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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024113417
(43)【公開日】2024-08-22
(54)【発明の名称】麺類及び餃子類の皮の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 7/109 20160101AFI20240815BHJP
【FI】
A23L7/109 A
A23L7/109 D
A23L7/109 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023018383
(22)【出願日】2023-02-09
(71)【出願人】
【識別番号】521247456
【氏名又は名称】久留米製麺株式会社
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 憲一
【テーマコード(参考)】
4B046
【Fターム(参考)】
4B046LA02
4B046LA05
4B046LA06
4B046LA09
4B046LB01
4B046LB03
4B046LB06
4B046LB20
4B046LC01
4B046LC08
4B046LC17
4B046LC20
4B046LE03
4B046LE05
4B046LE11
4B046LE16
4B046LG02
4B046LG29
4B046LG33
4B046LP03
4B046LP10
4B046LP15
4B046LP31
4B046LP41
(57)【要約】
【課題】 本発明は、通常の麺類及び餃子類の皮との嗜好性に差がなく、製麺性が良く、色調の優れたキク科野菜の緑葉を練り込んだ麺類及び餃子類の皮を提供することができる。
【解決手段】 キク科野菜の緑葉のピューレを麺原料に練り込むことで通常の麺類及び餃子類の皮との嗜好性に差がなく、製麺性が良く、色調の優れた麺類及び餃子類の皮を提供できる。キク科野菜の緑葉のピューレを小麦粉原料に練り込み、それを製麺原料として製造された麺は、機械耐性に優れており、更に、キク科野菜の緑葉特有の色調及び苦みのない風味を有している麺類及び餃子類の皮の製造方法。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
キク科野菜の緑葉のピューレを含有する麺類及び餃子類の皮の製造方法。
【請求項2】
前記キク科野菜の緑葉のピューレを小麦粉とキク科野菜の緑葉のピューレの合計100質量部に対して、固形分量として0.1~0.3質量部含有する、請求項1に記載の麺類及び餃子類の皮の製造方法。
【請求項3】
前記キク科野菜の緑葉がサラダ菜である、請求項1または2に記載の麺類及び餃子類の皮の製造方法。
【請求項4】
キク科野菜の緑葉のピューレを含有する麺類及び餃子類の皮。
【請求項5】
前記キク科野菜の緑葉のピューレを小麦粉とキク科野菜のピューレの合計100質量部に対して、固形分量として0.1~0.3質量部含有する、請求項4に記載の麺類及び餃子類の皮。
【請求項6】
前記キク科野菜の緑葉がサラダ菜である、請求項4または5に記載の麺類及び餃子類の皮。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キク科野菜の緑葉のピューレを練り込んだ麺類及び餃子類の皮の製造方法、及びこの製造方法によって得られる麺類及び餃子類の皮に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の健康志向の流行に伴い、野菜・果物の摂取を目的として、様々な食品分野において野菜・果物を用いた製品が求められている。小麦粉製品ではパン類や菓子類、麺類等の分野において、野菜・果物を用いた様々な製品が市場に並んでいる。しかしながら、麺類については、パン類や菓子類に比べて野菜・果物を用いた製品は少なく、生麺、乾麺、即席麺の中では乾麺に比較的多く見られて、生麺での使用は少ない。更に、用いられている野菜・果物はホウレンソウ、抹茶、ニンジン、カボチャが多いが、キク科野菜である春菊、レタス、ゴボウ、ふき、サラダ菜を麺類に用いたものは見当たらないのが現状である。
【0003】
従来から、野菜・果物を含有する麺類は市場に出ているが、特にキク科野菜の緑葉を含有した麺類は皆無である。野菜・果物を含有する麺類は、小麦粉に適量の野菜・果物の乾燥粉末や冷凍品の解凍品を適量配合して、常法により生麺、乾麺、即席麺を製造している。外観は野菜・果物の色調が反映されているが、風味は野菜・果物由来の苦みや独特な風味があり、嗜好性に問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、野菜・果物を練り込んだ麺類及び餃子類の皮であっても、通常の麺類及び餃子類の皮との嗜好性に差がなく、通常の製法で提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究した結果、野菜としてキク科野菜の緑葉のピューレを生地に練り込むことで、通常の麺類及び餃子の皮と嗜好性に差のない、キク科野菜の緑葉を練り込んだ麺類及び餃子類の皮を簡単に提供できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち本願の第1の発明は、キク科野菜の緑葉のピューレを含有する麺類及び餃子類の皮の製造方法である。ここでいう、キク科野菜の緑葉とは春菊、レタス、ゴボウ、ふき、サラダ菜の緑葉である。
【0007】
第2の発明は、本願の第1の発明におけるキク科野菜の緑葉のピューレを小麦粉とキク科野菜の緑葉のピューレの合計100質量部に対して固形分量として、0.1~0.3質量部含有する第1の発明における麺類及び餃子類の皮の製造方法である。
【0008】
第3の発明は、本願の第1の発明におけるキク科野菜の緑葉がサラダ菜である第1もしくは第2のいずれかの発明における麺類及び餃子類の皮の製造方法である。ここでいう、サラダ菜とはキク科アキノノゲシ属チシャ種に分類されるレタスの一種である。
【0009】
第4の発明は、キク科野菜の緑葉のピューレを含有する麺類及び餃子類の皮である。
【0010】
第5の発明は、本願の第4の発明におけるキク科野菜の緑葉のピューレを小麦粉とキク科野菜の緑葉のピューレの合計100質量部に対して固形分量として、0.1~0.3質量部含有する麺類及び餃子類の皮である。
【0011】
第6の発明は、本願の第4の発明におけるキク科野菜の緑葉がサラダ菜である第4もしくは第5のいずれかの発明における麺類及び餃子類の皮である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、キク科野菜の緑葉のピューレを生地に練り込むことで、キク科野菜の緑葉由来の色調と苦みのない風味を有し、機械耐性に優れる麺類及び餃子類の皮を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本実施例において、麺類としては、うどん、中華麺、パスタなどが例として挙げられ、それらは生麺、乾麺、即席麺などの製造条件は問わない。また餃子類としては、餃子、ワンタン、焼売などが例として挙げられ、例えば餃子であれば、焼き餃子、蒸し餃子、水餃子など、調理工程は問わず使用できる。
【0014】
本実施例で用いるキク科野菜の緑葉とは、春菊、レタス、ゴボウ、ふき、サラダ菜であり、好ましくは、サラダ菜である。
【0015】
本実施例におけるキク科野菜の緑葉のピューレとは、生のキク科野菜の緑葉原料又は加熱したキク科野菜の緑葉原料をミキサー、フードプロセッサー、ブレンダー、ロボミキサー等の機械を用いて粉砕して、裏ごしした後に煮詰めて、とろみのある半液体状のものである。キク科野菜の緑葉のピューレの水分含量は、90~97%が好ましい。すなわち、キク科野菜の緑葉のピューレの固形分量は3~10%が好ましい。ここで言う固形分量とは、水分を除去したものであり、例えば減圧加熱乾燥法により測定される。減圧加熱乾燥法は、測定サンプルであるキク科野菜の緑葉のピューレが分解しない温度において減圧下で加熱することにより、減圧加熱乾燥後の残渣重量を測定する方法である。本発明においては、測定サンプルを70℃の減圧下で5時間加熱して、水分が除去された残渣重量の、減圧加熱乾燥前の測定サンプルの重量に対する割合が固形分量である。
【0016】
本実施例の麺類及び餃子類の皮の製造方法において、キク科野菜の緑葉のピューレの配合量は、小麦粉とキク科野菜の緑葉のピューレの合計100質量部に対して、固形分量として0.1~0.3質量部である。本実施例では麺類及び餃子類の皮の外観等の官能評価や製麺適性で特徴を出すためにはキク科野菜の緑葉のピューレを、小麦粉とキク科野菜の緑葉のピューレの合計100質量部に対して少なくとも固形分量として、0.1質量部以上の使用が好ましい。また、キク科野菜の緑葉のピューレの過剰な添加は製麺性を損なうため、キク科野菜の緑葉のピューレを、小麦粉とキク科野菜の緑葉のピューレの合計100質量部に対して多くとも固形分量として、0.3質量部以下の使用が好ましい。
【0017】
本実施例に用いるキク科野菜の緑葉のピューレ以外に、通常の麺類及び餃子類の皮の製造に用いる原料を使用しても良い。例として、穀粉、澱粉類、卵、糖類、塩類、乳化剤、増粘剤、色素等が挙げられる。
【0018】
本実施例の麺類及び餃子類の皮の製造方法は、常法に従い、製造することができる。
【実施例0019】
本実施例を具体的に説明するために実施例を挙げるが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0020】
本実施例において、キク科野菜の緑葉は、サラダ菜及び春菊を用いたが、他のキク科野菜の緑葉を用いても同様の結果が得られる。またサラダ菜においては、緑葉部100g当たり138μg以上のビタミンKを含有する「博多サラダ菜」を使用したが、通常のサラダ菜を使用しても同様の結果が得られる。
【0021】
実施例1
生地原料の配合割合について、サラダ菜のピューレ(固形分濃度5%)2質量部、小麦粉98質量部、食塩2質量部、水30質量部をミキサーで12分間混合し、そぼろ状の生地を得た。常法に従い、複合し、常温で30分間の熟成の後、圧延し切刃#14で厚み1.8mmの麺線を得た。沸騰したお湯で3分間茹でて、茹でパスタを得た。得られた製品について、表1に示す評価基準表に従い、パネラー5人により、製麺性、色調、食味・食感を評価した。
【0022】
実施例2、3、比較例1~4
原料が、表2に示す割合であること以外は、実施例1に準じて製造して製品を得て、評価を実施した。
【0023】
【表1】
【0024】
【表2】
【0025】
サラダ菜ピューレをサラダ菜ピューレと小麦粉の合計100質量部に対して固形分量として、0.1質量部~0.3質量部で配合すると、良好な製麺性、原料由来の淡黄緑色の色調を持ち、食味・食感の優れたパスタを製造できる(実施例1~3)。サラダ菜ピューレと小麦粉の合計100質量部に対して、サラダ菜ピューレが固形分量として、0.1質量部より少ないと、製麺性が優れており、食味と食感も良いが原料由来の淡黄緑色が薄い(比較例1、2)。サラダ菜ピューレと小麦粉の合計100質量部に対して、サラダ菜ピューレが固形分量として、0.3質量部より多いと、原料由来の淡黄緑色が明瞭であるが、製麺性が悪くて、食味と食感も悪い品質である(比較例3、4)。
【0026】
実施例4
生地原料の配合割合について、春菊のピューレ(固形分濃度5%)2質量部、小麦粉98質量部、食塩2質量部、水30質量部をミキサーで12分間混合し、そぼろ状の生地を得た。常法に従い、複合し、常温で30分間の熟成の後、圧延し切刃#14で厚み1.8mmの麺線を得た。沸騰したお湯で3分間茹でて、茹でパスタを得た。得られた製品について、表1に示す評価基準表に従い、パネラー5人により、製麺性、色調、食味・食感を評価した。
【0027】
実施例5、6、比較例5~9
原料が、表3に示す割合であること以外は、実施例4に準じて製造して製品を得て、評価を実施した。
【0028】
【表3】
【0029】
春菊ピューレを、春菊ピューレと小麦粉の合計100質量部に対して固形分量として、0.1質量部~0.3質量部で配合すると、良好な製麺性、原料由来の淡黄緑色の色調を持ち、食味・食感の優れたパスタを製造できる(実施例4~6)。春菊ピューレと小麦粉の合計100質量部に対して、春菊ピューレが固形分量として0.1質量部より少ないと、製麺性が優れており、食味と食感も良いが原料由来の淡黄緑色が薄い(比較例6、7)。春菊ピューレと小麦粉の合計100質量部に対して、春菊ピューレが固形分量として0.3質量部より多いと、原料由来の淡黄緑色が明瞭であるが、製麺性が悪くて、食味と食感も悪い品質である(比較例8、9)。