(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024113387
(43)【公開日】2024-08-22
(54)【発明の名称】車両下部構造
(51)【国際特許分類】
B60K 1/04 20190101AFI20240815BHJP
B62D 25/20 20060101ALI20240815BHJP
【FI】
B60K1/04 Z
B62D25/20 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023018328
(22)【出願日】2023-02-09
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】橋村 忠義
(72)【発明者】
【氏名】小林 卓磨
(72)【発明者】
【氏名】吉田 一揮
(72)【発明者】
【氏名】大森 駿
【テーマコード(参考)】
3D203
3D235
【Fターム(参考)】
3D203AA02
3D203AA31
3D203AA33
3D203BB06
3D203BB12
3D203BB20
3D203BB22
3D203CA25
3D203CB03
3D203DA35
3D203DB05
3D235AA01
3D235BB04
3D235CC14
3D235DD35
3D235FF07
3D235FF09
3D235HH26
(57)【要約】
【課題】電池モジュールに過大な側突荷重が入力されることを抑制する。
【解決手段】車両下部構造は、車幅方向内方に膨出して、車幅方向外側にスライドドアの一部を収容する凹部を画成する膨出部40aと、膨出部40aの車幅方向内方に配設された電池パック60と、を備える。電池パック60は、車幅方向に延在する第1クロスメンバであるクロスメンバ64と、電池モジュール63と、を有する。クロスメンバ64は、膨出部40aと車両前後方向位置が重なるように配設されている。電池モジュール63は、クロスメンバ64の車両前後方向前方側、又は車両前後方向後方側に配設されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車幅方向内方に膨出して、車幅方向外側に車両のスライドドアの一部を収容する凹部を画成する膨出部と、
前記膨出部の車幅方向内方に配設された電池パックと、
を備え、
前記電池パックは、車幅方向に延在する第1クロスメンバと、電池モジュールと、を有し、
前記第1クロスメンバは、前記膨出部と車両前後方向位置が重なるように配設され、
前記電池モジュールは、前記第1クロスメンバの車両前後方向前方側、又は車両前後方向後方側に配設されている、車両下部構造。
【請求項2】
前記電池パックは前記膨出部と車両前後方向位置が重なるように配設された電気機器を更に備え、
前記電気機器は前記膨出部よりも下方に配設されている、請求項1に記載の車両下部構造。
【請求項3】
前記車両は車幅方向に延在する第2クロスメンバを備え、
前記膨出部の車幅方向内方側は、前記第2クロスメンバに接続されている、請求項1又は2に記載の車両下部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両下部構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1が開示するスライドドアの開閉装置は、伝動ベルトと、戸袋と、駆動プーリと、駆動モータと、を備える。伝動ベルトは、ロッカパネルに収容され、スライドドアを移動させる。戸袋は、ロッカパネル内において長尺に形成され、少なくともドア開口部の幅の長さにおいて伝動ベルトを収容する。駆動プーリは、伝動ベルトに係合し、伝動ベルトを移動させる。駆動モータは、駆動プーリを回転駆動する。戸袋の車両前後方向の前部側面には、伝動ベルトが挿通される開口が形成されている。駆動プーリと駆動モータとは、戸袋と離れて戸袋の車両前後方向前方に配置されている。開口に挿通された伝動ベルトは駆動プーリに懸架されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、例えばスライドドアを支持する支持部材を収容する空間を画成する膨出部を、車体側部の下部に形成する場合が有る。そのような場合に、車両に側突荷重が入力されると、膨出部が車幅方向内方に変位し、更に、膨出部の近傍に配設されたフロアサイドメンバ等の一部が、車幅方向内方に向けて変位するおそれが有った。その際、車両の下部に配設された車両駆動用の電池パックに内蔵された電池モジュールに、当該側突荷重が過剰に伝達されるおそれが有った。即ち、電池モジュールに過大な側突荷重が入力されるおそれが有った。
【0005】
本発明の目的は、電池モジュールに過大な側突荷重が入力されることを抑制することができる車両下部構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る車両下部構造は、車幅方向内方に膨出して、車幅方向外側にスライドドアの一部を収容する凹部を画成する膨出部と、前記膨出部の車幅方向内方に配設された電池パックと、を備え、前記電池パックは、第1クロスメンバと、電池モジュールと、を有し、前記第1クロスメンバは、前記膨出部と車両前後方向位置が重なるように配設され、前記電池モジュールは、前記第1クロスメンバの車両前後方向前方側、又は車両前後方向後方側に配設されている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、電池モジュールに過大な側突荷重が入力されることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態に係る車両下部構造を示す図であって、フロア部と、電池パックとの配設関係を示す分解斜視図である。
【
図2】実施形態に係る車両下部構造の膨出部と、電池パックに内蔵された電池モジュール、フレーム、及び電気機器と、の位置的関係について説明するための平面図である。
【
図3】実施形態に係る車両下部構造の電池パックの内部における電池モジュールと、フレームと、電気機器と、の配設関係を示す分解斜視図である。
【
図4】実施形態に係る車両下部構造の膨出部と、電池パックに内蔵された電池モジュール、フレーム、及び電気機器と、の位置的関係について説明するための図であって、
図2のIV-IV線に沿った断面図である。
【
図5】実施形態に係る車両下部構造の第2クロスメンバと、膨出部と、電池パックに内蔵された電池モジュール、フレーム、及び電気機器と、の位置的関係について説明するための図であって、
図2のV-V線に沿った断面図である。
【
図6】実施形態に係る車両下部構造の膨出部が画成する空間に配設されるレール部と、レール部に取付けられた支持部材と、の配設関係を示す概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、実施形態に係る車両下部構造について説明する。なお、各図中のFR,RRは、車両前後方向前方、後方の各々を示す。LH,RHは、車幅方向左方、右方の各々を示す。UP,DNは、車両上下方向上方、下方の各々を示す。また、車幅方向における車両中心側を車幅方向内方といい、車幅方向内方とは反対側を車幅方向外方という。以下の説明では、車両前後方向前方、後方、車幅方向左方、右方、車両上下方向上方、下方を、それぞれ単に「車両前方」「車両後方」「車両左方」「車両右方」「上方」「下方」と称する。また、同一の機能を有する要素については同一の符号を付し、重複する説明を省略する。なお、
図6に示す例では、車幅方向内方をISで示し、車幅方向外方をOSで示している。
【0010】
本実施形態に係る車両下部構造は、例えば電動モータ(不図示)により駆動する車両に適用することができる。また、車両は、その側部に配設されたスライドドア(不図示)を有する。当該スライドドアを開閉することにより、車両の乗降口を開放し、又は閉塞することができる。
図1に例示されるように、車両の車体下部にはフロア部1が形成されている。フロア部1の構造は図示された例に限定されるものではないが、例えば、フロアパネル2と、クロスメンバ10と、サイドメンバ20a,20bと、サイドシルインナ30a,30bと、を備えてもよい。
【0011】
フロアパネル2は車体下部に配設され、車両の車室の床を構成する部材である。またフロアパネル2の下方には電池パック60が取り付けられている。電池パック60は車両の駆動用電力を供給する電源である。フロアパネル2は鉄、鋼等の金属や、樹脂から構成されたパネル材であり、平面視で略矩形の形状を備えてもよい(
図2参照)。フロアパネル2によって車両の車室内と車室外とが仕切られる。
図1に例示されたフロアパネル2の車幅方向中央部、及びその近傍の所定の領域は、上方に向けて凸となるように屈曲して形成され、凸部3を構成している。凸部3は車両前後方向に延在してもよい。
【0012】
また、フロアパネル2には車両の車体骨格部材の一部を構成するクロスメンバ10が取り付けられてもよい。クロスメンバ10はフロアパネル2の上面2aにおいて、上面2aの車両左方側の縁部から車両右方側の縁部にかけて延在している。即ち、車両は車幅方向に延在するクロスメンバ10を備えてもよい。
【0013】
クロスメンバ10は、フロアパネル2の上面2aに溶接等の接合手段を用いて接合されてもよい。図に例示されたクロスメンバ10は車幅方向に延在する長尺部材であり、車幅方向に垂直な断面において下方に向けて開口した略ハット型の形状を有してもよい。クロスメンバ10は鉄、鋼等の金属から構成されてもよい。また、クロスメンバ10は後述するサイドシルインナ30aからサイドシルインナ30bにかけて、連続的に延在してもよい。クロスメンバ10の車幅方向外方側の端部11a,11bは、後述する膨出部40a,40bに溶接等の接合手段を用いて接合されてもよい。図示された例では、クロスメンバ10の車両右方側の端部11aは膨出部40aに接合され、車両左方側の端部11bが膨出部40bに接合されている。
【0014】
また、車両の車体骨格部材は、サイドメンバ20a,20bと、サイドシルインナ30a,30bと、を含んでもよい。サイドメンバ20a,20bは、フロアパネル2の下面に取り付けられた車体骨格部材である。サイドメンバ20a,20bと、フロアパネル2の下面とは、溶接等の接合手段を用いて接合されてもよい。サイドメンバ20aはフロアパネル2の下面のうち、凸部3よりも車両右方側の領域に取り付けられている。サイドメンバ20bはフロアパネル2の下面のうち、凸部3よりも車両左方側の領域に取り付けられている。
【0015】
サイドメンバ20a,20bは車両前後方向に延在する長尺部材であり、車両前後方向に垂直な断面において上方に向けて開口した略ハット型の形状を有してもよい。サイドメンバ20a,20bは鉄、鋼等の金属から構成されてもよい。図示された例では、サイドメンバ20a及びサイドメンバ20bの各々の上部に形成された左右一対のフランジと、フロアパネル2の下面とが接合されている。
【0016】
サイドシルインナ30a,30bは、フロアパネル2の車幅方向外方側の縁部に取り付けられた部材である。サイドシルインナ30aはフロアパネル2の車両右方側の縁部に取り付けられている。サイドシルインナ30bはフロアパネル2の車両左方側の縁部に取り付けられている。サイドシルインナ30a,30bと、フロアパネル2とは、溶接等の接合手段を用いて接合されてもよい。
【0017】
サイドシルインナ30a,30bは車両前後方向に延在する長尺部材であり、車両前後方向に垂直な断面において車幅方向外方に向けて開口した略ハット型の形状を有してもよい。サイドシルインナ30a,30bは鉄、鋼等の金属から構成されてもよい。
【0018】
サイドシルインナ30a及びサイドシルインナ30bの各々の、上部及び下部に形成されたフランジに、サイドシルアウタ(不図示)を接合することにより、車両の車体骨格部材であるサイドシルが形成される。即ち、サイドシルインナ30a及びサイドシルインナ30bの各々は、サイドシルの車幅方向内方側の部分を形成する部材である。また、サイドシルインナ30a及びサイドシルインナ30bの各々に接合されるサイドシルアウタは、サイドシルの車幅方向外方側の部分を形成する部材である。フロアパネル2の車幅方向外方側の部分に、車両前後方向に延在するサイドシルを配設することにより、車体の車両前後方向の剛性が確保される。
【0019】
図1及び
図2に例示されるように、サイドシルインナ30a,30bの車両前後方向における所定の範囲は、車幅方向内方に向けて凸となるように湾曲して膨出部40a,40bを形成している。即ち、車両の車体側部の下部には膨出部40a,40bが形成されている。膨出部40aはサイドシルインナ30aに形成され、膨出部40bはサイドシルインナ30bに形成されている。膨出部40a及び膨出部40bの各々は、車幅方向外側に後述する凹部としての空間S1を画成する壁部であり、車幅方向内方に向けて膨出するように形成される。
【0020】
以下の説明では、代表的に膨出部40aの構成についてより詳細に説明する。なお、図に例示された車体下部構造では、フロア部1は、車幅方向における中心線を通る上下方向に平行な面に対して、略面対称の形状を備える。そのため、膨出部40aと膨出部40bとは、当該面に対して略面対称の形状を備えてもよい。
【0021】
なお、フロア部1の構造は図示された例に限定されず、例えば、膨出部40aと膨出部40bとは当該面に対して略面対称の形状に形成されていなくてもよい。また、膨出部40a及び膨出部40bのうちいずれか一方のみが形成されてもよい。即ち、実施形態に係る車両下部構造が適用される車両は、車体の車両右方側の側部、及び車両左方側の側部の各々にスライドドアが取り付けられた車両であってもよく、そのいずれか一方にスライドドアが取り付けられた車両であってもよい。
【0022】
膨出部40aはサイドシルインナ30aの所定領域から車幅方向内方に向けて膨出するように形成されている。そのため、膨出部40aは車体の車両右方側の下部に形成されている。図に例示された膨出部40aは縦壁部41と、上壁部42と、を備える。縦壁部41は空間S1の車幅方向内方側を画成する。上壁部42は空間S1の上方側を画成する。また、空間S1の下方側は、フロアパネル2のうち縦壁部41よりも車幅方向外方に位置する部分によって画成されてもよい。なお、膨出部40aと同様に、膨出部40bは縦壁部41に相当する壁部と、上壁部42に相当する壁部と、を有してもよい。
【0023】
縦壁部41は、膨出部40a内部の空間S1の車幅方向内方側を画成する壁部であり、図示された例では、フロアパネル2の上面2aに立設されている。また、縦壁部41は車幅方向に湾曲しながら車両前後方向に延在してもよい。
【0024】
図2に例示するように、縦壁部41は平面視において車幅方向内方に向けて凸となるように湾曲している。そのため、縦壁部41のうち、端部41aと端部41bとの間の領域は、端部41a及び端部41bよりも車幅方向内方に位置する。端部41aは縦壁部41の車両前方側の端部であり、端部41bは縦壁部41の車両後方側の端部である。
【0025】
縦壁部41はサイドシルインナ30aの壁部31の一部を構成してもよい。壁部31はサイドシルインナ30aの車幅方向内側の部分を構成する部分である。また、図に例示された壁部31は、フロアパネル2の車幅方向外方側の端部よりも上方に位置する上部32を含む。縦壁部41は上部32の一部を形成してもよい。また、上部32は前部33と後部34とを含んでもよい。
【0026】
前部33は上部32のうち縦壁部41よりも車両前方側の部分を構成する。即ち、上部32のうち、縦壁部41の端部41aよりも車両前方において、前部33は車両前後方向に延在する。後部34は上部32のうち縦壁部41よりも車両後方側の部分を構成する。即ち、上部32のうち、縦壁部41の端部41bよりも車両後方において、後部34は車両前後方向に延在する。
【0027】
図示された例では、縦壁部41の端部41aと、前部33の車両後方側の端部33aと、は連続的かつ滑らかに接続されている。また、縦壁部41の端部41bと、後部34の車両前方側の端部34aと、は連続的かつ滑らかに接続されている。そのため、縦壁部41は、端部33a及び端部34aよりも車幅方向内方に向けて凸となるように湾曲している。このように、縦壁部41は、サイドシルインナ30aの壁部31うち、前部33及び後部34よりも車幅方向内方に向けて膨出するように形成された壁部であってもよい。即ち、膨出部40aは、前部33及び後部34よりも車幅方向内方に向けて膨出するように形成された部分であってもよい。
【0028】
図に例示された上壁部42は、縦壁部41の上方側の縁部から車幅方向外方に向けて延出している。上壁部42はサイドシルインナ30aの上方側を構成する壁部の一部を構成してもよい。また、上壁部42は略水平方向に延在してもよい。
【0029】
膨出部40aの車幅方向内方側は、クロスメンバ10に接続されてもよい。例えば、膨出部40aに、クロスメンバ10の端部11aが接続されてもよい(
図1参照)。膨出部40aと端部11aとは、例えば溶接等の接合手段を用いて接合されてもよい。また、端部11aは、膨出部40aの縦壁部41及び上壁部42に接合されてもよい。
【0030】
膨出部40aが、その車幅方向外側に画成する凹部は、車両のスライドドアの一部を構成する部材を収容可能な領域である。当該凹部は車幅方向外方に向けて開口してもよい。また、当該部材は、車両のスライドドアの下部を支持する支持部材50であってもよい(
図6参照)。当該凹部としての空間S1には、支持部材50を支持する構造体であるレール部52の少なくとも一部が配設されている。
図6に例示されたレール部52は、膨出部40aが画成する空間S1に配設されると共に、膨出部40aに直接的に又は間接的に固定されてもよい。なお、膨出部40bが画成する空間S1にも、レール部52に相当する部材が配設されてもよい。その際には、当該部材とレール部52とは、フロア部1の車幅方向における中心線を通る上下方向に平行な面に対して、略面対称の形状を備えてもよい。
【0031】
図6に例示するように、レール部52は、支持部材50のローラ51が摺動可能に配設されるレール53を備えてもよい。図に例示されたレール53は、車体側部の下部において車両前後方向に延在するように配設される(
図2参照)。また、レール53の車両前方側の所定範囲は、縦壁部41の車幅方向外方において縦壁部41に沿うように延在してもよい。なお、
図6では説明のためレール53を模式的に破線で示した。
【0032】
支持部材50の車幅方向外方側には、スライドドアの車幅方向内方側の部分が、ボルト等の締結具を用いて固定されてもよい。また、支持部材50はレール53の内部に配設されるローラ51を有する。そのため、支持部材50はレール53に沿って移動可能である。スライドドアが車両部Vの乗降口を閉塞した状態では、図に例示されるようにローラ51はレール53の車両前方側の端部に位置する。このとき、支持部材50は空間S1に収容されることとなる。
【0033】
次に、
図1~
図5を参照しながら電池パック60について説明する。
図1、
図2、
図4、及び
図5に例示されるように、電池パック60はフロアパネル2の下方に取付けられる。その際、後述するロアーケース61の車両左方側及び車両右方側の各々に形成された取付部を、サイドメンバ20a及びサイドメンバ20bの各々に固定してもよい。なお、固定方法は特に限定されず、例えばボルト等の締結具を用いて、当該取付部とサイドメンバ20a,20bとを締結することにより固定してもよい。また、図示された例では、電池パック60はサイドメンバ20aとサイドメンバ20bとの間に配設される。即ち、電池パック60は膨出部40a,40bの車幅方向内方に配設される。
【0034】
図3に例示される電池パック60は、ロアーケース61とアッパーカバー62とを備える。ロアーケース61は電池パック60の下方側の部分を形成する部材である。ロアーケース61は、車両上方が開口した有底箱形の部材であり、平面視で略矩形の形状を備えてもよい。ロアーケース61は、電池パック60に内蔵される部材等を配置可能な底部を有する。当該底部は平面であってもよい。もっとも、当該底部には、例えば電池パック60に内蔵される部材等の形状に応じて凹凸が形成されてもよい。ロアーケース61は、例えばアルミニウム等の金属により構成されてもよい。
【0035】
アッパーカバー62は電池パック60の上方側の部分を形成する部材であり、平面視で略矩形の形状を備えるパネル材であってもよい。アッパーカバー62は、例えば樹脂、金属等により構成されてもよい。図示された例では、アッパーカバー62は車両前後方向視で上方に向けて凸となる形状を有する。電池パック60を車体に取り付けた際には、アッパーカバー62がフロアパネル2の凸部3の下面側に沿って車両前後方向に延在することとなる(
図4及び
図5参照)。
【0036】
アッパーカバー62とロアーケース61とは、その周縁部においてボルト等の締結具(不図示)を用いて締結されてもよい。アッパーカバー62でロアーケース61の上方の開口を閉塞することにより、電池パック60の内部が密閉される。なお、電池パック60の形状は図示された例に限定されない。例えば、車体の形状、構造等に応じて、電池パック60の形状を適宜設定してもよい。
【0037】
図3に例示されるように、ロアーケース61の底部には電池モジュール63が配置される。電池モジュール63は、内部に電池セル(不図示)を配置してモジュール化した部品である。電池モジュール63の外装は、電池セルを収容する外装部材であるモジュールケースにより形成されてもよい。なお、ロアーケース61への電池モジュール63の載置の態様は図示された例に限定されず、例えば、電池パック60の形状又は寸法に応じて適宜設定してもよい。また、電池パック60の内部には電池モジュール63同士を電気的に接続するバスバ等の配線部材(不図示)が配設されてもよい。
【0038】
電池セルの構造は特に限定されない。例えば、電池セルは互いに電気的に接続された複数のラミネートセル(不図示)を金属製の外装部材で覆うことにより構成されてもよい。ラミネートセルは、正極板と負極板とをセパレータを介して積層した発電要素を、電解質とともにラミネートフィルムで封止することにより構成されてもよい。また、電池セルは、正極板と負極板とをセパレータを介して積層した発電要素を電解質とともに金属製の外装部材で封止することにより構成されてもよい。電池セルはリチウムイオン二次電池であってもよい。なお、電池モジュール63は複数の電池セルを含んでもよい。その場合には、複数の電池セルの各々同士は、バスバユニット(不図示)等の配線部材によって互いに電気的に接続されてもよい。
【0039】
図3に例示されるロアーケース61の底部には、領域R1と、領域R2と、領域R3と、が設定されている。領域R1は、当該底部のうち車両前後方向の略中央部近傍において、所定の範囲に延在してもよい。また、領域R1は当該底部の車両左方側の端部から車両右方側の端部にかけて連続的に延在してもよい。
【0040】
電池パック60がフロアパネル2の下方に取付けられた状態において、膨出部40a,40bは、領域R1と車両前後方向における位置が等しい部分を含んでもよい(
図2参照)。換言すれば、平面視において、膨出部40a,40bと領域R1とは車幅方向に対向してもよい。また、領域R1には後述するクロスメンバ64が配設されている。即ち、電池パック60は、電池モジュール63と、クロスメンバ64と、を有する。
【0041】
また、領域R2はロアーケース61の底部のうち、車両前方側の部分において所定の範囲に設定されてもよい。領域R3は当該底部のうち、車両後方側の部分において所定の範囲に設定されてもよい。図示された例では、車両前方から車両後方にかけて、領域R2と、領域R1と、領域R3と、がこの順に配設されている。また、領域R2は領域R1に直接隣接してもよい。領域R3は領域R1に直接隣接してもよい。
【0042】
領域R2及び領域R3の各々には、1つの電池モジュール63が配置される。即ち、領域R2及び領域R3は、電池モジュール63を配置するための領域である。なお、図示された例では、領域R2には、電池パック60内において車両前方側に位置する電池モジュール63である電池モジュール63aが配置される。領域R3には、電池パック60内において車両後方側に位置する電池モジュール63である電池モジュール63bが配置される。なお、図に例示された電池パック60には計2つの電池モジュール63が内蔵されるが、これに限定されない。電池パック60の内部には、1つ、又は3つ以上の電池モジュール63が収容されてもよい。例えば、電池パック60は電池モジュール63aのみを有してもよい。
【0043】
クロスメンバ64は領域R1において車幅方向に延在する部材である。また、図に例示されたクロスメンバ64は、膨出部40a,40bと車両前後方向における位置が重なるように配設されている。クロスメンバ64は延在方向に垂直な断面において略矩形の形状を有する長尺部材であってもよい。また、クロスメンバ64はロアーケース61の底部に立設されてもよい。図示された例では、クロスメンバ64はクロスメンバ64aとクロスメンバ64bとを含む。
【0044】
クロスメンバ64aは領域R1の車両前方側の縁部において車幅方向に延在するように立設されたクロスメンバ64である。クロスメンバ64bは領域R1の車両後方側の縁部において車幅方向に延在するように立設されたクロスメンバ64である。
【0045】
また、
図2に例示されるように、クロスメンバ64aの車両前方側には電池モジュール63aが配置されている。クロスメンバ64bの車両後方側には電池モジュール63bが配置されている。即ち、クロスメンバ64の車両前後方向前方側、又は車両前後方向後方側には電池モジュール63が配設されている。
【0046】
なお、電池モジュール63aは、クロスメンバ64aに直接隣接するように配置されてもよい。図示された例では、クロスメンバ64aの車両前方側に直接隣接するように電池モジュール63aが配置されている。また、電池モジュール63bは、クロスメンバ64bに直接隣接するように配置されてもよい。図示された例では、クロスメンバ64bの車両後方側に直接隣接するように電池モジュール63bが配置されている。即ち、電池モジュール63は、クロスメンバ64の車両前後方向前方側、又は車両前後方向後方側に、クロスメンバ64に直接隣接するように配置されてもよい。
【0047】
また、クロスメンバ64aの車幅方向における寸法は、電池モジュール63aのうち、クロスメンバ64a側の端部の車幅方向における寸法より大きくてもよい。同様に、クロスメンバ64bの車幅方向における寸法は、電池モジュール63bのうち、クロスメンバ64b側の端部の車幅方向における寸法より大きくてもよい。即ち、クロスメンバ64の車幅方向における寸法は、電池モジュール63のうち、クロスメンバ64側の端部の車幅方向における寸法より大きくてもよい。
【0048】
また、クロスメンバ64aの車幅方向における寸法は、電池モジュール63aの車幅方向における最大寸法より大きくてもよい。同様に、クロスメンバ64bの車幅方向における寸法は、電池モジュール63bの車幅方向における最大寸法より大きくてもよい。即ち、クロスメンバ64の車幅方向における寸法は、電池モジュール63の車幅方向における最大寸法より大きくてもよい。
【0049】
ロアーケース61の底部にはフレーム65が配設されてもよい。フレーム65は電池モジュール63の側部の少なくとも一部を囲む部材である。フレーム65は、平面視で略矩形の形状を有してもよい。図示された例では、フレーム65はフレーム65aとフレーム65bとを含む。フレーム65aは、電池モジュール63aの側部を囲むフレーム65である。フレーム65bは、電池モジュール63bの側部を囲むフレーム65である。また、フレーム65の一部はクロスメンバ64によって形成されてもよい。
【0050】
なお、電池モジュール63を囲むようにフレーム65が配置された際に、電池モジュール63とフレーム65との間には隙間が形成されてもよい。また、電池パック60の内部には、例えば内蔵される電池モジュール63の数に応じて、1つ、又は3つ以上のフレーム65が配設されてもよい。例えば、電池パック60が電池モジュール63aのみを有する場合には、電池パック60の内部にはフレーム65aのみが配設されてもよい。
【0051】
フレーム65aは電池パック60内における車両前方側の所定の位置に配置されている。
図3に例示されたフレーム65aはクロスメンバ64aと、前壁部65a1と、側壁部65a2と、側壁部65a3と、を備える。クロスメンバ64aは、フレーム65aの車両後方側の部分を形成する。前壁部65a1はフレーム65aの車両前方側の部分を形成する、車幅方向に延在する壁部である。前壁部65a1はクロスメンバ64と略同じ形状を備えてもよい。側壁部65a2はフレーム65aの車両右方側の部分を形成する壁部である。側壁部65a3はフレーム65aの車両左方側の部分を形成する壁部である。側壁部65a2及び側壁部65a3の各々は、クロスメンバ64aと前壁部65a1との間で車両前後方向に延在する、断面略矩形の長尺部材であってもよい。電池モジュール63aは、フレーム65aの内側の領域に配置される。当該領域は、クロスメンバ64aと、前壁部65a1と、側壁部65a2と、側壁部65a3と、によって画成される。
【0052】
フレーム65bは電池パック60内における車両後方側の所定の位置に配置されている。フレーム65bはクロスメンバ64bと、後壁部65b1と、側壁部65b2と、側壁部65b3と、を備えてもよい。クロスメンバ64bは、フレーム65bの車両前方側の部分を形成する。後壁部65b1はフレーム65bの車両後方側の部分を形成する、車幅方向に延在する壁部である。後壁部65b1はクロスメンバ64と略同じ形状を備えてもよい。側壁部65b2はフレーム65bの車両右方側の部分を形成する壁部である。側壁部65b3はフレーム65bの車両左方側の部分を形成する壁部である。側壁部65b2及び側壁部65b3の各々は、クロスメンバ64bと後壁部65b1との間で車両前後方向に延在する、断面略矩形の長尺部材であってもよい。電池モジュール63bは、フレーム65bの内側の領域に配置される。当該領域は、クロスメンバ64bと、後壁部65b1と、側壁部65b2と、側壁部65b3と、によって画成される。
【0053】
電池パック60は電気機器66を備えてもよい。図示された例では、ロアーケース61の底部に電気機器66が配置される。また、電気機器66は領域R1に配設されてもよい。図に例示された電気機器66は、膨出部40a,40bと車両前後方向における位置が重なるように配設されている。電気機器66の種別、又は有する機能は特に限定されない。例えば、電気機器66は、ジャンクションボックス、ディスコネクトスイッチ、リレー、電池モジュール63の容量、電圧、温度等を管理するコントローラ等を有する補機であってもよい。
【0054】
図4及び
図5に例示されるように、電気機器66の上部は、電池モジュール63の上部よりも下方に位置してもよい。図示された例では、電気機器66の上下方向の寸法H2を、電池モジュール63の上下方向の寸法H1よりも小さく設定することにより、電気機器66の上部を、電池モジュール63の上部よりも下方に位置させているが、これに限定されない。例えば、上下方向において領域R1の位置が領域R2及び領域R3の位置よりも低くなるように、ロアーケース61の底部を形成することにより、電気機器66の上部を、電池モジュール63の上部よりも下方に位置させてもよい。なお、寸法H1は電池モジュール63の上下方向における最大寸法である。寸法H2は電気機器66の上下方向における最大寸法である。
【0055】
電気機器66は膨出部40a,40bよりも下方に配設されてもよい。例えば、図示された電気機器66の上部は、膨出部40aの縦壁部41の下方側縁部よりも下方に位置している。また、電気機器66の上部はクロスメンバ64の上方側の縁部よりも下方に位置してもよい。
【0056】
なお、車両前後方向視において、電池モジュール63a,63bの上部は、膨出部40aの縦壁部41の下方側縁部よりも上方に位置してもよい。即ち、車両前後方向視において、電池モジュール63は、膨出部40a,40bと車幅方向に対向する部分を有してもよい。また、
図2に例示されるように、平面視において、電池モジュール63は膨出部40a,40bと車幅方向に対向する部分を有してもよい。例えば図に示されるように、電池モジュール63aの車両後方側の端部と、電池モジュール63bの車両前方側の端部とは、平面視で膨出部40a,40bと車幅方向に対向してもよい。
【0057】
以下、実施形態に係る車両下部構造の作用効果について説明する。
【0058】
(1)実施形態に係る車両下部構造は、車幅方向内方に膨出して、車幅方向外側にスライドドアの一部を収容する凹部を画成する膨出部40aと、膨出部40aの車幅方向内方に配設された電池パック60と、を備える。電池パック60は、車幅方向に延在する第1クロスメンバであるクロスメンバ64と、電池モジュール63と、を有する。クロスメンバ64は、膨出部40aと車両前後方向位置が重なるように配設されている。電池モジュール63は、クロスメンバ64の車両前後方向前方側、又は車両前後方向後方側に配設されている。
【0059】
図2及び
図4を参照しながら、例えば車両の側突により車両右方から車両左方に向けて荷重が入力された際の、実施形態に係る車両下部構造の作用について説明する。車両の右側部から車幅方向内方に向けて側突荷重が入力されると、図中の矢印Aに示されるように、膨出部40aにより画成される凹部としての空間S1に配設されたレール部52に、車両左方向きの側突荷重が入力される。ここで、レール部52はスライドドアの支持部材50を支持するために、比較的高く剛性が設定されている。また、膨出部40aはレール部52を保持するために、比較的高く剛性が設定されている。そのため、当該側突荷重に応じて膨出部40a及びレール部52の車幅方向内方への変位が発生する場合が有る。そして、当該変位に起因して、例えばサイドメンバ20aのうち膨出部40aの近傍に位置する部分が車幅方向内方に向けて凸となるように湾曲して湾曲部を形成し、図中の矢印Bに示すように、電池パック60に向けて変位するおそれが有る。そのような場合であっても、実施形態に係る車両下部構造によれば、当該湾曲部の変位はクロスメンバ64aによって規制される。更に、電池モジュール63aはクロスメンバ64aよりも車両前方側に配置されている。そのため、当該湾曲部から電池モジュール63aに過大な荷重が伝達されることを抑制することができる。同様に、当該湾曲部の変位はクロスメンバ64bによって規制される。更に、電池モジュール63bはクロスメンバ64bよりも車両後方側に配置されている。そのため、当該湾曲部から電池モジュール63bに過大な荷重が伝達されることを抑制することができる。このように、実施形態に係る車両下部構造によれば、電池モジュール63に過大な側突荷重が入力されることを抑制することができる
【0060】
なお、電池モジュール63は、クロスメンバ64の車両前後方向前方側、又は車両前後方向後方側に、クロスメンバ64に直接隣接するように配置されてもよい。これにより、車両に側突荷重が入力された際に、例えばクロスメンバ64aによって電池モジュール63aへのサイドメンバ20aを介した側突荷重の伝達をより確実に抑制することができる。
【0061】
なお、クロスメンバ64の車幅方向における寸法は、電池モジュール63のうち、クロスメンバ64側の端部の車幅方向における寸法より大きくてもよい。これにより、車両に側突荷重が入力された際に、例えばクロスメンバ64aによって電池モジュール63aへのサイドメンバ20aを介した側突荷重の伝達をより確実に抑制することができる。
【0062】
なお、クロスメンバ64の車幅方向における寸法は、電池モジュール63の車幅方向における最大寸法より大きくてもよい。これにより、車両に側突荷重が入力された際に、例えばクロスメンバ64aによって電池モジュール63aへのサイドメンバ20aを介した側突荷重の伝達をより確実に抑制することができる。
【0063】
(2)電池パック60は膨出部40aと車両前後方向位置が重なるように配設された電気機器66を更に備え、電気機器66は膨出部40aよりも下方に配設されてもよい。これにより、側突荷重に起因して膨出部40aが車幅方向内方に変位した場合であっても、膨出部40aの縦壁部41と、電気機器66との直接的又は間接的な接触が抑制される。そのため、車両側突時の電気機器66への過大な荷重の入力を抑制することができる。また、電気機器66を領域R1に配設することができるため、電池パック60内部における電気機器66の配置の自由度をより高めることができる。その結果、電池モジュール63への過大な側突荷重の入力を抑制し、かつ電池パック60を小型化することが可能な車両下部構造を提供することができる。
【0064】
(3)車両は車幅方向に延在する第2クロスメンバであるクロスメンバ10を備え、膨出部40aの車幅方向内方側は、クロスメンバ10に接続されてもよい。これにより、車両側突時の側突荷重は膨出部40aを介して車体の骨格部材であるクロスメンバ10に入力される。そのため、膨出部40aの車幅方向内方に向けた変位をより確実に抑制することができる。
【符号の説明】
【0065】
10 クロスメンバ(第2クロスメンバ)
40a 膨出部
50 支持部材
60 電池パック
63 電池モジュール
64 クロスメンバ(第1クロスメンバ)
66 電気機器
S1 空間(凹部)