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  • 特開-建材および建材の製造方法 図1
  • 特開-建材および建材の製造方法 図2
  • 特開-建材および建材の製造方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024113398
(43)【公開日】2024-08-22
(54)【発明の名称】建材および建材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B27K 3/36 20060101AFI20240815BHJP
   B27K 3/34 20060101ALI20240815BHJP
   B27K 3/50 20060101ALI20240815BHJP
   E04B 1/10 20060101ALI20240815BHJP
【FI】
B27K3/36
B27K3/34 A
B27K3/50 Z
E04B1/10 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023018345
(22)【出願日】2023-02-09
(71)【出願人】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】丸 尚孝
(72)【発明者】
【氏名】末松 壮一郎
(72)【発明者】
【氏名】池嵜 冴美
【テーマコード(参考)】
2B230
【Fターム(参考)】
2B230AA03
2B230AA21
2B230BA01
2B230CB01
2B230CB06
2B230CC12
2B230DA02
2B230EB02
2B230EB05
2B230EB13
(57)【要約】
【課題】芳香効果の持続性を向上させることが可能な建材を提供する。
【解決手段】建材は、熱処理木材に油性芳香液が注入されている。油性芳香液は、香料および溶剤を含み、溶剤は、脂肪族ジオールである。建材の製造方法は、木材を熱処理して熱処理木材1を得る工程と、熱処理木材1に油性芳香液組成物2を減圧注入する工程と、を含む。油性芳香液組成物は、香料および溶剤を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱処理木材に油性芳香液が注入されている建材であって、
前記油性芳香液は、香料および溶剤を含み、
前記溶剤は、脂肪族ジオールである、建材。
【請求項2】
前記脂肪族ジオールは、エチレングリコールまたはジプロピレングリコールである、請求項1に記載の建材。
【請求項3】
前記油性芳香液中の前記香料の含有率が3質量%以上97質量%以下であり、
前記油性芳香液中の前記溶剤の含有率が3質量%以上97質量%以下である、請求項1に記載の建材。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の建材を製造する方法であって、
木材を熱処理して前記熱処理木材を得る工程と、
前記熱処理木材に前記油性芳香液を含む油性芳香液組成物を減圧注入する工程と、を含む、建材の製造方法。
【請求項5】
前記油性芳香液組成物中の前記香料の含有率が3質量%以上97質量%以下であり、
前記油性芳香液組成物中の前記溶剤の含有率が3質量%以上97質量%以下である、請求項4に記載の建材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、建材および建材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、種々の機能を付与することが可能な注入液が注入されている建材が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、植物抽出液若しくは飲料からなる注入液を木材に加圧注入してなる内装材が記載されている。ここで、注入液は、芳香効果、着色効果およびカビ抑制効果のうちの2つ以上の効果を併せ持つ。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008-119893号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載されている内装材は、芳香効果の持続性が低い。
【0006】
したがって、発明者は、芳香効果の持続性を向上させることが可能な建材を提供する、という課題を見出した。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、熱処理木材に油性香料が注入されている建材であって、前記油性香料は、香料および溶剤を含み、前記溶剤は、脂肪族ジオールである。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態の建材の製造方法を説明する図である。
図2】実施例の試験片の芳香効果の持続性の評価結果を示すグラフである。
図3】実施例の試験片の芳香効果の持続性の評価結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施形態について詳細に説明する。
【0010】
[建材]
本実施形態の建材は、熱処理木材に油性芳香液が注入されている。ここで、油性芳香液は、香料および溶剤を含み、溶剤は、脂肪族ジオールである。このため、本実施形態の建材の芳香効果の持続性が向上する。これは、親油性が高い熱処理木材および油性芳香液の親和性が高いことに起因していると推測される。
【0011】
香料としては、建材に芳香効果を付与することが可能であれば、特に限定されないが、例えば、レモン油、ライム油、スペアミント油、ジャスミン油、オレンジ油、パイン油、はっか油、ユーカリ油、ラベンダー油、ムスク等の天然香料、ヒノキチオール、リモネン、リナロール、オイゲノール、シトロネラール、バニリン、カルボン、ヨノン、ムスコン、ローズオキサイド、インドール、酢酸ゲラニル、安息香酸エチル等の合成香料が挙げられる。
【0012】
脂肪族ジオールとしては、香料を溶解させることが可能であれば、特に限定されないが、例えば、エチレングリコール、ジプロピレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタジエングリコール、へキシレングリコールが挙げられる。これらの中でも、香料の溶解性の観点から、エチレングリコールまたはジプロピレングリコールが好ましい。
【0013】
油性芳香液中の香料の含有率は、3質量%以上97質量%以下であることが好ましく、3質量%以上70質量%以下であることがさらに好ましい。油性芳香液中の香料の含有率が3質量%以上97質量%以下であると、本実施形態の建材の芳香効果の持続性が向上する。
【0014】
油性芳香液中の脂肪族ジオールの含有率は、3質量%以上97質量%以下であることが好ましく、20質量%以上97質量%以下であることがさらに好ましい。油性芳香液中の脂肪族ジオールの含有率が3質量%以上97質量%以下であると、本実施形態の建材の芳香効果の持続性が向上する。
【0015】
本実施形態の建材としては、特に限定されないが、例えば、ドア材、トイレ用壁材、浴室用壁材、洗面所用壁材、サッシ材が挙げられる。また、本実施形態の建材は、例えば、ガーデンルームに適用することができる。
【0016】
[建材の製造方法]
本実施形態の建材の製造方法は、木材を熱処理して熱処理木材を得る工程と、熱処理木材に油性芳香液組成物を減圧注入する工程と、を含む。ここで、油性芳香液組成物は、油性芳香液を含み、熱処理木材に油性芳香液を注入するために使用される。なお、油性芳香液組成物の組成は、油性芳香液の組成と実質的に同一であってもよいし、油性芳香液の組成とは異なっていてもよい。例えば、後述するように、油性芳香液組成物が希釈溶剤等の揮発性成分を含む場合、油性芳香液は、油性芳香液組成物から揮発性成分の少なくとも一部が除かれたものとなる。
【0017】
木材としては、特に限定されないが、例えば、ヒノキ材、杉材、桧材、ベイマツ材、ベイヒバ材、ベイツガ材、パイン材、ポプラ材、ユーカリ材、サワラ材、タモ材、ナラ材、ヒバ材、カラマツ材、クロマツ材、コナラ材、栗材、桜材、オーク材、ウォルナット材、シナ材、ビーチ材、ホワイトアッシュ材、レッドオーク材、バーチ材、サペリ材、ハードメープル材、ブラックチェリー材、マホガニー材、チーク材、ブビンガ材、ゼブラ材等の天然木材、合板等の加工木材が挙げられる。
【0018】
木材を熱処理する条件は、熱処理前の木材に比べて熱処理された熱処理木材の親油性を高くすることが可能であれば、特に限定されない。木材を熱処理する温度は、例えば、140℃以上260℃以下であり、木材を熱処理する時間は、例えば、6時間以上72時間以下である。
【0019】
熱処理木材に油性芳香液組成物を減圧注入する方法としては、特に限定されないが、例えば、減圧環境下で熱処理木材1を油性芳香液組成物2に所定時間浸漬した後(図1参照)、常圧環境下で熱処理木材1を油性芳香液組成物2に所定時間浸漬する方法、減圧環境下で熱処理木材を所定時間放置した後、常圧環境下で熱処理木材を油性芳香液組成物に所定時間浸漬する方法が挙げられる。
【0020】
油性芳香液組成物中の香料の含有率は、3質量%以上97質量%以下であることが好ましく、3質量%以上70質量%以下であることがさらに好ましい。油性芳香液組成物中の香料の含有率が3質量%以上97質量%以下であると、本実施形態の建材の芳香効果の持続性が向上する。
【0021】
油性芳香液組成物中の脂肪族ジオールの含有率は、3質量%以上97質量%以下であることが好ましく、20質量%以上97質量%以下であることが好ましい。油性芳香液組成物中の脂肪族ジオールの含有率が3質量%以上97質量%以下であると、本実施形態の建材の芳香効果の持続性が向上する。
【0022】
油性芳香液組成物は、希釈溶剤をさらに含んでいてもよい。これにより、油性芳香液組成物の粘度が低下するため、熱処理木材に油性芳香液組成物を減圧注入しやすくなる。
【0023】
希釈溶剤としては、脂肪族ジオールと混和することが可能であれば、特に限定されないが、例えば、エタノール、メタノール、イソプロピルアルコール、1-プロパノール、2-プロパノール等の脂肪族モノオールが挙げられる。これらの中でも、脂肪族ジオールとの混和性の観点から、エタノールが好ましい。
【0024】
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は、上記の実施形態に限定されず、本開示の趣旨の範囲内で、上記の実施形態を適宜変更してもよい。
【実施例0025】
以下、本開示の実施例を説明するが、本開示は、実施例に限定されるものではない。なお、本実施例においては、建材に対応する試験片を使用して、芳香効果の持続性を評価した。
【0026】
[実施例1]
ヒノキ香料の市販品(長谷川香料製)(3質量%)および脂肪族ジオール(97質量%)を混合し、油性芳香液組成物を得た。ここで、ヒノキ香料の市販品を構成する成分は、シダーウッドオイル、α-ピネン、テルピネオール、リナロオール、4-tert-ブチルシクロへキシルアセテート、アセチルセドレン、ボルネオール、しよう脳(dl)、4-tert-ブチルシクロヘキサノール、テルピノレン、シトロネロール、シトロネラ香料、ゲラニオール、ユーカリ香料、ミルセンである。また、油性芳香液の組成は、油性芳香液組成物の組成と実質的に同一である。
【0027】
ヒノキ材を180℃で24時間熱処理し、熱処理ヒノキ材を得た後、ビーカーに入れた油性芳香液組成物に熱処理ヒノキ材を浸漬した。次に、真空デシケーターにビーカーを入れ、真空環境下で1時間放置した後、常圧環境下で3時間放置した。次に、真空デシケーターからビーカーを取り出した後、油性芳香液組成物から熱処理ヒノキ材を取り出し、常温環境下で3日間乾燥させ、試験片を得た。
【0028】
[実施例2]
ヒノキ香料の市販品(長谷川香料製)(30質量%)および脂肪族ジオール(70質量%)を混合し、油性芳香液組成物を得た。
【0029】
得られた油性芳香液組成物を使用した以外は、実施例1と同様にして、試験片を得た。
【0030】
[実施例3]
ヒノキ香料の市販品(長谷川香料製)(3質量%)および脂肪族ジオール(47質量%)およびエタノール(50質量%)を混合し、油性芳香液組成物を得た。ここで、エタノールは、真空環境下で揮発する希釈溶剤であるため、油性芳香液は、油性芳香液組成物からエタノールの少なくとも一部が除かれたものとなる。
【0031】
得られた油性芳香液組成物を使用した以外は、実施例1と同様にして、試験片を得た。
【0032】
[実施例4]
ヒノキ香料の市販品(長谷川香料製)(30質量%)および脂肪族ジオール(20質量%)およびエタノール(50質量%)を混合し、油性芳香液組成物を得た。
【0033】
得られた油性芳香液組成物を使用した以外は、実施例1と同様にして、試験片を得た。
【0034】
[実施例2]
ヒノキ香料の市販品(長谷川香料製)(70質量%)および脂肪族ジオール(30質量%)を混合し、油性芳香液組成物を得た。
【0035】
得られた油性芳香液組成物を使用した以外は、実施例1と同様にして、試験片を得た。
【0036】
[比較例1]
ヒノキ香料の市販品(長谷川香料製)(3質量%)および界面活性剤水溶液(97質量%)を混合し、水性芳香液組成物を得た。
【0037】
油性芳香液組成物の代わりに、水性芳香液組成物を使用した以外は、実施例1と同様にして、試験片を得た。
【0038】
[比較例2]
ヒノキ材を熱処理しなかった以外は、実施例2と同様にして、試験片を得た。
【0039】
[芳香効果の持続性]
40℃の高温環境下で試験片を放置する促進試験を63日間実施し、芳香効果の持続性を評価した。ここで、油性芳香液組成物に浸漬する前の(熱処理)ヒノキ材の重量を100%としたときの重量変化および官能評価により、芳香効果の持続性を評価した。なお、官能評価の判定基準は、以下の通りである。
5:強烈に芳香を感じる
4:しっかり芳香を感じる
3:ほどよく芳香を感じる
2:わずかに芳香を感じる
1:全く芳香を感じない
【0040】
図2および図3に、試験片の芳香効果の持続性の評価結果を示す。
【0041】
図2および図3から、実施例1~5の試験片は、芳香効果の持続性が高いことがわかる。これらの中でも、実施例1、2、5の試験片は、希釈溶剤を含まない油性芳香液組成物が使用されているため、芳香効果の持続性が特に高い。
【0042】
これに対して、比較例1の試験片は、熱処理ヒノキ材を水性芳香液組成物に浸漬したため、芳香効果の持続性が低い。また、比較例2の試験片は、ヒノキ材が熱処理されていないため、同一の油性芳香液組成物が使用されている実施例2の試験片よりも、芳香効果の持続性が低い。
【符号の説明】
【0043】
1 熱処理木材
2 油性芳香液組成物
図1
図2
図3