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特開2024-113458車載センサ設置構造、及び音響センサ装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024113458
(43)【公開日】2024-08-22
(54)【発明の名称】車載センサ設置構造、及び音響センサ装置
(51)【国際特許分類】
   H04R 1/02 20060101AFI20240815BHJP
   H04R 17/02 20060101ALI20240815BHJP
   G01S 7/521 20060101ALI20240815BHJP
【FI】
H04R1/02 107
H04R17/02
G01S7/521 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】23
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023018454
(22)【出願日】2023-02-09
(71)【出願人】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【弁理士】
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】小山 優
(72)【発明者】
【氏名】廣橋 義寛
(72)【発明者】
【氏名】玉津 幸政
(72)【発明者】
【氏名】新原 竜馬
【テーマコード(参考)】
5D004
5D017
5J083
【Fターム(参考)】
5D004DD03
5D004DD04
5D017BC01
5D017BC14
5J083AA05
5J083AB13
5J083AC40
5J083AD02
5J083AD18
5J083AE01
5J083AE08
5J083AF09
5J083AF11
5J083AG03
5J083CA07
5J083CA10
5J083CA35
5J083CB03
(57)【要約】
【課題】音及び振動を検出する音響センサ装置に適した取り付けを可能にする車載センサ設置構造等の提供。
【解決手段】車載センサ設置構造は、外部構造部10及び音響センサ装置100を備えている。外部構造部10は、板状を呈しており、車両Veの後方を向く姿勢で当該車両Veの外部に露出する後方外表面11を有している。音響センサ装置100は、センサ筐体30及びMEMSマイク70を有している。センサ筐体30は、外部構造部10において後方外表面11の裏側となる後方内側面12に対して保持される。MEMSマイク70は、車両Veの外部から到来する音及び外部構造部内の振動を検出する車外集音面71を外部構造部10へ向けた姿勢で、センサ筐体30に収容されている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(Ve)の後方を向く姿勢で当該車両の外部に露出する後方外表面(11)を有し、板状を呈する外部構造部(10)と、
前記外部構造部において前記後方外表面の裏側となる後方内側面(12)に対して保持されるセンサ筐体(30)、及び前記車両の外部から到来する音及び前記外部構造部内の振動を検出する車外集音面(71)を前記外部構造部へ向けた姿勢で前記センサ筐体に収容される音検出センサ部(70,270)、を有する音響センサ装置(100)と、
を備える車載センサ設置構造。
【請求項2】
前記センサ筐体には、貼付面(31)が設けられ、
前記貼付面を前記後方内側面に保持させる薄膜状の接着層(20)、をさらに備える請求項1に記載の車載センサ設置構造。
【請求項3】
前記外部構造部は、ガラスによって形成されている請求項2に記載の車載センサ設置構造。
【請求項4】
車両(Ve)の上方を向く姿勢で当該車両の外部に露出する上方外表面(13)を有し、板状を呈する外部構造部(10)と、
前記外部構造部において前記上方外表面の裏側となる上方内側面(14)に対して保持されるセンサ筐体(30)、及び前記車両の外部から到来する音及び前記外部構造部内の振動を検出する車外集音面(71)を前記外部構造部へ向けた姿勢で前記センサ筐体に収容される音検出センサ部(70,270)、を有する音響センサ装置(100)を前記上方内側面に保持させる薄膜状の接着層(20)と、
を備える車載センサ設置構造。
【請求項5】
前記センサ筐体には、貼付面(31)が設けられ、
前記接着層は、前記貼付面を前記上方内側面に保持させる請求項4に記載の車載センサ設置構造。
【請求項6】
車両(Ve)の上方を向く姿勢で当該車両の外部に露出する上方外表面(13)を有し、板状を呈する外部構造部(10)と、
前記外部構造部において前記上方外表面の裏側となる上方内側面(14)に対して保持されるセンサ筐体(30)、及び前記車両の外部から到来する音及び前記外部構造部内の振動を検出する車外集音面(71)を前記外部構造部へ向けた姿勢で前記センサ筐体に収容される音検出センサ部(70,270)、を有する音響センサ装置(100)を前記上方内側面に保持させるリテーナ部材(60)と、
を備える車載センサ設置構造。
【請求項7】
前記音響センサ装置は、複数の前記音検出センサ部を有する請求項1,4及び6のいずれか一項に記載の車載センサ設置構造。
【請求項8】
前記音響センサ装置は、前記車両の水平方向に沿って並ぶ複数の前記音検出センサ部を有する請求項1,4及び6のいずれか一項に記載の車載センサ設置構造。
【請求項9】
複数の前記音検出センサ部から出力される検出信号は、信号処理装置(90)に入力され、
前記信号処理装置は、複数の前記検出信号の信号差に基づく信号処理を実施する請求項7に記載の車載センサ設置構造。
【請求項10】
前記センサ筐体には、複数の前記音検出センサ部を隔てる遮蔽壁(45)が設けられる請求項7に記載の車載センサ設置構造。
【請求項11】
前記遮蔽壁には、複数の前記音検出センサ部を隔てる中空ないし吸音材を充填する遮音空間(46a)が設けられる請求項10に記載の車載センサ設置構造。
【請求項12】
前記音響センサ装置は、
前記音検出センサ部である第1音検出センサ部と、
前記車両の内部から到来する音を検出する車内集音面(73)を含む第2音検出センサ部(170,370)と、
を有する請求項1,4及び6のいずれか一項に記載の車載センサ設置構造。
【請求項13】
前記音響センサ装置は、前記センサ筐体を囲む囲繞壁(61)、及び前記外部構造部に対して保持される保持部(62)、を含むリテーナ部材(60)、をさらに有する請求項1又は4に記載の車載センサ設置構造。
【請求項14】
板状を呈する車両の外部構造部(10)に保持される音響センサ装置であって、
音及び前記外部構造部内の振動を検出する集音面(71)を有する音検出センサ部(70,270)と、
前記外部構造部の内側面(12,14)に対して、接着層(20)にて保持し、前記集音面が前記内側面に沿う姿勢で前記音検出センサ部を収容するセンサ筐体(30)と、
を備える音響センサ装置。
【請求項15】
前記センサ筐体には、貼付面(31)が設けられ、
前記接着層は、薄膜状であり、前記貼付面を前記外部構造部の内側面(12,14)に保持する請求項14に記載の音響センサ装置。
【請求項16】
前記センサ筐体は、前記貼付面と前記集音面との間に中空集音空間(34)を区画する請求項15に記載の音響センサ装置。
【請求項17】
前記音検出センサ部が実装され、前記センサ筐体に収容される板状の回路基板(80)、をさらに備え、
前記回路基板は、前記センサ筐体と協同で前記中空集音空間を区画する請求項16に記載の音響センサ装置。
【請求項18】
前記音検出センサ部は、前記回路基板の両面のうち、前記中空集音空間に臨む前面とは反対側の背面に実装され、
前記回路基板のうちで前記集音面と前記中空集音空間との間となる部分には、前記回路基板を板厚方向に貫通する貫通孔(81)が形成される請求項16に記載の音響センサ装置。
【請求項19】
前記センサ筐体に収容され、前記回路基板を挟んで前記中空集音空間の反対側に配置される背面側遮音材(37)、をさらに備える請求項17に記載の音響センサ装置。
【請求項20】
前記センサ筐体は、前記貼付面から前記集音面へ向かうに従って前記中空集音空間の横断面の面積を減少させるテーパ状の周壁部(44a)を有する請求項16に記載の音響センサ装置。
【請求項21】
前記センサ筐体は、前記貼付面を形成する取付壁(41)を有し、
前記取付壁には、前記中空集音空間に臨み、前記取付壁の壁厚を減少させる穴部(43)が形成される請求項16に記載の音響センサ装置。
【請求項22】
前記音検出センサ部は、圧電素子(270a)を含み、前記貼付面を形成する前記センサ筐体の取付壁(41)に対して保持される請求項16,18,及び19のいずれか一項に記載の音響センサ装置。
【請求項23】
前記センサ筐体に収容され、前記センサ筐体と協同で前記中空集音空間を区画する板状の回路基板(80)と、
前記センサ筐体に部分的に埋設され、前記圧電素子と前記回路基板とを電気的に接続する接続部(87)と、をさらに備える請求項22に記載の音響センサ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この明細書における開示は、車両の外部から到来する音及び振動を検出する音響センサ装置、及びその設置構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両の上部に周辺情報検出センサを取り付ける車両上部構造が開示されている。この車両上部構造では、周辺情報検出センサを覆うルーフパネルにおいて、周辺情報検出センサの検出部と対向する部位は、検出媒体を透過させる材料で形成されている。特許文献1では、周辺情報検出センサが用いる検出媒体として、電波、光及び超音波等が例示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-199129号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示の発明者らは、車両の外部から到来する音及び振動を検出する音響センサ装置を車両に設置することを想到した。こうした音響センサ装置を車両に設置する構成は、特許文献1には開示されていない。
【0005】
本開示は、音及び振動を検出する音響センサ装置に適した取り付けを可能にする車載センサ設置構造、及び音響センサ装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、開示された一つの態様は、車両(Ve)の後方を向く姿勢で当該車両の外部に露出する後方外表面(11)を有し、板状を呈する外部構造部(10)と、外部構造部において後方外表面の裏側となる後方内側面(12)に対して保持されるセンサ筐体(30)、及び車両の外部から到来する音及び外部構造部内の振動を検出する車外集音面(71)を外部構造部へ向けた姿勢でセンサ筐体に収容される音検出センサ部(70,270)、を有する音響センサ装置(100)と、を備える車載センサ設置構造とされる。
【0007】
この態様では、車外集音面が車両の後方を向く姿勢で、音響センサ装置が車両の外部構造部に取り付けられる。故に、音響センサ装置は、車両の後方から到来する音及び外部構造部内の振動を効果的に集音し得る。したがって、音及び振動を検出する音響センサ装置に適した取り付けが可能となる。
【0008】
また開示された一つの態様は、車両(Ve)の上方を向く姿勢で当該車両の外部に露出する上方外表面(13)を有し、板状を呈する外部構造部(10)と、外部構造部において上方外表面の裏側となる上方内側面(14)に対して保持されるセンサ筐体(30)、及び車両の外部から到来する音及び外部構造部内の振動を検出する車外集音面(71)を外部構造部へ向けた姿勢でセンサ筐体に収容される音検出センサ部(70,270)、を有する音響センサ装置(100)を上方内側面に保持させる薄膜状の接着層(20)と、を備える車載センサ設置構造とされる。
【0009】
また開示された一つの態様は、車両(Ve)の上方を向く姿勢で当該車両の外部に露出する上方外表面(13)を有し、板状を呈する外部構造部(10)と、外部構造部において上方外表面の裏側となる上方内側面(14)に対して保持されるセンサ筐体(30)、及び車両の外部から到来する音及び外部構造部内の振動を検出する車外集音面(71)を外部構造部へ向けた姿勢でセンサ筐体に収容される音検出センサ部(70,270)、を有する音響センサ装置(100)を上方内側面に保持させるリテーナ部材(60)と、を備える車載センサ設置構造とされる。
【0010】
これらの態様では、センサ筐体に設けられた貼付面が薄膜状の接着層又はリテーナ部材によって上方内側面に保持されることで、音響センサ装置は、外部構造部に取り付けられる。故に、種々の構成の外部構造部に対し、音響センサ装置を容易かつ確実に取り付けることができる。したがって、音及び振動を検出する音響センサ装置に適した取り付けが可能となる。
【0011】
また開示された一つの態様は、板状を呈する車両の外部構造部(10)に保持される音響センサ装置であって、音及び外部構造部内の振動を検出する集音面(71)を有する音検出センサ部(70,270)と、外部構造部の内側面(12,14)に対して、接着層(20)にて保持し、集音面が内側面に沿う姿勢で音検出センサ部を収容するセンサ筐体(30)と、を備える音響センサ装置とされる。
【0012】
この態様では、センサ筐体に貼付面が設けられているため、音響センサ装置は、両面テープ又は接着材等を用いることで、広い面積で外部構造部の内側面に保持され得る。以上によれば、種々の構成の外部構造部に対し、音響センサ装置を容易かつ確実に取り付けることができる。したがって、音及び振動を検出する音響センサ装置に適した取り付けが可能となる。
【0013】
尚、上記及び特許請求の範囲における括弧内の参照番号は、後述する実施形態における具体的な構成との対応関係の一例を示すものにすぎず、技術的範囲を何ら制限するものではない。また、特に組み合わせに支障が生じなければ、特許請求の範囲において明示していない請求項同士の組み合せも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本開示の車載センサ設置構造が適用可能な箇所を説明するための図である。
図2】MEMSマイクを用いた音響センサ装置の基本構成を示す図である。
図3】音響センサ装置の組み立て工程を示す図である。
図4】第一実施形態の音響センサ装置の構成を示す図である。
図5】2つのMEMSマイクを収容するセンサ筐体の平面図である。
図6】2つのMEMSマイクを収容するセンサ筐体の下面図である。
図7】2つのMEMSマイクを含む音響センサ装置及びECUの電気構成を示す図である。
図8】ピエゾセンサを用いた音響センサ装置の基本構成を示す図である。
図9】ピエゾセンサの詳細構成を説明するための図である。
図10】音響センサ装置の組み立て工程を示す図である。
図11】第二実施形態の音響センサ装置の構成を示す図である。
図12】4つのピエゾセンサを収容するセンサ筐体の下面図である。
図13】4つのピエゾセンサを含む音響センサ装置及びECUの電気構成を示す図である。
図14】第三実施形態の音響センサ装置の構成を示す図である。
図15】第三実施形態の変形例による音響センサ装置の構成を示す図である。
図16】第四実施形態の音響センサ装置の構成を示す図である。
図17】第五実施形態の音響センサ装置の構成を示す図である。
図18】第六実施形態の音響センサ装置の取り付け工程を示す図である。
図19】第六実施形態の音響センサ装置の構成を示す図である。
図20】第六実施形態の変形例による音響センサ装置の構成を示す図である。
図21】第七実施形態の音響センサ装置の構成を示す図である。
図22】第八実施形態の音響センサ装置の構成を示す図である。
図23】第九実施形態の車載センサ設置構造を示す図である。
図24】第十実施形態の音響センサ装置の構成を示す図である。
図25】第十実施形態の変形例による音響センサ装置の構成を示す図である。
図26】第十一実施形態の車載センサ設置構造を示す図である。
図27図26のXXVII-XXVII線断面図である。
図28】変形例1の車載センサ設置構造及び音響センサ装置を示す図である。
図29】変形例2の車載センサ設置構造及び音響センサ装置を示す図である。
図30】変形例3の車載センサ設置構造及び音響センサ装置を示す図である。
図31】変形例4の車載センサ設置構造及び音響センサ装置を示す図である。
図32】変形例5の車載センサ設置構造及び音響センサ装置を示す図である。
図33】変形例6の車載センサ設置構造及び音響センサ装置を示す図である。
図34】変形例7の音響センサ装置のピエゾセンサを示す図である。
図35】変形例8の音響センサ装置のピエゾセンサを示す図である。
図36】変形例9の音響センサ装置のピエゾセンサを示す図である。
図37】変形例10の車載センサ設置構造及び音響センサ装置を示す図である。
図38】変形例11の車載センサ設置構造及び音響センサ装置を示す図である。
図39】変形例12の車載センサ設置構造及び音響センサ装置を示す図である。
図40】変形例13の車載センサ設置構造における音響センサ装置の配置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、複数の実施形態を図面に基づいて説明する。尚、各実施形態において対応する構成要素には同一の符号を付すことにより、重複する説明を省略する場合がある。各実施形態において構成の一部分のみを説明している場合、当該構成の他の部分については、先行して説明した他の実施形態の構成を適用することができる。また、各実施形態の説明において明示している構成の組み合わせばかりではなく、特に組み合わせに支障が生じなければ、明示していなくても複数の実施形態の構成同士を部分的に組み合せることができる。
【0016】
[音響センサ装置の取り付け位置]
本開示による車載センサ設置構造は、図1及び図2に示す車両Veにおいて、種々の箇所に適用可能である。車載センサ設置構造は、車両前面、車両側面、車両後面、及び車両上面のいずれにも設けることができる。これにより、音響センサ装置100は、車両Veにおいて外部に露出する種々の箇所の内側に設置可能となる。
【0017】
車両Veにおいて外部構造部10は、デザイン性や空力特性を向上させるためになめらかな曲面と平面を組み合わせた形状となっている。また、軽量化のため大部分が薄い板状となっている。この板状を呈する部分は外部から到来した音を受けると振動する。また、路面から伝わる振動や車両が衝突した時に発生する振動が外部構造部10内を伝わり板状の部分が振動する。音響センサ装置100にて、この振動及び振動により再放射される音を計測することで間接的に外部から到来した音や車両の振動を検出する。
【0018】
音響センサ装置100は、板状を呈する車両Veの外部構造部10に保持される。車両前面の外部構造部10は、例えば、フロントエンブレムPf1、ヘッドランプPf2、フロントフォグランプPf3、バンパコーナPf4、バンパサイドPf5、フロントカメラPf6、フロントガラスPf7、及びミリ波レーダ等である。車両前面の外部構造部10に設置された音響センサ装置100は、車外集音面71を車両Veの前方Zeに向けた姿勢となり、車両Veの外部のうちで主に前方Zeから到来する音を検出する。
【0019】
車両側面の外部構造部10は、例えば、サイドミラーPs1、サイドミラーカバーPs2、ドアPs3、各ピラー(BピラーPs4等)、サイドフェンダPs5、フェンダカメラ、フェンダライダ、サイドステップ、及びタイヤハウス等である。サイドミラーPs1に設置された音響センサ装置100は、車両Veの後方Goに車外集音面71を向けた姿勢となり、車両Veの外部のうちで後方Goから到来する音を検出する。サイドミラーカバーPs2に設置された音響センサ装置100は、車両Veの前方Zeに車外集音面71を向けた姿勢となり、車両Veの外部のうちで前方Zeから到来する音を検出する。他の車両側面の外部構造部10に設置された音響センサ装置100は、車外集音面71を車両Veの右方Mi又は左方Hiに向けた姿勢となり、車両Veの外部のうちで主に側方から到来する音を検出する。
【0020】
車両後面の外部構造部10は、例えば、バックカメラPb1、バック覗き窓Pb2、バックドア又はハッチの後面、リフレクタPb3、テールランプモジュールPb4、リアガラスの縁Pb5、及びADASリアカメラモジュール等である。リアバンパ及びリアエンブレム等が車両後面の外部構造部10とされてもよい。車両後面の外部構造部10に設置された音響センサ装置100は、車外集音面71を車両Veの後方Goに向けた姿勢となり、車両Veの外部のうちで主に後方Goから到来する音を検出する。
【0021】
車両上面の外部構造部10は、例えば、ルーフパネル(天井)の四隅Pt1又は中央Pt2、トランクリッドの上面Pt3、サンルーフ、ルーフレール、リアスポイラー、及びルーフエンドスポイラー等である。ルーフパネルに搭載されたADASセンサ(カメラ又はライダ等)モジュール等のハウジングが、車両上面の外部構造部10とされてもよい。車両上面の外部構造部10に設置された音響センサ装置100は、車外集音面71を車両Veの上方Ueに向けた姿勢となり、車両Veの四方(前後左右)から到来する音を検出する。
【0022】
ここで、本開示における前後方向及び左右方向は、水平面上に静止させた車両Veを基準として規定される。具体的に、前後方向(前方Ze及び後方Go)は、車両Veの長手方向(進行方向)に沿って規定される。また左右方向(右方Mi及び左方Hi)は、車両Veの幅方向に沿って規定される。さらに、上下方向(上方Ue)は、前後方向及び左右方向を規定した水平面の鉛直方向に沿って規定される。尚、記載の簡略化のため、以下の説明では、各方向を示す符号の記載を適宜省略する場合がある。
【0023】
(第一実施形態)
本開示の第一実施形態による車載センサ設置構造は、車両後面の外部構造部10に適用されている。車載センサ設置構造は、図2に示すように、外部構造部10、接着層20、及び音響センサ装置100等によって構成されている。
【0024】
外部構造部10は、車両Veの後方Goを向く姿勢で当該車両Veの外部に露出する後方外表面11を有している。外部構造部10は、例えば上述のバック覗き窓Pb2(図1参照)であり、板状を呈するガラスによって形成されている。外部構造部10は、平板状であってもよく、又は僅かに湾曲していてもよい。外部構造部10において、後方外表面11の裏側は、接着層20が取り付けられる平滑な後方内側面12となっている。バック覗き窓Pb2又はリアガラスの縁Pb5に音響センサ装置100を取り付ける形態では、後方内側面12は、遮光性の黒いセラミック層の形成範囲に規定される。
【0025】
接着層20は、両面テープ又は接着材等によって形成されている。接着層20は、後方内側面12及び音響センサ装置100のそれぞれに各面を接合させることにより、音響センサ装置100の貼付面31を後方内側面12に対して保持させる。接着層20は、外部構造部10よりも薄い薄膜状に形成されており、外部構造部10に到達した音を音響センサ装置100に向けて伝達させる。両面テープが接着層20として用いられる形態では、接着層20の一方の接着面がまず音響センサ装置100の貼付面31に貼り付けられる。そして、接着層20の他の接着面が、後方内側面12に貼り付けられる。こうした工程により、音響センサ装置100は、外部構造部10に対して固定される。
【0026】
[音響センサ装置の基本構成]
音響センサ装置100は、図2及び図3に示すように、センサ筐体30、MEMSマイク70、及び回路基板80を備えている。センサ筐体30には、MEMSマイク70及び回路基板80が収容されている。センサ筐体30には、貼付面31、密閉空間34、車内側空間36、及びコネクタ部38が設けられている。
【0027】
貼付面31は、センサ筐体30に設けられた平坦な取付面である。貼付面31は、接着層20を介して外部構造部10の後方内側面12に取り付けられる。これにより、センサ筐体30は、後方内側面12に対して保持される。
【0028】
密閉空間34及び車内側空間36は、センサ筐体30の内部に区画される収容空間である。センサ筐体30の収容空間は、回路基板80によって密閉空間34及び車内側空間36に区分けされている。密閉空間34は、回路基板80に対して貼付面31側(以下、車外側SG)に形成されている。車内側空間36は、回路基板80を挟んで密閉空間34の反対側(以下、車内側SN)に形成されている。
【0029】
密閉空間34は、貼付面31とMEMSマイク70の車外集音面71(後述する)との間に区画されている。密閉空間34は、空気や不活性ガスによって満たされる中空の空間である。密閉空間34内の貼付面31側は計測対象のなかで最も高周波数の音の波長の半分よりも小さい寸法の範囲で面積を大きくすることで外部構造部10の振動により再放射される音を感度良く集音できるようになっている。加えて、密閉空間34の高さ、即ち、内底壁面42(後述する)から回路基板80の前面までの距離は、計測対象のなかで最も高周波数の音の波長よりも短くされている。これにより、密閉空間34は、音を集める集音空間として機能する。
【0030】
車内側空間36には、遮音充填材37が収容されている。遮音充填材37は、回路基板80の後にセンサ筐体30に収容され、回路基板80を挟んで密閉空間34の反対側に配置される(図3参照)。遮音充填材37は、車内側空間36の概ね全体を満たしており、回路基板80の車内側SNの遮音構造を形成する。即ち、遮音充填材37は、車内側SNからセンサ筐体30に到来する音に対し、吸音効果及び遮音効果を発揮する。加えて、遮音充填材37は、MEMSマイク70及び回路基板80の振動を抑制する。さらに、遮音充填材37は、車内側空間36内への水蒸気を含む空気の侵入を防止し、昼夜の気温変化により発生する結露の発生を抑制する。
【0031】
遮音充填材37は、ウレタン、シリコーンなどの軟弾性体やスポンジ等の多孔性の軟弾性体によって形成されている。不織布、綿等の吸音材が、遮音充填材37として用いられてもよい。遮音充填材37は、予め成形されて車内側空間36に配置されてもよく、又は車内側空間36に充填(封入)したウレタン、シリコーンやそれらの発泡体等を硬化させることで形成されてもよい。ウレタン又はシリコーン等の硬化型の充填剤を車内側空間36に充填する場合、回路基板80がシールとして機能し、密閉空間34への硬化前の遮音充填剤37やその添加材の侵入が阻止される。
【0032】
コネクタ部38は、センサ筐体30の側面に筒状に設けられている。コネクタ部38の内部には、ワイヤハーネスのプラグ部が挿入される。コネクタ部38へのプラグ部への接続により、MEMSマイク70の検出信号は、ワイヤハーネスを通じて外部の構成(後述のECU90等)に出力可能になる。
【0033】
センサ筐体30は、筐体本体40及び背面カバー50等によって構成されている。センサ筐体30は、全体として扁平な四角柱状又は円柱状を呈している。筐体本体40及び背面カバー50は、樹脂材料を主体に形成されている。筐体本体40は、取付底壁41及び周壁44を有している。
【0034】
取付底壁41は、貼付面31を形成するセンサ筐体30の底壁である。取付底壁41にて貼付面31の反対側には、密閉空間34に臨む内底壁面42が形成されている。内底壁面42には、多数(複数)の凹部43によってなる多孔構造が設けられている(図6も参照)。凹部43は、内底壁面42にて互いに間隔を開けて配置されている。凹部43は、取付底壁41の壁厚を部分的に減少させている。この構造により取付底壁41の強度低下を抑制しつつ音の透過率向上が可能となる。
【0035】
周壁44は、取付底壁41の周縁から車内側SNへ向けて立設されている。周壁44は、MEMSマイク70及び回路基板80の周囲を全周にわたって囲んでいる。周壁44の壁厚は、外部構造部10及び取付底壁41の各壁厚よりも十分に厚くされている。こうした構成により、周壁44は、側方からの音(振動)の侵入を妨げる。周壁44の1つの外壁面には、コネクタ部38が設けられている。周壁44は、密閉空間34を区画する上段周壁部44aと、車内側空間36を区画する下段周壁部44bとを有している。上段周壁部44aと下段周壁部44bとの間には、車内側SNを向く段差部44cが環状に形成されている(図6も参照)。
【0036】
背面カバー50は、全体として矩形の板状を呈している。背面カバー50は、筐体本体40と共に、密閉された液密な収容空間として、密閉空間34及び車内側空間36を形成している。背面カバー50と遮音充填剤37の厚みは、取付底壁41の壁厚よりも厚くされている。これにより、背面カバー50と遮音充填剤37とで形成される背面吸音構造での吸音率は、外部構造部10及び取付底壁41の吸音率よりも大きくなっている。背面カバー50は、回路基板80の背面との間で遮音充填材37を押し潰しつつ、周壁44の頂面に、接着部55によって固定される(図3参照)。接着部55は、例えば接着材等によって形成される。背面カバー50は、溶着によって筐体本体40に接合されてもよい。
周壁44により側方、背面カバー50及び遮音充填剤37にて背面方向から到来する音を遮音することで、外部構造部10に取付けられた音響センサ装置100は、後方外表面11方向に指向性を持たせることができる。また、遮音充填剤37のみで十分に遮音が可能で、十分に密閉できる場合は背面カバー50は不要である。
【0037】
MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)マイク70は、音(空気の振動)を電気信号に変換するマイク素子である。MEMSマイク70は、音圧によって薄い振動膜(メンブレン)が振動することで発生する静電容量変化を電気信号(以下、検出信号)として出力するコンデンサマイクとして機能する。MEMSマイク70は、回路基板80の背面に実装されている。MEMSマイク70は、内部空間に振動膜を配置し、集音面(以下、車外集音面71)に備えた音孔から音を導入する。車外集音面71は外部構造部10へ向けた姿勢でセンサ筐体30に収容されている。これにより、MEMSマイク70は、車両Veの外部から外部構造部10に到来し、密閉空間34に伝わった音を効果的に検出する。尚、MEMSマイク70に替えて、エレクトレットコンデンサマイク等が音検出センサ部として採用可能である。
【0038】
回路基板80は、ガラスエポキシ基板等であり、全体として矩形の板状を呈している。回路基板80は、取付底壁41に沿った姿勢でセンサ筐体30に収容され、周壁44の段差部44cに基板固定材88を介して固定される(図3参照)。基板固定材88は、ゴムパッキン、両面テープ、及び接着材等によって薄膜状に形成されている。回路基板80は、センサ筐体30と協同で密閉空間34及び車内側空間36を区画する。さらに、回路基板80は、基板固定材88をシールとして機能させ、密閉された密閉空間34を区画する。便宜的に、回路基板80の両面のうち、密閉空間34に臨む一方が前面とされ、その反対側が背面とされる。
【0039】
回路基板80の背面には、MEMSマイク70が実装されている。回路基板80のうちで車外集音面71と密閉空間34との間となる部分には、音孔81が形成されている。音孔81は、回路基板80を板厚方向に貫通する貫通孔である。音孔81は、密閉空間34の空気の振動を、車外集音面71に伝達可能にする。
【0040】
回路基板80には、アンプ回路部85及び通信インターフェース86が設けられている(図7参照)。アンプ回路部85は、MEMSマイク70と電気的に接続され、MEMSマイク70の出力する検出信号を増幅する。通信インターフェース86は、アンプ回路部85によって増幅された検出信号を出力する。
【0041】
回路基板80は、センサ筐体30への収容に伴い、複数のコネクタインサートピン83と電気的に接続される。コネクタインサートピン83は、金属材料によって形成されている。コネクタインサートピン83の中間部分は、筐体本体40の周壁44に埋設されている。コネクタインサートピン83の一端は、コネクタ部38の内部に露出している。コネクタインサートピン83は、通信インターフェース86から出力される検出信号等を、コネクタ部38に接続されるプラグ部内の配線に伝達する。
【0042】
[第一実施形態の音響センサ装置]
図4図6に示す第一実施形態の音響センサ装置100は、図2に示す基本構成の音響センサ装置100を複数(2つ)組み合わせた構成である。音響センサ装置100には、MEMSマイク70の実装された回路基板80が2つ収容されている。即ち、音響センサ装置100は、2つのMEMSマイク70を有している。音響センサ装置100が後方内側面12に取り付けられることで、2つのMEMSマイク70は、車外集音面71を車両Veの後方Goへ向けた姿勢で、車両Veの水平方向に並ぶ配置となる。第一実施形態では、各MEMSマイク70は、例えば数cm程度(例えば、5cm)の距離を開けて、車両Veの左右方向に沿って並ぶ配置となる。2つの回路基板80は、基板接続ライン84によって電気的に接続されている。2つのMEMSマイク70の検出信号は、共にコネクタ部38に露出するコネクタインサートピン83から出力される。
【0043】
センサ筐体30に形成される貼付面31は、左右方向を長手とする矩形状となる(図5参照)。センサ筐体30の内部には、互いに独立した2つの密閉空間34と、空間接続部47によって互いに連結された2つの車内側空間36とが区画されている。車内側空間36に収容される遮音充填材37は、一体的に形成されていてもよく、又は2つに分割されていてもよい。
【0044】
センサ筐体30には、遮蔽壁45及び遮蔽溝46が設けられている。遮蔽壁45は、取付底壁41から車内側SNへ向けて立設され、2つの密閉空間34を区分けしている。遮蔽壁45は、2つのMEMSマイク70及び密閉空間34を隔てるように、センサ筐体30の短手方向に沿って延設されている。遮蔽壁45は、2つの密閉空間34の一方から他方への音(振動)の伝達を抑制する。遮蔽溝46は、遮蔽壁45の頂面から車外側SGに凹む形状である。遮蔽溝46は、2つのMEMSマイク70及び密閉空間34を隔てる中空の、又は遮音充填剤が充填された遮音空間46aを、遮蔽壁45に形成している。遮蔽壁45に遮音空間46aが形成されることで、2つの密閉空間34の一方から他方への音の伝達が、いっそう抑制される。ここでの遮音充填剤についてもシリコーンやウレタン、又はそれらの発泡体を使用する。車内側空間36と遮蔽溝46を連続させることで、一度の充填で車内側空間36と遮蔽溝46の両方を遮音充填剤で満たすことが可能となる。尚、遮蔽壁45で十分に遮音できる場合、遮蔽溝46はなくてもよい。
【0045】
[音響センサ装置の電気構成]
次に、音響センサ装置100及びECU90の電気構成の詳細を、図7に基づき説明する。
【0046】
音響センサ装置100の各回路基板80には、上述したアンプ回路部85及び通信インターフェース86が設けられている。アンプ回路部85及び通信インターフェース86は、各MEMSマイク70に対して1つずつ設けられている。各通信インターフェース86は、各MEMSマイク70の検出信号を、ECU90へ向けて個別に出力する。
【0047】
ECU90は、車両Veに搭載される演算装置である。ECU90は、ワイヤハーネス等によって音響センサ装置100と電気的に接続され、音響センサ装置100によって出力される検出信号を処理する信号処理装置として機能する。ECU90は、信号受信部91及び信号処理部93を有している。
【0048】
信号受信部91は、MEMSマイク70の個数、言い替えれば、ECU90に入力される検出信号のチャンネル数に応じた数だけECU90に設けられている。2つの検出信号がECU90に入力される形態では、少なくとも2つの信号受信部91がECU90に設けられている。各信号受信部91には、複数のMEMSマイク70から出力される検出信号(図7 信号1,2参照)が入力される。信号受信部91は、FFT(Fast Fourier Transform)の機能を含んでおり、検出信号をフーリエ変換した信号を信号処理部93に提供する。
【0049】
信号処理部93は、複数の検出信号の信号差に基づく信号処理を実施する。信号処理部93は、提供された検出信号の物理量の差分、例えば、位相差、時間差、音圧差、及び振幅積等を算出する。ECU90は、算出した物理量の差分を用いて、各MEMSマイク70にて検出した音源の相対位置に関連した情報、例えば、音及び振動の到来方向を演算する。一例として、信号受信部91は、車両Veに接近する緊急車両(救急車等)のサイレンの音から、緊急車両の方向を推定する。
【0050】
[第一実施形態のまとめ]
ここまで説明した第一実施形態では、車外集音面71が車両Veの後方を向く姿勢で、音響センサ装置100が車両Veの外部構造部10に取り付けられる。故に、音響センサ装置100は、車両Veの後方から到来する音を効果的に集音し得る。したがって、音及び振動を検出する音響センサ装置100に適した取り付けが可能となる。
【0051】
詳記すると、音響センサ装置100は、車両Veの後方Goを向く外部構造部10の後方内側面12に貼り付けられる。こうした車載センサ設置構造であれば、走行時に雨が当たり難くなるため、雨当たりノイズが少なくなる。故に、降雨時でも周辺の音及び振動が効果的に検出され得る。さらに、車両Veの後方Goから接近する緊急車両が感度良く検出可能となる。
【0052】
加えて、音響センサ装置100は、車両Veの外部に露出しなくなる。その結果、車両Veの意匠性が損なわれ難くなる。また、防水性の向上及び飛び石等によるチッピング等での破壊防止が実現される。さらに、音響センサ装置100の近傍にて風切音が発生し難くなる。加えて、ワックスによる穴詰まり及び高圧洗車による浸水も発生しなくなる。
【0053】
また、MEMSマイク70は、センサ筐体30に収容され、センサ筐体30によって保護される。こうした構成によれば、センサ筐体30の周壁44により、後方Go以外からの振動の入力が遮られる。その結果、音響センサ装置100は、後方Goから到来する音をより効果的に集音可能となる。
【0054】
さらに、センサ筐体30によって保護されることで、輸送時及び保管時におけるMEMSマイク70の破損が防止され得る。また、防水性及び防塵性の向上、並びに結露発生の抑制が可能になる。加えて、音響センサ装置100を組み立てるセンサアッセンブリ工場にて、特性検査及び密閉検査が出荷前に実施されれば、密閉されたセンサ筐体30の内部への水分、異物、及びケミカルの混入が発生し難くなる。さらに密閉空間34に窒素等の不活性気体を封入することで空気中の水分や酸素によるMEMSマイクの劣化や特性変動を抑制することができる。また、吸湿剤や脱酸素剤を密閉空間34内に入れること空気中に含まれる水分や酸素を除去してもよい。
【0055】
加えて第一実施形態では、センサ筐体30に、平坦な貼付面31が設けられる。そして、貼付面31は、薄膜状の接着層20によって後方内側面12に保持される。このように、両面テープ又は接着材等の接着層20を用いる車載センサ設置構造であれば、外部構造部10への加工が不要になる。即ち、音響センサ装置100の装着が容易となり、かつ、外部構造部10にネジ孔及び係止爪等の複雑な構造を設けることが不要となる。また、外気に面した外部構造部10であれば、どこでも音響センサ装置100が装着可能となる。さらに、市場での音響センサ装置100の補修(交換)も容易となる。
【0056】
また第一実施形態では、外部構造部10は、ガラスによって形成されている。ガラスによって形成される外部構造部10には、取り付けのためのネジ孔及び係止爪等を設けることが難しい。故に、接着層20によって音響センサ装置100を取り付ける車載センサ設置構造は、外部構造部10がガラスである場合に特に有効となる。加えて、ガラスは、鉄と比較して密度が低く、また薄いため、音を通し易い。故に、ガラスに音響センサ装置100を取り付ける車載センサ設置構造によれば、車両Veの外部の音を感度良く検出することが可能となる。また、リアガラスは、オーディオスピーカから比較的離れている。故に、バック覗き窓Pb2を外部構造部10とすることで、音響センサ装置100は、オーディオノイズを受け難くなる。
【0057】
さらに第一実施形態では、音響センサ装置100が、複数のMEMSマイク70を有している。このように、複数のMEMSマイク70を有することで、センサ筐体30の貼付面31の面積確保が容易となる。その結果、接着層20を用いる設置構造であっても、音響センサ装置100を外部構造部10に確実に固定することが可能になる。
【0058】
加えて第一実施形態では、複数(2つ)のMEMSマイク70は、車両Veの水平方向に沿って並んでいる。そして、各MEMSマイク70から出力される検出信号は、ECU90に入力される。ECU90は、複数の検出信号の信号差に基づく信号処理を実施する。こうした信号処理によれば、車両Veに接近する音源の方向を推定することが可能になる。
【0059】
また第一実施形態では、複数のMEMSマイク70を隔てる遮蔽壁45がセンサ筐体30に設けられている。故に、各MEMSマイク70は、互いに独立した空間に位置する。言い替えれば、センサ筐体30の内部で音(振動)が混ざり難くなり、MEMSマイク70は、音響的に分離された状態となり得る。その結果、複数のMEMSマイク70を用いた音の位相差の検出が確実に実施可能になる。
【0060】
さらに第一実施形態では、複数のMEMSマイク70を隔てる中空の遮音空間46aが遮蔽壁45に設けられている。遮蔽壁45に中空の遮音空間46aを設ける構成によれば、各MEMSマイク70の音響的な分離は、いっそう確実となり得る。その結果、複数のMEMSマイク70を用いた音の位相差の検出も、より確実に実施可能となる。
【0061】
加えて第一実施形態では、センサ筐体30に平坦な貼付面31が設けられているため、音響センサ装置100は、両面テープ又は接着材等を用いることで、広い面積で外部構造部10の後方外表面11に保持され得る。以上によれば、種々の構成の外部構造部10に対し、音響センサ装置100を容易かつ確実に取り付けることができる。したがって、音及び振動を検出する音響センサ装置100に適した取り付けが可能となる。
【0062】
また第一実施形態のセンサ筐体30にて、貼付面31と車外集音面71との間には、中空の密閉空間34が区画される。こうした密閉空間34を設けて、密閉空間34内の空気を振動させることにより、MEMSマイク70は、外部構造部10に到来してセンサ筐体30に伝わった音(振動)を、効果的に検出できる。
【0063】
加えて第一実施形態では、センサ筐体30に収容される板状の回路基板80が、センサ筐体30と協同で密閉空間34を区画する。即ち、密閉空間34の車内側SNは、回路基板80によって密閉される。こうした構成によれば、センサ筐体30の構成を複雑化させることなく、音響センサ装置100の組み上げを容易にしたうえで、センサ筐体30の内部に密閉空間34を区画することが可能になる。
【0064】
また第一実施形態にて、MEMSマイク70は、回路基板80の両面のうち、密閉空間34に臨む前面とは反対側の背面に実装される。そして、回路基板80のうちで車外集音面71と密閉空間34との間となる部分には、回路基板80を板厚方向に貫通する音孔81が形成されている。こうした構成では、密閉空間34の振動は、音孔81を通じて車外集音面71に伝わり得る。故に、回路基板80の背面に実装されていても、MEMSマイク70は、外部構造部10に到来する音を確実に検出できる。
【0065】
さらに第一実施形態では、回路基板80を挟んで密閉空間34の反対側には、遮音充填材37が配置される。遮音充填材37は、センサ筐体30の車内側空間36に収容されることで、背面カバー50側からセンサ筐体30に入る音を遮り、MEMSマイク70に伝わり難くする。こうした遮音充填材37の遮音効果により、MEMSマイク70は、車両Veの外部側の音をより確実に検出できる。
【0066】
加えて第一実施形態では、センサ筐体30の取付底壁41に、凹部43が形成されている。凹部43は、密閉空間34に臨み、取付底壁41の壁厚を減少させている。凹部43による壁厚減少により、外部構造部10に到来した音は、密閉空間34にいっそう伝わり易くなる。その結果、MEMSマイク70は、車両Veの外部側の音を効果的に検出できるようになる。また、凹部43の非形成部分にて、取付底壁41の強度が確保され得る。さらに、凹部43が非貫通構造であるため、センサ筐体30の密閉性が確保され得る。
【0067】
また第一実施形態では、加えて、回路基板80には、アンプ回路部85及び通信インターフェース86等が形成されている。このように、音響センサ装置100の内部で検出信号を処理することで、耐ノイズ性を向上させ、S/N比の向上を図ることが可能になる。
【0068】
さらに第一実施形態では、周壁44が、取付底壁41及び背面カバー50よりも厚く形成されている。故に、外部構造部10に沿って、センサ筐体30の側方から到来する音及び振動が、周壁44によって効果的に遮断され得る。
【0069】
加えて第一実施形態では、複数の車内側空間36が、空間接続部47を介して互いに繋がっている。故に、空間接続部47を通る基板接続ライン84を介して、複数の回路基板80を電気的に接続することが可能になる。
【0070】
尚、第一実施形態では、後方内側面12が「内側面」にさらに相当し、密閉空間34が「中空集音空間」に相当し、遮音充填材37が「背面側遮音材」に相当し、取付底壁41が「取付壁」に相当し、凹部43が「穴部」に相当する。また、MEMSマイク70が「音検出センサ部」に相当し、車外集音面71が「集音面」にさらに相当し、音孔81が「貫通孔」に相当し、ECU90が「信号処理装置」に相当する。
【0071】
(第二実施形態)
本開示の第二実施形態による車載センサ設置構造は、車両上面の外部構造部10に適用されている。外部構造部10は、車両Veの上方Ueを向く姿勢で当該車両Veの外部に露出する上方外表面13を有している。外部構造部10は、例えば上述のルーフパネルであり、板状を呈する金属材料(鉄又はアルミ等)によって形成されている。第二実施形態による車載センサ設置構造は、車両Veの上方Ueを向く外表面部品全般に適用可能である。
【0072】
外部構造部10において、上方外表面13の裏側は、接着層20が取り付けられる平滑な上方内側面14となっている。音響センサ装置100の貼付面31が接着層20によって上方内側面14に対し保持されることにより、音響センサ装置100は、外部構造部10に対して固定される。
【0073】
[音響センサ装置の基本構成]
第二実施形態の音響センサ装置100は、図8図10に示すように、MEMSマイク70(図2参照)に替えて、ピエゾセンサ270を音検出センサ部として備えている。ピエゾセンサ270は、MEMSマイク70と同様に、車外集音面71を形成しており、音を電気信号に変換する。ピエゾセンサ270は、圧電素子270a及び金属板275等によって構成されている。
【0074】
圧電素子270aは、薄板状に形成されている。圧電素子270aの一方の面(前面)には、負電極271nが形成されている。圧電素子270aの他方の面(背面)には、正電極271pが形成されている。正電極271pには、正極ワイヤ272pがはんだ273によって接続されている(図9参照)。圧電素子270aは、入力される応力に応じた電圧を、負電極271n及び正電極271pの間に生じさせる。
【0075】
金属板275は、圧電素子270aよりも面積の大きい薄板状に形成されている。金属板275は、圧電素子270aの負電極271n側の面に接合されている。金属板275には、負極ワイヤ272nがはんだ273によって接続されている(図9参照)。金属板275は、負極ワイヤ272nを介して、回路基板80のGND電位に電気的に接続されている。金属板275は、センサ筐体30に伝わる音により圧電素子270aと一体的に振動する。金属板275において、圧電素子270aとは反対側となる前面が、ピエゾセンサ270の車外集音面71となる。
【0076】
ピエゾセンサ270は、密閉空間34に収容される。ピエゾセンサ270は、ピエゾ接着層276によって金属板275の前面が内底壁面42に貼り付けられることにより、貼付面31を形成するセンサ筐体30の取付底壁41に対して保持される(図10参照)。ピエゾ接着層276は、両面テープ又は接着材等によって形成される。ピエゾセンサ270の負極ワイヤ272n及び正極ワイヤ272pは、はんだ付け、溶着又は圧着等により、一対の中間インサートピン87の各一端に接続される。中間インサートピン87は、金属材料によって形成されている。中間インサートピン87は、筐体本体40に部分的に埋設されている。
【0077】
ピエゾセンサ270の車内側SNには、制振充填材35が配置される。制振充填材35は、遮音充填材37と同様に、ウレタン、シリコーン又はスポンジ等によって形成されている。制振充填材35は、密閉空間34に配置されることで、余計な空気の膨張と収縮の防止及び不要な共振の発生の抑制、高周波カット等の機能を発揮する。即ち、制振充填材35は、車内側SNからセンサ筐体30に侵入した音、振動を減衰し、不要な振動、共振を観測しないようにする。
【0078】
回路基板80は、ピエゾセンサ270との間で制振充填材35を押し潰しつつ、基板固定材88を介して段差部44cに保持される(図10参照)。回路基板80は、センサ筐体30への収容に伴い、複数の中間インサートピン87及びコネクタインサートピン83と電気的に接続される。中間インサートピン87及びコネクタインサートピン83は、はんだ付け又は溶着等により、回路基板80に電気的に接続される。ピエゾセンサ270は、中間インサートピン87を介して、回路基板80上のアンプ回路部85(図13参照)と電気的に接続される。さらに、ピエゾセンサ270の検出信号は、コネクタ部38に接続されるプラグ部から、外部に出力可能となる。
【0079】
回路基板80の車内側SNには、遮音充填材37が配置される。遮音充填材37は、回路基板80と背面カバー50との間に封入される(図10参照)。遮音充填材37は、制振充填材35と共に、車内側SNからセンサ筐体30に侵入する振動を抑え、ピエゾセンサ270に伝わらないようにする。
【0080】
[第二実施形態の音響センサ装置]
図11及び図12に示す第二実施形態の音響センサ装置100は、図8に示す基本構成の音響センサ装置100を複数(4つ)組み合わせた構成である。音響センサ装置100には、ピエゾセンサ270及び回路基板80が4つずつ収容されている。音響センサ装置100が上方内側面14に取り付けられることで、4つのピエゾセンサ270は、車外集音面71を車両Veの上方Ueへ向けた姿勢で、車両Veの水平方向に並ぶ配置となる。第二実施形態では、各ピエゾセンサ270は、所定の間隔を開けて、車両Veの左右方向及び前後方向に沿って2つずつ並ぶ配置となる。音響センサ装置100は、ルーフパネルに設置されることで、車両Veの360°全周囲の音を計測できる。
【0081】
4つの回路基板80のうちで、コネクタ部38に最も近い1つ(以下、出力基板)には、コネクタインサートピン83が接続されている。一方、他の3つの回路基板80は、基板接続インサートピン284によって、それぞれ出力基板に電気的に接続されている。こうした構成により、4つのピエゾセンサ270の出力は、コネクタ部38に露出するコネクタインサートピン83から出力可能となる。
【0082】
尚、出力基板と他の回路基板80とは、基板接続ライン84(図4参照)によって電気的に接続されてもよい。さらに、ピエゾセンサ270の検出信号を出力するためのコネクタ部38が、センサ筐体30に複数設けられていてもよい。
【0083】
センサ筐体30の内部には、独立した4つの密閉空間34と、空間接続部47によって互いに連結された4つの車内側空間36とが区画されている(図12参照)。各密閉空間34に収容されたピエゾセンサ270の車内側SNには、それぞれ制振充填材35が配置されている。さらに、各車内側空間36及び空間接続部47には、発泡ウレタン又は発泡シリコーン等が充填され、一体的な遮音充填材37が形成されている。
【0084】
センサ筐体30には、第一実施形態と同様に、遮蔽壁45及び遮蔽溝46が設けられている。遮蔽壁45は、4つの密閉空間34を区分けしている。遮蔽壁45は、4つのピエゾセンサ270及び密閉空間34を隔てるように、十字状に延設されている。遮蔽溝46は、遮蔽壁45に沿って十字状に形成されており、中空の遮音空間46aを遮蔽壁45に区画している(図12参照)。以上の遮蔽壁45及び遮音空間46aの形成により、複数の密閉空間34及びピエゾセンサ270は、音響的に独立した状態となる。遮蔽溝46には遮音充填剤を充填してもよい。各車内側空間36と遮蔽溝46は空間接続部47で接続されているため、1回の充填にて遮音充填剤で満たすことができる。
【0085】
[音響センサ装置の電気構成]
図13に示すように、音響センサ装置100の各回路基板80には、上述したアンプ回路部85及び通信インターフェース86が設けられている。アンプ回路部85及び通信インターフェース86は、各ピエゾセンサ270に対して1つずつ設けられている。各通信インターフェース86は、各ピエゾセンサ270の検出信号を、ECU90へ向けて個別に出力する。
【0086】
ECU90は、4つの信号受信部91と、1つの信号処理部93とを有している。各信号受信部91には、複数のピエゾセンサ270から出力される検出信号(図13 信号1~4参照)が入力される。各信号受信部91は、各検出信号をフーリエ変換した信号を信号処理部93に提供する。
【0087】
信号処理部93には、各ピエゾセンサ270の前後方向及び左右方向の位置関係を示す情報が予め登録されている。信号処理部93は、各信号受信部91から取得する4つの検出信号の信号差、具体的には、位相差、時間差、及び音圧差に基づき、ピエゾセンサ270にて検出した音(振動)の到来方向、言い替えれば、車両Veから見た音源の方向を推定できる。
【0088】
[第二実施形態のまとめ]
ここまで説明した第二実施形態では、センサ筐体30に設けられた平坦な貼付面31が薄膜状の接着層20によって上方内側面14に保持されることで、音響センサ装置100は、外部構造部10に取り付けられる。故に、種々の構成の外部構造部10に対し、音響センサ装置100を容易かつ確実に取り付けることができる。したがって、音及び振動を検出する音響センサ装置100に適した取り付けが可能となる。
【0089】
詳記すると、音響センサ装置100が接着層20によって外部構造部10に取り付けられるため、ルーフパネル等の車両上面の構成を加工する必要がなくなる。故に、音響センサ装置100の取り付けコストを抑えつつ、1つの音響センサ装置100で、360°全周から到来する音及び振動の検出が可能になる。加えて、デザイン上の制約を受けることなく、車両Veに音響センサ装置100を取り付けることができる。また、ルーフパネルから上方Ueに突出する構成が存在しないため、風切音の発生が抑制され得る。さらに、外部構造部10が上方Ueを向いているため、走行に伴う上方外表面13への着雪が前方外表面に比べ発生し難くなる。
【0090】
加えて第二実施形態では、音を検出する車外集音面71がピエゾセンサ270によって形成されている。ピエゾセンサ270は、金属板275と圧電素子270aとを貼り合わせたモノモルフ振動板を含んでなる。こうしたピエゾセンサ270を用いることで、音検出の感度が向上し得る。さらに、金属板275と圧電素子270aは、樹脂材料よりも温度による特性変化が少ない。故に、ピエゾセンサ270を用いることで、安定した検出信号の出力が可能になる。
【0091】
また第二実施形態では、センサ筐体30に部分的に埋設された中間インサートピン87が、ピエゾセンサ270と回路基板80とを電気的に接続している。このように、埋設によってセンサ筐体30に保持された中間インサートピン87を、ピエゾセンサ270と回路基板80との間に介在させる構成によれば、ピエゾセンサ270と回路基板80との電気的に接続する工程が容易になる。
【0092】
さらに第二実施形態では、車両Veの水平方向であって、車両Veの前後方向及び左右方向に沿って並ぶ複数(3つ以上)のピエゾセンサ270が音響センサ装置100に設けられている。故に、各ピエゾセンサ270の検出信号を比較することで、車両Veの360°全周のうちから、音(振動)の到来方向を推定することが可能になる。加えて、複数のピエゾセンサ270から検出信号を取得する構成によれば、検出結果の信頼性及び感度の向上が可能になる。
【0093】
加えて第二実施形態のピエゾセンサ270は、負極ワイヤ272n及び正極ワイヤ272pを介して接続されている。ピエゾセンサ270を回路基板80に強固に接続してしまうと、感度低下又は余計な振動の受信が発生し得る。一方で、フレキシブルなワイヤを介してピエゾセンサ270を電気接続すれば、感度低下及び余計な振動の受信は、発生し難くなる。
【0094】
また第二実施形態では、複数の車内側空間36が、空間接続部47を介して互いに繋がっている。故に、遮音充填材37となるウレタンフォーム等を、各車内側空間36に一括で充填することが可能になる。
【0095】
さらに第二実施形態のピエゾセンサ270は、内底壁面42に貼り付けられている。こうした配置により、ピエゾセンサ270は、外部構造部10及び取付底壁41に伝わる音を効率的に計測できる。
【0096】
尚、第二実施形態では、上方内側面14が「内側面」にさらに相当し、中間インサートピン87が「接続部」に相当し、ピエゾセンサ270が「音検出センサ部」に相当する。
【0097】
(第三実施形態)
図14に示す本開示の第三実施形態は、第一実施形態の変形例である。第三実施形態の車載センサ設置構造において、音響センサ装置100は、車外音響センサ装置100a及び車内音響センサ装置100bを含んでなる。車外音響センサ装置100aは、第一実施形態にて後方内側面12に設置された音響センサ装置100と実質同一の構成であり、車外集音面71を有するMEMSマイク70を2つ備えている。
【0098】
車内音響センサ装置100bは、第一実施形態にて説明した基本構成の音響センサ装置100と実質同一の構成である。車内音響センサ装置100bは、車外音響センサ装置100aとは反対方向を向く姿勢で、車外音響センサ装置100aに対して保持されている。車内音響センサ装置100bは、外部構造部10に対し垂直な方向(以下、内外方向)において、車外音響センサ装置100aと並ぶように配置され、車外音響センサ装置100aに対し車内側SNに位置している。
【0099】
車内音響センサ装置100bは、1つのMEMSマイク170を備えている。MEMSマイク170は、集音面(以下、車内集音面73)を車内側SNに向けた姿勢で、回路基板80の背面に保持されている。車内集音面73は、車両Veの内部(車内)から到来する音を検出する。
【0100】
ECU90(図7参照)は、3つの信号受信部91と、1つの信号処理部93とを備えている。各信号受信部91は、各車外集音面71にて検出される2つの検出信号と、車内集音面73にて検出される1つの検出信号とを取得し、信号処理部93に提供する。信号処理部93は、車内集音面73にて計測した車内音と、事前に測定した伝達関数とに基づき、車外集音面71にて受信される車室内ノイズを推定する。信号処理部93は、車外集音面71の検出信号から車室内ノイズを差し引く処理により、車外音に含まれる車室内ノイズをキャンセルする。
【0101】
ここまで説明した第三実施形態でも、第一実施形態と同様の効果を奏し、音及び振動を検出する音響センサ装置100に適した取り付けが可能となる。加えて第三実施形態の音響センサ装置100は、車両Veの外部から到来する音を検出する車外集音面71に加えて、車両Veの内部から到来する音を検出する車内集音面73を含んでいる。こうした構成によれば、車室内ノイズのキャンセルが可能となる。その結果、車外集音面71の音検出に対する車内音の影響が抑制され得る。
【0102】
尚、第三実施形態では、車外音響センサ装置100aのMEMSマイク70が「第1音検出センサ部」に相当し、車内音響センサ装置100bのMEMSマイク170が「第2音検出センサ部」に相当する。
【0103】
また、図15に示す第三実施形態の変形例のように、車外音響センサ装置100aは、車内音響センサ装置100bと同様に、1つのMEMSマイク70のみを備える構成であってもよい。こうした構成であっても、MEMSマイク170にて集音される車内音の検出信号を用いて、MEMSマイク70にて計測される車外音に対し車内音をキャンセルする処理が実施され得る。
【0104】
(第四実施形態)
図16に示す本開示の第四実施形態は、第三実施形態の変形例である。第四実施形態の音響センサ装置100では、1つのセンサ筐体30に、車外集音面71を有するMEMSマイク70と、車内集音面73を有するMEMSマイク170とが共に収容されている。MEMSマイク70は、回路基板80の前面に実装され、密閉空間34に収容されている。
【0105】
MEMSマイク170は、回路基板80の背面に実装され、車内側空間36に収容されている。遮音充填材37には、MEMSマイク170を収容するためのマイク収容孔37aが形成されている。背面カバー50には、車内音を通過させるための集音開口53が形成されている。MEMSマイク170は、集音開口53及びマイク収容孔37aを通過した車内音を車内集音面73にて検出する。
【0106】
ここまで説明した第四実施形態でも、第三実施形態と同様の効果を奏し、車室内ノイズのキャンセルが可能となる。その結果、車外集音面71の音検出に対する車内音の影響が抑制され得る。
【0107】
(第五実施形態)
図17に示す本開示の第五実施形態は、第二実施形態の変形例である。第五実施形態の車載センサ設置構造では、第三実施形態と同様に、車外音響センサ装置100a及び車内音響センサ装置100bを含んでなる音響センサ装置100が、車両Veの外部構造部10に取り付けられている。車外音響センサ装置100aは、第二実施形態において後方内側面12に設置された音響センサ装置100と実質同一の構成であり、車外集音面71を形成するピエゾセンサ270を2つ備えている。
【0108】
車内音響センサ装置100bは、第二実施形態にて説明した基本構成の音響センサ装置100と実質同一の構成である。車内音響センサ装置100bは、車外音響センサ装置100aとは逆向きの姿勢で、車外音響センサ装置100aに対して保持されている。車内音響センサ装置100bでは、ピエゾセンサ370によって車内集音面73が形成されている。
【0109】
ここまで説明した第五実施形態でも、第三実施形態と同様の効果を奏し、車室内ノイズのキャンセルが可能となる。その結果、車外集音面71の音検出に対する車内音の影響が抑制され得る。尚、第五実施形態では、車外音響センサ装置100aのピエゾセンサ270が「第1音検出センサ部」に相当し、車内音響センサ装置100bのピエゾセンサ370が「第2音検出センサ部」に相当する。また、第三実施形態及び第四実施形態の2つのMEMSマイク70の内こちらか一方をピエゾセンサ270としてもよい。さらに、第五実施形態の2つのピエゾセンサ270の一方をMEMSマイク70にしてもよい。
【0110】
(第六実施形態)
図18及び図19に示す本開示の第六実施形態は、第一実施形態のさらに別の変形例である。第六実施形態の車載センサ設置構造において、音響センサ装置100は、リテーナ部材60をさらに備えている。
【0111】
リテーナ部材60は、樹脂材料によって軸方向に扁平な筒状に形成されている。リテーナ部材60は、接着層120によって外部構造部10の後方内側面12(又は上方内側面14)に保持されている。接着層120は、接着層20と同様に、両面テープ又は接着材等によって形成されている。
【0112】
リテーナ部材60には、センサ筐体30を囲む囲繞壁61と、外部構造部10に対して保持される保持部62とが設けられている。囲繞壁61は、筐体本体40の周壁44よりも厚く形成されている。囲繞壁61には、切欠部61a及び係合溝63が形成されている。切欠部61aは、筐体本体40の外周側に突き出したコネクタ部38を避けるために囲繞壁61に設けられた欠損部分である。係合溝63は、囲繞壁61の内周壁面から凹む溝部である。係合溝63は、筐体本体40に形成された爪部48と係合する。保持部62は、囲繞壁61から外周側に突き出した鍔状の部分である。保持部62の車外側SGの端面が、接着層120を介して後方内側面12等に保持される。
【0113】
リテーナ部材60は、センサ筐体30よりも先に外部構造部10に取り付けられる。センサ筐体30は、外部構造部10に取り付けられたリテーナ部材60の囲繞壁61に挿入され、接着層20によって外部構造部10に保持される。さらに、周壁44の外周壁面に設けられた爪部48が係合溝63に嵌合することで、センサ筐体30は、リテーナ部材60によっても保持された状態となる。
【0114】
ここまで説明した第六実施形態でも、第一実施形態と同様の効果を奏し、音及び振動を検出する音響センサ装置100に適した取り付けが可能となる。具体的に、第六実施形態では、音響センサ装置100がリテーナ部材60をさらに有している。このリテーナ部材60には、外部構造部10に対して保持される保持部62が設けられている。故に、音響センサ装置100は、外部構造部10に対してより確実に固定可能となる。
【0115】
加えて、リテーナ部材60には、センサ筐体30を囲む形状の囲繞壁61が設けられている。故に、センサ筐体30の側方から到来する音及び振動が、囲繞壁61によってさらに効果的に遮断され得る。
【0116】
またリテーナ部材60は、センサ筐体30よりも先に外部構造部10に取り付けられる。故に、音響センサ装置100を配置する位置の精度向上、取り付け強度向上、接着層20の厚みの安定化、及び接着層20への気泡の混入防止等がさらに実現可能となる。
【0117】
さらに、図20に示す第六実施形態の変形例のように、音響センサ装置100は、2つのMEMSマイク70を備える構成であってもよい。加えて、リテーナ部材60は、センサ筐体30の取り付け後に、外部構造部10に取り付けられる構成であってもよい。こうした形態のリテーナ部材60には、押圧凸部64が設けられている。押圧凸部64は、囲繞壁61の車内側SNの端部に形成されている。押圧凸部64は、保持部62が接着層120を介して外部構造部10に取り付けられることにより、外部構造部10へ向けてセンサ筐体30を押圧する。
【0118】
(第七実施形態)
図21に示す本開示の第七実施形態は、第一実施形態のさらに別の変形例である。第七実施形態による音響センサ装置100では、複数のMEMSマイク70が、1つの回路基板80に実装されている。回路基板80には、実装されたMEMSマイク70と同数のアンプ回路部85(図7参照)及び通信インターフェース86(図7参照)が設けられている。回路基板80は、複数の密閉空間34を車内側SNから密閉するように、センサ筐体30に一体的に形成された車内側空間36に配置されている。
【0119】
こうした第七実施形態のように、MEMSマイク70が接続される回路基板80を1つに繋げれば、音響センサ装置100の構成が簡素化され得る。その結果、車載センサ設置構造の低コスト化が実現可能となる。尚、ピエゾセンサ270(図11参照)と接続される回路基板80が、1つに繋げられた構成であってもよい。
【0120】
(第八実施形態)
図22に示す本開示の第八実施形態は、第七実施形態の変形例である。第八実施形態による音響センサ装置100では、多数のMEMSマイク70が、1つの回路基板80に狭間隔で実装されている。多数のMEMSマイク70は、一列に配列されていてもよく、アレイ状に2次元配列されていてもよい。また、MEMSマイク70の変わりに密閉空間の集音面にピエゾセンサ270を配置してもよい。さらに、MEMSマイク70とピエゾセンサ270の両方を合わせて配置してもよい。例えば2次元配列の奇数列にMEMSマイク70を配置し、偶数列にピエゾセンサ270を配置してもよい。
【0121】
筐体本体40には、MEMSマイク70の配列に対応した多数の密閉空間34が形成されている。密閉空間34は、第一実施形態と同様に、回路基板80及び基板固定材88によって密閉され、互いに音響的に独立している。回路基板80において、各車外集音面71の車外側SGとなる部分には、各密閉空間34と連続する音孔81が複数形成されている。こうした第八実施形態の構成によれば、音源の方向がより高精度に推定可能となる。
【0122】
(第九実施形態)
図23に示す本開示の第九実施形態は、第一実施形態のさらに別の変形例である。第九実施形態では、コネクタ部38(図2参照)が省略されている。MEMSマイク70の検出信号は、回路基板80に設けられた出力ピン184、及びワイヤハーネス39を介して、ECU90(図7参照)等に出力される。ワイヤハーネス39は、はんだ付け又は圧着等により出力ピン184に電気的に接続されている。検出信号を出力する出力ピン184及びワイヤハーネス39だけでなく、回路基板80の電源ラインと接続され、電源供給を行う出力ピン184及びワイヤハーネス39がさらに設けられていてもよい。
【0123】
第九実施形態による車載センサ設置構造には、クランプ部材160がさらに含まれている。クランプ部材160は、樹脂材料によって筒状に形成されている。クランプ部材160は、音響センサ装置100の近傍に配置され、音響センサ装置100と共に外部構造部10に保持されている。クランプ部材160は、接着層120によって、後方内側面12又は上方内側面14に貼り付けられる。
【0124】
クランプ部材160は、筒状のクランプ壁161を有している。クランプ壁161の外周面には、平面状のクランプ貼付面162が設けられている。クランプ貼付面162は、接着層120を介して後方内側面12又は上方内側面14に保持する。接着層120は、接着層20と同様に、両面テープ又は接着材等によって形成されている。クランプ壁161の内周側には、制振材164が配置されている。
【0125】
制振材164は、スポンジ等によって柱状に形成されている。制振材164は、クランプ壁161の内周側に密着している。制振材164には、ハーネス孔165が設けられている。ハーネス孔165は、制振材164を軸方向に貫通する細長い貫通孔である。ハーネス孔165には、電源供給及び信号伝送のためのワイヤハーネス39が通されている。
【0126】
クランプ部材160は、ワイヤハーネス39を外部構造部10に対して固定する。クランプ部材160とワイヤハーネス39とが接する部分は、制振材164となっている。制振材164は、ワイヤハーネス39に対し、吸音効果及び制振効果を発揮する。故に、車両振動等がワイヤハーネス39から回路基板80に伝わり、MEMSマイク70によって検出される事態が抑制され得る。
【0127】
(第十実施形態)
図24に示す本開示の第十実施形態は、第一実施形態のさらに別の変形例である。第十実施形態の音響センサ装置100では、センサ筐体30が、筐体本体40及び背面カバー50に加えて、前面カバー150を備えている。前面カバー150は、筐体本体40の車外側SGの端面に接着材又は溶着等によって組み付けられている。前面カバー150には、取付底壁41及び貼付面31が設けられている。前面カバー150は、筐体本体40及び回路基板80と共に密閉空間34を区画している。
【0128】
筐体本体40は、テーパ状の上段周壁部44aを有している。上段周壁部44aは、貼付面31から車外集音面71へ向かうに従って、密閉空間34の横断面の面積を減少させている。こうした上段周壁部44aの形状により、密閉空間34は、部分円錐状又は部分四角錐状を呈している。
【0129】
ここまで説明した第十実施形態では、テーパ状の上段周壁部44aによりホーン構造がセンサ筐体30の内部に形成される。故に、音検知の指向性を外側に向けることが可能になる。その結果、密閉空間34にて外部の音がいっそう効果的に集音されるため、MEMSマイク70の感度が向上し得る。尚、第十実施形態では、上段周壁部44aが「周壁部」に相当する。
【0130】
また、図25に示す第十実施形態の変形例による音響センサ装置100では、MEMSマイク70(図24参照)に替えて、ピエゾセンサ270が回路基板80の前面に実装されている。加えて、密閉空間34には、部分円錐状又は部分四角錐状に形成された音響整合材135が収容されている。音響整合材135は、取付底壁41に伝わる音又は振動を車外集音面71に空気よりも効率的に伝えることができる。そのため、第十一実施形態でも、密閉空間34での効果的な集音が可能になるため、ピエゾセンサ270の感度の向上が実現され得る。
【0131】
(第十一実施形態)
図26及び図27に示す本開示の第十一実施形態は、第一実施形態のさらに別の変形例である。第十一実施形態の車載センサ設置構造は、車両VeのサイドミラーPs1に設けられている。音響センサ装置100は、サイドミラーPs1のハウジング15に収容されている。音響センサ装置100は、サイドミラーPs1のミラー部材を外部構造部10として、このミラー部材の裏面(後方内側面12)に取り付けられている。
【0132】
こうした第十一実施形態のように、硬いガラス製のミラー部材を外部構造部10とすることで、ミラー部材が後方Goからの音を受信するアンテナとして機能する。その結果、ピエゾセンサ270(又はMEMSマイク70,図2参照)の感度が向上する。故に、ミラー部材を外部構造部10とする車載センサ設置構造は、音及び振動を検出する音響センサ装置100に適した取り付け構造となる。
【0133】
(他の実施形態)
以上、本開示の複数の実施形態について説明したが、本開示は、上記実施形態に限定して解釈されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲内において種々の実施形態及び組み合わせに適用することができる。
【0134】
図28に示す上記第二実施形態の変形例1では、排水のために、外部構造部10となる車両Veのルーフパネルが上方Ue(車外側SG)に凸となる形状に湾曲している。変形例1の車載センサ設置構造では、第一実施形態の基本構成の音響センサ装置100が、左右方向に2つ並んでいる。各音響センサ装置100の貼付面31は、外部構造部10の湾曲に合わせて、水平方向に対し傾いた姿勢で上方内側面14に貼り付けられている。平面状の貼付面31と湾曲した上方内側面14との間に生じる隙間の少なくとも一部は、接着層20の変形によって埋められている。以上の変形例1によれば、湾曲した形状の外部構造部10に対しても、特殊な加工を行うことなく、音響センサ装置100を強固に設置することが可能になる。
【0135】
さらに、図29に示す変形例2の車載センサ設置構造では、2つの音響センサ装置100が、両面テープ等によってなる1つの接着層20によって繋げられている。また、図30に示す変形例3の車載センサ設置構造では、2つの音響センサ装置100が、1つの接着層20と、可撓性を有する連結部材22とによって連結されている。これら変形例2,3の車載センサ設置構造では、2つの音響センサ装置100の間にて、接着層20及び連結部材22が折れることにより、湾曲した外部構造部10(図28参照)に各貼付面31を追従させることができる。
【0136】
図31及び図32に示す変形例4,5の車載センサ設置構造では、湾曲した外部構造部10に対し、センサ筐体30がリテーナ部材60を介して固定されている。リテーナ部材60は、接着層20によって上方内側面14に貼り付けられている。取付底壁41と上方内側面14との間に生じる裏側空間16は、密閉部材24によって複数に区切られ、かつ、密閉されている。密閉部材24は、ゴム又は発泡材等によって形成されている。密閉部材24は、裏側空間16への水等の浸入を防止する。
【0137】
図31に示す変形例4の音響センサ装置100は、複数のMEMSマイク70を含む構成である。センサ筐体30の取付底壁41に形成された凹部43は、取付底壁41を厚さ方向に貫通している。凹部43は、密閉空間34と裏側空間16とを繋ぐ音孔として機能する。凹部43によって形成される音孔には、音は透過するが空気や水分を透過しない膜等が設けられていてもよい。
【0138】
図32に示す変形例5の音響センサ装置100は、複数のピエゾセンサ270を含む構成である。ピエゾセンサ270が貼り付けられる取付底壁41には、凹部43(図31参照)は設けられていない。取付底壁41と後方内側面12との間に区画される裏側空間16には、音響整合材17が収容されている。音響整合材17は、外部構造部10に伝わる音又は振動を取付底壁41に空気よりも効率的に伝えることができる。尚、裏側空間16には、音響整合材17に替えて、接着材等が充填されていてもよい。
【0139】
図33に示す変形例6の車載センサ設置構造では、湾曲した外部構造部10に対し、複数のセンサ筐体30がリテーナ部材60を介して固定されている。リテーナ部材60は、接着層120によって上方内側面14に貼り付けられている。各センサ筐体30は、リテーナ部材60及び密閉部材24によって区画された固定穴18に挿入され、固定穴18内の上方内側面14に接着層20を介して保持される。
【0140】
図34に示す上記第二実施形態の変形例7では、ピエゾセンサ270の構成が変更されている。変形例7のピエゾセンサ270では、金属板275(図9参照)が省略されている。ピエゾセンサ270の圧電素子270aは、密閉空間34に収容され、両面テープ等によって取付底壁41の内底壁面42に貼り付けられている。
【0141】
また、図35に示す変形例8では、圧電素子270a及び金属板275よりなるモノモルフ振動板を含んだピエゾセンサ270が、取付底壁41から離間した位置の段差部44cに、両面テープ等の接着部材によって貼り付けられている。
【0142】
さらに、図36に示す変形例9では、ピエゾセンサ270の金属板275が、取付底壁41を形成している。金属板275は、筐体本体40に設けられた開口部を塞いでおり、筐体本体40等と共にセンサ筐体30を構成している。金属板275は、センサ筐体30から露出しており、両面テープ等を介して外部構造部10に直接的に貼り付けられる。こうした変形例9では、外部構造部10から車外集音面71に音が効率的に伝わるため、ピエゾセンサ270の感度が向上し得る。
【0143】
図37に示す変形例10では、接着層20が分割された構成により、取付底壁41と後方内側面12との間に裏側空間16が形成されている。裏側空間16は、接着層20によって密閉されている。裏側空間16への水等の浸入は、接着層20によって防がれ得る。凹部43は、上記の変形例4(図1参照)と同様に、取付底壁41を貫通する貫通孔である。凹部43は、裏側空間16と密閉空間34とを連通させており、音孔として機能する。こうした変形例10でも、MEMSマイク70の感度の向上が可能になる。また、多数の音孔を設けてなる取付底壁41に替えて、音を通す一方で水を通さない繊維素材、言い替えれば、防水性と透湿性を両立させた繊維素材(例えば、ゴアテックス,登録商標)により取付底壁41が形成されていてもよい。
【0144】
また、図38に示す変形例11のように、音は透過するが水や塵を通さない繊維、ゴム、樹脂等で成型された薄膜状の保護シート42aが、内底壁面42に貼り付けられていてもよい。保護シート42aは、凹部43の内側を塞いでいる。こうした構成によれば、外部構造部10への装着前において、密閉空間34への水及び埃等の侵入を防ぐことが可能になる。
【0145】
さらに、図39に示す変形例12のように、両面テープ等よりなる接着層20によって、貫通孔である凹部43の外側が密閉されていてもよい。
【0146】
さらに、図40に示す上記第二実施形態の変形例13による車載センサ設置構造では、3つの音響センサ装置100が前後左右に並べられている。こうした変形例13のように、3つ以上の音響センサ装置100(音検出センサ部)が前後方向及び左右方向に互いにずれて位置していれば、音源の方向の推定が可能となる。
【0147】
(技術的思想の開示)
この明細書は、以下に列挙する複数の項に記載された複数の技術的思想を開示している。いくつかの項は、後続の項において先行する項を択一的に引用する多項従属形式(a multiple dependent form)により記載されている場合がある。さらに、いくつかの項は、他の多項従属形式の項を引用する多項従属形式(a multiple dependent form referring to another multiple dependent form)により記載されている場合がある。これらの多項従属形式で記載された項は、複数の技術的思想を定義している。
【0148】
(技術的思想1)
車両(Ve)の後方を向く姿勢で当該車両の外部に露出する後方外表面(11)を有し、板状を呈する外部構造部(10)と、
前記外部構造部において前記後方外表面の裏側となる後方内側面(12)に対して保持されるセンサ筐体(30)、及び前記車両の外部から到来する音及び前記外部構造部内の振動を検出する車外集音面(71)を前記外部構造部へ向けた姿勢で前記センサ筐体に収容される音検出センサ部(70,270)、を有する音響センサ装置(100)と、
を備える車載センサ設置構造。
(技術的思想2)
前記センサ筐体には、平坦な貼付面(31)が設けられ、
前記貼付面を前記後方内側面に保持させる薄膜状の接着層(20)、をさらに備える技術的思想1に記載の車載センサ設置構造。
(技術的思想3)
前記外部構造部は、ガラスによって形成されている技術的思想2に記載の車載センサ設置構造。
(技術的思想4)
車両(Ve)の上方を向く姿勢で当該車両の外部に露出する上方外表面(13)を有し、板状を呈する外部構造部(10)と、
前記外部構造部において前記上方外表面の裏側となる上方内側面(14)に対して保持されるセンサ筐体(30)、及び前記車両の外部から到来する音及び前記外部構造部内の振動を検出する車外集音面(71)を前記外部構造部へ向けた姿勢で前記センサ筐体に収容される音検出センサ部(70,270)、を有する音響センサ装置(100)を前記上方内側面に保持させる薄膜状の接着層(20)と、
を備える車載センサ設置構造。
(技術的思想5)
前記センサ筐体には、貼付面(31)が設けられ、
前記接着層は、前記貼付面を前記上方内側面に保持させる技術的思想4に記載の車載センサ設置構造。
(技術的思想6)
車両(Ve)の上方を向く姿勢で当該車両の外部に露出する上方外表面(13)を有し、板状を呈する外部構造部(10)と、
前記外部構造部において前記上方外表面の裏側となる上方内側面(14)に対して保持されるセンサ筐体(30)、及び前記車両の外部から到来する音及び前記外部構造部内の振動を検出する車外集音面(71)を前記外部構造部へ向けた姿勢で前記センサ筐体に収容される音検出センサ部(70,270)、を有する音響センサ装置(100)を前記上方内側面に保持させるリテーナ部材(60)と、
を備える車載センサ設置構造。
(技術的思想7)
前記音響センサ装置は、複数の前記音検出センサ部を有する技術的思想1~6のいずれか一項に記載の車載センサ設置構造。
(技術的思想8)
前記音響センサ装置は、前記車両の水平方向に沿って並ぶ複数の前記音検出センサ部を有する技術的思想1~7のいずれか一項に記載の車載センサ設置構造。
(技術的思想9)
複数の前記音検出センサ部から出力される検出信号は、信号処理装置(90)に入力され、
前記信号処理装置は、複数の前記検出信号の信号差に基づく信号処理を実施する技術的思想7又は8に記載の車載センサ設置構造。
(技術的思想10)
前記センサ筐体には、複数の前記音検出センサ部を隔てる遮蔽壁(45)が設けられる技術的思想7~9のいずれか一項に記載の車載センサ設置構造。
(技術的思想11)
前記遮蔽壁には、複数の前記音検出センサ部を隔てる中空ないし吸音材を充填する遮音空間(46a)が設けられる技術的思想10に記載の車載センサ設置構造。
(技術的思想12)
前記音響センサ装置は、
前記音検出センサ部である第1音検出センサ部と、
前記車両の内部から到来する音を検出する車内集音面(73)を含む第2音検出センサ部(170,370)と、
を有する技術的思想1~9のいずれか一項に記載の車載センサ設置構造。
(技術的思想13)
前記音響センサ装置は、前記センサ筐体を囲む囲繞壁(61)、及び前記外部構造部に対して保持される保持部(62)、を含むリテーナ部材(60)、をさらに有する技術的思想1~10のいずれか一項に記載の車載センサ設置構造。
(技術的思想14)
板状を呈する車両の外部構造部(10)に保持される音響センサ装置であって、
音及び前記外部構造部内の振動を検出する集音面(71)を有する音検出センサ部(70,270)と、
前記外部構造部の内側面(12,14)に対して、接着層(20)にて保持し、前記集音面が前記内側面に沿う姿勢で前記音検出センサ部を収容するセンサ筐体(30)と、
を備える音響センサ装置。
(技術的思想15)
前記センサ筐体には、貼付面(31)が設けられ、
前記接着層は、薄膜状であり、前記貼付面を前記外部構造部の内側面(12,14)に保持する技術的思想14に記載の音響センサ装置。
(技術的思想16)
前記センサ筐体は、前記貼付面と前記集音面との間に中空集音空間(34)を区画する技術的思想15に記載の音響センサ装置。
(技術的思想17)
前記音検出センサ部が実装され、前記センサ筐体に収容される板状の回路基板(80)、をさらに備え、
前記回路基板は、前記センサ筐体と協同で前記中空集音空間を区画する技術的思想16に記載の音響センサ装置。
(技術的思想18)
前記音検出センサ部は、前記回路基板の両面のうち、前記中空集音空間に臨む前面とは反対側の背面に実装され、
前記回路基板のうちで前記集音面と前記中空集音空間との間となる部分には、前記回路基板を板厚方向に貫通する貫通孔(81)が形成される技術的思想16に記載の音響センサ装置。
(技術的思想19)
前記センサ筐体に収容され、前記回路基板を挟んで前記中空集音空間の反対側に配置される背面側遮音材(37)、をさらに備える技術的思想17又は18に記載の音響センサ装置。
(技術的思想20)
前記センサ筐体は、前記貼付面から前記集音面へ向かうに従って前記中空集音空間の横断面の面積を減少させるテーパ状の周壁部(44a)を有する技術的思想16~19のいずれか一項に記載の音響センサ装置。
(技術的思想21)
前記センサ筐体は、前記貼付面を形成する取付壁(41)を有し、
前記取付壁には、前記中空集音空間に臨み、前記取付壁の壁厚を減少させる穴部(43)が形成される技術的思想16~19のいずれか一項に記載の音響センサ装置。
(技術的思想22)
前記音検出センサ部は、圧電素子(270a)を含み、前記貼付面を形成する前記センサ筐体の取付壁(41)に対して保持される技術的思想16,18,及び19のいずれか一項に記載の音響センサ装置。
(技術的思想23)
前記センサ筐体に収容され、前記センサ筐体と協同で前記中空集音空間を区画する板状の回路基板(80)と、
前記センサ筐体に部分的に埋設され、前記圧電素子と前記回路基板とを電気的に接続する接続部(87)と、をさらに備える技術的思想22に記載の音響センサ装置。
【符号の説明】
【0149】
Ve 車両、10 外部構造部、11 後方外表面、12 後方内側面(内側面)、13 上方外表面、14 上方内側面(内側面)、20 接着層、30 センサ筐体、31 貼付面、34 密閉空間(中空集音空間)、37 遮音充填材(背面側遮音材)、41 取付底壁(取付壁)、43 凹部(穴部)、44a 上段周壁部(周壁部)、45 遮蔽壁、46a 遮音空間、47 空間接続部、60 リテーナ部材、61 囲繞壁、62 保持部、70 MEMSマイク(音検出センサ部,第1音検出センサ部)、170 MEMSマイク(第2音検出センサ部)、270 ピエゾセンサ(音検出センサ部,第1音検出センサ部)、370 ピエゾセンサ(第2音検出センサ部)、270a 圧電素子、71 車外集音面(集音面)、73 車内集音面(集音面)、80 回路基板、81 音孔(貫通孔)、87 中間インサートピン(接続部)、90 ECU(信号処理装置)、100 音響センサ装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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