(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024113443
(43)【公開日】2024-08-22
(54)【発明の名称】環境への負荷が小さいポリアミド樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 77/00 20060101AFI20240815BHJP
C08L 1/02 20060101ALI20240815BHJP
C08J 11/16 20060101ALN20240815BHJP
【FI】
C08L77/00 ZAB
C08L1/02
C08J11/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023018424
(22)【出願日】2023-02-09
(71)【出願人】
【識別番号】000004503
【氏名又は名称】ユニチカ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】連 康一
(72)【発明者】
【氏名】友利 剛士
(72)【発明者】
【氏名】中井 美穂
【テーマコード(参考)】
4F401
4J002
【Fターム(参考)】
4F401AA24
4F401BA06
4F401CA67
4F401CA75
4F401EA04
4F401EA10
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(57)【要約】 (修正有)
【課題】機械的特性に優れつつも環境への負荷が小さいポリアミド樹脂組成物を提供する。
【解決手段】ポリアミド樹脂100質量部に対してセルロース繊維0.01~200質量部を含有するポリアミド樹脂組成物であって、ポリアミド樹脂中のケミカルリサイクルしたモノマー由来のポリアミド樹脂の含有量が0.1~100質量部であるポリアミド樹脂組成物、および、前記ポリアミド樹脂組成物を成形してなる成形体。本発明によれば、機械的特性に優れつつも環境への負荷が小さいポリアミド樹脂組成物を提供することができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアミド樹脂100質量部に対してセルロース繊維0.01~200質量部を含有するポリアミド樹脂組成物であって、
ポリアミド樹脂中のケミカルリサイクルしたモノマー由来のポリアミド樹脂の含有量が0.1~100質量部であるポリアミド樹脂組成物。
【請求項2】
請求項1に記載のポリアミド樹脂組成物を成形してなる成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環境への負荷が小さいポリアミド樹脂組成物に関する。詳しくは、セルロース繊維とケミカルリサイクルしたモノマー由来のポリアミド樹脂を含有するポリアミド樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラス繊維、炭素繊維、タルク、クレイ等の無機充填材で強化したポリアミド樹脂組成物は広く知られている。しかしながら、無機充填材等の強化材を用いる場合、無機充填材を多量に配合しないと機械的特性が改善しないという問題点がある。
【0003】
近年、樹脂材料の強化材としてセルロース繊維を用いることが検討されている。セルロース繊維には、樹木から得られるものや、稲、綿、ケナフ、バガス、アバカ、麻等の非木材資源から得られるものや、微生物が生産するバクテリアセルロース等がある。セルロース繊維は、地球上に非常に多量に存在しており、環境への負荷が小さい材料とされている。セルロース繊維は機械的特性に優れており、これをポリアミド樹脂に含有させることにより、ポリアミド樹脂組成物の機械的特性を向上させることができる。例えば、特許文献1には、セルロース繊維の水分散液と、ポリアミド樹脂を構成するモノマーとを混合し、溶融重合することで、機械的特性が向上したポリアミド樹脂組成物が得られることが開示されている。
【0004】
近年、環境への関心の高まりから、セルロース繊維だけでなく、ポリアミド樹脂も環境への負荷が小さい材料とすることが求められている。しかしながら、特許文献1のポリアミド樹脂組成物中のポリアミド樹脂は、石油由来の原料を用いており、環境への負荷低減が不十分であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開2011/126038号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、かかる点に鑑み、機械的特性に優れつつも環境への負荷が小さいポリアミド樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、セルロース繊維と、ケミカルリサイクルしたモノマーを用いることにより、上記目的が達成されることを見出し、本発明に到達した。
【0008】
本発明の要旨は、以下の通りである。
<1>ポリアミド樹脂100質量部に対してセルロース繊維0.01~200質量部を含有するポリアミド樹脂組成物であって、ポリアミド樹脂中のケミカルリサイクルしたモノマー由来のポリアミド樹脂の含有量が0.1~100質量部であるポリアミド樹脂組成物。
<2><1>に記載のポリアミド樹脂組成物を成形してなる成形体。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、機械的特性に優れつつも環境への負荷が小さいポリアミド樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[ポリアミド樹脂組成物]
本発明のポリアミド樹脂組成物はポリアミド樹脂およびセルロース繊維を含有する。
【0011】
本発明におけるポリアミド樹脂とは、アミノカルボン酸、ラクタムまたはジアミンとジカルボン酸によって形成されるアミド結合を有する重合体をいう。
【0012】
アミノカルボン酸としては、例えば、6-アミノカプロン酸、11-アミノウンデカン酸、12-アミノドデカン酸、パラアミノメチル安息香酸が挙げられる。
【0013】
ラクタムとしては、例えば、ε-カプロラクタム、エナントラクタム、カプリルラクタム、ラウリルラクタムが挙げられる。
【0014】
ジアミンとしては、例えば、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4-/2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン、5-メチルノナメチレンジアミン、2,4-ジメチルオクタメチレンジアミン、メタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1-アミノ-3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン、3,8-ビス(アミノメチル)トリシクロデカン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(3-メチル-4-アミノシクロヘキシル)メタン、2,2-ビス(4-アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(アミノプロピル)ピペラジンが挙げられる。
【0015】
ジカルボン酸としては、例えば、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、2-クロロテレフタル酸、2-メチルテレフタル酸、5-メチルイソフタル酸、5-ナトリウムスルホイソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、ジグリコール酸が挙げられる。
【0016】
ポリアミド樹脂としては、例えば、ポリカプロアミド(ポリアミド6樹脂)、ポリテトラメチレンアジパミド(ポリアミド46樹脂)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ポリアミド66樹脂)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ポリアミド610樹脂)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ポリアミド612樹脂)、ポリウンデカメチレンアジパミド(ポリアミド116樹脂)、ポリウンデカンアミド(ポリアミド11樹脂)、ポリドデカンアミド(ポリアミド12樹脂)、ポリトリメチルヘキサメチレンテレフタルアミド(ポリアミドTMHT樹脂)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド(ポリアミド6T樹脂)、ポリヘキサメチレンイソフタルアミド(ポリアミド6I樹脂)、ポリヘキサメチレンテレフタル/イソフタルアミド(ポリアミド6T/6I樹脂)、ポリビス(4-アミノシクロヘキシル)メタンドデカミド(ポリアミドPACM12樹脂)、ポリビス(3-メチル-4-アミノシクロヘキシル)メタンドデカミド(ポリアミドジメチルPACM12樹脂)、ポリメタキシリレンアジパミド(ポリアミドMXD6樹脂)、ポリノナメチレンテレフタルアミド(ポリアミド9T樹脂)、ポリデカメチレンテレフタルアミド(ポリアミド10T樹脂)、ポリウンデカメチレンテレフタルアミド(ポリアミド11T樹脂)、ポリウンデカメチレンヘキサヒドロテレフタルアミド(ポリアミド11T(H)樹脂)が挙げられる。ポリアミド樹脂は、前記ポリアミド樹脂の共重合体や混合物であってもよい。
【0017】
ケミカルリサイクルしたモノマーは、例えば、ポリアミド樹脂を含有する製品、原料素材製造や素材加工や製品組立て工程で発生する産業廃棄物、製品使用済み廃棄物等の原料、具体的には、衣料用や産業用の繊維構造物、繊維屑、工業用・家庭用の樹脂構造物、複層フィルムまたはこれらの樹脂屑等の原料を、通常、解重合、濃縮、蒸留をすることにより得ることができる。繊維構造物としては、例えば、ユニホーム、ストッキング、ニットウェアー、水着等の衣料品、漁網、タイヤコード、ロープ等の産業用資材、カーペット、カーテン等のインテリア用品が挙げられる。繊維屑としては、例えば、製造工程で生じるポリマー糸屑、布帛の裁断屑、使用済み製品屑が挙げられる。樹脂構造物としては、例えば、家電製品用部品、自動車用部品、住宅用部品等の家庭用品、機械用部品、パッケージ、フィルム等の工業用品が挙げられる。複層フィルムとしては、例えば、食品包装フィルム、ラミネートフィルム、透明蒸着フィルム、アルミ蒸着フィルム、コートフィルムが挙げられる。樹脂屑としては、例えば、製造工程で生じるポリマー成形屑、切り屑、使用済み製品屑が挙げられる。
【0018】
ケミカルリサイクルしたモノマーとしては、ポリアミド樹脂を形成できるモノマー、具体的には、アミノカルボン酸、ラクタムまたはジアミンとジカルボン酸いずれでもよいが、中でも、ラクタムが好ましく、ε-カプロラクタムがより好ましい。
【0019】
原料の解重合方法は特に限定されないが、例えば、原料を、水および触媒の存在下に加熱する方法が挙げられる。解重合温度は特に限定されないが、50~450℃とすることが好ましく、150~400℃とすることがより好ましく、220~400℃とすることがさらに好ましい。触媒は、解重合速度を高めるために用いられ、通常、酸触媒または塩基触媒が用いられる。酸触媒としては、例えば、リン酸、硫酸、固体酸およびこれらの塩が挙げられる。塩基触媒としては、例えば、アルカリ水酸化物、アルカリ塩、アルカリ土類水酸化物、アルカリ土類塩、有機塩基、固体塩基が挙げられる。触媒の使用量は特に限定されないが、原料中のポリアミド 100質量部に対して、0.1~100質量部とすることが好ましく、解重合速度の低下防止、精製コストの低減および副反応生成物の増加防止の観点から、1~50質量部とすることがより好ましく、1~10質量部とすることがさらに好ましい。水の使用量は特に限定されないが、原料中のポリアミド 100質量部に対して、10~5000質量部とすることが好ましく、解重合速度の低下防止および水溶液中のモノマー濃度の低下防止の観点から、5~2000質量部とすることがより好ましい。解重合は、連続式でおこなってもよいし、バッチ式でおこなってもよい。
【0020】
解重合したものの濃縮方法は特に限定されないが、例えば、水を蒸留除去する方法や、逆浸透膜で濃縮する方法が挙げられる。濃縮は、減圧下、加熱下いずれでおこなってもよい。
【0021】
濃縮したものの蒸留方法は特に限定されないが、例えば、単蒸留する方法、薄膜蒸留する方法、精留する方法が挙げられる。
【0022】
ポリアミド樹脂中のケミカルリサイクルしたモノマー由来のポリアミド樹脂の含有量は、0.1~100質量%とすることが必要で、5~100質量%とすることが好ましく、10~100質量%とすることがより好ましい。
【0023】
本発明に用いるセルロース繊維としては、例えば、木材、稲、綿、ケナフ、バガス、アバカ、麻に由来するものが挙げられる。その他に、バクテリアセルロース、バロニアセルロース、ホヤセルロース等の生物由来のものも挙げられる。また、再生セルロース、セルロース誘導体も挙げられる。機械的特性およびセルロース繊維分散均一性のさらなる向上の観点から、セルロース繊維は、木材に由来するセルロース繊維であることが好ましい。
【0024】
本発明のポリアミド樹脂組成物は、セルロース繊維を均一に含有することによって、機械的特性を向上することができる。機械的特性をより十分に向上させるには、セルロース繊維を凝集させることなく、樹脂中により均一に分散させることが好ましい。セルロース繊維は、ポリアミド樹脂と接するセルロース繊維表面の水酸基が多いほど分散しやすいため、全体としての表面積が大きいことが好ましい。このため、セルロース繊維は、できるだけ微細化されたものが好ましい。なお、用いるセルロース繊維としては、最終的に樹脂組成物中に均一に分散できるものであれば、化学的に未変性のものでも、化学的に変性させたものでも、いずれでもよい。
【0025】
セルロース繊維の平均繊維径は、機械的特性およびセルロース繊維分散均一性のさらなる向上の観点から、10μm以下であることが好ましく、500nm以下であることがより好ましく、200nm以下であることがさらに好ましく、150nm以下であることが特に好ましく、120nm以下であることが最も好ましい。一方、平均繊維径の下限は特に限定されないが、セルロース繊維の生産性の観点から、4nmであることが好ましい
【0026】
本発明の樹脂組成物におけるセルロース繊維のアスペクト比(平均繊維長/平均繊維径)は、10以上であることが好ましく、30以上であることがより好ましく、40以上であることがさらに好ましく、50以上であることが特に好ましく、100以上であることが最も好ましい。アスペクト比が10以上であることにより、ポリアミド樹脂組成物の機械的特性がより向上する。
【0027】
本発明においては、樹脂組成物におけるセルロース繊維の平均繊維径および平均繊維長はそれぞれ、樹脂組成物を用いて得られた成形体における平均繊維径および平均繊維長を指す。
【0028】
セルロース繊維の平均繊維径を10μm以下とするためには、ポリアミド樹脂に配合するセルロース繊維として、平均繊維径が10μm以下のものを用いることが好ましい。平均繊維径が10μm以下のセルロース繊維は、セルロース繊維を裂いてミクロフィブリル化することによって得ることができる。ミクロフィブリル化する手段としては、ボールミル、石臼粉砕機、高圧ホモジナイザー、ミキサー等の、各種粉砕装置を挙げることができる。ミクロフィブリル化したセルロース繊維の水分散液の市販品としては、例えば、ダイセルミライズ社製の「セリッシュ」が挙げられる。
【0029】
セルロース繊維として、セルロース繊維を用いた繊維製品の製造工程において、屑糸として出されたセルロース繊維の集合体を用いることもできる。繊維製品の製造工程とは、例えば、紡績時、織布時、不織布製造時、そのほか繊維製品の加工時が挙げられる。これらのセルロース繊維の集合体は、セルロース繊維がこれらの工程を経た後に屑糸となったものであるため、セルロース繊維が微細化したものとなっている。
【0030】
セルロース繊維として、バクテリアが産出するバクテリアセルロースを挙げることもできる。バクテリアセルロースとしては、例えば、アセトバクター属の酢酸菌を生産菌として産出されたものが挙げられる。植物のセルロースは、セルロースの分子鎖が収束したもので、非常に細いミクロフィブリルが束になって形成されている。これに対し、酢酸菌により産出されたセルロースは、もともと幅20~50nmのリボン状であり、植物のセルロースと比較すると極めて細い網目状を形成する。バクテリアセルロースは、バクテリアが前記セルロースとともに酢酸を産出するため、酢酸と併存することがある。その場合は、溶媒を水に置換することが好ましい。
【0031】
セルロース繊維として、微細化セルロースを挙げることもできる。微細化セルロースは、例えば、N-オキシル化合物と共酸化剤と臭化アルカリ金属とを含む水溶液中で、セルロース繊維を酸化させた後、水洗、解繊をおこなうことにより、製造することができる。N-オキシル化合物としては、例えば、2,2,6,6-Tetramethylpiperidine-1-oxylradicalが挙げられる。共酸化剤としては、例えば、次亜塩素酸ナトリウムや亜塩素酸ナトリウムが挙げられる。セルロース繊維の酸化反応は、水酸化ナトリウム水溶液等のアルカリ性の化合物を添加してpHを10付近としてから、pHの変化が見られなくなるまでおこなう。反応温度は、常温が好ましい。反応後、系内に残存するN-オキシル化合物や共酸化剤や臭化アルカリ金属を除去することが好ましい。水洗方法としては、ろ過や遠心分離による方法が挙げられる。解繊方法としては、上記のミクロフィブリル化する際の装置として例示された各種粉砕装置による方法が挙げられる。
【0032】
セルロース繊維は、セルロース由来の水酸基がいかなる置換基によっても変性されていない未変性のセルロース繊維であってもよいし、セルロース由来の水酸基(特にその一部)が変性(または置換)された変性セルロース繊維であってもよい。セルロース由来の水酸基に導入される置換基としては特に限定されないが、例えば、親水性の置換基、疎水性の置換基が挙げられる。変性セルロース繊維において、置換基により変性(または置換)される水酸基は、セルロース由来の水酸基のうちの一部であり、その置換度は、0.05~2.0であることが好ましく、0.1~1.0であることがより好ましく、0.1~0.8であることがさらに好ましい。なお、置換度とは、セルロースを構成する単位構造(グルコピラノース環)あたりの導入された置換基の個数を表す。すなわち、「導入された置換基のモル数を、グルコピラノース環の総モル数で割った値」として定義される。純粋なセルロースは単位構造(グルコピラノース環)あたり3個の置換可能な水酸基を有しているため、本発明のセルロース繊維の置換度の理論最大値は3、理論最小値は0である。親水性の置換基としては、例えば、カルボキシル基、カルボキシメチル基、リン酸エステル基が挙げられる。疎水性の置換基としては、例えば、シリルエーテル基、アルキルエーテル基、アルキルエステル基が挙げられる。
【0033】
本発明のポリアミド樹脂組成物におけるセルロース繊維の含有量は、ポリアミド樹脂100質量部に対して、0.01~200質量部とすることが必要で、1~100質量部とすることが好ましく、1.5~100質量部とすることがより好ましい。セルロース繊維の含有量がポリアミド樹脂100質量部に対して0.01質量部未満である場合、機械的特性を向上することができない。一方、セルロース繊維の含有量がポリアミド樹脂100質量部に対して200質量部を超える場合、セルロース繊維を樹脂組成物中に含有させることが困難であったり、得られた樹脂組成物に着色が生じたりする場合がある。
【0034】
本発明のポリアミド樹脂組成物を、後述するような本発明の製造方法で得ることにより、セルロース繊維の含有量が少量であっても、多量であっても、セルロース繊維を分離させることなく、ポリアミド樹脂中に均一に分散させることができるので、機械的特性が向上する。
【0035】
本発明のポリアミド樹脂組成物は、その特性を大きく損なわない限りにおいて、顔料、熱安定剤、酸化防止剤、耐候剤、可塑剤、滑剤、離型剤、帯電防止剤、耐衝撃剤、難燃剤、相溶化剤等の添加剤を含有していてもよい。
【0036】
本発明のポリアミド樹脂組成物は、その特性を大きく損なわない限りにおいてポリアミド樹脂以外の他の重合体を含有していてもよい。他の重合体としては、例えば、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリ(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン)共重合体、液晶ポリマー、ポリアセタール、エラストマーが挙げられる。
【0037】
本発明のポリアミド樹脂組成物は、成形体とした場合の曲げ弾性率が3.2GPa以上であることが好ましく、3.5GPa以上であることがより好ましく、5.0GPa以上であることがさらに好ましい。曲げ弾性率は、ISO178に準拠して測定された値を用いている。
【0038】
本発明のポリアミド樹脂組成物は、数平均分子量が15000以上であることが好ましく、20000以上であることがより好ましい。数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィ装置を用いて、ポリメチルメタクリレートを標準資料として作成した検量線を用いて計算した値を用いている。
【0039】
本発明のポリアミド樹脂組成物は、環境負荷指数が70以下であることが好ましく、50以下であることがより好ましく、30以下であることがさらに好ましい。環境負荷指数とは、環境への負荷が小さい材料のみを用いた場合を「0」、石油由来の原料のみを用いた場合を「100」として、後述する式に基づいて計算された値である。
【0040】
[ポリアミド樹脂組成物の製造方法]
本発明のポリアミド樹脂組成物は、例えば、ポリアミド樹脂を構成するモノマーと、セルロース繊維の水分散液とを均一に混合した混合分散液を、溶融重合法または低温重合法により重合反応をおこなって製造することができる。
【0041】
セルロース繊維の水分散液は、精製水とセルロース繊維とをミキサー等で攪拌することにより得ることができる。水分散液中のセルロース繊維の含有量は、0.01~50質量%とすることが好ましく、1~30質量%とすることがより好ましい。
【0042】
溶融重合法とは、溶媒を用いることなく、「ポリアミド樹脂組成物の融点」以上の温度で重合反応をおこない、溶融状態でポリアミド樹脂を得る方法である。溶融重合法における重合温度は、例えば、ポリアミド6樹脂の場合、230~250℃であり、ポリアミド66樹脂の場合、250~290℃(特に280℃)である。溶融重合法における重合時間は、0.5~2時間とすることが好ましく、1~2時間とすることがより好ましい。
【0043】
低温重合法とは、溶媒を用いることなく、「ポリアミド樹脂組成物の融点」未満の温度で重合反応をおこない、固形状態(または固相状態)でポリアミド樹脂を得る方法である。低温重合法における重合温度は、例えば、ポリアミド6樹脂の場合、150~230℃であり、ポリアミド66樹脂の場合、190~275℃である。固相重合法における重合時間は、2時間以上とすることが好ましく、6~20時間とすることがより好ましく、6~14時間とすることがさらに好ましい。
【0044】
溶融重合法、低温重合法いずれの重合方法においても、必要に応じて重合触媒を添加してもよい。重合触媒としては、例えば、リン系化合物、亜リン酸、次亜リン酸ナトリウムが挙げられる。
【0045】
溶融重合法、低温重合法いずれの重合方法においても、必要に応じて末端封鎖剤を添加してもよい。重合触媒としては、例えば、リン系化合物、亜リン酸、次亜リン酸ナトリウムが挙げられる。末端封鎖剤としては、モノアミン、モノカルボン酸が挙げられる。モノアミンとしては、例えば、ステアリルアミン、オクチルアミン、シクロヘキシルアミン、アニリンが挙げられる。モノカルボン酸としては、例えば、酢酸、ラウリン酸、ステアリン酸、安息香酸が挙げられる。
【0046】
溶融重合法または低温重合法いずれの重合方法においても、必要に応じて不活性ガス流通下でおこなってもよいし、不活性ガスを流通させることなく空気雰囲気下でおこなってもよいし、加圧または減圧下でおこなってもよいが、機械的特性およびセルロース繊維分散均一性のさらなる向上の観点から、不活性ガス流通下でおこなうことが好ましい。低温重合法において重合反応が開始しにくい場合、一時的または継続的に加圧してもよい。
【0047】
溶融重合法または低温重合法により得られたポリアミド樹脂組成物は、未反応のモノマーやオリゴマーを除去するため、90~100℃の水に浸漬して、精練することが好ましい。
【0048】
溶融重合法または低温重合法により得られたポリアミド樹脂組成物は、分子量を上げる目的で、さらに固相重合をおこなってもよい。固相重合は、不活性ガス流通下または減圧下で、「ポリアミド樹脂組成物の融点」未満の温度で30分以上加熱することによりおこなうことができ、1時間以上、より好ましくは1~10時間加熱することによりおこなうことが好ましい。精練と固相重合は、いずれを先におこなってもよい。
【0049】
「ポリアミド樹脂組成物の融点」の測定方法は特に限定されず、例えば、示差走査型熱量計により測定することができる。
【0050】
本発明のポリアミド樹脂組成物が添加剤および/または他の重合体を含有する場合、添加剤および/または他の重合体は、混合分散液に混合してから溶融重合または低温重合をおこなってもよいし、溶融重合後または低温重合後に得られたポリアミド樹脂組成物に溶融混練等で配合してもよい。
【0051】
本発明においては、セルロース繊維の含有量が比較的多い本発明のポリアミド樹脂組成物をマスターバッチとして、セルロース繊維を含まないポリアミド樹脂とともに、希釈を目的として溶融混練することで、所望のセルロース繊維の含有量に調節することができる。また、セルロース繊維の含有量が異なる2種類以上の本発明のポリアミド樹脂組成物を溶融混練して、所望のセルロース繊維の含有量に調節することもできる。。
【0052】
[成形体]
本発明のポリアミド樹脂組成物は、公知の成形方法により、成形体とすることができる。公知の成形方法としては、例えば、射出成形、ブロー成形、押出成形、インフレーション成形、シート加工後の真空成形、圧空成形、真空圧空成形が挙げられる。
【0053】
成形方法としては、上記記載の方法の中でも、射出成形が好ましい。射出成形に用いる射出成形機は特に限定されないが、例えばスクリューインライン式射出成形機、プランジャ式射出成形機が挙げられる。射出成形機のシリンダー内で加熱溶融されたポリアミド樹脂組成物は、ショットごとに計量され、金型内に溶融状態で射出され、所定の形状で冷却、固化され、その後に成形体として金型から取り出される。射出成形時の樹脂温度は、ポリアミド樹脂組成物の融点以上であることが好ましく、(融点+100℃)未満であることが好ましい。射出成形に供されるポリアミド樹脂組成物は、十分に乾燥していることが好ましい。水分率が高いポリアミド樹脂組成物では、射出成形機のシリンダー内で発泡し、最適な成形体を得ることが困難となることがある。このため、射出成形に供されるポリアミド樹脂組成物の水分率は、0.3質量%未満であることが好ましく、0.1質量%未満であることがより好ましい。
【0054】
本発明のポリアミド樹脂組成物から得られた成形体は、成形体を粉砕および/またはリペレット化することで、再生材とすることができる。すなわち、本発明のポリアミド樹脂組成物を射出成形などの成形加工に用いた場合に発生するスプルー、ランナーなどの端材、規格外成形体および使用済み成形体などの粉砕物、または当該粉砕物を押出機等によりリペレット化したものと、別のポリアミド樹脂組成物(例えば本発明のポリアミド樹脂組成物および/または当該ポリアミド樹脂組成物とは異なる他のポリアミド樹脂)を混合物とし、それを再び成形加工に用いることができる。リペレット化とは、成形体または端材を粉砕、溶融および混練して、再びペレットを得ることである。再生材と別のポリアミド樹脂組成物を混合し再び成形加工に用いる場合、再生材の混合割合は特に限定されないが、再生材の割合は、5質量%以上とすることが好ましく、10質量%以上とすることがより好ましく、30質量%以上とすることはさらに好ましく、50質量%以上とすることが特に好ましい。また、再生材のみを単独で再び成形加工に用いてもよい。
【0055】
上記のように、本発明のポリアミド樹脂組成物を再生材とした後、再生材(もしくは再生材と別のポリアミド樹脂組成物の混合物)を再び成形加工に用いる工程は繰り返しおこなわれてもよい。すなわち、再生材(もしくは再生材と別のポリアミド樹脂組成物の混合物)から得られた成形体は、成形体を粉砕および/またはリペレット化することで、再生材とすることができる。
【0056】
本発明のポリアミド樹脂組成物は、機械的特性に優れつつも環境への負荷が小さい。このため、本発明のポリアミド樹脂組成物は、自動車用途、電気電子機器用途、農業・水産用途、医療用機器用途、雑貨等に好適に用いることができる。
【0057】
自動車用途としては、例えば、バンパー等のボディ、インストルメントパネル、コンソールボックス、ガーニッシュ、ドアトリム、天井、フロア、ランプリフレクター、ブラッシホルダー、フュエルポンプモジュール部品、デストリビューター、シートリードバルブ、ワイパーモーターギア、スピードメーターフレーム、ソレノイドイグニッションコイル、オルタネーター、スイッチ、センサー部品、タイロットエンドスタビライザー、ECUケーブル、排ガスコントロールバルブ、コネクター、排気ブレーキの電磁弁、エンジンバルブ、ラジエータファン、スタータ、インジェクタ、エンジン周りのパネル、エンジンカバー、モーターカバー、ドアガラスホルダー、サンルーフレール、軸受が挙げられる。
【0058】
電気電子機器用途としては、例えば、パソコン、携帯電話、音楽プレーヤー、カーナビゲーション、SMTコネクター、ICカードコネクター、光ファイバーコネクター、マイクロスイッチ、コンデンサー、チップキャリア、コイル封止、トランジスター封止、ICソケット、スイッチ、リレー部品、キャパシターハウジング、サーミスタ、各種コイルボビン、FDDメインシャーシ、テープコーダーヘッドマウント、ステッピングモーター、軸受、シェーバ刃台、液晶プロジェクションT V のランプハウジング、電子レンジ部品、電磁調理器のコイルベース、ドライヤーノズル、スチームドライヤー部品、スチームアイロン部品、DVDピックアップベース、整流子基台、回路基板、基板用マガジンラック、基板ホルダー、IC、液晶冶具、フードカッター、DATシリンダーベース、コピー機用ギア、プリンター定着ユニット部品、液晶パネル導光板、通信機器(アンテナ)、半導体用封止材料、パワーモジュール、ヒューズホルダー、ウォーターポンプインペラー、半導体製造装置のパイプ、ゲーム機用コネクター、エアコン用ドレインパン、生ごみ処理機内容器、掃除機モーターファンガイド、電子レンジ用ローラーステイ・リング、キャップスタンモーター軸受、街路灯、水中ポンプ、モーターインシュレータ、モーターブラシホルダー、ブレーカー部品、掃除機筐体、自走式電気掃除機筐体、パソコン筐体、携帯電話筐体、OA機器筐体部品、ガスメーターが挙げられる。
【0059】
農業、水産用途としては、例えば、コンテナー、栽培容器、浮きが挙げられる。
【0060】
医療用機器用途としては、例えば、注射器、点滴容器が挙げられる。
【0061】
雑貨としては、例えば、皿、コップ、スプーン、植木鉢、クーラーボックス、団扇、玩具、ボールペン、定規、クリップ、ドレーン材、フェンス、収納箱、工事用配電盤、給湯機器ポンプケーシング、インペラー、ジョイント、バルブ、水栓器具、ファスナー、ボタン、チャーム、コードパーツ、バックルが挙げられる
【0062】
本発明のポリアミド樹脂組成物は、Tダイ押出、インフレーション成形等の公知の製膜方法により、フィルムやシートに成形することができる。本発明のポリアミド樹脂組成物を成形してなるフィルムやシートは、例えば、フィルムコンデンサ、FPD用離形フィルム、車載モーター絶縁フィルムとして用いることができる。
【0063】
本発明のポリアミド樹脂組成物は、化学発泡剤を用いた手法や、超臨界ガスや不活性ガスを用いた手法により、発泡体に成形することができる。本発明のポリアミド樹脂組成物を成形してなる発泡体は、電気・電子機器分野や、自動車分野に用いることができる。
【0064】
本発明のポリアミド樹脂組成物は、溶融紡糸法、フラッシュ紡糸法、エレクトロスピニング法、メルトブロー法等の公知の紡糸方法により、各種繊維や各種不織布に成形することができる。本発明のポリアミド樹脂組成物を成形してなる繊維や不織布は、電気集塵用バグフィルター、モーター結束糸、被服用心材、乾式不織布、フエルト、3Dプリンターのフィラメントとして用いることができる。
【実施例0065】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0066】
A.評価方法
(1)ポリアミド樹脂組成物中のセルロース繊維の平均繊維径および平均繊維長
十分に乾燥した樹脂組成物を、射出成形機(日精樹脂工業社製:NEX110-12E)を用いて射出成形し、ISO規格3167に記載のダンベル試験片(試験部80mm×10mm×4mm)を作製した。射出成形の条件は、樹脂温度250℃、金型温度70℃、射出時間12秒、冷却時間20秒とした。
凍結ウルトラミクロトームを用いて射出成形片から厚さ100nmの切片を採取し、片染色を実施後、透過型電子顕微鏡(日本電子社製JEM-1230)を用いて観察をおこなった。電子顕微鏡画像からセルロース繊維(単繊維)の長手方向に対する垂直方向の長さおよび長手方向の長さを測定した。このとき、垂直方向の長さのうち最大のものを繊維径、長手方向の長さを繊維長とした。同様にして10本のセルロース繊維(単繊維)の繊維径および繊維長を測定し、10本の平均値を算出したものを平均繊維径および平均繊維長とした。
【0067】
(2)曲げ弾性率
(1)で得られたダンベル試験片の曲げ弾性率を、ISO178準拠の3点支持曲げ法(支点間距離:64mm、試験速度:2mm/分、試験雰囲気:23℃、50%RH、絶乾状態)にて測定した。
本発明においては、3.2GPa以上である場合、合格とした。
【0068】
(3)数平均分子量
ポリアミド樹脂5mgに10mMトリフルオロ酢酸ナトリウム含有ヘキサフルオロイソプロパノール2mLを加えて溶解させて得られた溶解液をフィルターで濾過し、試料溶液を調製した。この試料溶液を、示差屈折率検出器を備えたゲル浸透クロマトグラフィ装置(GPC、東ソー社製)で分析した。溶離液として10mMトリフルオロ酢酸ナトリウム含有ヘキサフルオロイソプロパノールを用いた。分析条件は流速0.4mL/分、温度40℃とした。ポリメチルメタクリレートを標準試料として作成した検量線を用いて、数平均分子量を求めた。
【0069】
(4)環境負荷指数
ポリアミド樹脂組成物中のケミカルリサイクルしたモノマーとセルロース繊維の合計の割合を、下記の式から求め、環境負荷指数とした。
[1-(ケミカルリサイクルしたモノマーとセルロース繊維の合計の質量)/ポリアミド樹脂組成物の質量)]×100
本発明においては、70以下である場合、合格とした。
【0070】
B.原料
(1)ポリアミド樹脂のモノマー
・6-アミノカプロン酸
・石油由来のε-カプロラクタム
【0071】
・ケミカルリサイクルしたε-カプロラクタム:
ポリアミド6樹脂 500質量部と80質量%リン酸50質量部とを解重合缶に仕込み、窒素雰囲気下、290℃に加熱した。高温スチーム(300℃)を解重合缶に吹き込み、、解重合を5時間おこなった。この間、解重合缶から留出するε-カプロラクタムと水蒸気との混合物を冷却してε-カプロラクタム水溶液を回収した。この水溶液の総質量は3000質量部で、ε-カプロラクタム濃度は13質量%であった。次いで、上記のε-カプロラクタム水溶液を、減圧下(30Torr)60℃にて濃縮し、95質量%の濃縮ε-カプロラクタム水溶液350質量部を得た。そして、前記の濃縮ε-カプロラクタム水溶液350質量部を、1Torrの圧力/110~130℃の温度で減圧蒸留し、ケミカルリサイクルしたε-カプロラクタムを得た。
【0072】
(2)セルロース繊維
・KY110N(ダイセルミライズ社製 セリッシュKY110N、平均繊維径が125nmのセルロース繊維が15質量%含有されたもの。
【0073】
・バクテリアセルロース繊維(未変性):
0.5質量%グルコース、0.5質量%ポリペプトン、0.5質量%酵母エキス、0.1質量%硫酸マグネシウム7水和物からなる組成の培地50mLを、200mL容三角フラスコに分注し、オートクレーブで120℃、20分間蒸気滅菌した。これに試験管斜面寒天培地で生育させたGluconacetobacter xylinus(NBRC 16670)を1白金耳接種し、30℃で7日間静置培養した。7日後、培養液の上層に白色のゲル膜状のバクテリアセルロース繊維が生成した。 得られたバクテリアセルロース繊維をミキサーで破砕後、水で浸漬、洗浄を繰り返すことにより、水置換をおこない、平均繊維径が60nmのバクテリアセルロース繊維が4.1質量%含有された水分散液を調製した。
【0074】
・屑糸(未変性):
不織布の製造工程において屑糸として出されたセルロース繊維の集合体に、精製水を加えてミキサーで撹拌し、平均繊維径が120nmの未変性のセルロース繊維が3質量%含有された水分散液を調製した。
【0075】
実施例1(溶融重合)
セルロース繊維の水分散液として、セリッシュKY110N(ダイセルミライズ社製:平均繊維径が125nmのセルロース繊維が15質量%含有されたもの)を用いて、これに精製水を加えてミキサーで撹拌し、セルロース繊維の含有量が3質量%の水分散液を調製した。このセルロース繊維の水分散液66.67質量部とケミカルリサイクルしたε-カプロラクタム100質量部を、均一な分散液となるまでさらにミキサーで撹拌、混合した。続いて、この混合分散液を重合装置に投入後、撹拌しながら240℃に加熱し、徐々に水蒸気を放出しつつ、0MPaから0.5MPaの圧力まで昇圧した。そののち大気圧まで放圧し、240℃で1時間溶融重合反応をおこなった。重合が終了した時点で樹脂組成物をストランド状に払い出し、切断して、ペレットを得た。得られたペレットを95℃の熱水で精練し、乾燥して、ポリアミド樹脂組成物のペレットを得た。
【0076】
実施例2(溶融重合)
石油由来のε-カプロラクタム50質量部と、ケミカルリサイクルしたε-カプロラクタム50質量部とした以外は実施例1の操作をおこなってポリアミド樹脂組成物のペレットを得た。
【0077】
実施例3~5(溶融重合)
セルロース繊維の種類、セルロース繊維の含有量を表1に記載のとおりに変更する以外は、実施例2と同様にして、ポリアミド樹脂組成物のペレットを得た。
【0078】
実施例6(低温重合)
セルロース繊維の水分散液として、セリッシュKY110N(ダイセルミライズ社製:平均繊維径が125nmのセルロース繊維が15質量%含有されたもの)を用いた。このセルロース繊維の水分散液13.3質量部と石油由来のε-カプロラクタム50質量部とケミカルリサイクルしたε-カプロラクタム50質量部を、均一な分散液となるまでミキサーで攪拌、混合し、ペースト状の混合分散液を得た。この混合分散液を、攪拌しながら90℃まで加熱し、徐々に水蒸気を放出しつつ、0.7MPaの圧力まで昇圧した。そののち大気圧まで放圧し、190℃にて8時間重合をおこなった。得られた重合反応物を粉砕し、フレーク状の樹脂組成物を得た。得られたフレーク状の樹脂組成物を95℃の熱水で精練し、乾燥して、フレーク状のポリアミド樹脂組成物を得た。
【0079】
実施例7(溶融重合+固相重合)
セルロース繊維の水分散液として、セリッシュKY110N(ダイセルミライズ社製:平均繊維径が125nmのセルロース繊維が15質量%含有されたもの)を用いた。この水分散液に精製水を加えてミキサーで攪拌することで、セルロース繊維の含有量が3質量%の水分散液を調製した。このセルロース繊維の水分散液70質量部と石油由来のε-カプロラクタム50質量部と、ケミカルリサイクルしたε-カプロラクタム50質量部を、均一な分散液となるまでさらにミキサーで攪拌、混合した。この混合分散液を攪拌しながら、240℃まで加熱し、徐々に水蒸気を放出しつつ、0.7MPaの圧力まで昇圧した。そののち大気圧まで放圧し、240℃で1時間溶融重合反応をおこなった。重合が終了した時点で樹脂組成物をストランド状に払い出し、切断して、ペレットを得た。得られたペレットを95℃の熱水で精練し、乾燥した。
乾燥したペレットを、窒素気流下において、170℃で15時間、固相重合をおこない、ポリアミド樹脂組成物のペレットを得た。
【0080】
実施例8(溶融重合+固相重合)
セルロース繊維の種類、セルロース繊維の含有量を表1に記載のとおりに変更する以外は、実施例7と同様の操作をおこなって、ポリアミド樹脂組成物のペレットを得た。
【0081】
比較例1~4(溶融重合)
ケミカルリサイクルしたεカプロラクタムを用いず、すべて石油由来のε-カプロラクタムを用いて、セルロース繊維の種類、セルロース繊維の含有量を表1に記載のとおりに変更する以外は、実施例1と同様の操作をおこなって、ポリアミド樹脂組成物のペレットを得た。
【0082】
比較例5(低温重合)
ケミカルリサイクルしたεカプロラクタムを用いず、すべて石油由来のε-カプロラクタムを用いること以外は実施例6と同様の操作をおこなって、フレーク状のポリアミド樹脂組成物を得た。
【0083】
比較例6~7(溶融重合+低温重合)
ケミカルリサイクルしたεカプロラクタムを用いず、すべて石油由来のε-カプロラクタムを用いること以外は実施例7と同様の操作をおこなって、ポリアミド樹脂組成物のペレットを得た。
【0084】
比較例8(溶融重合)
セルロース繊維の水分散液を加えなかった以外は実施例1と同様の操作をおこなって、ポリアミド樹脂組成物のペレットを得た。
【0085】
実施例1~8、比較例1~8で得られたポリアミド樹脂組成物の特性値を測定した結果を表1に示す。
【0086】
【0087】
実施例1~8のポリアミド樹脂組成物は、いずれも、セルロース繊維と、ケミカルリサイクルしたモノマーを用いて重合したため、曲げ弾性率が3.2GPa以上であって、環境負荷指数が80以下であり、機械的特性に優れつつも環境への負荷が小さいものであった。
【0088】
比較例1~7のポリアミド樹脂組成物は、ケミカルリサイクル由来のモノマーを用いずに重合したため、環境負荷指数が大きいものであった。
比較例8のポリアミド樹脂組成物は、セルロース繊維を用いずに重合したため、曲げ強度が3.2GPa未満と機械的特性が不良であった。