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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024011338
(43)【公開日】2024-01-25
(54)【発明の名称】包装用紙
(51)【国際特許分類】
   D21H 19/10 20060101AFI20240118BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20240118BHJP
   D21H 19/84 20060101ALI20240118BHJP
   D21H 27/10 20060101ALI20240118BHJP
【FI】
D21H19/10 Z
B65D65/40 D
D21H19/84
D21H27/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022113259
(22)【出願日】2022-07-14
(71)【出願人】
【識別番号】000241810
【氏名又は名称】北越コーポレーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098899
【弁理士】
【氏名又は名称】飯塚 信市
(74)【代理人】
【識別番号】100163865
【弁理士】
【氏名又は名称】飯塚 健
(72)【発明者】
【氏名】加藤 美沙紀
【テーマコード(参考)】
3E086
4L055
【Fターム(参考)】
3E086AA01
3E086AB01
3E086BA14
3E086BA15
3E086BB51
4L055AA03
4L055AC06
4L055AG12
4L055AG48
4L055AG50
4L055AG56
4L055AG59
4L055AG67
4L055AG80
4L055AG82
4L055AG85
4L055AG89
4L055AG97
4L055AH10
4L055AH16
4L055AH37
4L055AJ01
4L055BE08
4L055CD01
4L055CF36
4L055CH13
4L055EA12
4L055EA14
4L055EA19
4L055EA40
4L055FA13
4L055FA20
4L055GA05
4L055GA30
(57)【要約】
【課題】 プラスチックの使用量を低減し、かつヒートシール層面と原紙面の低温でのヒートシールにおいても良好なヒートシール強度を有する包装用紙を提供すること。
【解決手段】 基紙の一方の面にアイオノマー、エチレン系コポリマー、熱可塑性ウレタン、ポリ塩化ビニリデン、ポリ乳酸及びポリブチレンサクシネートから成る群から選択されるいずれか1種以上を含むヒートシール層を有し、前記基紙のもう一方の面にポリエチレンイミンが塗布されてなる接着補助層を有し、前記ヒートシール層面と接着補助層面とを重ね合わせて測定した静摩擦係数が0.20以上であることを特徴とする包装用紙。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基紙の一方の面にアイオノマー、エチレン系コポリマー、熱可塑性ウレタン、ポリ塩化ビニリデン、ポリ乳酸及びポリブチレンサクシネートから成る群から選択されるいずれか1種以上を含むヒートシール層を有し、前記基紙のもう一方の面にポリエチレンイミンが塗布されてなる接着補助層を有し、前記ヒートシール層面と前記接着補助層面とを重ね合わせて測定した静摩擦係数が0.20以上であることを特徴とする包装用紙。
【請求項2】
前記ヒートシール層が、乾燥塗工量で1~20g/m2の範囲であることを特徴とする請求項1に記載の包装用紙。
【請求項3】
前記接着補助層が、乾燥塗工量で0.05~3g/m2の範囲であることを特徴とする請求項1又は2に記載の包装用紙。
【請求項4】
前記基紙とヒートシール層との間に、更にバインダーを含むアンダー層を有することを特徴とする請求項1に記載の包装用紙。
【請求項5】
前記接着補助層を有する面の平滑度が5秒以上であることを特徴とする請求項1に記載の包装用紙。
【請求項6】
基紙を用意する工程と、
前記基紙の一方の面に、ポリエチレンイミンを塗工、サイズプレス、ゲートロール、含浸、噴霧から成る群から選択されるいずれかの方法で、乾燥塗工量で0.05~3g/m2の範囲で塗布することで基紙表面に接着補助層を付与する工程と、
前記基紙のもう一方の面にアイオノマー、エチレン系コポリマー、熱可塑性ウレタン、ポリ塩化ビニリデン、ポリ乳酸及びポリブチレンサクシネートから成る群から選択されるいずれか1種以上を含むヒートシール層用塗工液を乾燥塗工量で1~20g/m2の範囲で塗工することで基紙のもう一方の表面にヒートシール層を付与する工程と、を有することを特徴とする包装用紙の製造方法。
【請求項7】
前記ヒートシール層を付与する工程において、前記ヒートシール層用塗工液は水系エマルジョンであることを特徴とする請求項6に記載の包装用紙の製造方法。
【請求項8】
前記ヒートシール層用塗工液は、アイオノマー、エチレン系コポリマー、熱可塑性ウレタン、ポリ塩化ビニリデン、ポリ乳酸及びポリブチレンサクシネートから成る群から選択されるいずれか1種以上と水のみを含むことを特徴とする請求項6に記載の包装用紙の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチックの使用量を低減し、ヒートシール層面と原紙面の低温でのヒートシールにおいても良好なヒートシール強度を有する包装用紙に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プラスチックゴミ問題が深刻化している。世界のプラスチックの生産量は4億トン/年を超えると言われ、その中でも包装容器セクターでのプラスチック生産量が多く、プラスチックゴミの原因になっている。プラスチックは半永久的に分解せず、そのゴミは自然環境下でマイクロプラスチック化し、生態系に深刻な悪影響を与えている。特に海洋の汚染は著しく、そのプラスチックゴミは回収不可能と言われている。今後、プラスチックの使用を低減することが地球環境にとって必要である。
【0003】
包装容器に使用されるプラスチックとしては、飲料のボトル等に使用されるポリエチレンテレフタレート(PET)、レジ袋や容器のラミネートに使用されるポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)が特に多く使用されている。プラスチックの使用量を低減するための対策手段として、紙でプラスチックを代替することが提案されている。しかしながら、紙でプラスチックを代替する場合であっても、袋や容器に加工する際にはヒートシール剤としてポリエチレンやポリプロピレンが多量にラミネートされて使用される。これらプラスチックのラミネート量は商品コンセプトによって様々だが、概ね30~50g/m2程度であり、用途によっては300g/m2と多量に用いられる場合もある。
【0004】
ラミネート紙はラミネート面同士で接着するように設計されていることが多いが、加工する際の容器の設計によってはラミネート面とラミネート面の裏面でありラミネート層が設けられていない原紙面との接着性が求められる場合もある。例えば、片面ラミネート紙を紙コップの胴部分のように筒状に接着したい場合には、ラミネート面と原紙面との接着性が良好でなくてはならない。また、加工機の仕様からヒートシール温度をあまり上げられない場合もある。一般的にラミネート面と原紙面との接着性はラミネート面同士の接着性よりも低く、また低い温度でのヒートシール加工も接着力の低下に繋がることが多い。ラミネート面の接着力を上げる方法としてはラミネート量を増量させるという手法が知られており、このような接着力を低下させる条件が重なる場合には原紙面と接着予定のラミネート面のラミネート量を上述の量よりもさらに増やす、若しくは、原紙面にもプラスチックのラミネートを施すなどの対策が必要になる場合もある。
【0005】
従って、紙でプラスチックを代替した紙容器においても、依然としてプラスチックの使用量は十分に低減されないという問題があり、早急且つ直接的にプラスチックの使用を低減する手段が必要とされている。
【0006】
このような包装用紙として、紙基材上に、スチレン・アクリル酸エステル系共重合樹脂を含有するヒートシール層を有することでヒートシール性とリサイクル時の離解性を付与する提案がある(特許文献1を参照)。また、この他に紙基材の少なくとも一方の面に少なくとも1層のヒートシール層を有する包装用紙であって、前記ヒートシール層がアイオノマーを含み、前記ヒートシール層の乾燥塗工量が全層で2~10g/m2であることでプラスチックの使用量を低減し、ヒートシール性を付与する提案がある(特許文献2を参照)。
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の包装用紙では、ヒートシール層面同士のヒートシール性はあるものの、ヒートシール層面と原紙面とのヒートシール性は不十分であった。このためヒートシール層面と原紙面とのヒートシールにおいて、従来のラミネート紙と同条件で袋やカップへ成形した場合にヒートシール部が接着しない、または容器の使用前や使用中にシール部が剥離するおそれがある。また特許文献2に記載の包装用紙では、プラスチックの使用量の低減効果や高温でのヒートシール層面と原紙面とのヒートシール性はあるものの、低温(100~130℃程度)でのヒートシール層面と原紙面とのヒートシール性が不十分であり、加工機の仕様からヒートシール温度を十分に確保できない時にヒートシール部が接着しないおそれがある。なお、ここで「ヒートシール性」とは、ヒートーシール面の接着性を意味する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2021-70171号公報
【特許文献2】特許第6580291号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上述の問題点に着目してなされたものであり、その目的とするところは、プラスチックの使用量を低減し、かつヒートシール層面と原紙面との低温でのヒートシールにおいても良好なヒートシール強度を有する包装用紙を提供することにある。
【0010】
本発明の他の目的並びに作用効果については、以下の記述を参照することにより、当業者であれば容易に理解されるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明においては、従来のプラスチックラミネート紙(以降、「ポリラミ紙」と略称する場合がある)に含まれるプラスチックの使用量を低減するために、アイオノマー、エチレン系コポリマー、熱可塑性ウレタン、ポリ塩化ビニリデン、ポリ乳酸及びポリブチレンサクシネートのいずれか1種以上を使用する。すなわち、本発明による包装用紙は、基紙の一方の面にアイオノマー、エチレン系コポリマー、熱可塑性ウレタン、ポリ塩化ビニリデン、ポリ乳酸及びポリブチレンサクシネートから成る群から選択されるいずれか1種以上を含むヒートシール層を有し、前記基紙のもう一方の面(以降、「原紙面」と表記する場合がある)にポリエチレンイミンが塗布されてなる接着補助層を有し、前記ヒートシール層面と接着補助層面とを重ね合わせて測定した静摩擦係数が0.20以上であることを特徴とする。原紙面側に接着補助層を有する構成とすることでポリエチレンイミンが原紙面上でヒートシール層面との接着補助剤のように働き、低温でのヒートシールにおいてもヒートシール層面と接着補助面とのヒートシール強度が良好な包装用紙を得ることができる。また、前記ヒートシール層面と接着補助層面の静摩擦係数が0.20以上であることで、ヒートシール工程でヒートシール層面と原紙面とを重ね合わせた際に包装用紙同士が滑りにくくなるので、ヒートシール強度に優れた包装用紙を得ることができる。
【0012】
本発明においては、前記ヒートシール層が、乾燥塗工量で1~20g/m2の範囲であることが好ましい。このような構成とすることで、従来のポリラミ紙に使用されているプラスチックの使用量が30g/m2を超えることと比較すると、ヒートシール層に含まれるプラスチックの使用量を従来の約40~67%にまで削減することができる。
【0013】
本発明においては、前記接着補助層が、乾燥塗工量で0.05~3g/m2の範囲であることが好ましい。このような構成とすることで、十分なヒートシール性を有し、かつ包装用紙同士がブロッキングしにくく加工適性の良い包装用紙を得ることができる。
【0014】
本発明においては、前記基紙と前記ヒートシール層の間に、更にバインダーを含むアンダー層を有しても良い。アンダー層を設けることでより良好なバリア性が得られ、耐水性・耐油性などにすぐれた包装用紙となる。
【0015】
本発明においては、前記接着補助層を有する面の平滑度が5秒以上であることが好ましい。このような構成とすることで、ヒートシール層面と原紙面との密着性が向上し、ヒートシール強度に優れた包装用紙を得ることができる。
【0016】
また、本願発明は包装用紙の製造方法に関する発明としても捉えることができる。本発明にかかる包装用紙の製造方法は、基紙を用意する工程と、前記基紙の一方の面に、ポリエチレンイミンを塗工、サイズプレス、ゲートロール、含浸、噴霧から成る群から選択されるいずれかの方法で、乾燥塗工量で0.05~3g/m2の範囲で塗布することで基紙表面に接着補助層を付与する工程と、前記基紙のもう一方の面にアイオノマー、エチレン系コポリマー、熱可塑性ウレタン、ポリ塩化ビニリデン、ポリ乳酸及びポリブチレンサクシネートのいずれか1種以上を含むヒートシール層用塗工液を乾燥塗工量で1~20g/m2の範囲で塗工することで基紙のもう一方の表面にヒートシール層を付与する工程と、を有することを特徴とする。本発明の包装用紙の製造方法であれば、プラスチックの使用量を低減し、かつヒートシール層面と原紙面の低温でのヒートシールにおいても良好なヒートシール強度を有する包装用紙を得ることができる。
【0017】
本発明においては、前記ヒートシール層を付与する工程において、前記ヒートシール層用塗工液は水系エマルジョンであることが好ましい。水系エマルジョンを用いることにより、塗工量を比較的低くコントロールすることが可能となり、更にVOC(揮発性有機化合物)排出がなくなることで自然環境に対する負荷をより小さくすることができる。
【0018】
本発明においては、前記ヒートシール層用塗工液は、アイオノマー、エチレン系コポリマー、熱可塑性ウレタン、ポリ塩化ビニリデン、ポリ乳酸及びポリブチレンサクシネートから成る群から選択されるいずれか1種以上と水のみを含むことが好ましい。このような構成によれば、ヒートシール強度の低下につながりかねない助剤等を含まないことから、より安定したヒートシール強度を有する包装用紙を得ることができる。
【発明の効果】
【0019】
以上述べたように本発明によれば、プラスチックの使用量を低減し、かつヒートシール層面と原紙面の低温でのヒートシールにおいても良好なヒートシール強度を有する包装用紙を製造することが可能である。本発明の包装用紙を用いた容器製品であれば、仮に自然界にゴミとして不適切に放出された場合であっても、自然環境に与えるプラスチックゴミとしての悪影響を小さくすることが可能であり、プラスチックゴミ問題の解決の一助となる。なお、本発明における包装用紙は、例えば、食品包装における一次袋や二次袋、アイスクリーム等の食糧カップ、カップ容器のフタ材、コーヒー等の飲料用コップ、ホットスナック等の食糧容器及びトレイ、箱、ケース、器等の紙製容器全般に加工可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明に係る包装用紙の構造例を示す図である。
図2】実施例及び比較例により得られた包装用紙の物性を示す図表である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、本発明について実施形態の一例を示して詳細に説明するが、本発明はこれらの記載に限定して解釈されない。本発明の効果を奏する限り、実施形態は種々の変形をしても良い。
【0022】
本発明に係る包装用紙の構成例が図1に示されている。同図において、1は包装用紙、11はヒートシール層、11aはヒートシール層上層、11bはヒートシール層最下層、12はアンダー層、13は基紙、14は紙基材、15は印刷層、16は接着補助層、である。また図1において図中の各層の厚みは実際の厚みと比例するものではない。
【0023】
図1(a)は、基紙13の一方の面に1層からなるヒートシール層11を設け、もう一方の面に1層からなる接着補助層16を設けた例である。図1(b)は基紙13の一方の面にアンダー層12をもう一方の面に印刷層15を設けて紙基材14とし、アンダー層12の上にヒートシール層最下層11b、ヒートシール層上層11aの計2層からなるヒートシール層11を塗工した。また、基紙13のもう一方の面に1層からなる接着補助層16を設けた例である。なお、図1(b)の例においては、ヒートシール層上層11aは複数層設けられても良い。
【0024】
本実施形態において、ヒートシール層は、アイオノマー、エチレン系コポリマー、熱可塑性ウレタン、ポリ塩化ビニリデン、ポリ乳酸及びポリブチレンサクシネートのいずれか1種以上を含むことを特徴とする。ここでアイオノマーとは、金属イオンによる凝集力を利用し高分子を凝集体とした合成樹脂のことを指し、樹脂と金属カチオンが分子間結合して凝集体となるものすべてを含む。例えば、エチレン・メタクリル酸共重合物の金属塩、エチレン・アクリル酸共重合物の金属塩、エチレン・ウレタン系共重合物の金属塩、エチレン・フッ素系高分子共重合物の金属塩等である。本発明においては、乾燥塗工量が比較的少なくとも低温でのヒートシール強度を付与できることから、アイオノマーの中でもエチレン・アクリル酸またはエチレン・メタクリル酸の共重合物の金属塩が好ましい。また、エチレン系コポリマーとしては、ヒートシール強度が特に優れることから、エチレン・アクリル酸共重合物、エチレン・メタクリル酸共重合物、エチレン・アクリル酸エステル共重合物、エチレン・メタクリル酸エステル共重合物、エチレン酢酸ビニル共重合物のいずれかであることが好ましい。熱可塑性ウレタンとしては、特に制限はないが、エステル系、エステル・エーテル系、カーボネート系、芳香族イソシアネート系のいずれかの熱可塑性ウレタンであることが好ましい。ポリ塩化ビニリデンとしては、塩化ビニリデン単独でも、他の高分子との共重合体でも良い。特に制限はないが、共重合体として例えばラテックス、塩化ビニル、メタクリル酸エステル、アクリル酸エステル、不飽和カルボン酸のいずれかとの共重合体であることが好ましい。ポリ乳酸としては、ポリ乳酸単体でも、他の高分子との共重合体でも良い。乳酸としては、L-乳酸とD-乳酸が存在し、それらを重合してポリ乳酸とするが、L-乳酸とD-乳酸の比率は、ヒートシール性能に影響を及ぼさない限りどの比率でも良い。また、共重合体としては、ヒドロキシカルボン酸、脂肪族環状エステル、ジカルボン酸、多価アルコール類のいずれかとの共重合体であることが好ましい。ポリブチレンサクシネート系樹脂としては、ポリブチレンサクシネート単体でも、他の高分子との共重合体でも良い。特に制限はないが、共重合体として例えばアジピン酸やポリエチレングリコール等との共重合体でも良い。本発明においては、アイオノマーもしくはエチレン系コポリマーであることが特に好ましい。ヒートシール層面と原紙面のヒートシール強度に特に優れる。本発明の包装用紙においては、ヒートシール性能に影響を及ぼさない限り、これら以外の樹脂を含んでも良く、さらに複数の樹脂を混合しても良い。
【0025】
本発明の実施形態においては、基紙の一方の面に、アイオノマー、エチレン系コポリマー、熱可塑性ウレタン、ポリ塩化ビニリデン、ポリ乳酸及びポリブチレンサクシネートのいずれか1種以上を含む水系エマルジョンを含有するヒートシール層用塗工液を塗工し、乾燥することでヒートシール層を設けることができる。ヒートシール層に用いるアイオノマー、エチレン系コポリマー、熱可塑性ウレタン、ポリ塩化ビニリデン、ポリ乳酸及びポリブチレンサクシネートのいずれか1種以上を含む樹脂が水系エマルジョンであることが好ましい。水系エマルジョンを用いることにより、塗工量を比較的低くコントロールすることが可能であり、更にVOC排出が無くなることで自然環境に対する負荷をより小さくすることができる。
【0026】
本発明の実施形態においては、ヒートシール層用塗工液には、アイオノマー、エチレン系コポリマー、熱可塑性ウレタン、ポリ塩化ビニリデン、ポリ乳酸及びポリブチレンサクシネートのいずれか1種以上を含む水系エマルジョンの他に、各種助剤を本発明の効果を損なわない範囲で添加しても良い。例えば、粘度調整剤、消泡剤、界面活性剤やアルコールなどのレベリング剤、着色顔料、着色染料、ワックスなどの滑剤、クレーや炭酸カルシウムなどの顔料などである。しかしながら、これらの助剤の添加はヒートシール強度の低下を招きやすいことから添加する場合には少量であることが好ましく、ヒートシール層用塗工液がアイオノマー、エチレン系コポリマー、熱可塑性ウレタン、ポリ塩化ビニリデン、ポリ乳酸及びポリブチレンサクシネートのいずれか1種以上を含む水系エマルジョンのみからなることがより好ましい。
【0027】
本発明においてヒートシール層の塗工量は、基紙の片面あたり、固形分換算で1~20g/m2であることが好ましく、3~15g/m2であればより好ましい。塗工量が1g/m2未満の場合には、十分なヒートシール強度が得られないおそれがある。逆に20g/m2を超える場合には、十分なヒートシール強度は得られるが、プラスチックの使用量も増えるためプラスチック削減効果に乏しくなるおそれがある。なお、本発明の包装用紙において、ヒートシール層は、基紙の表面の一部分のみに設けられているのではなく、全面に設けられていることが通常である。すなわち、ヒートシール層は、例えば網状、島状、線状など、ヒートシールによる接着に必要な部分にのみ設けられているのではなく、基紙の表面の全面を覆うように設けられていることが好ましい。
【0028】
本発明の実施形態においては、ヒートシール層が2層以上で形成されていても良い。ヒートシール層を2層以上とすることにより包装用紙の透気度を高くすることができ、さらに耐水性、耐油性、防湿性も付与してポリラミ紙と同レベルのバリア性を得ることができる。ヒートシール層を2層以上とする場合には、基紙に最も近いヒートシール層最下層の塗工量が他のヒートシール層上層の合計塗工量よりも多い方が好ましい。このように構成することで、包装用紙の透気度をさらに改善することができ、耐水性、耐油性、防湿性が更に向上する。ヒートシール層が2層以上である場合にも、ヒートシール層の全塗工量は固形分換算で1~20g/m2であることが好ましく、3~15g/m2であればより好ましい。
【0029】
本発明におけるヒートシール層用塗工液を塗工する方式としては、特に限定するものではなく、一般に使用されている塗工装置が使用できる。例えばエアーナイフコーター、ブレードコーター、グラビアコーター、フレキソコーター、ロッドブレードコーター、ロールコーター、リバースロールコーター、バーコーター、カーテンコーター、ダイスロットコーター、チャンプレックスコーター、メータリングブレード式のサイズプレスコーター、ショートドウェルコーター、スプレーコーター、ゲートロールコーター、リップコーター等の公知の各種塗工装置を用いることができる。
【0030】
本発明の実施形態においては、基紙とヒートシール層の間にアンダー層を設けても良い。基紙の表面に直接ヒートシール層を設ける構成とした場合には基紙にヒートシール層用塗工液が吸液されやすくヒートシール層の樹脂膜に欠点が生じるおそれもあるため、特に耐水性や耐油性などのバリア性が求められる用途ではヒートシール層用塗工液の塗工量を増やすなどの工夫が必要となる。しかしながら、ヒートシール層の塗工量を増やすとプラスチックの使用量も比例して増えるため、プラスチック削減効果に乏しくなるという問題がある。本発明においては、プラスチックの使用量を増やさずにバリア性を向上させる手段として、基紙とヒートシール層との間にアンダー層を設ける。アンダー層を設けることでヒートシール層用塗工液が基紙に吸液されにくくなり、ヒートシール層塗工液の構成や塗工量を変えずとも耐水性や耐油性などのバリア性を向上させることができる。アンダー層によってヒートシール層用塗工液が基紙に浸透することを防ぐ目止め効果が生じるので、少ない塗工量のヒートシール層でも欠点の少ない樹脂膜が形成しやすくなり、より良好なバリア性を有する包装用紙を得ることができる。また、アンダー層自体にも水や油の浸透を防ぐ効果があるため、ヒートシール層との相乗効果により、優れたバリア性を得ることができる。
【0031】
本発明の実施形態において、アンダー層の構成としては、顔料とバインダーの併用、若しくはバインダーのみであることが好ましい。アンダー層中の顔料としては、一般の印刷用塗工紙の塗工層に使用される公知の顔料を用いることができる。このような顔料としては、例えば、カオリンクレー、炭酸カルシウム(重質炭酸カルシウムや軽質炭酸カルシウム等)、焼成クレー、タルク、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、硫酸亜鉛、炭酸亜鉛、珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム、珪藻土、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の無機顔料、又はアクリル、スチレン、塩化ビニル、ナイロンそのものや、これらを共重合して得られる有機顔料(いわゆるプラスチックピグメント(以降、「PP粒子」と略称する場合がある))などが挙げられる。
【0032】
本発明の実施形態においては、アンダー層中のバインダーについても一般の印刷用塗工紙の塗工層に使用される公知のバインダーを用いることができる。このようなバインダーとしては、例えば、ブタジエン系共重合ラテックス、架橋剤変性澱粉、酸化澱粉、酵素変性澱粉、エステル化澱粉、エーテル化澱粉、カチオン性澱粉、両性澱粉などの澱粉類、ゼラチン、カゼイン、大豆タンパク、ポリビニルアルコール等の水溶性高分子、酢酸ビニル、エチレン酢酸ビニル、ポリウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、アイオノマー、熱可塑性ウレタン、ポリ塩化ビニリデン、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート、その他のエチレン系コポリマー、等の合成樹脂類等を例示できる。
【0033】
本発明の実施形態においては、アンダー層には、本発明の目的とする効果を損ねない範囲で各種助剤を含んでもよく、例えば、粘度調節剤、柔軟剤、光沢付与剤、耐水化剤、分散剤、流動変性剤、紫外線吸収剤、安定化剤、帯電防止剤、架橋剤、サイズ剤、蛍光増白剤、着色剤、pH調節剤、消泡剤、可塑剤、防腐剤が含まれていても良い。
【0034】
アンダー層用塗工液を塗工する方式としては、特に限定するものではなく、一般に使用されている公知の各種塗工装置を用いることができる。例えばエアーナイフコーター、ブレードコーター、グラビアコーター、フレキソコーター、ロッドブレードコーター、ロールコーター、リバースロールコーター、バーコーター、カーテンコーター、ダイスロットコーター、チャンプレックスコーター、メータリングブレード式のサイズプレスコーター、ショートドウェルコーター、スプレーコーター、ゲートロールコーター、リップコーター等の公知の各種塗工装置を用いることができる。
【0035】
本発明の実施形態においては、基紙若しくは紙基材を平滑化処理する工程を含んでも良い。基紙及び紙基材を平滑化処理する方式としては、特に限定するものではなく、一般に使用されているカレンダー装置が使用できる。例えば、マシンカレンダー、ソフトカレンダー、スーパーカレンダー、グロスキャレンダー、シューニップキャレンダー等の公知の各種平滑化装置を用いることができる。また、片艶クラフト紙などに用いられるような、ヤンキードライヤーの鏡面を転写し平滑化処理する工程を含んでも良い。平滑化処理を行った面にヒートシール層を塗工することで、ヒートシール層用塗工液が紙基材及びアンダー層表面に均一に塗工されやすくなることで高い目止め効果も得られ、良好な耐水性を有する包装用紙を得ることができる。
【0036】
本発明の実施形態において、原紙面にはポリエチレンイミンが塗布されてなる接着補助層を有する。ポリエチレンイミンはエチレンイミンを重合したもので接着特性に優れた樹脂であるため、ヒートシール温度が低い場合でも原紙面上で熱可塑性樹脂、特にアイオノマー、エチレン系コポリマー、熱可塑性ウレタン、ポリ塩化ビニリデン、ポリ乳酸及びポリブチレンサクシネートとの接着補助剤のように働き、良好なヒートシール性とヒートシール強度を付与できる。ポリエチレンイミンは、具体的な商品名として、例えばエポミン(登録商標)シリーズ(日本触媒社製)や、セイカダイン4100(大日精化社製)などが挙げられる。本発明の包装用紙においては、ヒートシール性に影響を及ぼさない限り、これら以外のポリエチレンイミンを用いても良い。
【0037】
本発明の実施形態においては、原紙面に、ポリエチレンイミンを含む水系エマルジョンを塗工、サイズプレス、ゲートロール、含浸、噴霧から成る群から選択されるいずれかの方法で塗布することで原紙面に接着補助層を設けることができる。本実施形態においては、ポリエチレンイミンが原紙面の表面に多く分布していることが好ましい。原紙面の表面にポリエチレンイミンが存在することで、ヒートシール層面と原紙面との低温でのヒートシールにおいても、ヒートシール層とポリエチレンイミンが密着し良好なヒートシール強度を付与できる。例えば、原紙面表面にポリエチレンイミンを含む水系エマルジョンを含有する塗工液を塗工し、乾燥することができる。または、基紙の抄造時のサイズプレス工程にてゲートロールコーターやロッドメタリングコーター、2ロールコーター等によって原紙面にポリエチレンイミンを含む水系エマルジョンを含有する塗布液を塗布することもできる。接着補助層を設ける方法としては、上記に限定されることはなく、公知の各種塗工、サイズプレス、ゲートロール、含浸、噴霧方法を用いることができる。
【0038】
本発明の実施形態においては、ヒートシール層、アンダー層、接着補助層に用いる塗工液や塗布液が水系エマルジョンであることが好ましい。水系エマルジョンを用いることにより、塗工量を比較的低くコントロールすることが可能であり、更にVOC排出が無くなり自然環境に対する負荷を小さくすることができる。ポリエチレンイミンの含有量は、基紙の片面あたり、固形分換算で0.05~3g/m2であり、好ましくは0.1~1g/m2である。0.05g/m2未満の場合は、低温でのヒートシール強度において十分な品質を得られない。逆に3g/m2を超える場合は、低温でも十分なヒートシール強度は得られるが、ブロッキングや滑り性の悪化を招き、加工適性を損なうおそれがある。なお、本発明の包装用紙において、接着補助層のポリエチレンイミンは、全面に塗布されていても良いが、基紙のヒートシール層面と原紙面とのヒートシールによる接着に必要な部分にのみに設けられていても良い。
【0039】
本発明の実施形態においては、原紙面へ塗布するポリエチレンイミンエマルジョンを含む塗工液や塗布液には、ポリエチレンイミンの水系エマルジョンの他に、各種助剤を添加しても良い。例えば、粘度調整剤、消泡剤、界面活性剤やアルコールなどのレベリング剤、着色顔料、着色染料、耐水化剤、ワックスなどの滑剤、クレーや炭酸カルシウムなどの顔料、各種バインダーなど公知の製紙薬品である。本発明の包装用紙においては、ヒートシール性能に影響を及ぼさない限り、これら以外の助剤を含んでも良く、さらに複数の助剤を混合しても良い。
【0040】
本発明におけるポリエチレンイミンを各種塗工、サイズプレス、ゲートロール、含浸、噴霧する方式としては、特に限定するものではなく、一般に使用されている塗工装置が使用できる。例えばエアーナイフコーター、ブレードコーター、グラビアコーター、フレキソコーター、ロッドブレードコーター、ロールコーター、リバースロールコーター、バーコーター、カーテンコーター、ダイスロットコーター、チャンプレックスコーター、ゲートロールコーター、ロッドメタリングコーター、2ロールコーター、ショートドウェルコーター、スプレーコーター、ゲートロールコーター、リップコーター等の公知の各種塗工装置を用いることができる。
【0041】
本発明の実施形態においては、接着補助層を有する面の平滑度が5秒以上であることが好ましい。本実施形態のヒートシール層が乾燥塗工量で1~20g/m2の範囲である包装用紙は、従来のポリラミ紙と比較しヒートシール時に糊として働くプラスチックの量が少なく、特にヒートシール層と原紙面の低温でのヒートシールにおいて不利である。そのため、原紙面のヒートシール適性も向上させる必要がある。接着補助層を有する面の平滑度が5秒以上であることで、ヒートシール時にヒートシール層面と原紙面の密着性が増し、ヒートシール強度に優れた包装用紙を得ることができる。本実施形態においては、接着補助層を有する面の平滑度が5秒以上であることが好ましい。より好ましくは10秒以上である。本実施形態において、平滑度はJIS P 8119:1998に準拠して、ベック平滑度試験機(NKE-A1272)にて測定した。
【0042】
本発明の実施形態において、接着補助層を有する面を平滑化する方法としては、接着補助層を設ける前の工程で基紙又は紙基材を平滑化処理しても良いし、接着補助層を設けてから平滑化処理を行っても良い。平滑化処理を行う方式としては、特に限定するものではなく、一般に使用されているカレンダー装置が使用できる。例えば、マシンカレンダー、ソフトカレンダー、スーパーカレンダー、グロスキャレンダー、シューニップキャレンダー等の公知の各種平滑化装置を用いることができる。また、片艶クラフト紙などに用いられるような、ヤンキードライヤーの鏡面を転写し平滑化処理する工程を含んでも良い。
【0043】
本発明の実施形態においては、基紙の原紙面に印刷層を設けても良く、印刷層中には、例えば、公知の印刷用塗工紙の塗工層のように顔料とバインダー、各種助剤の組み合わせであることが好ましい。印刷層の構成は特に限定するものではないが前記アンダー層と同じ顔料やバインダー、各種助剤を組み合わせて使用することができる。原紙面は袋やカップ、器として加工し容器の外側になった際に、中身の表示や宣伝として印刷が行われることがあるため、基紙の原紙面に印刷層のある包装用紙は、良好な印刷適性を得ることができる。また、印刷層によって原紙面が平滑になることで、ヒートシール時にヒートシール層面との密着性が増し、よりヒートシール強度に優れた包装用紙を得ることができる。基紙の原紙面に印刷層を設ける際には、印刷層の上に接着補助層を設ける、もしくは印刷層中にポリエチレンイミンを含有することで、ポリエチレンイミンが原紙面上の最表面でヒートシール層面との接着補助剤のように働き、良好なヒートシール強度を得ることができる。
【0044】
本発明の実施形態においては、ヒートシール層面と接着補助層面とを重ね合わせて測定した静摩擦係数が0.20以上となるように構成し、より好ましくは0.30以上となるように構成する。ヒートシール層面と接着補助層面とを重ね合わせて測定した静摩擦係数を0.20以上とすることで、ヒートシール工程においてのヒートシール層面と原紙面(接着補助層面)との滑りを抑制することができ、ヒートシール温度が比較的低くても良好なヒートシール強度を得ることができる。静摩擦係数が0.20未満の包装用紙は、ヒートシール工程において滑りが発生し、シール位置が本来の位置とずれることでヒートシール面積が減少してしまいヒートシール強度が低下する場合がある。また、接着補助層がヒートシール部分のみに設けられている場合には、シール位置がずれることで接着補助層の位置がシール位置に重ならなくなり、低温でのヒートシールにおいて良好なヒートシール強度を得られないおそれもある。本実施形態において、静摩擦係数はJIS P 8147:2010の水平法に準拠して、万能試験機ストログラフ(VG10E)にて測定した。
【0045】
本発明の実施形態において、ヒートシール層面と接着補助層面の静摩擦係数を0.20以上とする方法としては特に限定するものではなく、基紙に滑りを良くするAKD(アルキルケテンダイマー)等の製紙用薬品を添加しないように構成しても良いし、ヒートシール層面や接着補助層を有する面の平滑度を下げても良い。静摩擦係数が高いと滑りが起こりにくくヒートシール強度に有利であるが、静摩擦係数を上げるためだけに表面の面感を荒くしすぎるとヒートシール層面と原紙面の密着性が低下し、ヒートシール強度が劣る場合もあるので注意が必要である。また、ヒートシール層面の塗工量を増やす、ヒートシール層に使用する樹脂を変える、ヒートシール層に各種助剤を添加する、ヒートシール層と基紙の間にアンダー層を設ける、などを行うと、ヒートシール層面の平滑度が上がり、結果として静摩擦係数が下がる場合がある。これらの行為を行うことは特に制限しないが、ヒートシール層面と接着補助層面の静摩擦係数が0.20以下にならないように注意が必要である。
【0046】
本発明の実施形態において用いる基紙としては特に限定するものではなく、パルプを主成分とする公知の基紙を用いることができる。基紙の主成分となるパルプとしては、LBKP(広葉樹さらしクラフトパルプ)、NBKP(針葉樹さらしクラフトパルプ)などの化学パルプ、GP(砕木パルプ)、PGW(加圧式砕木パルプ)、RMP(リファイナーメカニカルパルプ)、TMP(サーモメカニカルパルプ)、CTMP(ケミサーモメカニカルパルプ)、CMP(ケミメカニカルパルプ)、CGP(ケミグランドパルプ)などの機械パルプ、DIP(脱インキパルプ)などの木材パルプ及びケナフ、バガス、竹、コットンなどの非木材パルプを用いることができる。これらは、単独で使用するか、又は任意の割合で混合して使用することが可能である。例えば、パルプとして、LBKP(広葉樹さらしクラフトパルプ)をパルプ中90~100質量部使用することができる。また、本発明の目的とする効果を損なわない範囲において、合成繊維を更に配合することができる。環境保全の観点から、ECF(Elemental Chlorine Free)パルプ、TCF(Total Chlorine Free)パルプ、古紙パルプ、植林木から得られるパルプが好ましい。また、例えば、適切なパルプの叩解度としては、カナダ標準ろ水度(フリーネス)(JIS P 8121:1995「パルプのろ水度試験方法」)で、200~700mlCSF、例えば、450~620mlCSFである。
【0047】
基紙としては填料を含有するものも使用できる。填料としては、カオリンクレー、炭酸カルシウム(重質炭酸カルシウムや軽質炭酸カルシウム等)、焼成クレー、タルク、二酸化チタン、水酸化アルミニウムを例示できる。基紙中の填料含有量は、パルプの乾燥質量100質量部に対して、例えば、1~30質量部である。例えば、パルプの乾燥質量100質量部に対して、軽質炭酸カルシウムを1~10質量部含むと良い。
【0048】
また、基紙には、パルプと填料に加えて、各種公知の製紙用添加剤が含まれていても良い。製紙用添加剤としては、例えば、サイズ剤などの内添紙力増強剤、嵩高剤、歩留り向上剤、濾水性向上剤、着色染料、着色顔料、蛍光増白剤、蛍光消色剤、ピッチコントロール剤などがある。また、澱粉、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミドなどの水溶性高分子が塗布されていても良い。基紙に湿潤紙力増強剤が含まれている場合は、包装用紙のリサイクル性が劣るので、基紙には、湿潤紙力剤が含まれないことが好ましい。製紙用添加剤の配合方法としては、パルプスラリー中に含んでもよく、または製紙後にサイズプレスやゲートロール等で基紙の内部に含浸させても良い。
【0049】
基紙の抄紙方法は、特に限定されるものではなく、長網抄紙機、長網多層抄紙機、円網抄紙機、円網多層抄紙機、長網円網コンビ多層抄紙機、ツインワイヤー抄紙機などの各種抄紙機で製造できる。また、本発明においては、基紙としては単層抄きでも多層抄きであっても良い。
【0050】
本発明の実施形態において、包装用紙の坪量は特に限定するものではないが、例えば10~1000g/m2である。軟包装にも使用できる包装用紙の坪量としては、30~500g/m2が好ましく、30~350g/m2であればより好ましい。
【実施例0051】
次に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。また、例中の「部」、「%」は、特に断らない限りそれぞれ「質量部」、「質量%」を示す。なお、添加部数は、固形分換算の値である。
【0052】
(実施例1)
(基紙の作製)
カナディアンスタンダードフリーネス520mlcsfの広葉樹晒クラフトパルプ100部、軽質炭酸カルシウム(商品名:TP-121、奥多摩工業社製)5部、カチオン化澱粉(商品名:ネオタック30T、日本食品加工社製)0.2部、中性ロジンサイズ(商品名:CC167、星光PMC社製)0.2部に水を加えて紙料を調製し、長網多筒式抄紙機を用いて坪量が228g/m2である紙匹を得た。この紙匹に紙力剤としてポンド式サイズプレスによって、酸化澱粉(商品名:MS3800、日本食品化工社製)を乾燥含浸量が2g/m2となるように含浸して乾燥し、キャレンダーによる平滑化処理を行い米坪が230g/m2である基紙を得た。
【0053】
(包装用紙の作製)
上記で得られた基紙の片面に、水系アイオノマーエマルジョン(商品名:ケミパールS-300、三井化学社製)を乾燥塗工量が5.0g/m2になるようにエアーナイフコーターを用いて塗工し、乾燥してヒートシール層を設け、次いで反対面にポリエチレンイミンエマルジョン(商品名:エポミンP-1000、日本触媒社製)を乾燥塗工量が0.2g/m2になるようにエアーナイフコーターを用いて塗工し、乾燥しヒートシール層面と接着補助層面の静摩擦係数が0.61である包装用紙を作製した。
【0054】
(実施例2)
実施例1で得られた包装用紙のヒートシール層面に、水系アイオノマーエマルジョン(商品名:ケミパールS-300、三井化学社製)を用いて2層目のヒートシール層を乾燥塗工量が5.0g/m2となるようにエアーナイフコーターを用いて塗工して乾燥し、2層合わせた合計の乾燥塗工量が10.0g/m2になるように2層目のヒートシール層を設けた以外は、実施例1と同様にしてヒートシール層面と接着補助層面の静摩擦係数が0.22である包装用紙を作製した。
【0055】
(実施例3)
実施例1において、ヒートシール層の塗工量を3.0g/m2に変更した以外は、実施例1と同様にしてヒートシール層面と接着補助層面の静摩擦係数が0.64である包装用紙を作製した。
【0056】
(実施例4)
実施例1において、ポリエチレンイミンの塗工量を0.1g/m2に変更した以外は、実施例1と同様にしてヒートシール層面と接着補助層面の静摩擦係数が0.59である包装用紙を作製した。
【0057】
(実施例5)
実施例1において、ポリエチレンイミンの塗工量を0.5g/m2に変更した以外は、実施例1と同様にしてヒートシール層面と接着補助層面の静摩擦係数が0.64である包装用紙を作製した。
【0058】
(実施例6)
実施例1において、ヒートシール層に使用する樹脂を水系エチレン・アクリル酸共重合物エマルジョン(商品名:MICHEM FLEX P1883、マイケルマン社製)に変更した以外は、実施例1と同様にしてヒートシール層面と接着補助層面の静摩擦係数が0.86である包装用紙を作製した。
【0059】
(実施例7)
実施例1において、ヒートシール層に使用する樹脂を水系エチレン・酢酸ビニル共重合物エマルジョン(商品名:アクアテックス AC-3100、ジャパンコーティングレジン社製)に変更した以外は、実施例1と同様にしてヒートシール層面と接着補助層面の静摩擦係数が0.93である包装用紙を作製した。
【0060】
(実施例8)
実施例1において、基紙の坪量を50g/m2に変更した以外は、実施例1と同様にしてヒートシール層面と接着補助層面の静摩擦係数が0.27である包装用紙を作製した。
【0061】
(実施例9)
実施例1において、基紙の中性ロジンサイズをAKD(アルキルケテンダイマー)サイズ(商品名:SE2360、星光PMC社製)に変更した以外は、実施例1と同様にしてヒートシール層面と接着補助層面の静摩擦係数が0.23である包装用紙を作製した。
【0062】
(実施例10)
(アンダー層用塗工液の調製)
カオリンクレー(商品名:コンツアー1500、イメリス社製)20部及び重質炭酸カルシウム(商品名:カービラックス、イメリス社製)80部に分散剤(商品名:アロンT-50、東亜合成社製)0.2部を加え、加水してコーレス分散機を用いて水分散し、顔料スラリーを作製した。この顔料スラリーに、バインダーとしてリン酸エステル化澱粉(商品名:MS4600、日本食品加工社製)2部及びスチレンブタジエン共重合ラテックス(商品名:L-1432X、旭化成ケミカルズ社製、粒子径182nm)20部、更に水を加えて分散させ、固形分濃度50%のアンダー層用塗工液を調製した。
【0063】
(紙基材の作製)
実施例1で得られた基紙の片面に、アンダー層用塗工液を乾燥塗工量が20g/m2になるようにブレードコーターを用いて塗工、乾燥し、キャレンダーによる平滑化処理を行い坪量が250g/m2の紙基材を作製した。
【0064】
(包装用紙の作製)
上記で得られた紙基材のアンダー層の表面に、水系アイオノマーエマルジョン(商品名:ケミパールS-300、三井化学社製)を乾燥塗工量が5.0g/m2になるようにエアーナイフコーターを用いて塗工し、乾燥してヒートシール層を設け、次いで基紙の反対面にポリエチレンイミンエマルジョン(商品名:エポミンP-1000、日本触媒社製)を乾燥塗工量が0.2g/m2になるようにエアーナイフコーターを用いて塗工し、乾燥してヒートシール層面と接着補助層面の静摩擦係数が0.31である包装用紙を作製した。
【0065】
(比較例1)
実施例1において、ポリエチレンイミンの塗工量を0g/m2に変更した以外は、実施例1と同様にしてヒートシール層面と接着補助層面(基紙面)の静摩擦係数が0.53である包装用紙を作製した。
【0066】
(比較例2)
実施例1において、ヒートシール層の塗工量を0g/m2に変更した以外は、実施例1と同様にしてヒートシール層面(基紙面)と接着補助層面の静摩擦係数が0.70である包装用紙を作製した。
【0067】
(比較例3)
実施例1において、ヒートシール層に使用する樹脂を水系スチレン・アクリル共重合物エマルジョン(商品名:サイビノール EK-754、サイデン化学社製)に変更した以外は、実施例1と同様にしてヒートシール層面と接着補助層面の静摩擦係数が0.32である包装用紙を作製した。
【0068】
(比較例4)
実施例1において、基紙の中性ロジンサイズをAKD(アルキルケテンダイマー)サイズ(商品名:SE2360、星光PMC社製)に変更し、ポリエチレンイミンの塗工量を0g/m2に変更した以外は、実施例1と同様にしてヒートシール層面と接着補助層面(基紙面)の静摩擦係数が0.16である包装用紙を作製した。
【0069】
各実施例及び比較例で得られた包装用紙について、以下に示す方法により評価を行った。得られた結果を図2に示す。
【0070】
(1)ヒートシール強度
得られた包装用紙を、幅15mm、長さ15cmのサイズに2枚カットし、包装用紙のヒートシール層面と接着補助層面(ヒートシール層又は接着補助層を設けなかった場合には基紙の表面)とを重ね合わせ、ホットタック試験機(Labthink社製、型番:HTT-L1)で、一定条件(接着幅:15mm、温度:100℃と180℃の2水準、圧力0.2MPa、押し当て時間1.0秒)にてヒートシールした。次いで、ヒートシールしたサンプルを、剥離強度試験機(島津製作所製、型番:オートグラフAGS-X)にて、一定条件(剥離速度:300mm/分)で剥離して、ヒートシール強度を評価した。数値が大きいほどヒートシール強度が強いことを示す。本発明においては、ヒートシール強度が3.00N/15mm以上で良好なヒートシール強度があるといえる。
【0071】
(2)ヒートシール材破性
(1)で得られた剥離後の包装用紙の剥離面を目視によって評価した。
○:シール部の全部分が基紙から材破しており、実用できる。
△:シール部の一部が基紙から材破しており、実用できる。
×:シール部がヒートシール層の界面で剥離している、または接着しておらず、実用できない。
【0072】
(3)静摩擦係数
JIS P 8147:2010の水平法に準拠して、得られた包装用紙のヒートシール層面側をおもり用に、接着補助層面側を水平板用にカットし、それぞれをおもりまたは水平板に固定し、万能試験機ストログラフ(VG10E)にて10.0mm/minでおもりを移動させ、ヒートシール層面と接着補助層面とを重ね合わせた静摩擦係数を測定した。
【0073】
図2より明らかなように、実施例1~9による包装用紙は比較例1~4と比較して、明らかにヒートシール面と原紙面との低温でのヒートシール強度、ヒートシール材破性に優れていた。実験結果が示している様に、本発明であれば、従来のポリエチレンラミネート量と比較してヒートシール層のプラスチック使用量を著しく軽減し、プラスチックゴミ削減に貢献しつつ、かつヒートシール層面と原紙面の低温でのヒートシールにおいても良好なヒートシール強度を有する包装用紙を提供することができる。
図1
図2