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  • 特開-診療支援システム 図1
  • 特開-診療支援システム 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024113409
(43)【公開日】2024-08-22
(54)【発明の名称】診療支援システム
(51)【国際特許分類】
   G16H 20/00 20180101AFI20240815BHJP
【FI】
G16H20/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023018371
(22)【出願日】2023-02-09
(71)【出願人】
【識別番号】522336720
【氏名又は名称】フィジオロガス・テクノロジーズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】宮脇 一嘉
(72)【発明者】
【氏名】小久保 謙一
(72)【発明者】
【氏名】青木 弘之
【テーマコード(参考)】
5L099
【Fターム(参考)】
5L099AA15
(57)【要約】
【課題】患者の血液浄化治療のために適切な当該患者の生活様式に関する医療従事者による診療を支援しうるシステムを提供する。
【解決手段】モデルの決定後または学習後、診療支援処理要素20により、対象となる患者の血液浄化診療の直前および/または直後における第1指定状態変数の測定結果が入力インターフェース11を通じて取得される。診療支援処理要素20により、患者の血液浄化診療の直前および/または直後における第1指定状態変数の測定結果が入力データとして、前記のように機械学習により構築されたモデルに入力される。これに応じて、診療支援処理要素20により、スコアがモデルの出力データとして取得され、出力インターフェース12に出力される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液浄化治療の直前および直後のうち少なくとも一方における患者の状態を表わす第1指定変数の測定結果を入力データとしてモデルに入力し、過去において血液浄化治療が行われなかった非診療期間を含む指定期間における前記患者の生活様式の適否を表わすスコアを出力データとして当該モデルから出力する
診療支援システム。
【請求項2】
請求項1に記載の診療支援システムにおいて、
前記スコアが閾値以上であるか否かの判定結果を出力する
診療支援システム。
【請求項3】
請求項1に記載の診療支援システムにおいて、
前記スコアに基づき、前記患者の生活様式を改善するための事項を表わす第2指定状態変数の推定値を出力する
診療支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療従事者による血液浄化治療に関する診療を支援するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、患者に対する腎不全血液診療処方を生成する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。具体的には、まず、患者から複数回にわたり採取される血液サンプルにおける除去対象となる溶質(尿素、β2-Mおよび/またはリン酸塩など)の濃度に基づき、当該患者に固有の動態モデルのパラメータが同定される。そして、当該患者の血液における溶質の目標濃度がこの動態モデルに入力される。これにより、当該溶質の目標濃度を実現するための診療継続時間、診療頻度、透析液流量および/または血液流量を含む診療処方が提案される。さらに、当該診療処方に患者の生活様式が勘案されることにより、最終的な診療方法が決定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6018567号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、医療従事者および患者の双方にとって、当該患者の診療処方のために適切な生活様式の提供が望ましい場合がある。
【0005】
そこで、本発明は、患者の血液浄化治療のために適切な当該患者の生活様式に関する医療従事者による診療を支援しうるシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の診療支援システムは、
血液浄化治療の直前および直後のうち少なくとも一方における患者の状態を表わす第1指定変数の測定結果を入力データとしてモデルに入力し、過去において血液浄化治療が行われなかった非診療期間を含む指定期間における前記患者の生活様式の適否を表わすスコアを出力データとして当該モデルから出力する。
【0007】
前記構成の診療支援システムにおいて、
前記スコアが閾値以上であるか否かの判定結果を出力する
ことが好ましい。
【0008】
前記構成の診療支援システムにおいて、
前記スコアに基づき、前記患者の生活様式を改善するための事項を表わす第2指定状態変数の推定値を出力する
ことが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態としての診療支援システムの構成説明図。
図2】本発明の一実施形態としての診療支援システムの機能説明図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(構成)
図1に示されている本発明の一実施形態としての診療支援システムは、データベース10と、入力インターフェース11と、出力インターフェース12と、診療支援処理要素20と、を備えている。
【0011】
データベース10は、後述する患者の状態を表わす測定結果およびモデルなどを記憶保持するように構成されている。データベース10は、診療支援システムとは別個のデータベースサーバにより構成されていてもよい。
【0012】
入力インターフェース11は、キーボード、タッチパネル、撮像装置および/またはマイク(音声入力装置)により構成され、医療従事者等のユーザのキーボード操作、タッチ、タップ、スワイプ。ピンチなどの操作、ジェスチャーおよび/または発話に応じて、患者に関する情報の入力を受け付けるように構成されている。
【0013】
出力インターフェース12は、モニタ(画像表示装置、タッチパネル式ディスプレイ)および/またはスピーカにより構成され、医療従事者等のユーザによる患者の診療を支援するための情報を出力するように構成されている。
【0014】
診療支援処理要素20は、演算処理装置(CPU、プロセッサおよび/またはプロセッサコアなど)、記憶装置(ROM、RAMなどのメモリ、HDD、SSDなど)およびインターフェース回路などにより構成されている。診療支援処理要素20は、演算処理装置が記憶装置(データベース10を構成していてもよい。)から必要なデータおよびプログラム(ソフトウェア)を読み出し、当該プログラムにしたがって当該データに対して演算処理を実行することにより、後述する種々の演算処理を実行するように構成されている。
【0015】
(機能)
前記構成の診療支援システムによれば、診療支援処理要素20により、さまざまな患者の今回の血液浄化治療の直前および/または直後における第1指定変数の測定結果が入力インターフェース11を通じて取得される(図2/STEP11)。第1指定変数の当該測定結果はデータベース10に記憶保持または登録される。「第1指定変数」には、例えば、患者の血液における第1指定物質(例えば、尿毒症性物質および/または尿毒素物質(K、Ca、Na、リン酸塩、遊離型の小分子素物質(尿素、クレアチニン、尿酸など)、蛋白結合型の小分子物質(ホモシスチンなど)、中分子物質(レプチンなど))、アルブミンおよび/またはヘモグロビン)の濃度のほか、血圧、体重、体脂肪率、BMI、推定骨量、筋肉量および/または体水分量などが含まれている。
【0016】
また、診療支援処理要素20により、患者の今回の血液浄化診療前の非診療期間を含む指定期間における、当該患者の生活様式を表わす第2指定変数の測定結果が入力インターフェース11を通じて取得される(図2/STEP12)。第2指定変数の当該測定結果はデータベース10に記憶保持または登録される。「第2指定変数」は、食事回数、食事開始時刻、食事終了時刻、食事時間、飲水量、各種栄養素(例えば、タンパク質、炭水化物、脂質、各種ビタミンおよび各種ミネラル(Ca、K、Naなど))の摂取量、薬の種類(種類に応じた特定の数値)、服薬時刻および服薬回数、生活習慣を表わす指標値(例えば、アルコール摂取量、頻度、喫煙頻度、睡眠時間(就寝時刻、起床時刻)、運動量(歩数))、身体的病気(高熱、だるさ、嘔吐)の有無または程度を表わすスコアなどが含まれている。
【0017】
さらに、診療支援処理要素20により、患者の身体状態を表わす身体状態変数の指定期間にわたる測定結果が入力インターフェース11を通じて取得される(図2/STEP13)。身体状態変数の当該測定結果はデータベース10に記憶保持または登録される。「身体状態変数」には、例えば、患者の血液における第2指定物質(第1指定物質と同じであっても異なっていてもよい。例えば、尿毒症性物質および/または尿毒素物質(K、Ca、Na、リン酸塩、遊離型の小分子素物質(尿素、クレアチニン、尿酸など)、蛋白結合型の小分子物質(ホモシスチンなど)、中分子物質(レプチンなど)))の濃度、血圧、体重、体脂肪率、筋肉量、体水分量、活動量、運動量、睡眠時間、心拍数、呼吸回数および/または体温などが含まれている。
【0018】
診療支援処理要素20により、さまざまな患者の身体状態変数の測定結果に基づき、スコアが評価される(図2/STEP14)。「スコア」は、患者の指定期間にわたる生活様式の適否を表わす指標値であり、例えば、身体状態変数の測定値の時間変化態様(それを表わす曲線)と、その目標値の時間変化態様との偏差の合計値もしくは平均値が大きいほど、および/または、身体状態変数の測定値が目標範囲から外れている頻度が高いほど、スコアが低くなるように評価される。
【0019】
そして、診療支援処理要素20により、第1指定変数の測定結果およびスコアの評価結果(ラベル)が教師データとして用いられて、機械学習によりモデルが構築される(図2/STEP15)。機械学習手法として、線形回帰分析、数量化理論、サポートベクターマシーン(SVM)、決定木、ランダムフォレストおよびニューラルネットワークなど、既知の手法またはこれらと同等の方法が採用されうる。
【0020】
モデルの決定後または学習後、診療支援処理要素20により、対象となる患者の血液浄化診療の直前および/または直後における第1指定状態変数の測定結果が入力インターフェース11を通じて取得される(図2/STEP21)。診療支援処理要素20により、患者の血液浄化診療の直前および/または直後における第1指定状態変数の測定結果が入力データとして、前記のように機械学習により構築されたモデルに入力される。これに応じて、診療支援処理要素20により、スコアがモデルの出力データとして取得され、出力インターフェース12に出力される(図2/STEP22)。
【0021】
診療支援処理要素20により、患者のスコアに応じて、当該患者の指定期間における生活様式の適否の判定結果が出力インターフェース12に表示される(図2/STEP23)。患者のスコアが閾値以上である場合、当該患者の指定期間における生活様式が適切であったと判定される。これとは逆に、患者のスコアが閾値未満である場合、当該患者の指定期間における生活様式が不適切であったと判定される。
【0022】
診療支援処理要素20により、患者のスコアに対して指定関係を有するスコア(教師データを構成するスコア)を有する他の患者が選定され、当該生活様式を表わす第2指定変数の測定結果に基づき、患者の生活様式を改善するための第2指定変数の推定値が導出されたうえで出力インターフェース12に出力される(図2/STEP24)。
【0023】
例えば、患者P(i)のスコアC(i)よりも閾値ε(0<ε)以上高いことが指定関係に含まれていてもよい。この場合、C(i)+ε-≦C(j)という関係式を満たすスコアC(j)を有している他の患者P(j)の第2指定変数の測定結果またはその平均値が、患者P(i)の生活様式を改善するための第2指定変数の推定値として導出される。
【0024】
患者P(i)のスコアC(i)と閾値C0との関係の相違に応じて、異なる「指定関係」が定義されていてもよい。
【0025】
例えば、患者P(i)のスコアC(i)が閾値C0以上である場合、当該スコアC(i)との偏差が第1指定範囲[-ε-,ε+](0≦ε-,0<ε+)に含まれるほどに近接していることが指定関係に含まれていてもよい。この場合、C(i)-ε-≦C(j)≦C(i)+ε+という関係式を満たすスコアC(j)を有している他の患者P(j)の第2指定変数の測定結果またはその平均値が、患者P(i)の生活様式を改善するための第2指定変数の推定値として導出される。
【0026】
患者P(i)のスコアC(i)が閾値C0未満である場合、当該スコアC(i)との偏差が第1指定範囲[ε1,ε2](0<ε1<ε2)に含まれることが指定関係に含まれていてもよい。この場合、C(i)+ε1≦C(j)≦C(i)+ε2という関係式を満たすスコアC(j)を有している他の患者P(j)の第2指定変数の測定結果またはその平均値が、患者P(i)の生活様式を改善するための第2指定変数の推定値として導出される。
【0027】
(効果)
本発明の診療支援システムによれば、出力インターフェース12に様々な情報が出力されることにより、患者の血液浄化治療のために適切な当該患者の生活様式に関する医療従事者による診療が支援されうる。
【0028】
(本発明の他の実施形態)
第1指定状態変数の測定結果が入力データとして入力され、スコアが出力データとして出力されるモデルが、生体内における物資の代謝および動態を簡略的に表現したカイネティックモデル(N区画動態モデル(N=1,2,‥))が採用されてもよい。例えば、1区画動態モデル(single-poolモデル)は、単一の容器とみなされた生体から尿素が除去され、同時に当該容器において尿素が生成される動態を表現するモデルである。2区画動態モデル(two-poolモデル)は、細胞内区画および細胞外区画の2つの区画からなるとみなされた生体のから尿素が除去され、同時に当該容器において尿素が生成される動態を表現するモデルである。これらのモデルにより算出される、Kt/Vおよび/または尿素除去率などの透析量のほか、nPCRあるいはこれらのうち少なくとも1つを変数とする増加関数および/または減少関数がスコア(出力データ)として用いられてもよい。カイネティックモデルを定義するモデルパラメータは、あらかじめ定められていてもよく、機械学習により同定されてもよい。
【0029】
機械学習により構築された一または複数のモデルおよび一または複数のカイネティックモデルの中から選択された、複数のモデルのそれぞれに入力データが入力され、各モデルからの出力データとしてのスコアの合計値、平均値または重み付き平均値が総合スコアとして評価され、当該総合スコアに基づいて当該患者の指定期間における生活様式の適否の判定処理等が実行されてもよい(図2/STEP21~24参照)。
【0030】
前記実施形態では、第1指定変数の測定結果が入力データに含まれていたが、他の実施形態において、患者の第1指定変数の測定結果に加えて、指定期間において当該患者が接した環境を表わす環境変数(平均気温、最高気温、最低気温、湿度、天候、降雨量など)が含まれていてもよい。
【符号の説明】
【0031】
10‥データベース
11‥入力インターフェース
12‥出力インターフェース
20‥診療支援処理要素。
図1
図2