(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024113418
(43)【公開日】2024-08-22
(54)【発明の名称】膜厚計測装置及び膜厚計測方法
(51)【国際特許分類】
G01B 11/06 20060101AFI20240815BHJP
【FI】
G01B11/06 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023018384
(22)【出願日】2023-02-09
(71)【出願人】
【識別番号】515086908
【氏名又は名称】株式会社トヨタプロダクションエンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】100114306
【弁理士】
【氏名又は名称】中辻 史郎
(74)【代理人】
【識別番号】100148655
【弁理士】
【氏名又は名称】諏訪 淳一
(72)【発明者】
【氏名】椛島 治樹
【テーマコード(参考)】
2F065
【Fターム(参考)】
2F065AA30
2F065CC31
2F065DD03
2F065DD06
2F065FF04
2F065GG03
2F065GG07
2F065GG21
2F065JJ03
2F065JJ26
2F065SS13
(57)【要約】
【課題】有機溶剤等の離型剤の厚みを効率良く計測することを課題とする。
【解決手段】膜厚計測装置10は、光源装置13より特定の波長帯域の光を有機溶剤51が塗布された金型61に照射し、撮像装置14を用いて有機溶剤51からの反射光を画像として撮像し、画像の各画素の反射光の強度に基づいて膜厚を算出し、さらに膜厚からRGBコードを算出して所定の表示部11に表示制御する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の撮像部により計測対象となる物体の画像を撮像し、撮像した物体に塗布された膜の膜厚を所定の表示部に表示制御する膜厚計測装置であって、
前記物体に塗布された膜による反射光の強度に基づいて特定された所定の波長帯域の光を前記物体に照射する光源装置と、
前記物体の画像を撮像する撮像装置と、
前記画像から膜厚を算出する膜厚算出部と
を備えたことを特徴とする膜厚計測装置。
【請求項2】
前記所定の波長帯域は、
前記物体に塗布された膜による反射光の強度が所定値よりも小さい波長帯域であることを特徴とする請求項1に記載の膜厚計測装置。
【請求項3】
前記物体に照射する各波長帯域のうち前記物体に塗布された前記膜の吸収量が高い波長帯域を特定する特定手段をさらに備え、
前記光源装置は、
前記特定手段により特定された前記波長帯域の光を前記物体に照射する
ことを特徴とする請求項2に記載の膜厚計測装置。
【請求項4】
前記撮像装置は、前記光源装置から照射された前記波長帯域の反射光に基づいて画像を撮像することを特徴とする請求項3に記載の膜厚計測装置。
【請求項5】
前記膜厚算出部は、前記撮像装置で撮像された画像の輝度に基づいて膜厚を算定することを特徴とした請求項4に記載の膜厚計測装置。
【請求項6】
前記光源装置は、
複数の波長帯域を発光する発光部と、
前記発光部から照射される複数の波長帯域の光のうち、前記特定手段により特定された波長帯域の光を透過する第1のフィルタと
を備えたことを特徴とする請求項3乃至5のいずれか一つに記載の膜厚計測装置。
【請求項7】
前記撮像装置は、
前記発光部が照射する波長帯域のうち、前記特定手段により特定された波長帯域の光を透過する第2のフィルタを備えたことを特徴とする請求項6に記載の膜厚計測装置。
【請求項8】
所定の撮像部により計測対象となる物体の画像を撮像し、撮像した物体に塗布された膜の膜厚を所定の表示部に表示制御する膜厚計測装置における膜厚計測方法であって、
所定の光源装置が、前記物体に塗布された膜による反射光の強度に基づいて特定された所定の波長帯域の光を前記物体に照射する照射工程と、
前記物体の画像を撮像する撮像工程と、
前記画像から膜厚を算出する算出工程と
を含むことを特徴とする膜厚計測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機溶剤等の離型剤の膜厚を効率良く計測することができる膜厚計測装置及び膜厚計測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、金型の形成面には、製品の離型を容易にするために、有機溶剤等の離型剤が塗布されることが多い。かかる離型剤が形成面に均等に塗られていない場合や、そもそも離型剤が塗布されていない箇所が存在する場合は、製品を良好に離型することができない。このため、離型剤の厚みを把握したいニーズがある。
【0003】
このため、特許文献1には、蛍光物質を含有する離型剤を、金型キャビティのキャビティ形成面に塗布し、キャビティ形成面に紫外線を照射することにより、離型剤に含有される蛍光物質が発する可視光によって離型剤を視認しやすい状態としたうえで、輝度などで表される可視光の発光強度を測定して離型剤の塗布状態を検出する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1のものは、蛍光物質を含有する離型剤が発光した光が反射し、離型剤が無い部位でもこの反射により離型剤が塗布されているように判定されてしまうという問題がある。
【0006】
本発明は、上記従来技術による問題点(課題)を解決するためになされたものであって、有機溶剤等の離型剤の膜厚を効率良く計測することができる膜厚計測装置及び膜厚計測方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、本発明は、所定の撮像部により計測対象となる物体の画像を撮像し、撮像した物体に塗布された膜の膜厚を所定の表示部に表示制御する膜厚計測装置であって、前記物体に塗布された膜による反射光の強度に基づいて特定された所定の波長帯域の光を前記物体に照射する光源装置と、前記物体の画像を撮像する撮像装置と、前記画像から膜厚を算出する膜厚算出部とを備える。
【0008】
また、本発明は、上記発明において、前記所定の波長帯域は、前記物体に塗布された膜による反射光の強度が所定値よりも小さい波長帯域であることを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、上記発明において、前記物体に照射する各波長帯域のうち前記物体に塗布された前記膜の吸収量が高い波長帯域を特定する特定手段をさらに備え、前記光源装置は、前記特定手段により特定された前記波長帯域の光を前記物体に照射する。
【0010】
また、本発明は、上記発明において、前記撮像装置は、前記光源装置から照射された前記波長帯域の反射光に基づいて画像を撮像する。
【0011】
また、本発明は、上記発明において、前記膜厚算出部は、前記撮像装置で撮像された画像の輝度に基づいて膜厚を算定する。
【0012】
また、本発明は、上記発明において、前記光源装置は、複数の波長帯域を発光する発光部と、前記発光部から照射される複数の波長帯域の光のうち、前記特定手段により特定された波長帯域の光を透過する第1のフィルタとを備える。
【0013】
また、本発明は、上記発明において、前記撮像装置は、前記発光部が照射する波長帯域のうち、前記特定手段により特定された波長帯域の光を透過する第2のフィルタを備える。
【0014】
また、本発明は、上記発明において、所定の撮像部により計測対象となる物体の画像を撮像し、撮像した物体に塗布された膜の膜厚を所定の表示部に表示制御する膜厚計測装置における膜厚計測方法であって、所定の光源装置が、前記物体に塗布された膜による反射光の強度に基づいて特定された所定の波長帯域の光を前記物体に照射する照射工程と、前記物体の画像を撮像する撮像工程と、前記画像から膜厚を算出する算出工程とを含む。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、有機溶剤等の離型剤の厚みを効率良く計測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、実施形態1に係る膜厚計測装置の概要を示す図である。
【
図2】
図2は、
図1に示した膜厚計測装置の構成を示す機能ブロック図である。
【
図3】
図3は、
図2に示した膜厚計測装置による波長帯域の特定を説明するための説明図である。
【
図4】
図4は、
図2に示した膜厚データの一例を示す図である。
【
図5】
図5は、
図2に示したカラーマップの一例を示す図である。
【
図6】
図6は、
図2に示した膜厚計測装置の膜厚の表示の一例を示す図である。
【
図7】
図7は、
図2に示した膜厚データの作成手順を示すフローチャートである。
【
図8】
図8は、
図2に示した膜厚計測装置の表示制御手順を示すフローチャートである。
【
図9】
図9は、実施形態2に係る膜厚計測装置の概要を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明に係る膜厚計測装置及び膜厚計測方法の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0018】
[実施形態1]
<膜厚計測装置の概要>
まず、本実施形態1に係る膜厚計測装置の概要について説明する。
図1は、実施形態1に係る膜厚計測装置10の概要を示す図である。ここでは、あらかじめ計測を行うために照射する波長帯域が特定されているものとする。
【0019】
図1に示すように、膜厚計測装置10は、光源部14aから金型61に特定された波長帯域の光を照射する(S1)。金型61には、厚さの異なる有機溶剤51a及び51b(以下、「有機溶剤51」と総称する)が塗布されている。そして、膜厚計測装置10は、特定された波長帯域の光に基づいて撮像を行う撮像部13aを用いて、有機溶剤51a及び51bにおいて反射した特定の波長帯域の光の画像を撮像する(S2)。
【0020】
そして、膜厚計測装置10は、撮像した画像の各画素における反射光の強度から膜厚を算定する(S3)。その後、膜厚計測装置10は、算出された膜厚からカラーマップ15cを参照し、RGBコードを算定する(S4)。そして、膜厚計測装置10は、金型61に塗布された有機溶剤51の膜厚をカラー画像として表示部11に表示処理する(S5)。
【0021】
<膜厚計測装置10の構成>
次に、
図1に示した膜厚計測装置10の構成について説明する。
図2は、
図1に示した膜厚計測装置10の構成を示す機能ブロック図である。
図2に示すように、膜厚計測装置10は、記憶部15及び制御部16を有し、表示部11、入力部12、撮像装置13及び光源装置14が接続されている。表示部11は、各種情報を表示する液晶ディスプレイなどの表示デバイスである。入力部12は、マウスやキーボードなどの入力デバイスである。
【0022】
撮像装置13は、撮像部13aを有する。撮像部13aは、特定の波長帯域の反射光に基づいて金型61の画像を撮像するカメラである。光源装置14は、光源部14aを有する。光源部14aは、紫外線の波長帯域の光を照射する。かかる光源部14aとして、例えばLEDを用いることができる。なお、高圧水銀ランプ及び低圧水銀ランプなどの放電灯を用いることもできる。
【0023】
記憶部15は、ハードディスク装置や不揮発性メモリなどの記憶デバイスであり、膜厚データ15aと、画像データ15bと、カラーマップ15cとを記憶する。膜厚データ15aは、撮像部13aで撮像した画像の各画素の光強度と溶剤の膜厚を対応付けたデータである。画像データ15bは、光源部14aから特定の波長帯域の光を照射し、金型61に塗布された有機溶剤51から反射された光を撮像部13aで撮像された画像データである。カラーマップ15cは、有機溶剤51の膜厚とRGBのカラーコードとを対応付けたデータである。
【0024】
制御部16は、膜厚計測装置10の全体を制御する制御部であり、膜厚データ取得部16aと、光源制御部16bと、撮像処理部16cと、膜厚算出部16dと、表示制御部16eとを有する。実際には、これらのプログラムをCPUにロードして実行することにより、膜厚データ取得部16aと、光源制御部16bと、撮像処理部16cと、膜厚算出部16dと、表示制御部16eとにそれぞれ対応するプロセスを実行させることになる。
【0025】
膜厚データ取得部16aは、撮像部13aにより撮像された画像から得られる特定の波長帯域における有機溶剤51の反射光の強度のデータを取得し、有機溶剤51の膜厚と対応付けて膜厚データ15aとして記憶する処理部である。
【0026】
光源制御部16bは、金型61の有機溶剤51を撮像するために、特定の波長帯域の光を照射する光源装置14の光源部14aのオン/オフ制御を行う制御部である。特定の波長帯域は、あらかじめ物体に塗布された膜による反射光の強度に基づいて特定された波長帯域であり、具体的には、物体に塗布された膜による反射光の強度が所定値よりも小さくなる波長帯域となる。撮像処理部16cは、光源装置14から特定の波長帯域の光が照射された後に、金型61を撮像部13aにより撮像させられるように制御する処理部である。撮像処理部16cにより撮像された画像は、画像データ15bとして記憶部15に記憶する。
【0027】
膜厚算出部16dは、撮像処理部16cにより取得した画像データ15bの各画素の光強度と膜厚データ15aに基づいて、各画素における膜厚を算出する処理部である。表示制御部16eは、カラーマップ15cに基づいて、膜厚算出部16dで算出された膜厚からRGBコードの変換を行い、処理された画像を表示部11に表示制御する処理部である。
【0028】
<波長帯域の特定について>
次に、膜厚の計測に用いられる波長帯域の特定について説明する。
図3は、
図2に示した膜厚計測装置10による波長帯域の特定を説明するための説明図である。
図3のグラフは、横軸を波長(nm)とし、縦軸を反射光の強度としたグラフである。
【0029】
図3に示すように、有機溶剤51に波長帯域の異なる光を照射し、それぞれの波長帯域における有機溶剤51の膜による反射光の強度を測定する。そして、複数の波長帯域の中で、反射光の強度が所定値よりも小さくなる波長帯域を、膜厚を計測する場合に用いる波長帯域と特定する。
図3の例では、波長が360nm付近の波長帯域を特定する。
【0030】
ここで、一般的には、有機溶剤51の膜による反射光の強度は、
図3に示すように下に凸の曲線となる。かかる曲線の最小値となる強度を持つ波長が特定することができる。なお、例えば最小値の強度を5%増加した強度となる波長を特定することもできる。
【0031】
<膜厚データ15aについて>
次に、有機溶剤51の膜厚と反射光強度の関係について説明する。
図4は、
図2に示した膜厚データ15aの一例を示す図である。
図4に示すように、有機溶剤51に特定の波長帯域の光を照射すると、照射された光は有機溶剤51の膜で吸収さる。膜厚が小の場合には、照射された光が膜の中で吸収される量が小さいため、反射光は大きくなる。一方、膜厚が厚い場合は、膜のなかで吸収される量が膜厚の薄い場合に比較して大きいため、反射光は、膜厚が薄い場合に比べると小さくなる。したがって、有機溶剤51の膜厚と反射光強度の関係は、反射光強度が小さいほど膜厚は厚く、反射光強度が大きいほど膜厚は薄くなる。なお、ここでは反射光強度と膜厚の関係を一次関数で表現したが、かかる特性は一例であり、一次関数の関係でなくともよい。
【0032】
<カラーマップの一例について>
次に、カラーマップ15cについて説明する。
図5は、
図2に示したカラーマップ15cの一例を示す図である。
図5に示すように、カラーマップ15cは、膜厚「0-0.1mm」では、RGB値「0,0,0」、膜厚「0.1-0.3mm」では、RGB値「0,0,128」、膜厚「0.3-0.5mm」では、RGB値「0,0,255」が対応付けられている。
【0033】
また、膜厚「0.5-0.7mm」では、RGB値「0,128,0」、膜厚「0.7-0.9mm」では、RGB値「0,255,0」、膜厚「0.9-1.1mm」では、RGB値「255,255,0」、膜厚「1.1-」では、RGB値「255,165,0」が対応付けられている。
【0034】
<膜厚の表示制御>
次に、膜厚計測装置10の膜厚の表示制御について説明する。
図6は、
図2に示した膜厚計測装置10の膜厚の表示の一例を示す図である。
図6(a)に示すように、膜厚計測装置10は、光源部14aから特定の波長帯域の光を金型61に塗布された有機溶剤51に照射する。撮像部13aは、金型61に照射された反射光に基づいて画像を撮像する。撮像された画像は、反射光の強度により、強度が高い画素は白く、強度が低い画素は黒くなる(
図6(b))。そして、膜厚データ15aを用いてこの撮像された画像の各画素の反射光の強度に基づいて膜厚を算出した後、カラーマップ15cを用いて膜厚のデータからカラー画像を算出し、表示制御する(
図6(c))。
【0035】
<膜厚データ15aの作成手順>
次に、膜厚データ15aの作成手順について説明する。
図7は、
図2に示した膜厚データ15aの作成手順を示すフローチャートである。なお、ここでは、有機溶剤51に照射する波長帯域はあらかじめ特定されているものとする。
【0036】
図7に示すように、膜厚計測装置10は、特定の波長帯域の光を照射したか否かを判定する(ステップS101)。特定の波長帯域の光が照射されていなかったら(ステップS101:No)、光が照射されるまで待機する。そして、膜厚計測装置10は、特定の波長帯域の光が照射されていたならば(ステップS101:Yes)、撮像部13aにより画像を取得する(ステップS102)。
【0037】
その後、膜厚計測装置10は、撮像した溶剤の試料が最後の試料か否かを判定する(ステップS103)。撮像した溶剤の試料が最後の試料でなかった場合は(ステップS103:No)、膜厚の異なる溶剤の試料の設置を操作者に促し(ステップS104)、ステップ102に移行する。
【0038】
一方、膜厚計測装置20は、撮像した溶剤の試料が最後の試料であった場合は(ステップS103:Yes)、別の溶剤の膜厚を計測するか否かを判定する(ステップS105)。膜厚計測装置10は、別の溶剤の膜厚を測定する場合は(ステップS105:Yes)、ステップS101に移行する。また、別の溶剤の膜厚を計測しない場合は(ステップS105:No)、一連の処理を終了する。
【0039】
次に、膜厚計測装置10の表示制御手順につて説明する。
図8は、
図2に示した膜厚計測装置10の表示制御手順を示すフローチャートである。
図8に示すように、膜厚計測装置10は、光源装置14をオンにし、特定の波長帯域の光を照射する(ステップS201)。そして、膜厚計測装置10は、撮像装置13により画像を撮像する(ステップS202)。
【0040】
その後、膜厚計測装置10は、撮像した画像の各画素における反射光の強度に基づいて膜厚を算出する(ステップS203)。そして、膜厚計測装置10は、カラーマップ15cを参照し、膜厚からRGBコードを算出する(ステップS204)。そして、画像を所定の表示部11に表示処理し(ステップS205)、一連の処理を終了する。
【0041】
上述してきたように、本実施形態1では、膜厚計測装置10は、光源装置14より特定の波長帯域の光を有機溶剤51が塗布された金型61に照射し、撮像装置13を用いて有機溶剤51からの反射光を画像として撮像し、画像の各画素の反射光の強度に基づいて膜厚を算出し、さらに膜厚からRGBコードを算出して所定の表示部11に表示制御するように構成したので、有機溶剤等の離型剤の厚みを効率良く計測することができる。
【0042】
[実施形態2]
ところで、上記実施形態1では、膜厚計測装置10は、光源装置14よりあらかじめ特定した波長帯域の光を照射する場合について説明したが、実施形態2では、特定の波長帯域の光を透過させ、かつ、該波長帯域以外の光を透過させないフィルタを撮像装置23及び光源装置24に備え、フィルタを制御部で自動選択する場合について説明する。なお、実施形態1と同様の部位については、同一の符号を付すこととして、その詳細な説明を省略する。
【0043】
<膜厚計測装置20の概要>
次に、本実施形態2に係る膜厚計測装置20の概要について説明する。
図9は、実施形態2に係る膜厚計測装置20の概要を示す図である。
図9に示すように、膜厚計測装置20は、金型61と撮像部23aとの間に可変フィルタ23bを配設する。かかる可変フィルタ23bは、特定の波長帯域の光を透過させ、かつ、該波長帯域以外の光を透過させない複数枚のフィルタからなる。また、金型61と光源部24aとの間に可変フィルタ24bを配設する。かかる可変フィルタ24bは、可変フィルタ23bと同様に、特定の波長帯域の光を透過させ、かつ、該波長帯域以外の光を透過させない複数枚のフィルタからなる。
【0044】
そして、膜厚計測装置20は、特定の波長帯域が決まったならば、可変フィルタ23b及び可変フィルタ24bの特定された波長帯域の光を透過させ、かつ、該波長帯域以外の光を透過させないフィルタを選択する(S11)。そして、膜厚計測装置20は、光源装置24の光源部24aにより発光された光のうち可変フィルタ24bを透過した光を金型61に照射する(S12)。膜厚計測装置20は、金型61から反射した光を、選択処理された波長帯域の光を透過させ、かつ、該波長帯域以外の光を透過させないフィルタが選択された可変フィルタ23bを介して撮像部23aで画像を撮像する(S13)。
【0045】
そして、膜厚計測装置20は、撮像した画像の各画素における反射光の強度から膜厚を算定する(S14)。その後、膜厚計測装置20は、算出された膜厚からカラーマップ15cを参照し、RGBコードを算定する(S15)。そして、膜厚計測装置10は、金型61に塗布された有機溶剤51の膜厚をカラー画像として表示部11に表示処理する(S16)。
【0046】
<膜厚計測装置20の構成>
次に、
図9に示した膜厚計測装置20の構成について説明する。
図10は、
図9に示した膜厚計測装置20の構成を示す機能ブロック図である。
図10に示すように、膜厚計測装置20は、記憶部25及び制御部26を有し、表示部11、入力部12、撮像装置23及び光源装置24が接続されている。
【0047】
撮像装置23は、撮像部23aと、可変フィルタ23bとを有する。撮像部23aは紫外光の複数の波長帯域の光を撮像可能なカメラである。可変フィルタ23bは、特定の波長帯域の光を透過させ、かつ、該波長帯域以外の光を透過させない複数枚の光学フィルタから構成され、円形又は直線の光学フィルタを保持する金具に光学フィルタを装着し、金具をモータ等で動かすことによって、透過させる光の波長帯域を可変する。
【0048】
光源装置24は、光源部24aと、可変フィルタ24bとを有する。光源部24aは、紫外光の複数の波長帯域の光を含む光を照射可能な光源である。可変フィルタ24bは、特定の波長帯域の光を透過させ、かつ、該波長帯域以外の光を透過させない複数枚の光学フィルタから構成され、円形又は直線の光学フィルタを保持する金具に光学フィルタを装着し、金具をモータ等で動かすことによって、透過させる光の波長帯域を可変する。
【0049】
記憶部25は、ハードディスク装置や不揮発性メモリなどの記憶デバイスであり、膜厚データ15aと、画像データ15bと、カラーマップ15cと、波長帯域データ25aとを記憶する。波長帯域データ25aは、複数の有機溶剤51の種類と、各有機溶剤51の光吸収量が大きな波長帯域とを対応つけたデータである。
【0050】
制御部26は、膜厚計測装置20の全体を制御する制御部であり、膜厚データ取得部16aと、光源制御部16bと、撮像処理部16cと、膜厚算出部16dと、表示制御部16eと、波長帯域選択処理部26aと、フィルタ選択処理部26bとを有する。実際には、これらのプログラムをCPUにロードして実行することにより、膜厚データ取得部16aと、光源制御部16bと、撮像処理部16cと、膜厚算出部16dと、表示制御部16eと、波長帯域選択処理部26aと、フィルタ選択処理部26bとにそれぞれ対応するプロセスを実行させることになる。
【0051】
波長帯域選択処理部26aは、操作者が使用する有機溶剤51を選択したならば、波長帯域データ25aを参照して該有機溶剤51の吸収量が高い波長帯域を選択する処理部である。フィルタ選択処理部26bは、波長帯域選択処理部26aで選択処理された光の波長帯域に対応して、可変フィルタ23b及び可変フィルタ24bに配設されている複数枚の光学フィルタから選択処理された波長帯域に光を透過させ、かつ、この波長帯域以外の光を透過させないフィルタを選択する処理をする。具体的には、波長帯域選択処理部26aで光の波長帯域が選択処理されたならば、その波長帯域の光を透過させ、かつ、この波長帯域以外の光を透過させないフィルタを選択する信号を撮像装置23の可変フィルタ23bと、光源装置24の可変フィルタ24bに通知する。
【0052】
<膜厚計測装置20の表示制御手順>
次に、膜厚計測装置20の表示制御手順について説明する。
図11は、
図10に示した膜厚計測装置20の表示制御手順を示すフローチャートである。なお、ここでは、金型61に塗布する有機溶剤51は特定されており、照射する波長帯域は特定されているものとする。
【0053】
図11に示すように、膜厚計測装置20は、光源装置24の可変フィルタ24bを特定の波長帯域の光を透過させ、かつ、該波長帯域以外の光を透過させないフィルタに設定する(ステップS301)。そして、膜厚計測装置20は、撮像装置23の可変フィルタ23bを特定の波長帯域の光を透過させ、かつ、該波長帯域以外の光を透過させないフィルタに設定する(ステップS302)。
【0054】
その後、膜厚計測装置20は、光源装置24をオンにし、光を照射する(ステップS303)。かかる光には、様々な波長の光が含まれるが、可変フィルタ24bにより選択処理された波長帯域の光が透過され、かつ、この波長帯域以外が透過されない光が金型61に照射される。そして、膜厚計測装置20は、金型61で反射された可変フィルタ23bにより選択処理された波長帯域であり、かつ、この波長帯域以外が透過されない反射光の画像を撮像装置23により撮像する(ステップS304)。
【0055】
その後、膜厚計測装置20は、撮像した画像の各画素の反射光の強度から膜厚を算出する(ステップS305)。そして、膜厚計測装置20は、算出した膜厚から、膜厚に対応するRGBコードを算出し(ステップS306)、画像の表示処理を行い(ステップS307)、一連の処理を終了する。
【0056】
上述してきたように、本実施形態2では、膜厚計測装置20は、特定の波長帯域を透過させ、かつ、該波長帯域以外の光を透過させない複数枚のフィルタから構成される可変フィルタ23b及び24bを撮像装置23及び光源装置24に配設し、この可変フィルタ23b及び24aを制御部で選択することにより、波長帯域選択処理部26aで選択処理された波長帯域の光を有機溶剤51が塗布された金型61に照射し、撮像装置23を用いて有機溶剤51からの反射光を画像として撮像し、画像の各画素の反射光の強度に基づいて膜厚を算出し、さらに膜厚からRGBコードを算出して所定の表示部11に表示制御するように構成したので、有機溶剤等の離型剤の厚みを効率良く計測することができる。
【0057】
なお、上記実施形態1及び実施形態2では、表示制御部16eは、カラーマップ15cに基づいて、膜厚算出部16dで算出された膜厚からRGBコードの変換を行い、処理された画像を表示部11に表示制御する場合について説明したが、本発明はこれに限定されるわけではなく、膜厚算出部16dで算出した膜厚データ15aに基づいて、金型61に塗布された有機溶剤51が所定の閾値より薄くなった場合、又は、有機溶剤51が所定の閾値より厚くなった場合に、警告を表示するようにしてもよい。
【0058】
上記の各実施形態で図示した各構成は機能概略的なものであり、必ずしも物理的に図示の構成をされていることを要しない。すなわち、各装置の分散・統合の形態は図示のものに限られず、その全部又は一部を各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明に係る膜厚計測装置及び膜厚計測方法は、有機溶剤等の離型剤の厚みを効率良く計測する場合に適している。
【符号の説明】
【0060】
10 膜厚計測装置
11 表示部
12 入力部
13 撮像装置
13a 撮像部
14 光源装置
14a 光源部
15 記憶部
15a 膜厚データ
15b 画像データ
15c カラーマップ
16 制御部
16a 膜厚データ取得部
16b 光源制御部
16c 撮像処理部
16d 膜厚算出部
16e 表示制御部
20 膜厚計測装置
23 撮像装置
23a 撮像部
23b 可変フィルタ
24 光源装置
24a 光源部
24b 可変フィルタ
25 記憶部
26 制御部
26a 波長帯域選択処理部
26b フィルタ選択処理部
51、51a、51b 有機溶剤
61 金型