(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024113430
(43)【公開日】2024-08-22
(54)【発明の名称】出没式ボールペン
(51)【国際特許分類】
B43K 7/12 20060101AFI20240815BHJP
【FI】
B43K7/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023018399
(22)【出願日】2023-02-09
(71)【出願人】
【識別番号】000134589
【氏名又は名称】株式会社トンボ鉛筆
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100087893
【弁理士】
【氏名又は名称】中馬 典嗣
(72)【発明者】
【氏名】林 龍之介
【テーマコード(参考)】
2C350
【Fターム(参考)】
2C350GA03
2C350HC03
(57)【要約】
【課題】筆記時のペン先のがたつきやしなりを抑制した出没式ボールペンを提供する。
【解決手段】ボールペン100は、出没式であり、リフィル10と軸筒20とを備える。リフィル10は、チップ部12と、インク収容部13とを備える。軸筒20は、チップ中央部124に対して、軸筒20の軸A方向に交差する方向の動きを規制する第1規制部22と、第1規制部22よりも後端側に設けられ、インク収容部13の先端側に対して、軸A方向に交差する方向の動きを規制する第2規制部24とを有する。第1規制部22の内径とチップ中央部124の外径との径差をC1、第2規制部24の内径とインク収容部13の外径との径差をC2、軸A方向における第1規制部22の先端から第2規制部24の後端までの距離をLとするとき、0.001≦((C1+C2)/2)/L≦0.050という関係式を満たす。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筆記可能なペン先部を先端に備えるチップ部と、先端側の端部に前記チップ部の後端が接続されるインク収容部と、を備えるリフィルと、
前記リフィルを内部に収納する軸筒と、を備え、
前記ペン先部が前記軸筒の先端の開口部から出没する出没式ボールペンであって、
前記チップ部は、前記ペン先部の後端側に設けられるチップ中央部を有し、
前記軸筒は、
前記チップ中央部に対して、前記軸筒の軸方向に交差する方向の動きを規制する第1規制部と、
前記第1規制部よりも後端側に設けられ、前記インク収容部の先端側に対して、前記軸方向に交差する方向の動きを規制する第2規制部と、を有し、
前記ペン先部が前記開口部から突出した状態において、
前記第1規制部の内径又は最大内接円の径と前記チップ中央部の外径又は最小外接円の径との径差をC1とし、
前記第2規制部の内径又は最大内接円の径と前記インク収容部の外径又は最小外接円との径差をC2とし、
前記軸方向における前記第1規制部の先端となる点から前記第2規制部の後端となる点までの距離をLとするとき、
0.001≦((C1+C2)/2)/L≦0.050
という関係式を満たす、
出没式ボールペン。
【請求項2】
前記径差C1と前記径差C2とは、
C1≦C2
という関係式を満たす、
請求項1に記載の出没式ボールペン。
【請求項3】
前記径差C1は、0<C1≦0.06mmを満たす、
請求項1に記載の出没式ボールペン。
【請求項4】
前記径差C2は、0<C2≦0.30mmを満たす、
請求項1に記載の出没式ボールペン。
【請求項5】
前記ペン先部が前記開口部から突出した状態において、前記開口部から前記ペン先部の先端までの前記軸方向における距離は、4.5mm以上である、
請求項1に記載の出没式ボールペン。
【請求項6】
前記チップ部は、前記インク収容部に圧入されて接続されるチップ側接続部を備え、
前記チップ側接続部は、前記インク収容部において、少なくとも、前記リフィルが前記軸方向に交差する方向に動いた場合に前記第2規制部に当接する位置まで圧入されている、
請求項1に記載の出没式ボールペン。
【請求項7】
中心軸が前記軸方向に一致するように配置され、前記リフィルを前記軸方向に沿って後端側に付勢するコイルスプリングをさらに備え、
前記軸筒は、
前記第1規制部の後端から前記軸方向に沿って後端側へ拡径するように設けられた第1案内部と、
前記第2規制部よりも後端側に設けられ、前記コイルスプリングの先端部分に対して、前記軸方向に交差する方向の動きを規制する第3規制部と、を有し、
前記第3規制部の内径又は最大内接円の径は、前記第2規制部の内径又は最大内接円の径よりも大きく、
前記コイルスプリングは、
その外径が、前記第3規制部の内径又は最大内接円と同一、もしくは、略同一であって、
その内径が、前記軸方向において前記第3規制部の先端側に隣接する部分の内径又は最大内接円以下、かつ、前記インク収容部の外径又は最小外接円の径以上であり、
前記リフィルの前記ペン先部が前記開口部から突出する突出過程において、前記インク収容部の先端部分が前記第3規制部内に進入した後に、前記チップ中央部の先端部分が前記第1案内部内に進入する、
請求項1に記載の出没式ボールペン。
【請求項8】
前記第2規制部が、前記軸方向において前記第3規制部の先端側に隣接して位置し、
前記コイルスプリングは、その内径が前記第2規制部の内径又は最大内接円の径以下、かつ、前記インク収容部の外径又は最小外接円の径以上である、
請求項7に記載の出没式ボールペン。
【請求項9】
前記軸筒は、前記第2規制部の後端から前記軸方向に沿って前記後端側へ拡径するように設けられ、前記軸方向において前記第3規制部の先端側に隣接して位置する第2案内部を備え、
前記コイルスプリングは、
その内径が前記第2案内部の後端での内径又は最大内接円の径以下、かつ、前記インク収容部の外径又は最小外接円の径以上である、
請求項7に記載の出没式ボールペン。
【請求項10】
前記軸筒は、前記第2規制部の後端から前記軸方向に沿って前記後端側へ拡径するように設けられ、前記軸方向において前記第3規制部の先端側に隣接して位置する第2案内部を備え、
前記リフィルの前記ペン先部が前記開口部から突出する突出過程において、前記インク収容部の先端部分が前記第2案内部内に進入したあとで、前記チップ中央部の先端部分が前記第1案内部に進入する、
請求項7に記載の出没式ボールペン。
【請求項11】
前記ペン先部は、ニードル型であり、前記チップ中央部より先端側に、前記ペン先部の後端から次第に拡径する斜面を有し、
前記リフィルの長手方向に沿った断面において、前記斜面が前記長手方向となす角度は、45°以上である、
請求項7に記載の出没式ボールペン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、出没式ボールペンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、様々な出没式ボールペンが提供されている(特許文献1,2参照)。
このような出没式ボールペンでは、ペン先が出没する軸筒の開口部の内径は、ペン先の外径よりも大きく形成されている。そのため、筆記時に、ペン先が軸筒の中心軸からずれるように動き、ペン先ががたつくという問題がある。特に、リフィルのペン先が軸筒の中心軸に対して傾くように動く場合には、ペン先の移動量が大きく、筆記時の筆跡の乱れや、滑らかな筆記感等の妨げになる。
また、筆記時に、リフィルのペン先が保持される部分の剛性が弱いと、ペン先がしなるという問題がある。このペン先のしなりは、筆記時の筆跡の乱れや滑らかな筆記感等の妨げになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6242067号公報
【特許文献2】特開2018-144421号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のようなペン先のがたつきやしなりを抑制するために、ペン先が出没する軸筒の開口部において、軸方向に対するリフィルの傾き等を規制するための規制部を設けたボールペン等も開発されている。しかし、この規制部の軸方向における寸法が十分に確保できず、ペン先のがたつきやしなりの改善は不十分である。また、切削加工のため、ペン先を十分に長くすることは困難であることや、ペン先を出没させる出没機構を動作させる際に動作のための空間が必要となること等から、規制部の寸法を伸ばすことは困難である。
【0005】
本発明の課題は、筆記時のペン先のがたつきやしなりを抑制した出没式ボールペンを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下のような解決手段により、前記課題を解決する。
本発明は、筆記可能なペン先部を先端に備えるチップ部と、先端側の端部に前記チップ部の後端が接続されるインク収容部と、を備えるリフィルと、前記リフィルを内部に収納する軸筒と、を備え、前記ペン先部が前記軸筒の先端の開口部から出没する出没式ボールペンであって、前記チップ部は、前記ペン先部の後端側に設けられるチップ中央部を有し、前記軸筒は、前記チップ中央部に対して、前記軸筒の軸方向に交差する方向の動きを規制する第1規制部と、前記第1規制部よりも後端側に設けられ、前記インク収容部の先端側に対して、前記軸方向に交差する方向の動きを規制する第2規制部と、を有し、前記ペン先部が前記開口部から突出した状態において、前記第1規制部の内径又は最大内接円の径と前記チップ中央部の外径又は最小外接円の径との径差をC1とし、前記第2規制部の内径又は最大内接円の径と前記インク収容部の外径又は最小外接円との径差をC2とし、前記軸方向における前記第1規制部の先端となる点から前記第2規制部の後端となる点までの距離をLとするとき、0.001≦((C1+C2)/2)/L≦0.050という関係式を満たす出没式ボールペンである。
【0007】
前記径差C1と前記径差C2とは、C1≦C2という関係式を満たすことが好ましい。
【0008】
前記径差C1は、0<C1≦0.06mmを満たすことが好ましい。
【0009】
前記径差C2は、0<C2≦0.30mmを満たすことが好ましい。
【0010】
前記ペン先部が前記開口部から突出した状態において、前記開口部から前記ペン先部の先端までの前記軸方向における距離は、4.5mm以上であることが好ましい。
【0011】
前記チップ部は、前記インク収容部に圧入されて接続されるチップ側接続部を備え、前記チップ側接続部は、前記インク収容部において、少なくとも、前記リフィルが前記軸方向に交差する方向に動いた場合に前記第2規制部に当接する位置まで圧入されていることが好ましい。
【0012】
出没式ボールペンは、中心軸が前記軸方向に一致するように配置され、前記リフィルを前記軸方向に沿って後端側に付勢するコイルスプリングをさらに備え、前記軸筒は、前記第1規制部の後端から前記軸方向に沿って後端側へ拡径するように設けられた第1案内部と、前記第2規制部よりも後端側に設けられ、前記コイルスプリングの先端部分に対して、前記軸方向に交差する方向の動きを規制する第3規制部と、を有し、前記第3規制部の内径又は最大内接円の径は、前記第2規制部の内径又は最大内接円の径よりも大きく、前記コイルスプリングは、その外径が、前記第3規制部の内径又は最大内接円と同一、もしくは、略同一であって、その内径が、前記軸方向において前記第3規制部の先端側に隣接する部分の内径又は最大内接円以下、かつ、前記インク収容部の外径又は最小外接円の径以上であり、前記リフィルの前記ペン先部が前記開口部から突出する突出過程において、前記インク収容部の先端部分が前記第3規制部内に進入した後に、前記チップ中央部の先端部分が前記第1案内部内に進入することが好ましい。
【0013】
前記第2規制部が、前記軸方向において前記第3規制部の先端側に隣接して位置し、前記コイルスプリングは、その内径が前記第2規制部の内径又は最大内接円の径以下、かつ、前記インク収容部の外径又は最小外接円の径以上であることが好ましい。
【0014】
前記軸筒は、前記第2規制部の後端から前記軸方向に沿って前記後端側へ拡径するように設けられ、前記軸方向において前記第3規制部の先端側に隣接して位置する第2案内部を備え、前記コイルスプリングは、その内径が前記第2案内部の後端での内径又は最大内接円の径以下、かつ、前記インク収容部の外径又は最小外接円の径以上であることが好ましい。
【0015】
前記軸筒は、前記第2規制部の後端から前記軸方向に沿って前記後端側へ拡径するように設けられ、前記軸方向において前記第3規制部の先端側に隣接して位置する第2案内部を備え、前記リフィルの前記ペン先部が前記開口部から突出する突出過程において、前記インク収容部の先端部分が前記第2案内部内に進入したあとで、前記チップ中央部の先端部分が前記第1案内部に進入することが好ましい。
【0016】
前記ペン先部は、ニードル型であり、前記チップ中央部より先端側に、前記ペン先部の後端から次第に拡径する斜面を有し、前記リフィルの長手方向に沿った断面において、前記斜面が前記長手方向となす角度は、45°以上であることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、筆記時のペン先のがたつきやしなりを抑制した出没式ボールペンを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】実施形態のボールペン100を説明する図である。
【
図2】実施形態のボールペン100を説明する図である。
【
図3】リフィル10の先端のペン先部121が軸筒20から突出した突出状態であるボールペン100の先端部の拡大断面図である。
【
図4】リフィル10が軸筒20内に収納された収納状態であるボールペン100の先端部の拡大断面図である。
【
図5】実施形態のボールペン100において、ペン先部121が突出し、かつ、軸A方向に対してリフィル10が傾いた状態の先端部分の断面拡大図である。
【
図6】出没式ボールペンのペン先のがたつきやしなりについて説明する図である。
【
図7】実施例1~8及び比較例1~5のボールペンの筆記時のがたつきや剛性感(しなり)の評価を示す表である。
【
図8】突出過程のリフィル10及び軸筒20を示す断面図である。
【
図9】変形形態の第1規制部22の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面等を参照して、本発明の実施形態について説明する。なお、
図1を含め、以下に示す各図は、模式的に示した図であり、各部の大きさ、形状は、理解を容易にするために、適宜誇張している。また、各図において、インクの記載は省略している。
【0020】
(実施形態)
図1及び
図2は、本実施形態のボールペン100を説明する図である。
図1では、リフィル10の先端のペン先部121が軸筒20から突出している突出状態のボールペン100を示している。
図1(a)は、ボールペン100の側面図であり、
図1(b)は、ボールペン100の軸筒20の軸A方向に沿った断面図である。
図2では、リフィル10が軸筒20内に収納されている収納状態のボールペン100を示している。
図2(a)は、ボールペン100の側面図である。
図2(b)は、ボールペン100の軸筒20の軸A方向に沿った断面図である。
【0021】
図3は、リフィル10の先端のペン先部121が軸筒20から突出した突出状態であるボールペン100の先端部の拡大断面図である。
図3は、
図1(b)に示す領域R1を拡大した図に相当する。
図4は、リフィル10が軸筒20内に収納された収納状態であるボールペン100の先端部の拡大断面図である。
図4は、
図2(b)に示す領域R2を拡大した図に相当する。
【0022】
理解を容易にするために、本明細書において、ボールペン100の軸筒20の中心軸である軸Aに沿って、ペン先部121側を先端側、その逆側となる操作部50側を後端側として説明する。また、
図1から
図4では、軸筒20の軸Aと、リフィル10の中心軸とは一致しているものとして説明する。
【0023】
本実施形態のボールペン100は、リフィル10と、軸筒20と、この軸筒20の内部に配置されるコイルスプリング40と、操作部50と、クリップ部60とを備える、所謂、ノック式ボールペンである。このボールペン100は、使用者が操作部50を操作すると、軸筒20内に設けられた不図示の出没機構により、リフィル10が軸筒20内を軸A方向に沿って先端側へ移動、又は、後端側へ移動し、ペン先部121が軸筒20の先端の開口部21から出没する。
本実施形態では、
図1及び
図3に示すように、リフィル10の先端に設けられたチップ部の一部(後述するペン先部121、斜面127及びチップ中央部124の先端側の一部)が軸筒20の開口部21から軸A方向に沿って軸筒20外へ突出した状態を突出状態と呼び、
図2及び
図4に示すようにリフィル10が軸筒20内に収納された状態を収納状態と呼ぶ。
【0024】
リフィル10の軸A方向の移動を行う出没機構に関しては、適宜採用してよい。
本実施形態では、収納状態のボールペン100において、使用者が操作部50を軸A方向に沿って先端側へ押すことにより、出没機構がリフィル10を軸A方向に沿って先端側へ移動させ、ペン先部121が軸筒20外へ突出して突出状態となる。ボールペン100は、この状態で筆記可能となる。
また、突出状態のボールペン100において、使用者が操作部50を軸A方向に沿って先端側へ押すことにより、出没機構がリフィル10を軸A方向に沿って後端側へ移動させ、ペン先部121が軸筒20内へ収納された収納状態となる。
【0025】
クリップ部60は、使用者の衣類のポケット等にボールペン100を取り付け可能な部位である。クリップ部60は、軸筒20の後端側に設けられている。クリップ部60は、公知のクリップの形状等を採用してよい。
【0026】
リフィル10は、全体として略円筒形であり、筆記可能なペン先部121等を備えるチップ部12と、チップ部12の後端側に接続され、インクを収容するインク収容部13とを備える。
チップ部12は、ステンレス等の金属製であり、略円筒形の部材であり、切削加工等により製造される。チップ部12は、ペン先部121と、ペン先部121の後端側に設けられる斜面127と、斜面127の後端側に設けられるチップ中央部124と、チップ中央部124の後端側に設けられるチップ側接続部125とを有する。また、チップ部12の内部には、インク収容部13からのインクを、チップ部12の先端に位置するボール11に送るためのバック孔126等がチップ部12の長手方向に沿って設けられている。
【0027】
チップ中央部124は、チップ部12の長手方向の中央部分に位置する円筒形の部分である。
ペン先部121は、斜面127の先端側に設けられた部分である。本実施形態のペン先部121はニードル型であり、円筒部122と、円筒部122の先端側に設けられた先端部123とを有する。
円筒部122は、円筒形の部分であり、その外径は、チップ中央部124の外径よりも小さい。
先端部123は、円筒部122の先端側に設けられ、先端側に向かうにしたがって次第に外径が縮小する部分であり、その最も先端部分においてボール11を抱持している。このボール11は、一部がチップ部12(先端部123)から突出した状態で、回転可能に保持されている。
このボールペン100の突出状態において、開口部21からペン先部121の先端、すなわち、ペン先部121の抱持するボール11の先端までの軸A方向の距離(突出長さ)は、筆記時の視認性の観点から4.5mm以上であることが好ましく、5.0mm以上であることがより好ましい。
【0028】
上述のように、本実施形態の円筒部122は、チップ中央部124よりも外径が小さい。そのため、チップ中央部124より先端側に、円筒部122からチップ中央部124へ向かって次第に拡径する斜面127が設けられている。
円筒部122からチップ中央部124への拡径は、急峻であり、斜面127は、リフィル10の中心軸方向(長手方向)に沿った断面において、軸方向に対して45°以上の角度をなしている。
【0029】
なお、本実施形態では、ペン先部121がニードル型である例を示したが、これに限らず、他の形態、例えば、コーン型としてもよい。コーン型のペン先部121とは、円筒部122及び斜面127に相当する部分を設けずに、チップ中央部124に相当する部分から、先端側に向かうにしたがって次第に外形が縮小するように形成され先端部分(先端部123に相当)に直接連結するような形態である。
【0030】
チップ側接続部125は、チップ部12をインク収容部13と接続する部分である。チップ側接続部125は、チップ中央部124よりも外径が小さい円筒形であり、後述するインク収容部13のチップ固定孔131eに圧入されている。これにより、チップ部12がインク収容部13に固定され、チップ部12とインク収容部13とが接続されている。
【0031】
インク収容部13は、チップ部12に送られるインクを収容し、全体として円筒形である。
本実施形態において、インク収容部13は、継手131とインク収容管132とを有し、これらが別部品で構成されている。継手131は、円筒形状であり、先端側に外径の小さい小径部131cを有し、小径部131cの後端側に拡径された拡径部131dを有する。
【0032】
小径部131cは、先端側に設けられ、軸方向に延在するチップ固定孔131eを有している。チップ部12のチップ側接続部125は、このチップ固定孔131eに圧入されてインク収容部13に接続されている。
また、インク収容管132は、拡径部131dの内径に圧入されて接続されている。
【0033】
本実施形態において、継手131及びインク収容管132は、いずれもPP(ポリプロピレン)により形成されている。
なお、本実施形態とは異なり、インク収容部13が一部品で構成される形態としてもよい。また、本実施形態とは異なり、PP以外の材質、例えば、PBT(ポリブチルテレフタレート)により形成されてもよい。さらに、インク収容部13が、軸A方向に外径が一定となるように形成されてもよい。
【0034】
軸筒20は、ペン先を保持する先端部分と使用者が筆記時に把持する部分とを有する。軸筒20は、略円筒形であり、軸筒20内には、その軸A方向に沿って空間30が形成されている。この空間30は、収納状態においてリフィル10を収納可能である。
軸筒20の先端部分は、外径が次第に小さくなっており、この先端部分には、リフィル10の先端のペン先部121が出没する開口部21が形成されている。この開口部21は、空間30と繋がっている。
【0035】
本実施形態において、軸筒20は、樹脂製であり、具体的には、PC(ポリカーボネート)により形成されている。なお、これに限らず、軸筒20は、ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)等の他の樹脂により形成されてもよい。
また、軸筒20は、ペン先を保持する先端部分から筆記者が筆記の際にボールペン100を指先で握るグリップ部分まで一体に形成されていることが、軸筒20の剛性を向上させる観点から好ましい。
また、本発明は、軸筒20が樹脂製である際に、より効果を発する。
【0036】
軸筒20は、その内面側に、第1規制部22、第1案内部23、第2規制部24、第2案内部25、及び第3規制部26を有している。
本実施形態では、一例として、第1規制部22、第1案内部23、第2規制部24、第2案内部25、及び第3規制部26は、軸Aに直交する断面における断面形状が、軸Aを中心とする円形である例を挙げて説明する。
【0037】
第1規制部22は、突出状態において、チップ中央部124に対して軸A方向に交差する方向の動きを規制する部分である。
第1規制部22は、開口部21の後端側に隣接して設けられている。第1規制部22は、軸A方向に沿って所定の寸法を有し、かつ、軸A方向において内径が一定である。第1規制部22の内径は、チップ中央部124の外径よりも大きく、本実施形態では開口部21の径と同じである。
【0038】
第1案内部23は、第1規制部22の後端から軸A方向に沿って後端側に向かうにつれて内径が次第に大きくなる部分である。
図3や
図4に示す軸筒20の断面図において、第1案内部23は、斜面として示されており、第1案内部23と軸A方向とがなす角度は、45°以下となっている。
【0039】
第2規制部24は、突出状態において、インク収容部13(本実施形態では、特に、継手131の小径部131c)に対して軸A方向に交差する方向の動きを規制する部分である。
第2規制部24は、軸A方向において、第1案内部23の後端側に隣接して設けられている。また、第2規制部24は、その後端が、軸筒20の先端から軸A方向の後端側に20mm以内の距離となる位置に設けられている。本実施形態において、第2規制部24は、軸A方向においてその内径が後端側に向かってわずかに拡径している。第2規制部24の内径は、第1規制部22の内径よりも大きく、また、インク収容部13における継手131の小径部131cの外径よりも大きい。
なお、これに限らず、第2規制部24の内径は、軸A方向に沿って一定である形態としてもよい。
【0040】
第2案内部25は、第2規制部24の後端から軸A方向に沿って後端側に向かって次第に径が大きくなる部分である。本実施形態においては、
図3及び
図4に示すように、角部分を凸曲面状に形成した箇所(すなわち、角Rをつけた箇所)が、第2案内部25である。なお、本実施形態とは異なり、第2案内部25を設けない軸筒20としてもよい。
第1案内部23及び第2案内部25は、
図3及び
図4に示す断面において、軸A方向となす角度が45°以下である、もしくは、角Rがついた形状とすることが好ましい。
【0041】
第3規制部26は、第2案内部25の後端側に設けられている。第3規制部26は、コイルスプリング40の先端側の端部40aに対して、軸A方向に交差する方向の動きを規制する部分である。
第3規制部26の内径は、第2規制部24の内径よりも大きく、コイルスプリング40の外径と同一、又は、略同一である。また、第3規制部26は、軸A方向に沿って所定の寸法を有し、軸A方向に沿ってその内径が一定である。
【0042】
また、第2案内部25と第3規制部26とを接続する壁面27は、軸Aに直交する方向に平行であり、この壁面27にコイルスプリング40の先端側の端部40aが当接している。これにより、軸A方向における、コイルスプリング40の先端側の端部40aの位置を規制している。なお、本実施形態とは異なり、軸筒20が第2案内部25を有しない場合、壁面27は、第2規制部24と第3規制部26とを接続する面であり、軸Aに直交する方向に平行である。
軸筒20の第3規制部26より後端側の空間30は、
図3や
図4に示すように、第3規制部26よりも内径が大きく形成されており、継手131の小径部131cよりも外径が大きい拡径部131d及びインク収容管132を収容可能となっている。
【0043】
コイルスプリング40は、インク収容部13を軸A方向に沿って後端側に付勢する部材である。コイルスプリング40は、その中心軸方向が軸筒20の軸A方向に一致するように空間30内に配置されている。コイルスプリング40の先端側の端部40aは、前述のように壁面27に当接している。また、コイルスプリング40の後端側の端部40bは、リフィル10のインク収容部13における継手131の拡径部131dの前面131bに当接している。
【0044】
このコイルスプリング40の外径は、前述のように、第3規制部26の内径と同一、又は、略同一である。またコイルスプリング40の内径は、第2案内部25の後端での内径よりも小さく、かつ、インク収容部13における継手131の小径部131cの外径以上である。
本実施形態では、第3規制部26の内径は、コイルスプリング40の外径と略同一であって、コイルスプリング40は、第3規制部26に摺接する形態となっている。この様な構成とすることにより、第3規制部26により規制された部分のコイルスプリング40の内径が、出没動作時のインク収容部13の先端部分(継手131の小径部131cの先端部分)の外周面を案内する。
【0045】
なお、これに限らず、コイルスプリング40の外径と第3規制部26の内径が同一又は略同一の形態として、コイルスプリング40と第3規制部26とがわずかにゆとりをもって嵌合する形態としてもよいし、第3規制部26の内径がコイルスプリング40の外径と同一であって、第3規制部26にコイルスプリング40が嵌合する状態としてもよい。また、第3規制部26の内径がコイルスプリング40の外径よりもわずかに小さくてもよい。コイルスプリング40の外径と第3規制部26の内径との径差としては、-0.1mm以上0.1mm以下が好ましい。
なお、本実施形態とは異なり、軸筒20が第2案内部25を有しない形態の場合には、コイルスプリング40の内径は、第2規制部24の内径以下であってインク収容部13における継手131の小径部131cの外径以上とする。
【0046】
コイルスプリング40の内側には、その中心軸方向に沿って、リフィル10が軸A方向に移動可能に挿入されている。
コイルスプリング40は、リフィル10のペン先部121を軸筒20から突出させる突出過程では、先端側に移動してきたインク収容部13における継手131の拡径部131dの前面131bによって軸A方向に圧縮される。また、リフィル10を軸筒20内に収納する収納過程では、コイルスプリング40の圧縮が解放され、リフィル10を軸A方向の後端側へ付勢する。これにより、リフィル10は後端側へ移動し、軸筒20内に収納される。
【0047】
一般に、軸筒20内にコイルスプリング40を配置するためには、配置する部分の軸筒20の内径を大きくする必要があり、軸筒20の外径もその分大きくなる。本実施形態では、
図3等に示すように、コイルスプリング40を軸筒20の軸A方向の後端側(第2規制部24よりも後端側)に配置することにより、軸筒20の先端部分の外径を小さくでき、筆記時における視認性を確保できる。さらに、後述のように、第3規制部26及びコイルスプリング40により、出没動作時にリフィル10が軸筒20の内部で引っかからない構造を実現できる。
【0048】
さらに本実施形態では、
図3、
図6(a)等に示すように、軸筒20のペン先を保持する先端部分は、第1規制部22及び第2規制部24の内径に合わせ肉厚が略均一で、外径形状が軸方向の後端側に向けて段状に拡径する形状となっている。例えば、
図6(b)に示すような、軸筒の先端部分の外径形状が軸方向の後端側に向けて軸中心から外側に膨らむ曲線形状である軸筒と比較した場合、軸筒20の先端部分の外径をより細くできる。したがって、本実施形態のボールペン100は、筆記時における視認性をより確保できる好ましい形状となっている。
【0049】
図5は、本実施形態のボールペン100において、ペン先部121が突出し、かつ、軸A方向に対してリフィル10が傾いた状態の先端部分の断面拡大図である。
図5に示すように、実施形態のボールペン100は、リフィル10が軸A方向に対して交差する方向に動いて傾いている。そのため、リフィル10の軸Bが軸筒20の軸Aと交差している。このような状態において、空間30内でインク収容部13の先端部分(継手131の小径部131c)の外周面が第2規制部24に当接し、チップ中央部124の外周面が第1規制部22に当接している。第2規制部24は、軸A方向において、その後端が軸筒20の先端から後端側に20mm以内の位置に設けられている。
図5では、当接している箇所を二点鎖線の円P1,P2で示している。また、本実施形態では、インク収容部13の第2規制部24に当接する箇所は、圧入されたチップ側接続部125が内在している。
このように第1規制部22及び第2規制部24により、リフィル10の傾きを規制できるので、ボールペン100は、筆記時のペン先のがたつきやしなりを大幅に改善することができる。
【0050】
図6は、出没式ボールペン先のがたつきやしなりについて説明する図である。
図6(a)は、本実施形態のボールペン100を示し、
図6(b)は、比較例のボールペン100Bを示している。
図6では理解を容易にするために、リフィル10と規制部のみを、その形状等を大幅に簡略化して示している。
出没式のボールペンにおいて、突出状態でのペン先のがたつきには、軸筒の中心軸に対してリフィルの中心軸が平行を保って移動することによるがたつきや、軸筒の中心軸方向に対して交差する方向にリフィルが動いて傾くことによるがたつきがある。特に、後者の場合はペン先のがたつき、すなわち、軸筒の中心軸からのペン先のずれが大きい。
【0051】
比較例の出没式のボールペン100Bでは、その軸筒20B内において、
図6(b)に示すように、第2規制部24を設けずに、リフィル10を開口部の近傍の規制部22Bのみで規制している。このような形態の場合、第1規制部22の先端側と後端側の2か所(二点鎖線で示す円P1,P2)でリフィル10が当接しているが、当接する箇所の間の距離が短く、リフィル10の傾きを十分に規制できない。そのため、リフィル10の中心軸となる軸Bが軸筒20Bの軸Aに対して傾きやすく、ペン先部121の先端と軸Aとのずれとなる振れ幅Wも大きくなる。
【0052】
ここで、ペン先部121の先端の振れ幅Wは、
図6(a)(b)に示すように、ペン先が最大に傾斜した場合のペン先部121の先端(すなわち、ボール11の先端)と軸Aとの間の距離の2倍に相当する。この振れ幅Wが大きい方が、ペン先部121のがたつきやしなりが大きくなる傾向にある。一般的に、開口部21からペン先部121の抱持するボール11の先端までの軸A方向の距離(突出長さ)が大きいほど、筆記時の視認性が良好となるが、その分この振れ幅が大きくなり、がたつきやしなりが大きくなる。
【0053】
これに対して、
図6(a)に示す本実形態のボールペン100は、軸A方向に沿って第1規制部22と第2規制部24との2ヶ所で、リフィル10に対して軸A方向に交差する方向への動きを規制し、軸筒20の軸Aに対するリフィル10の軸Bの傾きを抑制する。このとき、第1規制部22と第2規制部24との2か所(二点鎖線で示す円P1,P2)でリフィル10が当接しており、当接している2か所の間の距離も十分得られている。これにより、ボールペン100は、ペン先部121の先端と軸A方向とのずれとなる振れ幅Wも低減され、ペン先部121のがたつきが抑制される。
【0054】
また、仮に、本実施形態と同様に、第1規制部22及び第2規制部24の2つの規制部を設けたとしても、2つの規制部の間の距離が短い場合や、各規制部の内径とその規制部が規制するリフィル10の部位の外径との径差が大きすぎる場合等は、ペン先部121のがたつきを十分に抑制できない。
【0055】
本実施形態では、リフィル10の軸A方向に交差する方向への動きを抑制してペン先部121のがたつきを抑制する観点から、突出状態において、軸筒20の軸A方向と直交する平面における第1規制部22の内径とチップ中央部124の外径の径差をC1とし、軸筒20の軸A方向と直交する平面における第2規制部24の内径とインク収容部13の外形、特に、インク収容部13の先端側となる継手131の小径部131cの外径との径差をC2とし、軸A方向における第1規制部22先端側の端部から第2規制部24の後端側の端部までの距離をLとするとき、ボールペン100は、以下の関係式を満たすものとした。
0.001≦((C1+C2)/2)/L≦0.05 ・・・(式1)
また、より好ましくは、以下の関係式を満たすものとした。
0.001≦((C1+C2)/2)/L≦0.03 ・・・(式2)
【0056】
このとき、径差C1,C2は、C1≦C2を満たすことが好ましい。
また、径差C1,C2、距離Lは、以下の数値範囲を満たすことが好ましい。
0<C1≦0.06mm
0<C2≦0.30mm
3mm≦L≦10mm
なお、径差C2、距離Lについては、以下の数値範囲を満たすことが、より好ましい。
0<C2≦0.20mm
5mm≦L≦8mm
この距離Lは、チップ部12を切削加工により製造する観点から、10mm以下であることが好ましく、8mm以下であることがより好ましい。
上記(式1)を満たすことにより、ボールペン100において、ペン先部121のがたつきを低減できる。そして、上記径差C1,C2、距離Lの好ましい数値範囲等を満たすことにより、さらにがたつきを低減する効果を高めることができる。
【0057】
次に、筆記時のペン先のしなりについて説明する。
一般に、チップ部12は、ステンレス製等の金属製であるため剛性が高い。一方、インク収容部13は、PP等の樹脂製であり、チップ部12に比して剛性が低い。
しかし、インク収容部13は、継手131のチップ固定孔131eに金属製であるチップ側接続部125が所定の寸法だけ圧入されており、チップ側接続部125が内在する部分は、インク収容部13の他の部位に比べて、硬く、剛性が高い。
本実施形態のボールペン100は、第1規制部22と第2規制部24にリフィル10を当接させて、軸A方向に交差する方向へのリフィル10の動きを規制する際に、
図5や
図6(a)に示すように、インク収容部13の上述したような剛性の高い部分が、第2規制部24と当接する。これにより、本実施形態のボールペン100は、筆記時のインク収容部13の変形によるしなりを大幅に低減できる。
【0058】
一方、インク収容部13のチップ側接続部125が内在する部分よりも後方の部分、すなわち、チップ側接続部125が内在しない部分は、樹脂製であり、剛性が低い。仮に、リフィル10が軸A方向に対して傾いた場合、このような剛性の低い部分が第2規制部24と当接すると、筆記時の荷重等により当接した部分が凹む等の変形が生じ、ペン先のしなりが大きく生じやすい。
【0059】
また、リフィル10を収容する軸筒20は、前述のように樹脂製である。
仮に、樹脂製の軸筒20において前述の距離Lが短い場合、筆記時にリフィル10が軸筒20に作用する力が大きくなる。そのため、軸筒20の凹みや撓み等の変形が生じやすく、筆記時にペン先がしなるような感触が生じ、快適な筆記の妨げとなる。
一方、距離Lが長い場合、筆記時にリフィル10が軸筒20に作用する力が小さくなり、軸筒20の変形も抑制され、筆記時のペン先のしなりが大幅に低減される効果が得られる。
【0060】
以上のことから、第2規制部24を備え、径差C1,C2の平均値である平均径差C=((C1+C2)/2)を小さくし、距離Lを長くすることで、筆記時のペン先のがたつきやしなりを低減できる。特に、平均径差Cとの距離Lの比C/L=((C1+C2)/2)/Lは、上述の(式1)を満たすことが、がたつきの低減の観点から好ましい。
また、リフィル10において剛性の高い部分、すなわち、インク収容部13のチップ側接続部125が内在する部分で第2規制部24に当接して、リフィルが軸A方向に交差する方向への動きを規制することにより、筆記時のペン先のしなりをさらに大幅に抑制できる。
【0061】
次に、本実施形態の実施例1~8に相当するボールペンと比較例1~5に相当するボールペンとを用意し、筆記時のがたつきやペン先のしなり感に関して評価した。これらのボールペンには、全て同じ黒色の油性インクを搭載した。
比較例1,2,3,5のボールペンは、いずれも第2規制部24を備えておらず、第1規制部22の長さ又は径差C1が異なる。
比較例4のボールペンは、第2規制部24を備えているが、前述の(式1)を満たしていない。
実施例1~8のボールペンは、第2規制部24を備え、かつ、(式1)を満たしている。さらに、実施例2~6,8のボールペンは、より好ましい範囲となる(式2)を満たしている。実施例1~8のボールペンは、径差C1,C2、平均径差C=(C1+C2)/2、距離L、比C/L等がそれぞれ異なる。
各実施例及び各比較例のボールペンの径差C1,C2や平均径差C、距離L等の数値は、後述する
図7の表に示す通りである。
【0062】
試験者がこれらの実施例1~8及び比較例1~5のボールペンを用いて上質紙に手書きで筆記し、筆記時のがたつきやペン先の剛性感を評価した。この剛性感とは、筆記時のペン先のしなりに相当するものであり、ペン先のしなりが小さいと剛性感が高いと評価し、しなりが大きいと剛性感が低いと評価した。
【0063】
図7は、実施例1~8及び比較例1~5のボールペンの筆記時のがたつきや剛性感(しなり)の評価を示す表である。
図7に示す表において、ペン先部の突出長さとは、突出状態において、軸A方向に沿って、開口部21からペン先部121の先端までの距離である。また、平均径差Cは、小数点以下第3位を四捨五入している。
【0064】
図7に示す表において、がたつきに関する評価は、がたつきを全く感じないものを優として「◎」で示し、がたつきをほぼ感じないものを良として「〇」で示し、がたつきを少し感じるものを可として「△」で示し、がたつきを大きく感じるものを不可として「×」で示した。また、
図7に示す表において、剛性感に関する評価は、剛性感が十分に感じられしなりを全く感じないものを優として「◎」で示し、剛性感がありしなりを感じないものを良として「〇」で示し、やや剛性感がなく少ししなりを感じるものを可として「△」で示し、剛性感がなくしなりを強く感じるものを不可として「×」で示した。
なお、がたつき及び剛性感について、それぞれ、可及び可以上となる良、優(
図7に示す表中の「△」,「〇」,「◎」)の評価を有するものが、快適な筆記が行える好ましいボールペンである。
【0065】
図7の表に示すように、第2規制部24を有しないが、径差C1が好ましい範囲を満たしている比較例1~3のボールペンは、筆記時のペン先のがたつきについては許容範囲であったが、ペン先の剛性感が低く、しなりが強く感じされ、快適な筆記が行えなかった。また、第2規制部24を有しておらず、径差C1が好ましい範囲よりも大きい比較例5のボールペンは、ペン先の剛性感がなく、しなりが強く感じられることに加え、ペン先のがたつきも大きく、快適な筆記が行えなかった。
【0066】
また、第2規制部24を備えるが、比C/Lが0.050よりも大きく(式1)を満たさない比較例4のボールペンは、ペン先のがたつきは許容範囲であったが、剛性感が低く、しなりが強く感じられ、快適な筆記が行えなかった。これは、比較例4のボールペンでは、実質的に第2規制部24を有しない状態と同様になったと考えられる。
【0067】
一方、(式1)を満たす実施例1~8のボールペンは、筆記時のペン先のがたつきや剛性感は良好、もしくは許容範囲内であり、快適な筆記が行えた。
さらに(式2)を満たす実施例2~6,8のボールペンは、実施例1,7のボールペンに比べて剛性感の評価が高かった。
特に、実施例2~4のボールペンは、径差C1が好ましい範囲を満たし、径差C2及び距離Lがより好ましい範囲を満たしており、がたつきが大きく低減され、剛性感も高くしなりが大きく改善されていた。中でも、実施例3のボールペンは、がたつき、剛性感について、最も良好であった。
【0068】
径差C1が好ましい範囲よりも大きい実施例5のボールペンは、がたつきが実施例1~4のボールペンと比べてやや大きかったが、径差C1が同じ大きさで第2規制部がない比較例5に比べると、がたつきが低減されていた。また、実施例5のボールペンは、しなりが少なく、剛性感が改善されていた。
また、径差C2が好ましい範囲よりも大きく(式1)を満たす実施例7のボールペンは、第2規制部24によるリフィル10の支持がやや弱く、剛性感が実施例2~6のボールペンと比べて低かったが、径差C1が同じ大きさの比較例4と比べるとがたつき、剛性感が改善されていた。
また、実施例8は、径差C1,C2の好ましい大小関係を満たしておらず、がたつきに関しては、許容範囲ではあるがやや低かった。
【0069】
以上のことから、本実施形態のボールペン100は、第2規制部24を備え、かつ、上述の(式1)を満たすので、筆記時のペン先のがたつきやしなりが低減された快適な筆記を行うことができる。
さらに、本実施形態のボールペン100は、上述の(式2)を満たすボールペンとすることにより、筆記時のペン先のがたつきやしなりをさらに低減でき、より快適な筆記を行うことができる。
また、径差C1が、0<C1≦0.06mmを満たすことにより、筆記時のペン先のがたつきを低減する効果をさらに高めることができる。
また、径差C2が、0<C2≦0.30mmを満たすことにより、筆記時のペン先のしなりを低減する効果をさらに高めることができ、0<C2≦0.20mmを満たすことにより、より一層ペン先のしなりを低減する効果を高めることができる。
【0070】
図8は、突出過程のリフィル10及び軸筒20の様子を示す断面図である。
図8に示す断面は、
図3に示す領域R1の断面図及び
図4に示す領域R2の断面図と同様の領域の断面図である。
ボールペン100では、収納状態において、リフィル10は軸筒20の空間30内に収納されており、前述の
図4に示すように、軸A方向において、ペン先部121の先端(ボール11)は、第1規制部22内に位置し、チップ中央部124は、第2規制部24内に位置し、インク収容部13は、第3規制部26よりも後端側に位置している。
【0071】
出没機構によりリフィル10が軸A方向に沿って先端側へ移動する際、まず
図8に示すように、インク収容部13の先端部分131aが、第3規制部26内に進入する。そして、第3規制部26及びコイルスプリング40により、インク収容部13は、軸A方向に交差する方向の動きが規制される。これにより、リフィル10は、その中心軸Bが、軸筒20の軸Aに一致した状態又は略一致したと見なせる状態に揃えられる。
【0072】
次に、インク収容部13の先端部分131aは、第2規制部24内に進入する。前述のように、インク収容部13は、コイルスプリング40及び第3規制部26により、軸A方向に交差する方向の動きを規制され、リフィル10の軸Bが軸筒20の軸Aに一致した状態又は略一致したと見なせる状態に揃えられる。また、コイルスプリング40の内径は、第2案内部25の後端での内径以下である。したがって、インク収容部13の先端部分131aは、第2規制部24や第2案内部25に引っかかることなく先端側へ移動する。なお、本実施形態とは異なり、第2案内部25が設けられていない軸筒20の場合、コイルスプリング40の内径は、第2規制部24の内径以下とすると、同様に、インク収容部13の先端部分131aが第2規制部24に引っかかることなく先端側へ移動する。
【0073】
次に、さらにリフィル10が先端側へ移動し、チップ中央部124より先端側の斜面127が第1案内部23内に進入する。そして、ペン先部121は、第1規制部22を通過し、ペン先部121及びチップ中央部124の先端側の一部が開口部21から突出し、前述の
図1や
図3に示すような突出状態となる。
【0074】
上述のように、突出過程において、チップ部12よりも後端側の部分であるインク収容部13で、リフィル10の軸A方向に交差する方向の動きを規制し、リフィル10の軸B方向と軸筒20の軸Aとを揃えた後に、第1案内部23にチップ中央部124の先端部分が進入するので、チップ中央部124の先端部分が第1案内部23に引っかかることなく、リフィル10の突出動作をスムーズに行える。
【0075】
本実施形態のようなニードル型のペン先部121を有するボールペンは、筆記時のペン先周辺の視認のしやすさ等から需要が広まっている。このようなニードル型のペン先部を備えるリフィルの場合、ニードル部分の長さ(ニードル長)を切削可能な範囲で長くするために、ペン先部121の後端側に隣接する斜面127が軸A方向となす角度を45°以上とする必要がある。本実施形態でも前述のようにその斜面127が軸A方向となす角度は、45°以上となっている。
【0076】
このようなペン先部を有する出没式のボールペンでは、突出過程において、リフィル10が軸筒20の軸A方向に対して交差する方向に動いてリフィル10の軸Bが軸Aに対して傾き、第2規制部24から第1規制部22への縮径による段差部分や第1案内部23に斜面127が当たり、これが操作部50の操作時に引っかかりとして使用者に知覚される場合がある。このような引っかかりは、斜面127が急峻である場合により生じやすく、操作部50の操作感や出没動作の滑らかさを損なうため好ましくない。
【0077】
これに対して、本実施形態では、上述のように、リフィル10の突出過程において、チップ中央部124の先端部分が第1案内部23に進入する前に、軸A方向において後端側となる第3規制部26及びコイルスプリング40により、インク収容部13の軸A方向に交差する方向の動きを規制する。これにより、軸筒20の軸Aに対するリフィル10の軸Bの傾斜を抑制できる。
【0078】
したがって、本実施形態のボールペン100は、引っかかりのない良好な出没動作が行える。また、本実施形態のボールペン100は、斜面127がリフィル10の長手方向となす角度が45°以上となるようなニードル型のペン先部121においても、滑らかな出没動作を行うことができ、ペン先部の形状によらず滑らかな出没動作を実現できる。さらに、本実施形態のボールペン100は、リフィル10の突出過程において、リフィル10の軸Aに対する傾きを抑制できるので、ペン先のがたつき抑制効果をさらに高めることができる。
【0079】
以上述べたように、本実施形態によれば、ペン先部121のがたつきやしなりを抑制し、良好な筆記感を有するボールペン100を実現できる。また、本実施形態によれば、出没式のボールペン100において、引っかかりなく良好なペン先(リフィル10)の出没動作が可能となる。
【0080】
(変形形態)
以上説明した実施形態に限定されることなく、種々の変形や変更が可能であって、それらも本発明の範囲内である。
【0081】
(1)実施形態において、リフィル10の突出過程において、第2案内部25にインク収容部13の先端部分131aが進入した後、チップ中央部124の先端部分が第1案内部23に進入する形態としてもよい。
このような形態とする場合にも、スムーズな出没動作を行える出没式のボールペン100とすることができる。
【0082】
(2)実施形態において、第1規制部22、第2規制部24、第3規制部26について、内周面に径方向に突出した複数の凸部を有する形態としてもよい。
図9は、変形形態の第1規制部22の一例を示す図である。
図9に示すように、例えば、第1規制部22の軸A方向に直交する断面形状が、円形であって、かつ、軸A側に突出し、軸A方向に所定の寸法で設けられた凸部221が周方向に沿って複数配列された形態としてもよい。
【0083】
このような形態とする場合、第1規制部22の内径とは、第1規制部22の最大内接円の径であるとする。第2規制部24、第3規制部26、第1案内部23、第2案内部25についても同様である。
また、第1規制部22、第2規制部24、第3規制部26、第1案内部23、第2案内部25の軸A方向に直交する断面形状が例えば六角形等の多角形である場合についても、内径とは、その多角形の最大内接円の径であるとする。
また、リフィル10の外径についても、リフィル10の軸方向に平行な断面の形状が多角形である場合等には、最小外接円の径を外径とする。
【0084】
(3)実施形態において、第1規制部22及び第2規制部24は、軸A方向において所定の寸法を有する例を示したが、これに限らず、軸Aに対して交差する方向に動いたリフィル10に点で当接するような凸状の規制部としてもよい。
【0085】
なお、本実施形態及び変形形態は、適宜組み合わせて用いることもできるが、その詳細な説明は省略する。また、本発明は、以上説明した実施形態等によって限定されることはない。
【符号の説明】
【0086】
100 ボールペン
10 リフィル
11 ボール
12 チップ部
121 ペン先部
124 チップ中央部
125 チップ側接続部
127 斜面
13 インク収容部
131 継手
131a 先端部分
131b 前面
131c 小径部
131d 拡径部
131e チップ固定孔
132 インク収容管
20 軸筒
21 開口部
22 第1規制部
23 第1案内部
24 第2規制部
25 第2案内部
26 第3規制部
30 空間
40 コイルスプリング