(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024113399
(43)【公開日】2024-08-22
(54)【発明の名称】部品実装システム、及び、部品実装システムの管理方法
(51)【国際特許分類】
H05K 13/00 20060101AFI20240815BHJP
G05B 19/418 20060101ALI20240815BHJP
【FI】
H05K13/00 Z
G05B19/418 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023018348
(22)【出願日】2023-02-09
(71)【出願人】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】内田 聖人
【テーマコード(参考)】
3C100
5E353
【Fターム(参考)】
3C100AA22
3C100AA59
3C100BB13
3C100CC02
3C100EE07
5E353AA02
5E353CC01
5E353CC03
5E353CC16
5E353LL02
5E353LL04
5E353LL06
5E353QQ05
5E353QQ06
5E353QQ08
(57)【要約】 (修正有)
【課題】部品実装ラインの装置にシャットダウンの前準備を実行させてからシャットダウンする場合のオペレータの作業効率を向上させること。
【解決手段】部品実装装置15は通信部を備えており、複数の部品実装装置15のうち少なくとも1つの部品実装装置15はオペレータからシャットダウンの前準備指示を受け付ける操作部を備えており、操作部を備える部品実装装置15は、操作部で前準備指示を受け付けると少なくとも1つの他の部品実装装置15に通信部を介してシャットダウンの前準備の実行を指示し、オペレータから前準備指示を受け付けた部品実装装置15、及び、当該部品実装装置15から前準備の実行を指示された少なくとも1つの他の部品実装装置15がそれぞれシャットダウンの前準備を実行する、部品実装システム1。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に部品を実装するための複数の装置が前記基板の搬送経路に沿って配されている部品実装ラインを備える部品実装システムであって、
前記装置は通信部を備えており、
複数の前記装置のうち少なくとも1つの装置はオペレータからシャットダウンの前準備指示を受け付ける操作部を備えており、
前記操作部を備える前記装置は、前記操作部で前記前準備指示を受け付けると少なくとも1つの他の前記装置に前記通信部を介してシャットダウンの前準備の実行を指示し、
オペレータから前記前準備指示を受け付けた前記装置、及び、当該装置から前記前準備の実行を指示された少なくとも1つの他の前記装置がそれぞれシャットダウンの前準備を実行する、部品実装システム。
【請求項2】
請求項1に記載の部品実装システムであって、
前記操作部を備える前記装置は、前記前準備指示を受け付けるとき、前準備として実行する動作の指定を更に受け付け、指定された動作を前準備として実行するよう少なくとも1つの他の前記装置に指示し、
オペレータから前記前準備指示を受け付けた前記装置、及び、当該装置から前記前準備の実行を指示された少なくとも1つの他の前記装置が、前記指定された動作を前記前準備として実行する、部品実装システム。
【請求項3】
請求項2に記載の部品実装システムであって、
前記操作部を備える前記装置は、前記前準備として実行する動作の指定を複数の前記装置に対して一括して指定するか又は前記装置毎に個別に指定するかの選択を受け付け、一括して指定するが選択された場合は前記前準備として実行する動作の指定を一括して受け付け、個別に指定するが選択された場合は前記前準備として実行する動作の指定を前記装置毎に受け付ける、部品実装システム。
【請求項4】
請求項2又は請求項3に記載の部品実装システムであって、
前記操作部は表示装置を有し、
前記操作部を備える前記装置は、前記前準備として実行する動作の指定を受け付けるとき、前記前準備として実行するデフォルトの動作を前記表示装置に表示し、表示した動作の変更を受け付ける、部品実装システム。
【請求項5】
請求項4に記載の部品実装システムであって、
前記操作部を備える前記装置は、前記前準備指示を受け付けるとき、シャットダウンの目的の指定をオペレータから受け付け、指定された目的に応じてデフォルトの動作を切り替える、部品実装システム。
【請求項6】
請求項4に記載の部品実装システムであって、
前記装置のシャットダウンの目的には、前記装置の停止時間が所定時間未満である通常のシャットダウンと、停止時間が前記所定時間以上である長時間のシャットダウンとがあり、
前記操作部を備える前記装置は、前記前準備指示を受け付けるとき、シャットダウンの目的が通常のシャットダウンであるか長時間のシャットダウンであるかを前記基板の生産計画に基づいて自動で判断し、判断した目的に応じてデフォルトの動作を切り替える、部品実装システム。
【請求項7】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の部品実装システムであって、
前記装置は可動部を備えており、
前記操作部を備える前記装置は、前記前準備指示を受け付けるとき、シャットダウンの目的がメンテナンスであるか否かの指定をオペレータから受け付け、メンテナンスである場合は更に前記可動部の移動先の指定を受け付け、
シャットダウンの目的がメンテナンスではない場合の前記前準備として実行する動作は前記可動部を原点位置に移動させる動作であり、シャットダウンの目的がメンテナンスである場合の前記前準備として実行する動作は前記可動部を指定された移動先に移動させる動作である、部品実装システム。
【請求項8】
基板に部品を実装するための複数の装置が前記基板の搬送経路に沿って配されている部品実装ラインと管理装置とを備える部品実装システムであって、
前記装置及び前記管理装置は通信部を備えており、
前記管理装置はオペレータからシャットダウンの前準備指示を受け付ける操作部を備えており、前記操作部で前記前準備指示を受け付けると少なくとも2つの前記装置にシャットダウンの前準備の実行を指示し、
少なくとも2つの前記装置は、前記管理装置から前記前準備の実行を指示されると前記前準備を実行する、部品実装システム。
【請求項9】
基板に部品を実装するための複数の装置が前記基板の搬送経路に沿って配されている部品実装ラインを備える部品実装システムの管理方法であって、
複数の前記装置のうちいずれか1つの装置が操作部を介してオペレータからシャットダウンの前準備指示を受け付ける工程と、
オペレータから前記前準備指示を受け付けた前記装置が少なくとも1つの他の前記装置に通信部を介して前記前準備の実行を指示する工程と、
オペレータから前記前準備指示を受け付けた前記装置、及び、当該装置から前記前準備の実行を指示された少なくとも1つの他の前記装置がそれぞれシャットダウンの前準備を実行する工程と、
を含む、部品実装システムの管理方法。
【請求項10】
基板に部品を実装するための複数の装置が前記基板の搬送経路に沿って配されている部品実装ラインと管理装置とを備える部品実装システムの管理方法であって、
前記管理装置が操作部を介してオペレータからシャットダウンの前準備指示を受け付ける工程と、
オペレータから前記前準備指示を受け付けた前記管理装置が少なくとも2つの前記装置に通信部を介してシャットダウンの前準備の実行を指示する工程と、
前記管理装置から前記前準備の実行を指示された少なくとも2つの前記装置が前記前準備を実行する工程と、
を含む、部品実装システムの管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で開示する技術は、基板に部品を実装するための複数の装置が基板の搬送経路に沿って配されている部品実装ラインを備える部品実装システム、及び、部品実装システムの管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、基板に部品を実装するための複数の装置が基板の搬送経路に沿って配されている部品実装ラインが知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の部品実装ラインは回路基板の搬送経路に沿って配列された複数台の装置を使用して回路基板に部品を実装するものであり、タブレットコンピュータを備えている。タブレットコンピュータは複数台の装置に対して、起動指示、シャットダウン指示、生産開始指示、生産停止指示、データ伝送等のうちの少なくとも1つの指示を伝送する機能を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
オペレータは、部品実装ラインを構成している複数の装置をシャットダウンするとき、シャットダウンする前にシャットダウンのための前準備を各装置に実行させる場合がある。従来は、部品実装ラインを構成している複数の装置にシャットダウンの前準備を実行させてからそれらの装置をシャットダウンする場合のオペレータの作業効率を向上させる上で改善の余地があった。
本明細書では、部品実装ラインを構成している複数の装置にシャットダウンの前準備を実行させてからそれらの装置をシャットダウンする場合のオペレータの作業効率を向上させる技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
基板に部品を実装するための複数の装置が前記基板の搬送経路に沿って配されている部品実装ラインを備える部品実装システムであって、前記装置は通信部を備えており、複数の前記装置のうち少なくとも1つの装置はオペレータからシャットダウンの前準備指示を受け付ける操作部を備えており、前記操作部を備える前記装置は、前記操作部で前記前準備指示を受け付けると少なくとも1つの他の前記装置に前記通信部を介してシャットダウンの前準備の実行を指示し、オペレータから前記前準備指示を受け付けた前記装置、及び、当該装置から前記前準備の実行を指示された少なくとも1つの他の前記装置がそれぞれシャットダウンの前準備を実行する、部品実装システム。
【発明の効果】
【0006】
上記の構成によれば、部品実装ラインを構成している複数の装置にシャットダウンの前準備を実行させてからそれらの装置をシャットダウンする場合のオペレータの作業効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図4】ヘッドユニット、ヘッド移動部及びバックアップ装置を前側から見た模式図
【
図5A】台車及び台車クランプ機構の模式図(クランプされる前の状態)
【
図5B】台車及び台車クランプ機構の模式図(クランプされる途中の状態)
【
図5C】台車及び台車クランプ機構の模式図(クランプされている状態)
【
図8】メンテナンスのための移動を説明するための模式図
【
図10】ライン操作実行画面の模式図(一括、シャットダウン(通常)が選択された場合)
【
図11】ライン操作実行画面の模式図(個別、シャットダウン(通常)が選択された場合)
【
図12】ライン操作実行画面の模式図(個別、シャットダウン(長時間停止)が選択された場合)
【
図13】ライン操作実行画面の模式図(個別、メンテナンスが選択された場合)
【
図16】オペレータが前準備指示を行う操作及び部品実装装置の制御部によって実行されるシャットダウンのフローチャート
【
図17】他の部品実装装置の制御部によって実行されるシャットダウンのフローチャート
【
図19】実施形態3に係る部品実装システムの模式図
【発明を実施するための形態】
【0008】
[本開示の実施形態の概要]
(1)実施形態に係る部品実装システムは、基板に部品を実装するための複数の装置が前記基板の搬送経路に沿って配されている部品実装ラインを備える部品実装システムであって、前記装置は通信部を備えており、複数の前記装置のうち少なくとも1つの装置はオペレータからシャットダウンの前準備指示を受け付ける操作部を備えており、前記操作部を備える前記装置は、前記操作部で前記前準備指示を受け付けると少なくとも1つの他の前記装置に前記通信部を介してシャットダウンの前準備の実行を指示し、オペレータから前記前準備指示を受け付けた前記装置、及び、当該装置から前記前準備の実行を指示された少なくとも1つの他の前記装置がそれぞれシャットダウンの前準備を実行する。
【0009】
上記の「シャットダウン」とは装置への電力供給を遮断することをいう。上記の「前記通信部を介してシャットダウンの前準備の実行を指示し」は、オペレータから前準備指示を受け付けた装置が他の装置と直に通信して前準備の実行を指示する場合も、部品実装ラインの外にあるコンピュータを介して間接的に指示する場合も含む。
【0010】
従来は、部品実装ラインを構成している複数の装置にシャットダウンの前準備を実行させてからそれらの装置をシャットダウンするとき、オペレータが装置に移動して前準備の実行を指示し、前準備が終了するまで待機した後、その装置をシャットダウンして次の装置に移動するということを行っていた。あるいは、前準備の実行を指示した後、次の装置に移動して前準備の実行を指示し、全ての装置について前準備の実行を指示した後、装置間を逆方向に移動して各装置をシャットダウンするということを行っていた。
このため、従来は装置毎に個別に前準備の実行を指示しなければならず、指示に時間を要していた。更に、装置毎に待ち時間(前準備が終了するまで待機する時間)が発生するというロス、あるいは装置間を往復するという時間のロスがあった。このためオペレータの作業効率を低下させる要因の一つになっていた。
前述した特許文献1に記載の部品実装ラインはタブレットコンピュータから複数台の装置にシャットダウン指示を一括して伝送できるが、シャットダウンの前準備については考慮されていなかった。
【0011】
上記(1)に記載の部品実装システムによると、オペレータは操作部を備えるいずれかの装置で前準備指示を行うことにより、前準備が必要な複数の装置に対して前準備の実行を一括して指示できる。このため、装置毎に個別に指示する場合に比べて指示に要する時間を短縮できる。
そして、上記(1)に記載の部品実装システムによると、オペレータは前準備指示を行った後に各装置に移動して個別にシャットダウンするが、各装置は概ね同じタイミングで前準備が終了するので、オペレータの待ち時間は前準備が1回実行される分の時間だけでよい。このため、装置毎に待ち時間が発生する場合に比べて待ち時間のロスを低減できる。あるいは、オペレータは装置間の移動が一方向だけでよいので、往復する場合に比べて移動時間のロスを低減できる。
前準備が終了した後に各装置に一括してシャットダウンを指示する構成とすることもできる。その場合もオペレータの待ち時間は前準備が1回実行される分の時間だけでよいので待ち時間のロスが低減される。
よって上記(1)に記載の部品実装システムによると、部品実装ラインを構成している複数の装置にシャットダウンの前準備を実行させてからそれらの装置をシャットダウンする場合のオペレータの作業効率が向上する。
更に、上記(1)に記載の部品実装システムによると、部品実装ラインを構成している装置がオペレータから前準備指示を受け付けるので、特許文献1のタブレットコンピュータのような外部装置は不要である。このためオペレータの作業効率を簡素な構成で向上させることができる。
【0012】
(2)上記(1)に記載の部品実装システムであって、前記操作部を備える前記装置は、前記前準備指示を受け付けるとき、前準備として実行する動作の指定を更に受け付け、指定された動作を前準備として実行するよう少なくとも1つの他の前記装置に指示し、オペレータから前記前準備指示を受け付けた前記装置、及び、当該装置から前記前準備の実行を指示された少なくとも1つの他の前記装置が、前記指定された動作を前記前準備として実行してもよい。
【0013】
装置のシャットダウンは様々な目的で行われる。そして、シャットダウンの前準備として実行する動作がシャットダウンの目的によって異なることがある。
上記(2)に記載の部品実装システムによると、オペレータは前準備として実行する動作を指定できるので、シャットダウンの目的に応じた動作を指定することにより、シャットダウンの目的に応じた動作を実行させることができる。
【0014】
(3)上記(2)に記載の部品実装システムであって、前記操作部を備える前記装置は、前記前準備として実行する動作の指定を複数の前記装置に対して一括して指定するか又は前記装置毎に個別に指定するかの選択を受け付け、一括して指定するが選択された場合は前記前準備として実行する動作の指定を一括して受け付け、個別に指定するが選択された場合は前記前準備として実行する動作の指定を前記装置毎に受け付けてもよい。
【0015】
複数の装置を同じ目的でシャットダウンする場合は、各装置に前準備として実行させる動作は同じになる。この場合、装置毎に同じ動作を指定しなければならないとするとオペレータにとって負担である。
上記(3)に記載の部品実装システムによると、オペレータは一括を選択することにより、前準備として実行する動作を複数の装置に対して一括して指定できる。このためオペレータの負担を軽減できる。
ただし、シャットダウンの目的は装置によって異なることもある。上記(3)に記載の部品実装システムによると、オペレータは個別を選択することにより、シャットダウンの前準備として実行する動作を装置毎に指定できる。このため、装置によってシャットダウンの目的が異なる場合に、装置毎の目的に応じた動作を実行させることができる。
【0016】
(4)上記(2)又は(3)に記載の部品実装システムであって、前記操作部は表示装置を有し、前記操作部を備える前記装置は、前記前準備として実行する動作の指定を受け付けるとき、前記前準備として実行するデフォルトの動作を前記表示装置に表示し、表示した動作の変更を受け付けてもよい。
【0017】
上記(4)に記載の部品実装システムによると、前準備として実行するデフォルトの動作が表示されるので、デフォルトの動作がシャットダウンの目的に応じた動作である場合には、オペレータは表示された動作を変更しなくてよい。このためオペレータの利便性が向上する。デフォルトの動作がシャットダウンの目的に応じた動作ではない場合は、オペレータは目的に応じた動作に変更することにより、目的に応じた動作を実行させることができる。
【0018】
(5)上記(4)に記載の部品実装システムであって、前記操作部を備える前記装置は、前記前準備指示を受け付けるとき、シャットダウンの目的の指定をオペレータから受け付け、指定された目的に応じてデフォルトの動作を切り替えてもよい。
【0019】
ある特定の目的に応じた動作をデフォルトの動作として表示すると、シャットダウンの目的が別の目的である場合には、オペレータは表示されているデフォルトの動作を別の動作に変更しなければならない。例えば複数の装置に個別に動作を指定する場合、別の目的でシャットダウンする場合には装置毎に個別に別の動作に変更しなければならず、オペレータにとって負担である。
上記(5)に記載の部品実装システムによると、指定された目的に応じてデフォルトの動作を切り替えるので、オペレータはシャットダウンの目的を指定することにより、目的に応じた動作をデフォルトの動作として表示させることができる。このためオペレータの利便性が向上する。
【0020】
(6)上記(4)に記載の部品実装システムであって、前記装置のシャットダウンの目的には、前記装置の停止時間が所定時間未満である通常のシャットダウンと、停止時間が前記所定時間以上である長時間のシャットダウンとがあり、前記操作部を備える前記装置は、前記前準備指示を受け付けるとき、シャットダウンの目的が通常のシャットダウンであるか長時間のシャットダウンであるかを前記基板の生産計画に基づいて自動で判断し、判断した目的に応じてデフォルトの動作を切り替えてもよい。
【0021】
上記(6)に記載の部品実装システムによると、シャットダウンの目的を生産計画に基づいて自動で判断するので、オペレータはシャットダウンの目的を指定する手間が省かれる。このためオペレータの利便性が向上する。オペレータはシャットダウンの目的を判断しなくてよいので、オペレータの判断ミスの抑制にもなる。
【0022】
(7)上記(1)から(3)のいずれか一項に記載の部品実装システムであって、前記装置は可動部を備えており、前記操作部を備える前記装置は、前記前準備指示を受け付けるとき、シャットダウンの目的がメンテナンスであるか否かの指定をオペレータから受け付け、メンテナンスである場合は更に前記可動部の移動先の指定を受け付け、シャットダウンの目的がメンテナンスではない場合の前記前準備として実行する動作は前記可動部を原点位置に移動させる動作であり、シャットダウンの目的がメンテナンスである場合の前記前準備として実行する動作は前記可動部を指定された移動先に移動させる動作であってもよい。
【0023】
通常、装置のメンテナンスは装置をシャットダウンした状態で行われる。シャットダウンの前準備として実行する動作が可動部を原点位置に移動させる動作である場合、装置がシャットダウンした状態のとき、可動部は原点位置にあることになる。しかしながら、可動部が原点位置にあるとメンテナンスの邪魔になることがある。
上記(7)に記載の部品実装システムによると、シャットダウンの目的がメンテナンスである場合は可動部の移動先の指定を受け付けるので、オペレータは移動先として原点位置以外の移動先(言い換えるとメンテナンスの邪魔にならない移動先)を指定することにより、装置をメンテナンスするときに可動部が邪魔になる可能性を低減できる。このため、装置がシャットダウンしているときに装置をメンテナンスする計画がある場合には、メンテナンスを選択することにより、メンテナンス計画に対応できる。
【0024】
(8)実施形態に係る部品実装システムは、基板に部品を実装するための複数の装置が前記基板の搬送経路に沿って配されている部品実装ラインと管理装置とを備える部品実装システムであって、前記装置及び前記管理装置は通信部を備えており、前記管理装置はオペレータからシャットダウンの前準備指示を受け付ける操作部を備えており、前記操作部で前記前準備指示を受け付けると少なくとも2つの前記装置にシャットダウンの前準備の実行を指示し、少なくとも2つの前記装置は、前記管理装置から前記前準備の実行を指示されると前記前準備を実行する。
【0025】
上記(8)に記載の部品実装システムによると、部品実装ラインを構成している複数の装置にシャットダウンの前準備を実行させてからそれらの装置をシャットダウンする場合のオペレータの作業効率が向上する。
【0026】
(9)実施形態に係る管理方法は、基板に部品を実装するための複数の装置が前記基板の搬送経路に沿って配されている部品実装ラインを備える部品実装システムの管理方法であって、複数の前記装置のうちいずれか1つの装置が操作部を介してオペレータからシャットダウンの前準備指示を受け付ける工程と、オペレータから前記前準備指示を受け付けた前記装置が少なくとも1つの他の前記装置に通信部を介して前記前準備の実行を指示する工程と、オペレータから前記前準備指示を受け付けた前記装置、及び、当該装置から前記前準備の実行を指示された少なくとも1つの他の前記装置がそれぞれシャットダウンの前準備を実行する工程と、を含む。
【0027】
上記(9)に記載の管理方法によると、部品実装ラインを構成している複数の装置にシャットダウンの前準備を実行させてからそれらの装置をシャットダウンする場合のオペレータの作業効率が向上する。
【0028】
(10)実施形態に係る管理方法は、基板に部品を実装するための複数の装置が前記基板の搬送経路に沿って配されている部品実装ラインと管理装置とを備える部品実装システムの管理方法であって、前記管理装置が操作部を介してオペレータからシャットダウンの前準備指示を受け付ける工程と、オペレータから前記前準備指示を受け付けた前記管理装置が少なくとも2つの前記装置に通信部を介してシャットダウンの前準備の実行を指示する工程と、前記管理装置から前記前準備の実行を指示された少なくとも2つの前記装置が前記前準備を実行する工程と、を含む。
【0029】
上記(10)に記載の管理方法によると、部品実装ラインを構成している複数の装置にシャットダウンの前準備を実行させてからそれらの装置をシャットダウンする場合のオペレータの作業効率が向上する。
【0030】
[本開示の実施形態の詳細]
以下に、本開示の実施形態の詳細について説明する。本開示はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
本開示の実施形態は、装置、方法、これらの装置または方法の機能を実現するためのコンピュータプログラム、そのコンピュータプログラムを記録した記録媒体等の種々の態様で実現できる。
【0031】
<実施形態1>
実施形態1を
図1ないし
図17に基づいて説明する。以降の説明では
図2に示す左右方向をX方向、上下方向をZ方向、
図3に示す前後方向をY方向といい、
図2に示す右側を上流側、左側を下流側という。また、以降の説明では同一の構成要素には一部を除いて図面の符号を省略している場合がある。
【0032】
(1)部品実装システム
図1を参照して、実施形態1に係る部品実装システム1について説明する。部品実装システム1は、基板P(
図3参照)に電子部品などの部品E(
図3参照)を実装するための複数の装置が基板Pの搬送経路に沿って配されている部品実装ライン10を備えている。部品実装システム1は部品実装ライン10を2ライン以上備えていてもよい。部品実装システム1は部品実装ライン10の他に管理装置(部品実装ラインの外にあるコンピュータの一例)も備えているが、
図1では管理装置は省略している。
【0033】
部品実装ライン10を構成している複数の装置は、具体的にはローダー11、スクリーン印刷装置12、印刷検査装置13、ディスペンサ14、複数(例えば15台)の部品実装装置15、実装後外観検査装置16、リフロー装置17、硬化後外観検査装置18、アンローダー19などである。これらの装置は複数のコンベア装置20を介して一列に並んでいる。コンベア装置20も部品実装ライン10が備える複数の装置に含まれる。
【0034】
これらの装置は通信ネットワーク5を介して通信可能に接続されている。実施形態1では、各装置は他の装置と通信ネットワーク5を介して直に通信可能である。言い換えると、各装置は部品実装ライン10の外にある管理装置を介することなく他の装置と通信可能である。通信ネットワーク5は有線であってもよいし無線であってもよい。
【0035】
以降の説明では部品実装ライン10を構成している複数の装置として複数の部品実装装置15を例に説明する。複数の部品実装装置15には1から順に装置番号が付与されている。
【0036】
(2)部品実装装置の構成
図2及び
図3を参照して、部品実装装置15の構成について説明する。部品実装装置15は回路パターンが印刷された基板Pに部品Eを実装する装置である。
図2を参照して、部品実装装置15を前側から見た外観について説明する。
図2では後述するテープ部品供給装置33(
図3参照)がセットされていない状態の部品実装装置15を示している。
図2に示すように、部品実装装置15は箱状の筐体15Aを備えている。筐体15Aの右壁には基板Pが搬入される開口が形成されている。筐体15Aの左壁には基板Pが搬出される開口が形成されている。基板Pは右壁の開口から筐体15Aの内部に搬入され、筐体15Aの内部で部品Eが実装された後に左側の開口から搬出される。筐体15Aは前後方向が開放されており、後述するテープ部品供給装置33(
図3参照)が前後両側にセットされる。筐体15Aには操作部61が設けられている。
【0037】
図3に示すように、実施形態1に係る部品実装装置15は2ヘッド式であり、架台31、搬送コンベア32、4つのテープ部品供給装置33、2つのヘッドユニット34、2つのヘッド移動部35、2つの部品撮像カメラ36、2つの基板撮像カメラ37、ノズルステーション38、制御部60(
図6参照)及び操作部61(
図2、
図6参照)を備えている。部品実装装置15は後述するバックアップ装置40(
図4、
図7参照)も備えている。
【0038】
架台31は平面視長方形状をなすとともに上面が平坦とされている。
図3において二点破線で示す領域Aは基板Pに部品Eを実装するときに基板Pが固定される作業位置(以下、作業位置Aという)である。
搬送コンベア32は上流側から搬入された基板Pを作業位置Aに搬送し、作業位置Aで部品Eが実装された基板Pを下流側に搬出する装置である。搬送コンベア32はX方向に循環移動する一対のコンベアベルト39(前側コンベアベルト39A及び後側コンベアベルト39B)、コンベアベルト39が掛け回されている複数のローラ、ローラを回転駆動するコンベア駆動モータ64(
図6参照)などを備えている。一対のコンベアベルト39はそれぞれ独立して前後方向に移動可能である。搬送コンベア32はコンベアベルト39を前後方向に移動させることによってコンベアベルト39の間隔(幅)を変更するベルト移動機構も備えている。コンベアベルト39は可動部の一例である。
【0039】
テープ部品供給装置33は部品実装装置15のY方向の両側においてX方向に並んで2箇所ずつ、計4箇所に配されている。テープ部品供給装置33には複数のテープフィーダ33AがX方向に横並び状に整列して取り付けられている。各テープフィーダ33Aは部品Eを保持している部品テープが巻回されたリール、及び、リールから部品テープを引き出す電動式の送出装置等を備えており、部品Eを1つずつ供給する。
【0040】
詳しくは後述するが、テープ部品供給装置33は台車55A(
図5A参照)を備えており、部品実装装置15に取り外し可能にセットされる。部品実装装置15はセットされた台車55Aをクランプする台車クランプ機構50(
図5A参照)を備えており、台車55Aをクランプすることによってテープ部品供給装置33を位置決め固定する。台車55A及び台車クランプ機構50についての説明は後述する。
【0041】
ヘッドユニット34は部品Eを吸着及び解放する複数(ここでは5個)の実装ヘッド41を備えている。ヘッドユニット34は所謂インライン型であり、複数の実装ヘッド41がX方向に並んで設けられている。ヘッドユニット34についての説明は後述する。ここではヘッドユニット34としてインライン型のヘッドユニット34を例に説明するが、ヘッドユニット34は複数の実装ヘッド41が円周上に配列された所謂ロータリーヘッドであってもよい。
【0042】
ヘッド移動部35はヘッドユニット34を所定の可動範囲内でX方向及びY方向に移動させる機構である。ヘッド移動部35はヘッドユニット34をX方向に往復移動可能に支持しているビーム42、ビーム42をY方向に往復移動可能に支持している一対のY軸ガイドレール43、ヘッドユニット34をX方向に往復移動させるX軸サーボモータ44(
図6参照)、ビーム42をY方向に往復移動させるY軸サーボモータ45(
図6参照)などを備えている。一対のY軸ガイドレール43は2つのビーム42に共有されている。ビーム42は可動部の一例である。
【0043】
ノズルステーション38には実装ヘッド41に取り付けられるノズル41Bが収納されている。ノズルステーション38にはノズル41Bが収納される複数の収納穴を有するノズルプレート、ノズルプレートの上に配されているシャッター、シャッターをノズルプレートに平行な方向に移動させるシャッター移動機構などを備えている。シャッターが開いているときはノズルプレートからノズル41Bを取り出し可能であり、シャッターが閉じているときは取り出しできなくなる。
【0044】
2つの部品撮像カメラ36はそれぞれX方向に並んだ2つのテープ部品供給装置33の間に設けられている。部品撮像カメラ36は実装ヘッド41に吸着されている部品Eを下から撮像する。
2つの基板撮像カメラ37は基板Pの上面に表記されているフィデューシャルマークを上から撮像するカメラである。基板撮像カメラ37はヘッドユニット34に取り付けられており、ヘッドユニット34とともにX方向およびY方向に移動する。
【0045】
(2-1)バックアップ装置
図4を参照して、バックアップ装置40について説明する。バックアップ装置40は作業位置Aの下方に配されている。バックアップ装置40は作業位置Aに搬送された基板Pを固定して下から支持する装置である。
バックアップ装置40は複数のバックアップピン40A、バックアップピン40Aが立設されるバックアッププレート40B、バックアッププレート40Bの下に配されているベースプレート40C、ベースプレート40Cの下面から下に延伸しているプッシュアップ軸40D、プッシュアップ軸40Dを昇降させる昇降機構40Eなどを備えている。昇降機構40Eはプッシュアップ軸40Dを昇降させるモータを備えている。プッシュアップ軸40Dの原点位置はプッシュアップ軸40Dが最も下降した位置である。プッシュアップ軸40Dを上昇させると複数のバックアップピン40Aによって基板Pが下から支持される。プッシュアップ軸40Dは可動部の一例である。
【0046】
(2-2)ヘッドユニット
図4を参照して、ヘッドユニット34について説明する。ヘッドユニット34には複数の実装ヘッド41、これらの実装ヘッド41を個別に昇降させるZ軸サーボモータ62(
図6参照)、及び、これらの実装ヘッド41を一斉に軸周りに回転させるR軸サーボモータ63(
図6参照)が設けられている。
【0047】
各実装ヘッド41は筒状のノズルシャフト41Aと、ノズルシャフト41Aの下端部に着脱可能に取り付けられているノズル41Bとを備えている。ノズル41Bにはノズルシャフト41Aを介して図示しない空気供給装置から負圧及び正圧が供給される。ノズル41Bは負圧が供給されることによって部品Eを吸着し、正圧が供給されることによってその部品Eを解放する。
【0048】
(2-3)台車及び台車クランプ機構
図5A、
図5B及び
図5Cを参照して、テープ部品供給装置33の台車55A、及び、部品実装装置15の台車クランプ機構50について説明する。
図5Aに示すように、台車55Aは紙面手前側に向かって略水平に張り出している板状の被クランプ部55Bを有している。台車クランプ機構50は被クランプ部55Bをガイドする上下一対のガイド部50A、昇降部50B、及び、昇降部50Bを昇降させるエアシリンダを備えている。
【0049】
図5Bに示すように、台車55Aは昇降部50Bが上昇している状態でセットされる。
図5Cに示すように、台車55Aがセットされると昇降部50Bが下降する。被クランプ部55Bには昇降部50Bが嵌る凹部55C(
図5A、
図5B参照)が形成されており、下降した昇降部50Bが凹部55Cに嵌ることによって台車55Aがクランプされる。クランプ中は台車55Aを取り外しできなくなる。
【0050】
(3)部品実装装置の電気的構成
図6を参照して、部品実装装置15の電気的構成について説明する。部品実装装置15は制御部60及び操作部61を備えている。制御部60は演算処理部60A、モータ制御部60B、記憶部60C、画像処理部60D、外部入出力部60E、フィーダ通信部60F及び通信部60Gを備えている。
【0051】
演算処理部60AはCPU、RAMなどを備えており、記憶部60Cに記憶されている制御プログラムを実行することによって部品実装装置15の各部を制御する。
モータ制御部60Bは演算処理部60Aの制御の下でX軸サーボモータ44、Y軸サーボモータ45などの各モータの回転を制御する。
記憶部60Cには演算処理部60Aによって実行される各種のプログラムやデータが記憶されている。記憶部60Cに記憶されているデータには、各部品Eの目標搭載位置、目標搭載角度、搭載順序などが設定されている部品実装データなどが含まれる。
【0052】
画像処理部60Dは部品撮像カメラ36や基板撮像カメラ37から出力される画像信号が取り込まれるように構成されている。
外部入出力部60Eはいわゆるインタフェースであり、部品実装装置15の本体に設けられている各種センサ類65から出力される検出信号が取り込まれるように構成されている。また、外部入出力部60Eは演算処理部60Aから出力される制御信号に基づいて各種アクチュエータ類66(空気供給装置、バックアップ装置40の昇降機構40E、台車クランプ機構50など)に対する動作制御を行うように構成されている。
【0053】
フィーダ通信部60Fはテープフィーダ33Aに接続されており、テープフィーダ33Aを統括して制御する。
通信部60Gは部品実装装置15を通信ネットワーク5に接続するための通信回路である。
【0054】
図2に示すように、操作部61は液晶ディスプレイなどの表示装置61A、表示装置61Aを駆動する駆動回路、タッチパネルや各種の操作ボタン(非常停止ボタン61Bやブレーカースイッチ61C)などの入力装置を備えている。
非常停止ボタン61Bは部品実装装置15の主回路への電力供給をオン/オフするスイッチである。以降の説明では部品実装装置15に電力供給されている状態で非常停止ボタン61Bを押して主回路への電力供給をオフにすることをシャットダウンという。
【0055】
ブレーカースイッチ61Cは主電源スイッチである。ブレーカースイッチ61Cは例えばリレーと、リレーを手動で開閉するスイッチとで構成されている。ブレーカースイッチ61Cは部品実装装置15に電力を供給する電力線に設けられている。ブレーカースイッチ61Cをオフにすると非常停止ボタン61Bをオンにしても部品実装装置15に電力供給されない。実施形態1では、オペレータは部品実装装置15をシャッタダウンした後、安全のためにブレーカースイッチ61Cもオフにする。
【0056】
(4)シャットダウンの前準備
オペレータは、部品実装装置15をシャットダウンするとき、シャットダウンのための前準備を部品実装装置15に実行させ、前準備が終了した後にシャットダウンする。ここでは前準備として、実装ヘッド41に取り付けられているノズル41Bをノズルステーション38に収納する動作、可動部(コンベアベルト39、ビーム42、及び、バックアップ装置40のプッシュアップ軸40D)の移動、並びに、台車アンクランプを例に説明する。
【0057】
(4-1)ノズルをノズルステーションに収納する動作
制御部60は、ノズルステーション38のシャッターを開き、実装ヘッド41に取り付けられているノズル41Bをノズルステーション38の空いている収納穴に挿入する。そして、制御部60はシャッターを閉じた後、実装ヘッド41を上昇させる。シャッターが閉じているときはノズルステーション38からノズル41Bを取り出せないので、実装ヘッド41からノズル41Bが取り外される。これによりノズル41Bがノズルステーション38に収納される。
【0058】
(4-2)可動部の移動
可動部の移動には、次に説明する原点位置移動とメンテナンスのための移動とがある。原点位置は部品実装装置15がシャットダウンされている状態のときに可動部が位置しているデフォルトの位置である。詳しくは後述するが、オペレータは前準備指示を行うとき、シャットダウンの目的がメンテナンスであるか否かを指定する。部品実装装置15は、シャットダウンの目的がメンテナンスではない場合は前準備として原点位置移動を実行し、メンテナンスである場合はメンテナンスのための移動を実行する。
【0059】
(4-2-1)原点位置移動
図7を参照して、可動部の原点位置について説明する。コンベアベルト39の原点位置はコンベア幅によって表される。コンベア幅は前側コンベアベルト39Aと後側コンベアベルト39Bとの幅であり、原点位置は最大である。最大とは、前側コンベアベルト39Aが最も前側にあり、後側コンベアベルト39Bが最も後側にあることをいう。ビーム42の原点位置は、前側のビーム42の場合は最も前側であり、後側のビーム42の場合は最も後側である。バックアップ装置40のプッシュアップ軸40Dの原点位置は下降(プッシュアップ軸40Dが最も下降した位置)である。これらの原点位置は一例である。原点位置はこれらに限定されず、適宜に決定できる。
【0060】
(4-2-2)メンテナンスのための移動
図8を参照して、メンテナンスのための移動について説明する。部品実装装置15のメンテナンスは、具体的にはノズルステーション38に収納されているノズル41Bの交換、部品撮像カメラ36の調整、バックアップ装置40のバックアップピン40Aの配置換え、ノズルシャフト41Aの清掃などである。メンテナンスはこれらに限られず、様々なメンテナンスが行われる。メンテナンスではオペレータが部品実装装置15内に手を入れるため、オペレータは安全のために部品実装装置15をシャットダウンし、且つ、ブレーカースイッチ61Cをオフにする。
【0061】
部品実装装置15のメンテナンスを行う場合、可動部が原点位置にあるとメンテナンスの邪魔になることがある。例えば部品撮像カメラ36をメンテナンスする場合、ヘッドユニット34やコンベアベルト39が原点位置にあるとそれらが邪魔になって作業し難いことがある。ノズルステーション38に収納されているノズル41Bを交換する場合は、ヘッドユニット34やコンベアベルト39が原点位置にあるとそれらが邪魔になって作業し難いことがある。バックアップピン40Aの配置換えを行う場合は、プッシュアップ軸40Dが原点位置(すなわち最も下降した位置)にあるとバックアップピン40Aに手が届き難いため作業性が低下することがある。
このため、シャットダウンの目的がメンテナンスである場合は、部品実装装置15はこれらの装置の移動先の指定を受け付け、指定された移動先にこれらの装置を移動させる。
【0062】
(4-3)台車アンクランプ
図5A、
図5B及び
図5Cを参照して、台車アンクランプについて説明する。台車アンクランプは台車クランプ機構50の昇降部50Bを上昇させてテープ部品供給装置33の台車55Aを取り外せるようにする動作である。例えば部品実装装置15の停止中(言い換えるとシャットダウンされた状態)のときに、ノズルステーション38に収納されているノズル41Bをオペレータが交換することがある。この場合、テープ部品供給装置33がセットされたままだとノズル41Bの交換の邪魔になることがある。台車55Aを取り外すとノズル41Bの交換を行い易くなる。
【0063】
実施形態1では、部品実装装置15が長時間停止される場合は台車クランプ機構50のエアシリンダへの空気の供給が停止されるものとする。台車55Aをクランプしたままでシャットダウンした場合、エアの供給が停止されていると昇降部50Bを上昇させることができないため、台車55Aを取り外せなくなる。部品実装装置15が長時間停止する場合は前準備として台車アンクランプを実行すると、部品実装装置15の停止中に台車55Aを取り外すことが可能になる。
【0064】
(5)前準備の実行を指示するためのユーザインタフェース
オペレータはいずれかの部品実装装置15の操作部61を操作してシャットダウンの前準備指示を行うことにより、部品実装ライン10を構成している全ての部品実装装置15に対してシャットダウンの前準備の実行を一括して指示できる。実施形態1では、オペレータはどの部品実装装置15からでも前準備指示を行うことができる。
【0065】
実施形態1に係る部品実装装置15は、前準備指示を受け付けるとき、前準備として実行する動作の指定を更に受け付け、指定された動作を前準備として実行するよう他の全ての部品実装装置15に指示する。そして、オペレータから前準備指示を受け付けた部品実装装置15、及び、当該部品実装装置15から前準備の実行を指示された他の全ての部品実装装置15は指定された動作を前準備として実行する。
【0066】
図9を参照して、部品実装装置15に対する各種の設定や動作の指示などをオペレータから受け付ける操作画面70について説明する。操作画面70は表示装置61Aに表示される画面である。操作画面70にはシャットダウンの前準備の実行を指示するための前準備ボタン70Aが表示される。
【0067】
オペレータが前準備ボタン70Aを押すと、制御部60は
図10に示すライン操作実行画面71を表示する。ライン操作実行画面71はシャットダウンの目的や前準備として実行する動作などをオペレータが指定するための画面である。ライン操作実行画面71では以下の3つの設定欄の設定値を選択(指定の一例)できる。
【0068】
・一括/個別設定欄71A
一括/個別設定欄71Aは、シャットダウンの前準備として実行する動作を全ての部品実装装置15に対して一括して指定するか、又は、部品実装装置15毎に個別に指定するかをオペレータが選択するための設定欄である。一括が選択された場合と個別が選択された場合とでは後述する動作設定欄71Cの表示内容が異なる。
図10では一括が選択された場合の表示内容を示している。個別が選択された場合の表示内容についての説明は後述する。
【0069】
・シャットダウン目的設定欄71B
シャットダウンの目的には様々な目的がある。実施形態1ではシャットダウンの目的として以下の3つを選択できる。
【0070】
シャットダウンの目的1:シャットダウン(通常)
シャットダウン(通常)は、部品実装装置15の停止時間が所定時間(例えば24時間)未満のシャットダウンである。1日の稼働が終了し、翌日も部品実装装置15が稼働する場合、部品実装装置15の停止時間は24時間未満である。このため、この場合はシャットダウンの目的としてシャットダウン(通常)が選択される。シャットダウン(通常)は通常のシャットダウンの一例である。シャットダウン目的設定欄71Bにはシャットダウン(通常)がデフォルト表示される。
【0071】
シャットダウンの目的2:シャットダウン(長時間停止)
シャットダウン(長時間停止)は、部品実装装置15の停止時間が所定時間(例えば24時間)以上のシャットダウンである。週末や長期休暇などのように部品実装装置15が長時間停止される場合、部品実装装置15の停止時間は24時間以上である。このため、この場合はシャットダウンの目的としてシャットダウン(長時間停止)が選択される。シャットダウン(長時間停止)は長時間のシャットダウンの一例である。
【0072】
シャットダウンの目的3:メンテナンス
メンテナンスは前述したメンテナンスのためのシャットダウンである。メンテナンスが選択された場合の表示内容については後述する。
【0073】
一括/個別設定欄71Aで個別が選択されている場合であっても、シャットダウン目的は全ての部品実装装置15に一律に適用される。すなわち、実施形態1では一括/個別設定欄71Aで個別を選択してもシャットダウンの目的については個別に選択できない。
【0074】
・動作設定欄71C
実施形態1に係る部品実装装置15は、前準備として実行する動作の選択を受け付けるとき、前準備として実行するデフォルトの動作を動作設定欄71Cに表示する。部品実装装置15は、デフォルトの動作を表示するとき、シャットダウン目的設定欄71Bで選択されたシャットダウンの目的に応じてデフォルトの動作を切り替える。
具体的には、部品実装装置15の停止時間が短い場合はエアシリンダへの空気の供給が停止されないので、必要であればシャットダウンした後に部品実装装置15に電力供給して台車55Aをアンクランプすることも可能である。このため、停止時間が短い場合は必ずしも台車55Aをアンクランプしておかなくてもよい。このため、
図10に示すように、シャットダウン(通常)の場合は動作設定欄71Cの原点位置移動に「する」がデフォルト表示され、台車アンクランプに「しない」がデフォルト表示される。シャットダウン(長時間停止)が選択された場合のデフォルトの動作の表示、及び、メンテナンスが選択された場合のデフォルトの動作の表示については後述する。
【0075】
オペレータは表示されたデフォルトの動作を別の動作に変更することができる。例えばシャットダウン(通常)を選択した場合に、前準備として台車アンクランプも実行させたい場合は、オペレータは台車アンクランプを「する」に変更できる。
【0076】
図11及び
図12を参照して、一括/個別設定欄71Aで個別が選択された場合の表示内容について説明する。
図11は、一括/個別設定欄71Aで個別が選択され、シャットダウン目的設定欄71Bでシャットダウン(通常)が選択された場合を示している。個別を選択した場合は前準備として実行するデフォルトの動作が部品実装装置15の装置番号毎に表示される。例えばシャットダウン(通常)の場合は、装置番号毎に、原点位置移動に「する」がデフォルト表示され、台車アンクランプに「しない」がデフォルト表示される。
【0077】
前述したようにオペレータは動作を変更できる。例えばオペレータが装置番号4の部品実装装置15の台車アンクランプを「する」に変更した場合は、装置番号4の部品実装装置15は前準備として原点位置移動及び台車アンクランプの両方を実行する。
【0078】
図12を参照して、一括/個別設定欄71Aで個別が選択され、シャットダウン目的設定欄71Bでシャットダウン(長時間停止)が選択された場合の表示内容について説明する。前述したように部品実装装置15が長時間停止される場合は台車クランプ機構50のエアシリンダへの空気の供給が停止されるので、台車55Aをアンクランプしておかないと台車55Aを取り外せなくなる。このため、シャットダウン(長時間停止)の場合は原点位置移動に「する」がデフォルト表示され、台車アンクランプにも「する」がデフォルト表示される。
【0079】
図13を参照して、シャットダウン目的設定欄71Bでメンテナンスが選択された場合の表示内容について説明する。
図13に示す例では一括/個別設定欄71Aで個別が選択され、シャットダウン目的設定欄71Bでメンテナンスが選択された場合を示している。シャットダウンの目的がメンテナンスである場合、オペレータがいずれかの装置で原点位置移動を「しない」にすると、その装置について可動部の移動先を選択できる。原点位置移動が「する」の場合は移動先の選択はできない。
【0080】
ビーム位置では、ビーム42のY方向の移動先として奥(Y方向後側)、手前(Y方向前側)又は中央(Y方向中央)を選択できる。奥は2つのビーム42がそれぞれ可動範囲内で最も後側に位置している状態である。中央は2つのビーム42がそれぞれ前後方向の中央近傍に位置している状態である。手前は2つのビーム42がそれぞれ可動範囲内で最も前側に位置している状態である。ビーム位置には奥がデフォルト表示される。
【0081】
コンベア幅では、最大又は最小を選択できる。最大は前側コンベアベルト39Aの移動先が最も前側であり、後側コンベアベルト39Bの移動先が最も後側である。最小は前側コンベアベルト39Aと後側コンベアベルト39Bとの間隔が最も狭くなる位置である。コンベア幅には最大がデフォルト表示される。
【0082】
プッシュアップ軸では、下降又は上昇を選択できる。下降はプッシュアップ軸40Dが最も下降した位置であり、上昇はプッシュアップ軸40Dが最も上昇した位置である。プッシュアップ軸40Dには下降がデフォルト表示される。
【0083】
可動部が原点位置に位置しているとメンテナンスの邪魔になる場合は、オペレータはメンテナンスの邪魔になる可動部の移動先として原点位置以外の移動先(メンテナンスの邪魔にならない移動先)を選択する。これによりメンテナンスの邪魔にならないようにすることができる。
【0084】
オペレータは上述した3つの設定欄の設定値を選択した後、ライン操作実行画面71で「はい」を選択する。部品実装装置15は「はい」が選択されることで前準備指示を受け付ける。前準備指示を受け付けた部品実装装置15は、ライン操作実行画面71で選択された動作を前準備として実行するよう他の全ての部品実装装置15に指示する。
【0085】
以降に説明する処理は、オペレータが前準備指示を行った部品実装装置15、及び、当該部品実装装置15から前準備の実行が指示された他の部品実装装置15で共通の処理である。部品実装装置15は、前準備の実行が指示されると、指定された動作を前準備として実行する。
図14に示すように、部品実装装置15は、前準備の実行中は処理中画面72を表示する。処理中画面72には前準備の進行状況が表示される。
【0086】
図15に示すように、部品実装装置15は前準備が終了すると非常停止ボタン61Bを押すようオペレータに案内する確認画面73を表示する。非常停止ボタン61Bは手動で操作される物理的なボタンであるので、オペレータは各部品実装装置15に移動して個別に非常停止ボタン61Bを押す。実施形態1では、オペレータは非常停止ボタン61Bを押した後、ブレーカースイッチ61Cもオフにする。
【0087】
(6)シャットダウンのフロー
図16を参照して、いずれかの部品実装装置15でオペレータが前準備指示を行う操作及び当該部品実装装置15の制御部60によって実行されるシャットダウンのフローについて説明する。
【0088】
S101では、オペレータはいずれかの部品実装装置15に移動し、操作画面70で前準備ボタン70Aを押す。オペレータが前準備ボタン70Aを押すとライン操作実行画面71が表示される。
S102では、オペレータはライン操作実行画面71でシャットダウンの前準備の動作を選択する。オペレータは前準備の動作を選択した後、「はい」又は「いいえ」を選択する。
【0089】
S103では、制御部60はライン操作実行画面71で「はい」が選択された場合はS104に進み、「いいえ」が選択された場合は処理を終了する。
S104では、制御部60は他の全ての部品実装装置15に、通信部60Gを介して、ライン操作実行画面71で選択された動作をシャットダウンの前準備として実行するよう指示する。
【0090】
S105では、制御部60はシャットダウンの前準備を開始する。制御部60は、前準備の実行中は
図14に示す処理中画面72を表示する。
S106では、制御部60は前準備が終了したか否かを判断し、終了した場合はS107に進み、終了していない場合は所定時間が経過した後に再度S106を実行する。
【0091】
S107では、制御部60は
図15に示す確認画面73を表示して非常停止ボタン61Bを押すようオペレータに案内する。
S108では、オペレータは非常停止ボタン61Bを押す。
S109では、オペレータはブレーカースイッチ61Cをオフにする。
【0092】
図17を参照して、他の部品実装装置15の制御部60によって実行されるシャットダウンのフローについて説明する。
図17に示すシャットダウンのフローは他の部品実装装置15が運転停止状態であることを前提に実行される。他の部品実装装置15は、前述したS104でシャットダウンの前準備の実行を指示されると、
図17に示すようにS105~S109を実行する。S105~S109の処理は
図16に示すS105~S109の処理と実質的に同一であるので説明は省略する。
【0093】
(7)実施形態の効果
実施形態1に係る部品実装システム1によると、オペレータはいずれかの部品実装装置15で前準備指示を行うことにより、複数の部品実装装置15に対して前準備の実行を一括して指示できる。このため、部品実装装置15毎に個別に指示する場合に比べて指示に要する時間を低減できる。
そして、部品実装システム1によると、オペレータは前準備指示を行った後に各部品実装装置15に移動して個別に非常停止ボタン61Bを押すが、各部品実装装置15は概ね同じタイミングで前準備が終了するので、オペレータの待ち時間は前準備が1回実行される分の時間だけでよい。このため、部品実装装置15毎に待ち時間が発生する場合に比べて待ち時間のロスを低減できる。あるいは、オペレータは部品実装装置15間の移動が一方向だけでよいので、往復する場合に比べて移動時間のロスを低減できる。
よって部品実装システム1によると、部品実装ライン10を構成している複数の部品実装装置15にシャットダウンの前準備を実行させてからそれらの部品実装装置15をシャットダウンする場合のオペレータの作業効率が向上する。
更に、部品実装システム1によると、部品実装装置15がオペレータから前準備指示を受け付けるので、特許文献1のタブレットコンピュータのような外部装置は不要である。このためオペレータの作業効率を簡素な構成で向上させることができる。
【0094】
部品実装システム1によると、オペレータは前準備として実行する動作を指定できるので(例えば原点位置移動をする/しない、台車アンクランプをする/しない)、シャットダウンの目的に応じた動作を指定することにより、シャットダウンの目的に応じた動作を実行させることができる。
【0095】
部品実装システム1によると、オペレータは一括/個別設定欄71Aで一括を選択することにより、前準備として実行する動作を複数の部品実装装置15に対して一括して指定できる。このためオペレータの負担を軽減できる。ただし、シャットダウンの目的は部品実装装置15によって異なることもある。部品実装システム1によると、オペレータは個別を選択することにより、シャットダウンの前準備として実行する動作を部品実装装置15毎に選択できる。このため、部品実装装置15によってシャットダウンの目的が異なる場合に、部品実装装置15毎の目的に応じた動作を実行させることができる。
【0096】
部品実装システム1によると、前準備として実行するデフォルトの動作が表示されるので、デフォルトの動作がシャットダウンの目的に応じた動作である場合には、オペレータは表示された動作を変更しなくてよい。このためオペレータの利便性が向上する。デフォルトの動作がシャットダウンの目的に応じた動作ではない場合は、オペレータは目的に応じた動作に変更することにより、目的に応じた動作を実行させることができる。
【0097】
部品実装システム1によると、ライン操作実行画面71において、指定された目的に応じてデフォルトの動作を切り替えて表示するので、オペレータはシャットダウンの目的を指定することにより、目的に応じた動作をデフォルトの動作として表示させることができる。このためオペレータの利便性が向上する。
【0098】
部品実装システム1によると、シャットダウンの目的がメンテナンスである場合は可動部の移動先の指定を受け付けるので、オペレータは移動先として原点位置以外の移動先(言い換えるとメンテナンスの邪魔にならない移動先)を指定することにより、部品実装装置15をメンテナンスするときに可動部が邪魔になる可能性を低減できる。このため、部品実装装置15がシャットダウンしているときに部品実装装置15をメンテナンスする計画がある場合には、メンテナンスを選択することにより、メンテナンス計画に対応できる。
【0099】
<実施形態2>
実施形態2に係る部品実装装置15は、シャットダウンの目的がシャットダウン(通常)であるかシャットダウン(長時間停止)であるかを基板Pの生産計画に基づいて自動で判断し、判断した目的に応じてデフォルトの動作を切り替える。
【0100】
図18を参照して、基板Pの生産計画について説明する。
図18において開始日は基板Pが生産される日であり、開始時刻は基板Pの生産が開始される時刻である。生産機種名は生産される基板Pの機種名である。
制御部60は操作画面70で前準備ボタン70Aが押されると、次回生産が開始される日時を生産計画から取得し、前準備ボタン70Aが押された時から次回生産が開始される時までの停止時間が所定時間以上であるか否かを判断する。そして、制御部60は、ライン操作実行画面71を表示するとき、所定時間未満である場合はシャットダウン目的としてシャットダウン(通常)を自動で選択するとともに、シャットダウン(通常)の場合のデフォルトの動作を表示する。制御部60は、所定時間以上である場合はシャットダウン目的としてシャットダウン(長時間停止)を自動で選択するとともに、シャットダウン(長時間停止)の場合のデフォルトの動作を表示する。
【0101】
例えば2022年8月11日の17時00分に生産が終了し、オペレータが前準備ボタン70Aを押したとする。この場合、次回生産が開始されるのは2022年8月12日の8時00分であるので、前準備ボタン70Aが押された時から次回生産が開始される時までの停止時間は15時間である。この場合、所定時間が24時間であるとすると、所定時間未満であるのでシャットダウン(通常)が選択される。
【0102】
これに対し、例えば2022年8月12日の17時00分に生産が終了し、オペレータが前準備ボタン70Aを押したとする。この場合、次回生産が開始される時は2022年8月17日の8時00分であるので、前準備ボタン70Aが押された時から次回生産が開始される時までの停止時間は111時間である。この場合、所定時間が24時間であるとすると、所定時間以上であるのでシャットダウン(長時間停止)が選択される。
【0103】
実施形態2に係る部品実装システム1によると、シャットダウンの目的を生産計画に基づいて自動で判断するので、オペレータはシャットダウンの目的を選択する手間が省かれる。このためオペレータの利便性が向上する。オペレータはシャットダウンの目的がシャットダウン(通常)であるかシャットダウン(長時間停止)であるかの判断をしなくてよいので、オペレータの判断ミスの抑制にもなる。
【0104】
<実施形態3>
図19に示すように、実施形態3に係る部品実装システム201は部品実装ライン10と管理装置90とを備えている。管理装置90は所謂パーソナルコンピュータである。管理装置90は制御部、記憶部、表示部(液晶ディスプレイなど)、操作部(キーボード、マウス、タッチパネルなど)及び通信部を備えており、通信部を介して通信ネットワーク5に接続されている。実施形態3では、部品実装ライン10を構成している各装置は管理装置90を介して他の装置と通信する。
【0105】
実施形態3では、前準備指示を受け付けた部品実装装置15は、前準備指示を受け付けたことを、通信部60Gを介して管理装置90に通知する。管理装置90は前準備指示を受け付けたことを通知されると、他の全ての部品実装装置15に前準備の実行を指示する。すなわち、前準備指示を受け付けた部品実装装置15は管理装置90を介して他の部品実装装置15に前準備の実行を間接的に指示する。
【0106】
<実施形態4>
実施形態4に係る部品実装システムの構成は実施形態3と実質的に同じである。実施形態4では管理装置90がオペレータから前準備指示を受け付け、各部品実装装置15にシャットダウンの前準備の実行を指示する。前準備の実行を指示された各部品実装装置15はそれぞれ前準備を実行する。
【0107】
実施形態4に係る部品実装システム1によると、部品実装ライン10を構成している複数の部品実装装置15にシャットダウンの前準備を実行させてからそれらの部品実装装置15をシャットダウンする場合のオペレータの作業効率が向上する。
【0108】
<他の実施形態>
本明細書によって開示される技術は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本明細書によって開示される技術的範囲に含まれる。
【0109】
(1)上記実施形態では可動部としてコンベアベルト39、ビーム42及びバックアップ装置40のプッシュアップ軸40Dを例示したが、可動部はこれらに限られない。例えば、可動部はヘッドユニット34であってもよい。その場合、ヘッドユニット34の原点位置はX方向の可動範囲の最も右側(上流側)であってもよいし、最も左側(下流側)であってもよい。
【0110】
(2)上記実施形態では一括/個別設定欄71Aで個別を選択してもシャットダウンの目的については個別に選択できない場合を例示した。これに対し、個別が設定されている場合はシャットダウンの目的も個別に設定できるようにしてもよい。
【0111】
(3)上記実施形態では複数の装置として複数の部品実装装置15を例示したが、複数の装置は部品実装ライン10を構成している装置であれば部品実装装置15に限定されない。
【0112】
(4)上記実施形態では部品実装システム1が部品実装ライン10を1ライン備えている場合を例示したが、部品実装システム1は部品実装ライン10を2ライン以上備えていてもよい。そして、いずれかの部品実装ライン10の装置がオペレータから前準備指示を受け付けると、当該いずれかの部品実装ライン10を構成している他の装置だけでなく、他の部品実装ライン10を構成している装置にも前準備の実行を指示してもよい。
【0113】
(5)上記実施形態では部品実装装置15で前準備が終了した後にオペレータが各部品実装装置15に移動して非常停止ボタン61Bを押す場合を例示した。これに対し、各部品実装装置15を一括してシャットダウンする構成であってもよい。例えば商用電源に接続されている電力線が途中で分岐して各部品実装装置15に接続されている場合に、分岐前の電力線に非常停止ボタン61Bを設け、その非常停止ボタン61Bを押すことで各部品実装装置15への電力供給が一斉に遮断される構成であってもよい。この場合、オペレータは各部品実装装置15で前準備が終了した後に非常停止ボタン61Bを押して各部品実装装置15への電力供給を一括して遮断する。この場合もオペレータの待ち時間は前準備が1回実行される分の時間だけでよいので待ち時間のロスが低減される上、各部品実装装置15に移動して個別にシャットダウンする場合に比べてオペレータの作業効率が向上する。
【0114】
(6)上記実施形態ではオペレータはどの部品実装装置15からでも前準備指示を行うことができる場合を例示した。これに対し、前準備指示を行うことができる部品実装装置15は特定の部品実装装置15に限定されていてもよい。
【0115】
(7)上記実施形態4では管理装置90としてパーソナルコンピュータを例示したが、管理装置90はパーソナルコンピュータに限定されない。例えば管理装置90は通信ネットワーク5に無線接続されているタブレットコンピュータであってもよい。
【符号の説明】
【0116】
1: 部品実装システム
10: 部品実装ライン
11: ローダー(装置の一例)
12: スクリーン印刷装置(装置の一例)
13: 印刷検査装置(装置の一例)
14: ディスペンサ(装置の一例)
15: 部品実装装置(装置の一例)
16: 実装後外観検査装置(装置の一例)
17: リフロー装置(装置の一例)
18: 硬化後外観検査装置(装置の一例)
19: アンローダー(装置の一例)
20: コンベア装置(装置の一例)
39: コンベアベルト(可動部の一例)
40: バックアップ装置
40D: プッシュアップ軸(可動部の一例)
42: ビーム(可動部の一例)
60G: 通信部
61: 操作部
61A: 表示装置
201: 部品実装システム
E: 部品
P: 基板