(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024113386
(43)【公開日】2024-08-22
(54)【発明の名称】鋳造性検証用のダイカスト用金型、このダイカスト用金型によって鋳造された鋳造性検証用のダイカスト品
(51)【国際特許分類】
B22D 17/22 20060101AFI20240815BHJP
B22C 9/06 20060101ALI20240815BHJP
B29C 45/26 20060101ALI20240815BHJP
【FI】
B22D17/22 K
B22C9/06 A
B29C45/26
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023018325
(22)【出願日】2023-02-09
(71)【出願人】
【識別番号】000006943
【氏名又は名称】リョービ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003742
【氏名又は名称】弁理士法人海田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村上 衛
(72)【発明者】
【氏名】前原 亮介
【テーマコード(参考)】
4E093
4F202
【Fターム(参考)】
4E093NB03
4F202AM23
4F202AP01
4F202CA11
4F202CB01
4F202CM02
(57)【要約】
【課題】多種多様な観点から鋳造性の評価を行うことのできる鋳造性検証用のダイカスト用金型と、このダイカスト用金型によって鋳造された鋳造性検証用のダイカスト品を提供する。
【解決手段】鋳造性検証用のダイカスト用金型1は、押しピンを意図的に設置しない箇所(B)を設ける構成と、ロードセルを設置する箇所(C)を設けることで、押しピンに掛かる押圧力を計測する構成と、得られたダイカスト品50に形成されるリブ形状部53において、湯口側と反湯口側に形成された前記リブ形状部53のリブ配置を非対称とした構成と、ダイカスト用金型1から得られたダイカスト品50を取り出す方向に対するダイカスト品形状の傾きである抜き勾配について、ダイカスト品50の一部に前記抜き勾配の変更箇所(F)を設ける構成と、を含む。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定型と可動型とによってキャビティが画成されるダイカスト用金型の該キャビティに金属溶湯を充填することでダイカスト品を得るダイカスト法を実行可能なダイカスト装置において、得られたダイカスト品の状態からダイカスト法の鋳造性を評価し得る形状を有したキャビティが画成された鋳造性検証用のダイカスト用金型であって、
押しピンを意図的に設置しない箇所を設ける構成と、
ロードセルを設置する箇所を設けることで、押しピンに掛かる押圧力を計測する構成と、
得られたダイカスト品に形成されるリブ形状部において、湯口側と反湯口側に形成された前記リブ形状部のリブ配置を非対称とした構成と、
ダイカスト用金型から得られたダイカスト品を取り出す方向に対するダイカスト品形状の傾きである抜き勾配について、ダイカスト品の一部に前記抜き勾配の変更箇所を設ける構成と、
を含むことを特徴とする鋳造性検証用のダイカスト用金型。
【請求項2】
請求項1に記載の鋳造性検証用のダイカスト用金型であって、
得られたダイカスト品に複数箇所の羽形状部を形成する構成と、
得られたダイカスト品の一部に肉厚部を形成する構成と、
得られたダイカスト品の一部に貫通した窓形状部を形成する構成と、
を含むことを特徴とする鋳造性検証用のダイカスト用金型。
【請求項3】
請求項2に記載の鋳造性検証用のダイカスト用金型であって、
前記羽形状部の一部を埋子構造としたことを特徴とする鋳造性検証用のダイカスト用金型。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の鋳造性検証用のダイカスト用金型によって鋳造されたことを特徴とする鋳造性検証用のダイカスト品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋳造性検証用のダイカスト用金型と、このダイカスト用金型によって鋳造された鋳造性検証用のダイカスト品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、固定型と可動型とによってキャビティが画成されるダイカスト用金型の該キャビティに金属溶湯を充填することでダイカスト品を得るダイカスト法を実行可能なダイカスト装置が公知である。この種のダイカスト装置の技術分野では、得られたダイカスト品の状態からダイカスト法の鋳造性を評価し得る形状を有したキャビティが画成された鋳造性検証用のダイカスト用金型を用いることで、鋳造性検証用のダイカスト品を得ることが行われている。例えば、下記特許文献1には、同時に多種類の品質テストができるデータプレートとしてのダイカスト品が開示されている。特許文献1によれば、このデータプレートを用いて事前に広範囲のテストデータを取ることで、製品の品質向上、金型の設計リスクの軽減を図ることができる、とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上掲した特許文献1によって開示されたデータプレートは、実際に鋳造されるダイカスト品とは形状が大きく異なるため、得られるテストデータに制約があった。そのため、特許文献1に記載されたデータプレートに代表される従来技術には、鋳造性を評価する点において不十分であり、さらなる改善の余地が残されていた。
【0005】
本発明は、上述した従来技術に存在する課題に鑑みて成されたものであって、その目的は、多種多様な観点から鋳造性の評価を行うことのできる鋳造性検証用のダイカスト用金型と、このダイカスト用金型によって鋳造された鋳造性検証用のダイカスト品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下、本発明について説明する。なお、本発明の理解を容易にするために添付図面の参照番号を括弧書きにて付記するが、それにより本発明が図示の形態に限定されるものではない。
【0007】
本発明に係る鋳造性検証用のダイカスト用金型(1)は、固定型(10)と可動型(20)とによってキャビティ(1a)が画成されるダイカスト用金型(1)の該キャビティ(1a)に金属溶湯(2)を充填することでダイカスト品(50)を得るダイカスト法を実行可能なダイカスト装置において、得られたダイカスト品(50)の状態からダイカスト法の鋳造性を評価し得る形状を有したキャビティ(1a)が画成された鋳造性検証用のダイカスト用金型(1)であって、押しピンを意図的に設置しない箇所(B)を設ける構成と、ロードセルを設置する箇所(C)を設けることで、押しピンに掛かる押圧力を計測する構成と、得られたダイカスト品(50)に形成されるリブ形状部(53)において、湯口側と反湯口側に形成された前記リブ形状部(53)のリブ配置を非対称とした構成と、ダイカスト用金型(1)から得られたダイカスト品(50)を取り出す方向に対するダイカスト品形状の傾きである抜き勾配について、ダイカスト品(50)の一部に前記抜き勾配の変更箇所(F)を設ける構成と、を含むことを特徴とするものである。
【0008】
また、本発明に係る鋳造性検証用のダイカスト用金型(1)は、得られたダイカスト品(50)に複数箇所の羽形状部(54)を形成する構成と、得られたダイカスト品(50)の一部に肉厚部(56)を形成する構成と、得られたダイカスト品(50)の一部に貫通した窓形状部(55)を形成する構成と、を含むことができる。
【0009】
さらに、本発明に係る鋳造性検証用のダイカスト用金型(1)では、前記羽形状部(54)の一部を埋子構造とすることができる。
【0010】
なお、本発明は、上述した鋳造性検証用のダイカスト用金型(1)によって鋳造されたことを特徴とする鋳造性検証用のダイカスト品(50)を含むものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、多種多様な観点から鋳造性の評価を行うことのできる鋳造性検証用のダイカスト用金型と、このダイカスト用金型によって鋳造された鋳造性検証用のダイカスト品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本実施形態に係るダイカスト用金型を備えたダイカスト装置の全体構成例を示す断面図であり、特に、金属溶湯の充填前の状態を示している。
【
図2】本実施形態に係るダイカスト用金型を備えたダイカスト装置の全体構成例を示す断面図であり、特に、金属溶湯の充填後の状態を示している。
【
図3】本実施形態に係る鋳造性検証用のダイカスト用金型によって鋳造された鋳造性検証用のダイカスト品の外観形状を示す図であり、特に、正面、平面及び右側面を表す斜視図を示している。
【
図4】本実施形態に係る鋳造性検証用のダイカスト用金型によって鋳造された鋳造性検証用のダイカスト品の外観形状を示す図であり、特に、背面、底面及び左側面を表す斜視図を示している。
【
図5】本実施形態に係る鋳造性検証用のダイカスト用金型によって鋳造された鋳造性検証用のダイカスト品の外観形状を示す図であり、特に、正面、右側面及び底面を表す斜視図を示している。
【
図6】本実施形態に係る鋳造性検証用のダイカスト用金型によって鋳造された鋳造性検証用のダイカスト品の外観形状を示す図であり、特に、背面、左側面及び平面を表す斜視図を示している。
【
図7】本実施形態に係る鋳造性検証用のダイカスト用金型によって鋳造された鋳造性検証用のダイカスト品の外観形状を示す図であり、特に、正面図を示している。
【
図8】本実施形態に係る鋳造性検証用のダイカスト用金型によって鋳造された鋳造性検証用のダイカスト品の外観形状を示す図であり、特に、背面図を示している。
【
図9】本実施形態に係る鋳造性検証用のダイカスト用金型によって鋳造された鋳造性検証用のダイカスト品の外観形状を示す図であり、特に、右側面図を示している。
【
図10】本実施形態に係る鋳造性検証用のダイカスト用金型によって鋳造された鋳造性検証用のダイカスト品の外観形状を示す図であり、特に、左側面図を示している。
【
図11】本実施形態に係る鋳造性検証用のダイカスト用金型によって鋳造された鋳造性検証用のダイカスト品の外観形状を示す図であり、特に、平面図を示している。
【
図12】本実施形態に係る鋳造性検証用のダイカスト用金型によって鋳造された鋳造性検証用のダイカスト品の外観形状を示す図であり、特に、底面図を示している。
【
図13】
図3~12で示した本実施形態に係る鋳造性検証用のダイカスト品にビスケットやランナー等が付いた状態を示す図であり、図中の分図(a)が正面視を示し、分図(b)が左側面視を示している。
【
図14】本実施形態に係る鋳造性検証用のダイカスト用金型と、このダイカスト用金型によって鋳造された鋳造性検証用のダイカスト品の特徴的な構成を説明するための斜視図である。
【
図15】本実施形態に係る鋳造性検証用のダイカスト用金型と、このダイカスト用金型によって鋳造された鋳造性検証用のダイカスト品の特徴的な構成を説明するための斜視図である。
【
図16】本実施形態に係る鋳造性検証用のダイカスト用金型と、このダイカスト用金型によって鋳造された鋳造性検証用のダイカスト品の特徴的な構成を説明するための斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための好適な実施形態について、図面を用いて説明する。なお、以下の実施形態は、各請求項に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0014】
本実施形態に係る鋳造性検証用のダイカスト用金型1と、このダイカスト用金型1によって鋳造された鋳造性検証用のダイカスト品50について説明する前に、まずは
図1および
図2に基づいて、本実施形態に係るダイカスト品50を鋳造することができるダイカスト装置の全体構成についての説明を行う。ここで、
図1および
図2は、本実施形態に係るダイカスト用金型1を備えたダイカスト装置の全体構成例を示す断面図であり、特に、
図1は金属溶湯の充填前の状態を示しており、
図2は金属溶湯の充填後の状態を示している。
図1および
図2に示されるように、ダイカスト用金型1は、ダイカスト法を実行するダイカスト装置の主要構成部材として設けられている。
【0015】
本実施形態に係るダイカスト用金型1は、固定ダイス12と固定ホルダ11とを備える固定型10と、可動ダイス22と可動ホルダ21とを備える可動型20とを有している。固定ダイス12と可動ダイス22とによって、キャビティ1aが画成される。また、ダイカスト用金型1には、スリーブ30が設けられている。スリーブ30は、ビスケット形成部1b、ランナー形成部1c、およびゲート形成部1dを介してキャビティ1aと連通している。また、スリーブ30内には、プランジャーチップ31が設けられている。プランジャーチップ31は、スリーブ30内を進退可能である。さらに、プランジャーチップ31の前進方向対向位置であるビスケット形成部1bの位置には、分流子40が設けられている。プランジャーチップ31がスリーブ30内を前進してアルミニウム溶湯等の金属溶湯2を押圧すると、金属溶湯2は鋳込口であるビスケット形成部1b、ランナー形成部1c、およびゲート形成部1dを介してキャビティ1aに充填される。なお、
図1に示される状態から、
図2に示される状態へとプランジャーチップ31を前進させることにより、プランジャーチップ31によって押圧されてスリーブ30内を送られてきた金属溶湯2が、分流子40に衝突する。そして、分流子40に衝突した金属溶湯2は、分流子40によってランナー形成部1cおよびゲート形成部1dへと導かれるように構成されている。
【0016】
つぎに、本発明者らが創案した本実施形態に係る鋳造性検証用のダイカスト用金型1と、このダイカスト用金型1によって鋳造された鋳造性検証用のダイカスト品50について、
図3~
図16を用いて説明を行う。
【0017】
ここで、
図3~
図12は、本実施形態に係る鋳造性検証用のダイカスト用金型によって鋳造された鋳造性検証用のダイカスト品の外観形状を示す図であり、特に、
図3は正面、平面及び右側面を表す斜視図を示し、
図4は背面、底面及び左側面を表す斜視図を示し、
図5は正面、右側面及び底面を表す斜視図を示し、
図6は背面、左側面及び平面を表す斜視図を示し、
図7は正面図を示し、
図8は背面図を示し、
図9は右側面図を示し、
図10は左側面図を示し、
図11は平面図を示し、
図12は底面図を示している。また、
図13は、
図3~12で示した本実施形態に係る鋳造性検証用のダイカスト品にビスケットやランナー等が付いた状態を示す図であり、図中の分図(a)が正面視を示し、分図(b)が左側面視を示している。さらに、
図14~
図16は、本実施形態に係る鋳造性検証用のダイカスト用金型と、このダイカスト用金型によって鋳造された鋳造性検証用のダイカスト品の特徴的な構成を説明するための斜視図である。
【0018】
まず、
図3~
図12を参照して、本実施形態に係る鋳造性検証用のダイカスト用金型1によって鋳造された鋳造性検証用のダイカスト品50の形状について、説明する。
【0019】
本実施形態に係る鋳造性検証用のダイカスト品50は、正面視で縦長の略長方形をした平板状の平板状基部51と、この平板状基部51の正面側の四隅と四辺の中央部、ならびに略長方形の中心部に対して前方に向けて延びるように立設された9個の柱状部52と、平板状基部51の正面側に壁面として設けられる複数のリブ形状部53と、平板状基部51の左側下方位置と右側下方位置、ならびに右側上方位置からそれぞれ左右外方に向けて形成された3つの羽形状部54と、平板状基部51の右側上方位置に形成された羽形状部54における平板状基部51との接続部の根元位置に貫通して設けられた窓形状部55と、平板状基部51の背面側の上方中央位置から後方に向けて膨出するように設けられた肉厚部56と、を有して構成されている。
【0020】
なお、
図3~
図12で示した本実施形態に係る鋳造性検証用のダイカスト品50は、
図1および
図2で例示したダイカスト装置のダイカスト用金型1で鋳造することができ、ダイカスト用金型1で鋳造を完了した際には、
図13で示すように、鋳造性検証用のダイカスト品50の下方側である湯口側の位置には、ビスケット61やランナー62、ゲート63が形成されており、鋳造性検証用のダイカスト品50の上方側である反湯口側の位置には、ゲート63やランナー62が形成されている。これらビスケット61やランナー62、ゲート63は、
図1および
図2で示したダイカスト用金型1が有するビスケット形成部1b、ランナー形成部1c、およびゲート形成部1dによって形成される部位であり、キャビティ1aによって鋳造性検証用のダイカスト品50を鋳造する際にダイカスト法の製造上で不可避的に形成される部位である(なお、
図1および
図2では、キャビティ1a上方側である反湯口側の位置に形成し得るゲート63やランナー62については図示を省略してある。)。そして、
図13で示すように、ダイカスト用金型1で鋳造を完了した際の形状から、製品として不要となるビスケット61やランナー62、ゲート63を不図示の切断装置で切断除去することで、本実施形態に係る鋳造性検証用のダイカスト品50が得られることとなる。
【0021】
以上、
図3~
図13を参照して、本実施形態に係る鋳造性検証用のダイカスト用金型1によって鋳造された鋳造性検証用のダイカスト品50の形状について、説明を行った。次に、
図14~
図16を参照図面に加えて、鋳造性検証用のダイカスト用金型1と、このダイカスト用金型1によって鋳造された鋳造性検証用のダイカスト品50の特徴的な構成を説明する。
【0022】
まず、本実施形態に係る鋳造性検証用のダイカスト用金型1では、押しピンを意図的に設置しない箇所を設ける構成を採用した。具体的には、
図14中の符号(A)で示す6箇所の位置に押しピンを設置し、一方で、
図14中の符号(B)で示す3箇所の位置には、押しピンを設置しないこととした。ちなみに、
図14中の符号(B)で示す3箇所の位置は、一般的なダイカスト用金型では押しピンを設置すべき箇所である。このように、本実施形態に係る鋳造性検証用のダイカスト用金型1に対して押しピンを意図的に設置しない箇所(B)を設ける構成を採用することで、鋳造された鋳造性検証用のダイカスト品50が鋳造性検証用のダイカスト用金型1に対して型に抱き付き易い形状となる。つまり、鋳造性検証用のダイカスト品50の型離れを意図的に悪化させる構成を採用することで、鋳造性検証用のダイカスト品50に製品歪みを発生させ、その歪みの状態を検証することで、ダイカスト法の鋳造性を評価することが可能となる。
【0023】
また、本実施形態に係る鋳造性検証用のダイカスト用金型1では、ロードセルを設置する箇所を設けることで、押しピンに掛かる押圧力を計測する構成を採用した。具体的には、
図15の符号(C)で示す2箇所の位置に対してロードセルを設置した。ロードセルについては、押しピンに掛かる押圧力を計測することができるので、鋳造性検証用のダイカスト品50が鋳造性検証用のダイカスト用金型1から離型する際の抵抗力を数値化することができる。離型抵抗力が増加すると押し出し抵抗が増加して製品の歪みが大きくなるなどの影響が出てくるため、鋳造性検証用のダイカスト用金型1に対してロードセルを設置し、離型抵抗力を把握することで、ダイカスト法の鋳造性を評価することが可能となる。
【0024】
また、本実施形態に係る鋳造性検証用のダイカスト用金型1によって鋳造された鋳造性検証用のダイカスト品50については、上述したようにリブ形状部53を有することを説明したが、得られたダイカスト品50に形成されるリブ形状部53については、湯口側と反湯口側に形成されたリブ形状部53のリブ配置が非対称となる構成を採用した。具体的には、
図16から明らかなように、本実施形態に係る鋳造性検証用のダイカスト品50では、平板状基部51の正面側の上半分(
図16中の符号(D)の領域)よりも下半分(
図16中の符号(E)の領域)に対してリブ形状部53が多く形成される構成が採用されている。また、本実施形態のリブ形状部53は、平板状基部51の正面側の縦中心から右側領域の方が左側領域より多く形成される構成が採用されている。このように、鋳造性検証用のダイカスト品50に形成されるリブ形状部53のリブ配置が非対称となる構成を採用することで、1つのダイカスト品50に対して意図的に製品歪みの発生がし易い箇所と、発生し難い箇所を設けることとした。1つのダイカスト品50に対して意図的に製品歪みの影響度合いが異なる形状を設けることで、ダイカスト法の鋳造性を評価することが可能となる。
【0025】
また、本実施形態に係る鋳造性検証用のダイカスト用金型1によって鋳造された鋳造性検証用のダイカスト品50については、ダイカスト用金型1から得られたダイカスト品50を取り出す方向に対するダイカスト品形状の傾きである抜き勾配について、ダイカスト品50の一部に前記抜き勾配の変更箇所を設ける構成を採用した。具体的には、
図16中の符号(F)で示す3つのリブ形状部53の抜き勾配を1.5°に設定し、その他の抜き勾配は一般的な3°程度とした。
図16中の符号(F)で示す3つのリブ形状部53のように、抜き勾配を1.5°と小さくすることで、その他の箇所よりも型抜きがし難く歪み易い形状を意図的に設けることができ、ダイカスト法の鋳造性を評価することが可能となる。
【0026】
また、本実施形態に係る鋳造性検証用のダイカスト用金型1によって鋳造された鋳造性検証用のダイカスト品50については、上述したように、3箇所の羽形状部54を形成する構成を採用した。これら3箇所の羽形状部54は、前後方向の厚みが小さくなっているため、ダイカスト法の実行時に金属溶湯2が流れ難い箇所となっている。つまり、本実施形態では、あえて湯廻りの悪い羽形状部54を形成し、それらの鋳造状態(例えば、製品の表面性状や内部品質)を観察することで、ダイカスト法の鋳造性を評価することが可能となる。
【0027】
なお、本実施形態では、3箇所の羽形状部54を形成する構成のうち、羽形状部54の一部を埋子構造とした。この様な構成の採用により、3箇所の羽形状部54において埋子構造を採用した箇所と非採用の箇所とで表面処理を変更した状態を作り出すことができ、それらの鋳造状態(例えば、製品の表面性状)を対比観察することで、ダイカスト法の鋳造性を評価することが可能となる。
【0028】
また、本実施形態に係る鋳造性検証用のダイカスト用金型1によって鋳造された鋳造性検証用のダイカスト品50については、上述したように、平板状基部51の背面側の上方中央位置から後方に向けて膨出するように肉厚部56を形成する構成を採用した。この肉厚部56は、鋳造時にヒケが発生し易い形状である。つまり、本実施形態では、あえてヒケが発生し易く、その他の箇所より金属溶湯2の凝固形態が異なる肉厚部56を形成し、それらの鋳造状態(例えば、製品の内部品質)を観察することで、ダイカスト法の鋳造性を評価することが可能となる。
【0029】
また、本実施形態に係る鋳造性検証用のダイカスト用金型1によって鋳造された鋳造性検証用のダイカスト品50については、上述したように、平板状基部51の右側上方位置に形成された羽形状部54における平板状基部51との接続部の根元位置で貫通する窓形状部55を形成する構成を採用した。このような貫通した孔形状である窓形状部55の周辺では、湯廻りがし難くなるので、製品品質が悪化する可能性が有る。このように、本実施形態では、意図的に湯廻りが悪くなる窓形状部55を形成し、それらの鋳造状態(例えば、製品の表面性状や内部品質)を観察することで、ダイカスト法の鋳造性を評価することが可能となる。
【0030】
以上、本実施形態に係る鋳造性検証用のダイカスト用金型1と、このダイカスト用金型1によって鋳造された鋳造性検証用のダイカスト品50の特徴的な構成を説明した。本実施形態に係る鋳造性検証用のダイカスト用金型1と、このダイカスト用金型1によって鋳造された鋳造性検証用のダイカスト品50を用いることで、ダイカスト法の鋳造性を評価することが可能となる。特に、種々の異なる金属溶湯2を用いて本実施形態に係る鋳造性検証用のダイカスト品50を鋳造し、これらのダイカスト品50の鋳造性を評価検証することで、様々な金属種毎におけるダイカスト法の最適条件を見い出すことが可能となる。つまり、本実施形態によれば、多種多様な観点から鋳造性の評価を行うことのできる鋳造性検証用のダイカスト用金型1と、このダイカスト用金型1によって鋳造された鋳造性検証用のダイカスト品50を提供することができる。
【0031】
また、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。上記実施形態には、多様な変更又は改良を加えることが可能である。
【0032】
例えば、本実施形態に係る鋳造性検証用のダイカスト用金型1と、このダイカスト用金型1によって鋳造された鋳造性検証用のダイカスト品50が有する上述した各構成は、本発明が取り得る一例を示したに過ぎない。上述した各構成は、同様の作用効果を発揮し得る範囲内において種々の改変が可能である。
【0033】
また例えば、上述した実施形態では、金属溶湯2がアルミニウム溶湯等である場合を例示して説明したが、本発明に適用可能な金属溶湯は、あらゆる種類の金属材料に対して適用可能である。
【0034】
その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0035】
1 鋳造性検証用のダイカスト用金型、1a キャビティ、1b ビスケット形成部、1c ランナー形成部、1d ゲート形成部、2 金属溶湯、10 固定型、11 固定ホルダ、12 固定ダイス、20 可動型、21 可動ホルダ、22 可動ダイス、30 スリーブ、31 プランジャーチップ、40 分流子、50 鋳造性検証用のダイカスト品、51 平板状基部、52 柱状部、53 リブ形状部、54 羽形状部、55 窓形状部、56 肉厚部、61 ビスケット、62 ランナー、63 ゲート。