(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024011345
(43)【公開日】2024-01-25
(54)【発明の名称】真空包装機
(51)【国際特許分類】
B65B 31/02 20060101AFI20240118BHJP
【FI】
B65B31/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022113268
(22)【出願日】2022-07-14
(71)【出願人】
【識別番号】517164556
【氏名又は名称】株式会社TOSEI
(74)【代理人】
【識別番号】100107928
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正則
(74)【代理人】
【識別番号】110003362
【氏名又は名称】弁理士法人i.PARTNERS特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古瀬 義昭
(72)【発明者】
【氏名】関 多佳史
(72)【発明者】
【氏名】小川 慶輔
【テーマコード(参考)】
3E053
【Fターム(参考)】
3E053AA06
3E053BA01
3E053CA01
3E053CB02
3E053CB04
3E053FA01
3E053GA20
3E053JA10
(57)【要約】
【課題】ヒーター線の塑性変形を抑制することが出来る真空包装機を提供する。
【解決手段】実施形態の真空包装機は、真空包装時に、チャンバー内に設けられた上下のシールブロックによって被包装物を収容した包材の開口部を挟持し、シール工程時にヒーター線に通電して、挟持した前記包材の開口部をシールする真空包装機において、前記シール工程前にプレヒート工程を施すことを特徴とする。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空包装時に、チャンバー内に設けられた上下のシールブロックによって被包装物を収容した包材の開口部を挟持し、シール工程時にヒーター線に通電して、挟持した前記包材の開口部をシールする真空包装機において、前記シール工程前にプレヒート工程を施すことを特徴とする真空包装機。
【請求項2】
前記ヒーター線は、複数の包材を同時にシール可能な長さを有して、下側又は上側又は上下のシールブロックにテンションを掛けて敷設される請求項1に記載の真空包装機。
【請求項3】
前記プレヒート工程によって前記包材を挟持している間の前記ヒーター線の温度差を少なくする請求項1に記載の真空包装機。
【請求項4】
前記シール工程の温度に合わせて前記プレヒート工程の温度を自動的に可変する請求項1に記載の真空包装機。
【請求項5】
前記プレヒート工程で前記ヒーター線に通電する時間は0.6秒~1秒である請求項1に記載の真空包装機。
【請求項6】
前記シール工程の通電時間は、前記プレヒート工程で上昇した温度に応じた時間とする請求項5に記載の真空包装機。
【請求項7】
前記プレヒート工程によって発生する熱は、前記包材が溶け込まない温度までとする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の真空包装機。
【請求項8】
チャンバーと、
チャンバー内に設けられ、真空包装時に被包装物を収容した包材の開口部を挟持する上下のシールブロックと、
下側又は上側又は上下のシールブロックにテンションを掛けて敷設されるヒーター線と、
シール工程時に前記ヒーター線に通電して、挟持した前記包材の開口部をシールする制御手段と、
を具備し、
前記制御手段は、前記包材を挟持している間の前記ヒーター線の温度差を少なくするため、前記シール工程前に前記ヒーター線に通電してプレヒート工程を施すことを特徴とする真空包装機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒーター線の塑性変形を抑えることができる真空包装機に関する。
【背景技術】
【0002】
真空包装機において、一度に複数の包材(包装袋)を同時に真空包装する装置が開発されている。その真空包装機では、真空包装時に複数の包材を同時にシール出来るようにするため、長尺のニクロム製のヒーター線(以下、長尺ヒーター線と称する)が用いられている。長尺ヒーター線を用いた場合、シール時に線膨張した長尺ヒーター線が逃げ場を失い、隆起したり、陥没したり、蛇行したりするような塑性変形を起こすことが知られている。
【0003】
少なくとも一部に厚い包材を有する、例えば4つの包材を同時にシールする場合、上側シールブロックの押圧により、包材a、包材b、包材c、包材d…の間は同時に押圧される。このため、包材aと包材bの間、包材bと包材cの間、包材cと包材dの間に位置する長尺ヒーター線は逃げ場を失い、隆起や陥没、蛇行等が発生して塑性変形を起こす。このような塑性変形を繰り返し発生すると、長尺ヒーター線が破損又は断線する虞があり、惹いては長尺ヒーター線を交換しなければならない事態となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004-161291号公報
【特許文献2】特開2002-145210号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、上記した問題点を解決するものであり、ヒーター線の塑性変形を抑制することが出来る真空包装機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の真空包装機は、真空包装時に、チャンバー内に設けられた上下のシールブロックによって被包装物を収容した包材の開口部を挟持し、シール工程時にヒーター線に通電して、挟持した前記包材の開口部をシールする真空包装機において、前記シール工程前にプレヒート工程を施すことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施形態に係る真空包装機の構造を示す斜視図である。
【
図2】実施形態に係る真空包装機に包材を複数配置した図である。
【
図3】実施形態に係る真空包装機の蓋を開けた状態における正面図、上面図、右側面図である。
【
図4】実施形態に係る真空包装機の蓋を閉じた状態におけるチャンバーを拡大した断面図である。
【
図5】実施形態に係る真空包装機の上下のシールブロック、ヒーター線の構成を示す図である。
【
図6】(a)(b)は、待機状態およびプレヒートにおける上下のシールブロック、ヒーター線の制御を説明する図である。
【
図7】(c)(d)は、上側シールブロックの下降工程およびシール工程における上下のシールブロック、ヒーター線の制御を説明する図である。
【
図8】
図6(a)(b)の待機状態およびプレヒートの状態におけるチャンバー内の制御を示す図である。
【
図9】
図7(c)の上側シールブロックの下降工程における制御を示す図である。
【
図10】
図7(d)のシール工程における制御を示す図である。
【
図11】実施形態の制御装置によるヒーター線の制御を示すフローチャートである。
【
図12】実施形態のヒーター線にプレヒート工程を施したときの線膨張の試験データのグラフ例を示す図である。
【
図13】比較例として、ヒーター線のプレヒート工程を施さないときの線膨張の試験データのグラフ例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、長尺ヒーター線を有する真空包装機の構造を示す斜視図である。
図2は、同真空包装機に包材(包装袋、例えばビニール袋)を複数配置した図である。
図3は、同真空包装機の蓋を開けた状態における正面図、上面図、右側面図である。
図4は、同真空包装機の蓋を閉じた状態におけるチャンバーを拡大した断面図である。
図5は、真空包装機の上下のシールブロック、ヒーター線の構成を示す図である。
以下、
図1乃至
図5を参照して、長尺ヒーター線を有する真空包装機の形状および構造について説明する。なお、
図1乃至
図5は、同じ構成要素については、同一符号を付与して、重複した構成説明は省略する。
【0009】
実施形態に係る真空包装機10は、
図1乃至
図3に示すように、縦方向(短手方向)より横方向(長手方向)が長い立方体の筐体20の上面に、チャンバー30を形成する平らなプレート40が設けられる。プレート40は、例えばステンレスで構成される。プレート40は、例えば横幅80cm×縦幅50cm×高さ5cmの大きさを有している。真空包装機10の前面には、操作パネル50が設けられる。プレート40の後端には、左右のヒンジ機構60を介して蓋70が取り付けられる。蓋70は、例えばアルミニウムで構成される。蓋70の前側面には開閉用の取手部75が設けられ、また上面には真空動作時に複数の包材150の真空包装状態を見ることができる1つ又は複数の覗き穴80が設けられている。
【0010】
図4は、チャンバー30を拡大した断面図である。この
図4に示すように、真空包装機10のプレート40の奥側(ヒンジ側)には、長手方向に設けられた下側シールブロック90が設けられる。下側シールブロック90に対向する蓋70の内側には上側シールブロック100が設けられる。下側シールブロック90と上側シールブロック100とによりシール(封止)機構を構成し、下側シールブロック90には後述するシール用の長尺ヒーター線(
図5、
図6を参照)が設けられている。上側シールブロック100は、シール工程に先立ち複数の包材150(
図2を参照)の先端開口部(袋口)を同時に挟み込み、後に開放するため、下降/上昇制御される。そしてシール工程において、複数の包材150の先端開口部を同時に挟み込んだ状態で、下側シールブロック90に敷設された長尺ヒーター線に通電して熱を発生することで、複数の包材150の先端開口部を同時に密封する。包材150は、厚い包材に限らず、普通の包材にも適用することが出来る。
【0011】
チャンバー30の短手方向の両側には、所定の間隔を有して形成された多数のスリット110を有する同一の係止部材120,130(
図1又は
図2を参照)が設けられる。係止部材120,130は、プレート40の両側底面に固定される。係止部材120,130の同じ目盛り位置のスリット110には、仕切り板140(
図2を参照)が取り付け/取り外しが可能に接続される。この仕切り板140により、プレート40の短手方向において、複数の包材150の後端を位置決めすることができる。仕切り板140は、包材150の大きさに応じて係止部材120,130の同じ目盛り位置のスリット110に挿入することで位置決めされる。その結果、
図2に示すように、真空包装機10のシール機構と仕切り板140との間に複数の包材150を載置して真空包装が実施される。
【0012】
また、
図4に示すように、下側シールブロック90の手前側(取手部側)に近接(並行)して、複数の包材150をガイドする傾斜ガイド部材170が設けられる。傾斜ガイド部材170は、長手方向に下側シールブロック90とほぼ同じ長さを有する。傾斜ガイド部材170は、例えばチャンバー30の底面に台座を設けること等により傾斜角度を変えることができる。この傾斜ガイド部材170により、複数の包材150の先端開口部を下側シールブロック90に載置した時に、その包材150を下側シールブロック90とプレート40の底面との間を斜め方向にガイドする。傾斜ガイド部材170の反対側(ヒンジ側)には、下側シールブロック90に近接(並行)してスチームガード180が設けられる。
【0013】
スチームガード180は、長手方向に下側シールブロック90とほぼ同じ長さを有する。スチームガード180は、下側シールブロック90の上面とほぼ同じ高さの水平面部180aと、その水平面部180aの奥側先端に形成された数センチの立ち上げ部180bとを有する。即ち、立ち上げ部180bは、反対側(ヒンジ側)の水平面部180aの先端側に形成されている。立ち上げ部180bは、蓋70を閉じてチャンバー30内を減圧した際に、例えば液体を収容した包材150中の液体が沸騰して、その液体が包材150の開口部から噴出したとしても、外には漏れない壁部の役割を果たすと共に、溢れた液体が水平面部180aに留める役目を果たしている。溢れた液体は、少なくとも一部が気化し、もし残った液体があれば作業後に拭き取られる。
【0014】
例えば、液体を収容した複数の包材150を同時に真空包装する場合、チャンバー30内に発生する水蒸気が多くなり、真空ポンプに悪影響を及ぼすことが予想される。真空包装機10では、真空包装中に包材150から液体が溢れ出ても、立ち上げ部180bの構造によりスチームガード180上に留めることができる。そして、スチームガード180上で水蒸気(少なくとも一部)を結露させることで、チャンバー30内の水蒸気の量を抑えることができ、その結果真空ポンプに悪影響を及ぼすのを防ぐことができる。
【0015】
また、下側シールブロック90と傾斜ガイド部材170との間には、長手方向に並行に補助ブロック190が設けられる。補助ブロック190の上面には、包材150の先端部を弱く接着させる粘着剤(取り外しが可能)が塗布されている。また、下側シールブロック90に近いスチームガード180の水平面部180aにも包材150の先端部を弱く接着させる粘着剤が塗布しても良い。或いは、下側シールブロック90とスチームガード180との間に第2補助ブロックを設けても良い。第2補助ブロックの上面にも、包材の先端部を弱く接着させる粘着剤が塗布される。
【0016】
また、
図4に示すように、蓋70の内側の上側シールブロック100に近接(並行)して膨張取付部材200が長手方向に取り付けられる。膨張取付部材200は、下側シールブロック90および上側シールブロック100より僅かに長い。膨張取付部材200は、両側に設けられるガイド孔が形成された取付片200bと、その取付片200b間(長手方向)を接続する接続部200cと、を有して構成されている。そして、ガイド孔に沿って摺動可能なように膨張検出部材210が長手方向に取り付けられる。膨張検出部材210は、液体を収容した包材(ホットパック)の真空包装時に包材の膨張を検出する。液体ではない被包装物を収容した包材のシールでは、膨張検出部材210による検出は行なわない。
【0017】
図5は、真空包装機10の上下のシールブロック90,100と、ヒーター線300の構成を示す図である。下側シールブロック(ヒーターブロックとも言う)90の上面には、所定幅を有する長尺ヒーター線300が一直線に敷設されている。下側シールブロック90の上方には、下側シールブロック90に対向(同等の幅および長さを有して)して上側シールブロック(シール受け部材とも言う)100が設けられている。複数の包材(例えば、ビニール袋)150は、そのシールしたい開口部を下側シールブロック90の長尺ヒーター線300上に載置して、シール動作が行われる。長尺ヒーター線300の両端は、板バネ310を介してネジ320によって固定接続される。板バネ310は、長尺ヒーター線300にテンションを付与している。ネジ320は、板バネ310を固定する部材でもある。長尺ヒーター線300は、後述する制御装置500によりプレヒート工程およびヒート工程を実行するための通電制御が実行される。
【0018】
図6および
図7は、真空包装機の真空包装工程における、下側シールブロック90と上側シールブロック100、および長尺ヒーター線300の動作を示す図である。
図6(a)は、蓋70が閉じられたときの待機状態を示し、下側シールブロック90と上側シールブロック100とは所定の離間幅を有して待機している。
【0019】
図6(b)は、プレヒート工程に移行した時の長尺ヒーター線300の形態を示している。
図6(b)では、長尺ヒーター線300に短時間(プレヒート時間は、例えば約1秒)電流を流して、弱い熱(点線で表示)を掛けることで、長尺ヒーター線300を伸長させている。つまり、シール工程前に長尺ヒーター線300に線膨張を発生させて、板バネ310のテンションによりフラットな状態を形成する。この時の弱い熱とは、包材150の開口部が溶け込まない温度である。包材の材質に応じたプレヒート時間は、事前の試験データから容易に得ることができる。
【0020】
図7(c)は、真空ポンプを作動してチャンバー30内を真空にすることで、複数の包材150内を真空引きする工程で、複数の包材150の開口部をシールするため、例えば上側シールブロック100を下降させた状態を示している。これにより、複数の包材150の開口部を上下のシールブロック90、100とで挟持する状態となる。
【0021】
図7(d)は、複数の包材150の開口部を挟持した状態で、長尺ヒーター線300に通電してヒート工程(本シールとも言う)を行う状態を示している。
図7(d)では、長尺ヒーター線300を太く表示することで、シール工程用の電流(シール設定秒数の時間)が流れていることを示している。これにより、複数の包材150の開口部が熱で溶けて、シールが完了する。シール工程の通電時間は、プレヒート工程で上昇した温度に応じた時間とする。つまり、プレヒート工程を採用しないシール工程の通電時間に比べ、プレヒート工程を採用するシール工程の通電時間は少ない時間である。
【0022】
次に、
図8乃至
図11を参照して、真空包装機10の動作と、長尺ヒーター線300の制御について説明する。
図8は、
図6(a)の待機状態、および
図6(b)のプレヒート工程の状態におけるチャンバー30の動作制御を示している。
図9は、
図7(c)の上側シールブロック100の下降工程におけるチャンバー30の動作制御を示している。
図10は、
図7(d)のシール工程におけるチャンバー30の動作制御を示している。なお、本実施形態に直接関係しない動作は割愛している。
図11は、
図6(b)のプレヒート、および
図7(d)のシール工程における制御装置500による長尺ヒーター線300の制御動作を示すフローチャートである。
【0023】
図8乃至
図10の真空ポンプの制御機構は、制御装置500、真空ポンプ510、真空電磁弁520、ソフト電磁弁530、シール開閉電磁弁(三方電磁弁)540、ソフト開放電磁弁550、真空開放電磁弁560から構成される。制御装置500には、真空包装動作を実行するために、少なくとも蓋開閉センサー信号、膨張検出信号、圧力センサー信号等が入力されている。そして、制御装置500は、上記した各電磁弁の開閉を制御する制御信号S1乃至S5を出力する。また、制御装置500は、長尺ヒーター線300を設定時間通電するためのヒーター線制御信号を長尺ヒーター線300に出力する。
【0024】
なお、
図8乃至
図10では、側面からの図を示しているため1つの包材(例えばビニール袋)150しか示していないが、複数の包材150が載置されていると理解されたい。また、チャンバー30内の構成は簡易的に示している。さらにシール工程では、上側シールブロック100が下降/上昇するように制御されるが、その吸気通路は省略している。また、ここでは複数の包材150を均一に真空包装するため、段階的に真空値を変えて真空を行うとしているが、1回の真空引き工程でも良い。シール工程では、上側シールブロック100の下降/上昇制御に代えて、下側シールブロック90を上昇/下降制御するようにしても良い。
【0025】
まず、被包装物を入れた包材150をチャンバー30内にセットする。セット工程では、蓋70を開けた状態で、作業員が包材150をプレート40のチャンバー30上に載せるとともに先端開口部(被包装物投入口)を下側シールブロック90上に載せる。包材150をセットした後、手で蓋70を閉じると、蓋開閉検出センサー(図示せず)が蓋70の閉状態を検出して制御装置500に信号を送る。
【0026】
図8において、蓋70が閉じられると15%迄真空引きの工程が実施される。制御装置500は、真空電磁弁520を開くとともに、ソフト電磁弁530の閉状態にしてチャンバー30と真空ポンプ510間の吸気流路600を吸気連通状態とする。また、シール開閉電磁弁(三方電磁弁)540のうち、大気開放側の接続口およびシール閉成駆動流路610の接続口を開状態にし、ポンプ510側の接続口を閉状態とする。なお、真空ポンプ510の稼働状態は、蓋70が開けられるまで維持される。また、真空開放電磁弁560の閉塞状態は、シール冷却工程が終了するまで維持される。
【0027】
制御装置500は、真空ポンプ510を作動してチャンバー30内の減圧を開始し、包材150内の脱気を行う。これにより、チャンバー30内の空気が真空電磁弁520、吸気流路600を通って真空ポンプ510へ吸引されるため、チャンバー30内が真空引きされる。そして、制御装置500は、圧力検出センサー(図示せず)の信号を確認しながらチャンバー30内の気圧を15%迄真空引き(減圧)する。この待機状態で、長尺ヒーター線300のプレヒートを実施する。
【0028】
制御装置500は、
図8の状態で、
図6(b)で示したプレヒート工程を実施する。即ち、
図11に示すように、制御装置300は長尺ヒーター線300に対し、包材150が溶け込まない温度でプレヒートを施す。なお、温度はシール工程の温度に合わせて自動設定(無効を含む)することが望ましい(S100)。
このように、
図6(b)に示したプレヒートを実施することで、上下のシールブロック90、100にて挟持している間の長尺ヒーター線300の温度差を少なくできる為、線膨張を小さくすることが出来る。
【0029】
図9は、包材150の開口部の密閉から40%真空引きの工程における電磁弁および開放弁の制御による真空ポンプ510の動作を示す図である。制御装置500は、
図8の状態からシール開閉電磁弁(三方電磁弁)540のうち、大気開放側の接続口を閉状態にすると共に、シール閉成駆動流路610の接続口とポンプ側の接続口を開状態とする。チャンバー30内の気圧を15%迄減圧したところで、シール閉成駆動流路610を介して閉成用シリンダ620内を吸気することにより上側シールブロック100を下降させることで、下側シールブロック90と上側シールブロック100との間に包材150の開口部を挟み込み密閉させる。制御装置500は、包材150の開口部を密閉したところで、チャンバー30内の気圧を40%迄真空引き(減圧)を行う。これにより、
図7(c)の状態を形成する。
【0030】
図10は、シール工程における電磁弁および開放弁の制御による真空ポンプの動作を示す図である。ソフト開放電磁弁550を閉状態にして、下側シールブロック90と上側シールブロック100との間に包材150の先端開口部を挟み込み密閉させた状態で、長尺ヒーター線300に通電する。
図11に示すように、このシール工程では、包材の材質に応じたシール設定秒数の間、長尺ヒーター線300に通電を行い、真空処理した包材150の開口部を封止する(S200)。
【0031】
大気開放では、真空開放電磁弁560を開状態にすると共に、シール開閉電磁弁(三方弁)540のうち、大気開放側の接続口およびシール閉成駆動流路610の接続口を開く一方、真空ポンプ510側の接続口の閉状態とする。これにより、チャンバー30内が大気圧に戻され、真空包装した包材150が取り出すことができる。
【0032】
図12は、長尺ヒーター線300にプレヒート工程を施したときの、包材150を挟持している間の長尺ヒーター線300の温度差による線膨張の試験データのグラフを示している。この試験では、ヒーター線300の長さを、例えば995mmとする。
試験動作の開始後、プレヒート工程として約1秒間長尺ヒーター線300に通電する。すると、長尺ヒーター線300は、元の温度33℃から91℃に上昇した。プレヒート工程の通電OFFから上側シールブロック100の下降による挟持待ち時間(約1秒)後は、91℃から80℃に低下した。その後、シール工程として長尺ヒーター線300を約3秒間通電して包材150の開口部をシールした。3秒間のシール通電により、80℃から188℃に上昇した。つまり、包材150を挟持している間の長尺ヒーター線300における温度差は188℃-80℃=108℃である。その結果、プレヒート工程を実施することで、長尺ヒーター線300の温度が80℃から188℃に上昇した時の線膨張は1.83mmであった。
実験結果によれば、プレヒート工程で長尺ヒーター線300に通電する時間は0.6秒~1秒が好ましい。
【0033】
図13は、比較例としてプレヒート工程を施さないときの、包材150を挟持している間の長尺ヒーター線300の温度差による線膨張の試験データのグラフを示している。
試験動作の開始後、シール工程で約3秒間長尺ヒーター線300に通電する。すると、長尺ヒーター線300は、元の温度33℃から188℃に上昇した。包材150を挟持している間のヒーター線300における温度差は188℃-33℃=155℃である。その結果、長尺ヒーター線300の温度が33℃から188℃に上昇した時の線膨張は2.62mmであった。
なお、線膨張寸法は以下の式で表現できる。
線膨張寸法ΔL=α×L×Δt
α=線膨張係数、 L=長尺ヒーター線300の長さ、
Δt=温度の変化量(変化後の温度-元の温度)
【0034】
図12と
図13の試験データの比較からも明らかなように、プレヒート工程を実施しない場合の線膨張は2.62mmに対し、プレヒート工程を採用する実施形態では、線膨張は1.83mmに抑えることができた。つまり、シール工程時の線膨張を小さく抑えることが出来るので、長尺ヒーター線300の劣化(破損又は断線など)を軽減することが出来る。なお、ここでは下側シールブロック90に長尺ヒーター線300を敷設する例を説明したが、上側シールブロック100に長尺ヒーター線300を敷設するものにも適用できる。また、下側シールブロック90および上側シールブロック100の両方に長尺ヒーター線を敷設するものにも適用することが出来る。
【0035】
以上説明したように、実施形態の真空包装機は、真空包装時に、チャンバー30内に設けられた上下のシールブロック90、100によって被包装物を収容した包材150の開口部を挟持し、シール工程時にヒーター線300に通電して、挟持した包材150の開口部をシールする真空包装機において、シール工程前(S200)にプレヒート工程(S100)を施す構成である。これにより、プレヒート工程を採用することで、シール工程時の線膨張を小さく抑えることが出来るので、ヒーター線300の隆起や陥没、蛇行等の塑性変形を小さく抑えることができる。その結果、ヒーター線300の破損又は断線などによる劣化を防ぐことが出来る。
【0036】
また、実施形態の真空包装機のヒーター線300は、複数の包材150を同時にシール可能な長さを有して、下側又は上側又は上下のシールブロックにテンションを掛けて敷設される。これにより、特に長尺のヒーター線において、ヒーター線300の隆起や陥没、蛇行等の塑性変形を小さく抑えることができる。
【0037】
また、実施形態の真空包装機は、プレヒート工程によって包材150を挟持している間のヒーター線300の温度差を少なくする構成とする。これにより、ヒーター線300の隆起や陥没、蛇行等の塑性変形を小さく抑えることができる。
【0038】
また、実施形態の真空包装機は、シール工程の温度に合わせてプレヒート工程の温度を自動的に可変する構成とする。これにより、ヒーター線300の隆起や陥没、蛇行等の塑性変形を小さく抑えることができる。
【0039】
また、実施形態の真空包装機は、プレヒート工程でヒーター線300に通電する時間は0.6秒~1秒とする。これにより、ヒーター線300の隆起や陥没、蛇行等の塑性変形を小さく抑えることができる。
【0040】
また、実施形態の真空包装機は、シール工程の通電時間は、プレヒート工程で上昇した温度に応じた時間とする。これにより、ヒーター線300の隆起や陥没、蛇行等の塑性変形を小さく抑えることができる。
【0041】
また、実施形態の真空包装機は、プレヒート工程によって発生する熱は、包材150が溶け込まない温度までとする。これにより、ヒーター線300の隆起や陥没、蛇行等の塑性変形を小さく抑えることができる。
【0042】
また、実施形態の真空包装機は、チャンバー30と、チャンバー30内に設けられ、真空包装時に被包装物を収容した包材150の開口部を挟持する上下のシールブロック90、100と、下側又は上側又は上下のシールブロックにテンションを掛けて敷設されるヒーター線300と、シール工程時にヒーター線300に通電して、挟持した包材150の開口部をシールする制御手段500と、を具備し、制御手段500は、包材150を挟持している間のヒーター線300の温度差を少なくするため、シール工程前にヒーター線300に通電してプレヒート工程を施す構成としている。これにより、プレヒート工程を採用することで、シール工程時の線膨張を小さく抑えることが出来るので、ヒーター線300の破損又は断線などによる劣化を防ぐことが出来る。
【0043】
本発明の実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0044】
10…真空包装機、 20…立方体の筐体、 30…チャンバー
40…プレート、 50…操作パネル、 60…ヒンジ機構、 70…蓋
80…覗き穴、 90…下側シールブロック、 100…上側シールブロック
110…スリット、 120,130…係止部材、 140…仕切り板
150…包材(包装袋)、 170…傾斜ガイド部材
180…スチームガード、 180a…水平面部
190…補助ブロック、 200…膨張取付部材、 200a…ガイド孔
200b…取付片、210…膨張検出部材、 230…膨張検出補助部材
300…長尺ヒーター線、 310…板バネ、 320…ネジ
500…制御装置、 510…真空ポンプ、 520…真空電磁弁
530…ソフト電磁弁、 540…シール開閉電磁弁(三方弁)
550…ソフト開放電磁弁、 560…真空開放電磁弁、 600…吸気流路
610…シール閉成駆動流路、 620…閉成用シリンダ