(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024113450
(43)【公開日】2024-08-22
(54)【発明の名称】積層鉄心の溶接ビードの検査装置
(51)【国際特許分類】
H02K 15/02 20060101AFI20240815BHJP
【FI】
H02K15/02 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023018437
(22)【出願日】2023-02-09
(71)【出願人】
【識別番号】513296958
【氏名又は名称】東芝産業機器システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】石塚 照雄
(72)【発明者】
【氏名】山際 晃平
(72)【発明者】
【氏名】浦野 雅春
【テーマコード(参考)】
5H615
【Fターム(参考)】
5H615AA01
5H615BB14
5H615PP06
5H615SS03
5H615SS05
5H615SS10
5H615SS16
5H615SS57
(57)【要約】 (修正有)
【課題】低コストでかつ検査結果のバラツキを低減し更には生産性の向上を図ることができる積層鉄心の溶接ビードの検査装置を提供する。
【解決手段】積層鉄心の厚み方向に延びる溶接溝6に形成された溶接ビード7の良否を検査する検査装置は、検査時に溶接ビード7に接触することで溶接ビード7の溶接溝6からの飛び出しを検知する検知機構30と、検知機構30を溶接ビード7の長手方向へ移動させる移動機構20と、を備える。検知機構30は、導電性を有する材料で構成され、検査時に積層鉄心の外周面のうち溶接溝6の両外側に接触する外周面検知部材40と、導電性を有する材料で構成されかつ外周面検知部材40と電気的に絶縁され、検査時に溶接ビード7と対向する位置に配置され溶接溝6に対する溶接ビード7の盛り上がりが予め設定された規定値以上である場合に当該溶接ビード7に接触するビード検知部材50と、を有している。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層鉄心の厚み方向に延びる溶接溝に形成された溶接ビードの良否を検査する装置であって、
検査時に前記溶接ビードに接触することで前記溶接ビードの前記溶接溝からの飛び出しを検知する検知機構と、
前記検知機構を前記溶接ビードの長手方向へ移動させる移動機構と、を備え、
前記検知機構は、
導電性を有する材料で構成され、検査時に前記積層鉄心の外周面のうち前記溶接溝の両外側に接触する外周面検知部材と、
導電性を有する材料で構成されかつ前記外周面検知部材と電気的に絶縁され、検査時に前記溶接ビードと対向する位置に配置され前記溶接溝に対する前記溶接ビードの盛り上がりが予め設定された規定値以上である場合に当該溶接ビードに接触するビード検知部材と、を有している、
積層鉄心の溶接ビードの検査装置。
【請求項2】
前記外周面検知部材は、前記溶接溝の長手方向へ回転可能に構成されている、
請求項1に記載の積層鉄心の溶接ビードの検査装置。
【請求項3】
前記外周面検知部材として、前記ビード検知部材を挟む位置に配置され相互に電気的に絶縁された第1外周面検知部材と第2外周面検知部材とを有して構成されている、
請求項1に記載の積層鉄心の溶接ビードの検査装置。
【請求項4】
前記外周面検知部材と前記積層鉄心とが導通した状態であり、かつ、前記ビード検知部材と前記積層鉄心とが導通していない状態であった場合に前記溶接ビードが良好であると判断し、前記外周面検知部材と前記積層鉄心とが導通した状態であり、かつ、前記ビード検知部材と前記積層鉄心とが導通した状態である場合に前記溶接ビードが不良であると判断する処理を実行可能な制御部を更に備える、
請求項1から3のいずれか一項に記載の積層鉄心の溶接ビードの検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、積層鉄心の溶接ビードの検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電動機に用いられる積層鉄心は、電磁鋼板をプレスで打ち抜いたものを積層したのち、外周部分を自動溶接装置によって溶接されて結束される。近年、電動機が搭載される製品の小型化が望まれており、電動機を搭載するためのスペースの余裕が少なくなってきている。そのため、溶接によって形成された溶接ビードが規定値を超えて盛り上がり、積層鉄心の外周から飛び出していると、溶接ビードが他の構造物と干渉して組み立て不能となることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そのため、上述したような積層鉄心については、厳密な寸法管理が必要であるため、溶接ビードに関して厳格な検査を行っている。溶接ビードの検査方法としては、例えば基準となるゲージを用いて作業者の手作業で検査を行うゲージ検査がある。しかしながら、作業者の手作業によるゲージ検査の場合、熟練した技術が必要であることから検査できる作業者が限られている。また、作業者の手作業によるゲージ検査は、作業者の負担が大きく、更には作業者によって判定にバラツキが生じる、といった問題があった。
【0005】
そこで、例えばカメラやレーザセンサ等の光学装置や3次元測定装置等を用いて自動で検査を行うことも考えられる。しかしながら、これらの装置はコストが非常に高く、また、その装置の扱いにも熟練した技術が必要となる。
【0006】
そこで、低コストでかつ検査結果のバラツキを低減し更には生産性の向上を図ることができる積層鉄心の溶接ビードの検査装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態による積層鉄心の溶接ビードの検査装置は、積層鉄心の厚み方向に延びる溶接溝に形成された溶接ビードの前記溶接溝からの飛び出しに関する良否を検査する装置である。積層鉄心の溶接ビードの検査装置は、検査時に前記溶接ビードに接触することで前記溶接ビードの前記溶接溝からの飛び出しを検知する検知機構と、前記検知機構を前記溶接ビードの長手方向へ移動させる移動機構と、を備える。前記検知機構は、導電性を有する材料で構成され、検査時に前記積層鉄心の外周面のうち前記溶接溝の両外側に接触する外周面検知部材と、導電性を有する材料で構成されかつ前記外周面検知部材と電気的に絶縁され、検査時に前記溶接ビードと対向する位置に配置され前記溶接溝に対する前記溶接ビードの盛り上がりが予め設定された規定値以上である場合に当該溶接ビードに接触するビード検知部材と、を有している。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態による検査装置の対象となる積層鉄心の一例を示す斜視図
【
図2】第1実施形態による検査装置の一例を概略的に示す図
【
図3】第1実施形態による検査装置について検知機構の一例を示す平断面図
【
図4】第1実施形態による検査装置について電気的構成の一例を示すブロック図
【
図5】第1実施形態による検査装置について判定内容の一例を示す図
【
図6】第1実施形態による検査装置について制御部で実行される制御内容の一例を示すフローチャート
【
図7】第2実施形態による検査装置について検知機構の一例を示す平断面図
【
図8】第2実施形態による検査装置について電気的構成の一例を示すブロック図
【
図9】第2実施形態による検査装置について判定内容の一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、積層鉄心の溶接ビードの検査装置に係る複数の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、各実施形態において実質的に同一の要素には同一の符号を付して、その説明を省略する。また、以下の説明では、積層鉄心の溶接ビードの検査装置を単に検査装置と称する。各実施形態で説明する検査装置は、積層鉄心に形成された溶接ビードの盛り上がりが規定値を超えているか否か、例えば溶接溝から溶接ビードが飛び出していないか否かを判定するためのものである。
【0010】
まず、各実施形態における検査装置の検査対象となる積層鉄心1について、
図1を参照して説明する。積層鉄心1は、
図1に示すように、複数枚の鉄心片2を積層することにより形成されている。以下、鉄心片2の積層方向において、紙面の上側を積層鉄心1の上端と称し、紙面の下側を積層鉄心1の下端と称することがある。また、各鉄心片2の積層方向を、積層鉄心1の厚み方向と称することがある。
【0011】
各鉄心片2は、例えば薄い帯状の電磁鋼板を図示しないプレス機により環状に打ち抜いて形成されている。積層鉄心1には、中空部3及び複数のスロット4が形成されている。図示しない固定子は中空部3の内側に収容される。スロット4は、中空部3側へ向かって開口しており、図示しない巻線が収容される。また、積層鉄心1は、複数の耳部5を有している。耳部5は、積層鉄心1の外周側から外方へ突出した形状に形成されており、積層鉄心1を図示しない筐体に固定するために用いられる。本実施形態の場合、耳部5は、積層鉄心1の周方向に等間隔となる例えば3箇所に設けられている。なお、中空部3、スロット4、及び耳部5の形状や数および位置は一例であり、積層鉄心1の構成は、
図1に例示した構成例に限定されない。
【0012】
積層された複数の鉄心片2は、例えばアーク溶接等によって溶接されることで相互に結合される。そのため、積層鉄心1は、複数の溶接溝6及び溶接ビード7を有している。溶接溝6及び溶接ビード7は、積層鉄心1の外周面9側に設けられている。溶接溝6は、積層された鉄心片2を互いに溶接するための構成である。溶接溝6は、積層鉄心1の外周面9から窪んだ溝状に形成されており、積層鉄心1の厚み方向つまり鉄心片2の積層方向に沿って積層鉄心1の上端から下端まで延びている。溶接溝6は、例えば積層鉄心1の周方向において等間隔となる例えば6箇所に形成されている。
【0013】
溶接ビード7は、溶接によって発生する溶接痕の盛り上がりである。溶接ビード7は、溶接溝6の幅方向の中央部分に設けられており、溶接溝6に沿って形成されている。溶接溝6は、各鉄心片2を積層しない状態つまり各鉄心片2の単体の状態で既に形成されている。一方で、溶接ビード7は、各鉄心片2を積層しない状態では未だ形成されておらず、各鉄心片2を積層し溶接することで初めて形成される。
【0014】
(第1実施形態)
以下では、第1実施形態による検査装置について
図2から
図5も参照して説明する。検査装置10は、
図2に示すように、架台11と、1組以上の移動機構20及び検知機構30と、を備えている。架台11は、検査対象となる積層鉄心1を載置するための構成である。本実施形態の場合、積層鉄心1は、積層鉄心1の中心軸方向つまり積層方向が上下方向を向く姿勢で架台11に載置される。移動機構20は、検知機構30を、架台11に載置された積層鉄心1の厚み方向に沿って、つまり溶接溝6及び溶接ビード7の長手方向に沿って移動させるための構成である。
【0015】
本実施形態の場合、移動機構20は、検知機構30を、
図2の矢印Aで示す方向すなわち上下方向に移動させる。移動機構20は、電力や空気圧若しくは油圧など外部からの動力原を受けて駆動する構成であり、例えばエアシリンダ、電動シリンダ、リニアステージ、モータ及びラックアンドピニオンなどで構成することができる。移動機構20は、例えば直進方向に移動可能に構成されて検知機構30を取り付け可能な移動部材21を有して構成することができる。
【0016】
検知機構30は、検査時に溶接ビード7に接触することで溶接ビード7の溶接溝6からの飛び出しを検知するための構成である。検知機構30は、
図3に示すように、外周面検知部材40、ビード検知部材50、軸受け部材31、支持部材32、接続部材33、弾性部材34、及び絶縁部材35、36を有している。
【0017】
外周面検知部材40は、金属などの剛性及び導電性を有する材料で構成されている。また、外周面検知部材40は、全体として外径の異なる複数の円柱又は円筒を組み合わせた形状に形成されている。外周面検知部材40は、外周面接触部41を有している。外周面接触部41は、外周面検知部材40の外周面を構成している。外周面接触部41は、検査時に、積層鉄心1の外周面9のうち溶接溝6の幅方向に対する両外側に接触する部分である。
【0018】
本実施形態の場合、外周面検知部材40は、例えば第1外周面検知部材401と第2外周面検知部材402とに分割したものを組み合わせて構成することができる。第1外周面検知部材401及び第2外周面検知部材402は、それぞれ外周面接触部41を有している。第1外周面検知部材401と第2外周面検知部材402とは、例えば導通部材403を介して相互に電気的に接続されている。導通部材403は、例えば導電性を有する芯材の外側面に電気絶縁性を有する層を設けた部材で構成されている。そして、導通部材403は、両端部のそれぞれが第1外周面検知部材401及び第2外周面検知部材402に接触しており、ビード検知部材50との絶縁を維持した状態で、第1外周面検知部材401と第2外周面検知部材402とを電気的に接続している。
【0019】
ビード検知部材50は、外周面検知部材40と同様に、金属などの剛性及び導電性を有する材料で構成されている。また、ビード検知部材50は、全体として外径の異なる複数の円柱又は円筒を組み合わせた形状に形成されている。本実施形態の場合、外周面検知部材40とビード検知部材50との間に絶縁部材35が設けられている。絶縁部材35は、樹脂、ガラス、若しくはセラミックなどの電気絶縁性を有する部材で構成されている。これにより、ビード検知部材50と外周面検知部材40とは、相互に電気的に絶縁されている。
【0020】
ビード検知部材50は、ビード接触部51を有している。ビード接触部51は、外周面検知部材40の外周面を構成する。ビード接触部51は、ビード検知部材50のうち検査時に溶接ビード7と対向する位置に配置される部分である。また、ビード接触部51は、検査時に、溶接溝6に対する溶接ビード7の盛り上がりが予め設定された規定値以上である場合に当該溶接ビード7に接触する部分である。規定値は、例えばユーザ等が積層鉄心1の仕様などに応じて適宜設定することができる。
【0021】
この場合、外周面接触部41は、ビード接触部51に対して積層鉄心1の周方向の両外側に設けられている。すなわち、ビード接触部51は、外周面接触部41によって挟まれている。外周面接触部41及びビード接触部51は、積層鉄心1のうち耳部5を除いた部分の外周面に沿って湾曲しかつ連続した湾曲面に形成することができる。なお、外周面接触部41及びビード接触部51は、湾曲面状に限られず、製造が容易な平坦面でも良い。
【0022】
外周面検知部材40は、溶接溝6の長手方向へ回転可能に構成されている。本実施形態の場合、外周面検知部材40とビード検知部材50とは一体的に回転可能に構成されている。この場合、外周面検知部材40及びビード検知部材50は、それぞれ軸部42、52を有している。各軸部42、52の中心軸Jは共通しており、移動部材21の移動方向に対して直角方向、つまり積層鉄心1の外周面9の接線方向を向いている。
【0023】
各軸部42、52は、それぞれ軸受け部材31を介して支持部材32に回転可能に支持されている。軸受け部材31及び支持部材32は、金属などの導電性を有する部材で構成されている。以下の説明では、軸受け部材31及び支持部材32のうち、一方を第1軸受け部材311及び第1支持部材321と称し、他方を第2軸受け部材312及び第2支持部材322と称することがある。第1軸受け部材311及び第1支持部材321と、第2軸受け部材312及び第2支持部材322とは、分離された別部材で構成されており電気的に接続されていない。
【0024】
図3の例において、第1軸受け部材311は、外周面検知部材40の軸部42を回転可能に支持している。そのため、外周面検知部材40は、第1軸受け部材31を介して第1支持部材321に電気的に接続されている。また、第2軸受け部材312は、ビード検知部材50の軸部52を回転可能に支持している。そのため、ビード検知部材50は、第2軸受け部材312を介して第2支持部材322に電気的に接続されている。
【0025】
接続部材33は、検知機構30を移動部材21に接続するための構成である。接続部材33は、例えば金属で構成することができる。この場合、接続部材33のうち積層鉄心1側には、絶縁部材36を介して第1支持部材321及び第2支持部材322が固定されている。絶縁部材36は、絶縁部材35と同様に、樹脂、ガラス、若しくはセラミックなどの電気絶縁性を有する部材で構成されている。これにより、絶縁部材36は、第1支持部材321と第2支持部材322とが、接続部材33を介して相互に電気的に接続することを防いでいる。なお、接続部材33を、例えばエンジニアリングプラスチックなどのように剛性及び電気絶縁性を有する部材で構成した場合には、絶縁部材36を省略することができる。
【0026】
接続部材33のうち積層鉄心1に対する反対側は、移動部材21に接続されている。接続部材33は、検知機構30が移動部材21の移動方向に対して直角方向へ移動可能となるように接続している。すなわち、接続部材33は、移動部材21に対して、積層鉄心1の溶接溝6から離れる方向及び近づく方向、つまり
図2及び
図3の矢印Bで示す方向へ移動可能に構成されている。例えば接続部材33は、支持部材32に摺動可能に通された摺動部331を有して構成することができる。
【0027】
弾性部材34は、検知機構30に対して、検知機構30が積層鉄心1側へ向かう方向の弾性力を作用させる機能を有する。弾性部材34は、例えばコイルスプリングで構成することができる。弾性部材34がコイルスプリングである場合、弾性部材34は、弾性部材34の内側に摺動部331が通されて、弾性部材34の自然長に対して常に圧縮された状態で移動部材21と接続部材33との間に配置されている。なお、弾性部材34は、コイルスプリングに限られず、例えば他の種類のばねや、さらには空圧式又は油圧式のダンパなどで構成することもできる。
【0028】
積層鉄心1は、検査前の状態において、つまり外周面接触部41が積層鉄心1に接触していない状態において、外周面接触部41のうち積層鉄心1側の縁部分と、積層鉄心1の外周側の縁部分とが、平面視で僅かに重なる位置に配置される。そして、検査が開始されると、検知機構30は、外周面接触部41が積層鉄心1に接触しながら下降する。このとき、検知機構30は、積層鉄心1から離れる方向へ移動し、弾性部材34を圧縮しながら
図3の紙面上側へ押し込まれる。すると、圧縮された弾性部材34は、外周面接触部41が積層鉄心1の外周面9に押し付ける方向へ弾性力を作用させ、これにより外周面接触部41は積層鉄心1の外周面9に密着する。したがって、検知機構30は、積層鉄心1の外径の寸法誤差を吸収でき、その結果、外周面接触部41が積層鉄心1に接触しないことに基づく検査の失敗を低減することができる。
【0029】
検査装置10は、外周面側電流計測部A1、ビード側電流計測部A2、及び電源V1、V2を更に備えている。外周面側電流計測部A1は、外周面検知部材40と積層鉄心1との間に流れる電流を計測するためのものである。すなわち、外周面側電流計測部A1は、外周面検知部材40と積層鉄心1との間の電気的な導通を検出する機能を有する。ビード側電流計測部A2は、ビード検知部材50と積層鉄心1との間に流れる電流を計測するためのものである。すなわち、ビード側電流計測部A2は、ビード検知部材50と積層鉄心1との間の電気的な導通を検出する機能を有する。
【0030】
本実施形態の場合、軸受け部材31及び支持部材32は導電性を有する部材で構成されている。すなわち、外周面検知部材40と第1軸受け部材311と第1支持部材321とは電気的に導通している。そこで、外周面側電流計測部A1に接続された導線91の他方の端部は、回転する外周面検知部材40の軸部42ではなく、回転しない第1支持部材321に接続されている。電源V1は、外周面検知部材40と積層鉄心1との間に電位差を与えるためのものである。
【0031】
また、ビード検知部材50と第2軸受け部材312と第2支持部材322とは電気的に導通している。そこで、ビード側電流計測部A2に接続された導線92の他方の端部は、回転するビード検知部材50の軸部52ではなく、回転しない第2支持部材322に接続されている。電源V2は、ビード検知部材50と積層鉄心1との間に電位差を与えるためのものである。
【0032】
ここで、外周面検知部材40は、検査時に積層鉄心1の外周面のうち溶接溝6の両外側に接触するように構成されている。この場合、外周面検知部材40が積層鉄心1に接触していると、外周面検知部材40と積層鉄心1との間に電流が生じる。一方で、外周面検知部材40が積層鉄心1に接触していなければ、外周面検知部材40と積層鉄心1との間には電流は生じない。そのため、外周面側電流計測部A1が電流を計測していれば、外周面検知部材40が積層鉄心1に接触している状態であることがわかる。これに対し、外周面側電流計測部A1が電流を計測していなければ、外周面検知部材40が積層鉄心1から離れている状態であることがわかる。
【0033】
また、ビード検知部材50は、検査時に溶接ビード7と対向する位置に配置され、かつ、溶接溝6に対する溶接ビード7の盛り上がりが予め設定された規定値以上である場合に溶接ビード7に接触するように構成されている。この場合、ビード検知部材50が溶接ビード7に接触していると、ビード検知部材50と積層鉄心1との間に電流が生じる。一方で、ビード検知部材50が溶接ビード7に接触していなければ、ビード検知部材50と積層鉄心1との間には電流は生じない。そのため、ビード側電流計測部A2が電流を計測していなければ、ビード検知部材50が溶接ビード7に接触していない状態であることがわかる。すなわち、ビード側電流計測部A2が電流を計測していなければ、溶接ビード7の盛り上がり量が規定値未満であり、検査対象の積層鉄心1が良品であることがわかる。
【0034】
これに対し、ビード側電流計測部A2が電流を計測していれば、ビード検知部材50が溶接ビード7に接触した状態であることがわかる。すなわち、ビード側電流計測部A2が電流を計測していれば、溶接ビード7の盛り上がり量が規定値以上であること、換言すれば検査対象の積層鉄心1が不良品であることがわかる。以下の説明では、外周面側電流計測部A1及びビード側電流計測部A2において、それぞれ電流を計測している状態を「ON」と称し、電流を計測していない状態を「OFF」と称することがある。
【0035】
図4に示すように、検査装置10は、制御部60を備えている。制御部60は、例えばPLCやパソコンなどのように演算部601及び記憶部602を有して任意のプログラミングが可能な汎用的なコンピュータや、専用の制御回路などで構成することができる。なお、PLCは、Programmable Logic Controllerの略である。演算部601は、例えばCPUを含んで構成されており、各種の演算を行う。記憶部602は、例えば演算部601における演算結果や各種のコンピュータプログラムを記憶するための記憶領域である。
【0036】
制御部60は、検査装置10の動作を制御するとともに、検査結果を判断しその検査結果を出力する機能を有する。制御部60は、外周面検知部材40と積層鉄心1との導通状態、及びビード検知部材50と積層鉄心1との導通状態に基づいて、溶接ビード7の良否を判定する処理を実行する。具体的には、制御部60は、外周面検知部材40と積層鉄心1とが導通した状態であり、かつ、ビード検知部材50と積層鉄心1とが導通していない状態であった場合には、溶接ビード7が良好であると判断する。また、制御部60は、外周面検知部材40と積層鉄心1とが導通した状態であり、かつ、ビード検知部材50と積層鉄心1とが導通した状態である場合には溶接ビード7が不良であると判断する。
【0037】
検査装置10は、始端センサ61、終端センサ62、出力部63、外周面側電流計測部A1、及びビード側電流計測部A2を備えている。始端センサ61、終端センサ62、出力部63、外周面側電流計測部A1、及びビード側電流計測部A2は、制御部60に電気的に接続されている。
【0038】
始端センサ61及び終端センサ62は、移動部材21の位置を検出する機能を有する。始端センサ61及び終端センサ62は、例えば光電スイッチや近接スイッチなどで構成することがきるが、移動部材21の位置を検出可能なものであれば検出原理や接触方式又は非接触方式のいずれであるかは特に限定されない。
【0039】
始端センサ61は、移動部材21の移動範囲の開始位置の近傍、
図2の例では上端位置Sの近傍に設けられている。そして、始端センサ61は、移動部材21が移動範囲における開始位置S、この場合、
図2における移動部材21の移動範囲における上端位置Sに位置しているか否かを検出する。始端センサ61は、移動部材21が始端位置Sに位置している場合つまり移動部材21を検出している場合は「ON」状態となり、移動部材21が始端位置Sに位置していない場合つまり移動部材21を検出していない場合は「OFF」状態となる。
【0040】
終端センサ62は、移動部材21の移動範囲の終了位置Eの近傍、
図2の例では下端位置Eの近傍に設けられている。そして、終端センサ62は、移動部材21が移動範囲における終了位置E、この場合、
図2における移動部材21の移動範囲における下端位置Eに位置しているか否かを検出する。終端センサ62は、移動部材21が終端位置Eに位置している場合つまり移動部材21を検出している場合は「ON」状態となり、移動部材21が終端位置Eに位置していない場合つまり移動部材21を検出していない場合は「OFF」状態となる。
【0041】
出力部63は、検査装置10の判定結果をユーザに提示する機能を有している。出力部63は、例えばディスプレイやスピーカ若しくはブザーなどで構成することができ、表示や音などで判定結果をユーザに提示する。
【0042】
制御部60は、
図5に示すように、外周面側電流計測部A1、ビード側電流計測部A2、始端センサ61、及び終端センサ62の「ON」及び「OFF」の組み合わせにより、検査状態及び検査結果を判定する処理を実行することができる。すなわち、始端センサ61が「ON」で、かつ終端センサ62が「OFF」である場合、制御部60は、移動部材21及び検知機構30が
図2の上端位置Sに位置している、すなわち検査が実行前の待機状態であると判断する。
【0043】
また、始端センサ61が「OFF」で、かつ終端センサ62が「ON」である場合、制御部60は、移動部材21及び検知機構30が
図2の下端位置Eに位置している、すなわち検査が終了した状態であると判断する。そして、始端センサ61及び終端センサ62のいずれもが「OFF」である場合、制御部60は、移動部材21及び検知機構30が
図2の上端位置S及び下端位置Eのいずれもから離れた位置である、すなわち検査中の状態であると判断する。
【0044】
また、検査中において、外周面側電流計測部A1が「ON」であり、かつビード側電流計測部A2が「OFF」である場合、外周面接触部41は積層鉄心1に接触し、かつビード接触部51は溶接ビード7に接触していないことを意味する。したがって、この場合、制御部60は、検査対象である積層鉄心1の溶接ビード7が規定値に収まっていると判断する。なお、
図5では、溶接ビード7の盛り上がりが規定値に収まっていることを「OK」の文字で示している。
【0045】
また、検査中において、外周面側電流計測部A1及びビード側電流計測部A2のいずれもが「OFF」である場合、外周面接触部41及びビード接触部51の両方が積層鉄心1及び溶接ビード7に接触していないことを意味する。したがって、この場合、制御部60は、検査が正常に行われていないつまり検査異常であると判断する。
【0046】
また、検査中において、ビード側電流計測部A2が「ON」である場合、ビード接触部51が溶接ビード7に接触していることを意味する。したがって、この場合、制御部60は、検査対象である積層鉄心1の溶接ビード7が規定値を超えて盛り上がっていると判断する。なお、
図5では、溶接ビード7の盛り上がりが規定値を超えていることを「NG」の文字で示している。
【0047】
そして、制御部60は、検査の開始から終了までの期間、つまり上端位置Sから下端位置Eに亘って全て「OK」の状態が維持された場合に、検査対象の積層鉄心1が良品であるつまり検査結果が合格である判定する。一方、制御部60は、検査の開始から終了までの期間、つまり上端位置Sから下端位置Eに亘って一か所でも「NG」が検出された場合には、検査対象の積層鉄心1が不良品であるつまり検査結果が不合格であると判定する。
【0048】
次に、
図6も参照して、制御部60で実行される制御フローについて説明する。制御部60は、検査を開始すると、ステップS11に処理を移行し、移動機構20を動作させて移動部材21とともに検知機構30の移動を開始させる。すると、移動部材21は、
図2の開始位置Sから終端位置Eこの場合下方へ向けて移動を開始する。次に、制御部60は、ステップS12において、現在の判定がOKであるか否かを判断する。
【0049】
現在の判定がOKでない場合(ステップS12でNO)、すなわち
図5に示す検査異常又はNGとなった場合、制御部60は、ステップS13に処理を移行させ、移動機構20の動作を異常停止させて、検査を中断する。そして、制御部60は、ステップS15へ処理を移行させる。
【0050】
一方で、現在の判定がOKである場合(ステップS12でYES)、制御部60は、ステップS14に処理を移行させる。そして、制御部60は、ステップS14において、終端センサ62がONしたか否か、すなわち移動部材21が終端位置Eに到達したか否かを判断する。制御部60は、終端センサ62がOFFである場合(ステップS14でNO)、すなわち移動部材21が未だ終端位置Eに到達していない場合、ステップS12に処理を戻し検査を継続する。そして、移動部材21が未だ終端位置Eに到達し終端センサ62がONになると(ステップS14でYES)、制御部60は、ステップS15へ処理を移行させる。
【0051】
そして、制御部60は、ステップS15において、出力部63を用いて検査結果を報知する。検査結果が良品つまり合格であった場合、制御部60は、出力部63を用いて、例えば検査結果が合格である旨の文字を表示させたり合格を想起させる音声を再生したりすることで、検査結果を報知する。また、検査結果が不良品つまり不合格であった場合、制御部60は、出力部63を用いて、例えば検査結果が不合格である旨の文字を表示させたり不合格であることを想起させる音声を再生したりすることで、検査結果を報知する。そして、制御部60は、一連の検査を終了させる。なお、出力部63は、例えば上述したように検査結果を報知することに代えて、又は検査結果を報知することに加えて、検査結果を電気信号として外部の装置に出力する構成でも良い。これによれば、検査装置10を、例えば自動ラインで使用することができる。
【0052】
以上説明した実施形態によれば、検査装置10は、積層鉄心1の厚み方向に延びる溶接溝6に形成された溶接ビード7の良否を検査する装置である。検査装置10は、移動機構20と、検知機構30と、を備える。移動機構20は、検知機構30を溶接ビード7の長手方向へ移動させる機能を有する。検知機構30は、検査時に溶接ビード7に接触することで溶接ビード7の溶接溝6からの飛び出しを検知する機能を有する。
【0053】
検知機構30は、外周面検知部材40と、ビード検知部材50と、を有する。外周面検知部材40は、導電性を有する材料で構成され、検査時に積層鉄心1の外周面のうち溶接溝6の両外側に接触する。ビード検知部材50は、導電性を有する材料で構成されかつ外周面検知部材40と電気的に絶縁されている。そして、ビード検知部材50は、検査時に溶接ビード7と対向する位置に配置され溶接溝6に対する溶接ビード7の盛り上がりが予め設定された規定値以上である場合に当該溶接ビード7に接触する。
【0054】
これによれば、検査装置10又はユーザは、検査時における、外周面検知部材40と積層鉄心1との導通状態、及びビード検知部材50と積層鉄心1との導通状態、に基づいて溶接ビード7の良否を判断することができる。このたため、実施形態の検査装置10によれば、溶接ビード7の検査結果に人の判断が関与しないため、作業者がゲージ検査を行った場合等に生じる検査結果のバラツキを低減することができる。
【0055】
また、実施形態の検査装置10によれば、溶接ビード7の検査を人の判断に寄らずに自動化することができ、その結果、溶接ビード7の検査に関する作業性の向上すなわち積層鉄心1の生産性の向上を図ることができる。更には、実施形態の検査装置10によれば、コストの高い光学装置や3次元測定装置を用いていないため、高精度でバラツキの少ない検査装置10を低コストで実現することができる。
【0056】
外周面検知部材40は、溶接溝6の長手方向へ回転可能に構成されている。これによれば、外周面検知部材40が、積層鉄心1の外周面のうち溶接溝6の両外側に接触して移動する際に、外周面検知部材40が回転するため、外周面検知部材40と積層鉄心1との接触部分にひっかき傷などの発生を抑制できる。
【0057】
また、実施形態の検査装置10は、制御部60を更に備えている。制御部60は、外周面検知部材40と積層鉄心1とが導通した状態であり、かつ、ビード検知部材50と積層鉄心1とが導通していない状態であった場合に溶接ビード7が良好つまり検査が合格であると判断する。また、制御部60は、外周面検知部材40と積層鉄心1とが導通した状態であり、かつ、ビード検知部材50と積層鉄心1とが導通した状態である場合に溶接ビード7が不良であるつまり検査が不合格であると判断する。これによれば、検査の良否を制御部60が自動で判断するため、更に生産性を向上させることができる。
【0058】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について
図7から
図9を参照して説明する。第2実施形態は、検知機構30の具体的構成が第1実施形態と異なる。なお、本実施形態の制御部60で実行される制御フローは、第1実施形態と同様である。第2実施形態の検知機構30は、第1実施形態の検知機構30に共通する構成として、軸受け部材31、支持部材32、接続部材33、弾性部材34、及び絶縁部材35、36を有している。また、第2実施形態の検知機構30は、第1実施形態の検知機構30と異なる構成として、2つの外周面検知部材701、702、1つのビード検知部材80、及び軸部材37を有している。
【0059】
外周面検知部材701、702は、第1実施形態の外周面検知部材40に相当する構成であり、金属などの剛性及び導電性を有する材料で構成されている。外周面検知部材701、702は、ビード検知部材80を挟む位置に配置されており、相互に電気的に絶縁されている。外周面検知部材701、702は、全体として外径の異なる複数の円柱又は円筒を組み合わせた形状に形成されている。外周面検知部材701、702は、相互に分離されており、同一形状の部品を対称に配置して構成されている。すなわち、外周面検知部材701、702は、それぞれ外周面接触部71及び軸部72を有している。外周面接触部71及び軸部72は、第1実施形態の外周面接触部41及び軸部42に相当する。以下の説明では、2つの外周面検知部材701、702のうち一方を第1外周面検知部材701と称し、他方を第2外周面検知部材702と称することがある。
【0060】
第1外周面検知部材701の軸部72は、第1軸受け部材311に回転可能に支持されている。そして、第1外周面検知部材701は、第1軸受け部材311を介して第1支持部材321に電気的に接続されている。また、第2外周面検知部材702の軸部72は、第2軸受け部材312に回転可能に支持されている。そして、第2外周面検知部材702は、第2軸受け部材312を介して第2支持部材322に電気的に接続されている。
【0061】
ビード検知部材80は、第1実施形態のビード検知部材50に相当する構成である。ビード検知部材80は、ビード検知部材50のビード接触部51に相当する構成として、ビード接触部81を有している。本実施形態の場合、ビード検知部材80は、例えば円筒又は円環板状に構成されており、2つの外周面検知部材701、702に挟まれて配置されている。外周面検知部材701、702とビード検知部材80との間には絶縁部材35が配置されており、これにより、外周面検知部材701、702とビード検知部材80とは電気的に絶縁されている。すなわち、ビード検知部材80は、第1支持部材321及び第2支持部材322のいずれに対しても電気的に絶縁されている。
【0062】
軸部材37は、第1外周面検知部材701、第2外周面検知部材702、及びビード検知部材80の中心に通された軸であり、第1外周面検知部材701、第2外周面検知部材702、及びビード検知部材80を相互に連結している。この場合、軸部材37は、例えば第1外周面検知部材701と第2外周面検知部材702とビード検知部材80とが一体的に回転するように、第1外周面検知部材701と第2外周面検知部材702とビード検知部材80とを連結する構成とすることができる。なお、第1外周面検知部材701と第2外周面検知部材702とビード検知部材80とが相対的に回転可能な構成であっても良い。
【0063】
また、第2実施形態の検査装置10は、
図7及び
図8に示すように、外周面側電流計測部A11、A12、ビード側電流計測部A2、及び電源V11、V12、V2を備えている。この場合、外周面側電流計測部A11、A12は、例えば導線911、912を介してそれぞれ外周面検知部材701、702に電気的に接続されている。また、ビード側電流計測部A2は、第1実施形態と同様に、例えば導線92を介してビード検知部材80に電気的に接続されている。以下の説明では、外周面側電流計測部A11、A12のうち、第1外周面検知部材701に接続された方を第1外周面側電流計測部A11と称し、第2外周面検知部材702接続された方を第2外周面側電流計測部A12と称することがある。
【0064】
制御部60は、
図9に示すように、第1外周面側電流計測部A11、第2外周面側電流計測部A12、ビード側電流計測部A2、始端センサ61、及び終端センサ62の「ON」及び「OFF」の組み合わせにより、検査状態及び検査結果を判定する処理を実行することができる。そして、本実施形態では、制御部60は、第1外周面側電流計測部A11及び第2外周面側電流計測部A12の「ON」、「OFF」によって検査状態を更に詳細に判定することができる。
【0065】
すなわち、制御部60は、始端センサ61及び終端センサ62の「ON」、「OFF」の組み合わせにより、第1実施形態と同様に、待機中であるか、検査中であるか、又は検査終了であるかを判断する。また、制御部60は、ビード側電流計測部A2が「ON」であることに基づいて、検査結果がNGであること、すなわち積層鉄心1の溶接ビード7が規定値を超えて盛り上がっていることを判断する。
【0066】
そして、制御部60は、第1外周面側電流計測部A11及び第2外周面側電流計測部A12の「ON」、「OFF」の組み合わせにより、現在の検査状態が正常であるか否か、すなわち2つの外周面検知部材701、702が積層鉄心1の外周面に接触しているか否かを判断することができる。つまり、外周面側電流計測部A11、A12のいずれもが「ON」であるということは、外周面検知部材701、702の両方が積層鉄心1に接触していることを意味する。この場合、制御部60は、検査が正常に行われていると判断する。
【0067】
一方で、外周面側電流計測部A11、A12のずれかが「ON」で他方が「OFF」であるということは、外周面検知部材701、702の一方が積層鉄心1に接触し他方が接触していないことを意味する。この場合、例えば積層鉄心1の外周面に対して検知機構30が傾いて配置されるなどして、外周面検知部材701、702の一方側が積層鉄心1の外周面から浮き上がってしまっていることなどが考えられる。そして、この場合には正常な検査結果を得ることができない。したがって、制御部60は、外周面側電流計測部A11、A12のずれかが「ON」で他方が「OFF」となった場合には、検査に異常が生じていると判断する。そして、制御部60は、外周面側電流計測部A11、A12のずれも「ON」でかつビード側電流計測部A2が「OFF」である場合に、検査結果がOKであると判断する。
【0068】
以上説明したように、第2実施形態による検査装置10は、ビード検知部材80を挟む位置に配置され相互に電気的に絶縁された第1外周面検知部材701と第2外周面検知部材702とを有して構成されている。これによれば、第1外周面検知部材701と第2外周面検知部材702との接触状態つまり検査状態をより詳細に判断することができるため、検査の精度を更に向上させることができる。
【0069】
本開示は、実施例に準拠して記述されたが、本開示は当該実施例や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
【符号の説明】
【0070】
1…積層鉄心、6…溶接溝、7…溶接ビード、9…外周面、10…検査装置、20…移動機構、30…検知機構、40…外周面検知部材、401…第1外周面検知部材、外周面検知部材、402…第2外周面検知部材、外周面検知部材、50…ビード検知部材、60…制御部、701…第1外周面検知部材、外周面検知部材、702…第2外周面検知部材、外周面検知部材、80…ビード検知部材