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特開2024-113485表示装置の製造方法および表示装置用マザー基板
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024113485
(43)【公開日】2024-08-22
(54)【発明の名称】表示装置の製造方法および表示装置用マザー基板
(51)【国際特許分類】
   H10K 50/84 20230101AFI20240815BHJP
   H10K 59/122 20230101ALI20240815BHJP
   H10K 59/173 20230101ALI20240815BHJP
   H10K 50/844 20230101ALI20240815BHJP
   H10K 50/858 20230101ALI20240815BHJP
   G09F 9/00 20060101ALI20240815BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20240815BHJP
   H10K 71/16 20230101ALI20240815BHJP
【FI】
H10K50/84
H10K59/122
H10K59/173
H10K50/844
H10K50/858
G09F9/00 338
G09F9/30 338
G09F9/30 349Z
H10K71/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023018506
(22)【出願日】2023-02-09
(71)【出願人】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福田 加一
【テーマコード(参考)】
3K107
5C094
5G435
【Fターム(参考)】
3K107AA01
3K107BB01
3K107CC45
3K107DD89
3K107DD92
3K107EE21
3K107EE48
3K107FF06
3K107GG11
3K107GG52
5C094AA42
5C094BA03
5C094BA27
5C094CA19
5C094DA13
5C094DA14
5C094FA01
5C094FA02
5C094FB01
5C094FB02
5C094FB15
5C094HA05
5C094HA08
5G435AA17
5G435BB05
5G435CC09
5G435HH14
5G435KK05
5G435LL04
5G435LL07
5G435LL08
5G435LL17
(57)【要約】
【課題】 歩留まりを改善することが可能な表示装置の製造方法を提供する。
【解決手段】 実施形態に係る表示装置の製造方法は、複数のパネル部と余白領域を含む基板を用意し、表示領域に第1下電極を含む複数の下電極を形成し、第1下電極と重なる第1画素開口を含む複数の画素開口を有するリブを形成し、第1下部と、前記第1下部の側面から突出した端部を有する第1上部とを含む第1隔壁を余白領域に形成し、第1有機層および第1上電極を含む第1積層膜を形成し、第1積層膜を覆う第1封止層を形成することを含む。第1積層膜は、基板の全体に形成されるとともに第1隔壁により複数の部分に分断され、第1封止層はこれら部分を連続的に覆っている。平面視において、基板の端部と第1封止層の端部とが離れており、基板の端部と第1封止層の端部の間の領域において第1積層膜が第1封止層から露出している。
【選択図】 図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示領域をそれぞれ含む複数のパネル部と、前記複数のパネル部の周囲の余白領域とを含む基板を用意し、
前記表示領域に第1下電極を含む複数の下電極を形成し、
前記第1下電極と重なる第1画素開口を含む複数の画素開口を有するリブを形成し、
第1下部と、前記第1下部の側面から突出した端部を有する第1上部とを含む第1隔壁を前記余白領域に形成し、
前記複数の画素開口を通じて前記複数の下電極にそれぞれ接触する第1有機層と、前記第1有機層を覆う第1上電極とを含む第1積層膜を形成し、
前記第1積層膜を覆う無機絶縁材料からなる第1封止層を形成する、
ことを含み、
前記第1積層膜は、前記基板の全体に形成されるとともに前記第1隔壁により複数の部分に分断され、
前記第1封止層は、前記複数の部分を連続的に覆い、
平面視において、前記基板の端部と前記第1封止層の端部とが離れており、
前記基板の端部と前記第1封止層の端部の間の領域において、前記第1積層膜が前記第1封止層から露出している、
表示装置の製造方法。
【請求項2】
前記第1隔壁は、前記余白領域に並ぶ複数の線状部を有し、
前記第1封止層の端部は、前記複数の線状部のうち前記基板の端部に最も近い線状部よりも前記基板の中心側に位置している、
請求項1に記載の表示装置の製造方法。
【請求項3】
前記第1隔壁は、前記余白領域に並ぶ複数の線状部を有し、
前記第1封止層の端部は、前記複数の線状部のうち前記基板の端部に最も近い線状部と前記基板の端部の間に位置している、
請求項1に記載の表示装置の製造方法。
【請求項4】
前記第1封止層をマスクとして用いて、前記第1積層膜のうち前記基板の端部と前記第1封止層の端部の間に位置する部分から、前記第1積層膜を構成する複数の層の少なくとも1つを除去する、
ことをさらに含む請求項1に記載の表示装置の製造方法。
【請求項5】
前記第1積層膜は、前記第1封止層と異なる屈折率を有し前記第1上電極を覆う第1キャップ層をさらに含む、
請求項1に記載の表示装置の製造方法。
【請求項6】
前記第1積層膜を形成する前に、前記リブの上に位置する第2下部と、前記第2下部の側面から突出した端部を有する第2上部とを含む第2隔壁を前記表示領域に形成する、
ことをさらに含む請求項1乃至5のうちいずれか1項に記載の表示装置の製造方法。
【請求項7】
前記第1積層膜および前記第1封止層をパターニングして、前記第1積層膜および前記第1封止層のうち前記第1下電極と重なる部分を残し、他の部分を除去する、
ことをさらに含む請求項1に記載の表示装置の製造方法。
【請求項8】
前記複数の下電極は、第2下電極を含み、
前記複数の画素開口は、第2画素開口を含み、
前記第1積層膜および前記第1封止層のパターニングの後に、前記第2画素開口を通じて前記第2下電極に接触する第2有機層と、前記第2有機層を覆う第2上電極とを含む第2積層膜を形成し、
前記第2積層膜を覆う無機絶縁材料からなる第2封止層を形成する、
ことをさらに含む請求項7に記載の表示装置の製造方法。
【請求項9】
前記第2積層膜および前記第2封止層をパターニングして、前記第2積層膜および前記第2封止層のうち前記第2下電極と重なる部分を残し、他の部分を除去する、
ことをさらに含む請求項8に記載の表示装置の製造方法。
【請求項10】
前記複数の下電極は、第3下電極を含み、
前記複数の画素開口は、第3画素開口を含み、
前記第2積層膜および前記第2封止層のパターニングの後に、前記第3画素開口を通じて前記第3下電極に接触する第3有機層と、前記第3有機層を覆う第3上電極とを含む第3積層膜を形成し、
前記第3積層膜を覆う無機絶縁材料からなる第3封止層を形成する、
ことをさらに含む請求項9に記載の表示装置の製造方法。
【請求項11】
表示領域をそれぞれ含む複数のパネル部と、前記複数のパネル部の周囲の余白領域とを含む基板と、
前記表示領域に配置された下電極と、
前記下電極と重なる画素開口を有するリブと、
第1下部と、前記第1下部の側面から突出した端部を有する第1上部とを含み、前記余白領域に形成された第1隔壁と、
前記画素開口を通じて前記下電極に接触する有機層と、前記有機層を覆う上電極とを含む積層膜と、
前記積層膜を覆う無機絶縁材料からなる封止層と、
を備え、
前記積層膜は、前記複数のパネル部および前記余白領域に形成されるとともに前記第1隔壁により複数の部分に分断され、
前記封止層は、前記複数の部分を連続的に覆い、
平面視において、前記基板の端部と前記封止層の端部とが離れており、
前記基板の端部と前記封止層の端部の間の領域において、前記積層膜が前記封止層から露出している、
表示装置用マザー基板。
【請求項12】
前記第1隔壁は、前記余白領域に並ぶ複数の線状部を有し、
前記封止層の端部は、前記複数の線状部のうち前記基板の端部に最も近い線状部よりも前記基板の中心側に位置している、
請求項11に記載の表示装置用マザー基板。
【請求項13】
前記第1隔壁は、前記余白領域に並ぶ複数の線状部を有し、
前記封止層の端部は、前記複数の線状部のうち前記基板の端部に最も近い線状部と前記基板の端部の間に位置している、
請求項11に記載の表示装置用マザー基板。
【請求項14】
前記積層膜は、前記封止層と異なる屈折率を有し前記上電極を覆うキャップ層をさらに含む、
請求項11に記載の表示装置用マザー基板。
【請求項15】
前記リブの上に位置する第2下部と、前記第2下部の側面から突出した端部を有する第2上部とを含み、前記表示領域に配置された第2隔壁をさらに備え、
前記積層膜は、前記表示領域において前記第2隔壁により複数の部分に分断されている、
請求項11乃至14のうちいずれか1項に記載の表示装置用マザー基板。
【請求項16】
表示領域をそれぞれ含む複数のパネル部と、前記複数のパネル部の周囲の余白領域とを含む基板と、
前記表示領域に配置された下電極と、
前記下電極と重なる画素開口を有するリブと、
第1下部と、前記第1下部の側面から突出した端部を有する第1上部とを含み、前記余白領域に形成された第1隔壁と、
前記画素開口を通じて前記下電極に接触する有機層と、前記有機層を覆う上電極とを含む積層膜と、
前記積層膜を覆う無機絶縁材料からなる封止層と、
を備え、
前記積層膜は、前記複数のパネル部および前記余白領域に形成されるとともに前記第1隔壁により複数の部分に分断され、
前記封止層は、前記複数の部分を連続的に覆い、
平面視において、前記積層膜の端部と前記封止層の端部が揃っており、
平面視において、前記積層膜の端部および前記封止層の端部の各々が、前記基板の端部と離れている、
表示装置用マザー基板。
【請求項17】
前記第1隔壁は、前記余白領域に並ぶ複数の線状部を有し、
前記積層膜の端部および前記封止層の端部は、前記複数の線状部のうち前記基板の端部に最も近い線状部よりも前記基板の中心側に位置している、
請求項16に記載の表示装置用マザー基板。
【請求項18】
前記第1隔壁は、前記余白領域に並ぶ複数の線状部を有し、
前記積層膜の端部および前記封止層の端部は、前記複数の線状部のうち前記基板の端部に最も近い線状部と前記基板の端部の間に位置している、
請求項16に記載の表示装置用マザー基板。
【請求項19】
前記積層膜は、前記封止層と異なる屈折率を有し前記上電極を覆うキャップ層をさらに含む、
請求項16に記載の表示装置用マザー基板。
【請求項20】
前記リブの上に位置する第2下部と、前記第2下部の側面から突出した端部を有する第2上部とを含み、前記表示領域に配置された第2隔壁をさらに備え、
前記積層膜は、前記表示領域において前記第2隔壁により複数の部分に分断されている、
請求項16乃至19のうちいずれか1項に記載の表示装置用マザー基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、表示装置の製造方法および表示装置用マザー基板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、表示素子として有機発光ダイオード(OLED)を適用した表示装置が実用化されている。この表示素子は、下電極と、下電極を覆う有機層と、有機層を覆う上電極とを備えている。
【0003】
表示装置の製造にあたっては、多数の表示素子が配置された表示領域をそれぞれ含む複数のパネル部が大型のマザー基板に形成される。さらに、各パネル部を切り出すことにより、表示装置の主要な要素である表示パネルが製造される。このような製造工程において、歩留まりを改善するための技術が必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000-195677号公報
【特許文献2】特開2004-207217号公報
【特許文献3】特開2008-135325号公報
【特許文献4】特開2009-32673号公報
【特許文献5】特開2010-118191号公報
【特許文献6】国際公開第2018/179308号
【特許文献7】米国特許出願公開第2022/0077251号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、歩留まりを改善することが可能な表示装置の製造方法および表示装置用マザー基板を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態に係る表示装置の製造方法は、表示領域をそれぞれ含む複数のパネル部と、前記複数のパネル部の周囲の余白領域とを含む基板を用意し、前記表示領域に第1下電極を含む複数の下電極を形成し、前記第1下電極と重なる第1画素開口を含む複数の画素開口を有するリブを形成し、第1下部と、前記第1下部の側面から突出した端部を有する第1上部とを含む第1隔壁を前記余白領域に形成し、前記複数の画素開口を通じて前記複数の下電極にそれぞれ接触する第1有機層と、前記第1有機層を覆う第1上電極とを含む第1積層膜を形成し、前記第1積層膜を覆う無機絶縁材料からなる第1封止層を形成する、ことを含む。前記第1積層膜は、前記基板の全体に形成されるとともに前記第1隔壁により複数の部分に分断されている。前記第1封止層は、前記複数の部分を連続的に覆っている。平面視において、前記基板の端部と前記第1封止層の端部とが離れている。さらに、前記基板の端部と前記第1封止層の端部の間の領域において、前記第1積層膜が前記第1封止層から露出している。
【0007】
実施形態に係るマザー基板は、表示領域をそれぞれ含む複数のパネル部と前記複数のパネル部の周囲の余白領域とを含む基板と、前記表示領域に配置された下電極と、前記下電極と重なる画素開口を有するリブと、第1下部と前記第1下部の側面から突出した端部を有する第1上部とを含み、前記余白領域に形成された第1隔壁と、前記画素開口を通じて前記下電極に接触する有機層と前記有機層を覆う上電極とを含む積層膜と、前記積層膜を覆う無機絶縁材料からなる封止層と、を備えている。前記積層膜は、前記複数のパネル部および前記余白領域に形成されるとともに前記第1隔壁により複数の部分に分断されている。前記封止層は、前記複数の部分を連続的に覆っている。
【0008】
実施形態の一つの観点によれば、平面視において、前記基板の端部と前記封止層の端部とが離れている。さらに、前記基板の端部と前記封止層の端部の間の領域において、前記積層膜が前記封止層から露出している。
【0009】
実施形態の他の観点によれば、平面視において、前記積層膜の端部と前記封止層の端部が揃っている。さらに、平面視において、前記積層膜の端部および前記封止層の端部の各々が、前記基板の端部と離れている、
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、第1実施形態に係る表示装置の構成例を示す図である。
図2図2は、副画素のレイアウトの一例を示す概略的な平面図である。
図3図3は、図2中のIII-III線に沿う表示パネルの概略的な断面図である。
図4図4は、第1実施形態に係るマザー基板の概略的な平面図である。
図5図5は、第1実施形態に係るマザー基板の一部の概略的な平面図である。
図6図6は、図5におけるVI-VI線に沿う余白領域の概略的な断面図である。
図7図7は、図5におけるVII-VII線に沿う余白領域の概略的な断面図である。
図8図8は、第1実施形態に係るマザー基板および表示装置の製造方法の一例を示すフローチャートである。
図9A図9Aは、製造途中のマザー基板における表示領域の概略的な断面図である。
図9B図9Bは、製造途中のマザー基板における余白領域の概略的な断面図である。
図10A図10Aは、図9Aに続く工程を示す表示領域の概略的な断面図である。
図10B図10Bは、図9Bに続く工程を示す余白領域の概略的な断面図である。
図11A図11Aは、図10Aに続く工程を示す表示領域の概略的な断面図である。
図11B図11Bは、図10Bに続く工程を示す余白領域の概略的な断面図である。
図12A図12Aは、図11Aに続く工程を示す表示領域の概略的な断面図である。
図12B図12Bは、図11Bに続く工程を示す余白領域の概略的な断面図である。
図13A図13Aは、図12Aに続く工程を示す表示領域の概略的な断面図である。
図13B図13Bは、図12Bに続く工程を示す余白領域の概略的な断面図である。
図14A図14Aは、図13Aに続く工程を示す表示領域の概略的な断面図である。
図14B図14Bは、図13Bに続く工程を示す余白領域の概略的な断面図である。
図15A図15Aは、図14Aに続く工程を示す表示領域の概略的な断面図である。
図15B図15Bは、図14Bに続く工程を示す余白領域の概略的な断面図である。
図16A図16Aは、図15Aに続く工程を示す表示領域の概略的な断面図である。
図16B図16Bは、図15Bに続く工程を示す余白領域の概略的な断面図である。
図17図17は、積層膜および封止層を形成する工程の詳細を説明するための図である。
図18図18は、基板の端部近傍の構成の一例を示す概略的な断面図である。
図19図19は、基板の端部近傍の構成の他の例を示す概略的な断面図である。
図20図20は、比較例に係るマザー基板の余白領域の概略的な断面図である。
図21図21は、第1実施形態に係るマザー基板の余白領域の概略的な断面図である。
図22図22は、第2実施形態に係る積層膜および封止層を形成する工程の詳細を説明するための図である。
図23図23は、第2実施形態に係る基板の端部近傍の構成の他の例を示す概略的な断面図である。
図24図24は、第3実施形態に係る隔壁の概略的な平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
いくつかの実施形態について図面を参照しながら説明する。
開示はあくまで一例に過ぎず、当業者において、発明の主旨を保っての適宜変更について容易に想到し得るものについては、当然に本発明の範囲に含有されるものである。また、図面は、説明をより明確にするため、実際の態様に比べて、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同一または類似した機能を発揮する構成要素には同一の参照符号を付し、重複する詳細な説明を適宜省略することがある。
【0012】
なお、図面には、必要に応じて理解を容易にするために、互いに直交するX軸、Y軸およびZ軸を記載する。X軸に沿った方向を第1方向Xと称し、Y軸に沿った方向を第2方向Yと称し、Z軸に沿った方向を第3方向Zと称する。第3方向Zは、第1方向Xと第2方向Yを含む平面に対して法線方向である。また、第3方向Zと平行に各種要素を見ることを平面視という。
【0013】
各実施形態に係る表示装置は、表示素子として有機発光ダイオード(OLED)を備える有機エレクトロルミネッセンス表示装置であり、テレビ、パーソナルコンピュータ、車載機器、タブレット端末、スマートフォン、携帯電話端末、ウェアラブル端末等の各種の電子機器に搭載され得る。
【0014】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態に係る表示装置DSPの構成例を示す図である。表示装置DSPは、絶縁性の基板10を含む表示パネルPNLを備えている。表示パネルPNLは、画像を表示する表示領域DAと、表示領域DAの周辺の周辺領域SAとを有している。基板10は、ガラスであってもよいし、可撓性を有する樹脂フィルムであってもよい。
【0015】
本実施形態においては、平面視における基板10の形状が長方形である。ただし、基板10の平面視における形状は長方形に限られず、正方形、円形あるいは楕円形などの他の形状であってもよい。
【0016】
表示領域DAは、第1方向Xおよび第2方向Yにマトリクス状に配列された複数の画素PXを備えている。画素PXは、複数の副画素SPを含む。一例では、画素PXは、青色の副画素SP1、緑色の副画素SP2および赤色の副画素SP3を含む。なお、画素PXは、副画素SP1,SP2,SP3とともに、あるいは副画素SP1,SP2,SP3のいずれかに代えて、白色などの他の色の副画素SPを含んでもよい。
【0017】
副画素SPは、画素回路1と、画素回路1によって駆動される表示素子DEとを備えている。画素回路1は、画素スイッチ2と、駆動トランジスタ3と、キャパシタ4とを備えている。画素スイッチ2および駆動トランジスタ3は、例えば薄膜トランジスタにより構成されたスイッチング素子である。
【0018】
画素スイッチ2のゲート電極は、走査線GLに接続されている。画素スイッチ2のソース電極およびドレイン電極の一方は信号線SLに接続され、他方は駆動トランジスタ3のゲート電極およびキャパシタ4に接続されている。駆動トランジスタ3において、ソース電極およびドレイン電極の一方は電源線PLおよびキャパシタ4に接続され、他方は表示素子DEに接続されている。
【0019】
なお、画素回路1の構成は図示した例に限られない。例えば、画素回路1は、より多くの薄膜トランジスタおよびキャパシタを備えてもよい。
【0020】
図2は、副画素SP1,SP2,SP3のレイアウトの一例を示す概略的な平面図である。図2の例においては、副画素SP2,SP3がそれぞれ副画素SP1と第1方向Xに並んでいる。さらに、副画素SP2と副画素SP3が第2方向Yに並んでいる。
【0021】
副画素SP1,SP2,SP3がこのようなレイアウトである場合、表示領域DAには、副画素SP2,SP3が第2方向Yに交互に配置された列と、複数の副画素SP1が第2方向Yに繰り返し配置された列とが形成される。これらの列は、第1方向Xに交互に並ぶ。なお、副画素SP1,SP2,SP3のレイアウトは図2の例に限られない。
【0022】
表示領域DAには、リブ5が配置されている。リブ5は、副画素SP1,SP2,SP3においてそれぞれ画素開口AP1,AP2,AP3(第1乃至第3画素開口)を有している。図2の例においては、画素開口AP1が画素開口AP2よりも大きく、画素開口AP2が画素開口AP3よりも大きい。
【0023】
副画素SP1は、画素開口AP1とそれぞれ重なる下電極LE1(第1下電極)、上電極UE1(第1上電極)および有機層OR1(第1有機層)を備えている。副画素SP2は、画素開口AP2とそれぞれ重なる下電極LE2(第2下電極)、上電極UE2(第2上電極)および有機層OR2(第2有機層)を備えている。副画素SP3は、画素開口AP3とそれぞれ重なる下電極LE3(第3下電極)、上電極UE3(第3上電極)および有機層OR3(第3有機層)を備えている。
【0024】
下電極LE1、上電極UE1および有機層OR1のうち画素開口AP1と重なる部分は、副画素SP1の表示素子DE1(第1表示素子)を構成する。下電極LE2、上電極UE2および有機層OR2のうち画素開口AP2と重なる部分は、副画素SP2の表示素子DE2(第2表示素子)を構成する。下電極LE3、上電極UE3および有機層OR3のうち画素開口AP3と重なる部分は、副画素SP3の表示素子DE3(第3表示素子)を構成する。表示素子DE1,DE2,DE3は、後述するキャップ層をさらに含んでもよい。リブ5は、これら表示素子DE1,DE2,DE3の各々を囲っている。
【0025】
下電極LE1は、コンタクトホールCH1を通じて副画素SP1の画素回路1(図1参照)に接続されている。下電極LE2は、コンタクトホールCH2を通じて副画素SP2の画素回路1に接続されている。下電極LE3は、コンタクトホールCH3を通じて副画素SP3の画素回路1に接続されている。
【0026】
リブ5の上には、隔壁6が配置されている。隔壁6は、全体的にリブ5と重なっており、リブ5と同様の平面形状を有している。すなわち、隔壁6は、副画素SP1,SP2,SP3においてそれぞれ開口AP61,AP62,AP63を有している。他の観点からいうと、リブ5および隔壁6は、表示素子DE1,DE2,DE3の間に配置されており、平面視において格子状である。
【0027】
図3は、図2中のIII-III線に沿う表示パネルPNLの概略的な断面図である。上述の基板10の上に回路層11が配置されている。回路層11は、図1に示した画素回路1、走査線GL、信号線SLおよび電源線PLなどの各種回路や配線を含む。
【0028】
回路層11は、有機絶縁層12により覆われている。有機絶縁層12は、回路層11により生じる凹凸を平坦化する平坦化膜として機能する。図3の断面には表れていないが、上述のコンタクトホールCH1,CH2,CH3は有機絶縁層12に設けられている。
【0029】
下電極LE1,LE2,LE3は、有機絶縁層12の上に配置されている。リブ5は、有機絶縁層12および下電極LE1,LE2,LE3の上に配置されている。下電極LE1,LE2,LE3の端部は、リブ5により覆われている。
【0030】
隔壁6は、リブ5の上に配置された導電性を有する下部61と、下部61の上に配置された上部62とを含む。上部62は、下部61よりも大きい幅を有している。これにより、上部62の両端部が下部61の側面よりも突出している。このような隔壁6の形状は、オーバーハング状と呼ばれる。
【0031】
有機層OR1は、画素開口AP1を通じて下電極LE1を覆っている。上電極UE1は、有機層OR1を覆い、下電極LE1と対向している。有機層OR2は、画素開口AP2を通じて下電極LE2を覆っている。上電極UE2は、有機層OR2を覆い、下電極LE2と対向している。有機層OR3は、画素開口AP3を通じて下電極LE3を覆っている。上電極UE3は、有機層OR3を覆い、下電極LE3と対向している。上電極UE1,UE2,UE3は、隔壁6の下部61の側面に接触している。
【0032】
図3の例においては、上電極UE1の上にキャップ層CP1(第1キャップ層)が配置され、上電極UE2の上にキャップ層CP2(第2キャップ層)が配置され、上電極UE3の上にキャップ層CP3(第3キャップ層)が配置されている。キャップ層CP1,CP2,CP3は、それぞれ有機層OR1,OR2,OR3が発する光の取り出し効率を向上させる光学調整層としての役割を有している。
【0033】
以下の説明においては、有機層OR1、上電極UE1およびキャップ層CP1を含む多層体を積層膜FL1(第1積層膜)と呼び、有機層OR2、上電極UE2およびキャップ層CP2を含む多層体を積層膜FL2(第2積層膜)と呼び、有機層OR3、上電極UE3およびキャップ層CP3を含む多層体を積層膜FL3(第3積層膜)と呼ぶ。
【0034】
積層膜FL1の一部は、上部62の上に位置している。当該一部は、積層膜FL1のうち隔壁6の下に位置する部分(表示素子DE1を構成する部分)と離間している。同様に、積層膜FL2の一部は上部62の上に位置し、当該一部は積層膜FL2のうち隔壁6の下に位置する部分(表示素子DE2を構成する部分)と離間している。さらに、積層膜FL3の一部は上部62の上に位置し、当該一部は積層膜FL3のうち隔壁6の下に位置する部分(表示素子DE3を構成する部分)と離間している。
【0035】
副画素SP1,SP2,SP3には、封止層SE1,SE2,SE3(第1乃至第3封止層)がそれぞれ配置されている。封止層SE1は、積層膜FL1や副画素SP1の周囲の隔壁6を連続的に覆っている。封止層SE2は、積層膜FL2や副画素SP2の周囲の隔壁6を連続的に覆っている。封止層SE3は、積層膜FL3や副画素SP3の周囲の隔壁6を連続的に覆っている。
【0036】
図3の例においては、副画素SP1,SP2の間の隔壁6上の積層膜FL1および封止層SE1が、当該隔壁6上の積層膜FL2および封止層SE2と離間している。また、副画素SP1,SP3の間の隔壁6上の積層膜FL1および封止層SE1が、当該隔壁6上の積層膜FL3および封止層SE3と離間している。
【0037】
封止層SE1,SE2,SE3は、樹脂層13により覆われている。樹脂層13は、封止層14により覆われている。封止層14は、樹脂層15により覆われている。樹脂層13,15および封止層14は、少なくとも表示領域DAの全体に連続的に設けられ、その一部が周辺領域SAにも及んでいる。
【0038】
偏光板、タッチパネル、保護フィルムまたはカバーガラスなどのカバー部材が樹脂層15の上方にさらに配置されてもよい。このようなカバー部材は、例えばOCA(Optical Clear Adhesive)などの接着層を介して樹脂層15に接着されてもよい。
【0039】
有機絶縁層12は、ポリイミドなどの有機絶縁材料で形成されている。リブ5および封止層14,SE1,SE2,SE3は、シリコン窒化物(SiNx)、シリコン酸化物(SiOx)、シリコン酸窒化物(SiON)または酸化アルミニウム(Al)などの無機絶縁材料で形成されている。一例では、リブ5がシリコン酸窒化物で形成され、封止層14,SE1,SE2,SE3がシリコン窒化物で形成されている。樹脂層13,15は、例えばエポキシ樹脂やアクリル樹脂などの樹脂材料(有機絶縁材料)で形成されている。
【0040】
下電極LE1,LE2,LE3は、例えば銀(Ag)で形成された反射層と、この反射層の上面および下面をそれぞれ覆う一対の導電性酸化物層とを有している。各導電性酸化物層は、例えばITO(Indium Tin Oxide)、IZO(Indium Zinc Oxide)またはIGZO(Indium Gallium Zinc Oxide)などの透明な導電性酸化物で形成することができる。
【0041】
上電極UE1,UE2,UE3は、例えばマグネシウムと銀の合金(MgAg)などの金属材料で形成されている。例えば、下電極LE1,LE2,LE3はアノードに相当し、上電極UE1,UE2,UE3はカソードに相当する。
【0042】
有機層OR1,OR2,OR3は、例えば、正孔注入層、正孔輸送層、電子ブロッキング層、発光層、正孔ブロッキング層、電子輸送層および電子注入層の積層構造を有している。有機層OR1,OR2,OR3は、複数の発光層を含むいわゆるタンデム構造を有してもよい。
【0043】
キャップ層CP1,CP2,CP3は、例えば透明な複数の薄膜が重ねられた積層構造を有している。当該複数の薄膜は、無機材料によって形成された薄膜および有機材料によって形成された薄膜を含んでもよい。また、当該複数の薄膜は、互いに異なる屈折率を有している。例えば、これら薄膜の屈折率は、上電極UE1,UE2,UE3の屈折率および封止層SE1,SE2,SE3の屈折率と異なる。なお、キャップ層CP1,CP2,CP3の少なくとも1つが省略されてもよい。
【0044】
隔壁6の下部61は、例えばアルミニウムによって形成されている。下部61は、アルミニウム-ネオジム合金(AlNd)、アルミニウム-イットリウム合金(AlY)およびアルミニウム-シリコン合金(AlSi)などのアルミニウム合金によって形成されてもよいし、アルミニウム層とアルミニウム合金層の積層構造を有してもよい。さらに、下部61は、アルミニウム層またはアルミニウム合金層の下に、アルミニウムやアルミニウム合金とは異なる金属材料で形成されたボトム層を有してもよい。このようなボトム層を形成する金属材料としては、例えばモリブデン(Mo)、窒化チタン(TiN)、モリブデン-タングステン合金(MoW)またはモリブデン-ニオブ合金(MoNb)を用いることができる。
【0045】
例えば、隔壁6の上部62は、金属材料で形成された下層と、導電性酸化物で形成された上層との積層構造を有している。下層を形成する金属材料としては、例えばチタン、窒化チタン、モリブデン、タングステン、モリブデン-タングステン合金またはモリブデン-ニオブ合金を用いることができる。上層を形成する導電性酸化物としては、例えばITOまたはIZOを用いることができる。なお、上部62は、金属材料の単層構造を有してもよい。
【0046】
隔壁6には、共通電圧が供給されている。この共通電圧は、下部61の側面に接触した上電極UE1,UE2,UE3にそれぞれ供給される。下電極LE1,LE2,LE3には、副画素SP1,SP2,SP3がそれぞれ有する画素回路1を通じて画素電圧が供給される。
【0047】
有機層OR1,OR2,OR3は、電圧の印加に応じて発光する。具体的には、下電極LE1と上電極UE1の間に電位差が形成されると、有機層OR1の発光層が青色の波長域の光を放つ。下電極LE2と上電極UE2の間に電位差が形成されると、有機層OR2の発光層が緑色の波長域の光を放つ。下電極LE3と上電極UE3の間に電位差が形成されると、有機層OR3の発光層が赤色の波長域の光を放つ。
【0048】
他の例として、有機層OR1,OR2,OR3の発光層が同一色(例えば白色)の光を放ってもよい。この場合において、表示装置DSPは、発光層が放つ光を副画素SP1,SP2,SP3に対応する色の光に変換するカラーフィルタを備えてもよい。また、表示装置DSPは、発光層が放つ光により励起して副画素SP1,SP2,SP3に応じた色の光を生成する量子ドットを含んだ層を備えてもよい。
【0049】
表示装置DSPの製造時には、それぞれ表示パネルPNLに相当する複数の領域(パネル部)が形成された大型のマザー基板が作製される。このマザー基板に適用し得る構成について以下に説明する。
【0050】
図4は、本実施形態に係るマザー基板MB(表示装置用マザー基板)の概略的な平面図である。マザー基板MBは、ベースとなる絶縁性の基板10aを備えている。図4の例において、基板10aは、第2方向Yと平行な直線状の端部Ea1,Ea2と、第1方向Xと平行な直線状の端部Ea3,Ea4とを有する矩形状である。ただし、マザー基板MBの形状は矩形状に限られない。
【0051】
基板10aは、マトリクス状に配置された複数のパネル部PPと、これらパネル部PPの周囲の余白領域BAとを有している。余白領域BAは、端部Ea1,Ea2,Ea3,Ea4に沿う外周領域FAを含む。外周用域FAは、例えば端部Ea1,Ea2,Ea3,Ea4から所定距離までの領域であり、後述する隔壁7を含んでいない。外周領域FAの幅Wfは、例えば全周にわたり一定であるが、この例に限られない。一例では、幅Wfは5mm以上であり、具体的には10mm程度とすることができる。
【0052】
図5は、マザー基板MBの一部の概略的な平面図である。各パネル部PPの外形は、マザー基板MBからパネル部PPを切り出すためのカットラインCLに相当する。各パネル部PPは、上述の表示領域DAおよび周辺領域SAを有している。
【0053】
図5において拡大して示すように、余白領域BAには隔壁7(ドット模様を付した部分)が配置されている。隔壁7は、互いに平行に配置された複数の第1線状部7xと、互いに平行に配置された複数の第2線状部7yとを有している。
【0054】
複数の第1線状部7xは、第2方向Yに延びるとともに、第1方向Xに並んでいる。複数の第2線状部7yは、第1方向Xに延びるとともに、第2方向Yに並んでいる。図5の例においては、各第1線状部7xと各第2線状部7yが交差している。これにより、隔壁7は、全体として格子状である。
【0055】
他の観点からいうと、隔壁7は、複数の閉領域CAを形成している。閉領域CAは、隣り合う2本の第1線状部7xと、隣り合う2本の第2線状部7yとで囲われた正方形または長方形の領域である。
【0056】
第1線状部7xは、第1方向Xにおいて幅Wx1を有している。第2線状部7yは、第2方向Yにおいて幅Wy1を有している。閉領域CAは、第1方向Xにおいて幅Wx2を有し、第2方向Yにおいて幅Wy2を有している。幅Wx2は、複数の第1線状部7xの配置間隔に相当する。幅Wy2は、複数の第2線状部7yの配置間隔に相当する。
【0057】
例えば、幅Wx2は、副画素SP1,SP2,SP3それぞれの第1方向Xにおける幅よりも大きい。また、幅Wy2は、副画素SP1,SP2,SP3それぞれの第2方向Yにおける幅よりも大きい。図5の例においては、幅Wx2,Wy2がそれぞれ幅Wx1,Wy1よりも大きい(Wx2>Wx1,Wy2>Wy1)。詳しくは後述するが、幅Wx2,Wy2の少なくとも一方は200μm以下であることが好ましい(Wx2,Wy2≦200μm)。
【0058】
図5のマザー基板MBにおける格子状の模様は、隔壁7が設けられる領域を示している。すなわち、図5の例においては、余白領域BAに加え、周辺領域SAにも隔壁7が設けられている。周辺領域SAに設けられた隔壁7は、カットラインCLに沿ってパネル部PPが切り出された後にも、パネル部PP(表示パネルPNL)に残る。表示領域DAには隔壁7が設けられていない。また、余白領域BAのうち外周領域FAにも隔壁7が設けられていない。
【0059】
パネル部PPを効率よく切り出す観点からは、カットラインCLに隔壁7が設けられていないことが好ましい。この場合においては、周辺領域SAに設けられた隔壁7と、余白領域BAに設けられた隔壁7とが、周辺領域SAおよび余白領域BAの境界において分断される。
【0060】
なお、隔壁7は、周辺領域SAの全体に設けられる必要はない。また、余白領域BAは、外周領域FA以外にも隔壁7が設けられていない領域を含んでもよい。
【0061】
図6は、図5におけるVI-VI線に沿う余白領域BAの概略的な断面図である。マザー基板MBは、上述の基板10aを備えている。マザー基板MBからパネル部PPを切り出す際には、基板10aがカットラインCLに沿って切断される。切り出されたパネル部PPの基板10aは、図3等に示した基板10に相当する。
【0062】
マザー基板MBは、余白領域BAにおいて基板10aの上方に配置された無機絶縁層100を備えている。無機絶縁層100は、例えばリブ5と同じ材料で形成されている。無機絶縁層100およびリブ5は、一体的に形成されていてもよい。また、無機絶縁層100およびリブ5は、カットラインCLに沿って分断されていてもよい。図6の例においては、基板10aと無機絶縁層100の間に有機絶縁層12が配置されている。
【0063】
隔壁7は、無機絶縁層100の上に配置された下部71と、下部71の上に配置された上部72とを含む。上部72は、下部71よりも大きい幅を有している。これにより、上部72の両端部が下部71の側面よりも突出している。このように、隔壁7は、図3に示した隔壁6と同じくオーバーハング状である。例えば、隔壁7の下部71および上部72は、それぞれ隔壁6の下部61および上部62と同じ材料で形成されている。
【0064】
なお、余白領域BAの構造は図6の例に限られない。基板10aと有機絶縁層12の間に他の絶縁層や導電層が介在してもよい。また、余白領域BAの少なくとも一部において有機絶縁層12が除去されていてもよい。さらに、無機絶縁層100および隔壁7は、他の絶縁層または導電層によって覆われていてもよい。
【0065】
図7は、図5におけるVII-VII線に沿う余白領域BAの概略的な断面図である。図7の例においては、基板10aと無機絶縁層100の間に有機絶縁層12が配置されていないが、図6の例と同様に有機絶縁層12が配置されていてもよい。また、図7の例においては無機絶縁層100が基板10aの全体を覆っているが、端部Ea1の近傍において基板10aが無機絶縁層100により覆われていない領域を有してもよい。
【0066】
基板10aの他の端部Ea2,Ea3,Ea4の近傍にも、図7と同様の断面構造を適用できる。図7の断面において、外周領域FAは、隔壁7の複数の第1線状部7xのうち、端部Ea1に最も近い第1線状部7xと端部Ea1の間の領域に相当する。外周領域FAの他の部分も同様に、端部Ea2,Ea3,Ea4に最も近い第1線状部7xまたは第2線状部7yとこれら端部Ea2,Ea3,Ea4との間の領域に相当する。
【0067】
続いて、マザー基板MBおよび表示装置DSPの製造方法について説明する。
図8は、マザー基板MBおよび表示装置DSPの製造方法の一例を示すフローチャートである。図9A乃至図16Aは、それぞれ製造途中のマザー基板MBにおける表示領域DAの概略的な断面図である。図9B乃至図16Bは、それぞれ製造途中のマザー基板MBにおける余白領域BAの概略的な断面図である。周辺領域SAにも図9B乃至図16Bと同様の製造工程を適用できる。なお、図9A乃至図16Aおよび図9B乃至図16Bにおいては基板10aおよび回路層11を省略している。
【0068】
表示装置DSPの製造においては、先ず複数のパネル部PPおよび余白領域BAに相当する領域を含む大型の基板10aが用意される(工程PR1)。次に、基板10aの上に回路層11および有機絶縁層12が形成される(工程PR2)。
【0069】
工程PR2の後、下電極LE1,LE2,LE3、リブ5、隔壁6および隔壁7が形成される(工程PR3)。本実施形態における工程PR3の流れは、図9A図9B図10Aおよび図10Bに示すとおりである。
【0070】
すなわち、先ず図9Aおよび図9Bに示すように、リブ5に加工するための無機絶縁層100がマザー基板MBの全体に形成される。さらに、下部61,71に加工するための第1層101が無機絶縁層100の上に形成され、上部62,72に加工するための第2層102が第1層101の上に形成される。
【0071】
続いて、図10Aおよび図10Bに示すように、第1層101および第2層102がパターニングされる。このパターニングは、第2層102を上部62,72の形状に加工するエッチングと、第1層101を下部61,71の形状に加工するエッチングとを含む。これらのエッチングにより、下部71(第1下部)および上部72(第1上部)を含む隔壁7(第1隔壁)が余白領域BAおよび周辺領域SAに形成されるとともに、下部61(第2下部)および上部62(第2上部)を含む隔壁6(第2隔壁)が表示領域DAに形成される。
【0072】
隔壁6,7の形成の後、図10Aに示すように、無機絶縁層100に画素開口AP1,AP2,AP3が形成される。これにより、表示領域DAにおいてリブ5が形成される。なお、図9Aおよび図10Aにおいては、隔壁6が形成された後に画素開口AP1,AP2,AP3が形成される場合を示した。他の例として、画素開口AP1,AP2,AP3が形成された後に隔壁6が形成されてもよい。
【0073】
リブ5、隔壁6および隔壁7の形成の後、表示素子DE1,DE2,DE3を形成するための工程が実施される。本実施形態においては、表示素子DE1が最初に形成され、表示素子DE2が次に形成され、表示素子DE3が最後に形成される場合を想定する。ただし、表示素子DE1,DE2,DE3の形成順はこの例に限られない。
【0074】
表示素子DE1の形成にあたっては、先ず図11Aおよび図11Bに示すように、積層膜FL1および封止層SE1が各パネル部PPおよび余白領域BAに形成される(工程PR4)。積層膜FL1は、図3に示したように、画素開口AP1を通じて下電極LE1に接触する有機層OR1、有機層OR1を覆う上電極UE1、および、上電極UE1を覆うキャップ層CP1を含む。有機層OR1、上電極UE1およびキャップ層CP1は、蒸着によって形成される。また、封止層SE1は、CVD(Chemical Vapor Deposition)によって形成される。
【0075】
積層膜FL1は、オーバーハング状の隔壁6,7によって複数の部分に分断される。図11Aに示すように、表示領域DAにおける積層膜FL1は、画素開口AP1,AP2,AP3を通じて露出した下電極LE1,LE2,LE3、リブ5および隔壁6を覆う。また、図11Bに示すように、余白領域BAおよび周辺領域SAにおける積層膜FL1は、無機絶縁層100および隔壁7を覆う。封止層SE1は、積層膜FL1の分割された各部分および隔壁6,7を連続的に覆う。
【0076】
工程PR4の後、積層膜FL1および封止層SE1がパターニングされる(工程PR5)。このパターニングにおいては、図11Aに示すように、封止層SE1の上にレジストR1が配置される。レジストR1は、副画素SP1とその周囲の隔壁6の一部を覆っている。余白領域BAや周辺領域SAにはレジストR1が配置されない。
【0077】
その後、レジストR1をマスクとしたエッチングにより、図12Aに示すように積層膜FL1および封止層SE1のうちレジストR1から露出した部分が除去される。言い換えると、積層膜FL1および封止層SE1のうち、下電極LE1と重なる部分が残され、他の部分が除去される。これにより、副画素SP1に表示素子DE1が形成される。例えば、当該エッチングは、封止層SE1、キャップ層CP1、上電極UE1および有機層OR1に対して順に実施されるウェットエッチングやドライエッチングを含む。
【0078】
余白領域BAおよび周辺領域SAも当該エッチングに晒される。したがって、図12Bに示すように、余白領域BAおよび周辺領域SAに配置された積層膜FL1および封止層SE1が除去される。当該エッチングの後、レジストR1が除去される。
【0079】
表示素子DE2は、表示素子DE1と同様の手順で形成される。すなわち、表示素子DE2の形成にあたっては、先ず図13Aおよび図13Bに示すように、積層膜FL2および封止層SE2が各パネル部PPおよび余白領域BAに形成される(工程PR6)。積層膜FL2は、図3に示したように、画素開口AP2を通じて下電極LE2に接触する有機層OR2、有機層OR2を覆う上電極UE2、および、上電極UE2を覆うキャップ層CP2を含む。有機層OR2、上電極UE2およびキャップ層CP2は、蒸着によって形成される。また、封止層SE2は、CVDによって形成される。
【0080】
積層膜FL2は、オーバーハング状の隔壁6,7によって複数の部分に分断される。封止層SE2は、積層膜FL2の分断された各部分および隔壁6,7を連続的に覆う。
【0081】
工程PR6の後、積層膜FL2および封止層SE2がパターニングされる(工程PR7)。このパターニングにおいては、図13Aに示すように、封止層SE2の上にレジストR2が配置される。レジストR2は、副画素SP2とその周囲の隔壁6の一部を覆っている。余白領域BAや周辺領域SAにはレジストR2が配置されない。
【0082】
その後、レジストR2をマスクとしたエッチングにより、図14Aに示すように積層膜FL2および封止層SE2のうちレジストR2から露出した部分が除去される。言い換えると、積層膜FL2および封止層SE2のうち、下電極LE2と重なる部分が残され、他の部分が除去される。これにより、副画素SP2に表示素子DE2が形成される。例えば、当該エッチングは、封止層SE2、キャップ層CP2、上電極UE2および有機層OR2に対して順に実施されるウェットエッチングやドライエッチングを含む。
【0083】
余白領域BAも当該エッチングに晒される。したがって、図14Bに示すように、余白領域BAおよび周辺領域SAに配置された積層膜FL2および封止層SE2が除去される。当該エッチングの後、レジストR2が除去される。
【0084】
表示素子DE3は、表示素子DE1,DE2と同様の手順で形成される。すなわち、表示素子DE3の形成にあたっては、先ず図15Aおよび図15Bに示すように、積層膜FL3および封止層SE3が各パネル部PPおよび余白領域BAに形成される(工程PR8)。積層膜FL3は、図3に示したように、画素開口AP3を通じて下電極LE3に接触する有機層OR3、有機層OR3を覆う上電極UE3、および、上電極UE3を覆うキャップ層CP3を含む。有機層OR3、上電極UE3およびキャップ層CP3は、蒸着によって形成される。また、封止層SE3は、CVDによって形成される。
【0085】
積層膜FL3は、オーバーハング状の隔壁6,7によって複数の部分に分断される。封止層SE3は、積層膜FL3の分断された各部分および隔壁6,7を連続的に覆う。
【0086】
工程PR8の後、積層膜FL3および封止層SE3がパターニングされる(工程PR9)。このパターニングにおいては、図15Aに示すように、封止層SE3の上にレジストR3が配置される。レジストR3は、副画素SP3とその周囲の隔壁6の一部を覆っている。余白領域BAや周辺領域SAにはレジストR3が配置されない。
【0087】
その後、レジストR3をマスクとしたエッチングにより、図16Aに示すように積層膜FL3および封止層SE3のうちレジストR3から露出した部分が除去される。言い換えると、積層膜FL3および封止層SE3のうち、下電極LE3と重なる部分が残され、他の部分が除去される。これにより、副画素SP3に表示素子DE3が形成される。例えば、当該エッチングは、封止層SE3、キャップ層CP3、上電極UE3および有機層OR3に対して順に実施されるウェットエッチングやドライエッチングを含む。
【0088】
余白領域BAおよび周辺領域SAも当該エッチングに晒される。したがって、図16Bに示すように、余白領域BAおよび周辺領域SAに配置された積層膜FL3および封止層SE3が除去される。当該エッチングの後、レジストR3が除去される。
【0089】
表示素子DE1,DE2,DE3が形成された後、各パネル部PPに対し、図3に示した樹脂層13、封止層14および樹脂層15が順に形成される(工程PR10)。さらに、マザー基板MBから各パネル部PPが切り出される(工程PR11)。切り出されたパネル部PPは、表示パネルPNLに相当する。
【0090】
図17は、積層膜FL1および封止層SE1を形成する工程PR4の詳細を説明するための図である。図17中の(a)(b)(c)は、いずれも基板10aの端部Ea1の近傍におけるマザー基板MBの断面である。
【0091】
図17(a)は、積層膜FL1および封止層SE1が形成される前の状態に相当し、外周領域FAと、外周領域FAの近傍に配置された隔壁7(第1線状部7x)とを示している。
【0092】
図17(b)は、積層膜FL1を蒸着により形成する工程を示している。積層膜FL1は、外周領域FAを含む基板10aの全体に形成される。したがって、積層膜FL1の端部Ebは、平面視において基板10aの端部Ea1と揃う。
【0093】
図17(c)は、封止層SE1をCVDにより形成する工程を示している。この工程においては、マザー基板MBがCVD装置の真空チャンバに配置されるとともに、マザー基板MBの周縁部が外周フレームFMによって押さえられる。例えば、外周フレームFMは、図示した端部Ea1の近傍の周縁部だけでなく、端部Ea2,Ea3,Ea4の近傍の周縁部も押さえる。
【0094】
このように外周フレームFMが配置された状態でCVDを実施すると、外周フレームFMと重なるマスク領域MAには封止層SE1が形成されない。図17の例において、マスク領域MAは、外周領域FAの全体と重なっている。さらに、マスク領域MAは、端部Ea1に近いいくつかの第1線状部7xとも重なっている。
【0095】
このような工程にて積層膜FL1および封止層SE1が形成されると、基板10aの端部Ea1と封止層SE1の端部Ecとが平面視において離れる。これら端部Ea1,Ecの間の領域、すなわちマスク領域MAにおいては、積層膜FL1が封止層SE1から露出する。さらに、封止層SE1の端部Ecは、基板10aの端部Ea1に最も近い第1線状部7xよりも基板10aの中心側(図17中の右側)に位置している。封止層SE1は、基板10aの端部Ea1に近いいくつかの第1線状部7xを覆っていない。
【0096】
図18は、基板10aの端部Ea1,Ea2の近傍の構成の一例を示す概略的な断面図である。図中の上段に示す端部Ea1の近傍の構成は、図17(c)と同様である。また、図中の下段に示す端部Ea2の近傍の構成は、図17(c)と実質的に対称である。
【0097】
すなわち、端部Ea2の近傍においても、積層膜FL1の端部Ebが端部Ea2と揃っている。また、封止層SE1の端部Ecが端部Ea2から離れており、端部Ec,Ea2の間の領域(マスク領域MA)において積層膜FL1が封止層SE1から露出している。
【0098】
図19は、基板10aの端部Ea1,Ea2の近傍の構成の他の例を示す概略的な断面図である。図18に示したように端部Ea1の近傍のマスク領域MAと端部Ea2の近傍のマスク領域MAが同じ幅となるように外周フレームFMを配置すべき場合であっても、外周フレームFMと基板10aの位置関係がずれることもあり得る。
【0099】
図19の例においては、外周フレームFMと基板10aの位置関係がずれたことにより、端部Ea1の近傍のマスク領域MAが小さくなり、端部Ea2の近傍のマスク領域MAが大きくなっている。この場合には、基板10aに対する封止層SE1の位置もずれる。図19の例においては、上段に示すように、端部Ea1に最も近い第1線状部7xを封止層SE1が覆っており、封止層SE1の端部Ecが当該第1線状部7xと端部Ea1の間に位置している。一方、図19の下段に示すように、端部Ea2の近傍においては、封止層SE1により覆われない第1線状部7xが図18の例よりも増えている。
【0100】
なお、封止層SE1が覆う範囲は、図18および図19の例に限られない。例えば、封止層SE1は、端部Ea1に最も近い第1線状部7xと、端部Ea2に最も近い第1線状部7xの双方を覆ってもよい。
【0101】
図17乃至図19においては、主に基板10aの端部Ea1,Ea2の近傍の構成に着目したが、端部Ea3,Ea4の近傍においても同様の工程で積層膜FL1および封止層SE1が形成される。すなわち、封止層SE1の端部Ecは、基板10aの端部Ea3,Ea4と平面視において離れている。さらに、端部Ecと端部Ea3,Ea4との間の領域(マスク領域MA)において、積層膜FL1が封止層SE1から露出している。端部Ea3,Ea4の近傍に複数の第2線状部7yが配置され、封止層SE2がこれら第2線状部7yのうち端部Ea3,Ea4にそれぞれ最も近いものを覆っていなくてもよい。また、封止層SE1は、端部Ea3に最も近い第2線状部7yと、端部Ea4に最も近い第2線状部7yの少なくとも一方を覆っていてもよい。
【0102】
積層膜FL2および封止層SE2を形成する工程PR6、および、積層膜FL3および封止層SE3を形成する工程PR8は、図17に示した工程PR4と同じ流れで実施される。したがって、工程PR6において形成される積層膜FL2の端部は基板10aの端部Ea1,Ea2,Ea3,Ea4と揃っており、封止層SE2の端部はこれら端部Ea1,Ea2,Ea3,Ea4から離れている。また、工程PR8において形成される積層膜FL3の端部は基板10aの端部Ea1,Ea2,Ea3,Ea4と揃っており、封止層SE3の端部はこれら端部Ea1,Ea2,Ea3,Ea4から離れている。
【0103】
本実施形態に係るマザー基板MBおよび製造方法によれば、製造時の歩留まりを改善することが可能である。この効果につき、図20および図21を用いて以下に説明する。
【0104】
図20は、比較例に係るマザー基板MBcの余白領域BA(あるいは周辺領域SA)の概略的な断面図である。マザー基板MBcは、隔壁7を備えていない点で本実施形態に係るマザー基板MBと相違する。図20(a)の断面は、図11Bと同様の工程に相当するものであり、余白領域BAに積層膜FL1および封止層SE1が形成されている。
【0105】
積層膜FL1および封止層SE1のパターニング(図8の工程PR5)においては、マザー基板MBが大気中での水洗などの洗浄処理やレジストの現像処理に晒される。また、無機絶縁材料で形成された封止層SE1には、微小なピンホールが生じることがある。洗浄処理等において水分が当該ピンホールから積層膜FL1に浸入し、有機層OR1と無機絶縁層100の界面に到達すると、有機層OR1が無機絶縁層100の表面から浮き上がった剥離部Gが生じ得る。
【0106】
水分が有機層OR1を伝わると、図20(b)に示すように剥離部Gが拡大し、積層膜FL1と無機絶縁層100の密着力が弱まる。これにより、図20(c)に示すように、積層膜FL1および封止層SE1の一部が剥落する可能性がある。剥落した積層膜FL1および封止層SE1は、製造ラインのチャンバ等を汚染する一因となる。そのため、汚染部分の清掃が必要となり、製造ラインを停止しなければならない。
【0107】
図21は、本実施形態に係るマザー基板MBの余白領域BA(あるいは周辺領域SA)の概略的な断面図である。図21(a)においては、図20(a)と同じく余白領域BAに積層膜FL1および封止層SE1が形成されている。また、水分が積層膜FL1に浸入し、剥離部Gが生じている。
【0108】
さらに、図21(b)においては剥離部Gが拡大している。しかしながら、本実施形態においては余白領域BAおよび周辺領域SAに隔壁7が配置され、この隔壁7によって積層膜FL1が分断されている。そのため、剥離部Gの拡大が抑制される。
【0109】
具体的には、図21に示すように積層膜FL1と無機絶縁層100の間に剥離部Gが生じた場合、この剥離部Gの拡がりは閉領域CA内に抑制される。また、隔壁7の上に位置する積層膜FL1に剥離部Gが生じた場合には、この剥離部Gの拡がりが隔壁7上に抑制される。
【0110】
なお、図21(b)のように剥離部Gが生じた箇所において、積層膜FL1は、封止層SE1によって抑えられる。そのため、積層膜FL1および封止層SE1が剥落しにくい。
【0111】
図5に示したように隔壁7が複数の第1線状部7xおよび複数の第2線状部7yで構成される場合には、隣り合う第1線状部7xの間隔(閉領域CAの幅Wx2)や隣り合う第2線状部7yの間隔(閉領域CAの幅Wy2)がそれぞれ200μm以下であることが好ましい。これにより、閉領域CAにおける剥離部Gの幅が200μm以下の狭い範囲に抑えられ、積層膜FL1および封止層SE1が剥落に至りにくい。
【0112】
例えば、隔壁7にパターニングされる第1層101および第2層102の形成(図9B参照)には、スパッタリングが用いられる。スパッタリングを行う際には、通常は処理対象の基板の端部から5mm程度の領域がマスクされており、当該端部から8mm程度までの領域においては膜厚が安定しない。また、フォトリソグラフィによるパターニングにおいて用いられるレジストは、基板の端部の近傍において厚くなることがある。そのため、基板の端部の近傍においては正常なパターニングが困難であり、一般的には基板の端部の近傍におけるレジストが除去される。
【0113】
これらのことから、基板10aの端部Ea1,Ea2,Ea3,Ea4の近傍には隔壁7を形成することができず、図4および図5に示した外周領域FAが生じる。仮に、外周領域FAに対しても封止層SE1を形成する場合において、外周領域FAに剥離部Gが生じると、剥離部Gが図20の例のように広範囲に広がり、積層膜FL1および封止層SE1が剥落し得る。
【0114】
これに対し、本実施形態においては、外周領域FAの封止層SE1が除去されている。積層膜FL1に比べて厚く、かつ硬い封止層SE1が存在しなければ、剥離部Gが生じても周囲に拡がりにくい。また、封止層SE1が存在しなければ、封止層SE1自体の剥落は生じない。そのため、本実施形態の構成によれば、基板10aの端部Ea1,Ea2,Ea3,Ea4の近傍における積層膜FL1および封止層SE1の剥落を良好に抑制することができる。
【0115】
また、図18に示したように封止層SE1が端部Ea1,Ea2にそれぞれ最も近い第1線状部7xを覆わない構成であれば、仮に図19に示すように封止層SE1の位置がずれた場合であっても、外周領域FAに形成される封止層SE1の面積を小さく止めることができる。これにより、上述の剥落が生じるリスクを低減することができる。端部Ea3,Ea4の近傍においても、封止層SE1が正常な位置に形成された場合に最外周の第2線状部7yが封止層SE1で覆われないように設計することで、同様の効果を得ることができる。
【0116】
なお、積層膜FL1および封止層SE1に着目して説明した以上の効果は、積層膜FL2,FL3および封止層SE2,SE3についても同様に生じる。すなわち、本実施形態によれば、積層膜FL2,FL3および封止層SE2,SE3の剥落も抑制し、歩留まりを改善することができる。
【0117】
[第2実施形態]
第2実施形態においては、積層膜FL1,FL2,FL3および封止層SE1,SE2,SE3を形成する工程PR4,PR6,PR8に適用可能な他の例を開示する。特に言及しない構成は第1実施形態と同様である。
【0118】
図22は、第2実施形態に係る積層膜FL1および封止層SE1を形成する工程PR4の詳細を説明するための図である。図22中の(a)(b)(c)(d)は、いずれも基板10aの端部Ea1の近傍におけるマザー基板MBの断面である。図22(a)(b)(c)の工程は、図17(a)(b)(c)の工程と同様である。本実施形態においては、封止層SE1を形成した後に図22(d)の工程が実施される。
【0119】
図22(d)の工程においては、封止層SE1をマスクとして用いて積層膜FL1がエッチングされる。このエッチングにより、積層膜FL1のうち基板10aの端部Ea1と封止層SE1の端部Ecの間に位置する部分が除去される。これにより、積層膜FL1の端部Ebと封止層SE1の端部Ecの位置が平面視において揃う。
【0120】
他の観点からいうと、積層膜FL1の端部Ebおよび封止層SE1の端部Ecの各々が平面視において基板10aの端部Ea1と離れる。端部Eb,Ecは、端部Ea1に最も近い第1線状部7xよりも基板10aの中心側(図22中の右側)に位置している。なお、図22(d)のエッチングは、工程PR5(図8参照)のパターニングの前に実施される。
【0121】
図23は、基板10aの端部Ea1の近傍の構成の他の例を示す概略的な断面図である。図23においては、図19の例と同様に、端部Ea1に最も近い第1線状部7xを封止層SE1が覆っている。封止層SE1の端部Ecは、端部Ea1に最も近い第1線状部7xと端部Ea1の間に位置している。
【0122】
このような封止層SE1をマスクとして積層膜FL1がエッチングされると、積層膜FL1の端部Ebは、端部Ecと同じく端部Ea1に最も近い第1線状部7xと端部Ea1の間に位置する。
【0123】
なお、図22および図23においては基板10aの端部Ea1の近傍に着目したが、端部Ea2,Ea3,Ea4の近傍にも同様の構成を適用できる。すなわち、積層膜FL1の端部Ebは、全周にわたり封止層SE1の端部Ecと揃うとともに、基板10aの端部Ea1,Ea2,Ea3,Ea4から離れていてもよい。
【0124】
本実施形態のように、基板10aの周縁部において封止層SE1から露出した積層膜FL1を除去することにより、隔壁7が形成されていない外周領域FAにおける積層膜FL1の剥落を確実に抑制することが可能となる。積層膜FL2,FL3についても、図22(d)と同様の工程を施せば、積層膜FL1と同様の効果を奏する。
【0125】
なお、図22および図23においては、封止層SE1から露出した積層膜FL1が全て除去される例を示した。他の例として、封止層SE1から露出した積層膜FL1を構成する複数の層(キャップ層CP1を構成する各層、上電極UE1、有機層OR1)の少なくとも1つが除去されてもよい。この場合であっても、積層膜FL1の剥落のリスクを低減することができる。
【0126】
例えば、封止層SE1の形成の後に、マザー基板MBの周囲の真空状態を維持したままキャップ層CP1がエッチングされてもよい。この場合において、キャップ層CP1から露出した有機層OR1および上電極UE1が工程PR5(図8参照)のパターニングまで除去されずに残されてもよい。
【0127】
積層膜FL2についても同様に、封止層SE2から露出したキャップ層CP2が除去され、キャップ層CP2から露出した有機層OR2および上電極UE2がそれぞれ工程PR7のパターニングまで除去されずに残されてもよい。さらに、積層膜FL3についても同様に、封止層SE3から露出したキャップ層CP3が除去され、キャップ層CP3から露出した有機層OR3および上電極UE3がそれぞれ工程PR9のパターニングまで除去されずに残されてもよい。
【0128】
[第3実施形態]
第3実施形態においては、隔壁7に適用し得る構成の他の一例を開示する。特に言及しない構成は第1実施形態と同様である。
【0129】
図24は、第3実施形態に係る隔壁7の概略的な平面図である。この図の例において、隔壁7は、図2に示した隔壁6と実質的に同じパターンを有している。具体的には、隔壁7は、図2に示した隔壁6の開口AP61,AP62,AP63と同一または類似した形状の開口AP71,AP72,AP73を有している。開口AP71,AP72,AP73の内側の領域は、第1実施形態と同様の閉領域CAに相当する。
【0130】
開口AP71,AP72,AP73の位置関係は、開口AP61,AP62,AP63の位置関係と同様である。開口AP71,AP72,AP73の大きさは、例えば開口AP61,AP62,AP63と同様であるが、この例に限られない。
【0131】
隔壁6,7の形状が大きく異なる場合、マザー基板MBの面内において、図9Aおよび図9Bに示した第1層101および第2層102をパターニングする際のエッチングにむらが生じる可能性がある。これに対し、本実施形態のように隔壁7が隔壁6と実質的に同じパターンを有する場合、第1層101および第2層102をパターニングする際のエッチングの均一性を改善することができる。
【0132】
なお、隔壁7の形状は、第1および第3実施形態にて開示したものに限られない。例えば、隔壁7は、必ずしも閉領域CAを形成する必要はない。他の例として、隔壁7は、互いに平行に配置された複数の線状部により構成され、これら線状部が互いに接続されていなくてもよい。このような構成であっても、線状部の配列方向への剥離部Gの拡がりが抑制される。
【0133】
また、余白領域BAに配置された隔壁7と、周辺領域SAに配置された隔壁7とが異なる形状を有してもよい。一例として、余白領域BAには図5に示した形状の隔壁7が配置され、周辺領域SAには図24に示した形状の隔壁7が配置されてもよい。さらに他の例として、周辺領域SAに隔壁7が配置されていなくてもよい。
【0134】
隔壁6,7は、必ずしも同じ工程によって同時に形成される必要はなく、別々の工程によって形成されてもよい。この場合において、隔壁6,7を構成する材料が異なってもよい。
【0135】
以上、本発明の実施形態として説明した表示装置を基にして、当業者が適宜設計変更して実施し得る全ての表示装置も、本発明の要旨を包含する限り本発明の範囲に属する。
【0136】
本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変形例に想到し得るものであり、それら変形例についても本発明の範囲に属するものと解される。例えば、上述の各実施形態に対して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除、もしくは設計変更を行ったもの、または、工程の追加、省略もしくは条件変更を行ったものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含まれる。
【0137】
また、上述の各実施形態において述べた態様によりもたらされる他の作用効果について、本明細書の記載から明らかなもの、または当業者において適宜想到し得るものについては、当然に本発明によりもたらされるものと解される。
【符号の説明】
【0138】
DSP…表示装置、PNL…表示パネル、DA…表示領域、SA…周辺領域、PX…画素、SP1,SP2,SP3…副画素、DE1,DE2,DE3…表示素子、LE1,LE2,LE3…下電極、OR1,OR2,OR3…有機層、UE1,UE2,UE3…上電極、SE1,SE2,SE3…封止層、CA…閉領域、5…リブ、6,7…隔壁、61,71…下部、62,72…上部、100…無機絶縁層。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10A
図10B
図11A
図11B
図12A
図12B
図13A
図13B
図14A
図14B
図15A
図15B
図16A
図16B
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24