分15のうちの円柱の他方の底面に対応する部位に形成されている。正極缶11の内部は、開口部17を介して正極缶11の外部に繋がっている。
【0012】
底面部分16の中央には、正極端子部分18が形成されている。正極端子部分18は、正極缶11の内側から外側に向かって突出するように形成されている。
【0013】
正極缶11の側面部分15には、ビーディング部21とカール部22とが形成されている。ビーディング部21は、側面部分15のうちの開口部17が形成される側の開口側端23の近傍に形成されている。ビーディング部21は、側面部分15の内側の面から突出するように、すなわち、側面部分15のうちのビーディング部21が形成されている部分の内径が他の部分の内径より小さくなるように、形成されている。カール部22は、ビーディング部21と開口側端23との間に形成されている。カール部22は、開口側端23に近づくにつれて側面部分15の内径が小さくなるように、形成されている。
【0014】
負極端子板12は、金属に例示される導体から形成され、概ね円板状に形成されている。負極端子板12は、円柱の他方の底面に沿うように配置され、正極缶11の開口部17を塞いでいる。電池ケース2の内部には、負極端子板12が開口部17を塞ぐことにより、正極缶11と負極端子板12とに囲まれる内部空間25が形成されている。
【0015】
封口ガスケット14は、樹脂に例示される絶縁体から形成され、概ねリング状に形成されている。封口ガスケット14は、負極端子板12の縁を取り囲み、正極缶11の開口部17に配置されている。封口ガスケット14は、負極端子板12の縁と正極缶11の側面部分15とに挟まれ、負極端子板12の縁と正極缶11との間に形成される隙間を塞いでいる。
【0016】
封口ガスケット14は、封口ガスケット14がビーディング部21に接触することにより、封口ガスケット14が正極缶11の底面部分16に向かって移動しないように、正極缶11に固定されている。封口ガスケット14は、さらに、封口ガスケット14がカール部22に接触することにより、封口ガスケット14が正極缶11の内部から抜け出ないように、正極缶11に固定されている。負極端子板12は、封口ガスケット14の一部が負極端子板12の縁と正極缶11の側面部分15とに挟まれることにより、封口ガスケット14に固定され、封口ガスケット14を介して正極缶11に固定されている。負極端子板12は、封口ガスケット14が負極端子板12の縁と正極缶11とに挟まれることにより、封口ガスケット14を介して正極缶11から電気的に絶縁されている。封口ガスケット14には、圧力開放弁27がさらに形成されている。圧力開放弁27は、封口ガスケット14のうちの厚さが薄い部分である。
【0017】
正極3は、電解二酸化マンガンMnOと黒鉛Cと水酸化カリウム水溶液とバインダーとを含んでいる。バインダーは、たとえば、高分子化合物を含有し、電解二酸化マンガンMnOと黒鉛Cとから形成される粉体を互いに接着させて固形物に形成する。正極3は、管状に形成され、正極3の外側の面が正極缶11の側面部分15の内側の面に対向するように、電池ケース2の内部空間25に配置されている。正極3は、電解二酸化マンガンMnOと黒鉛Cとが正極缶11に電気的に接続されるように、正極缶11に密着している。
【0018】
負極5は、亜鉛合金粉と水酸化カリウム水溶液と増粘剤とゲル化剤とを含有し、ゲル状に形成されている。亜鉛合金粉は、亜鉛を含有する亜鉛合金から形成されている。増粘剤としては、ポリアクリル酸、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリエチレンオキサイド(PEO)、カルボキシメチルセルロース(CMC)が例示される。ゲル化剤としては、ポリアクリル酸塩が例示される。ポリアクリル酸塩としては、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸カリウムが例示される。負極5は、電池ケース2の内部空間25のうちの正極3の内側に配置されている。なお、負極作用物質に含まれる亜鉛合金粉は、金属亜鉛から形成される亜鉛粉に置換されることができる。
【0019】
集電棒6は、導体から形成され、棒状に形成されている。集電棒6の一端は、集電棒6が負極端子板12に固定されるように、かつ、集電棒6が負極端子板12に電気的に接続されるように、負極端子板12に接合されている。集電棒6は、さらに、封口ガスケット14を貫通し、封口ガスケット14に固定され、封口ガスケット14を介して正極缶11に固定されている。集電棒6は、側面部分15が沿う円柱の中心軸に沿うように内部空間25に配置されている。集電棒6は、さらに、負極5に埋め込まれ、負極5に電気的に接続されている。
【0020】
セパレータ7は、イオンを透過する絶縁体から形成されている。絶縁体としては、ビニロンやパルプ等に例示される。セパレータ7は、有底中空円筒形に形成されている。セパレータ7は、内部空間25のうちの正極3と負極5との間に配置され、内部空間25のうちの負極5と正極缶11の底面部分16との間に配置されている。セパレータ7は、正極3と負極5とを隔て、負極5と正極缶11とを隔てている。負極5は、セパレータ7が正極3と負極5とを隔てていることにより、正極3から電気的に絶縁され、セパレータ7が負極5と正極缶11とを隔てていることにより、正極缶11から電気的に絶縁されている。
【0021】
電池1は、電解液をさらに備えている。電解液は、水酸化カリウムKOHを含有する水溶液から形成されている。電解液は、正極3と負極5とが電解液に浸漬されるように、内部空間25に配置され、正極3と負極5とセパレータ7とに染み込んでいる。
【0022】
電池1は、フッ素系界面活性剤と配位子化合物とをさらに備えている。フッ素系界面活性剤は、パーフルオロアルキル基を有する化合物から形成されるノニオン系界面活性剤である。フッ素系界面活性剤は、負極5に含まれる金属亜鉛の表面にフッ素系界面活性剤が付着することができるように、内部空間25に配置され、たとえば、負極5に含有されている。負極5に含有されている亜鉛の質量に対するフッ素系界面活性剤の質量の比率は、50ppm以上であり、かつ、500ppm以下である。
【0023】
配位子化合物は、亜鉛イオンZn2+に配位結合する化合物であり、亜鉛イオンZn2+と錯体が形成されることができる化合物である。配位子化合物は、1分子に1つの配位座だけを有する単座配位子でもよく、複数の配位座を有する多座配位子(たとえば、キレート剤)でもよい。配位子化合物としては、有機酸、アミン化合物、アンモニアが例示される。有機酸としては、クエン酸、グルコン酸、アクリル酸が例示される。アミン化合物としては、エチレンジアミン四酢酸EDTA、グリシン、エチレンジアミンが例示される。配位子化合物は、電解液に溶解する亜鉛イオンZn2+に配位子化合物が配位結合して錯体が形成されることができるように、内部空間25に配置され、たとえば、正極3または電解液に含有されている。負極5に含有されている亜鉛の質量に対する配位子化合物の質量の比率は、50ppm以上であり、かつ、500ppm以下である。
【0024】
[電池製造方法]
電池1を製造する電池製造方法は、正極の作製と、負極の作製と、電池の組み立てとを備えている。
正極の作製では、電解二酸化マンガンと黒鉛とバインダーと水酸化カリウム水溶液とが準備される。電解二酸化マンガンと黒鉛とバインダーと水酸化カリウム水溶液は、混合された後に造粒され、その混合・造粒により顆粒状の正極合剤が生成される。顆粒状の正極合剤は、成形金型に流し込まれた後に、予め定められた成形圧が加えられて成形され、その成形により正極3が生成される。
【0025】
負極の作製では、亜鉛合金粉と増粘剤とゲル化剤と水酸化カリウム水溶液とフッ素系界面活性剤とが準備される。亜鉛合金粉と増粘剤とゲル化剤とは、混合され、その混合により負極用混合物が生成される。水酸化カリウム水溶液は、フッ素系界面活性剤が添加された後に攪拌され、その添加・攪拌により負極用水酸化カリウム電解液が生成される。負極用混合物は、負極用水酸化カリウム電解液に混合され、その混合によりゲル状の負極5が生成される。
【0026】
電池の組み立てでは、ビーディング部21とカール部22とが形成されていない正極缶とセパレータ7とが準備される。正極3は、正極3の外周面が正極缶11の内側の面に接触するように、開口部17を介して正極缶の内部に挿入される。正極缶は、正極3が正極缶11の内部に挿入された後に、ビーディング部21が形成されるように、加工される。ビーディング部21は、正極3が開口部17を介して正極缶11から抜け出ることを防止する。ビーディング部21が形成された後に、正極缶11の側面部分15の内周面のうちの封口ガスケット14に接触する正極缶接触面には、シール剤が塗布される。セパレータ7は、正極3が正極缶11の内部に挿入された後に、開口部17を介して正極3の内側に挿入される。
【0027】
電池の組み立てでは、さらに、配位子化合物と水酸化カリウム水溶液と負極5とが準備される。水酸化カリウム水溶液は、配位子化合物が混入され、その混入により水酸化カリウム電解液が生成される。水酸化カリウム電解液は、セパレータ7が正極3の内側に挿入された後に、開口部17を介して正極3の内側に注入される。電解液が正極3の内側に注入されることにより、電解液は、セパレータ7に含浸し、正極3に含浸する。負極5は、電解液がセパレータ7と正極3とに含浸した後に、セパレータ7の内側に注入される。
【0028】
電池の組み立てでは、さらに、集電棒6と負極端子板12と封口ガスケット14とが準備される。集電棒6と負極端子板12と封口ガスケット14とは、集電棒6が負極端子板12に電気的に接触するように、かつ、負極端子板12の縁が封口ガスケット14に覆われるように、組み立てられて互いに固定され、その組み立てにより封口体が作製される。負極5が注入された後に、集電棒6が負極5に埋め込まれるように、かつ、封口ガスケット14の周縁がビーディング部21に接触するように、封口体が正極缶に取り付けられる。封口体は、封口ガスケット14の周縁がビーディング部21に接触することにより、正極缶に対して適切な位置に配置される。
【0029】
封口体が正極缶に対して適切な位置に配置された後に、正極缶は、かしめられ、正極缶にカール部22が形成され、カール部22が形成により正極缶11が生成される。正極缶11にカール部22が形成されることにより、封口体が正極缶11から外れないように、封口体は、正極缶11に固定される。正極缶11にカール部22が形成されることにより、さらに、負極端子板12と正極缶11との間に形成される隙間が封口ガスケット14により封止され、内部空間25が外部から密閉され、電池1が作製される。このような電池製造方法によれば、電池1は、負極5に含まれる金属亜鉛の表面にフッ素系界面活性剤が付着するように、かつ、電解液に溶解する亜鉛イオンZn2+に配位子化合物が配位結合して錯体が形成されるように、適切に作製されることができる。
【0030】
電池1は、次化学反応式で示される電池内ガス発生反応が進行することにより、内部空間25に水素ガスHが発生する。
Zn+2HO+2OH→[Zn(OH)2-+H
電池内ガス発生反応は、電池1が未放電状態であっても、進行することがある。
【0031】
電池1は、さらに、誤使用されたときに、内部空間25にガスが発生する。内部空間25の圧力は、内部空間25にガスが発生することにより、上昇する。電池1は、予め定められた圧力より内部空間25の圧力が大きくなったときに、圧力開放弁27が破断し、内部空間25に配置されていた電解液またはガスが外部に漏えいする漏液が発生する。電池1は、内部空間25の圧力が上昇したときに漏液が発生することにより、封口体が正極缶11から外れる破裂が発生することを防止することができる。
【0032】
[電池1の評価試験]
実施形態の電池1の効果を確認するために、複数の電池試料が作製され、複数の電池試料の各々に複数の評価試験が実行されている。表1は、複数の電池試料に対応する複数の作製条件と複数の評価結果とを示している。
【表1】

複数の電池試料は、比較例1の電池と比較例2の電池と比較例3の電池と比較例4の電池と比較例5の電池と実施例1の電池と実施例2の電池とを含んでいる。
【0033】
複数の電池試料は、作製条件が互いに異なるように、作製されている。作製条件は、フッ素系界面活性剤添加量と配位子化合物添加量とにより示される。ある電池試料のフッ素系界面活性剤添加量は、その電池試料に添加されているフッ素系界面活性剤の量を示し、その電池試料の内部空間25に配置されるフッ素系界面活性剤の量を示している。すなわち、ある電池試料のフッ素系界面活性剤添加量が「Xppm」を示すときに、その電池試料に添加されているフッ素系界面活性剤の質量を、その電池試料の負極5に含有される亜鉛の質量で除算した値に百万を乗算した値がXの値に等しいことを示している。ある電池試料のフッ素系界面活性剤添加量が「-」を示すときに、その電池試料にフッ素系界面活性剤が添加されていないことを示している。
【0034】
ある電池試料の配位子化合物添加量は、その電池試料に添加されている配位子化合物の量を示し、その電池試料の内部空間25に配置される配位子化合物の量を示している。すなわち、ある電池試料の配位子化合物添加量が「Xppm」を示すときに、その電池試料に添加されている配位子化合物の質量を、その電池試料の負極5に含有される亜鉛の質量で除算した値に百万を乗算した値がXの値に等しいことを示している。すなわち、ある電池試料の配位子化合物添加量が「-」を示すときに、その電池試料に配位子化合物が添加されていないことを示している。
【0035】
複数の電池試料は、その作製条件が互いに異なること以外は、互いに同様に作製されている。すなわち、複数の電池試料は、電池サイズが単3電池の電池サイズに等しくなるように、正極3と集電棒6とセパレータ7と正極缶11と負極端子板12と封口ガスケット14とが作製されている。
【0036】
比較例1の電池のフッ素系界面活性剤添加量は、「-」を示している。比較例1の電池の配位子化合物添加量は、「-」を示している。すなわち、比較例1の電池は、フッ素系界面活性剤と配位子化合物とが添加されないように、作製されている。
【0037】
比較例2の電池のフッ素系界面活性剤添加量は、「50ppm」を示している。比較例2の電池の配位子化合物添加量は、「-」を示している。すなわち、比較例2の電池は、負極5に含まれる亜鉛に対して50ppmのフッ素系界面活性剤が添加されるように、かつ、配位子化合物が添加されないように、作製されている。
【0038】
比較例3の電池のフッ素系界面活性剤添加量は、「-」を示している。比較例3の電池の配位子化合物添加量は、「50ppm」を示している。すなわち、比較例3の電池は、負極5に含まれる亜鉛に対して50ppmの配位子化合物が添加されるように、かつ、フッ素系界面活性剤が添加されないように、作製されている。
【0039】
比較例4の電池のフッ素系界面活性剤添加量は、「25ppm」を示している。比較例4の電池の配位子化合物添加量は、「25ppm」を示している。すなわち、比較例4の電池は、負極5に含まれる亜鉛に対して25ppmのフッ素系界面活性剤が添加されるように、かつ、負極5に含まれる亜鉛に対して25ppmの配位子化合物が添加されるように、作製されている。
【0040】
実施例1の電池のフッ素系界面活性剤添加量は、「50ppm」を示している。実施例1の電池の配位子化合物添加量は、「50ppm」を示している。すなわち、実施例1の電池は、負極5に含まれる亜鉛に対して50ppmのフッ素系界面活性剤が添加されるように、かつ、負極5に含まれる亜鉛に対して50ppmの配位子化合物が添加されるように、作製されている。
【0041】
実施例2の電池のフッ素系界面活性剤添加量は、「500ppm」を示している。実施例2の電池の配位子化合物添加量は、「500ppm」を示している。すなわち、実施例2の電池は、負極5に含まれる亜鉛に対して500ppmのフッ素系界面活性剤が添加されるように、かつ、負極5に含まれる亜鉛に対して500ppmの配位子化合物が添加されるように、作製されている。
【0042】
比較例5の電池のフッ素系界面活性剤添加量は、「1000ppm」を示している。比較例5の電池の配位子化合物添加量は、「1000ppm」を示している。すなわち、比較例5の電池は、負極5に含まれる亜鉛に対して1000ppmのフッ素系界面活性剤が添加されるように、かつ、負極5に含まれる亜鉛に対して1000ppmの配位子化合物が添加されるように、作製されている。
【0043】
複数の評価結果は、複数の低負荷放電試験結果と複数の高負荷放電試験結果と複数の未放電ガス量測定結果とを含んでいる。
複数の低負荷放電試験結果のうちのある電池試料に対応する低負荷放電試験結果は、その電池試料に対して低負荷放電試験が実行されることにより導出される。ある電池試料に対して実行される低負荷放電試験では、その電池試料の電池電圧が終止電圧0.9Vに達するまで1日の放電パターンが毎日繰り返し実行され、放電時間が導出される。1日の放電パターンは、1時間の放電期間と休止期間とから形成されている。1時間の放電期間では、その電池試料が100mAで放電されるように、その電池試料が負荷に電気的に接続される。休止期間は、1日の放電パターンのうちの1時間の放電期間を除く期間から形成され、休止期間では、その電池試料が放電されないように、その電池試料が負荷から電気的に絶縁される。放電時間は、その電池試料の電池電圧が終止電圧0.9Vに達するまでに、その電池試料が放電していた時間を示している。
【0044】
ある電池試料に対して実行される低負荷放電試験では、その電池試料の平均放電時間がさらに導出される。その電池試料の平均放電時間は、その電池試料として作製された3つの電池に対してそれぞれ導出された3つの放電時間の平均を示している。複数の低負荷放電試験結果のうちのある電池試料に対応する低負荷放電試験結果は、その電池試料の平均放電時間を、比較例1の電池の平均放電時間で除算した値に100を乗算した値を示している。複数の低負荷放電試験結果は、大きい値を示す低負荷放電試験結果に対応する電池試料ほど低負荷の放電性能が良好であることを示している。
【0045】
複数の低負荷放電試験結果のうちの比較例1の電池に対応する低負荷放電試験結果は、100%を示し、比較例2の電池に対応する低負荷放電試験結果は、105%を示し、比較例3の電池に対応する低負荷放電試験結果は、110%を示している。複数の低負荷放電試験結果は、比較例2、3の電池の低負荷での放電性能が比較例1の電池の低負荷での放電性能より良好であることを示している。すなわち、複数の低負荷放電試験結果は、フッ素系界面活性剤または配位子化合物の一方が添加された電池の低負荷での放電性能が、フッ素系界面活性剤と配位子化合物との両方が添加されない電池の低負荷での放電性能より良好であることを示している。
【0046】
複数の低負荷放電試験結果のうちの実施例1の電池に対応する低負荷放電試験結果は、110%を示し、実施例2の電池に対応する低負荷放電試験結果は、109%を示している。複数の低負荷放電試験結果は、実施例1、2の電池の低負荷での放電性能が、比較例1の電池の低負荷での放電性能より良好であることを示している。すなわち、複数の低負荷放電試験結果は、フッ素系界面活性剤と配位子化合物の両方が添加された電池の低負荷での放電性能が、フッ素系界面活性剤と配位子化合物とが添加されていない電池の低負荷での放電性能より良好であることを示している。
【0047】
複数の低負荷放電試験結果のうちの比較例4の電池に対応する低負荷放電試験結果は、102%を示している。複数の低負荷放電試験結果は、実施例1、2の電池の低負荷での放電性能が、比較例4の電池の低負荷での放電性能より良好であることを示している。すなわち、複数の低負荷放電試験結果は、フッ素系界面活性剤添加量が500ppm以下であるときで、かつ、配位子化合物添加量が500ppm以下であるときに、50ppm以上のフッ素系界面活性剤と50ppm以上の配位子化合物とが添加された電池の低負荷での放電性能が、25ppm以下のフッ素系界面活性剤と25ppm以下の配位子化合物とが添加された電池の低負荷での放電性能より良好であることを示している。
【0048】
複数の低負荷放電試験結果のうちの比較例5の電池に対応する低負荷放電試験結果は、95%を示している。複数の低負荷放電試験結果は、比較例5の電池の低負荷での放電性能が、比較例1の電池の低負荷での放電性能より悪いことを示している。すなわち、複数の低負荷放電試験結果は、1000ppm以上のフッ素系界面活性剤と1000ppm以上の配位子化合物とが添加された電池の低負荷での放電性能が、フッ素系界面活性剤と配位子化合物との両方が添加されていない電池の低負荷での放電性能より悪いことを示している。
【0049】
複数の低負荷放電試験結果は、比較例5の電池の低負荷での放電性能が、実施例1、2の電池の低負荷での放電性能より悪いことを示している。すなわち、複数の低負荷放電試験結果は、フッ素系界面活性剤添加量が50ppm以上であるときで、かつ、配位子化合物添加量が50ppm以上であるときに、1000ppm以上のフッ素系界面活性剤と1000ppm以上の配位子化合物の両方が添加された電池の低負荷での放電性能が、500ppm以下のフッ素系界面活性剤と500ppm以下の配位子化合物の両方が添加された電池の低負荷での放電性能より悪いことを示している。
【0050】
複数の高負荷放電試験結果のうちのある電池試料に対応する高負荷放電試験結果は、その電池試料に対して高負荷放電試験が実行されることにより導出される。ある電池試料に対して実行される高負荷放電試験では、その電池試料の電池電圧が終止電圧1.05Vに達するまで1時間の放電パターンが繰り返し実行され、サイクル数が計数される。1時間の放電パターンは、5分の放電期間と55分の放電休止期間とから形成されている。5分の放電期間では、30秒の放電パターンが10回繰り返し実行される。30秒の放電パターンは、2秒の放電期間と28秒の放電期間とから形成されている。2秒の放電期間では、その電池試料が1500mWの負荷に電気的に接続され、その電池試料が放電される。28秒の放電期間では、その電池試料が650mWの負荷に電気的に接続され、その電池試料が放電される。55分の放電休止期間では、その電池試料が放電しないように、その電池試料が負荷から電気的に絶縁される。サイクル数は、その電池試料の電池電圧が終止電圧1.05Vに達するまでに30秒の放電パターンが実行される回数を示している。
【0051】
ある電池試料に対して実行される高負荷放電試験では、その電池試料の平均サイクル数がさらに導出される。その電池試料の平均サイクル数は、その電池試料として作製された3つの電池に対してそれぞれ導出された3つのサイクル数の平均を示している。複数の高負荷放電試験結果のうちのある電池試料に対応する高負荷放電試験結果は、その電池試料の平均サイクル数を、比較例1の電池の平均サイクル数で除算した値に100を乗算した値を示している。複数の高負荷放電試験結果は、大きい値を示す高負荷放電試験結果に対応する電池試料ほど高負荷の放電性能が良好であることを示している。
【0052】
複数の高負荷放電試験結果のうちの比較例1の電池に対応する高負荷放電試験結果は、100%を示し、比較例2の電池に対応する高負荷放電試験結果は、90%を示し、比較例3の電池に対応する高負荷放電試験結果は、120%を示している。複数の高負荷放電試験結果は、比較例3の電池の高負荷での放電性能が比較例1の電池の高負荷での放電性能より良好であることを示している。すなわち、複数の高負荷放電試験結果は、配位子化合物が添加された電池の高負荷での放電性能が、フッ素系界面活性剤と配位子化合物との両方が添加されない電池の高負荷での放電性能より良好であることを示している。
【0053】
複数の高負荷放電試験結果は、さらに、比較例2の電池の高負荷での放電性能が比較例1の電池の高負荷での放電性能より悪いことを示している。すなわち、複数の高負荷放電試験結果は、フッ素系界面活性剤が添加された電池の高負荷での放電性能が、フッ素系界面活性剤と配位子化合物との両方が添加されない電池の高負荷での放電性能より悪いことを示している。
【0054】
複数の高負荷放電試験結果のうちの実施例1の電池に対応する高負荷放電試験結果は、105%を示し、実施例2の電池に対応する高負荷放電試験結果は、103%を示している。複数の高負荷放電試験結果は、実施例1、2の電池の高負荷での放電性能が、比較例1の電池の高負荷での放電性能より良好であることを示している。すなわち、複数の高負荷放電試験結果は、フッ素系界面活性剤と配位子化合物との両方が添加された電池の高負荷での放電性能が、フッ素系界面活性剤と配位子化合物との両方が添加されない電池の高負荷での放電性能より良好であることを示している。
【0055】
複数の高負荷放電試験結果のうちの比較例4の電池に対応する高負荷放電試験結果は、100%を示している。すなわち、複数の高負荷放電試験結果は、比較例4の電池の高負荷での放電性能が比較例1の電池の高負荷での放電性能と同等であるものの、実施例1、2の電池の高負荷での放電性能より悪いことを示している。すなわち、複数の高負荷放電試験結果は、フッ素系界面活性剤添加量が500ppm以下であるときで、かつ、配位子化合物添加量が500ppm以下であるときに、50ppm以上のフッ素系界面活性剤と50ppm以上の配位子化合物とが添加された電池が、25ppm以下のフッ素系界面活性剤と25ppm以下の配位子化合物とが添加された電池より良好であることを示している。
【0056】
複数の高負荷放電試験結果のうちの比較例5の電池に対応する高負荷放電試験結果は、60%を示している。複数の高負荷放電試験結果は、比較例5の電池の高負荷での放電性能が、比較例1電池の高負荷での放電性能より悪く、かつ、実施例1、2の電池の高負荷での放電性能より悪いことを示している。すなわち、複数の高負荷放電試験結果は、1000ppm以上のフッ素系界面活性剤と1000ppm以上の配位子化合物とが添加された電池が、フッ素系界面活性剤と配位子化合物とが添加されていない電池の高負荷での放電性能より良好であることを示している。複数の高負荷放電試験結果は、さらに、フッ素系界面活性剤添加量が50ppm以上であるときで、かつ、配位子化合物添加量が50ppm以上であるときに、1000ppm以上のフッ素系界面活性剤と1000ppm以上の配位子化合物とが添加された電池高負荷での放電性能が、500ppm以下のフッ素系界面活性剤と500ppm以下の配位子化合物とが添加された電池の高負荷での放電性能より悪いことを示している。
【0057】
複数の未放電ガス量測定結果のうちのある電池試料に対応する未放電ガス量測定結果は、その電池試料に対して未放電ガス量測定試験が実行されることにより導出される。ある電池試料に対して実行される未放電ガス量測定試験では、その電池試料が60℃の恒温槽に一週間保管された後に、その電池試料が室温でさらに1日以上静置し、その静置によりその電池試料の放置後電池が作製される。放置後電池46は、図2に示されているように、未放電ガス量測定試験装置41を用いて未放電ガス量が計測される。図2は、未放電ガス量測定試験で利用される未放電ガス量測定試験装置41を示す側面断面図である。
【0058】
未放電ガス量測定試験装置41は、水槽42と容器43とを備えている。水槽42には、水44が貯留されている。容器43には、開口部45が形成されている。容器43は、容器43の内部に水44が満たされている状態で、開口部45が水44で塞がれるように、逆さまに配置されている。放置後電池46の内部空間29に配置されている未放電ガスは、ショートしないように放置後電池46が水44の中でニッパーを用いて解体されることにより、放置後電池46から漏れ出て容器43に捕集される。未放電ガス量は、その捕集された未放電ガスの体積を示している。
【0059】
ある電池試料に対応する未放電ガス量測定試験では、その電池試料として作製された3つの電池に対してそれぞれ導出された3つの放電時間の平均を示す平均未放電ガス量がさらに導出される。複数の未放電ガス量測定結果のうちのある電池試料に対応する未放電ガス量測定結果は、その電池試料の平均未放電ガス量を、比較例1の電池の平均未放電ガス量で除算した値に100を乗算した値を示している。複数の未放電ガス量測定結果は、大きい値を示す未放電ガス量測定結果に対応する電池試料ほど、放電時に内部空間29に発生するガスの量が小さいことを示し、未放電状態で放置されたときに電池内に発生するガスの量の増加を抑制することができることを示している。
【0060】
複数の未放電ガス量計測結果のうちの比較例1の電池に対応する未放電ガス量計測結果は、100%を示し、比較例2の電池に対応する未放電ガス量計測結果は、90%を示している。複数の未放電ガス量計測結果は、比較例2の電池の未放電ガス量が比較例1の電池の未放電ガス量より小さいことを示している。すなわち、複数の未放電ガス量計測結果は、フッ素系界面活性剤のみが添加された電池の未放電ガス量が、フッ素系界面活性剤と配位子化合物との両方が添加されていない電池の未放電ガス量より少ないことを示している。
【0061】
複数の未放電ガス量計測結果のうちの比較例3の電池に対応する未放電ガス量計測結果は、200%を示している。複数の未放電ガス量計測結果は、比較例3の電池の未放電ガス量が比較例1の電池の未放電ガス量より大きいことを示している。すなわち、複数の未放電ガス量計測結果は、配位子化合物のみが添加された電池の未放電ガス量が、フッ素系界面活性剤と配位子化合物との両方が添加されていない電池の未放電ガス量より大きいことを示している。
【0062】
複数の未放電ガス量計測結果のうちの実施例1の電池に対応する未放電ガス量計測結果は、100%を示し、実施例2の電池に対応する未放電ガス量計測結果は、97%を示している。複数の未放電ガス量計測結果は、実施例1、2の電池の未放電ガス量が比較例1の電池の未放電ガス量と同等ことを示し、または、比較例1の電池の未放電ガス量より小さいことを示している。すなわち、複数の未放電ガス量計測結果は、フッ素系界面活性剤と配位子化合物の両方が添加された電池の未放電ガス量が、フッ素系界面活性剤と配位子化合物とが添加されていない電池の未放電ガス量より小さいことを示している。
【0063】
複数の未放電ガス量計測結果のうちの比較例4の電池に対応する未放電ガス量計測結果は、130%を示している。複数の未放電ガス量計測結果は、比較例4の電池の未放電ガス量が、比較例1の電池の未放電ガス量より大きいことを示している。すなわち、複数の未放電ガス量計測結果は、25ppm以下のフッ素系界面活性剤と25ppm以下の配位子化合物とが添加された電池の未放電ガス量が、フッ素系界面活性剤と配位子化合物との両方が添加されていない電池の未放電ガス量より大きいことを示している。
【0064】
複数の未放電ガス量計測結果は、さらに、実施例1、2の電池の未放電ガス量が、比較例4の電池の未放電ガス量より小さいことを示している。すなわち、複数の未放電ガス量計測結果は、フッ素系界面活性剤添加量が500ppm以下であるときで、かつ、配位子化合物添加量が500ppm以下であるときに、50ppm以上のフッ素系界面活性剤と50ppm以上の配位子化合物とが添加された電池の未放電ガス量が、25ppm以下のフッ素系界面活性剤と25ppm以下の配位子化合物とが添加された電池の未放電ガス量より小さいことを示している。
【0065】
複数の未放電ガス量計測結果のうちの比較例5の電池に対応する未放電ガス量計測結果は、90%を示している。複数の未放電ガス量計測結果は、比較例5の電池の未放電ガス量が実施例1、2の電池の未放電ガス量より小さく、かつ、比較例1の電池の未放電ガス量より小さいことを示している。すなわち、複数の未放電ガス量計測結果は、1000ppm以上のフッ素系界面活性剤と1000ppm以上の配位子化合物の両方が添加された電池の未放電ガス量も、フッ素系界面活性剤と配位子化合物との両方が添加されない電池の未放電ガス量より小さいことを示している。
【0066】
電池に添加された配位子化合物は、電解液中の亜鉛イオンZn2+に配位結合して錯体を形成する。電解液中の亜鉛イオンZn2+の濃度は、電解液中の亜鉛イオンZn2+が錯体に形成されることにより、低下する。次化学反応式で示される電池内ガス発生反応は、電解液中の亜鉛イオンZn2+の濃度が低下することにより、右に進行する。
Zn+2HO+2OH→[Zn(OH)2-+H
配位子化合物のみが添加された電池の未放電ガス量が、フッ素系界面活性剤と配位子化合物との両方が添加されていない電池の未放電ガス量より大きいことは、配位子化合物のみが添加された電池の電解液中の亜鉛イオンZn2+の濃度が低下したことにより、電池内ガス発生反応が右に進行したためであると考えられる。
【0067】
電池に添加されたフッ素系界面活性剤は、負極5に含有される亜鉛合金粉の表面に付着する。金属亜鉛Znが電解液に溶解する反応は、フッ素系界面活性剤が亜鉛合金粉の表面に付着することにより、抑制される。金属亜鉛Znが電解液に溶解する反応では、水素ガスが発生する。フッ素系界面活性剤が電池に添加されることにより未放電ガス量の増加が抑制されることは、金属亜鉛Znが電解液に溶解する反応が抑制されるためであると考えられる。
【0068】
以上のことから、複数の評価結果は、電池1が、未放電状態で放置されたときに電池1内に発生するガスの量を増加させることなく放電性能を向上させることができることを示している。電池に添加された配位子化合物は、電解液中の亜鉛イオンZn2+に配位結合して錯体を形成する。電解液中の亜鉛イオンZn2+の濃度は、電解液中の亜鉛イオンZn2+が錯体に形成されることにより、低下する。負極5に含有される金属亜鉛Znが電解液中に溶解する反応は、電解液中の亜鉛イオンZn2+の濃度が低下することにより、促進される。配位子化合物が電池に添加された場合でも、電池の放電性能が低下しないのは、負極5に含有される金属亜鉛Znが電解液中に溶解することが促進されることによるものであると考えられる。
【0069】
[実施形態の電池1の効果]
実施形態の電池1は、正極3と、亜鉛を含有する負極5と、正極3と負極5とが浸漬される電解液と、パーフルオロアルキル基を有する化合物であるフッ素系界面活性剤と、亜鉛イオンZn2+と錯体を形成する配位子化合物とを備えている。亜鉛の質量に対するフッ素系界面活性剤の質量の比率は、50ppm以上であり、かつ、500ppm以下である。亜鉛の質量に対する配位子化合物の質量の比率は、50ppm以上であり、かつ、500ppm以下である。このとき、実施形態の電池1は、未放電状態で放置されたときに電池内に発生するガスの量を増加させることなく放電性能を向上させることができる。
【0070】
実施形態の電池製造方法は、電池1を製造するときに利用される方法である。実施形態の電池製造方法は、フッ素系界面活性剤を含有する負極用水酸化カリウム電解液を用いて負極5を作製することを備えている。または、実施形態の電池製造方法は、配位子化合物を含有する電解液を正極3に含侵させることを備えている。このような電池製造方法によれば、電池1は、負極5に含まれる金属亜鉛の表面にフッ素系界面活性剤が付着するように、または、電解液に溶解する亜鉛イオンZn2+に配位子化合物が配位結合して錯体が形成されるように、適切に作製されることができる。
【0071】
ところで、既述の電池製造方法では、フッ素系界面活性剤を含有する負極用水酸化カリウム電解液を用いて負極5が作製されることにより、電池1にフッ素系界面活性剤が添加されているが、他の方法で電池1にフッ素系界面活性剤が添加されてもよい。たとえば、フッ素系界面活性剤は、フッ素系界面活性剤を含有する電解液が正極3の内側に注入されることにより、電池1に添加される。このような場合でも、電池1は、未放電状態で放置されたときに電池内に発生するガスの量を増加させることなく放電性能を向上させることができる。
【0072】
ところで、既述の電池製造方法では、配位子化合物を含有する電解液が正極3の内側に注入されることにより、電池1に配位子化合物が添加されているが、他の方法で電池1に配位子化合物が添加されてもよい。たとえば、配位子化合物は、配位子化合物を含有する電解液を用いて負極5が作製されることにより、電池1に添加される。このような場合でも、電池1は、未放電状態で放置されたときに電池内に発生するガスの量を増加させることなく放電性能を向上させることができる。
【0073】
以上、実施例を説明したが、前述した内容により実施例が限定されるものではない。また、前述した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、前述した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。さらに、実施例の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換及び変更のうち少なくとも1つを行うことができる。
【符号の説明】
【0074】
1 :電池
3 :正極
5 :負極
図1
図2