(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024113463
(43)【公開日】2024-08-22
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
H02M 3/28 20060101AFI20240815BHJP
【FI】
H02M3/28 V
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023018461
(22)【出願日】2023-02-09
(71)【出願人】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002365
【氏名又は名称】弁理士法人サンネクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】栗本 佳典
(72)【発明者】
【氏名】嶋田 尊衛
(72)【発明者】
【氏名】中原 瑞紀
(72)【発明者】
【氏名】阪部 智城
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 英樹
(72)【発明者】
【氏名】安川 義人
【テーマコード(参考)】
5H730
【Fターム(参考)】
5H730AA14
5H730AA15
5H730AS04
5H730AS05
5H730AS17
5H730BB27
5H730BB61
5H730BB83
5H730BB86
5H730BB98
5H730CC01
5H730DD04
5H730EE03
5H730EE04
5H730EE07
5H730EE08
5H730EE13
5H730EE23
5H730EE73
5H730EE78
5H730FD11
(57)【要約】
【課題】低損失化、大電力化、高効率化、車両航続距離の維持を実現した電力変換装置を提供する。
【解決手段】
トランスと、第1~第3スイッチング回路と、を備える電力変換装置であって、前記第3スイッチング回路は、整流回路と、前記整流回路から出力される第3直流電力を平滑化する平滑コンデンサと、前記平滑コンデンサと直列に接続される第1スイッチング素子と、前記平滑コンデンサおよび前記第1スイッチング素子と第3直流電源との間に設けられるインダクタ素子とを有し、第2直流電源から前記第3直流電源へ電力供給する場合に、前記第2スイッチング回路の動作に基づいて、前記第1スイッチング素子のON/OFFを切り替える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1巻線と、第2巻線と、第3巻線と、が磁気結合されたトランスと、
前記第1巻線に接続されて、第1直流電源との間で相互に第1直流電力と交流電力を変換する第1スイッチング回路と、
前記第2巻線に接続されて、第2直流電源との間で相互に前記交流電力と第2直流電力を変換する第2スイッチング回路と、
前記第3巻線に接続されて、前記交流電力を第3直流電力に変換して第3直流電源に供給する第3スイッチング回路と、を備える電力変換装置であって、
前記第3スイッチング回路は、前記交流電力を前記第3直流電力に変換する整流回路と、前記整流回路から出力される前記第3直流電力を平滑化する平滑コンデンサと、前記平滑コンデンサと直列に接続される第1スイッチング素子と、前記平滑コンデンサおよび前記第1スイッチング素子と前記第3直流電源との間に設けられるインダクタ素子と、を有し、
前記第2直流電源から前記第3直流電源へ電力供給する場合に、前記第2スイッチング回路の動作に基づいて、前記第1スイッチング素子のON/OFFを切り替える
電力変換装置。
【請求項2】
請求項1に記載された電力変換装置であって、
前記第3スイッチング回路は、前記整流回路から前記インダクタ素子への導通を制御する第2スイッチング素子を有し、
前記第1直流電源から前記第2直流電源および前記第3直流電源へ同時に電力供給する場合、あるいは、前記第2直流電源から前記第1直流電源および前記第3直流電源へ同時電力供給する場合に、前記第1スイッチング素子をON状態に維持し、かつ前記第2スイッチング素子のON/OFFを切り替える
電力変換装置。
【請求項3】
請求項1に記載された電力変換装置であって、
前記第2直流電源から前記第3直流電源へ電力供給する場合で、かつ前記第2直流電源の電圧が予め設定された電圧の閾値よりも小さい場合には、前記第1スイッチング素子をON状態に維持する
電力変換装置。
【請求項4】
請求項1に記載された電力変換装置であって、
前記第1スイッチング素子は、前記トランスに電圧が印加されている間にONになり、前記トランスに電圧が印加されていない間にOFFになる
電力変換装置。
【請求項5】
請求項4に記載された電力変換装置であって、
前記トランスに電圧が印加されはじめてから所定の時間経過後に、前記第1スイッチング素子をOFFからONに切り替える
電力変換装置。
【請求項6】
請求項1に記載された電力変換装置であって、
前記第2スイッチング回路と前記第2直流電源との間に、電圧を双方向に変換する電圧変換回路を備える
電力変換装置。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の電力変換装置は、車両に搭載され、
充電中に、前記第2スイッチング回路の動作に基づいて、前記第1スイッチング素子のON/OFFを切り替え、
走行中に、前記第1スイッチング素子をON状態に維持し、かつ前記第2スイッチング素子のON/OFFを切り替える
電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
主に電気自動車等に搭載される電力変換装置の1つである双方向充電・給電装置は、一般的にOBC(On Board Charger)と呼ばれ、技術開発に伴い、大電力化、小型化、低損失化が求められている。さらに、HV(High Voltage)バッテリからLV(Low Voltage)給電するDC/DCコンバータをOBCと統合し、車載の電源システム全体の小型化を達成する手法も報告されている。例えば、下記の特許文献1では、制御が必要な時にスイッチング素子のON/OFFを切り替えて、制御が不要な時にスイッチング素子の切り替え状態を常時オンにすることで、損失を低減し、かつ接続されている全ての負荷の動作領域を確保する電力変換装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の技術では、OBCは、LLC共振型コンバータの方式を採用することによって大電力化・高効率化するような設計が施され、かつ低損失化を実現している。このLLC共振形のOBCにおいて、絶縁トランスに巻線を追加し、HVからLVへのDC/DCコンバータと統合する小型化手法を容易に構想することができる。この手法において、OBCを使用しない電力経路、すなわち車両走行中におけるHVバッテリからLVバッテリへの経路に関しても、OBCの出力電力や効率に合わせて設計された共振LCなどの定数に基づいた周波数変調と位相シフトによってスイッチング素子の制御を行っている。
【0005】
しかしながら、このHVバッテリからLVバッテリへの電力供給モードに関して、HVバッテリ側のリチウムイオンバッテリの電圧が高い場合、周波数が上限となることにより位相シフトのみで出力制御を行うため、ピーク電流が大きくなることがある。これにより、半導体の損失が大きくなり、HVバッテリからLVバッテリへの電力供給効率が低下する課題が生じていた。また、車両走行中のHVバッテリからLVバッテリへの電力供給は、車両の航続距離に関連することから、上述の課題が生じることで、車両の航続距離が短くなるという課題も生じていた。
【0006】
これを鑑みて、本発明では、低損失化、大電力化、高効率化、車両航続距離の維持を実現した電力変換装置を提供することが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の電力変換装置は、第1巻線と、第2巻線と、第3巻線と、が磁気結合されたトランスと、前記第1巻線に接続されて、第1直流電源との間で相互に第1直流電力と交流電力を変換する第1スイッチング回路と、前記第2巻線に接続されて、第2直流電源との間で相互に前記交流電力と第2直流電力を変換する第2スイッチング回路と、前記第3巻線に接続されて、前記交流電力を第3直流電力に変換して第3直流電源に供給する第3スイッチング回路と、を備える電力変換装置であって、前記第3スイッチング回路は、前記交流電力を前記第3直流電力に変換する整流回路と、前記整流回路から出力される前記第3直流電力を平滑化する平滑コンデンサと、前記平滑コンデンサと直列に接続される第1スイッチング素子と、前記平滑コンデンサおよび前記第1スイッチング素子と前記第3直流電源との間に設けられるインダクタ素子とを有し、前記第2直流電源から前記第3直流電源へ電力供給する場合に、前記第2スイッチング回路の動作に基づいて、前記第1スイッチング素子のON/OFFを切り替える。
【発明の効果】
【0008】
低損失化、大電力化、高効率化、車両航続距離の維持を実現した電力変換装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る、電力変換装置の説明図
【
図2】本発明の第1の実施形態に係る、第2スイッチング回路と第3スイッチング回路の動作を表す図
【
図3】本発明の第2の実施形態に係る、スイッチング素子の動作を表す図
【
図4】本発明の第3の実施形態に係る、スイッチング素子の動作を表す図
【
図5】本発明の第4の実施形態に係る、電力変換装置の説明図
【
図6】本発明の第4の実施形態に係る、第2スイッチング回路および第2直流電源の電圧レンジの説明図
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下の記載および図面は、本発明を説明するための例示であって、説明の明確化のため、適宜、省略および簡略化がなされている。本発明は、他の種々の形態でも実施する事が可能である。特に限定しない限り、各構成要素は単数でも複数でも構わない。
【0011】
図面において示す各構成要素の位置、大きさ、形状、範囲などは、発明の理解を容易にするため、実際の位置、大きさ、形状、範囲などを表していない場合がある。このため、本発明は、必ずしも、図面に開示された位置、大きさ、形状、範囲などに限定されない。
【0012】
(本発明の第1の実施形態と全体構成)
(
図1)
外部の電源と接続可能な電力変換装置である車載の充電装置7は、例えば、図示するような車両外部の交流電源6と接続されることで、車載の第2直流電源V2と第3直流電源V3を充電できる。なお、充電装置7と接続される交流電源6は一例であり、充電装置7は、車両外部の直流電源と接続されて充電できるような構成を有していてもよい。充電装置7は、車両から外部に対しても電力供給が可能な双方向充電・給電装置である。
【0013】
なお、第2直流電源V2は、リチウムイオン蓄電池等のHVバッテリ(例えば200V~400V)である。また、第3直流電源V3は、補器バッテリであり、例えば車両の電装系の電源をつかさどるLVバッテリ(例えば12V)である。
【0014】
充電装置7は、AC/DCコンバータ5、DC/DCコンバータ9を有している。DC/DCコンバータ9は、第1スイッチング回路1と第2スイッチング回路2を有し、交流電源6から供給された電力を、第1スイッチング回路1と第2スイッチング回路2を用いて電力変換し、第2直流電源V2に供給している。
【0015】
また、充電装置7は、第3スイッチング回路3を有している。第3スイッチング回路3は、トランス12を介して、DC/DCコンバータ9が有する第1スイッチング回路1および第2スイッチング回路2に磁気的に接続されている。DC/DCコンバータ9は、交流電源6から供給される電力を、第1スイッチング回路1と第3スイッチング回路3を用いて電力変換し、第3直流電源V3に供給している。なお、充電装置7は、OBC回路の大電力化・高効率化・低損失化を実現する設計を施すために、LLC共振型コンバータの方式を採用している。
【0016】
充電装置7において、トランス12は、少なくとも3つの巻線が磁気結合された三巻線トランスである。第1スイッチング回路1は、3つの巻線のうち第1巻線N1に接続されている。第2スイッチング回路2は、3つの巻線のうち第2巻線N2に接続されている。第3スイッチング回路3は、3つの巻線のうち第3巻線N3に接続されている。
【0017】
第1スイッチング回路1は、スイッチング素子Q1,Q2、スイッチング素子Q3,Q4がそれぞれ直列接続された2つのスイッチングレグを有する。また、第1スイッチング回路1は、この2つのスイッチングレグに並列に接続されているコンデンサC1を有する。第1スイッチング回路1は、共振コンデンサCr1および共振リアクトルLr1と接続される。励磁インダクタンスLmは、第1巻線N1に並列に接続されている。
【0018】
第2スイッチング回路2は、スイッチング素子Q5,Q6、スイッチング素子Q7,Q8がそれぞれ直列接続された二つのスイッチングレグを有する。また、第2スイッチング回路2は、この2つのスイッチングレグに並列に接続されているコンデンサC2を有する。第2スイッチング回路2は、共振コンデンサCr2および共振リアクトルLr2と接続される。
【0019】
なお、共振リアクトルLr1,Lr2は、トランス12の漏れインダクタンスとしてもよい。
【0020】
第3スイッチング回路3は、充電装置7において入力電圧より電圧を下げる制御を行う降圧チョッパの機能を有する。第3スイッチング回路3は、スイッチング素子Q9,Q10で構成され変換された交流電力を第3直流電力に変換する整流回路10、整流回路10から出力される第3直流電力を平滑化する平滑コンデンサC、平滑コンデンサCと直列に接続される第1スイッチング素子S1、整流出力である平滑コンデンサCおよび第1スイッチング素子S1と、第3直流電源V3と、の間に設けられるスイッチング素子S2、平滑リアクトルであるインダクタ素子L、ダイオードD1を有する。第2スイッチング素子S2は、第2スイッチング素子S2をON/OFFすることにより、整流回路10からインダクタ素子Lへの導通を制御している。
【0021】
外部からの電力供給における車両の充電について、充電装置7における具体的な電力変換および出力を説明する。充電装置7は、外部の交流電源6から交流電力を受電する。AC/DCコンバータ5は、受電した交流電力を第1直流電力に変換し、第1直流電力を第1スイッチング回路1のコンデンサC1に供給する。充電装置7は、第1スイッチング回路1において、コンデンサC1に印加された第1直流電力を交流電力に変換し、トランス12を介して第2スイッチング回路2および第3スイッチング回路3に出力する。充電装置7は、第2スイッチング回路2おいて、入力された交流電力を第2直流電力に変換し、コンデンサC2および第2直流電源V2に印加する。また、充電装置7は、第3スイッチング回路3において、入力された交流電力を第3直流電力に変換し、コンデンサCおよび第3直流電源V3に印加する。
【0022】
(従来構成と本発明の構成との比較)
従来では、充電装置7のコンバータ回路には、外部の電源からHVバッテリ(第2直流電源V2)を充電する際に低損失にする設計が施されている。具体的には、充電装置7は、第3スイッチング回路3においての整流出力をコンデンサCで受けるコンバータである。
【0023】
しかしながら、車両の走行中、つまり第2直流電源V2から第3直流電源V3への電力供給経路の場合、低損失にする設計が施された充電装置7は、低損失な電圧や電力レンジが限られており、電圧レンジが想定値より大きく外れると、周波数の変調量が大きくなり、ピーク電流が増えて損失が増大する。このような損失の増大により、第2直流電源V2の消耗が激しいと、車両の航続距離が短くなる課題が生じる。
【0024】
そこで本発明は、整流回路10の出力側のコンデンサCに直列に接続する第1スイッチング素子S1を設け、車両の走行中は第2スイッチング素子S2をONにするとともに、第1スイッチング素子S1をON/OFFすることで、第3スイッチング回路3においての整流出力を、インダクタ素子Lに切り替えられるようなコンバータの設計にする。
【0025】
また、第1スイッチング素子S1がONである期間は、トランス12に電圧が印加されている場合に同期する。つまり、第1スイッチング素子S1は、トランス12に電圧が印加されている期間のみONにして、トランス12に電圧が印加されていない間にOFFにする。このようにすることで、第1スイッチング素子S1と平滑コンデンサCをサージ吸収回路として利用でき、跳ね上がり電圧を抑えることができる。
【0026】
なお、整流出力がインダクタ素子Lであるコンバータとは、スイッチング素子Q5とQ8どちらもオンか、どちらもオフであるときに、整流回路10の整流出力に電圧がかけられ、インダクタ素子Lがチョッパの役割を有する設計である。つまり、第2直流電源V2から第3直流電源V3へ電力供給する場合に、第2スイッチング回路2の動作に基づいて、第1スイッチング素子S1のON/OFFを切り替え、第2スイッチング素子S2は常時ON状態に維持し、第1スイッチング素子S1とコンデンサCによってアクティブクランプを構成して、跳ね上がり電圧からスイッチング素子を保護している。なお、この場合の第1スイッチング回路1は、トランス12への電圧印加期間で出力電圧を制御する位相シフト動作になっている。
【0027】
このようにしたことで、車両が充電中か走行中かによって、低損失な方の回路設計を選択でき、電圧をコントロールしやすくなるため、第3直流電源V3に正しい電圧を出力できる。また、電力供給元である第2直流電源V2の電圧が高くなっても、インダクタ素子Lにより半導体の低損失化を実現できる。また、これにより、双方向充電装置7の高効率化と車両の航続距離の両立を実現できる。
【0028】
なお、スイッチング素子Q1~Q8、第1スイッチング素子S1、第2スイッチング素子S2は、MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field Effect Transistor)やIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)等である。また、整流回路10のスイッチング素子Q9,Q10は、MOSFETやダイオード等である。また、ダイオードD1は、MOSFETでもよい。また、直流電源V2,V3は、任意のDC電圧を必要とする負荷としてもよい。
【0029】
(
図2)
本発明の実施形態に係る、第2スイッチング回路2の動作と第3スイッチング回路3の動作について説明する。第2スイッチング回路2において、スイッチング素子Q5,Q6から成るスイッチングレグ、スイッチング素子Q7,Q8から成るスイッチングレグは、図示するように、どちらもデューティー比50%で動作して、互いの位相をずらして運転している。この結果、
図2のVtrに示すように、スイッチング素子Q5,Q8がどちらもONか、スイッチング素子Q6,Q7どちらもONの時間帯のみ、トランス12に電圧を印加することが可能である。このように、位相をずらすことでトランス12に印加する電圧のデューティー比を制御している。
【0030】
ただし、このようなデューティー比で電圧を第3直流電源V3の直流電圧に変換するには、インダクタ素子Lが必要である。そこで、前述したようにスイッチング回路3において、平滑コンデンサCに第1スイッチング素子S1を直列に接続して設け、第1スイッチング素子S1はトランス12に電圧が印加されたときのみONにし、第2スイッチング素子S2は常時ONの状態に維持されている。このようにすることで、上述の作用効果を実現できる。
【0031】
(変形例)
トランス12に電圧が印加されたときに、第1スイッチング素子S1をOFFに維持した場合、MOSFETである第1スイッチング素子S1の寄生ダイオードに電流が流れ、寄生容量が充電される。第1スイッチング素子S1の寄生ダイオードに電流が流れた後で、第1スイッチング素子S1をONにすれば、第1スイッチング素子のドレイン-ソース間電圧が低い状態でダイオードに導通している第1スイッチング素子S1をONにすることになるため、第1スイッチング素子S1はZVS(Zero Voltage Switching)となり、第1スイッチング素子S1の損失を低減できる。
【0032】
このように、第1スイッチング素子S1がOFFからONになるタイミングは、トランス12に電圧が印加されはじめるタイミングから所定の時間経過後であるように制御してもよく、これにより第1スイッチング素子S1でZVSを実現でき、第1スイッチング素子S1の損失を減らすことができる。また、第1スイッチング素子S1の損失の低減により、車両の航続距離が長くなることに貢献できる。
【0033】
(第2の実施形態)
(
図3)
第2実施形態では、充電装置7において、外部の交流電源6およびAC/DCコンバータ5の構成を第1直流電源として置き換えて説明する。充電装置7は、第1直流電源から第2直流電源V2および第3直流電源V3へ同時に電力供給する場合、あるいは、第2直流電源V2から第1直流電源および第3直流電源V3へ同時に電力供給する場合には、第3スイッチング回路3の第1スイッチング素子S1をON状態に維持し、かつ第2スイッチング素子S2のON/OFFを切り替える。
【0034】
同時電力供給の際に、第3スイッチング回路3の第1スイッチング素子S1を常時ON状態に維持して平滑コンデンサCを電圧源として、第2スイッチング素子S2のON/OFFを切り替えてチョッパを動作させる。チョッパは、第2スイッチング素子S2、ダイオードD1、インダクタ素子Lで構成される。このように、LVバッテリ側で電圧調整を行い、第2スイッチング素子S2のパルス幅制御で第3スイッチング回路3を制御することにより、低損失な回路設計の双方向充電・給電装置を用いて第2直流電源V2を充電中であっても、補器バッテリである第3直流電源V3に正しい電圧が供給でき、かつ第3直流電源V3の電圧を安定に制御することができる。
【0035】
第2直流電源V2から第1直流電源および第3直流電源V3へ同時電力供給する場合、第2スイッチング回路2が第3スイッチング回路3のコンデンサCの電圧を制御して、第3スイッチング回路3で第3直流電源V3の電圧を制御する。このようにすることで、どちらの同時供給の場合であっても、第3直流電源V3を安定して制御できる。
【0036】
(第3の実施形態)
(
図4)
第2直流電源V2の電圧に閾値を設定する。走行中である第2直流電源V2から第3直流電源V3への供給時において、この閾値よりも第2直流電源V2の電圧が大きい場合は、第2スイッチング回路2および第3スイッチング回路3は、前述の
図2と同様の動作である。しかし、第2直流電源V2から第3直流電源V3への供給時において、第2直流電源V2の電圧に設定された閾値よりも、第2直流電源V2の電圧が低い場合は、第2スイッチング回路2および第3スイッチング回路3を、
図4に示す動作に切り替える。
【0037】
図示するように、設定された閾値よりも第2直流電源V2の電圧が小さい場合、第3スイッチング回路3の第1スイッチング素子S1を常時ON状態に維持し、スイッチング素子S2も常時ON状態に維持して、整流出力を平滑コンデンサCで受けるようにする。このとき、平滑コンデンサCの電圧は、第3直流電源V3の電圧である。これは、整流出力をインダクタ素子Lで受けるよりも、コンデンサCで受ける共振型コンバータ回路の設計に切り替えた方が、低損失化を実現できる場合があるためである。
【0038】
このときのデューティー比50%でスイッチングするスイッチング素子Q5,Q8で構成されるスイッチングレグと、スイッチング素子Q6,Q7で構成されるスイッチングレグの位相は、図示するように必ずしもずらす必要はなく、周波数を変調させて平滑コンデンサCの電圧を制御してもよい。
【0039】
このように、コンバータ回路を動作モードに合わせて限定的にコンバータ回路の方式を選択することで、低損失な電圧や電圧変換比のレンジが狭い方式であり整流出力がコンデンサCであるコンバータ回路の方式も効率的に利用でき、電圧変換比のレンジを超えて周波数変調量が大きくなることから生じるピーク電流が増大を解消できる。これにより、走行中のバッテリ供給の低損失化を実現し、かつ車両の航続距離の延長に貢献できる。
【0040】
(第4の実施形態)
(
図5、
図6)
第4の実施形態では、前述した実施形態における充電装置7において、第2直流電源V2とコンデンサC2の間に、双方向チョッパ回路11を挿入して設けた。双方向チョッパ回路11によって、第2直流電源V2の電圧が所定の閾値以下である場合は、その閾値の電圧までコンデンサC2の電圧を昇圧させ、その閾値以上は昇圧させずに、第2直流電源V2の電圧をそのままコンデンサC2の電圧として出力する。
【0041】
このようにすることで、コンバータ回路に要求される電圧を狭めたレンジで維持して、このレンジに特化した共振コンデンサCr1,Cr2、共振リアクトルLr1,Lr2および励磁インダクタンスLmを選定できるため、コンバータ回路に要求される電圧変換レンジが小さくなる。このように、共振コンバータ回路とHVバッテリからLVバッテリへの電力供給回路との両方の電圧のレンジを狭めるため、充電装置7は高効率回路の設計がしやすくなり、低損失化に貢献できる。また、これに伴い、車両の航続距離を長くさせることができる。
【0042】
このように、第2スイッチング回路2と第2直流電源V2との間に、電圧を双方向に変換する電圧変換回路である双方向チョッパ回路11を備えたことで、第1スイッチング回路1、第2スイッチング回路2、第3スイッチング回路3で構成されるDC/DCコンバータ9の電圧変換レンジが狭くなる。よって、双方向充電装置7の高効率回路の設計が容易になる。
【0043】
上記で説明した構成は、車両に搭載される双方向充電する電力変換装置のものであるが、車両に搭載されないタイプの双方向充電する電力変換装置であっても、本発明の構成を適用できる。
【0044】
以上説明した本発明の実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
【0045】
(1)電力変換装置は、第1巻線N1と、第2巻線N2と、第3巻線N3と、が磁気結合されたトランス12と、第1巻線N1に接続されて、第1直流電源との間で相互に第1直流電力と交流電力を変換する第1スイッチング回路1と、第2巻線N2に接続されて、第2直流電源V2との間で相互に交流電力と第2直流電力を変換する第2スイッチング回路2と、第3巻線N3に接続されて、交流電力を第3直流電力に変換して第3直流電源V3に供給する第3スイッチング回路3と、を備える。第3スイッチング回路3は、交流電力を第3直流電力に変換する整流回路10と、整流回路10から出力される第3直流電力を平滑化する平滑コンデンサCと、平滑コンデンサCと直列に接続される第1スイッチング素子S1と、前記平滑コンデンサおよび前記第1スイッチング素子と前記第3直流電源との間に設けられるインダクタ素子Lとを有する。第2直流電源V2から第3直流電源V3へ電力供給する場合に、第2スイッチング回路2の動作に基づいて、第1スイッチング素子S1のON/OFFを切り替える。このようにしたことで、低損失化、大電力化、高効率化、車両航続距離の維持を実現した電力変換装置を提供できる。
【0046】
(2)第3スイッチング回路3は、整流回路10からインダクタ素子Lへの導通を制御する第2スイッチング素子S2を有する。第1直流電源V1から第2直流電源V2および第3直流電源V3へ同時に電力供給する場合、あるいは、第2直流電源V2から第1直流電源および第3直流電源V3へ同時電力供給する場合に、第1スイッチング素子S1をON状態に維持し、かつ第2スイッチング素子S2のON/OFFを切り替える。このようにしたことで、第2直流電源V2に充電中であっても、第3直流電源V3に対して正しい電圧を供給できる。
【0047】
(3)第2直流電源V2から第3直流電源V3へ電力供給する場合であって、かつ第2直流電源V2の出力電圧が予め設定された閾値よりも小さい場合には、第1スイッチング素子S1をON状態に維持する。このようにしたことで、低損失化と車両航続距離の延長に貢献できる。
【0048】
(4)第1スイッチング素子S1は、トランス12に電圧が印加されている間にONになり、トランス12に電圧が印加されていない間にOFFになる。このようにしたことで、第1スイッチング素子S1をサージ吸収回路として扱い、低損失化を実現できる。
【0049】
(5)トランス12に電圧が印加されはじめるタイミングから所定の時間経過後に、第1スイッチング素子S1をOFFからONに切り替える。このようにしたことで、低損失化を実現できる。
【0050】
(6)第2スイッチング回路2と第2直流電源V2との間に、電圧を双方向に変換する電圧変換回路(双方向チョッパ回路)11を備える。このようにしたことで、低損失化、高効率な双方向充電装置7の実現、車両航続距離を延ばすことに貢献できる。
【0051】
(7)電力変換装置は、車両に搭載され、充電中に、第2スイッチング回路2の動作に基づいて、第1スイッチング素子S1のON/OFFを切り替え、走行中に、第1スイッチング素子S1をON状態に維持し、かつ第2スイッチング素子S2のON/OFFを切り替える。このようにしたことで、低損失化、大電力化、高効率化、車両航続距離の維持を実現した電力変換装置を搭載した車両を提供できる。
【0052】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内で様々な変形や他の構成を組み合わせることができる。また本発明は、上記の実施形態で説明した全ての構成を備えるものに限定されず、その構成の一部を削除したものも含まれる。
【符号の説明】
【0053】
1 第1スイッチング回路
N1 第1巻き線
2 第2スイッチング回路
N2 第2巻き線
V2 第2直流電源
3 第3スイッチング回路
N3 第3巻き線
V3 第3直流電源
S1 第1スイッチング素子
S2 第2スイッチング素子
C 平滑コンデンサ
D1 ダイオード
L インダクタ素子
5 AC/DCコンバータ
6 交流電源
7 双方向充電装置
9 LLC共振形DCDCコンバータ(LLCコンバータ)
10 整流回路
11 双方向チョッパ回路
12 トランス