(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024113380
(43)【公開日】2024-08-22
(54)【発明の名称】樹脂成形品及び車両用灯具の灯具ユニット
(51)【国際特許分類】
F21S 43/20 20180101AFI20240815BHJP
F21S 43/245 20180101ALI20240815BHJP
F21S 43/14 20180101ALI20240815BHJP
F21S 43/237 20180101ALI20240815BHJP
F21S 43/247 20180101ALI20240815BHJP
F21V 3/10 20180101ALI20240815BHJP
C09D 133/04 20060101ALI20240815BHJP
F21W 103/10 20180101ALN20240815BHJP
F21W 103/55 20180101ALN20240815BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20240815BHJP
【FI】
F21S43/20
F21S43/245
F21S43/14
F21S43/237
F21S43/247
F21V3/10 330
C09D133/04
F21W103:10
F21W103:55
F21Y115:10
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023018316
(22)【出願日】2023-02-09
(71)【出願人】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100136630
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 祐啓
(74)【代理人】
【識別番号】100201514
【弁理士】
【氏名又は名称】玉井 悦
(72)【発明者】
【氏名】釘▲崎▼ 直樹
(72)【発明者】
【氏名】三浦 璃瑳子
(72)【発明者】
【氏名】水谷 圭佑
【テーマコード(参考)】
4J038
【Fターム(参考)】
4J038CG141
4J038KA08
4J038MA02
4J038NA19
(57)【要約】
【課題】湾曲部を有する樹脂成形品及び該樹脂成形品を用いた車両用灯具ユニットにおいて、湾曲部をレーザー剥離して剥離領域を設ける。
【解決手段】
本開示の樹脂成形品であるインナーレンズ23は、少なくとも一部に湾曲部231aを含む透光性基材231と、透光性基材231の表面に遮光性塗料11を塗布してなる遮光性塗膜232を有する。遮光性塗膜232は、該遮光性塗膜を選択的にレーザー剥離した剥離領域233aを含む表示面233を有する。遮光性塗料11を、2液アクリル系塗料と、粒径10~80nmのカーボンブラック顔料12と、分散剤とで構成し、剥離領域233aの少なくとも一部を、湾曲部231aに設けた。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一部に湾曲部を含む透光性基材と、前記透光性基材の表面に遮光性塗料を塗布してなる遮光性塗膜と、を備え、
前記遮光性塗膜が、該遮光性塗膜を選択的にレーザー剥離した剥離領域を含む表示面を含み、
前記剥離領域の少なくとも一部を、前記湾曲部に設けたことを特徴とする樹脂成形品。
【請求項2】
前記遮光性塗料が、2液アクリル系塗料と、粒径10~80nmの黒色系顔料と、分散剤と、を含む、請求項1に記載の樹脂成形品。
【請求項3】
前記遮光性塗膜の膜厚は、10~20μmである、請求項1に記載の樹脂成形品。
【請求項4】
前記透光性基材の裏面の前記剥離領域に対応する領域に、シボ加工を施した、請求項1に記載の樹脂成形品。
【請求項5】
光源と、請求項1に記載の樹脂成形品と、前記光源の光を前記樹脂成形品の長手方向に向けて導く導光体と、を備えたことを特徴とする車両用灯具の灯具ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、レーザー加飾を施した樹脂成形品及び該樹脂成形品を用いた車両用灯具の灯具ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用灯具に用いられる樹脂成形品(インナーレンズやエクステンション等)として、透光性基材の表面を金属蒸着膜で被覆し、該金属蒸着膜の一部をレーザー剥離し、レーザー加飾を施す技術が知られている。例えば、特許文献1,2の文献によれば、樹脂成形品にレーザー加飾を施す場合に、透光性基材に光拡散材を含有させることにより、レーザー光による傷や白濁等を抑制する技術が開示されている。
【0003】
しかし、特許文献1,2の技術によれば、金属蒸着膜を採用したため、レーザー加飾部分がメタル調のデザインに限定されるという問題があった。また、デザイン性向上のため、樹脂成形品に沿って広範囲にレーザー加飾を施したいという要望もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-161344号公報
【特許文献2】特開2018-120037号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本開示の目的は、デザインの自由度を高めつつ、湾曲部にレーザー加飾を施した樹脂成形品及び該樹脂成形品を用いた車両用灯具の灯具ユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示の樹脂成形品は以下の特徴を備える。
(1)少なくとも一部に湾曲部を含む透光性基材と、透光性基材の表面に遮光性塗料を塗布してなる遮光性塗膜と、を備え、遮光性塗膜が、該遮光性塗膜を選択的にレーザー剥離した剥離領域を含む表示面を含み、剥離領域の少なくとも一部を、湾曲部に設けたこと。
【0007】
(2)(1)の場合に、遮光性塗料は、2液アクリル系塗料と、粒径10~80nmの黒色系顔料と、分散剤と、を含むこと。
【0008】
(3)(1)~(2)の場合に、遮光性塗膜の膜厚は、10~20μmであること。
【0009】
(4)(1)~(3)のいずれかひとつの場合に、透光性基材の裏面であって、剥離領域に対応する領域に、シボ加工を施したこと。
【0010】
上記課題を解決するために、本開示の車両用灯具の灯具ユニットは以下の特徴を備える。
(5)光源と、(1)~(4)のいずれかひとつに記載の樹脂成形品と、光源の光を樹脂成形品の長手方向に向けて導く導光体と、を備えたこと。
【発明の効果】
【0011】
本開示の樹脂成形品及び該樹脂成形品を用いた車両用灯具の灯具ユニットによれば、遮光性塗料を塗布して遮光性塗膜を形成したため、メタル調のデザインに限定されない。また、剥離領域の少なくとも一部を湾曲部に設けたため、平坦部のみならず広範囲にレーザー加飾を施すことができ、デザイン性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本開示の一実施形態を示す車両用灯具の灯具ユニットの概略図である。
【
図2】
図1の灯具ユニットの(a)A-A線断面模式図、(b)要部拡大図である。
【
図4】(a)レーザー光の照射状態を示すインナーレンズのB-B線断面模式図、(b)従来の遮光性塗料を塗布した場合の剥離状態を示す模式図、(c)本開示の遮光性塗料を塗布した場合の表示面を示す剥離状態を示す模式図である。
【
図5】従来の遮光性塗膜を薄膜化した様子を示す模式図である。
【
図6】顔料粒子を小径化した様子を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示を車両用前照灯1のデイタイムランニングランプとして用いられる灯具ユニット2に具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。なお、灯具ユニット2は、車両用前照灯1以外の車両用灯具に用いることもできる。
【0014】
図1,2に示すように、車両用前照灯1は、車体に取り付けられる灯具ボディ6と、透明樹脂材料からなるアウターカバー7を備え、両者の内側に灯室8が形成されている。灯室8内には、デイタイムランニングランプである灯具ユニット2と、ハイビームランプ3と、ロービームランプ4と、ターンシグナルランプ5とが収容されている。ハイビームランプ3は、光源31と、光源31の光をインナーレンズ33及びアウターカバー7に向けて反射するリフレクタ32とを備えている。
【0015】
灯具ユニット2は、樹脂成形品であるインナーレンズ23と、LED等の光源(図示なし)と、棒状導光体22とを備える。棒状導光体22は、該棒状導光体22の端部から光源の光を入射し、入射した光をインナーレンズ23の長手方向に沿って導きつつ、車両用前照灯1の正面に向けて出射するように構成されている。なお、本開示の灯具ユニット2の技術は、ボジショニングランプや、クリアランスランプにも使用可能である。
【0016】
インナーレンズ23は、透光性基材231と、透光性基材231の表面に遮光性塗料11を塗布してなる遮光性塗膜232とを備える。遮光性塗膜232は、ヘッドランプユニット等への漏光を防止する効果を有する。
【0017】
透光性基材231は、車幅方向に伸びるように長尺に設けられ、少なくとも一部に湾曲部231aを含む。透光性基材231や棒状導光体22の素材は、アクリルやポリカーボネート等の樹脂材料を好ましく選択できる。
【0018】
図2(b)に示すように、遮光性塗膜232は、遮光性塗膜232を選択的にレーザー剥離してなる剥離領域233aを含む表示面233を含む。また、
図3に示すように、剥離領域233aの少なくとも一部は、湾曲部231aに設けられている。また、遮光性塗膜232の膜厚は、15μm程度である。
【0019】
図4(a)に示すように、遮光性塗膜232をレーザー剥離する場合、曲面(湾曲部231aの表面)やレーザー照射機10から遠位の領域(両端部231bの表面)では、レーザー光Lの入射角度が低くなり、照射範囲が広がってエネルギー密度が低下するため、
図4(b)に示すように、遮光性塗膜232の剥離が不十分となり、残留してしまうという問題があった。このため、従来のインナーレンズ23では、平坦かつレーザー照射機10から近位の領域に剥離領域233aを設けていた。本開示では、
図4(c)に示すように、膜厚を薄膜化し、低エネルギー密度のレーザー照射でも遮光性塗膜232を十分に剥離できるように構成したため、曲面や遠位の領域にも剥離領域233aを配置できる。
【0020】
遮光性塗料11は、2液アクリル系塗料と、粒径10~80nmの黒色系顔料であるカーボンブラック顔料12と、分散剤13とを含む。同粒径であれば、他色の顔料を採用することも可能である。以下、遮光性塗料11について、
図5,6に基づいて詳説する。
【0021】
図5(a)に示すように、従来のカーボンブラック顔料12は、膜厚dを25μm程度とする必要があった。膜厚dを25μm程度よりも薄くすると、カスレが生じたり、
図5(b)に示すように遮光性が不十分となったりするという問題があった。ここで、カーボンブラック顔料12の粒径(粒子の直径)を10~80nmとすると、少量の遮光性塗料11に高密度のカーボンブラック顔料12を含有させ、カスレを防止し、かつ、十分な遮光性を確保しながら、膜厚を10~20μm程度に薄膜化することが可能となる。
【0022】
しかし、カーボンブラック顔料12の粒径を10~80nmとすると、粒子間に分子間力が働いて粒子が凝集し、
図6(a)に示すように、塗膜の平滑性が低下するという問題があった。このため、本開示では、
図6(b)に示すように、遮光性塗料11に分散剤13を含有させることにより、カーボンブラック顔料12が凝集を防ぎ、塗膜の平滑性を改善している。
【0023】
このように、遮光性塗膜232を薄膜化したため、曲面や遠位の領域等のレーザー照射の弱い領域であっても、確実に遮光性塗膜232を剥離することが可能となる。また、遮光性塗膜232を薄膜化することにより、塗装時間や乾燥時間を短縮し、遮光性塗料11を節約する効果も生ずる。
【0024】
図7に示すように、透光性基材231の裏面には、シボ加工等の粗面加工が施されている。シボ234の深さは、15~30μm程度が好ましい。シボ加工は、エッチング等の化学的処理やサンドブラスト等の物理的処理により施すことが可能である。シボ加工を施すことにより、レーザー照射時に生ずる白化やスジ傷を目立ちにくくし、剥離領域233aの意匠性を向上させることができる。
【0025】
したがって、この実施形態のインナーレンズ23及び灯具ユニット2によれば、遮光性塗料11を用いたため、表示面233をメタル調以外のデザインに構成することが可能となる。また、遮光性塗膜232を薄膜化し、剥離領域233aを曲面やレーザー照射機10から遠位の領域にも配置でき、表示面233のデザインの自由度や、デザイン性を向上させることが可能となる。表示面23をデイタイムランニングランプに設けたため、表示面233を常時目立たせることができるという効果がある。
【0026】
なお、本開示は、上記実施形態に限定されるものではなく、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で各部の形状や構成を適宜に変更して実施することも可能である。
【符号の説明】
【0027】
1 車両用前照灯
2 灯具ユニット
3 ハイビームランプ
4 ロービームランプ
5 ターンシグナルランプ
6 灯具ボディ
7 アウターカバー
8 灯室
10 レーザー照射機
11 遮光性塗料
12 カーボンブラック顔料
13 分散剤
21 光源
22 棒状導光体
23 インナーレンズ
31 光源
32 リフレクタ
33 インナーレンズ
231 透光性基材(a:湾曲部、b:両端部)
232 遮光性塗膜
233 表示面(a:剥離領域)
234 シボ
L レーザー光