IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社デンソーの特許一覧

<>
  • 特開-ガスセンサ端子異常検出装置 図1
  • 特開-ガスセンサ端子異常検出装置 図2
  • 特開-ガスセンサ端子異常検出装置 図3
  • 特開-ガスセンサ端子異常検出装置 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024113445
(43)【公開日】2024-08-22
(54)【発明の名称】ガスセンサ端子異常検出装置
(51)【国際特許分類】
   F02D 45/00 20060101AFI20240815BHJP
【FI】
F02D45/00 345
F02D45/00 368F
F02D45/00 ZAB
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023018428
(22)【出願日】2023-02-09
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】神谷 隆通
(72)【発明者】
【氏名】吉川 友啓
【テーマコード(参考)】
3G384
【Fターム(参考)】
3G384BA09
3G384BA31
3G384BA47
3G384DA46
3G384FA37Z
(57)【要約】
【課題】AFR端子を単独で正常/地絡の判別をできるようにしたガスセンサ端子異常検出装置を提供する。
【解決手段】所定電圧印加回路23は、AFC端子Tmに対し所定電圧を印加して酸素センサ60を通常動作可能にする。テスト電圧印加回路24は、AFR端子Tpの端子状態をテスト検出するときのみAFR端子Tpに接続してテスト電圧をAFR端子Tpの状態検出用電圧として印加する。AFR地絡判定部10aは、テスト電圧印加回路24によりテスト電圧を印加することに基づいてAFR端子Tpの正常/地絡を判定する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
AFR端子とAFC端子との間に接続される酸素センサに通電する際の前記AFR端子の短絡異常を検出するガスセンサ端子異常検出装置(102、202)であって、
前記AFC端子に対し所定電圧を印加して前記酸素センサを通常動作可能にする所定電圧印加回路(23)と、
前記AFR端子の端子状態をテスト検出するときのみ前記AFR端子に接続してテスト電圧を前記AFR端子の状態検出用電圧として印加するテスト電圧印加部(24;23、29)と、
前記テスト電圧印加部によりテスト電圧を印加することに基づいて前記AFR端子の正常/地絡を判定するAFR地絡判定部(10a)と、
を備えるガスセンサ端子異常検出装置。
【請求項2】
前記AFC端子の正常/地絡を判定するAFC地絡判定部(10b)を備え、
前記テスト電圧印加部は、前記AFC端子が地絡判定されたときのみ前記AFR端子の前記状態検出用電圧を印加する請求項1記載のガスセンサ端子異常検出装置。
【請求項3】
前記テスト電圧印加部は、前記酸素センサのブラックニング発生電圧以下にテスト電圧を前記AFR端子の状態検出用電圧として設定して印加する請求項1記載のガスセンサ端子異常検出装置。
【請求項4】
前記テスト電圧印加部は、前記所定電圧印加回路の出力を前記AFR端子にも切替供給可能にした切替スイッチ(29)を用いて構成される請求項1記載のガスセンサ端子異常検出装置。
【請求項5】
通常動作時に燃料フィードバック制御を行うマイコン(10)を備え、
前記マイコンは、
前記AFC端子及び前記AFR端子の異常判定処理を実行する際には、前記AFC端子及び前記AFR端子の異常判定値の記憶、検出、判定を行い、前記AFC端子が地絡、且つ、前記AFR端子が正常時には、フェールセーフ制御を実施せず前記通常動作時と同様の制御を実行し、且つ、ダイアグ出力する請求項1記載のガスセンサ端子異常検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ガスセンサ端子異常検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスセンサを制御する回路には、当該ガスセンサを接続するための端子が設けられており、当該正端子及び負端子の地絡異常を検知するための異常検出回路が設けられる(例えば、特許文献1参照)。ガスセンサが活性状態の場合インピ-ダンスが大幅に低下する。このため、従来の回路では、ガスセンサのAFC端子が地絡した場合、他端のAFR端子が正常時においても地絡電位と見做されてしまう場合があった。このため、AFR端子を単独で正常/地絡判別できないという問題があった。
【0003】
特許文献1に記載の技術のように、正端子と負端子を使用して制御し続ける場合、負端子(AFC端子相当)が地絡したときに正端子(AFR端子相当)も地絡電位と見做されてしまうと、ガスセンサの両端電圧を読み出したとしても常時リーン判定となる。制御装置は、排ガス悪化の回避のためリッチにする制御をすることが困難となる。リンプホーム中、排ガス浄化が不十分になったり、ドライバビリティの悪化、着火性の悪化につながったりする可能性があり、好ましくない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008-75627号公報(特許4157576号公報)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、AFR端子を単独で正常/地絡判別できるようにしたガスセンサ端子異常検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明は、AFR端子とAFC端子との間に接続される酸素センサに通電する際のAFR端子の短絡異常を検出するガスセンサ端子異常検出装置を対象としている。請求項1記載の発明によれば、所定電圧印加回路は、AFC端子に対し所定電圧を印加して酸素センサを通常動作可能にする。テスト電圧印加部は、AFR端子の端子状態をテスト検出するときのみAFR端子に接続してテスト電圧をAFR端子の状態検出用電圧として印加する。
【0007】
AFR地絡判定部は、テスト電圧印加部によりテスト電圧を印加することに基づいてAFR端子の正常/地絡を判定する。請求項1記載の発明によれば、テスト電圧印加部によりテスト電圧をAFR端子に印加し、AFR地絡判定部はテスト電圧を印加することに基づいてAFR端子の正常/地絡を判定しているため、単独でAFR端子の正常/地絡を判別できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態における制御システムを概略的に示す電気的構成図
図2】第1実施形態における異常検出時の処理を概略的に示すフローチャート
図3】第1実施形態におけるAFR端子及びAFC端子の正常/地絡時の動作の説明図
図4】第2実施形態における酸素センサ異常検出システムを概略的に示す電気的構成図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、ガスセンサ端子異常検出装置の幾つかの実施形態について図面を参照しながら説明する。以下に説明する実施形態では、各実施形態で同一又は類似に構成には同一又は類似の符号を付して説明を省略することがある。
【0010】
(第1実施形態)
第1実施形態について図1から図3を参照しながら説明する。図1に示すように、制御システム101は、マイコン10及び制御IC20を備えた電子制御装置102を主体として構成される。電子制御装置102はガスセンサ端子異常検出装置として構成される。制御システム101は、電子制御装置102の他、燃料噴射系回路40、ダイアグ表示回路50を車両内に接続して構成される。制御IC20にはガスセンサとして酸素センサ60が接続されている。
【0011】
酸素センサ60は、理論空燃比と比べて空気に対する燃料の割合が少ないリーンの状態、理論空燃比と比べて空気に対する燃料の割合が多いリッチの状態を検出する空燃比センサとして用いられる。酸素センサ60は、空燃比センサ以外にも酸素濃度を求める種々の用途として用いることができる。
【0012】
酸素センサ60は、ジルコニアなどにより構成される固体電解質層、多孔質のセラミックなどによる拡散抵抗層、固体電解質層を挟んだアノード電極/カソード電極を備えている。酸素センサ60は、排気ガス中における酸素ガスの存在の有無や、酸素ガスの濃度を検知するためのセンサ素子である。排気ガスは一般に化石燃料の燃焼によって動力を発生する内燃機関から発生し、化石燃料としては例えばガソリン、軽油、灯油、天然ガスなどがある。排気側のアノード電極には排気が供給され、カソード電極には大気が供給される。
【0013】
固体電解質層は、排気やヒータにより加熱された状態において、イオン化されて通過した酸素の量に応じて電流を流す。空燃比が理論空燃比よりもリーンな場合、アノード電極からカソード電極に移動する酸素量はアノード電極に供給される排気に残留した酸素の濃度にしたがって変化する。また空燃比が理論空燃比よりもリッチな場合、カソード電極からアノード電極に移動する酸素量は、排気中の未燃ガスの濃度に従う。この結果、酸素センサ60は、排気中の酸素濃度および未燃ガス濃度に基づく大きさの限界電流を出力する。
【0014】
排気やヒータによる加熱が停止した状態では、酸素センサ60は低温状態に晒されることとなる。酸素センサ60が低温状態になると固体電解質層を通過する酸素の移動速度が低下する。酸素の移動速度の低下に伴い通電電流の最大値が減少する。例えば、500~600℃以上の温度においては限界電流まで電流を流す活性状態となる。逆に、活性状態となる温度未満においては、電流の減少により限界電流まで電流の流れない非活性状態となる。また酸素の移動速度低下に伴い酸素センサ60のインピーダンスが増大する。
【0015】
酸素センサ60のカソード電極側にはコンデンサ61が接続されており、酸素センサ60のアノード電極側にはコンデンサ62及び抵抗63が並列接続されている。これにより印加電圧の安定化が図られている。
【0016】
マイコン10は、プロセッサ、ROM、RAM等のメモリ、I/Oなどを備えたマイクロコントローラであり、制御IC20に指令することで当該制御IC20から酸素センサ60に掃引電圧を印加し、制御IC20を通じて酸素センサ60のセンサ信号を受信する。
【0017】
制御IC20は、酸素センサ60のカソード電極に接続されるAFC端子Tmと共に、酸素センサ60のアノード電極に接続されるAFR端子Tpを備えた半導体装置により構成される。AFR端子Tp及びAFC端子Tmは、酸素センサ60に掃引電圧を印加したときに酸素センサ60の端子間電圧又は通電電流をセンサ信号として取得するために設けられる。電子制御装置102は、AFR端子Tp、AFC端子Tmの短絡異常を検出するガスセンサ端子異常検出装置としての機能を備える。
【0018】
制御IC20は、制御部21と、所定電圧印加回路23と、テスト電圧印加部としてのテスト電圧印加回路24と、電流検出回路25と、電流電圧検出切替スイッチ26と、電流電圧検出回路27と、端子電圧検出回路28と、掃引電圧印加回路30と、を備える。制御部21は、メモリ21aを備えた所定のデジタル回路により構成される。
【0019】
所定電圧印加回路23は、AFC端子Tmに対し所定電圧V0を印加して酸素センサ60を通常動作可能にする回路である。所定電圧印加回路23は、DA変換器23aおよびバッファ23bを備える。
【0020】
DA変換器23aは、制御部21から指令デジタル値を入力しアナログ変換する。バッファ23bは、DA変換器23aのアナログ出力をバッファして電流検出回路25、AFC端子Tmを通じて所定電圧V0を酸素センサ60のカソード電極に印加する。電流検出回路25は、バッファ23bとAFC端子Tmとの間に直列接続された抵抗により構成される。
【0021】
テスト電圧印加回路24は、AFR端子Tpの端子状態をテスト検出するときのみAFR端子Tpに接続してテスト電圧VtestをAFR端子Tpの状態検出用電圧として印加する回路である。テスト電圧印加回路24は、DA変換器24a、バッファ24b及びスイッチ24cを備える。
【0022】
DA変換器24aは、制御部21から指令デジタル値を入力しアナログ変換する。バッファ24bはDA変換器24aのアナログ出力をバッファしてスイッチ24c、AFR端子Tpを通じて酸素センサ60のアノード電極にテスト電圧Vtestを印加する。なお、テスト電圧印加回路24は、スイッチ24cがオンにならない限りテスト電圧Vtestを状態検出用電圧としてAFR端子Tpに印加することはない。スイッチ24cは制御部21によりオンオフ制御される。
【0023】
電流電圧検出切替スイッチ26は、電流検出回路25の検出電流を取得するか、AFC端子Tm及びAFR端子Tpの端子間電圧を取得するか、を切り替えるスイッチである。電流電圧検出切替スイッチ26は、制御部21により切替制御可能になっている。
【0024】
電流電圧検出回路27は、電流電圧検出切替スイッチ26の切替検出信号を入力しデジタルデータに変換して制御部21に出力する。電流電圧検出回路27は、アンプ27a及びAD変換器27bを備える。
【0025】
アンプ27aは、電流電圧検出切替スイッチ26の切替検出信号を入力すると増幅する。AD変換器27bは、アンプ27aの増幅出力を入力しAD変換し制御部21に出力する。これにより制御部21は、電流電圧検出切替スイッチ26を切替制御することで、電流検出回路25の検出電流を取得したり、AFC端子Tm及びAFR端子Tpの間の端子間電圧を取得したりできる。
【0026】
端子電圧検出回路28は、AFC端子Tmの電圧、又は、AFR端子Tpの電圧を個別に検出する回路である。端子電圧検出回路28は、マルチプレクサ28a及びAD変換器28bを備える。マルチプレクサ28aは、AFC端子Tmの電圧及びAFR端子Tpの電圧を入力し制御部21の制御により何れか一方の電圧をAD変換器28bに出力する。AD変換器28bは、マルチプレクサ28aの出力電圧を入力してデジタル変換し制御部21に出力する。これにより制御部21は、AFC端子Tmの電圧及びAFR端子Tpの電圧を個別に取得できる。
【0027】
掃引電圧印加回路30は、通常動作時にAFR端子Tpを通じて酸素センサ60のアノード電極に掃引電圧を印加する回路である。掃引電圧印加回路30は、DA変換器30a及び掃引電圧生成部30bを備える。DA変換器30aは、制御部21から指令デジタル値を入力するとアナログ変換し掃引電圧生成部30bに出力する。掃引電圧生成部30bは、アナログ変換出力を入力すると当該出力値に基づく掃引電圧を生成し、AFR端子Tpを通じて酸素センサ60のアノード電極に印加する。
【0028】
通常動作時には、所定電圧印加回路23が、制御部21から入力した指令デジタル値に応じて、AFC端子Tmを通じて酸素センサ60のカソード電極に印加する。また掃引電圧生成部30bが、AFR端子Tpを通じて酸素センサ60のアノード電極に掃引電圧を印加する。このとき制御部21は、電流電圧検出切替スイッチ26を切替制御することでAFC端子Tm及びAFR端子Tpの端子間電圧、及び、電流検出回路25の検出電流を取得する。
【0029】
マイコン10は、制御部21からこれらのデータをI/F22を通じて受信すると、掃引電圧を印加したときの端子間電圧の電圧変化量ΔVを、電流検出回路25の検出電流の電流変化量ΔIで除算した結果を酸素センサ60のインピーダンスとして算出する。
【0030】
これにより通常動作時に酸素センサ60の状態を検出できる。マイコン10は、酸素センサ60のインピーダンスを酸素センサ60の温度状態と対応付けて検出し、当該酸素センサ60を温度制御するためのヒータ(図示せず)の通電制御に用いることができる。またマイコン10は、酸素センサ60のインピーダンスを算出することで当該酸素センサ60の劣化状態を検出できる。
【0031】
マイコン10は、通常動作時に酸素センサ60のセンサ信号を受信することで燃料と空気の割合を空燃比として求め、リーン状態であるかリッチ状態であるかを判断し、燃料噴射系回路40へ燃料フィードバック制御を行う。これにより、排ガス浄化制御、ドライバビリティを確保した制御を実行できる。またマイコン10は、AFC端子Tm及びAFR端子Tpの正常/短絡の異常判定処理を実行する。この際、マイコン10は、AFC端子Tm及びAFR端子Tpの異常判定値の記憶、検出、判定を行う。
【0032】
マイコン10は、テスト電圧印加回路24により状態検出用電圧を印加することに基づいてAFR端子Tpの正常/地絡を判定するAFR地絡判定部10aとしての機能を実現する。またマイコン10は、AFC端子Tpが地絡したか否かを判定するAFC地絡判定部10bとしての機能を実現する。
【0033】
AFC端子Tm及びAFR端子Tpの正常/短絡の異常判定する際の動作について図2及び図3を参照しながら説明する。図2に示すS0の通常動作時において、マイコン10は、酸素センサ60の状態を検出し空燃比を算出し、燃料噴射系回路40に対する燃料のフィードバック制御を行っている。この間、酸素センサ60のインピーダンスを算出するため、所定電圧印加回路23は所定電圧をAFC端子Tmに出力し続け、掃引電圧生成部30bはAFR端子Tpに掃引電圧を印加している。
【0034】
例えば、あるタイミングで異常判定するときには、制御部21は掃引電圧印加回路30への指令デジタル値の出力を停止し、S1において掃引電圧生成部30bから掃引電圧の出力を停止させる。なお、所定電圧印加回路23は所定電圧を出力し続けている。
【0035】
所定電圧が電流検出回路25を通じてAFC端子Tmに印加されている状態において、制御部21は、S2において端子電圧検出回路28を通じてAFC端子Tmの電圧を検出する。制御部21は、S3においてAFC端子Tmが地絡しているか否かを判定する。制御部21は、AFC端子Tmの電圧VがAFC用閾値Vmより大きいか否かを判定し、AFC用閾値Vmより大きければ、S5においてAFC端子Tmが地絡しておらず正常判定する。そして制御部21は、AFC端子Tmが正常であることをメモリ21aに記憶させる。AFC端子Tmが正常である場合にはS7に移行するが、この際の動作は後述する。
【0036】
逆に、S3においてAFC端子Tmの電圧がAFC用閾値Vm以下となっていれば、S4においてAFC端子Tmが地絡しており異常と判定する。このとき制御部21は、AFC端子Tmが地絡していることをメモリ21aに記憶させる。
【0037】
<AFC端子Tmが地絡判定された場合>
AFC端子Tmが地絡判定された場合には、制御部21は、S6において検出モードを変更しテスト電圧印加回路24のスイッチ24cをオフからオンに切り替える。そして制御部21は、DA変換器24aに指令デジタル値を出力することでAFR端子Tpにテスト電圧Vtestを印加する。
【0038】
なお、AFC端子Tmが正常であると判定した(S5)後においてもS6の処理を続けて実行してもよいが、制御部21はAFC端子Tmが地絡判定されたときのみAFR端子Tpに状態検出用電圧をテスト電圧印加回路24から印加することが望ましい。これは、AFC端子Tmが正常判定された時(S5)に、S6において状態検出用のテスト電圧Vtestを印加しても得られる効果、本願に係る効果が得られないためである。AFC端子Tmが正常であると判定すれば、S6の処理を省いてS7の処理に移行するとよい。この場合、不要な動作、ここではS6の処理を省くことができ検出速度を上げることができる。
【0039】
また酸素センサ60のブラックニング発生電圧VL以下に予め設定されたテスト電圧Vtestをテスト電圧印加回路24からAFR端子Tpの状態検出用電圧として設定して印加することが望ましい。テスト電圧Vtestはブラックニングを原因としたセンサ破壊を回避できる電圧とすることが望ましい。ブラックニングは、固体電解質層を介して電極反応が生じている状態であり、固体電解質層に酸素不足が生じて固体電解質体中の金属酸化物が還元される現象である。ブラックニングが生じると、固体電解質体の特性であるイオン伝導性が劣化し、ポンピング性能が低下する。通常1.6V以上に上がると還元作用によりブラックニングを発生させてしまうという悪影響を生じる虞がある。ここでは、テスト電圧Vtestをブラックニング発生電圧VL未満の電圧に設定して、AFR端子Tpの状態検出用電圧として設定して印加する。これによりブラックニング発生を防止できる。通常の定義のブラックニング発生電圧VLはセンサ端子間Tm-Tpの電圧であるが、AFC端子Tmが地絡している前提でグランド基準電圧とみなして比較している。またブラックニング発生電圧VL以外の比較対象電圧(所定電圧V0、テスト電圧Vtest、AFR用閾値VT)は全てグランド基準の電圧である。
【0040】
そして制御部21は、S7においてAFR端子Tpにテスト電圧Vtestが印加された状態でAFR端子Tpの電圧を取得する。制御部21は、AFR端子Tpの電圧がAFR用閾値VTより大きいか否かを判定する。AFR用閾値VTは、所定電圧V0未満で且つブラックニング発生電圧VL未満、さらにテスト電圧Vtest未満の電圧に予め設定されている。AFR端子Tpが地絡していなければ、AFR端子Tpの電圧は原理的にテスト電圧Vtestに保持される。このため、AFR端子Tpの電圧がAFR用閾値VTより大きければ、制御部21はS10においてAFR端子Tpが地絡しておらず正常と判定する。そして制御部21はAFR端子Tpが正常であることをメモリ21aに記憶させる。
【0041】
逆に、S8においてAFR端子Tpの電圧がAFR用閾値VT以下となっていれば、S9においてAFR端子Tpが地絡しており異常と判定する。このとき制御部21は、AFR端子Tpが地絡していることをメモリ21aに記憶させる。その後、制御部21はメモリ21aに記憶された異常判定内容をマイコン10にI/F22を通じて送信する。マイコン10は、この異常判定内容を受信すると、S11においてこの判定内容に基づいてソフト制御を実行する。
【0042】
<AFC端子Tmが正常判定された場合>
仮にS5においてAFC端子Tmが正常判定された場合、制御部21はS7に移行しAFR端子Tpの電圧を取得し、S8においてAFR端子Tpの地絡判定を行う。このとき、制御部21は、S8においてAFR端子Tpの電圧が閾値VTを超えているか否かを判定する。AFR端子Tpが地絡していれば、S9において地絡判定すると共にメモリ21aにその旨を記憶させる。AFR端子Tpが地絡していなければ、S10において正常判定すると共にメモリ21aにその旨を記憶させる。この場合、前述のテスト電圧VtestをAFR端子Tpに印加することなく判定できる。その後、制御部21はメモリ21aに記憶された異常判定内容をマイコン10にI/F22を通じて送信する。マイコン10は、この異常判定内容を受信すると、S11においてこの判定内容に基づいてソフト制御を実行する。
【0043】
図3には、それぞれのAFC端子Tm、AFR端子Tpが正常/地絡である際の処理動作をまとめて示している。AFC端子Tm及びAFR端子Tpの両端子共に正常な場合、マイコン10は、ダイアグ表示指令も行うことなくフェールセーフ制御も行うことはない。
【0044】
AFC端子Tmが正常と判定されているときでも、AFR端子Tpのみが地絡異常である場合にはAFR端子Tpの電圧を0Vと検出する。このため、マイコン10は強制的にAFR端子Tpの地絡異常と判定する。地絡異常と判定されているため、マイコン10はダイアグ表示回路50へダイアグ表示を行うと共に通常動作時の燃料フィードバック制御を停止しつつフェールセーフ制御も実施する。
【0045】
マイコン10は、フェールセーフ制御においてリンプホームモードへ変更を行い、燃料噴射系回路40にリンプホームを実行する旨の制御要求を行う。リンプホームモードでは、フィードバック制御を停止することから車両の機能の一部が制限される。リンプホームモードでは、燃料噴射系回路40が低速走行制御することで内燃機関やその他の部品の損傷を抑えつつ、車両乗員を安全に帰宅させることができる。
【0046】
また、AFC端子Tm、AFR端子Tp共に地絡異常と判定された場合、マイコン10はAFC端子Tm、AFR端子Tpの電圧を共に0Vと検出する。この場合も同様に、マイコン10は強制的にAFC端子Tm、AFR端子Tpを地絡異常と判定する。地絡異常と判定されているため、マイコン10はダイアグ表示回路50へダイアグ表示を行うと共に通常動作時の燃料フィードバック制御を停止しつつ、フェールセーフ制御も実施する。
【0047】
マイコン10は、フェールセーフ制御においてリンプホームモードへ変更を行い、燃料噴射系回路40にリンプホームを実行する旨の制御要求を行う。フィードバック制御を停止することから車両の機能の一部が制限される。リンプホームモードでは、燃料噴射系回路40が低速走行制御することで内燃機関やその他の部品の損傷を抑えつつ、車両乗員を安全に帰宅させることができる。
【0048】
またAFR端子Tpが地絡していないにも拘わらず、AFC端子Tmが地絡異常を生じている場合、マイコン10はAFC端子Tmの電圧を0Vと検出する。しかし、制御部21は、AFR端子Tpの電圧を閾値VTと比較しているため、従来回路のようにAFR端子Tpを地絡と誤判断することなく正常と判定できる。したがって、マイコン10は、リンプホームモードへ変更を行うことなく、酸素センサ60から得られた結果に基づいて、空燃比のリーン/リッチによる燃料フィードバック制御を継続できる。
【0049】
すなわち、AFC端子Tmが地絡、且つ、AFR端子Tpが正常と判定されたときには、マイコン10及び燃料噴射系回路40はフェールセーフ制御を実施しない。制御部21がAFR端子Tpを正常と判定しているものの、AFC端子Tmを地絡異常と判定しているため、マイコン10は、ダイアグ表示回路50にダイアグ出力することで外部に警告する。
【0050】
これにより、AFC端子Tmの地絡異常に係るダイアグ出力を行いながらフェールセーフ制御を実施しないという選択もできるようになる。このため、フェールセーフ制御を実施しない場合には、通常動作時と同様の制御、すなわち排ガス浄化制御、ドライバビリティを確保した制御を実行できる。
【0051】
<まとめ>
本実施形態によれば、AFR端子Tpに対しスイッチ24cを介してテスト電圧Vtestを印加するテスト電圧印加回路24を設けている。このように構成することで、AFR端子Tpが地絡しているか否かを判別できる。この際、AFC端子Tmが地絡と判定された状態においても、AFR端子Tpの正常時に正常判定可能なテスト電圧Vtestを印加できる。この結果、AFR端子Tpを単独で正常/地絡判別でき、従来回路では判別できなかったAFC端子Tmの地絡状態、且つ、AFR端子Tpの正常状態を検出できる。
【0052】
本実施形態のように、AFR端子Tpの側を単独で正常/地絡を判別できるようになれば、正しく燃料フィードバック制御して着火性を確保できる。しかも、ダイアグ表示できるようになり、リンプホームモード中であっても、排ガス浄化やドライバビリティの性能向上を図ることができる。これにより、リッチ/リーン制御にできるようになることから車両制御の自由度を向上できる。このため、車両制御の自由度を高く保ちながら外部に対して警告を報知できる。
【0053】
(第2実施形態)
第2実施形態について図4を参照しながら説明する。図4に示す制御システム201は電子制御装置202を備えている。電子制御装置202は、マイコン10及び制御IC220を備える。制御IC220にはテスト電圧印加回路24が設けられていない。制御IC220は、テスト電圧印加回路24の代わりに切替スイッチ29を備えている。
【0054】
第1実施形態でも示したように、所定電圧印加回路23はAFC端子Tmへ印加する所定電圧V0を生成する。切替スイッチ29は、所定電圧印加回路23の出力と、電流検出回路25とAFR端子Tpとの間に接続されており、所定電圧印加回路23の出力をAFC端子TmにもAFR端子Tpにも供給切替可能にしている。制御IC220のその他の構成は制御IC20と同様であるため説明を省略する。
【0055】
第1実施形態では、テスト電圧印加回路24がテスト電圧VtestをAFR端子Tpに印加していた。本実施形態では、これに代えて、制御部21が、切替スイッチ29をAFR端子Tpの側に切り替えてテスト電圧Vtestを、所定電圧印加回路23を通じてAFR端子Tpに印加する。このとき所定電圧印加回路23及び切替スイッチ29が「テスト電圧印加部」としての機能を実現することとなる。
【0056】
これにより、第1実施形態と同様にAFR端子Tpの正常/短絡の異常を判定できる。本実施形態によれば、制御IC220の中で所定電圧V0を印加する回路とテスト電圧Vtestの印加回路を一つにまとめることができるようになり、コストダウンできる。
【0057】
本開示に記載の電子制御装置102、202及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の電子制御装置102、202及びその手法は、一つ以上の専用ハードウェア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。
【0058】
もしくは、本開示に記載の電子制御装置102、202及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリと一つ以上のハードウェア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
【0059】
つまりプロセッサ等が提供する手段および/または機能は、実体的なメモリ装置に記録されたソフトウェアおよびそれを実行するコンピュータ、ソフトウェアのみ、ハードウェアのみ、あるいはそれらの組合せによって提供できる。たとえばプロセッサが備える機能の一部または全部はハードウェアとして実現されても良い。或る機能をハードウェアとして実現する態様には、ひとつ以上のICなどを用いて実現する態様が含まれる。
【0060】
本開示は、実施形態に準拠して記述されたが、本開示は当該実施形態や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
【符号の説明】
【0061】
図面中、10はマイコン、10aはAFR地絡判定部、10bはAFC地絡判定部、102、202は電子制御装置(ガスセンサ端子異常検出装置)、23は所定電圧印加回路(テスト電圧印加部)、24はテスト電圧印加回路(テスト電圧印加部)、29は切替スイッチ(テスト電圧印加部)を示す。
図1
図2
図3
図4