(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024113486
(43)【公開日】2024-08-22
(54)【発明の名称】ロボットハンドおよびケーブル配設装置
(51)【国際特許分類】
B25J 15/00 20060101AFI20240815BHJP
【FI】
B25J15/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023018507
(22)【出願日】2023-02-09
(71)【出願人】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109313
【弁理士】
【氏名又は名称】机 昌彦
(74)【代理人】
【識別番号】100149618
【弁理士】
【氏名又は名称】北嶋 啓至
(72)【発明者】
【氏名】多田 匠吾
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707AS08
3C707DS01
3C707EV08
3C707EV24
3C707NS17
(57)【要約】
【課題】ケーブルを引き回すことが可能で、かつ、ケーブルに加えられるダメージがより小さいロボットハンド等を提供する。
【解決手段】ロボットハンドは、第1の中心軸が設定されたフレームと、フレームに対して、第1の中心軸の周りに回転自在となるように設けられ、第1の空洞を備えた第1の筒状部材と、第1の中心軸に対して垂直な第2の中心軸の周りに回転自在となるように第1の筒状部材に取り付けられ、ケーブルを第1の筒状部材の内部の第1の空洞に案内するための第1の滑車と、フレームに対して、第1の中心軸の周りに回転自在となるように設けられ、第1の空洞と連通する第2の空洞を備えた第2の筒状部材と、第1の中心軸に対して垂直な第3の中心軸の周りに回転自在となるように第2の筒状部材に取り付けられ、ケーブルを第2の空洞の内側から外側に案内する第2の滑車と、を備える。
【選択図】
図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の中心軸が設定されたフレームと、
前記フレームに対して、前記第1の中心軸の周りに回転自在となるように設けられ、第1の空洞を備えた第1の筒状部材と、
前記第1の中心軸に対して垂直な第2の中心軸の周りに回転自在となるように前記第1の筒状部材に取り付けられ、ケーブルを前記第1の空洞に案内する第1の滑車と、
前記フレームに対して、前記第1の中心軸の周りに回転自在となるように設けられ、前記第1の空洞と連通する第2の空洞を備えた第2の筒状部材と、
前記第1の中心軸に対して垂直な第3の中心軸の周りに回転自在となるように前記第2の筒状部材に取り付けられ、前記ケーブルを前記第2の空洞の内側から外側に案内する第2の滑車と、
を備えることを特徴とするロボットハンド。
【請求項2】
前記第1の筒状部材の外周面および前記フレームの間に配置され、前記フレームの一端部側の内壁に取り付けられ、前記第1の中心軸の周りの前記第1の筒状部材の回転を円滑にする第1のベアリングと、
前記第2の筒状部材の外周面および前記フレームの間に配置され、前記フレームの他端部側の内壁に取り付けられ、前記第1の中心軸の周りの前記第2の筒状部材の回転を円滑にする第2のベアリングと、
を備えることを特徴とする請求項1に記載のロボットハンド。
【請求項3】
前記第1のベアリングと前記第2のベアリングの少なくとも一方が、ラジアルベアリングである、
ことを特徴とする請求項2に記載のロボットハンド。
【請求項4】
前記第1のベアリングと前記第2のベアリングの少なくとも一方が、スラストベアリングである、
ことを特徴とする請求項2に記載のロボットハンド。
【請求項5】
ロボットアームと、
前記ロボットアームの動作を制御する制御手段と、
前記ロボットアームに取り付けられた請求項1乃至4のいずれか一項に記載のロボットハンドと、
を有することを特徴とするケーブル配設装置。
【請求項6】
前記ケーブルを配設するためのケーブル配設治具を搭載するために前記第1の中心軸に対してZ軸が平行に配置されるように設けられ、前記Z軸に対して直交するX軸およびY軸の2軸で駆動されるX-Yステージを備える、
ことを特徴とする請求項5に記載のケーブル配設装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットハンド等に関する。
【背景技術】
【0002】
ワイヤハーネスは、機器間の接続に用いられる部品である。一般的に、ワイヤハーネスは、多数のケーブルを備え、各ケーブルの末端には端子やコネクタが取り付けられている。そして、複数のケーブルでルートが共通する部分が、テープや結束バンド等で結束される。また、結束部から複数のケーブルのグループが分岐されることもある。自動車、航空機、人工衛星、宇宙船などでは、用いられるケーブルの数が多く、接続される機器の種類も多い。このため、用いられるワイヤハーネスの構成も複雑になる。
図11は、一般的なワイヤハーネス950の一例を示す模式図である。多数のケーブル900が束ねられている。そして、ルートが共通する部分は結束部951として結束される。また、結束には、例えば、結束バンド、テープなどが用いられる。また、分岐が必要な部分には、分岐部952が設けられる。各ケーブルの端部には、端子金具960やコネクタ970などが取り付けられる。
【0003】
図12は、一般的なワイヤハーネス950の作り方を説明するための模式図である。上記したように、ワイヤハーネス950では、多数のケーブル900のうちの各々のケーブル900が、設計にしたがって結束されたり、分岐されたりする。そこで、ワイヤハーネスの製造においては、平板に所定間隔でピン920を設けたケーブル配設治具910が一般的に用いられる。このようなケーブル配設治具910に、例えば、一本ずつケーブル900が配設される。以下では、ケーブル900の配設手順の具体例について説明する。まず、1本目のケーブル900_1の一端が、ケーブル配設治具910の板上(
図12の左側)に固定される。次に、設計にしたがって、1本目のケーブル900_1が、ケーブル配設治具910上に引き回される。そして1本目のケーブル900_1の他端部がケーブル配設治具910上(
図12の右側)に固定される。次に、1本目のケーブル900_1と同様に、設計にしたがって、2本目のケーブル900_2が、ケーブル配設治具910上に配設される。同様に、3本目のケーブル900_3、4本目のケーブル900_4が、ケーブル配設治具910上に配設される。なお、
図12では、4本のケーブル900が例示されているが、5本目以降のケーブル900も、同様に、ケーブル配設治具910上に配設される。そして、設計にしたがって、結束部951や分岐部952が設けられる。
【0004】
上記のケーブル900の引き回しの効率化のために、ケーブル900をロボットで引き回す方法が提案されている。例えば、特許文献1には、ケーブル900を引き回すことが可能なロボットハンドおよびケーブル手繰り方法の技術が開示されている。このロボットハンドは、ケーブルを架けることが可能な指を有するハンドと、指に架かるケーブル900を指に押さえつけ可能な押さえと、を備えている。また、押さえつける力の強度を制御する制御手段を備える。ハンドにケーブル900を把持させる際には、押さえつける力が、第1強度に制御される。そして、ケーブル900が引き回される際には、ケーブル900が指に対して滑るように、押さえつける力が、第1強度より弱い第2強度に制御される。特許文献1では、上記の構成とすることによって、ロボットハンドによるケーブルの位置決めと引き回しが可能になるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のロボットハンドでは、ケーブル900が弱い力で把持され、ケーブル900が指と押さえの間を滑りながら、ケーブル900が引き回される。このため、摩擦抵抗に起因する引っ張り力がケーブル900に作用する。この引っ張り力がケーブル900にダメージを与えるという問題があった。また、この技術では、ロボットハンドの移動方向が変化する際に、ケーブル900を折り曲げる力が、ケーブル900に作用していた。この折り曲げる力がケーブル900にダメージを与えるという問題があった。
【0007】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであり、ケーブルを引き回すことが可能で、かつ、ケーブルに加えられるダメージがより小さいロボットハンド等を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明のロボットハンドは、第1の中心軸が設定されたフレームと、前記フレームに対して、前記第1の中心軸の周りに回転自在となるように設けられ、第1の空洞を備えた第1の筒状部材と、前記第1の中心軸に対して垂直な第2の中心軸の周りに回転自在となるように前記第1の筒状部材に取り付けられ、ケーブルを前記第1の空洞に案内するための第1の滑車と、前記フレームに対して、前記第1の中心軸の周りに回転自在となるように設けられ、前記第1の空洞と連通する第2の空洞を備えた第2の筒状部材と、前記第1の中心軸に対して垂直な第3の中心軸の周りに回転自在となるように前記第2の筒状部材に取り付けられ、前記ケーブルを前記第2の空洞の内側から外側に案内する第2の滑車と、を備える。
【0009】
また、本発明のケーブル配設装置は、ロボットアームと、前記ロボットアームの動作を制御する制御手段と、前記ロボットアームに取り付けられた上記のロボットハンドと、を備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明の効果は、ケーブルを引き回すことが可能で、かつ、ケーブルに加えられるダメージがより小さいロボットハンド等を提供できることである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1の実施形態のロボットハンドを示す断面模式図である。
【
図2】第1の実施形態のロボットハンドの具体例1を示す断面模式図である。
【
図3】第1の実施形態のロボットハンドの具体例2を示す断面模式図である。
【
図4】第1の実施形態のケーブル配設装置の一例を示す模式図である。
【
図5】第1の実施形態のケーブル配設装置の制御手段を示すブロック図である。
【
図6】第1の実施形態のロボットハンドの動作の第1の状態を示す模式図である。
【
図7】第1の実施形態のロボットハンドの動作の第2の状態を示す模式図である。
【
図8】第1の実施形態のロボットハンドの動作の第3の状態を示す模式図である。
【
図9】第1の実施形態のケーブル配設装置の別の一例を示す模式図である。
【
図10】第2の実施形態のロボットハンドを示す断面模式図である。
【
図11】一般的なワイヤハーネスの一例を示す模式図である。
【
図12】一般的なワイヤハーネスの作り方を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を詳細に説明する。但し、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい限定がされているが、発明の範囲を以下に限定するものではない。なお各図面の同様の構成要素には同じ番号を付し、説明を省略する場合がある。
【0013】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態のロボットハンド100を示す断面模式図である。ロボットハンド100は、フレーム10と、第1のベアリング20と、第1の筒状部材30と、第1の滑車40と、第2のベアリング50と、第2の筒状部材60と、第2の滑車70と、を備える。
【0014】
フレーム10には、第1の中心軸11が設定される。フレーム10には、ロボットハンド100をロボットアームに取り付けるためのアーム取り付け部12が設けられても良い。
【0015】
フレーム10に対して、第1の中心軸11の周りに回転自在となるように、第1の筒状部材30が設けられる。第1の筒状部材30は、第1の空洞31を備える。
【0016】
フレーム10の一端部側の内壁に、第1のベアリング20が取り付けられる。第1の筒状部材30の外周面およびフレーム10の間に、第1のベアリング20が配置される。第1のベアリング20が、第1の中心軸11の周りの第1の筒状部材30の回転を円滑にする。
【0017】
第1の滑車40が、第1の筒状部材30に取り付けられる。第1の筒状部材30には、第1の中心軸11に対して垂直な第2の中心軸41が設けられる。この第2の中心軸41の周りに回転自在となるように、第1の滑車40が第1の筒状部材30に取り付けられる。そして、第1の滑車40が、ケーブル900を第1の筒状部材30の内部の第1の空洞31に案内する。第1の滑車40には、第1の溝42が設けられている。この第1の溝42にケーブル900が掛けられる。そして、ケーブル900の長手方向の移動によって、第1の滑車40が回転する。これにより、ケーブル900がロボットハンド100の中に導入される際の摩擦が低減される。
【0018】
フレーム10に対して、第1の中心軸11の周りに回転自在となるように、第2の筒状部材60が設けられる。第2の筒状部材60は、第1の空洞31に連通する第2の空洞61を備える。
【0019】
フレーム10の他端部側の内壁に、第2のベアリング50が取り付けられる。第2の筒状部材60の外周面およびフレーム10の間に、第2のベアリング50が配置される。第2のベアリング50が、第1の中心軸11の周りの第2の筒状部材60の回転を円滑にする。
【0020】
第2の滑車70が、第2の筒状部材60に取り付けられる。第2の筒状部材60には、第1の中心軸11に対して垂直な第3の中心軸71が設けられる。この第3の中心軸71の周りに回転自在となるように、第2の滑車70が第2の筒状部材60に取り付けられる。そして、第2の滑車70が、ケーブル900を第2の空洞61の内側から外側に案内する。第2の滑車70には、第2の溝72が設けられている。この第2の溝72にケーブル900が掛けられる。そして、ケーブル900の長手方向の移動によって、第2の滑車70が回転する。これにより、ケーブル900がロボットハンド100から引き出される際の摩擦が低減される。
【0021】
以上の構成では、第1の滑車40があるため、ケーブル900が滑らかにロボットハンド100の内部に導入される。また、第2の滑車70があるため、ケーブル900が滑らかにロボットハンド100の内部から外部に引き出される。さらに、第1の滑車40の案内方向が、第1の中心軸11の周りに回転自在である。このため、ケーブル900の導入方向が変化しても、第1の滑車40の案内方向が、その方向に追従する。また、第2の滑車70の案内方向が、第1の中心軸11の周りに回転自在である。このため、ケーブル900の引き出し方向が変化しても、第2の滑車70の案内方向が、その方向に追従する。これにより、方向転換の際にケーブル900に加わるダメージが低減される。
【0022】
以上のような構成と動作によって、ケーブル900を引き回すことが可能で、かつ、ケーブル900に加えられるダメージがより小さいロボットハンド100が提供される。
【0023】
次に、ロボットハンド100の具体例について説明する。
【0024】
(具体例1)
図2は、第1の実施形態のロボットハンドの具体例1を示す断面模式図である。具体例1のロボットハンド100は、第1のベアリング20および第2のベアリング50として、ラジアルベアリングを備えている。ラジアルベアリングは、軸に対して直角方向の力を支えるベアリングである。ラジアルベアリングは、外輪と、外輪より径の小さな内輪と、外輪と内輪の間に設けられたボールやコロを備える。
【0025】
具体例1では、第1のベアリング20において、ラジアルベアリングの外輪がフレーム10に固定され、内輪に第1の筒状部材30が固定されている。この構成により、第1の筒状部材30が、第1の中心軸11の周りに回転自在となっている。同様に、第2のベアリング50において、ラジアルベアリングの外輪がフレーム10に固定され、内輪に第2の筒状部材60が固定されている。この構成により、第2の筒状部材60が、第1の中心軸11の周りに回転自在となっている。
【0026】
(具体例2)
図3は、第1の実施形態のロボットハンドの具体例2を示す断面模式図である。具体例2のロボットハンド100は、第1のベアリング20および第2のベアリング50として、スラストベアリングを備えている。スラストベアリングは、軸と同じ方向の力を支えるベアリングである。軸の方向に2つの軌道盤が配置され、2つの軌道盤の間に、ボールやコロが配置される。
【0027】
具体例2では、第1のベアリング20および第2のベアリング50にスラストベアリングが用いられる。そして、第1のベアリング20において、スラストベアリングの一方の軌道盤(ハウジング軌道盤)がフレーム10に固定され、他方の軌道盤(軸軌道盤)に第1の筒状部材30が固定される。この構成により、第1の筒状部材30が、第1の中心軸11の周りに回転自在となっている。同様に、第2のベアリング50において、スラストベアリングの一方の軌道盤(ハウジング軌道盤)がフレーム10に固定され、他方の軌道盤(軸軌道盤)に第2の筒状部材60が固定される。この構成により、第2の筒状部材60が、第1の中心軸11の周りに回転自在となっている。
【0028】
上記の具体例1、2では、第1のベアリング20と第2のベアリング50が、ともにラジアルベアリングの例、および、ともにスラストベアリングの例について説明した。しかしながら、第1のベアリング20と第2のベアリング50のうちの一方がラジアルベアリング、他方がスラストベアリングであっても良い。
【0029】
次に、ロボットハンド100を用いたケーブル配設装置について説明する。
図4は、第1の実施形態のケーブル配設装置1000の一例を示す模式図である。ケーブル配設装置1000は、ロボットアーム1100と、制御手段1200と、ロボットハンド100とを備える。ロボットアーム1100には、ロボットハンド100が取り付けられる。例えば、ロボットアーム1100の先端にロボットハンド100が取り付けられる。ロボットアーム1100の動きは、制御手段1200によって制御される。また、例えば、ロボットアーム1100には、ケーブル900を収容したリール1300が取り付けられる。
【0030】
リール1300から引き出されたケーブル900は、ロボットハンド100の第1の滑車40および第2の滑車70に掛けられる。そして第2のベアリング50から外側に引き出される。
【0031】
ケーブル配設装置1000は、例えば、所定の間隔でピン920が取り付けられたケーブル配設治具910の上にケーブル900を配設する。例えば、ケーブル900の一端がケーブル配設治具910上に固定される。そこから、設計にしたがってケーブル900がロボットハンド100により引き回される。
【0032】
制御手段1200は、例えば、一般的なコンピュータである。
図5は、第1の実施形態のケーブル配設装置1000の制御手段1200を示すブロック図である。
図5に示されているように、制御手段1200は、例えば、プロセッサ1210と、メモリ1220と、表示部1230と、記憶部1240と、入出力インターフェイス1250とを備える。プロセッサ1210が、演算処理を実行する。メモリ1220が、データを記憶する。メモリ1220は、プロセッサ1210から直接アクセスされる。プロセッサ1210の制御にしたがって、表示部1230がデータ等を表示する。記憶部1240が、データを記憶する。記憶部1240は、例えば、プロセッサ210から直接アクセスされない低速の記憶装置である。入出力インターフェイス1250は、外部から制御手段1200への入力の入り口である。また、入出力インターフェイス1250は、制御手段1200から外部への出力の出口である。
【0033】
次にロボットハンド100の具体的な動作の例について説明する。
図6は、第1の実施形態のロボットハンド100の動作の第1の状態を示す模式図である。
図7は、第1の実施形態のロボットハンド100の動作の第2の状態を示す模式図である。
図8は、第1の実施形態のロボットハンド100の動作の第3の状態を示す模式図である。本例では、ケーブル配設工程の進行にしたがって、第1の状態、第2の状態、第3の状態の順に状態が推移する。なお、
図6、7、8には、ロボットハンド100の第1の滑車40が設けられている側から見た図が示されている。これは、図中の+Z方向である。また、ケーブル配設治具910のケーブル配設面も、Z方向を向いている。
【0034】
ロボットハンド100が、
図6の矢印の方向(図の右側)に向かって進んでいる。図示はしていないがケーブル900の
図6の左側では、ケーブル900の一端がケーブル配設治具910上に固定されている。ロボットハンド100の進行に伴って、ケーブル900が引き出される。第1の滑車40、第2の滑車70の順に、ケーブル900が通過する。この際、第2の滑車70がケーブル900を案内する方向が、ケーブル900が引き出される方向に追従する。ロボットハンド100では、第2の筒状部材60が第1の中心軸11の周りで回転自在である。また、第2の滑車70は、第2の筒状部材60に取り付けられている。これにより、第2の滑車70によるケーブル900の案内方向が、第1の中心軸11の周りで回転自在となる。
【0035】
図7は、第1の実施形態のロボットハンド100の動作の第2の状態を示す模式図である。ロボットハンド100が
図7の上段の左から2番目のピン920を通過したところで、ロボットハンド100が図の下方に方向転換している。この時、ケーブル900の引き出し方向は、
図7の上側となる。そして、第2の滑車70の案内方向が、この方向に追従する。このため、引き出し方向の転換によって、ケーブル900に加わる力が低減される。
【0036】
図8は、第1の実施形態のロボットハンド100の動作の第3の状態を示す模式図である。
図8の下段の左から2番目のピン920を通過したところで、ロボットハンド100が、図の左側に方向転換している。この時、ケーブル900の引き出し方向は、
図7の右上側となる。そして、第2の滑車70の案内方向が、この方向に追従する。このため、引き出し方向の転換によって、ケーブル900に加わる力が低減される。
【0037】
以上に説明したように、本実施形態のロボットハンド100では、第2の滑車70の案内方向が、ケーブル900の引き出し方向に追従する。このため、ロボットハンド100の方向転換の際に、ケーブル900に加わる力が、特許文献1のロボットハンドよりも低減される。
【0038】
(変形例)
図9は、第1の実施形態のケーブル配設装置の別の一例を示す模式図である。ここでは、図の右方向がX方向、図の奥行方向がY方向、図の上方向がZ方向である。
【0039】
変形例のケーブル配設装置1001は、元の構成に加えて、X-Yステージ1400を備えている。X-Yステージ1400には、ケーブル900を配設するためのケーブル配設治具910が搭載される。また、X-Yステージ1400が、直交2軸駆動でX-Y平面内を駆動される。X-Yステージ1400の駆動は、例えば、制御手段1200によって制御される。
【0040】
ロボットアーム1100と連携して、X-Yステージ1400がケーブル900の引き回しを行う。なお、この動作では、ロボットアーム1100が不動であっても良い。あるいは、ロボットアーム1100がZ方向の動きをするだけでも良い。
【0041】
以上、本実施形態のロボットハンド100等について説明した。
【0042】
本実施形態のロボットハンド100は、フレーム10と、第1の筒状部材30と、第1の滑車40と、第2の筒状部材60と、第2の滑車70とを備える。フレーム10には、第1の中心軸11が設定される。フレーム10に対して、第1の中心軸11の周りに回転自在となるように、第1の筒状部材30が設けられる。第1の筒状部材30は、第1の空洞31を備える。第1の筒状部材30には、第1の中心軸11に対して垂直な第2の中心軸41が設けられる。そして、第2の中心軸41の周りに回転自在となるように、第1の滑車40が、第1の筒状部材30に取り付けられる。第1の滑車40が、ケーブル900を第1の空洞31に案内する。フレーム10に対して、第1の中心軸11の周りに回転自在となるように、第2の筒状部材60が設けられる。第2の筒状部材60は、第1の空洞31と連通する第2の空洞61を備える。第2の筒状部材60には、第1の中心軸11に対して垂直な第3の中心軸71が設けられる。そして、第3の中心軸71の周りに回転自在となるように、第2の滑車70が第2の筒状部材60に取り付けられる。第2の滑車70が、ケーブル900を第2の空洞61の内側から外側に案内する。
【0043】
以上の構成では、第1の滑車40があるため、ケーブル900が滑らかにロボットハンド100の内部に導入される。また、第2の滑車70があるため、ケーブル900が滑らかにロボットハンド100の内部から外部に引き出される。さらに、第1の滑車40の案内方向が、第1の中心軸11の周りに回転自在である。このため、ケーブル900の導入方向が変化しても、第1の滑車40によるケーブル900の案内方向が、その方向に追従する。また、第2の滑車70によるケーブル900の案内方向が、第1の中心軸11の周りに回転自在である。このため、ケーブル900の引き出し方向が変化しても、第2の滑車70の案内方向が、その方向に追従する。これにより、方向転換の際にケーブル900に加わるダメージが低減される。
【0044】
また、一態様によれば、ロボットハンド100が、第1のベアリング20と、第2のベアリング50と、を備える。第1のベアリング20が、フレーム10の一端部側の内壁に取り付けられる。また、第1のベアリング20は、第1の筒状部材30の外周面およびフレーム10の間に配置される。そして、第1のベアリング20が、第1の中心軸11の周りの第1の筒状部材30の回転を円滑にする。第2のベアリング50が、フレーム10の他端部側の内壁に取り付けられる。また、第2のベアリング50は、第2の筒状部材60の外周面およびフレーム10の間に配置される。そして、第2のベアリング50が、第1の中心軸11の周りの第2の筒状部材60の回転を円滑にする。
【0045】
以上の構成では、第1のベアリング20によって、第1の筒状部材30の第1の中心軸11の周りの回転が円滑になる。このため、第1の筒状部材30に取り付けられた第1の滑車40のケーブル導入方向への追従がスムーズになる。同様に、第2のベアリング50によって、第2の筒状部材60の第1の中心軸11の周りの回転が円滑になる。このため、第2の筒状部材60に取り付けられた第2の滑車70のケーブル引き出し方向への追従がスムーズになる。
【0046】
また、一態様によれば、ロボットハンド100において、第1のベアリング20と第2のベアリング50の少なくとも一方が、ラジアルベアリングである。
【0047】
ラジアルベアリングの外輪がフレーム10に固定され、内輪に第1の筒状部材30または第2の筒状部材60が固定されることで、容易に滑らかな回転が実現される。
【0048】
また、一態様によれば、ロボットハンド100において、第1のベアリング20と第2のベアリング50の少なくとも一方が、スラストベアリングである。
【0049】
スラストベアリングの一方の軌道盤(ハウジング軌道盤)がフレーム10に固定され、他方の軌道盤(軸軌道盤)に第1の筒状部材30または第2の筒状部材60が固定されることで、容易に滑らかな回転が実現される。
【0050】
また、本実施形態のケーブル配設装置1000は、ロボットアーム1100と、制御手段1200と、ロボットハンド100と、を有する。制御手段1200が、ロボットアーム1100の動作を制御する。そして、ロボットアーム1100に、本実施形態のロボットハンド100が取り付けられる。
【0051】
本実施形態のロボットハンド100では、ケーブル900がロボットハンド100に導入される際に、第1の滑車40の案内方向が、ケーブル900の導入方向に追従する。また、ケーブル900がロボットハンド100から引き出される際に、第2の滑車70の案内方向が、ケーブル900の引き出し方向に追従する。このため、本実施形態のケーブル配設装置1000によれば、ケーブル900が受けるダメージが少ない状態で、ケーブル900が配設される。
【0052】
また、一態様によれば、ケーブル配設装置1000が、直交2軸駆動されるX-Yステージ1400を備える。ケーブル配設治具910を搭載するために、X-Yステージ1400が設けられる。第1の中心軸11に平行にZ軸が配置され、X軸およびY軸がZ軸に対して直行する。そして、X-Yステージ1400が、X軸およびY軸の2軸で設置面上を駆動される。ケーブル配設治具910は、ケーブル900の配設に用いられる。
【0053】
X-Yステージ1400が用いられることで、ロボットアーム1100の駆動量の節約が可能になる。また、ロボットアーム1100とX-Yステージ1400を連携させることで、ケーブル配設時間の短縮が可能になる。すなわち、ケーブル配設工程の効率化が可能になる。
【0054】
(第2の実施形態)
本実施形態では、ロボットハンドの基本構成について説明する。
図10は、第2の実施形態のロボットハンド101を示す断面模式図である。
【0055】
ロボットハンド101は、フレーム10と、第1の筒状部材30と、第1の滑車40と、第2の筒状部材60と、第2の滑車70と、を備える。なお、第1の実施形態のフレーム10は、本実施形態のフレーム10の具体例である。第1の実施形態の第1の筒状部材30は、本実施形態の第1の筒状部材30の具体例である。第1の実施形態の第1の滑車40は、本実施形態の第1の滑車40の具体例である。第1の実施形態の第2の筒状部材60は、本実施形態の第2の筒状部材60の具体例である。また、第1の実施形態の第2の滑車70は、本実施形態の第2の滑車70の具体例である。
【0056】
フレーム10には、第1の中心軸11が設定されている。
【0057】
フレーム10に対して、第1の中心軸11の周りに回転自在となるように、第1の筒状部材30が設けられる。第1の筒状部材30は、第1の空洞31を備える。
【0058】
第1の滑車40が、第1の筒状部材30に取り付けられる。第1の筒状部材30には、第1の中心軸11に対して垂直な第2の中心軸41が設けられる。この第2の中心軸41の周りに回転自在となるように、第1の滑車40が第1の筒状部材30に取り付けられる。第1の滑車40が、ケーブル900を第1の筒状部材30の内部の第1の空洞31に案内する。第1の滑車40には、第1の溝42が設けられている。この第1の溝42にケーブル900が掛けられる。そして、ケーブル900の長手方向の移動によって、第1の滑車40が回転する。これにより、ケーブル900がロボットハンド100の中に導入される際の摩擦が低減される。
【0059】
フレーム10に対して、第1の中心軸11の周りに回転自在となるように、第2の筒状部材60が設けられる。第2の筒状部材60は、第1の空洞31に連通する第2の空洞61を備える。
【0060】
第2の滑車70が、第2の筒状部材60に取り付けられる。第2の筒状部材60には、第1の中心軸11に対して垂直な第3の中心軸71が設けられる。この第3の中心軸71の周りに回転自在となるように、第2の滑車70が第2の筒状部材60に取り付けられる。第2の滑車70が、ケーブル900を第2の空洞61の内側から外側に案内する。第2の滑車70には、第2の溝72が設けられている。この第2の溝72にケーブル900が掛けられる。そして、ケーブル900の長手方向の移動によって、第2の滑車70が回転する。これにより、ケーブル900がロボットハンド100のから引き出される際の摩擦が低減される。
【0061】
ロボットハンド101は、ケーブル900の配設に用いられる。第1の滑車40によって、ケーブル900がロボットハンド101の内部に案内される。そして、第2の滑車70によって、ケーブル900がロボットハンド101の外部に案内される。ここで、第1の筒状部材30が第1の中心軸11の周りに回転自在である。このため、第1の滑車40の案内方向が、ケーブル900の導入方向にならうように移動する。その結果、導入方向の転換の際にケーブル900に加わる力が低減される。また、第1の筒状部材30が第1の中心軸11の周りに回転自在である。このため、第2の滑車70の案内方向が、ケーブル900の引き出し方向にならうように移動する。その結果、引き出し方向の転換の際に、ケーブル900に加わる力が低減される。
【0062】
以上のような構成と動作によって、ケーブル900を引き回すことが可能で、かつ、ケーブル900に加えられるダメージがより小さいロボットハンド101が提供される。
【0063】
以上、本実施形態のロボットハンド100等について説明した。
【0064】
本実施形態のロボットハンド100は、フレーム10と、第1の筒状部材30と、第1の滑車40と、第2の筒状部材60と、第2の滑車70とを備える。フレーム10には、第1の中心軸11が設定される。フレーム10に対して、第1の中心軸11の周りに回転自在となるように、第1の筒状部材30が設けられる。第1の筒状部材30は、第1の空洞31を備える。第1の筒状部材30には、第1の中心軸11に対して垂直な第2の中心軸41が設けられる。そして、第2の中心軸41の周りに回転自在となるように、第1の滑車40が、第1の筒状部材30に取り付けられる。第1の滑車40が、ケーブル900を第1の空洞31に案内する。フレーム10に対して、第1の中心軸11の周りに回転自在となるように、第2の筒状部材60が設けられる。第2の筒状部材60は、第1の空洞31と連通する第2の空洞61を備える。第2の筒状部材60には、第1の中心軸11に対して垂直な第3の中心軸71が設けられる。そして、第3の中心軸71の周りに回転自在となるように、第2の滑車70が第2の筒状部材60に取り付けられる。第2の滑車70が、ケーブル900を第2の空洞61の内側から外側に案内する。
【0065】
以上の構成では、第1の滑車40があるため、ケーブル900が滑らかにロボットハンド100の内部に導入される。また、第2の滑車70があるため、ケーブル900が滑らかにロボットハンド100の内部から外部に引き出される。さらに、第1の滑車40の案内方向が、第1の中心軸11の周りに回転自在である。このため、ケーブル900の導入方向が変化しても、第1の滑車40の案内方向が、その方向に追従する。また、第2の滑車70の案内方向が、第1の中心軸11の周りに回転自在である。このため、ケーブル900の引き出し方向が変化しても、第2の滑車70の案内方向が、その方向に追従する。これにより、方向転換の際にケーブル900に加わるダメージが低減される。
【0066】
以上、第1および第2の実施形態を模範的な例として本発明を説明した。しかしながら、本発明は、上記実施形態には限定されない。即ち、本発明は、本発明のスコープ内において、当業者が理解し得る様々な態様を適用することができる。
【0067】
上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
【0068】
(付記1)
第1の中心軸が設定されたフレームと、
前記フレームに対して、前記第1の中心軸の周りに回転自在となるように設けられ、第1の空洞を備えた第1の筒状部材と、
前記第1の中心軸に対して垂直な第2の中心軸の周りに回転自在となるように前記第1の筒状部材に取り付けられ、ケーブルを前記第1の空洞に案内するための第1の滑車と、
前記フレームに対して、前記第1の中心軸の周りに回転自在となるように設けられ、前記第1の空洞と連通する第2の空洞を備えた 第2の筒状部材と、
前記第1の中心軸に対して垂直な第3の中心軸の周りに回転自在となるように前記第2の筒状部材に取り付けられ、前記ケーブルを前記第2の空洞の内側から外側に案内する第2の滑車と、
を備えることを特徴とするロボットハンド。
【0069】
(付記2)
前記第1の筒状部材の外周面および前記フレームの間に配置され、前記フレームの一端部側の内壁に取り付けられ、前記第1の中心軸の周りの前記第1の筒状部材の回転を円滑にする第1のベアリングと、
前記第2の筒状部材の外周面および前記フレームの間に配置され、前記フレームの他端部側の内壁に取り付けられ、前記第1の中心軸の周りの前記第2の筒状部材の回転を円滑にする第2のベアリングと、
を備えることを特徴とする付記1に記載のロボットハンド。
【0070】
(付記3)
前記第1のベアリングと前記第2のベアリングの少なくとも一方が、ラジアルベアリングである、
ことを特徴とする付記2に記載のロボットハンド。
【0071】
(付記4)
前記第1のベアリングと前記第2のベアリングの少なくとも一方が、スラストベアリングである、
ことを特徴とする付記2または3に記載のロボットハンド。
【0072】
(付記5)
ロボットアームと、
前記ロボットアームの動作を制御する制御手段と、
前記ロボットアームに取り付けられた付記1乃至4のいずれか一付記に記載のロボットハンドと、
を有することを特徴とするケーブル配設装置。
【0073】
(付記6)
前記ケーブルを配設するためのケーブル配設治具を搭載するために前記第1の中心軸に対してZ軸が平行に配置されるように設けられ、前記Z軸に対して直交するX軸およびY軸の2軸で駆動されるX-Yステージを備える、
ことを特徴とする付記5に記載のケーブル配設装置。
【符号の説明】
【0074】
10 フレーム
11 第1の中心軸
20 第1のベアリング
30 第1の筒状部材
40 第1の滑車
41 第2の中心軸
50 第2のベアリング
60 第2の筒状部材
70 第2の滑車
71 第3の中心軸
100、101 ロボットハンド
900 ケーブル
910 ケーブル配設治具
920 ピン
950 ワイヤハーネス
1000、1001 ケーブル配設装置
1100 ロボットアーム
1200 制御手段
1300 リール