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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024113431
(43)【公開日】2024-08-22
(54)【発明の名称】廃棄物焼却設備
(51)【国際特許分類】
   F23G 5/00 20060101AFI20240815BHJP
   F23C 9/08 20060101ALI20240815BHJP
   F23L 7/00 20060101ALI20240815BHJP
   F23G 5/44 20060101ALI20240815BHJP
   F23J 15/00 20060101ALI20240815BHJP
   F23G 7/06 20060101ALI20240815BHJP
   F23C 99/00 20060101ALI20240815BHJP
【FI】
F23G5/00 Z
F23C9/08 402
F23L7/00 A ZAB
F23G5/44 F
F23J15/00 Z
F23G7/06 J
F23G7/06 E
F23C99/00 308
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023018400
(22)【出願日】2023-02-09
(71)【出願人】
【識別番号】000005119
【氏名又は名称】日立造船株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110847
【弁理士】
【氏名又は名称】松阪 正弘
(74)【代理人】
【識別番号】100136526
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 勉
(74)【代理人】
【識別番号】100136755
【弁理士】
【氏名又は名称】井田 正道
(72)【発明者】
【氏名】植田 全紀
(72)【発明者】
【氏名】安井 裕
(72)【発明者】
【氏名】飯阪 正俊
(72)【発明者】
【氏名】永森 稔朗
(72)【発明者】
【氏名】冨山 茂男
(72)【発明者】
【氏名】古林 通孝
(72)【発明者】
【氏名】原田 浩希
【テーマコード(参考)】
3K023
3K065
3K070
3K078
【Fターム(参考)】
3K023JA05
3K065AA01
3K065AB01
3K065AC01
3K065BA06
3K065GA03
3K065GA13
3K065GA22
3K065GA27
3K065TA01
3K065TB07
3K065TB15
3K065TC04
3K065TE06
3K070DA02
3K070DA04
3K070DA48
3K078AA06
3K078BA03
(57)【要約】
【課題】排ガスを再循環させる経路において、結露等の発生を抑制するとともに、メタネーション装置から排出されるガス中のメタン濃度を容易に向上する。
【解決手段】廃棄物焼却設備1は、焼却炉3から排出される排ガスが流れる排ガス流路4と、排ガス流路4に設けられる湿式洗煙塔43と、排ガス流路4における湿式洗煙塔43よりも下流側の取出位置P1に接続され、排ガス流路4を流れる排ガスの一部を再循環排ガスとして取り出して焼却炉3内に供給する再循環排ガスライン6と、再循環排ガスライン6を流れる再循環排ガスに対して高濃度酸素ガスを混合する酸素混合部66と、取出位置P1を通過して排ガス流路4を流れる排ガスと水素とを反応させてメタン含有ガスを生成するメタネーション装置51とを備える。焼却炉3内に供給される再循環排ガスが、焼却炉3内において廃棄物の焼却に利用される燃焼用ガスの主ガスである。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃棄物焼却設備であって、
廃棄物を焼却する焼却炉と、
前記焼却炉から排出される排ガスが流れる排ガス流路と、
前記排ガス流路に設けられる集じん器と、
前記排ガス流路において前記集じん器よりも下流側に配置され、水を含む液体を前記排ガスに噴霧する湿式洗煙塔と、
前記排ガス流路における前記湿式洗煙塔よりも下流側の取出位置に接続され、前記排ガス流路を流れる前記排ガスの一部を再循環排ガスとして取り出して前記焼却炉内に供給する再循環排ガスラインと、
前記再循環排ガスラインを流れる前記再循環排ガスに対して、空気よりも酸素濃度が高い高濃度酸素ガスを混合する酸素混合部と、
前記取出位置を通過して前記排ガス流路を流れる前記排ガスと水素供給源から供給される水素とを反応させてメタン含有ガスを生成するメタネーション装置と、
を備え、
前記焼却炉内に供給される前記再循環排ガスが、前記焼却炉内において前記廃棄物の焼却に利用される燃焼用ガスの主ガスである廃棄物焼却設備。
【請求項2】
請求項1に記載の廃棄物焼却設備であって、
前記焼却炉から前記メタネーション装置に至る前記排ガスの経路において、前記排ガスから二酸化炭素を分離する二酸化炭素分離部が設けられない廃棄物焼却設備。
【請求項3】
請求項1に記載の廃棄物焼却設備であって、
前記酸素混合部が、水を電気分解して酸素および水素を生成する水電解装置を備え、
前記高濃度酸素ガスが、前記水電解装置により生成される酸素を含み、
前記水電解装置が、前記水素供給源を兼ねる廃棄物焼却設備。
【請求項4】
請求項1に記載の廃棄物焼却設備であって、
前記排ガス流路における前記湿式洗煙塔よりも上流側の前記排ガスと、前記再循環排ガスラインを流れる前記再循環排ガスとの熱交換により、前記再循環排ガスを加熱する熱交換器をさらに備える廃棄物焼却設備。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1つに記載の廃棄物焼却設備であって、
前記メタネーション装置に流入する前記排ガスの酸素濃度を測定する酸素濃度測定部と、
前記排ガスの経路における前記取出位置と前記メタネーション装置との間において、前記排ガスよりも酸素濃度が低い希釈用ガスを前記排ガスに混合可能な希釈部と、
前記酸素濃度測定部による測定値が所定値以上となる場合に、前記希釈部により前記希釈用ガスを前記排ガスに混合させる制御部と、
をさらに備える廃棄物焼却設備。
【請求項6】
請求項5に記載の廃棄物焼却設備であって、
前記希釈用ガスが、前記メタン含有ガスを含む廃棄物焼却設備。
【請求項7】
請求項5に記載の廃棄物焼却設備であって、
前記メタン含有ガスから窒素を分離するガス分離装置をさらに備え、
前記希釈用ガスが、前記ガス分離装置にて分離された窒素を含む廃棄物焼却設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄物焼却設備に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、廃棄物焼却設備において、焼却炉から排出される排ガスから二酸化炭素を分離し、分離した二酸化炭素からメタンを生成することが試みられている。例えば、特許文献1の燃焼システムでは、燃焼装置から排出された排ガスから二酸化炭素が選択的に分離され、分離された二酸化炭素と、水電気分解装置で生成された水素とを用いてメタンガスが合成される。当該燃焼システムでは、燃焼装置から排出された排ガスの一部を燃焼装置に再循環させる排ガス再循環手段も設けられ、水電気分解装置で発生した酸素が、再循環排ガスに混合されて燃焼装置に供給される。
【0003】
特許文献2の処理装置では、燃焼室とメタネーション反応器とが燃焼排ガス移送ラインにより接続され、燃焼室から排出された排ガスが、ボイラ、減温塔、集塵装置およびスクラバを介してメタネーション反応器に移送される。集塵装置とスクラバとの間には、二酸化炭素戻りラインが接続され、二酸化炭素戻りラインにより排ガスの一部が燃焼室に戻される。また、電気分解装置により水から酸素および水素が生成され、生成された酸素が燃焼室に戻される排ガスに混合され、生成された水素がメタネーション反応器に供給される。メタネーション反応器に移送される水素の流量は、メタネーション反応器に流入する二酸化炭素の流量に基づいて制御される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-161757号公報
【特許文献2】特開2021-135024号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1の燃焼システムでは、発生する排ガスの主成分は二酸化炭素、水蒸気および余剰酸素となる。しかしながら、焼却炉(燃焼装置)から排出された排ガスを焼却炉に戻す(再循環させる)経路上に水を除去する構成が設けられていないため、当該経路を循環するガス中の水蒸気量が高くなる。排ガスの一部を焼却炉に戻す流路では、排ガスの温度が低下しやすいため、配管内やファン等において結露が発生し、腐食が生じる可能性がある。また、特許文献1の燃焼システムでは、高い水分濃度の影響により、排ガス中の二酸化炭素を高濃度にすることが困難であり、メタネーション装置(メタネーション反応器)から排出されるガス中のメタン濃度を高くするには、排ガスから二酸化炭素を分離してメタネーション装置に供給する構成が必須となる。特許文献2の処理装置では、焼却炉(燃焼室)と集じん装置との間に減温塔が設けられるが、減温塔を通過した排ガスはまだ高温であるため、水の除去が十分ではなく、特許文献1の場合と同様に、排ガスを再循環させる経路において、結露等が発生しやすくなる。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、排ガスを再循環させる経路において、結露等の発生を抑制するとともに、メタネーション装置から排出されるガス中のメタン濃度を容易に向上することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の態様1は、廃棄物焼却設備であって、廃棄物を焼却する焼却炉と、前記焼却炉から排出される排ガスが流れる排ガス流路と、前記排ガス流路に設けられる集じん器と、前記排ガス流路において前記集じん器よりも下流側に配置され、水を含む液体を前記排ガスに噴霧する湿式洗煙塔と、前記排ガス流路における前記湿式洗煙塔よりも下流側の取出位置に接続され、前記排ガス流路を流れる前記排ガスの一部を再循環排ガスとして取り出して前記焼却炉内に供給する再循環排ガスラインと、前記再循環排ガスラインを流れる前記再循環排ガスに対して、空気よりも酸素濃度が高い高濃度酸素ガスを混合する酸素混合部と、前記取出位置を通過して前記排ガス流路を流れる前記排ガスと水素供給源から供給される水素とを反応させてメタン含有ガスを生成するメタネーション装置とを備え、前記焼却炉内に供給される前記再循環排ガスが、前記焼却炉内において前記廃棄物の焼却に利用される燃焼用ガスの主ガスである。
【0008】
本発明の態様2は、態様1の廃棄物焼却設備であって、前記焼却炉から前記メタネーション装置に至る前記排ガスの経路において、前記排ガスから二酸化炭素を分離する二酸化炭素分離部が設けられない。
【0009】
本発明の態様3は、態様1(態様1または2であってもよい。)の廃棄物焼却設備であって、前記酸素混合部が、水を電気分解して酸素および水素を生成する水電解装置を備え、前記高濃度酸素ガスが、前記水電解装置により生成される酸素を含み、前記水電解装置が、前記水素供給源を兼ねる。
【0010】
本発明の態様4は、態様1(態様1ないし3のいずれか1つであってもよい。)の廃棄物焼却設備であって、前記排ガス流路における前記湿式洗煙塔よりも上流側の前記排ガスと、前記再循環排ガスラインを流れる前記再循環排ガスとの熱交換により、前記再循環排ガスを加熱する熱交換器をさらに備える。
【0011】
本発明の態様5は、態様1ないし4のいずれか1つの廃棄物焼却設備であって、前記メタネーション装置に流入する前記排ガスの酸素濃度を測定する酸素濃度測定部と、前記排ガスの経路における前記取出位置と前記メタネーション装置との間において、前記排ガスよりも酸素濃度が低い希釈用ガスを前記排ガスに混合可能な希釈部と、前記酸素濃度測定部による測定値が所定値以上となる場合に、前記希釈部により前記希釈用ガスを前記排ガスに混合させる制御部とをさらに備える。
【0012】
本発明の態様6は、態様5の廃棄物焼却設備であって、前記希釈用ガスが、前記メタン含有ガスを含む。
【0013】
本発明の態様7は、態様5(態様5または6であってもよい。)の廃棄物焼却設備であって、前記メタン含有ガスから窒素を分離するガス分離装置をさらに備え、前記希釈用ガスが、前記ガス分離装置にて分離された窒素を含む。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、排ガス流路および再循環排ガスラインにおいて、結露等の発生を抑制することができる。また、排ガスの二酸化炭素濃度を高くして、メタネーション装置から排出されるガス中のメタン濃度を容易に向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】ごみ焼却設備の構成を示すブロック図である。
図2】ごみ焼却設備の他の例を示す図である。
図3】ごみ焼却設備の他の例を示す図である。
図4】ごみ焼却設備の他の例を示す図である。
図5】ごみ焼却設備の他の例を示す図である。
図6】ごみ焼却設備の他の例を示す図である。
図7】ごみ焼却設備の他の例を示す図である。
図8】ごみ焼却設備の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、本発明の一の実施の形態に係るごみ焼却設備1の構成を示すブロック図である。ごみ焼却設備1は、廃棄物焼却設備であり、ごみピット2と、焼却炉3と、排ガス流路4と、制御部10とを備える。制御部10は、例えば、CPU等を備えるコンピュータであり、ごみ焼却設備1の全体制御を担う。ごみピット2は、廃棄物ピットであり、廃棄物であるごみを貯留する。焼却炉3は、例えば、ストーカ式であり、ごみピット2から投入されるごみを焼却する。排ガス流路4は、焼却炉3から排出される排ガスが流れる煙道である。図1の例では、排ガス流路4は、焼却炉3から後述の煙突45に至る流路である。図1では、焼却炉3と後述のボイラ管群41との間の矢印のみに符号4を付している。
【0017】
ごみ焼却設備1は、ボイラ管群41と、ろ過式集じん器42(以下、単に「集じん器42」という。)と、ガスガス熱交換器61と、湿式洗煙塔43と、誘引通風機44と、煙突45とをさらに備える。ボイラ管群41、集じん器42、ガスガス熱交換器61、湿式洗煙塔43、誘引通風機44および煙突45は、排ガス流路4に設けられ、排ガスの流れ方向における上流側から下流側に向かって(すなわち、焼却炉3から煙突45に向かって)順に配置される。
【0018】
ボイラ管群41は、焼却炉3から排出される排ガスを熱源として蒸気を生成する。集じん器42は、いわゆるバグフィルタであり、排ガスに含まれる飛灰をろ布により捕集する。集じん器42の上流側において、粉末状の排ガス処理薬剤が排ガスに供給され、集じん器42において飛灰と共に当該排ガス処理薬剤が捕集されてもよい。排ガス処理薬剤は、硫黄酸化物、塩化水素、ダイオキシン類、水銀化合物等の除去に利用される。集じん器42の出口における排ガスの温度は、例えば150℃~200℃である。集じん器42を通過した排ガスはガスガス熱交換器61に流入する。
【0019】
ガスガス熱交換器61は、集じん器42から排出される排ガスと、後述の再循環排ガスライン6を流れる再循環排ガスとの間で熱交換を行う。湿式洗煙塔43は、例えば、苛性ソーダ等のアルカリ薬剤および水を含む液体を排ガス中に噴霧する。これにより、排ガスの温度を、例えば30℃~70℃の略一定温度に低下させるとともに、排ガスに含まれる硫黄酸化物、塩化水素等を除去する。湿式洗煙塔43は、排ガス中の硫黄酸化物を除去する脱硫部であり、排ガス中の塩化水素を除去する脱塩部でもある。硫黄酸化物、塩化水素等を除去することで、配管や、後述のメタネーション装置51およびガス分離装置71の腐食の防止や装置の寿命を長くすることができる。既述のように、湿式洗煙塔43を通過した排ガスの温度は略一定であり、排ガスに含まれる水蒸気量(単位体積当たりの水蒸気量)も、当該温度における飽和水蒸気量にて略一定となる。誘引通風機44は、排ガス流路4において上流側から下流側へと向かうガスの流れ(すなわち、焼却炉3から煙突45へと向かうガスの流れ)を形成する。誘引通風機44を通過した排ガスは、煙突45から外部に排出される。
【0020】
ごみ焼却設備1は、再循環排ガスライン6と、ファン62と、酸素混合部66とをさらに備える。再循環排ガスライン6は、後述の再循環排ガスが流れる流路である。再循環排ガスライン6の一端は、排ガス流路4において湿式洗煙塔43よりも下流側の取出位置P1に接続される。図1の例では、取出位置P1は、湿式洗煙塔43と誘引通風機44との間の位置である。再循環排ガスライン6により、排ガス流路4を流れる排ガスの一部が再循環排ガスとして取り出される。排ガス流路4において、湿式洗煙塔43は取出位置P1よりも上流側に設けられるため、取出位置P1から取り出された再循環排ガスは、略一定の水蒸気量を有する。再循環排ガスライン6の他端は、焼却炉3に接続され、当該再循環排ガスが焼却炉3内に供給される。図1では、取出位置P1に接続する矢印のみに符号6を付している。
【0021】
再循環排ガスライン6には、既述のガスガス熱交換器61およびファン62が、設けられる。ごみ焼却設備1の一例では、再循環排ガスの流れにおける上流側から下流側に向かって(すなわち、取出位置P1から離れる方向に向かって)、ガスガス熱交換器61およびファン62が順に配置される。ガスガス熱交換器61では、湿式洗煙塔43にて温度が低下した再循環排ガスと、湿式洗煙塔43を通過前の排ガスとの熱交換が行われ、再循環排ガスが加熱される。これにより、再循環排ガスライン6において結露等の発生を抑制することができる。また、排ガスの流量が再循環排ガスの流量よりも多いため、再循環排ガスの温度を効率よく上昇させることが可能となる。ファン62は、再循環排ガスライン6の上流側から下流側へと向かう再循環排ガスの流れを形成する。再循環排ガスライン6では、再循環排ガスを加熱する予熱器が、必要に応じて設けられてもよい。
【0022】
酸素混合部66は、水電解装置67を備える。水電解装置67は、水の電気分解により酸素(O)と水素(H)とを生成する。酸素混合部66では、水電解装置67で生成された酸素を含むガスが、高濃度酸素ガスとして再循環排ガスライン6に供給され、再循環排ガスに混合される。高濃度酸素ガスは、水電解装置67で生成された酸素と、空気等の他のガスとを混合したものであってもよく、酸素のみを含むガスであってもよい。高濃度酸素ガスは、空気よりも酸素濃度(体積濃度)が高いガスである。高濃度酸素ガスの酸素濃度は、例えば、50%(体積%である。以下同様。)以上であり、好ましくは、65%以上であり、より好ましくは、80%以上であり、さらに好ましくは、100%である。
【0023】
再循環排ガスライン6では、高濃度酸素ガスの混合により、取出位置P1における排ガスよりも酸素濃度が高い再循環排ガスが得られ、燃焼用ガスとして焼却炉3に供給される。燃焼用ガスは、焼却炉3におけるごみの燃焼に利用される。なお、酸素混合部66では、ダンパ等を利用して、再循環排ガスに対する高濃度酸素ガスの混合量が変更可能である。一方、水電解装置67で生成された水素は、後述のメタネーション装置51に供給される。再循環排ガスライン6において、ガスガス熱交換器61およびファン62の順序や高濃度酸素ガスの混合位置は任意に決定されてよい。
【0024】
ごみ焼却設備1の通常運転では、好ましくは、高濃度酸素ガスが混合された再循環排ガス以外の燃焼用ガス(空気等)は、焼却炉3内にほとんど供給されず、より好ましくは、焼却炉3内にガス管を介して供給される燃焼用ガスは、再循環排ガスのみである。これにより、ごみ焼却設備1において煙突45から排出される排ガス量を大幅に低減することが可能となる。また、燃焼用ガスとして空気がほとんど供給されないため、排ガスおよび再循環排ガスにおける窒素(N)濃度は低くなり、二酸化炭素(CO)濃度が高くなる。一例では、定常状態において、排ガスおよび再循環排ガスにおける二酸化炭素濃度が、50%程度となり、窒素濃度よりも高くなる。したがって、焼却炉3では、二酸化炭素濃度が高い雰囲気にてごみの燃焼が行われる。このような雰囲気でのごみの燃焼では、窒素酸化物(NOx)の生成が抑制されると考えられる。焼却炉3内に供給される再循環排ガスでは、例えば、二酸化炭素濃度が10~70%であり、窒素濃度が5~60%であり、酸素濃度が18~24%である。
【0025】
既述のように、好ましいごみ焼却設備1では、焼却炉3内にガス管を介して供給される燃焼用ガスは、再循環排ガスのみであるが、焼却炉3内に供給される再循環排ガスが、燃焼用ガスの主ガスであると捉えられる範囲において、燃焼用ガスの一部として少量の空気がガス管を介して(すなわち、漏れ込み空気等以外として)供給されてもよい。実際には、漏れ込み空気等(例えば、ごみの投入時にごみと共に入ってくる空気)も燃焼に利用される。燃焼用ガスの主ガスは、例えば、当該燃焼用ガスの50%以上のガスであり、好ましくは、65%以上のガスであり、より好ましくは、80%以上のガスであり、さらに好ましくは、当該燃焼用ガスの100%のガスである。なお、ごみ焼却設備1の稼働の初期には、燃焼用ガスとして空気が利用されてよい。系外から焼却炉3内に供給される空気の量を極力少なくして運転を続けることで、排ガスに含まれる窒素の量が徐々に減少し、メタネーション装置51に供給される排ガスの主な成分を二酸化炭素、水および余剰酸素にすることができる。このような運転をする場合、排ガスに含まれる二酸化炭素濃度が高くなるため、メタネーション装置51にて効率よく二酸化炭素を反応させることができる。
【0026】
ごみ焼却設備1は、排ガス供給ライン5と、メタネーション装置51と、酸素濃度測定部52と、接続ライン7と、ガス分離装置71と、希釈部8とをさらに備える。排ガス供給ライン5の一端は、排ガス流路4において取出位置P1の下流側に接続される。図1の例では、排ガス供給ライン5の一端は、誘引通風機44と煙突45との間に接続される。排ガス供給ライン5の他端は、メタネーション装置51に接続される。排ガス供給ライン5により、排ガス流路4を流れる排ガスの一部が取り出され、メタネーション装置51に供給される。後述するように、メタネーション装置51に供給される排ガスは、メタン(CH)の生成に利用されるため、以下、「原料排ガス」という。原料排ガスは、再循環排ガスライン6に流入することなく、取出位置P1を通過した排ガスである。酸素濃度測定部52は、排ガス供給ライン5を流れる原料排ガスの酸素濃度を測定する。酸素濃度測定部52による測定値は、既述の制御部10に出力される。
【0027】
メタネーション装置51は、原料排ガスに含まれる二酸化炭素と、水電解装置67から供給される水素とを反応させることにより、メタンを生成する。メタネーション装置51では、例えば、サバティエ反応により触媒を利用してメタンおよび水が合成される。生成されたメタンは、原料排ガスの残りの成分(未反応の二酸化炭素を含む。)、および、未反応の水素と共に、メタン含有ガスとしてメタネーション装置51から排出される。メタン含有ガスには、生成された水の全部または一部が水蒸気として含まれてよい。
【0028】
接続ライン7は、メタネーション装置51とガス分離装置71とを接続する。メタネーション装置51から排出されたメタン含有ガスは、接続ライン7を介してガス分離装置71に供給される。ガス分離装置71は、メタン含有ガスから窒素ガスを抽出する。ガス分離装置71は、例えば、PSA式の窒素ガス発生装置である。ごみ焼却設備1の定常状態では、メタン含有ガスに含まれる窒素ガスは、焼却炉3への漏れ込み空気や、焼却されるごみ等に由来する。窒素抽出後のメタン含有ガスは、高いメタン濃度を有し、各種燃料等として利用される。抽出された窒素ガスの一部は、後述の第1希釈ライン81に流入し、残りは、外部に排出される。窒素ガスの全部が、第1希釈ライン81に流入してもよく、外部に排出されてもよい。
【0029】
希釈部8は、第1希釈ライン81と、第2希釈ライン82とを備える。第1希釈ライン81の一端は、ガス分離装置71に接続され、窒素ガスが第1希釈ライン81に流入する。第1希釈ライン81の他端は、排ガス供給ライン5に接続される。第1希釈ライン81には、ダンパ86が設けられており、ダンパ86を開くことにより、窒素ガスが、排ガス供給ライン5を流れる原料排ガスに混合される。原料排ガスに混合される窒素ガスは、原料排ガスよりも酸素濃度が低い希釈用ガスである。ダンパ86の開度を調整することにより、窒素ガスの混合量が変更可能である。
【0030】
第2希釈ライン82の一端は、接続ライン7に接続され、他端は、排ガス供給ライン5に接続される。第2希釈ライン82には、ダンパ87が設けられており、ダンパ87を開くことにより、接続ライン7を流れるメタン含有ガスの一部が、排ガス供給ライン5を流れる原料排ガスに混合される。メタネーション装置51では、原料排ガスに含まれる酸素が水素と反応して水が生成されるため、原料排ガスに混合されるメタン含有ガスは、原料排ガスよりも酸素濃度が低い希釈用ガスである。ダンパ87の開度を調整することにより、メタン含有ガスの混合量が変更可能である。
【0031】
既述のように、メタネーション装置51には、水電解装置67から水素が供給されており、水素と混合される原料排ガスの酸素濃度が過度に高くなると、安全性等の観点から好ましくない。そこで、制御部10では、酸素濃度測定部52による酸素濃度の測定値が、予め定められた判定値(例えば、5~15%)以上となる場合に、原料排ガスが高酸素濃度状態であると判定され、原料排ガスにおける酸素を希釈する処理が行われる。
【0032】
高酸素濃度状態における第1の処理例では、第1希釈ライン81のダンパ86を開くことにより、ガス分離装置71により抽出された窒素ガスが、排ガス供給ライン5に供給され、原料排ガスに混合される。これにより、メタネーション装置51において水素と混合される原料排ガスの酸素濃度を低下させることが可能となる。窒素ガスの混合量は、原料排ガスの酸素濃度に応じて適宜変更される。酸素濃度測定部52による測定値が判定値未満となると、第1希釈ライン81のダンパ86を閉じることにより、窒素ガスの排ガス供給ライン5への供給が停止される。
【0033】
第2の処理例では、第2希釈ライン82のダンパ87を開くことにより、接続ライン7を流れるメタン含有ガスが、排ガス供給ライン5に供給され、原料排ガスに混合される。これにより、原料排ガスの酸素濃度を低下させることが可能となる。メタン含有ガスの混合量は、原料排ガスの酸素濃度に応じて適宜変更される。酸素濃度測定部52による測定値が判定値未満となると、第2希釈ライン82のダンパ87を閉じることにより、メタン含有ガスの排ガス供給ライン5への供給が停止される。第1および第2の処理例が組み合わされてもよく、この場合、原料排ガスに対して窒素ガスおよびメタン含有ガスが混合される。
【0034】
高酸素濃度状態では、メタネーション装置51におけるメタンの生成が停止されてもよい。例えば、排ガス供給ライン5にはダンパ(図示省略)が設けられており、当該ダンパを閉じることにより、メタネーション装置51への原料排ガスの供給が停止される。換言すると、誘引通風機44を通過した排ガスの全部が、煙突45から排出される。これにより、メタネーション装置51におけるメタンの生成が停止される。また、高酸素濃度状態において、酸素混合部66により再循環排ガスに混合する高濃度酸素ガスの量を低減することにより、原料排ガスの酸素濃度を低下させることも可能である。
【0035】
以上に説明したように、ごみ焼却設備1は、再循環排ガスライン6と、酸素混合部66とを備える。再循環排ガスライン6は、排ガス流路4における取出位置P1に接続され、排ガス流路4を流れる排ガスの一部を再循環排ガスとして取り出して焼却炉3内に供給する。酸素混合部66は、再循環排ガスライン6を流れる再循環排ガスに対して、空気よりも酸素濃度が高い高濃度酸素ガスを混合する。また、焼却炉3内に供給される再循環排ガスは、焼却炉3内においてごみの焼却に利用される燃焼用ガスの主ガスである。これにより、ごみ焼却設備1において、煙突45から排出される排ガス量を大幅に低減することが可能となる。また、ごみ焼却設備1は、取出位置P1を通過して排ガス流路4を流れる排ガス(原料排ガス)と水素供給源から供給される水素とを反応させてメタン含有ガスを生成するメタネーション装置51をさらに備える。このように、排ガスからメタンを生成することにより、煙突45から排出される排ガス量をさらに低減することが可能となる。
【0036】
ここで、図1のごみ焼却設備1において湿式洗煙塔43を省略した比較例のごみ焼却設備について述べる。比較例のごみ焼却設備では、焼却炉3から排出された排ガスが、排ガス流路4の取出位置P1、および、再循環排ガスライン6を通過して焼却炉3へと戻る循環経路において、水を除去する構成が設けられないため、循環経路を循環するガス中の水蒸気量が高くなる。再循環排ガスライン6では、排ガスの温度が低下しやすいため、配管内やファン62等において結露が発生し、腐食が生じる可能性がある。また、高い水分濃度の影響により、排ガス中の二酸化炭素を高濃度にすることが困難となるため、焼却炉3における二酸化炭素濃度が高い雰囲気でのごみの燃焼に支障が生じる場合がある。さらに、原料排ガスの二酸化炭素濃度を高くして、メタネーション装置51から排出されるガス中のメタン濃度を高くすることも困難となる。換言すると、メタネーション装置51から排出されるガス中のメタン濃度を向上するには、排ガスから二酸化炭素を分離する構成(二酸化炭素分離部)が必要となり、ごみ焼却設備の製造コスト、設置面積および消費電力が大きくなる。
【0037】
これに対し、図1のごみ焼却設備1では、排ガス流路4において、集じん器42よりも下流側に湿式洗煙塔43が設けられ、再循環排ガスライン6が接続される取出位置P1が、湿式洗煙塔43よりも下流側に配置される。湿式洗煙塔43は、水を含む液体を排ガスに噴霧して、排ガス流路4を流れる排ガスの温度を低くする。これにより、排ガスに含まれる水蒸気量を減少させることができ、循環経路を循環するガス中の水分濃度を低くすることができる。その結果、排ガス流路4および再循環排ガスライン6において、結露等の発生を抑制することができる。また、排ガスおよび再循環排ガスの二酸化炭素濃度を高くすることが可能となり、焼却炉3における二酸化炭素濃度が高い雰囲気でのごみの燃焼を実現するとともに、メタネーション装置51から排出されるガス中のメタン濃度を容易に向上することができる。
【0038】
既述のように、図1のごみ焼却設備1では、排ガスの二酸化炭素濃度を高くすることができるため、焼却炉3からメタネーション装置51に至る排ガスの経路において、排ガスから二酸化炭素を分離する二酸化炭素分離部が設けられない。その結果、ごみ焼却設備1の製造コスト、設置面積および消費電力を削減することができる。なお、ごみ焼却設備1の設計によっては、二酸化炭素分離部が設けられ、排ガスから分離された二酸化炭素がメタネーション装置51に供給されてもよい。
【0039】
好ましくは、酸素混合部66が、水を電気分解して酸素および水素を生成する水電解装置67を備える。また、高濃度酸素ガスが、水電解装置67により生成される酸素を含み、水電解装置67が、上記水素供給源を兼ねる。このように、水電解装置67では、高濃度酸素ガスに利用される酸素、および、メタンの生成に利用される水素を同時に生成することができ、ごみ焼却設備1の構成を簡素化することができる。
【0040】
好ましくは、ガスガス熱交換器61が設けられ、排ガス流路4における湿式洗煙塔43よりも上流側の排ガスと、再循環排ガスライン6を流れる再循環排ガスとの熱交換により、再循環排ガスが加熱される。これにより、湿式洗煙塔43において排ガスをより確実に所定の温度まで低下させることができ、排ガス中に含まれる硫黄酸化物、塩化水素等を効率よく除去することが可能となる。また、再循環排ガスを効率よく加熱して、再循環排ガスライン6における結露等の発生をさらに抑制するとともに、再循環排ガスを燃焼用ガスとして好適に利用することができる。
【0041】
好ましくは、ごみ焼却設備1が、酸素濃度測定部52と、希釈部8と、制御部10とをさらに備える。酸素濃度測定部52は、メタネーション装置51に流入する排ガス(原料排ガス)の酸素濃度を測定する。希釈部8は、排ガスの経路における取出位置P1とメタネーション装置51との間において、排ガスよりも酸素濃度が低い希釈用ガスを排ガスに混合可能である。制御部10は、酸素濃度測定部52による測定値が所定値以上となる場合に、希釈部8により希釈用ガスを排ガスに混合させる。これにより、メタネーション装置51に流入する排ガスの酸素濃度が過度に高くなることを防止することができる。
【0042】
好ましくは、上記希釈用ガスが、メタン含有ガスを含む。この場合、希釈用ガスを容易に準備することができるとともに、メタン含有ガスに含まれる未反応の二酸化炭素をメタンの生成に利用して、二酸化炭素の排出量をさらに削減することができる。
【0043】
好ましくは、ごみ焼却設備1が、メタン含有ガスから窒素を分離するガス分離装置71をさらに備え、上記希釈用ガスが、ガス分離装置71にて分離された窒素を含む。これにより、高濃度のメタンを含むガスを得ることができるとともに、希釈用ガスを容易に準備することができる。
【0044】
ごみ焼却設備1では、煙突45、ガスガス熱交換器61、ガス分離装置71等を省略することも可能である。メタネーション装置51におけるメタンの生成能力が高い場合には、図2の例のように、煙突45が省略され、誘引通風機44を通過した排ガスの全部が、原料排ガスとしてメタネーション装置51に供給される。湿式洗煙塔43に流入する排ガスの温度や、再循環排ガスライン6を流れる再循環排ガスの温度によっては、図3の例のように、ガスガス熱交換器61が省略され、排ガス流路4を流れる排ガスと再循環排ガスライン6を流れる再循環排ガスとの熱交換が行われない。メタン含有ガスにおいて求められるメタン濃度によっては、図4の例のように、ガス分離装置71が省略され、メタネーション装置51から排出されるメタン含有ガスがそのまま燃料等として利用される。図5では、煙突45およびガスガス熱交換器61を省略した例を示し、図6では、煙突45およびガス分離装置71を省略した例を示す。図7では、ガスガス熱交換器61およびガス分離装置71を省略した例を示し、図8では、煙突45、ガスガス熱交換器61およびガス分離装置71を省略した例を示す。
【0045】
上記ごみ焼却設備1では様々な変形が可能である。
【0046】
酸素混合部66は、水以外から酸素を生成するものであってもよく、例えば、空気から酸素を抽出するPSA式の酸素ガス発生装置が用いられてもよい。また、酸素を貯留するための酸素ガス貯留部であってもよい。酸素ガス貯留部は、例えば、ボンベ等のガス容器である。メタネーション装置51に水素を供給する水素供給源は、水素を貯留するボンベ等であってもよい。
【0047】
酸素濃度測定部52による酸素濃度の測定位置は、排ガス流路4に設けられてもよい。また、希釈部8による希釈用ガスの供給位置が、排ガス流路4において取出位置P1の下流側(取出位置P1と排ガス供給ライン5の接続位置との間)に設けられてもよい。原料排ガスの酸素濃度が過度に高くなることがない場合には、図1ないし図8のごみ焼却設備1において、酸素濃度測定部52および希釈部8が省略されてもよい。
【0048】
焼却炉3は、ストーカ式以外の焼却炉(例えば、流動床炉、キルン炉等)であってもよい。ごみ焼却設備1は、ごみ以外の一般廃棄物や、産業廃棄物を焼却する廃棄物焼却設備として利用されてよい。
【0049】
上記実施の形態および各変形例における構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わされてよい。
【符号の説明】
【0050】
1 ごみ焼却設備
3 焼却炉
4 排ガス流路
6 再循環排ガスライン
8 希釈部
10 制御部
42 集じん器
43 湿式洗煙塔
51 メタネーション装置
52 酸素濃度測定部
61 ガスガス熱交換器
66 酸素混合部
67 水電解装置
71 ガス分離装置
P1 取出位置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8