(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024113390
(43)【公開日】2024-08-22
(54)【発明の名称】アンモニアガス供給システム及び内燃機関システム
(51)【国際特許分類】
F02M 31/18 20060101AFI20240815BHJP
F02M 31/16 20060101ALI20240815BHJP
F02M 21/02 20060101ALI20240815BHJP
F01P 7/16 20060101ALI20240815BHJP
F01N 5/02 20060101ALI20240815BHJP
F02M 31/14 20060101ALI20240815BHJP
F02B 43/00 20060101ALI20240815BHJP
F02D 19/02 20060101ALI20240815BHJP
【FI】
F02M31/18
F02M31/16 E
F02M21/02 U
F01P7/16 504D
F02M31/16 C
F01N5/02 H
F02M31/14
F02B43/00 Z
F02D19/02 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023018336
(22)【出願日】2023-02-09
(71)【出願人】
【識別番号】316015888
【氏名又は名称】三菱重工エンジン&ターボチャージャ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】上田 裕之
【テーマコード(参考)】
3G092
【Fターム(参考)】
3G092AA01
3G092AB02
3G092AB03
3G092AB19
3G092BB08
3G092DE09S
3G092FA15
3G092FA22
3G092HB03X
3G092HB04X
(57)【要約】
【課題】内燃機関の運転状態が変化しても内燃機関にアンモニアガスを安定的に供給できるアンモニアガス供給システム及び内燃機関システムを提供する。
【解決手段】アンモニアガス供給システムは、液体アンモニアを貯蔵可能に構成されたアンモニア貯蔵タンクと、アンモニア貯蔵タンクを加温し、アンモニア貯蔵タンクの内部に貯蔵された液体アンモニアを気化させるタンク加温器と、アンモニア貯蔵タンクの内部において液体アンモニアが気化したアンモニアガスを内燃機関に導くためのアンモニアガス導入ラインと、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体アンモニアを貯蔵可能に構成されたアンモニア貯蔵タンクと、
前記アンモニア貯蔵タンクを加温し、前記アンモニア貯蔵タンクの内部に貯蔵された前記液体アンモニアを気化させるように構成されたタンク加温器と、
前記アンモニア貯蔵タンクの内部において前記液体アンモニアが気化したアンモニアガスを内燃機関に導くためのアンモニアガス導入ラインと、を備える、
アンモニアガス供給システム。
【請求項2】
前記タンク加温器は、
前記内燃機関の作動時に前記内燃機関から排出される排熱により、前記アンモニア貯蔵タンクに貯蔵された前記液体アンモニアを加温するように構成された、
請求項1に記載のアンモニアガス供給システム。
【請求項3】
前記内燃機関を冷却するための冷却液を循環させる冷却液循環ラインと、
前記冷却液循環ラインに設けられ、前記冷却液循環ラインを流れる前記冷却液を昇圧するための循環ライン側ポンプと、
前記冷却液循環ラインに設けられる前記冷却液を冷却するための冷却装置と、
前記内燃機関から前記冷却装置に向かって流れる前記冷却液の一部を、前記冷却液循環ラインから抜き出して前記タンク加温器に導くための冷却液導入ラインと、をさらに備える、
請求項2に記載のアンモニアガス供給システム。
【請求項4】
前記冷却液導入ラインに設けられ、前記冷却液導入ラインを流れる前記冷却液を昇圧するように構成された冷却液側ポンプをさらに備える、
請求項3に記載のアンモニアガス供給システム。
【請求項5】
前記タンク加温器から前記冷却液循環ラインに前記冷却液を戻すための冷却液戻しラインであって、前記タンク加温器に一端が接続され、前記冷却液循環ラインの前記冷却液導入ラインが接続される接続部と前記冷却装置との間に他端が接続された冷却液戻しラインをさらに備える、
請求項3又は4に記載のアンモニアガス供給システム。
【請求項6】
前記タンク加温器の内部に存在する前記冷却液、又は、前記冷却液導入ラインを流れる前記冷却液、の何れかの温度を取得するように構成された冷却液温度取得装置と、
前記冷却液導入ラインの前記冷却液温度取得装置による温度取得位置よりも上流側に設けられる冷却液昇温装置であって、前記冷却液温度取得装置により取得される前記冷却液の温度が所定値以上となるように前記冷却液導入ラインを介して前記タンク加温器に導入される前記冷却液の温度を上げるように構成された冷却液昇温装置と、をさらに備える、
請求項3又は4に記載のアンモニアガス供給システム。
【請求項7】
前記タンク加温器の内部に存在する前記冷却液、又は、前記冷却液導入ラインを流れる前記冷却液、の何れかの温度を取得するように構成された冷却液温度取得装置と、
前記冷却液導入ラインの前記冷却液温度取得装置による温度取得位置よりも上流側に設けられる冷却液降温装置であって、前記冷却液温度取得装置により取得される前記冷却液の温度が所定値以下になるように前記冷却液導入ラインを介して前記タンク加温器に導入される前記冷却液の温度を下げるように構成された冷却液降温装置と、をさらに備える、
請求項3又は4に記載のアンモニアガス供給システム。
【請求項8】
前記冷却液側ポンプは、出力を可変可能に構成され、
前記アンモニアガス供給システムは、
前記タンク加温器の内部に存在する前記冷却液、又は、前記冷却液導入ラインを流れる前記冷却液、の何れかの温度を取得するように構成された冷却液温度取得装置と、
前記冷却液温度取得装置により取得される前記冷却液の温度が所定値以下になるように前記冷却液側ポンプの出力を制御するように構成された制御装置と、をさらに備える、
請求項4に記載のアンモニアガス供給システム。
【請求項9】
前記内燃機関から排出される排ガスを前記タンク加温器に導くための排ガス導入ラインをさらに備える、
請求項2に記載のアンモニアガス供給システム。
【請求項10】
前記タンク加温器の内部に存在する前記排ガス、又は、前記排ガス導入ラインを流れる前記排ガス、の何れかの温度を取得するように構成された排ガス温度取得装置と、
前記排ガス導入ラインの前記排ガス温度取得装置による温度取得位置よりも上流側に設けられる排ガス降温装置であって、前記排ガス温度取得装置により取得される前記排ガスの温度が所定値以下となるように前記排ガス導入ラインを介して前記タンク加温器に導入される前記排ガスの温度を下げるように構成された排ガス降温装置、又は、
前記排ガス導入ラインの前記排ガス温度取得装置による温度取得位置よりも上流側に設けられる排ガス昇温装置であって、前記排ガス温度取得装置により取得される前記排ガスの温度が所定値以上となるように前記排ガス導入ラインを介して前記タンク加温器に導入される前記排ガスの温度を上げるように構成された排ガス昇温装置、の少なくとも一方の装置と、をさらに備える
請求項9に記載のアンモニアガス供給システム。
【請求項11】
前記アンモニア貯蔵タンクを加温するための熱媒体を循環させる熱媒体循環ラインであって、前記タンク加温器の導入口に一端が接続され、前記タンク加温器の排出口に他端が接続された熱媒体循環ラインと、
前記熱媒体循環ラインに設けられ、前記熱媒体循環ラインを流れる前記熱媒体を昇圧するように構成された熱媒体側ポンプと、
前記熱媒体循環ラインに設けられ、前記熱媒体を貯留するように構成された熱媒体貯留タンクと、
前記内燃機関の作動時に前記内燃機関から排出される排熱により、前記熱媒体貯留タンクに貯留された前記熱媒体を保温するように構成された保温器と、をさらに備える、
請求項1に記載のアンモニアガス供給システム。
【請求項12】
前記内燃機関を冷却するための冷却液を循環させる冷却液循環ラインと、
前記冷却液循環ラインに設けられ、前記冷却液循環ラインを流れる前記冷却液を昇圧するための循環ライン側ポンプと、
前記冷却液循環ラインに設けられる前記冷却液を冷却するための冷却装置と、
前記内燃機関から前記冷却装置に向かって流れる前記冷却液の一部を前記冷却液循環ラインから抜き出して前記保温器に導くための冷却液導入ラインと、をさらに備える、
請求項11に記載のアンモニアガス供給システム。
【請求項13】
前記タンク加温器の内部に存在する前記熱媒体、又は、前記熱媒体循環ラインを前記熱媒体貯留タンクから前記タンク加温器に向かって流れる前記熱媒体、の何れかの温度を取得するように構成された熱媒体温度取得装置と、
前記熱媒体温度取得装置により取得される前記熱媒体の温度が所定値以下になるように前記熱媒体循環ラインを介して前記タンク加温器に導入される前記熱媒体の温度調整を行うように構成された熱媒体温度調整装置と、をさらに備える、
請求項11又は12に記載のアンモニアガス供給システム。
【請求項14】
前記冷却液循環ラインの前記冷却装置よりも上流側に一端が接続され、前記冷却装置を迂回して他端が前記冷却液循環ラインの前記冷却装置よりも下流側に接続されるバイパスラインと、
前記冷却液循環ラインの前記バイパスラインの前記一端に接続される接続部よりも上流側を流れる前記冷却液が、前記冷却装置又は前記バイパスラインの何れかを通過するように構成されたサーモスタットと、をさらに備え、
前記冷却液導入ラインは、前記冷却液循環ラインの前記バイパスラインの前記一端に接続される前記接続部よりも上流側に接続された、
請求項3、4、8又は12の何れか1項に記載のアンモニアガス供給システム。
【請求項15】
アンモニアガスを燃料とする内燃機関と、
請求項1~4、8~12の何れか1項に記載のアンモニアガス供給システムと、を備える、
内燃機関システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、内燃機関にアンモニアガスを供給するためのアンモニアガス供給システム及び該アンモニアガス供給システムを備える内燃機関システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、液体アンモニアを燃料とするエンジンにおいて、エンジンに供給される液体アンモニアの温度や圧力を制御するための機器として、ポンプ付き燃料タンクと燃料配管系統に設けられた熱交換器とが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
アンモニアは通常容器内において冷却加圧された液体の状態(液体アンモニア)で貯蔵されており、アンモニアガスを内燃機関の燃料として用いる場合には、何らかの方法で液体アンモニアを温める必要がある。アンモニアガスを燃料とする内燃機関を安定的に運転させるには、アンモニアガスを安定的に供給する必要がある。内燃機関の運転状態(内燃機関の負荷や回転数)の変化に応じて、内燃機関が必要とするアンモニアガスの流量が変化するので、この流量変化に追従できるように、アンモニアガスの圧力管理や温度管理が必要となる。ここで、アンモニアガスを内燃機関に導入するための燃料配管での温度調整や圧力調整は、内燃機関へのアンモニアガスの供給量の急増、急減時に状態が不安定になる虞がある。
【0005】
上述の事情に鑑みて、本開示の少なくとも一実施形態は、内燃機関の運転状態が変化しても内燃機関にアンモニアガスを安定的に供給できるアンモニアガス供給システム及び内燃機関システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の少なくとも一実施形態に係るアンモニアガス供給システムは、
液体アンモニアを貯蔵可能に構成されたアンモニア貯蔵タンクと、
前記アンモニア貯蔵タンクを加温し、前記アンモニア貯蔵タンクの内部に貯蔵された前記液体アンモニアを気化させるように構成されたタンク加温器と、
前記アンモニア貯蔵タンクの内部において前記液体アンモニアが気化したアンモニアガスを内燃機関に導くためのアンモニアガス導入ラインと、を備える。
【0007】
本開示の少なくとも一実施形態に係る内燃機関システムは、
アンモニアガスを燃料とする内燃機関と、
前記アンモニアガス供給システムと、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示の少なくとも一実施形態によれば、内燃機関の運転状態が変化しても内燃機関にアンモニアガスを安定的に供給できるアンモニアガス供給システム及び内燃機関システムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の一実施形態に係る内燃機関システムの概略図である。
【
図2】本開示の一実施形態に係る内燃機関システムの概略図である。
【
図3】本開示の一実施形態に係る内燃機関システムの概略図である。
【
図4】本開示の一実施形態に係るアンモニアガス供給システムのアンモニア貯蔵タンク及びタンク加温器の概略断面図である。
【
図5】
図2に示されるアンモニアガス供給システムの変形例を示す図である。
【
図6】
図3に示されるアンモニアガス供給システムにおける制御の一例を示すフロー図である。
【
図7】
図3に示されるアンモニアガス供給システムの変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して本開示の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本開示の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0011】
(内燃機関システム)
図1~
図3の各々は、本開示の一実施形態に係る内燃機関システム1の概略図である。幾つかの実施形態に係るアンモニアガス供給システム2は、
図1~
図3に示されるように、アンモニアガスを燃料とする内燃機関3にアンモニアガスを供給するためのものであり、内燃機関システム1に搭載される。内燃機関システム1は、アンモニアガス供給システム2と内燃機関3を備える。
【0012】
(内燃機関)
内燃機関3は、
図1~
図3に示されるように、少なくとも1つ(図示例では、複数)の気筒31を含む。複数の気筒31の各々は、燃料を燃焼させるための燃焼室32を有する。内燃機関3は、複数の気筒31の夫々の燃焼室32において、燃料(例えば、アンモニアガスなどのガス燃料や、軽油やガソリンなどの液体燃料)および燃焼用気体(例えば、空気)を燃焼させるように構成されている。
【0013】
図示される実施形態では、内燃機関3は、内燃機関3の内部(例えば、燃焼室32や燃焼室32に空気を供給する空気供給管)にアンモニアガス(ガス燃料)を供給するように構成された少なくとも1つ(図示例では、複数)のガス燃料供給装置33と、内燃機関3の内部(例えば、燃焼室32や燃焼室32に空気を供給する空気供給管)に液体燃料を供給するように構成された少なくとも1つ(図示例では、複数)の液体燃料供給装置34と、をさらに含む。ガス燃料供給装置33や液体燃料供給装置34は、燃料を噴射するように構成された燃料噴射弁であってもよい。なお、内燃機関3は、燃焼室32において燃料及び空気が混合した混合気に点火するように構成された点火装置(点火プラグ)をさらに含んでいてもよい。ガス燃料供給装置33、液体燃料供給装置34及び上記点火装置は、気筒31毎に個別に設けられる。
【0014】
図示される実施形態では、内燃機関3は、液体燃料を貯留するように構成された液体燃料貯留タンク341と、液体燃料貯留タンク341から複数の液体燃料供給装置34の各々に液体燃料を導くための液体燃料導入ライン342と、をさらに含む。液体燃料導入ライン342は、液体燃料を流通させるための流路を形成するものであり、例えば、配管によって形成される。
【0015】
(アンモニアガス供給システム)
幾つかの実施形態に係るアンモニアガス供給システム2は、
図1~
図3に示されるように、アンモニア貯蔵タンク21と、タンク加温器22と、アンモニアガス導入ライン23と、を備える。アンモニア貯蔵タンク21は、液体アンモニアを貯蔵可能に構成されている。タンク加温器22は、アンモニア貯蔵タンク21を加温し、アンモニア貯蔵タンク21の内部に貯蔵された液体アンモニアを気化させるように構成されている。アンモニアガス導入ライン23は、アンモニア貯蔵タンク21の内部において液体アンモニアが気化したアンモニアガスを内燃機関3に導くためのライン(供給系統)である。
【0016】
図示される実施形態では、アンモニア貯蔵タンク21は、液体アンモニア及びアンモニアガス(ガス状態のアンモニア)を貯蔵するための内部空間210を内部に画定するように構成されている。内部空間210は、液体アンモニア(液状態のアンモニア)が貯蔵される液相部210Aと、液相部210Aよりも上方に形成されるアンモニアガスが貯蔵される気相部210Bと、を含む。液相部210Aに貯蔵される液体アンモニアは、タンク加温器22を介した外部入熱により気化してアンモニアガスとなる。
【0017】
アンモニアガス導入ライン23は、一端側(上流端)がアンモニア貯蔵タンク21に接続され、他端側(下流端)が内燃機関3に接続される。アンモニアガス導入ライン23は、アンモニアガスを流通させるための流路を形成するものであり、例えば、配管によって形成される。アンモニアガス導入ライン23に形成される上記流路は、気相部210Bに連通し、気相部210Bからアンモニアガス導入ライン23にアンモニアガスが取り出される。
【0018】
図示されるように、アンモニアガス導入ライン23は、他端側が複数に分岐し、複数の下流端の夫々がガス燃料供給装置33に接続されていてもよい。アンモニア貯蔵タンク21に貯蔵されたアンモニアガスは、ガスの供給先(例えば、燃焼室32や燃焼室32に空気を供給する空気供給管)よりも高圧となっており、圧力差によりアンモニアガス導入ライン23を介して内燃機関3(複数のガス燃料供給装置33)に燃料として導入される。
【0019】
アンモニアガスを燃料とする内燃機関3を安定的に運転させるには、アンモニアガスを安定的に供給する必要がある。内燃機関3の運転状態(内燃機関3の負荷や回転数)の変化に応じて、内燃機関3が必要とするアンモニアガスの流量が変化する。アンモニアガス供給システム2は、内燃機関3が必要とするアンモニアガスの流量変化に追従できるように、アンモニアガスの圧力管理や温度管理が必要となる。
【0020】
幾つかの実施形態に係るアンモニアガス供給システム2は、
図1~
図3に示されるように、上述したアンモニア貯蔵タンク21と、上述したタンク加温器22と、上述したアンモニアガス導入ライン23と、を備える。
【0021】
上記の構成によれば、タンク加温器22によりアンモニア貯蔵タンク21の内部において気化したアンモニアガスを、アンモニアガス導入ライン23を介して内燃機関3に導くことができる。アンモニア貯蔵タンク21は、貯蔵可能なアンモニアガスの容量が大きなものであるため、アンモニアガス導入ライン23を介して内燃機関3にアンモニアガスを安定供給することができる。すなわち、内燃機関3の負荷や回転数の変化に応じて、内燃機関3が必要とするアンモニアガスの流量が変化することがあるが、アンモニア貯蔵タンク21から内燃機関3に必要量のアンモニアガスを供給できる。
【0022】
(タンク加熱器)
幾つかの実施形態では、
図1及び
図2に示されるように、上述したタンク加温器22は、上述した内燃機関3の作動時に内燃機関3から排出される排熱により、アンモニア貯蔵タンク21に貯蔵された液体アンモニアを加温するように構成されている。
【0023】
図1及び
図2に示される実施形態では、上述したタンク加温器22は、内燃機関3における燃焼により生じた熱エネルギを回収した冷却液により、アンモニア貯蔵タンク21に貯蔵された液体アンモニアが加温されるようになっている。なお、上述したタンク加温器22は、内燃機関3における燃焼により生じた排ガスにより、アンモニア貯蔵タンク21に貯蔵された液体アンモニアが加温されるようになっていてもよい(
図5参照)。
【0024】
図4は、本開示の一実施形態に係るアンモニアガス供給システム2のアンモニア貯蔵タンク21及びタンク加温器22の概略断面図である。
図4に示される実施形態では、アンモニア貯蔵タンク21は、軸線LAに沿って長手方向を有する円筒状に形成されている。
図4では、アンモニア貯蔵タンク21及びタンク加温器22の軸線LAに直交する方向に沿った断面が概略的に示されている。
【0025】
図4に示されるように、タンク加温器22は、アンモニア貯蔵タンク21に貯留された液体アンモニアを加温するための熱媒体である加熱媒体を貯蔵するための貯蔵部220が、タンク加温器22の内部に形成されている。タンク加温器22には、貯蔵部220にタンク加温器22の外部から加熱媒体を導入するための導入口221と、貯蔵部220からタンク加温器22の外部に加熱媒体を排出するための排出口222と、が形成されている。
【0026】
図1及び
図2に示される実施形態では、上記加熱媒体は、内燃機関3における燃焼により生じた熱エネルギにより比較的高温になった冷却液であり、該冷却液がタンク加温器22の貯蔵部220に貯蔵されるようになっている。貯蔵部220に貯蔵された冷却液(加熱媒体)とアンモニア貯蔵タンク21に貯留された液体アンモニアとの間で熱交換が行われる。具体的には、貯蔵部220に貯蔵された冷却液の熱エネルギが、アンモニア貯蔵タンク21に貯留された液体アンモニアに移動し、該液体アンモニアが加熱される。
【0027】
図4に示される実施形態では、タンク加温器22は、アンモニア貯蔵タンク21の外面との間に隙間を挟んで対向し、アンモニア貯蔵タンク21の下方を覆う下方被覆部223と、上記隙間を閉塞する一対の閉塞部224、225と、を含む。上述した貯蔵部220は、アンモニア貯蔵タンク21の外面、下方被覆部223の内面及び一対の閉塞部224、225の内面により形成される。
図4に示される実施形態では、上述した導入口221及び排出口222は、下方被覆部223に形成されている。
【0028】
下方被覆部223は、
図4に示されるように、軸線LAに沿った断面が下方に向かって凹む円弧状に形成されていてもよい。この場合には、一対の閉塞部224、225のうち、一方の閉塞部224は、下方被覆部223の一端から水平方向に沿って延在し、アンモニア貯蔵タンク21の外面に接続されている。一対の閉塞部224、225のうち、他方の閉塞部225は、下方被覆部223の他端から水平方向に沿って延在し、アンモニア貯蔵タンク21の外面に接続されている。下方被覆部223の一端及び他端の各々は、軸線LAに沿った断面において、軸線LAを中心とする鉛直下方向からの周方向角度θ1、θ2が90度以上であることが好ましい。なお、タンク加温器22は、加熱媒体によりアンモニア貯蔵タンク21に貯留された液体アンモニアを加温できるようになっていればよく、
図4に示される形状に限定されない。
【0029】
上記の構成によれば、液体アンモニアを加温するための熱源として内燃機関3から排出される排熱を利用することで、液体アンモニアを加温するための別置きの熱源が不要になったり、別置きの熱源の小型化が図れるので、アンモニアガス供給システム2の構造の複雑化を抑制できる。
【0030】
幾つかの実施形態では、上述したアンモニアガス供給システム2は、
図1及び
図2に示されるように、冷却液循環ライン4と、循環ライン側ポンプP1と、冷却装置41と、冷却液導入ライン5と、をさらに備える。
【0031】
内燃機関3には、内燃機関3の内部に形成された冷却液を流通させるための冷却液流路35と、冷却液流路35に内燃機関3の外部から冷却液を導入するための冷却液導入口36と、冷却液流路35から内燃機関3の外部に冷却液を排出するための冷却液排出口37と、が形成されている。冷却液流路35は、例えば、複数の気筒31の燃焼室32を冷却するために、燃焼室32の外周の少なくとも一部を囲む部分を含んでいてもよい。
【0032】
(冷却液循環ライン、循環ライン側ポンプ)
冷却液循環ライン4は、内燃機関3を冷却するための冷却液を循環させるためのライン(供給系統)である。冷却液循環ライン4は、冷却液を流通させるための流路を形成するものであり、例えば、配管によって形成される。冷却液循環ライン4は、冷却液排出口37に一端(上流端)が接続され、冷却液導入口36に他端(下流端)が接続される。循環ライン側ポンプP1は、冷却液循環ライン4に設けられ、冷却液循環ライン4を流れる冷却液を昇圧するように構成されている。循環ライン側ポンプP1により、冷却液流路35から冷却液排出口37を介して冷却液が冷却液循環ライン4に抜き出され、冷却液循環ライン4の下流側に冷却液が送られる。
【0033】
(冷却装置)
冷却装置41は、冷却液循環ライン4に設けられる冷却液を冷却するための装置である。冷却装置41は、冷却液循環ライン4に設けられるラジエータ411と、ラジエータ411を空冷するためのファン412と、を含む。内燃機関3における燃焼により生じた熱エネルギを回収して温度が上昇した冷却液は、循環ライン側ポンプP1により冷却液循環ライン4に送られて、ラジエータ411を含む冷却装置41により冷却されるようになっている。冷却装置41により冷却された冷却液は、冷却液循環ライン4及び冷却液導入口36を介して冷却液流路35に供給される。冷却液循環ライン4を循環する冷却液は、水であってもよいし、グリコール水などの不凍液であってもよい。
【0034】
(冷却液導入ライン)
冷却液導入ライン5は、内燃機関3から冷却装置41に向かって流れる冷却液の一部を、冷却液循環ライン4から抜き出してタンク加温器22に導くためのライン(供給系統)である。冷却液導入ライン5は、冷却液を流通させるための流路を形成するものであり、例えば、配管によって形成される。冷却液導入ライン5は、冷却液循環ライン4の上記一端と冷却装置41との間に形成される接続部44に一端(上流端)が接続され、タンク加温器22の導入口221に他端(下流端)が接続される。
【0035】
上記の構成によれば、冷却液導入ライン5を介して、内燃機関3における燃焼により生じた熱エネルギを回収した冷却液をタンク加温器22に導くことができる。そして、タンク加温器22に導入された冷却液により、アンモニア貯蔵タンク21に貯蔵された液体アンモニアを加温できる。この場合には、冷却液循環ライン4、循環ライン側ポンプP1及び冷却装置41は、従来から冷却液を循環させるために必要な設備であり、これらの設備をタンク加温器22への冷却液の導入に利用することで、アンモニアガス供給システム2の構造の複雑化を抑制できる。
【0036】
(冷却液側ポンプ)
幾つかの実施形態では、上述したアンモニアガス供給システム2は、
図1及び
図2に示されるように、上述した冷却液導入ライン5に設けられ、冷却液導入ライン5を流れる冷却液を昇圧するように構成された冷却液側ポンプP2をさらに備える。冷却液側ポンプP2により、冷却液循環ライン4から冷却液が冷却液導入ライン5に抜き出され、冷却液導入ライン5の下流側(上記他端側)に冷却液が送られる。
【0037】
上記の構成によれば、冷却液循環ライン4を循環する冷却液の流量は、内燃機関3の定格に応じた一定量であったり、内燃機関3の運転状態(内燃機関3の負荷や回転数)に応じた変化量であったりする。冷却液側ポンプP2を冷却液導入ライン5に設けることで、内燃機関3の運転状態に依らず、冷却液導入ライン5を介してタンク加温器22に冷却液を安定的に供給できる。タンク加温器22に冷却液を安定的に供給することで、アンモニア貯蔵タンク21の内部において液体アンモニアからアンモニアガスを安定して生成できる。
【0038】
幾つかの実施形態では、上述したアンモニアガス供給システム2は、
図1及び
図2に示されるように、冷却液戻しライン6をさらに備える。冷却液戻しライン6は、タンク加温器22から冷却液循環ライン4に冷却液を戻すためのライン(供給系統)である。冷却液戻しライン6は、冷却液を流通させるための流路を形成するものであり、例えば、配管によって形成される。冷却液導入ライン5及び冷却液戻しライン6の夫々を形成する配管は、冷却液循環ライン4を形成する配管よりも管径が小さくなっていてもよい。
【0039】
冷却液戻しライン6は、タンク加温器22の排出口222に一端(上流端)が接続され、
冷却液循環ライン4の冷却液導入ライン5が接続される上述した接続部44と冷却装置41との間に位置する接続部45に他端(下流端)が接続される。
【0040】
上記の構成によれば、冷却液戻しライン6により、タンク加温器22から冷却液循環ライン4に冷却液を戻すことができる。この場合には、冷却液循環ライン4、循環ライン側ポンプP1及び冷却装置41を、冷却液導入ライン5、タンク加温器22及び冷却液戻しライン6を通過する冷却液の循環に利用することで、アンモニアガス供給システム2の構造の複雑化を抑制できる。
【0041】
(冷却液昇温装置)
幾つかの実施形態では、上述したアンモニアガス供給システム2は、
図2に示されるように、冷却液温度取得装置51と、冷却液昇温装置52と、をさらに備える。冷却液温度取得装置51は、タンク加温器22の内部に存在する冷却液、又は、冷却液導入ライン5を流れる冷却液、の何れかの温度を取得するように構成されている。冷却液温度取得装置51は、タンク加温器22の内部に設けられる温度センサであってもよいし、冷却液導入ライン5に設けられる温度センサ(
図2参照)であってもよい。
【0042】
冷却液昇温装置52は、冷却液導入ライン5の冷却液温度取得装置51による温度取得位置よりも上流側に設けられる。冷却液昇温装置52は、冷却液温度取得装置51により取得される冷却液の温度が所定値(下限閾値)以上となるように冷却液導入ライン5を介してタンク加温器22に導入される冷却液の温度を上げるように構成されている。
【0043】
冷却液昇温装置52は、例えば、冷却液導入ライン5を流れる冷却液を加熱する電気ヒータ(加熱装置)を含むものであってもよい。上記下限閾値は、0℃以上30℃以下であることが好ましく、20℃以上30℃以下であることがさらに好ましい。冷却液昇温装置52は、冷却液温度取得装置51により取得される冷却液の温度が所定値(下限閾値)に満たないときに運転し、冷却液温度取得装置51により取得される冷却液の温度が所定値(下限閾値)以上となったときに運転停止するように構成されていてもよい。
【0044】
上記の構成によれば、例えば、内燃機関3の起動時のような、冷却液が内燃機関3から回収できる熱エネルギ(排熱)が小さい場合には、タンク加温器22に導かれる冷却液の温度が低くなることがある。冷却液昇温装置52により、冷却液温度取得装置51により取得される冷却液の温度が所定値(下限閾値)以上となるようにすることで、タンク加温器22に導かれる冷却液の温度が低くなることを抑制できるため、タンク加温器22により、アンモニア貯蔵タンク21に貯蔵された液体アンモニアを安定的に加温できる。
【0045】
内燃機関3は、内燃機関3の運転が安定した通常運転時には、ガス燃料供給装置33から供給されるアンモニアガスを燃焼させるようになっているが、内燃機関3の起動時には、液体燃料供給装置34から供給される液体燃料を燃焼させるようになっていてもよい。
【0046】
(冷却液降温装置)
幾つかの実施形態では、上述したアンモニアガス供給システム2は、
図2に示されるように、上述した冷却液温度取得装置51と、冷却液降温装置53と、を備える。冷却液降温装置53は、冷却液導入ライン5の冷却液温度取得装置51による温度取得位置よりも上流側に設けられる。冷却液降温装置53は、冷却液温度取得装置51により取得される冷却液の温度が所定値(上限閾値)以下になるように冷却液導入ライン5を介してタンク加温器22に導入される冷却液の温度を下げるように構成されている。
【0047】
冷却液降温装置53は、冷却液導入ライン5に設けられるラジエータ531と、ラジエータ531を空冷するためのファン532と、を含むものであってもよい。上記下限閾値は、35℃以上50℃以下であることが好ましく、35℃以上40℃以下であることがさらに好ましい。タンク加温器22に導入される冷却液の温度は、40℃程度が好ましいが、内燃機関3の通常運転時において、冷却液循環ライン4を内燃機関3から冷却装置41に向かって流れる冷却液の温度は、80℃~90℃となることがある。冷却液降温装置53は、冷却液温度取得装置51により取得される冷却液の温度が所定値(上限閾値)を超えるときに運転し、冷却液温度取得装置51により取得される冷却液の温度が所定値(上限閾値)以下となったときに運転停止するように構成されていてもよい。
【0048】
上記の構成によれば、例えば、内燃機関3の負荷が大きく、冷却液が内燃機関3から回収できる熱エネルギ(排熱)が大きい場合には、タンク加温器22に導かれる冷却液の温度が高くなることがある。タンク加温器22に導かれる冷却液の温度が高くなりすぎると、アンモニア貯蔵タンク21の内部においてアンモニアガスが過剰に生成され、アンモニア貯蔵タンク21の内圧が高くなり過ぎる虞がある。冷却液降温装置53により、冷却液温度取得装置51により取得される冷却液の温度が所定値(上限閾値)以下となるようにすることで、タンク加温器22に導かれる冷却液の温度が高くなることを抑制できるため、タンク加温器22により、アンモニア貯蔵タンク21に貯蔵された液体アンモニアを安定的に加温できる。なお、本開示の冷却液降温装置53は、上述した冷却液昇温装置52を備えるアンモニアガス供給システム2に適用可能であり、冷却液昇温装置52を備えないアンモニアガス供給システム2にも適用可能である。
【0049】
幾つかの実施形態では、上述した冷却液側ポンプP2は、出力を可変可能に構成されている。上述したアンモニアガス供給システム2は、上述した冷却液温度取得装置51と、制御装置54と、を備える。制御装置54は、冷却液温度取得装置51により取得される冷却液の温度が所定値(上限閾値)以下になるように冷却液側ポンプP2の出力を制御するように構成されている。
【0050】
制御装置(コントローラ)54は、タンク加温器22に導かれる冷却液の温度を制御するための電子制御ユニットであり、図示しないCPU(プロセッサ)や、ROMやRAMといったメモリ、外部記憶装置などの記憶装置、I/Oインターフェース、通信インターフェースなどからなるマイクロコンピュータとして構成されていてもよい。そして、例えば上記メモリの主記憶装置にロードされたプログラムの命令に従ってCPUが動作(例えばデータの演算など)することで、後述する各機能を実現する。
【0051】
制御装置54は、冷却液温度取得装置51から冷却液温度取得装置51が取得した冷却液の温度が送られるようになっている。制御装置54は、冷却液側ポンプP2に対して運転指示及び運転停止指示が可能に構成されている。冷却液側ポンプP2は、制御装置54から送られる指示(指示信号)により制御され、該指示に応じて、駆動や停止するように構成されている。また、冷却液側ポンプP2は、制御装置54から送られる出力指示に従い、その出力を変化させるように構成されている。
【0052】
制御装置54は、冷却液温度取得装置51により取得される冷却液の温度が所定値(上限閾値)以下となったときに所定の出力(第1出力)を冷却液側ポンプP2に対して指示するようになっていてもよい。そして、制御装置54は、冷却液温度取得装置51により取得される冷却液の温度が所定値(上限閾値)を超えるときに上記第1出力よりも低い所定の出力(第2出力)を冷却液側ポンプP2に対して指示するようになっていてもよい。これにより、冷却液温度取得装置51により取得される冷却液の温度が所定値(上限閾値)を超えるときにタンク加温器(22)に導かれる冷却液の流量が押えられる。
【0053】
上記の構成によれば、冷却液側ポンプP2の出力を制御し、タンク加温器22に導かれる冷却液の流量を抑え、冷却液温度取得装置51により取得される冷却液の温度が所定値(上限閾値)以下となるようにすることで、タンク加温器22に導かれる冷却液の温度が高くなることを抑制できるため、タンク加温器22により、アンモニア貯蔵タンク21に貯蔵された液体アンモニアを安定的に加温できる。
【0054】
なお、制御装置54は、上述した冷却液昇温装置52や冷却液降温装置53に対して運転指示及び運転停止指示が可能に構成されていてもよい。冷却液昇温装置52や冷却液降温装置53は、制御装置54から送られる指示(指示信号)により制御され、該指示に応じて、駆動や停止するように構成されていてもよい。本開示の制御装置54は、上述した冷却液昇温装置52や冷却液降温装置53を備えるアンモニアガス供給システム2に適用可能であり、冷却液昇温装置52や冷却液降温装置53を備えないアンモニアガス供給システム2にも適用可能である。
【0055】
(排ガス導入ライン)
図5は、
図2に示されるアンモニアガス供給システム2の変形例を示す図である。幾つかの実施形態に係るアンモニアガス供給システム2は、
図5に示されるように、上述したアンモニア貯蔵タンク21と、上述したタンク加温器22と、上述したアンモニアガス導入ライン23と、排ガス導入ライン11と、を備える。
【0056】
排ガス導入ライン11は、内燃機関3から排出される排ガスをタンク加温器22に導くためのライン(供給系統)である。排ガス導入ライン11は、排ガスを流通させるための流路を形成するものであり、例えば、配管によって形成される。排ガス導入ライン11は、内燃機関3に一端(上流端)が接続され、タンク加温器22の導入口221に他端(下流端)が接続される。内燃機関3から排出された排ガスは、排ガス導入ライン11を介してタンク加温器22に導かれ、貯蔵部220において貯蔵される。本実施形態では、排ガスが液体アンモニアを加温するための加熱媒体となる。
【0057】
上記の構成によれば、内燃機関3における燃焼により生じた排ガスをタンク加温器22に導くことができる。そして、タンク加温器22に導入された排ガスにより、アンモニア貯蔵タンク21に貯蔵された液体アンモニアを加温できる。この場合には、排ガス導入ライン11は、従来から排ガスを排出するために必要な設備であり、この設備をタンク加温器22への排ガスの導入に利用することで、アンモニアガス供給システム2の構造の複雑化を抑制できる。
【0058】
(排ガス降温装置)
幾つかの実施形態では、上述したアンモニアガス供給システム2は、
図5に示されるように、排ガス温度取得装置111と、排ガス降温装置112と、をさらに備える。排ガス温度取得装置111は、タンク加温器22の内部に存在する排ガス、又は、排ガス導入ライン11を流れる排ガス、の何れかの温度を取得するように構成されている。排ガス温度取得装置111は、タンク加温器22の内部に設けられる温度センサであってもよいし、排ガス導入ライン11に設けられる温度センサ(
図5参照)であってもよい。
【0059】
排ガス降温装置112は、排ガス導入ライン11の排ガス温度取得装置111による温度取得位置よりも上流側に設けられる。排ガス降温装置112は、排ガス温度取得装置111により取得される排ガスの温度が所定値(上限閾値)以下になるように排ガス導入ライン11を介してタンク加温器22に導入される排ガスの温度を下げるように構成されている。
【0060】
排ガス降温装置112は、排ガス導入ライン11に設けられるラジエータ114と、ラジエータ114を空冷するためのファン115と、を含むものであってもよい。上記下限閾値は、35℃以上50℃以下であることが好ましく、35℃以上40℃以下であることがさらに好ましい。排ガス降温装置112は、排ガス温度取得装置111により取得される排ガスの温度が所定値(上限閾値)を超えるときに運転し、排ガス温度取得装置111により取得される排ガスの温度が所定値(上限閾値)以下となったときに運転停止するように構成されていてもよい。
【0061】
上記の構成によれば、内燃機関3から排出される排ガスは、内燃機関3から回収できる熱エネルギ(排熱)が冷却液よりも多いため、タンク加温器22に導かれる排ガスの温度が高くなることがある。タンク加温器22に導かれる排ガスの温度が高くなりすぎると、アンモニア貯蔵タンク21の内部においてアンモニアガスが過剰に生成され、アンモニア貯蔵タンク21の内圧が高くなり過ぎる虞がある。排ガス降温装置112により、排ガス温度取得装置111により取得される排ガスの温度が所定値以下となるようにすることで、タンク加温器22に導かれる排ガスの温度が高くなることを抑制できるため、タンク加温器22により、アンモニア貯蔵タンク21に貯蔵された液体アンモニアを安定的に加温できる。
【0062】
(排ガス昇温装置)
幾つかの実施形態では、上述したアンモニアガス供給システム2は、
図5に示されるように、上述した排ガス温度取得装置111と、排ガス昇温装置113と、を備える。排ガス昇温装置113は、排ガス導入ライン11の排ガス温度取得装置111による温度取得位置よりも上流側に設けられる。排ガス昇温装置113は、排ガス温度取得装置111により取得される排ガスの温度が所定値(下限閾値)以上となるように排ガス導入ライン11を介してタンク加温器22に導入される排ガスの温度を上げるように構成されている。
【0063】
排ガス昇温装置113は、例えば、排ガス導入ライン11を流れる排ガスを加熱する電気ヒータ(加熱装置)を含むものであってもよい。上記下限閾値は、0℃以上30℃以下であることが好ましく、20℃以上30℃以下であることがさらに好ましい。排ガス昇温装置113は、排ガス温度取得装置111により取得される排ガスの温度が所定値(下限閾値)に満たないときに運転し、排ガス温度取得装置111により取得される排ガスの温度が所定値(下限閾値)以上となったときに運転停止するように構成されていてもよい。
【0064】
上記の構成によれば、例えば、内燃機関3の起動時のような、排ガスが内燃機関3から回収できる熱エネルギ(排熱)が小さい場合には、タンク加温器22に導かれる排ガスの温度が低くなることがある。排ガス昇温装置113により、排ガス温度取得装置111により取得される排ガスの温度が所定値以上となるようにすることで、タンク加温器22に導かれる排ガスの温度が低くなることを抑制できるため、タンク加温器22により、アンモニア貯蔵タンク21に貯蔵された液体アンモニアを安定的に加温できる。なお、
図5に示される実施形態では、アンモニアガス供給システム2は、排ガス降温装置112及び排ガス昇温装置113を備えるが、排ガス降温装置112又は排ガス昇温装置113の何れかを備えるように構成されていてもよい。
【0065】
幾つかの実施形態では、上述したアンモニアガス供給システム2は、排ガス降温装置112又は排ガス昇温装置113の少なくとも一方に対して運転指示及び運転停止指示が可能に構成された制御装置116を備えていてもよい。制御装置116は、排ガス温度取得装置111から排ガス温度取得装置111が取得した排ガスの温度が送られるようになっている。排ガス降温装置112や排ガス昇温装置113は、制御装置116から送られる指示(指示信号)により制御され、該指示に応じて、駆動や停止するように構成されていてもよい。
【0066】
制御装置116は、温度の制御対象が異なるが、上述した制御装置54と同様の構成を備える。制御装置(コントローラ)116は、タンク加温器22に導かれる排ガスの温度を制御するための電子制御ユニットであり、図示しないCPU(プロセッサ)や、ROMやRAMといったメモリ、外部記憶装置などの記憶装置、I/Oインターフェース、通信インターフェースなどからなるマイクロコンピュータとして構成されていてもよい。そして、例えば上記メモリの主記憶装置にロードされたプログラムの命令に従ってCPUが動作(例えばデータの演算など)することで、後述する各機能を実現する。
【0067】
(熱媒体の循環系統)
幾つかの実施形態に係るアンモニアガス供給システム2は、
図3に示されるように、上述したアンモニア貯蔵タンク21と、上述したタンク加温器22と、上述したアンモニアガス導入ライン23と、熱媒体循環ライン7と、熱媒体側ポンプP3と、熱媒体貯留タンク71と、保温器72と、を備える。
【0068】
(熱媒体循環ライン、熱媒体側ポンプ)
熱媒体循環ライン7は、アンモニア貯蔵タンク21を加温するための熱媒体(加熱媒体)を循環させるためのライン(供給系統)である。熱媒体循環ライン7は、上記熱媒体を流通させるための流路を形成するものであり、例えば、配管によって形成される。熱媒体循環ライン7は、タンク加温器22の導入口221に一端(下流端)が接続され、タンク加温器22の排出口222に他端(上流端)が接続される。熱媒体側ポンプP3は、熱媒体循環ライン7に設けられ、熱媒体循環ライン7を流れる熱媒体を昇圧するように構成されている。熱媒体側ポンプP3により、タンク加温器22から排出口222を介して熱媒体が熱媒体循環ライン7に抜き出され、熱媒体循環ライン7の下流側に熱媒体が送られる。
【0069】
(熱媒体貯留タンク、保温器)
熱媒体貯留タンク71は、熱媒体循環ライン7に設けられ、熱媒体を貯留するように構成されている。保温器72は、内燃機関3の作動時に内燃機関3から排出される排熱により、熱媒体貯留タンク71に貯留された熱媒体を保温するように構成されている。
【0070】
図3に示されるように、熱媒体貯留タンク71は、熱媒体(加熱媒体)を貯蔵するための貯蔵部710が、熱媒体貯留タンク71の内部に形成されている。熱媒体貯留タンク71には、貯蔵部710に熱媒体循環ライン7の熱媒体貯留タンク71よりも上流側から熱媒体を導入するための導入口711と、貯蔵部710から熱媒体循環ライン7の熱媒体貯留タンク71よりも下流側に熱媒体を排出するための排出口712と、が形成されている。
【0071】
熱媒体循環ライン7を循環する熱媒体は、ガス状の熱媒体よりも密度が高い液状の熱媒体が好ましい。熱媒体循環ライン7を循環する熱媒体は、水やグリコール水などの不凍液であってもよいし、潤滑油などの油であってもよい。
【0072】
図3に示されるように、保温器72は、熱媒体貯留タンク71を保温するための保温用熱媒体を貯蔵するための貯蔵部720が熱媒体貯留タンク71との間に形成されている。保温器72は、熱媒体貯留タンク71との間に貯蔵部720を形成する保温器本体723と、保温器本体723の外面を覆う断熱材724と、を含む。保温器本体723には、貯蔵部720に保温器72の外部から保温用熱媒体を導入するための導入口721と、貯蔵部720から保温器72の外部に保温用熱媒体を排出するための排出口722と、が形成されている。
【0073】
図3に示される実施形態では、上記保温用熱媒体は、内燃機関3における燃焼により生じた熱エネルギにより比較的高温になった冷却液であり、該冷却液が保温器72の貯蔵部720に貯蔵されるようになっている。貯蔵部720に貯蔵された冷却液(保温用熱媒体)と熱媒体貯留タンク71に貯蔵された熱媒体との間で熱交換が行われる。具体的には、貯蔵部720に貯蔵された冷却液の熱エネルギが、熱媒体貯留タンク71に貯蔵された熱媒体に移動し、該熱媒体が加熱(保温)される。これにより、熱媒体循環ライン7を循環する熱媒体を、タンク加温器22への導入に適した温度(例えば、40℃程度)に維持できる。
【0074】
上記の構成によれば、保温器72により熱媒体貯留タンク71に貯留された熱媒体を保温することで、熱媒体循環ライン7を介してタンク加温器22に導入される熱媒体の温度低下を抑制できる。これにより、例えば、内燃機関3の起動時のような、冷却液が内燃機関3から回収できる熱エネルギ(排熱)が小さい場合でも、タンク加温器22により、アンモニア貯蔵タンク21に貯蔵された液体アンモニアを安定的に加温できる。よって、上記の構成によれば、内燃機関3の起動時にも、タンク加温器22により液体アンモニアを加温してアンモニアガスを生成できるため、内燃機関3の起動時から内燃機関3にアンモニアガスを供給できるまでの期間を小さなものとすることができる。
【0075】
(冷却液導入ライン)
幾つかの実施形態では、上述したアンモニアガス供給システム2は、
図3に示されるように、上述した冷却液循環ライン4と、上述した循環ライン側ポンプP1と、上述した冷却装置41と、冷却液導入ライン5Aと、をさらに備える。
【0076】
冷却液導入ライン5Aは、内燃機関3から冷却装置41に向かって流れる冷却液の一部を冷却液循環ライン4から抜き出して保温器72に導くためのライン(供給系統)である。冷却液導入ライン5Aは、冷却液を流通させるための流路を形成するものであり、例えば、配管によって形成される。冷却液導入ライン5Aは、冷却液循環ライン4の上記一端と冷却装置41との間に形成される接続部44に一端(上流端)が接続され、保温器72の導入口721に他端(下流端)が接続される。
【0077】
上記の構成によれば、冷却液導入ライン5Aを介して、内燃機関3における燃焼により生じた熱エネルギを回収した冷却液を保温器72に導くことができる。そして、保温器72に導入された冷却液により、熱媒体貯留タンク71に貯留された熱媒体を保温できる。この場合には、液体アンモニアを加温するための熱源(熱媒体を保温するための熱源)として内燃機関3から排出される排熱を利用することで、液体アンモニアを加温するための別置きの熱源を不要としたり、別置きの熱源の小型化が図れるので、アンモニアガス供給システム2の構造の複雑化を抑制できる。また、冷却液循環ライン4、循環ライン側ポンプP1及び冷却装置41は、従来から冷却液を循環させるために必要な設備であり、これらの設備を保温器72への冷却液の導入に利用することによっても、アンモニアガス供給システム2の構造の複雑化を抑制できる。
【0078】
図3に示される実施形態では、上述したアンモニアガス供給システム2は、冷却液導入ライン5Aに設けられ、冷却液導入ライン5Aを流れる冷却液を昇圧するように構成された冷却液側ポンプP2と、冷却液戻しライン6Aと、をさらに備える。
【0079】
冷却液戻しライン6Aは、保温器72から冷却液循環ライン4に冷却液を戻すためのライン(供給系統)である。冷却液戻しライン6Aは、冷却液を流通させるための流路を形成するものであり、例えば、配管によって形成される。冷却液導入ライン5A及び冷却液戻しライン6Aの夫々を形成する配管は、冷却液循環ライン4を形成する配管よりも管径が小さくなっていてもよい。冷却液戻しライン6Aは、保温器72の排出口722に一端(上流端)が接続され、冷却液循環ライン4の冷却液導入ライン5が接続される上述した接続部44と冷却装置41との間に位置する接続部45に他端(下流端)が接続される。
【0080】
上記の構成によれば、冷却液戻しライン6Aにより、保温器72から冷却液循環ライン4に冷却液を戻すことができる。この場合には、冷却液循環ライン4、循環ライン側ポンプP1及び冷却装置41を、冷却液導入ライン5A、保温器72及び冷却液戻しライン6Aを通過する冷却液の循環に利用することで、アンモニアガス供給システム2の構造の複雑化を抑制できる。
【0081】
幾つかの実施形態では、上述したアンモニアガス供給システム2は、
図3に示されるように、熱媒体温度取得装置73と、熱媒体温度調整装置74と、をさらに備える。熱媒体温度取得装置73は、タンク加温器22の内部に存在する熱媒体、又は、熱媒体循環ライン7を熱媒体貯留タンク71からタンク加温器22に向かって流れる熱媒体、の何れかの温度を取得するように構成されている。熱媒体温度取得装置73は、タンク加温器22の内部に設けられる温度センサであってもよいし、熱媒体循環ライン7の上記下流端と熱媒体貯留タンク71の排出口712との間に設けられる温度センサ(
図3参照)であってもよい。
【0082】
図3に示される実施形態では、上述した熱媒体側ポンプP3は、熱媒体温度取得装置73による温度取得位置よりも上流側、且つ熱媒体貯留タンク71の排出口712よりも下流側に設けられる。
【0083】
熱媒体温度調整装置74は、熱媒体温度取得装置73により取得される熱媒体の温度が所定値(上限閾値)以下になるように熱媒体循環ライン7を介してタンク加温器22に導入される熱媒体の温度調整を行うように構成されている。
【0084】
熱媒体温度調整装置(コントローラ)74は、タンク加温器22に導かれる熱媒体の温度を制御するための電子制御ユニットであり、図示しないCPU(プロセッサ)や、ROMやRAMといったメモリ、外部記憶装置などの記憶装置、I/Oインターフェース、通信インターフェースなどからなるマイクロコンピュータとして構成されていてもよい。そして、例えば上記メモリの主記憶装置にロードされたプログラムの命令に従ってCPUが動作(例えばデータの演算など)することで、後述する各機能を実現する。
【0085】
熱媒体温度調整装置74は、熱媒体温度取得装置73から熱媒体温度取得装置73が取得した熱媒体の温度Tが送られるようになっている。熱媒体温度調整装置74は、内燃機関3から回転数Nに関する情報が送られるようになっている。熱媒体温度調整装置74は、冷却液側ポンプP2や熱媒体側ポンプP3に対して運転指示及び運転停止指示が可能に構成されている。冷却液側ポンプP2や熱媒体側ポンプP3は、熱媒体温度調整装置74から送られる指示(指示信号)により制御され、該指示に応じて、駆動や停止するように構成されている。また、冷却液側ポンプP2は、制御装置54から送られる出力指示に従い、その出力を変化させるように構成されている。
【0086】
図6は、
図3に示されるアンモニアガス供給システムにおける制御(熱媒体温度調整装置74による制御)の一例を示すフロー図である。熱媒体温度調整装置74は、内燃機関3の運転状態に関する情報(例えば、内燃機関3の回転数N)を取得する(S1)。熱媒体温度調整装置74は、上記ステップS1において取得した内燃機関3の回転数Nが、予め設定された設定回転数N1以下の場合には(S2で「NO」)、冷却液側ポンプP2や熱媒体側ポンプP3を停止させる(S3、S4)。或る実施形態では、設定回転数N1は、200rpmである。
【0087】
熱媒体温度調整装置74は、上記ステップS1において取得した内燃機関3の回転数Nが、予め設定された設定回転数N1を超える場合には(S2で「YES」)、熱媒体温度取得装置73が取得した熱媒体の温度Tを、下限閾値T1や上限閾値T2と比較する(S5、S7)。或る実施形態では、下限閾値T1は35℃であり、上限閾値T2は40℃である。
【0088】
熱媒体温度調整装置74は、上記熱媒体の温度Tが下限閾値T1に満たない場合には(S5で「YES」)、冷却液側ポンプP2を駆動させる(S6)。また、熱媒体温度調整装置74は、上記熱媒体の温度Tが上限閾値T2を超える場合には(S5で「NO」)、冷却液側ポンプP2を停止させ、熱媒体側ポンプP3を駆動させる(S8、S9)。熱媒体温度調整装置74は、上記熱媒体の温度Tが下限閾値T1以上上限閾値T2以下の範囲に収まる場合には(S7で「YES」)、冷却液側ポンプP2を停止させずに、熱媒体側ポンプP3を駆動させる(S9)。
【0089】
上記の構成によれば、熱媒体温度調整装置74によりタンク加温器22に導かれる熱媒体の温度を抑え、熱媒体温度取得装置73により取得される熱媒体の温度が所定値(上限閾値)以下となるようにすることで、タンク加温器22に導かれる熱媒体の温度が高くなることを抑制できるため、タンク加温器22により、アンモニア貯蔵タンク21に貯蔵された液体アンモニアを安定的に加温できる。
【0090】
(排ガス導入ライン)
図7は、
図3に示されるアンモニアガス供給システムの変形例を示す図である。幾つかの実施形態に係るアンモニアガス供給システム2は、上述したアンモニア貯蔵タンク21と、上述したタンク加温器22と、上述したアンモニアガス導入ライン23と、上述した熱媒体循環ライン7と、上述した熱媒体側ポンプP3と、上述した熱媒体貯留タンク71と、上述した保温器72と、を備える(
図3参照)。
図7に示される実施形態では、アンモニアガス供給システム2は、排ガス導入ライン11Aをさらに備える。
【0091】
排ガス導入ライン11Aは、内燃機関3から排出される排ガスを保温器72に導くためのライン(供給系統)である。排ガス導入ライン11Aは、排ガスを流通させるための流路を形成するものであり、例えば、配管によって形成される。排ガス導入ライン11Aは、内燃機関3に一端(上流端)が接続され、保温器72の導入口721に他端(下流端)が接続される。内燃機関3から排出された排ガスは、排ガス導入ライン11Aを介して保温器72に導かれ、貯蔵部720において貯蔵される。本実施形態では、排ガスが保温用熱媒体となる。
【0092】
上記の構成によれば、内燃機関3における燃焼により生じた排ガスを保温器72に導くことができる。そして、保温器72に導入された排ガスにより、熱媒体貯留タンク71に貯留された熱媒体を保温できる。この場合には、排ガス導入ライン11Aは、従来から排ガスを排出するために必要な設備であり、この設備を保温器72への排ガスの導入に利用することで、アンモニアガス供給システム2の構造の複雑化を抑制できる。
【0093】
幾つかの実施形態では、
図1~
図3に示されるように、上述したアンモニアガス供給システム2は、バイパスライン42と、サーモスタット43と、をさらに備える。バイパスライン42は、冷却液循環ライン4の冷却装置41よりも上流側に一端が接続され、冷却装置41を迂回して他端が冷却液循環ライン4の冷却装置41よりも下流側に接続される。サーモスタット43は、冷却液循環ライン4のバイパスライン42の一端に接続される接続部46よりも上流側を流れる冷却液が、冷却装置41又はバイパスライン42の何れかを通過するように構成されている。
【0094】
サーモスタット43は、サーモスタット43に導入される冷却液の温度に応じて、冷却装置41又はバイパスライン42の何れか一方に向かう流路を開き、他方に向かう流路を閉じるようになっている。上述した冷却液導入ライン5、5Aは、冷却液循環ライン4のバイパスライン42の一端に接続される接続部46よりも上流側に接続されている。上述した冷却液戻しライン6、6Aは、冷却液循環ライン4の接続部46よりも上流側、且つ冷却液循環ライン4の冷却液導入ライン5、5Aが接続される接続部44よりも下流側に接続されている。
【0095】
上記の構成によれば、冷却液循環ライン4を循環する冷却液の温度に応じて、サーモスタット43が開閉し、冷却装置41やバイパスライン42を冷却液が通過しないことがある。冷却液循環ライン4の上記接続部46よりも上流側は、冷却液循環ライン4を循環する冷却液の温度に依らずに冷却液が流れるので、冷却液導入ライン5、5Aに冷却液を安定的に導くことができる。
【0096】
幾つかの実施形態に係る内燃機関システム1は、
図1~
図3、
図5及び
図6に示されるように、上述したアンモニアガス供給システム2と、上述した内燃機関3と、を備える。この場合には、内燃機関3の運転状態に依らず、アンモニアガス供給システム2により内燃機関3に必要量のアンモニアガスを供給できるため、内燃機関3を安定的に運転させることができる。
【0097】
本明細書において、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
また、本明細書において、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
また、本明細書において、一の構成要素を「備える」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0098】
本開示は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
【0099】
上述した幾つかの実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握されるものである。
【0100】
1)本開示の少なくとも一実施形態に係るアンモニアガス供給システム(2)は、
液体アンモニアを貯蔵可能に構成されたアンモニア貯蔵タンク(21)と、
前記アンモニア貯蔵タンク(21)を加温し、前記アンモニア貯蔵タンク(21)の内部に貯蔵された前記液体アンモニアを気化させるように構成されたタンク加温器(22)と、
前記アンモニア貯蔵タンク(21)の内部において前記液体アンモニアが気化したアンモニアガスを内燃機関(3)に導くためのアンモニアガス導入ライン(23)と、を備える。
【0101】
上記1)の構成によれば、タンク加温器(22)によりアンモニア貯蔵タンク(21)の内部において気化したアンモニアガスを、アンモニアガス導入ライン(23)を介して内燃機関(3)に導くことができる。アンモニア貯蔵タンク(21)は、貯蔵可能なアンモニアガスの容量が大きなものであるため、アンモニアガス導入ライン(23)を介して内燃機関(3)にアンモニアガスを安定供給することができる。すなわち、内燃機関(3)の負荷や回転数の変化に応じて、内燃機関(3)が必要とするアンモニアガスの流量が変化することがあるが、アンモニア貯蔵タンク(21)から内燃機関(3)に必要量のアンモニアガスを供給できる。
【0102】
2)幾つかの実施形態では、上記1)に記載のアンモニアガス供給システム(2)であって、
前記タンク加温器(22)は、
前記内燃機関(3)の作動時に前記内燃機関(3)から排出される排熱により、前記アンモニア貯蔵タンク(21)に貯蔵された前記液体アンモニアを加温するように構成された。
【0103】
上記2)の構成によれば、液体アンモニアを加温するための熱源として内燃機関(3)から排出される排熱を利用することで、液体アンモニアを加温するための別置きの熱源が不要になったり、別置きの熱源の小型化が図れるので、アンモニアガス供給システム(2)の構造の複雑化を抑制できる。
【0104】
3)幾つかの実施形態では、上記2)に記載のアンモニアガス供給システム(2)であって、
前記内燃機関(3)を冷却するための冷却液を循環させる冷却液循環ライン(4)と、
前記冷却液循環ライン(4)に設けられ、前記冷却液循環ライン(4)を流れる前記冷却液を昇圧するための循環ライン側ポンプ(P1)と、
前記冷却液循環ライン(4)に設けられる前記冷却液を冷却するための冷却装置(41)と、
前記内燃機関(3)から前記冷却装置(41)に向かって流れる前記冷却液の一部を、前記冷却液循環ライン(4)から抜き出して前記タンク加温器(22)に導くための冷却液導入ライン(5)と、をさらに備える。
【0105】
上記3)の構成によれば、冷却液導入ライン(5)を介して、内燃機関(3)における燃焼により生じた熱エネルギを回収した冷却液をタンク加温器(22)に導くことができる。そして、タンク加温器(22)に導入された冷却液により、アンモニア貯蔵タンク(21)に貯蔵された液体アンモニアを加温できる。この場合には、冷却液循環ライン(4)、循環ライン側ポンプ(P1)及び冷却装置(41)は、従来から冷却液を循環させるために必要な設備であり、これらの設備をタンク加温器(22)への冷却液の導入に利用することで、アンモニアガス供給システム(2)の構造の複雑化を抑制できる。
【0106】
4)幾つかの実施形態では、上記3)に記載のアンモニアガス供給システム(2)であって、
前記冷却液導入ライン(5)に設けられ、前記冷却液導入ライン(5)を流れる前記冷却液を昇圧するように構成された冷却液側ポンプ(P2)をさらに備える。
【0107】
上記4)の構成によれば、冷却液循環ライン(4)を循環する冷却液の流量は、内燃機関(3)の定格に応じた一定量であったり、内燃機関(3)の運転状態(内燃機関(3)の負荷や回転数)に応じた変化量であったりする。冷却液側ポンプ(P2)を冷却液導入ライン(5)に設けることで、内燃機関(3)の運転状態に依らず、冷却液導入ライン(5)を介してタンク加温器(22)に冷却液を安定的に供給できる。タンク加温器(22)に冷却液を安定的に供給することで、アンモニア貯蔵タンク(21)の内部において液体アンモニアからアンモニアガスを安定して生成できる。
【0108】
5)幾つかの実施形態では、上記3)又は4)に記載のアンモニアガス供給システム(2)であって、
前記タンク加温器(22)から前記冷却液循環ライン(4)に前記冷却液を戻すための冷却液戻しライン(6)であって、前記タンク加温器(22)に一端が接続され、前記冷却液循環ライン(4)の前記冷却液導入ライン(5)が接続される接続部(44)と前記冷却装置(41)との間に他端が接続された冷却液戻しライン(6)をさらに備える。
【0109】
上記5)の構成によれば、冷却液戻しライン(6)により、タンク加温器(22)から冷却液循環ライン(4)に冷却液を戻すことができる。この場合には、冷却液循環ライン(4)、循環ライン側ポンプ(P1)及び冷却装置(41)を、冷却液導入ライン(5)、タンク加温器(22)及び冷却液戻しライン(6)を通過する冷却液の循環に利用することで、アンモニアガス供給システム(2)の構造の複雑化を抑制できる。
【0110】
6)幾つかの実施形態では、上記3)から5)までの何れかに記載のアンモニアガス供給システム(2)であって、
前記タンク加温器(22)の内部に存在する前記冷却液、又は、前記冷却液導入ライン(5)を流れる前記冷却液、の何れかの温度を取得するように構成された冷却液温度取得装置(51)と、
前記冷却液導入ライン(5)の前記冷却液温度取得装置(51)による温度取得位置よりも上流側に設けられる冷却液昇温装置(52)であって、前記冷却液温度取得装置(51)により取得される前記冷却液の温度が所定値以上となるように前記冷却液導入ライン(5)を介して前記タンク加温器(22)に導入される前記冷却液の温度を上げるように構成された冷却液昇温装置(52)と、をさらに備える。
【0111】
上記6)の構成によれば、例えば、内燃機関(3)の起動時のような、冷却液が内燃機関(3)から回収できる熱エネルギ(排熱)が小さい場合には、タンク加温器(22)に導かれる冷却液の温度が低くなることがある。冷却液昇温装置(52)により、冷却液温度取得装置(51)により取得される冷却液の温度が所定値以上となるようにすることで、タンク加温器(22)に導かれる冷却液の温度が低くなることを抑制できるため、タンク加温器(22)により、アンモニア貯蔵タンク(21)に貯蔵された液体アンモニアを安定的に加温できる。
【0112】
7)幾つかの実施形態では、上記3)から6)までの何れかに記載のアンモニアガス供給システム(2)であって、
前記タンク加温器(22)の内部に存在する前記冷却液、又は、前記冷却液導入ライン(5)を流れる前記冷却液、の何れかの温度を取得するように構成された冷却液温度取得装置(51)と、
前記冷却液導入ライン(5)の前記冷却液温度取得装置(51)による温度取得位置よりも上流側に設けられる冷却液降温装置(53)であって、前記冷却液温度取得装置(51)により取得される前記冷却液の温度が所定値以下になるように前記冷却液導入ライン(5)を介して前記タンク加温器(22)に導入される前記冷却液の温度を下げるように構成された冷却液降温装置(53)と、をさらに備える。
【0113】
上記7)の構成によれば、例えば、内燃機関(3)の負荷が大きく、冷却液が内燃機関(3)から回収できる熱エネルギ(排熱)が大きい場合には、タンク加温器(22)に導かれる冷却液の温度が高くなることがある。タンク加温器(22)に導かれる冷却液の温度が高くなりすぎると、アンモニア貯蔵タンク(21)の内部においてアンモニアガスが過剰に生成され、アンモニア貯蔵タンク(21)の内圧が高くなり過ぎる虞がある。冷却液降温装置(53)により、冷却液温度取得装置(51)により取得される冷却液の温度が所定値以下となるようにすることで、タンク加温器(22)に導かれる冷却液の温度が高くなることを抑制できるため、タンク加温器(22)により、アンモニア貯蔵タンク(21)に貯蔵された液体アンモニアを安定的に加温できる。
【0114】
8)幾つかの実施形態では、上記4)に記載のアンモニアガス供給システム(2)であって、
前記冷却液側ポンプ(P2)は、出力を可変可能に構成され、
前記アンモニアガス供給システム(1)は、
前記タンク加温器(22)の内部に存在する前記冷却液、又は、前記冷却液導入ライン(5)を流れる前記冷却液、の何れかの温度を取得するように構成された冷却液温度取得装置(51)と、
前記冷却液温度取得装置(51)により取得される前記冷却液の温度が所定値以下になるように前記冷却液側ポンプ(P2)の出力を制御するように構成された制御装置(54)と、をさらに備える。
【0115】
上記8)の構成によれば、冷却液側ポンプ(P2)の出力を制御し、タンク加温器(22)に導かれる冷却液の流量を抑え、冷却液温度取得装置(51)により取得される冷却液の温度が所定値以下となるようにすることで、タンク加温器(22)に導かれる冷却液の温度が高くなることを抑制できるため、タンク加温器(22)により、アンモニア貯蔵タンク(21)に貯蔵された液体アンモニアを安定的に加温できる。
【0116】
9)幾つかの実施形態では、上記2)に記載のアンモニアガス供給システム(2)であって、
前記内燃機関(3)から排出される排ガスを前記タンク加温器(22)に導くための排ガス導入ライン(11)をさらに備える。
【0117】
上記9)の構成によれば、内燃機関(3)における燃焼により生じた排ガスをタンク加温器(22)に導くことができる。そして、タンク加温器(22)に導入された排ガスにより、アンモニア貯蔵タンク(21)に貯蔵された液体アンモニアを加温できる。この場合には、排ガス導入ライン(11)は、従来から排ガスを排出するために必要な設備であり、この設備をタンク加温器(22)への排ガスの導入に利用することで、アンモニアガス供給システム(2)の構造の複雑化を抑制できる。
【0118】
10)幾つかの実施形態では、上記9)に記載のアンモニアガス供給システム(2)であって、
前記タンク加温器(22)の内部に存在する前記排ガス、又は、前記排ガス導入ライン(11)を流れる前記排ガス、の何れかの温度を取得するように構成された排ガス温度取得装置(111)と、
前記排ガス導入ライン(11)の前記排ガス温度取得装置(111)による温度取得位置よりも上流側に設けられる排ガス降温装置(112)であって、前記排ガス温度取得装置(111)により取得される前記排ガスの温度が所定値以下となるように前記排ガス導入ライン(11)を介して前記タンク加温器(22)に導入される前記排ガスの温度を下げるように構成された排ガス降温装置(112)、又は、
前記排ガス導入ライン(11)の前記排ガス温度取得装置(111)による温度取得位置よりも上流側に設けられる排ガス昇温装置(113)であって、前記排ガス温度取得装置(111)により取得される前記排ガスの温度が所定値以上となるように前記排ガス導入ライン(11)を介して前記タンク加温器(22)に導入される前記排ガスの温度を上げるように構成された排ガス昇温装置(113)、の少なくとも一方の装置(112、113)と、をさらに備える。
【0119】
上記10)の構成によれば、内燃機関(3)から排出される排ガスは、内燃機関(3)から回収できる熱エネルギ(排熱)が冷却液よりも内燃機関(3)から熱エネルギを多いため、タンク加温器(22)に導かれる排ガスの温度が高くなることがある。タンク加温器(22)に導かれる排ガスの温度が高くなりすぎると、アンモニア貯蔵タンク(21)の内部においてアンモニアガスが過剰に生成され、アンモニア貯蔵タンク(21)の内圧が高くなり過ぎる虞がある。排ガス降温装置(112)により、排ガス温度取得装置(111)により取得される排ガスの温度が所定値以下となるようにすることで、タンク加温器(22)に導かれる排ガスの温度が高くなることを抑制できるため、タンク加温器(22)により、アンモニア貯蔵タンク(21)に貯蔵された液体アンモニアを安定的に加温できる。
【0120】
上記10)の構成によれば、例えば、内燃機関(3)の起動時のような、排ガスが内燃機関(3)から回収できる熱エネルギ(排熱)が小さい場合には、タンク加温器(22)に導かれる排ガスの温度が低くなることがある。排ガス昇温装置(113)により、排ガス温度取得装置(111)により取得される排ガスの温度が所定値以上となるようにすることで、タンク加温器(22)に導かれる排ガスの温度が低くなることを抑制できるため、タンク加温器(22)により、アンモニア貯蔵タンク(21)に貯蔵された液体アンモニアを安定的に加温できる。
【0121】
11)幾つかの実施形態では、上記1)に記載のアンモニアガス供給システム(2)であって、
前記アンモニア貯蔵タンク(21)を加温するための熱媒体を循環させる熱媒体循環ライン(7)であって、前記タンク加温器(22)の導入口(221)に一端が接続され、前記タンク加温器(22)の排出口(222)に他端が接続された熱媒体循環ライン(7)と、
前記熱媒体循環ライン(7)に設けられ、前記熱媒体循環ライン(7)を流れる前記熱媒体を昇圧するように構成された熱媒体側ポンプ(P3)と、
前記熱媒体循環ライン(7)に設けられ、前記熱媒体を貯留するように構成された熱媒体貯留タンク(71)と、
前記内燃機関(3)の作動時に前記内燃機関(3)から排出される排熱により、前記熱媒体貯留タンク(71)に貯留された前記熱媒体を保温するように構成された保温器(72)と、をさらに備える。
【0122】
上記11)の構成によれば、保温器(72)により熱媒体貯留タンク(71)に貯留された熱媒体を保温することで、熱媒体循環ライン(7)を介してタンク加温器(22)に導入される熱媒体の温度低下を抑制できる。これにより、例えば、内燃機関(3)の起動時のような、冷却液が内燃機関(3)から回収できる熱エネルギ(排熱)が小さい場合でも、タンク加温器(22)により、アンモニア貯蔵タンク(21)に貯蔵された液体アンモニアを安定的に加温できる。よって、上記10)の構成によれば、内燃機関(3)の起動時にも、タンク加温器(22)により液体アンモニアを加温してアンモニアガスを生成できるため、内燃機関(3)の起動時から内燃機関(3)にアンモニアガスを供給できるまでの期間を小さなものとすることができる。
【0123】
12)幾つかの実施形態では、上記11)に記載のアンモニアガス供給システム(2)であって、
前記内燃機関(3)を冷却するための冷却液を循環させる冷却液循環ライン(4)と、
前記冷却液循環ライン(4)に設けられ、前記冷却液循環ライン(4)を流れる前記冷却液を昇圧するための循環ライン側ポンプ(P1)と、
前記冷却液循環ライン(4)に設けられる前記冷却液を冷却するための冷却装置(41)と、
前記内燃機関(3)から前記冷却装置(41)に向かって流れる前記冷却液の一部を前記冷却液循環ライン(4)から抜き出して前記保温器(72)に導くための冷却液導入ライン(5A)と、をさらに備える。
【0124】
上記12)の構成によれば、冷却液導入ライン(5A)を介して、内燃機関(3)における燃焼により生じた熱エネルギを回収した冷却液を保温器(72)に導くことができる。そして、保温器(72)に導入された冷却液により、熱媒体貯留タンク(71)に貯留された熱媒体を保温できる。この場合には、液体アンモニアを加温するための熱源(熱媒体を保温するための熱源)として内燃機関(3)から排出される排熱を利用することで、液体アンモニアを加温するための別置きの熱源を不要としたり、別置きの熱源の小型化が図れるので、アンモニアガス供給システム(2)の構造の複雑化を抑制できる。また、冷却液循環ライン(4)、循環ライン側ポンプ(P1)及び冷却装置(41)は、従来から冷却液を循環させるために必要な設備であり、これらの設備を保温器(72)への冷却液の導入に利用することによっても、アンモニアガス供給システム(2)の構造の複雑化を抑制できる。
【0125】
13)幾つかの実施形態では、上記11)又は12)に記載のアンモニアガス供給システム(2)であって、
前記タンク加温器(22)の内部に存在する前記熱媒体、又は、前記熱媒体循環ライン(7)を前記熱媒体貯留タンク(71)から前記タンク加温器(22)に向かって流れる前記熱媒体、の何れかの温度を取得するように構成された熱媒体温度取得装置(73)と、
前記熱媒体温度取得装置(73)により取得される前記熱媒体の温度が所定値以下になるように前記熱媒体循環ライン(7)を介して前記タンク加温器(22)に導入される前記熱媒体の温度調整を行うように構成された熱媒体温度調整装置(74)と、をさらに備える。
【0126】
上記13)の構成によれば、熱媒体温度調整装置(74)によりタンク加温器(22)に導かれる熱媒体の温度を抑え、熱媒体温度取得装置(73)により取得される熱媒体の温度が所定値以下となるようにすることで、タンク加温器(22)に導かれる熱媒体の温度が高くなることを抑制できるため、タンク加温器(22)により、アンモニア貯蔵タンク(21)に貯蔵された液体アンモニアを安定的に加温できる。
【0127】
14)幾つかの実施形態では、上記3)~8)、12)又は13)の何れかに記載のアンモニアガス供給システム(2)であって、
前記冷却液循環ライン(4)の前記冷却装置(41)よりも上流側に一端が接続され、前記冷却装置(41)を迂回して他端が前記冷却液循環ライン(4)の前記冷却装置(41)よりも下流側に接続されるバイパスライン(42)と、
前記冷却液循環ライン(4)の前記バイパスライン(42)の前記一端に接続される接続部(46)よりも上流側を流れる前記冷却液が、前記冷却装置(41)又は前記バイパスライン(42)の何れかを通過するように構成されたサーモスタット(43)と、をさらに備え、
前記冷却液導入ライン(5、5A)は、前記冷却液循環ライン(4)の前記バイパスライン(42)の前記一端に接続される前記接続部(46)よりも上流側に接続された。
【0128】
上記14)の構成によれば、冷却液循環ライン(4)を循環する冷却液の温度に応じて、サーモスタット(43)が開閉し、冷却装置(41)やバイパスライン(42)を冷却液が通過しないことがある。冷却液循環ライン(4)の上記接続部(46)よりも上流側は、冷却液循環ライン(4)を循環する冷却液の温度に依らずに冷却液が流れるので、冷却液導入ライン(5、5A)に冷却液を安定的に導くことができる。
【0129】
15)本開示の少なくとも一実施形態に係る内燃機関システム(1)は、
アンモニアガスを燃料とする内燃機関(3)と、
上記1)から14)までの何れかに記載のアンモニアガス供給システム(2)と、を備える。
【0130】
上記15)の構成によれば、内燃機関(3)の運転状態に依らず、アンモニアガス供給システム(2)により内燃機関(3)に必要量のアンモニアガスを供給できるため、内燃機関(3)を安定的に運転させることができる。
【符号の説明】
【0131】
1 内燃機関システム
2 アンモニアガス供給システム
3 内燃機関
4 冷却液循環ライン
5,5A 冷却液導入ライン
6,6A 冷却液戻しライン
7 熱媒体循環ライン
11,11A 排ガス導入ライン
21 アンモニア貯蔵タンク
22 タンク加温器
23 アンモニアガス導入ライン
41 冷却装置
42 バイパスライン
43 サーモスタット
51 冷却液温度取得装置
52 冷却液昇温装置
53 冷却液降温装置
54,116 制御装置
71 熱媒体貯留タンク
72 保温器
73 熱媒体温度取得装置
74 熱媒体温度調整装置
111 排ガス温度取得装置
112 排ガス降温装置
113 排ガス昇温装置
P1 循環ライン側ポンプ
P2 冷却液側ポンプ
P3 熱媒体側ポンプ