(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024011350
(43)【公開日】2024-01-25
(54)【発明の名称】ウォッシャ
(51)【国際特許分類】
B60S 1/48 20060101AFI20240118BHJP
B08B 3/02 20060101ALI20240118BHJP
B05B 1/10 20060101ALI20240118BHJP
B05B 1/02 20060101ALI20240118BHJP
【FI】
B60S1/48 Z
B08B3/02 G
B05B1/10
B05B1/02 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022113278
(22)【出願日】2022-07-14
(71)【出願人】
【識別番号】000227711
【氏名又は名称】日邦産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096116
【弁理士】
【氏名又は名称】松原 等
(72)【発明者】
【氏名】土岐 良元
(72)【発明者】
【氏名】岩田 全弘
(72)【発明者】
【氏名】河村 学
【テーマコード(参考)】
3B201
3D225
4F033
【Fターム(参考)】
3B201AA46
3B201AB53
3B201BB32
3B201BB62
3B201BB92
3B201BB98
3D225AA01
3D225AA04
3D225AD02
3D225AD03
3D225AD12
3D225AF07
4F033AA04
4F033BA03
4F033DA01
4F033EA01
4F033NA01
(57)【要約】
【課題】気泡発生構造が室外から見えないようにして外観の低下を防ぐとともに、気泡発生構造でウォッシャ液中に発生する気泡をナノバブルとすることにより吐出部材までの移動中にほとんど消滅しないようにし、高い洗浄能力を得る。
【解決手段】 ウォッシャは、室内に配されウォッシャ液中にナノバブルを発生させるナノバブル発生構造30,40と、室外に配され室外の洗浄対象物にウォッシャ液を吐出する吐出部材31,41と、ナノバブル発生構造から吐出部材へウォッシャ液を導く配管32,42とを含む。ナノバブル発生構造は、流入部と絞り部と流出部とを含むベンチュリー通路を備え、絞り部は断面が多角形の穴からなり、流入部は流れ方向に従い縮径して絞り部に接続する断面が多角形の角錐内面からなるものが好ましい。各多角形は、三角形、四角形、五角形又は六角形が好ましい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
室内に配され、ウォッシャ液中にナノバブルを発生させるナノバブル発生構造(30,40)と、
室外に配され、室外の洗浄対象物にウォッシャ液を吐出する吐出部材(31,41)と、
ナノバブル発生構造から吐出部材へウォッシャ液を導く配管(32,42)と
を含むことを特徴とするウォッシャ。
【請求項2】
室内は、乗物内であり、
室外は、乗物外であり、
洗浄対象物は、乗物のフロントウインドウ、リヤウインドウ又はヘッドライトである請求項1記載のウォッシャ。
【請求項3】
ナノバブル発生構造は、液体の流れ方向の順に流入部(3)と絞り部(4)と流出部(5)とを含むベンチュリー通路(2)を備え、液体がベンチュリー通路(2)を流れるときに生じるキャビテーションによりウォッシャ液中にナノバブルを発生させるものである請求項1記載のウォッシャ。
【請求項4】
絞り部(4)は断面が多角形の穴からなり、流入部(3)は流れ方向に従い縮径して絞り部(4)に接続する断面が多角形の角錐内面からなり、流出部(5)は絞り部(4)よりも拡径した部分を含む請求項3記載のウォッシャ。
【請求項5】
流出部(5)は、絞り部(4)に接続して流れ方向に従い拡径する断面が多角形の角錐内面からなる請求項4記載のウォッシャ。
【請求項6】
前記各多角形は、三角形、四角形、五角形又は六角形である請求項4記載のウォッシャ。
【請求項7】
入口側端面と出口側端面とを有するブロック体(1)に、一つのベンチュリー通路(2)を備えている請求項3~6のいずれか一項に記載のウォッシャ。
【請求項8】
入口側端面と出口側端面とを有するブロック体(1)に、複数のベンチュリー通路(2)を並列に備えている請求項3~6のいずれか一項に記載のウォッシャ。
【請求項9】
複数の流入部(3)の入口側端面での開口は、隣り合う開口の一辺どうしが共有又は平行するように配されている請求項8記載のウォッシャ。
【請求項10】
複数の流出部(5)の出口側端面での開口は、隣り合う開口の一辺どうしが共有又は平行するように配されている請求項8記載のウォッシャ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウォッシャ液を吐出して洗浄対象物を洗浄するウォッシャに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、タンクに貯溜されたウォッシャ液をポンプにより気泡部(気泡発生構造。具体的にはベンチュリー通路)に送り、気泡部を流れるときに生じるキャビテーションによりウォッシャ液中に気泡(マイクロバブル)を発生させ、その気泡を含んだウォッシャ液をワイパーアームに設けられた供給部(ノズル)からフロントウインドウに供給し、気泡によって洗浄能力を高めるシステムが記載されている。同システムの第一の実施形態では気泡部が配管接続部材に設けられているが、それでは供給部までの移動中にウォッシャ液中の気泡が消滅する。そこで、第二の実施形態では気泡部が供給部と一体化されてワイパーアーム設けられており、フロントウインドウへの供給直前に気泡を含ませるので、移動中の気泡の消滅を抑制できるとされている。
【0003】
特許文献2には、上記特許文献1の第二の実施形態のように気泡部が供給部と一体化されてワイパーアームに設けられ、さらに気泡部に旋回流発生部が付加された気泡発生装置が記載されている。旋回流発生部で旋回流としたウォッシャ液を気泡部に流すことにより、気泡(マイクロバブル)をより効率良く発生させられるとされている。
【0004】
ここで、ベンチュリー通路は、液体の流れ方向の順に流入部と絞り部と流出部とを含むものである。液体は、絞り部を通るときに流速が速くなると同時に圧力が上がり、ラッパ部で流速が遅くなると同時に圧力が下がる。この急激な圧力変化で生じるキャビテーションにより気泡が発生する。その気泡の発生効率を高めるために、上記特許文献2の旋回流発生部のほか、特許文献3では複数の円孔を設けた整流板、特許文献4,5では絞り部に突出する衝突部(ねじ部材)、等を付加することが考えられている。
【0005】
なお、特許文献1~5における絞り部(くびれ部)はいずれも、断面が円形の穴からなる。特許文献5には、「絞り孔の軸断面形状はたとえば円形にすることが望ましいが、過度の損失を生じない限り、楕円や正多角形状( 正方形、正六角形、正八角形等) の軸断面形状も可能である」との記載があるが、正多角形状は望ましいものから外れており、よって実施例は円形の例のみである。
【0006】
また、特許文献1~5における流入口(テーパー部)はいずれも、断面が円形の円錐内面からなる。それ以外の形状の流入口については、特許文献5にも記載がない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第6568556号公報
【特許文献2】特開2021-30841号公報
【特許文献3】特開2007-50341号公報
【特許文献4】国際公開第2013/012069号
【特許文献5】特許第6182715号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1の第一の実施形態のように、気泡部が配管接続部材に設けられていると、ワイパーアームに設けられた供給部までの移動中にウォッシャ液中の気泡(マイクロバブル)の一部が消滅し、洗浄能力が低下するという問題がある。
【0009】
他方、特許文献1の第二の実施形態や特許文献2のように、気泡部がワイパーアームに設けられていると、上記気泡の消滅は抑制されるが、気泡部はその構造上ある程度大きくならざるを得ないため、気泡部が外から目立って外観を低下させるという問題があった。また、気泡部の重量がワイパーアームの動きを悪くするという問題もある。
【0010】
そこで、本発明の主たる目的は、気泡発生構造が室外から見えないようにして外観の低下を防ぐとともに、気泡発生構造でウォッシャ液中に発生する気泡をナノバブルとすることにより吐出部材までの移動中にほとんど消滅しないようにし、高い洗浄能力を得ることにある。
【0011】
また、特許文献2~5のように、気泡の発生効率を高めようとして旋回流発生部や整流板や衝突部(ねじ部材)を設けると構造が複雑化することから、本発明のさらなる目的は、シンプルな構造のベンチュリー通路によりナノバブルの発生数を増やすことにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
微細気泡(ファインバブル)には、直径が1μm以上100μm未満のマイクロバブルと、直径が1μm未満のナノバブルとがある。本発明は、ナノバブルが、マイクロバブルと比べて、液体中で消滅しにくく長時間残ることに着目し、さらに検討を重ねてなされたものである。
【0013】
本発明のウォッシャは、
室内に配され、ウォッシャ液中にナノバブルを発生させるナノバブル発生構造と、
室外に配され、室外の洗浄対象物にウォッシャ液を吐出する吐出部材と、
ナノバブル発生構造から吐出部材へウォッシャ液を導く配管と
を含むことを特徴とする。
【0014】
[作用]
ナノバブル発生構造は室内に配されているので、外から見えないようにすることができる。また、ナノバブル発生構造でウォッシャ液中に発生したナノバブルは、室外に配した吐出部材までの配管内の移動中にほとんど消滅しないため、十分な数量がウォッシャ液とともに吐出部材から洗浄対象物に吐出される。
【発明の効果】
【0015】
本発明のウォッシャによれば、気泡発生構造が室外から見えないようにして外観の低下を防ぐことができるとともに、気泡発生構造でウォッシャ液中に発生する気泡を、ナノバブルとすることにより吐出部材までの移動中にほとんど消滅しないようにし、高い洗浄能力を得ることができる。
【0016】
さらに、後述するように、ナノバブル発生構造がベンチュリー通路を備え、ベンチュリー通路の絞り部は断面が多角形の穴からなり、流入部は流れ方向に従い縮径して絞り部に接続する断面が多角形の角錐内面からなるものとすれば、シンプルな構造のベンチュリー通路によりナノバブルの発生数を増やすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は実施形態の自動車用ウォッシャを示す斜視図である。
【
図2】
図2は同実施形態に使用する実施例1のナノバブル発生構造の実験概略図及び部分拡大断面図である。
【
図3】
図3は実施例1のナノバブル発生構造の(a)は正面図、(b)は(a)の縦断面図、(c)は斜視図である。
【
図4】
図4は実施例2のナノバブル発生構造の(a)は正面図、(b)は(a)の縦断面図、(c)は斜視図である。
【
図5】
図5は実施例3のナノバブル発生構造の(a)は正面図、(b)は(a)の縦断面図、(c)は斜視図である。
【
図6】
図6は実施例4のナノバブル発生構造の(a)は正面図、(b)は(a)の縦断面図、(c)は斜視図である。
【
図7】
図7は実施例1~4のナノバブル発生実験結果を示すグラフ図である。
【
図8】
図8は実施例5のナノバブル発生構造の(a)は正面図、(b)は(a)の縦断面図、(c)は斜視図である。
【
図9】
図9(a)~(e)は実施例5の変更例の正面図である。
【
図10】
図10は実施例6のナノバブル発生構造の(a)は正面図、(b)は(a)の縦断面図、(c)は斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
1.室内・室外
室内及び室外としては、特に限定されないが、それぞれ乗物の室内及び室外や、建物の室内及び室外を例示できる。乗物としては、自動車、鉄道車輌、航空機、船舶等を例示できる。乗物の室内としては、機関室内、トランク内、乗員室内等を例示できる。
【0019】
2.洗浄対象物
洗浄対象物としては、特に限定されないが、乗物のフロントウインドウ、リヤウインドウ又はヘッドライト、建物の窓等を例示できる。
【0020】
3.ナノバブル発生構造
ナノバブル発生構造としては、特に限定されないが、気体を液体に混合して微細化する混合方式の構造や、液体中からキャビテーションにより微細気泡を発生させるキャビテーション方式の構造を例示できる。キャビテーション(空洞現象)は、液体の流れの中で圧力が飽和水蒸気圧より低くなった瞬間に泡が発生する物理現象であり、一種の沸騰現象である。キャビテーション方式は、混合方式と比べて、気体を混合させるための構造が不要である分、シンプルであるという特長がある。
【0021】
よって、ナノバブル発生構造は、液体の流れ方向の順に流入部と絞り部と流出部とを含むベンチュリー通路を備え、液体がベンチュリー通路を流れるときに生じるキャビテーションにより液体中からナノバブルを発生させるものであることが好ましい。
【0022】
ベンチュリー通路としては、次の(ア)(イ)を例示できるが、下の理由から(イ)が好ましい。
(ア)絞り部は断面が円形の穴からなり、流入部は流れ方向に従い縮径して絞り部に接続する断面が円形の円錐内面からなり、流出部は絞り部よりも拡径した部分を含むもの。なお、本発明明細書において「円錐内面」は、円錐の頂部が切れてなる部分円錐状の内面をいう。
(イ)絞り部は断面が多角形の穴からなり、流入部は流れ方向に従い縮径して絞り部に接続する断面が多角形の角錐内面からなり、流出部は絞り部よりも拡径した部分を含むもの。なお、本明細書において「角錐内面」は、角錐の頂部が切れてなる部分角錐状の内面をいう。
【0023】
液体が、断面が多角形の穴からなる絞り部を通過するとき、円形の穴からなる絞り部を通過するときと比べて、ナノバブルの発生数が増える。これは、多角形の穴の角部分で乱流や二次流れ(主流と直角な方向に引き起こされる流れ)が生じるためであると考えられる。
さらに、液体が、絞り部の前にある断面が多角形の角錐内面からなる流入部を通過するときにも、円錐内面からなる流入部を通過するときと比べて、乱流や二次流れが生じ、その乱流や二次流れを伴った液体が上記絞り部でさらに乱流や二次流れを増大させるため、ナノバブルを非常に効率よく発生すると考えられる。
このような断面が多角形のベンチュリー通路は、断面が円形のベンチュリー通路に対して僅かな形状変化があるにすぎず、シンプルな構造を保っている。
【0024】
流出部は、特に限定されず、次の(カ)(キ)を例示できるが、(キ)が好ましい。
(カ)断面が円形の穴からなる絞り部に接続して流れ方向に従い拡径する断面が円形の円錐内面又は多角形の角錐内面からなるもの、又は該絞り部に対して段付き状に拡径する内面からなるもの。
(キ)断面が多角形の穴からなる絞り部に接続して流れ方向に従い拡径する断面が多角形の角錐内面からなるもの、又は該絞り部に対して段付き状に拡径する内面からなるもの。
【0025】
流入部、絞り部及び流出部における前記各「多角形」としては、特に限定されないが、三角形、四角形、五角形又は六角形が好ましく、三角形、四角形又は五角形がより好ましく、三角形又は四角形がさらに好ましく、三角形が最も好ましい。これは、例えば正多角形における一つの角の内角は、円形に近い正八角形で135°であるのに対し、正六角形で120°、正五角形で108°、正四角形で90°、正三角形で60°と小さく(鋭く)なり、これが鋭いほど上述した角部分での乱流や二次流れが強く生じるからである。
【0026】
よって、三角形としては、特に限定されないが、鈍角を含まない鋭角三角形(正三角形等)又は直角三角形が好ましいということができる。
【0027】
ナノバブル発生構造の形態としては、次の態様を例示できる。
(ア)液体流路の途中部に、形態を問わずベンチュリー通路を一つ備えている態様
(イ)入口側端面と出口側端面とを有するブロック体に、一つのベンチュリー通路を備えている態様。
(ウ)入口側端面と出口側端面とを有するブロック体に、複数のベンチュリー通路を並列に備えている態様。
【0028】
態様(ウ)において、複数の流入部の入口側端面での開口は、隣り合う開口の一辺どうしが共有(辺間に該入口側端面の一部が実質的に無い)又は平行(辺間に該入口側端面の一部が有る)するように配されていることが好ましく、平行する場合の辺間距離は2mm以下が好ましい(より好ましくは1mm以下)。入口側端面における開口と開口との間の面積(これは流動損失になる)を減少させることができるからである。
【0029】
態様(ウ)において、複数の流出部の出口側端面での開口は、隣り合う開口の一辺どうしが共有又は平行するように配されていることが好ましく、平行する場合の辺間距離は2mm以下が好ましい(より好ましくは1mm以下)。出口側端面における開口と開口との間の面積(これは流動損失になる)を減少させることができるからである。
【0030】
絞り部の内断面積としては、特に限定されないが、0.025~260mm2 を例示でき、流動抵抗とコンパクト性の観点からは0.1~50mm2 が好ましい。
流入部の開口断面積としては、特に限定されないが、上記絞り部の内断面積に対して4~40倍を例示できる。
流出部の開口断面積としては、特に限定されないが、上記絞り部の内断面積に対して4~40倍を例示できる。
流入部の流れ方向に対するテーパー角度(多角錐の辺のテーパー角度。以下同じ。)としては、特に限定されないが、10~70°を例示できる。
流出部の流れ方向に対するテーパー角度(多角錐の辺のテーパー角度。以下同じ。)としては、特に限定されないが、10~70°を例示できる。
【0031】
4.吐出部材
吐出部材としては、特に限定されないが、ウォッシャ液をストレート状に吐出するノズルや単純孔、ウォッシャ液を複数の液滴状に吐出するノズル、ウォッシャ液を霧状に吐出するノズル等を例示できる。
【0032】
[実施形態]
次に、本発明を自動車用ウォッシャに具体化した実施形態について、
図1を参照して説明する。なお、実施形態で記す洗浄対象物、構造、形状等は例示であり、発明の要旨から逸脱しない範囲で適宜変更できる。
【0033】
実施形態の自動車用ウォッシャは、
自動車12のボンネット13下の機関室14内に配された、ウォッシャ液を貯溜するタンク18、スイッチ(図示略)により入切されるポンプ19、並びに、ウォッシャ液中にナノバブルを発生させる第一ナノバブル発生構造30及び第二ナノバブル発生構造40と、
ボンネット13又はカウルトップに取り付けられて車外に配され、車外の洗浄対象物であるフロントウインドウ15にウォッシャ液を吐出する第一吐出部材31と、
バンパー16に昇降可能に取り付けられて車外に配され、車外の洗浄対象物であるヘッドライト17にウォッシャ液を吐出する第二吐出部材41と、
タンク18から、ポンプ19及び第一ナノバブル発生構造30を経て、第一吐出部材31へウォッシャ液を導く第一配管32と、
タンク18から、ポンプ19及び第二ナノバブル発生構造40を経て、第二吐出部材41へウォッシャ液を導く第二配管42とを含み構成されている。
【0034】
すなわち、タンク18に貯溜されたウォッシャ液はポンプ19によって2系統に流出し、第一ナノバブル発生構造30と第一吐出部材31と第一配管32とを含み構成されるフロントウインドウ・ウォッシャと、第二ナノバブル発生構造40と第二吐出部材41と第二配管42とを含み構成されるヘッドライト・ウォッシャとが並設されている。33はフロントウインドウのワイパー装置である。
【0035】
第一吐出部材31は二つが左右に離れて設けられており、これに対応して第一配管32は途中で分岐している。
第二吐出部材41も二つが左右に離れて設けられており、これに対応して第二配管42は途中で分岐している。
【0036】
各ナノバブル発生構造30,40は機関室14内に配されているので、外から見えないようにすることができる。また、各ナノバブル発生構造30,40でウォッシャ液中に発生したナノバブルは、車外に配した各吐出部材31,41までの各配管32,42内の移動中にほとんど消滅しないため、十分な数量がウォッシャ液とともに各吐出部材31,41から各洗浄対象物に吐出され、洗浄作用を高める。
【実施例0037】
[実施例1~4]
上記[実施形態]の第一ナノバブル発生構造30及び第二ナノバブル発生構造40として使用する、実施例1~4のナノバブル発生構造について、
図2~
図7を参照して説明する。なお、実施例で記す構造、材料、数値、形状及び寸法は例示であり、発明の要旨から逸脱しない範囲で適宜変更できる。
【0038】
実施例1~4のナノバブル発生構造は、
図2に示すように、入口側端面と出口側端面とを有するブロック体1にベンチュリー通路2を備え、液体がベンチュリー通路2を流れるときに生じるキャビテーションにより液体中からナノバブルを発生させるものである。ベンチュリー通路2は、液体の流れ方向の順に流入部3と絞り部4と流出部5とを含む。
【0039】
ブロック体1は、プラスチックにより成形された直径8.5mm、長さ10mmの円柱状のものである。ブロック体1は、円筒状のホルダー6を介して、ホース7で構成される液体流路の途中部に取り付けられている。ホルダー6の内周面は、内直径8.5mmの中央部と、内直径8.0mmの両端部とからなり、中央部にブロック体1が抱持されている。ホルダー6の両端部外周に、ホース7が挿着されている。
【0040】
実施例1~4は、ベンチュリー通路2の形状寸法においてのみ互いに相違し、その他は共通であるから、
図3~
図6にはベンチュリー通路2を備えたブロック体1のみを図示する。
【0041】
図3に示す実施例1のベンチュリー通路2は、絞り部4が、断面が正三角形の穴からなり、正三角形の一辺は2.45mm、絞り部4の長さは1mmである。
流入部3は、流れ方向に従い縮径して絞り部4に各角を合致させて接続する断面が正三角形の三角錐内面からなり、流入部3の入口側端面での開口の一辺は7.0mm、流入部3の長さは4.5mm、流入部3の流れ方向に対するテーパー角度は最大部位で30.3°である。
流出部5は、絞り部4に各角を合致させて接続して流れ方向に従い拡径する断面が正三角形の三角錐内面からなり、流出部5の出口側端面での開口の一辺は7.0mm、流出部5の長さは4.5mm、流出部5の流れ方向に対するテーパー角度は最大部位で30.3°である。すなわち、流入部3と流出部5は形状寸法が対称である。
【0042】
図4に示す実施例2のベンチュリー通路2は、絞り部4が、断面が正四角形(正方形)の穴からなり、正四角形の一辺は1.6mm、絞り部4の長さは1mmである。
流入部3は、流れ方向に従い縮径して絞り部4に各角を合致させて接続する断面が正四角形の四角錐内面からなり、流入部3の入口側端面での開口の一辺は4.6mm、流入部3の長さは4.5mm、流入部3の流れ方向に対するテーパー角度は最大部位で25.3°である。
流出部5は、絞り部4に各角を合致させて接続して流れ方向に従い拡径する断面が正四角形の四角錐内面からなり、流出部5の出口側端面での開口の一辺は4.6mm、流出部5の長さは4.5mm、流出部5の流れ方向に対するテーパー角度は最大部位で25.3°である。すなわち、流入部3と流出部5は形状寸法が対称である。
【0043】
図5に示す実施例3のベンチュリー通路2は、絞り部4が、断面が正六角形の穴からなり、正六角形の一辺は1mm、絞り部4の長さは1mmである。
流入部3は、流れ方向に従い縮径して絞り部4に各角を合致させて接続する断面が正六角形の六角錐内面からなり、流入部3の入口側端面での開口の一辺は2.85mm、流入部3の長さは4.5mm、流入部3の流れ方向に対するテーパー角度は最大部位で22.4°である。
流出部5は、絞り部4に各角を合致させて接続して流れ方向に従い拡径する断面が正六角形の六角錐内面からなり、流出部5の出口側端面での開口の一辺は2.85mm、流出部5の長さは4.5mm、流出部5の流れ方向に対するテーパー角度は最大部位で22.4°である。すなわち、流入部3と流出部5は形状寸法が対称である。
【0044】
図6に示す実施例4のベンチュリー通路2は、絞り部4が、断面が円形の穴からなり、円の直径は1.8mm、絞り部4の長さは1mmである。
流入部3は、流れ方向に従い縮径して絞り部4に接続する断面が円形の円錐内面からなり、流入部3の入口側端面での開口の直径は5.2mm、流入部3の長さは4.5mm、流入部3の流れ方向に対するテーパー角度は20.7°である。
流出部5は、絞り部4に接続して流れ方向に従い拡径する断面が円形の円錐内面からなり、流出部5の出口側端面での開口の直径は5.2mm、流出部5の長さは4.5mm、流出部5の流れ方向に対するテーパー角度は20.7°である。すなわち、流入部3と流出部5は形状寸法が対称である。
【0045】
次の表1に示すように、流入部3の開口断面積及び絞り部4の内断面積は、実施例1~4の間で実質的に同一であり、流入部3の開口断面積は絞り部4の内断面積に対して約8倍である。
【0046】
【0047】
[ナノバブル発生実験]
以上のように構成された実施例1~4のナノバブル発生構造について、ナノバブル発生実験を行った。
・
図2に示すように、水(水道水)を水槽8からポンプ9によりホース7→ベンチュリー通路2→ホース7の順に流し、ベンチュリー通路2で発生した微細気泡を含むサンプル水11を該ホース7から貯留槽10に貯溜した。水圧は0.05MPaと0.2MPaの二通りとし、各例における水流量を表1に記した。
・貯溜した直後のサンプル水11を測定用セルに汲み取って日本カンタム・デザイン株式会社製の測定装置(装置名:ナノ粒子解析システム・ナノサイトLM20)に設置し、同装置により自動的にサンプル水11中の微細気泡の個数を測定するとともに、粒度分布からピーク泡径を測定した。
【0048】
実施例1~4のいずれにおいても、ピーク泡径は100~200nm程度であり、サンプル水11中の微細気泡が比較的小径のナノバブルであることを確認した。これは、ベンチュリー通路2ではマイクロバブルとナノバブルとが発生していても、サンプル水11中でマイクロバブルと比較的大径のナノバブルは早期に浮上して消滅してしまい、比較的小径のナノバブルが残っていることによるものと考えられる。
【0049】
なお、本実験前に、実施例3と同じ六角形タイプのベンチュリー通路(但し流入部3の開口断面積は10.4mm2 )に手動式ポンプで水を通す予備試験を行い、同じく貯溜した直後と2週間経過後の各サンプル水について微細気泡の個数を測定したところ、2週間経過後のサンプル水中にも上記ナノバブルは(貯溜した直後に対して個数が36%減少したが)十分な数量が保持されていた。すなわち、上記ナノバブルは分単位ではほとんど減少しない。このことから、実施例1~4で、貯溜した直後のサンプル水11で測定したナノバブルの個数は、ベンチュリー通路2で発生した時のピーク泡径100~200nm程度以下のナノバブルの発生個数とみなせると考えられる。
【0050】
上記のとおり、貯溜した直後のサンプル水11で測定したナノバブルの個数(発生個数)は、表1と
図7に示すとおりであり、実施例1>実施例2>実施例3>実施例4の順であった。
【0051】
[実施例1~4の変更例]
実施例1~4のブロック体1及びベンチュリー通路2の寸法は適宜変更することができ、次に実施例1~3の変更例を例示する。
(ア)ブロック体1の直径を20mmにして、実施例1の絞り部4の一辺を4.6mm、流入部3の開口の一辺を22mmにしたり、実施例2の絞り部4の一辺を3mm、流入部3の開口の一辺を14.5mmにしたり、実施例3の絞り部4の一辺を1.88mm、流入部3の開口の一辺を9mmにしたりする。これらの各絞り部4の内断面積は約9mm2 である。
(イ)ブロック体1の直径を20mmにして、実施例1の絞り部4の一辺を6.5mm、流入部3の開口の一辺を22mmにしたり(この場合、流入部3の三角形開口の角部がブロック体に収まらずに欠けるが、このような態様も本発明に含まれる。)、実施例2の絞り部4の一辺を4.3mm、流入部3の開口の一辺を14.5mmにしたり、実施例3の絞り部4の一辺を2.65mm、流入部3の開口の一辺を9mmにしたりする。これらの各絞り部4の内断面積は約18mm2 である。
【0052】
[実施例5]
次に、実施例5のナノバブル発生構造は、
図8に示すように、ブロック体1に六つのベンチュリー通路2を並列に備えている点において実施例1と相違するものであり、その他は基本的に実施例1と共通である。一つ一つのベンチュリー通路2の流入部3、絞り部4及び流出部5の各断面形状は正三角形であり、各部の寸法は適宜設定できる。六つの流入部3の入口側端面での開口は、隣り合う開口の一辺どうしが共有又は平行するように配されており、該辺間距離は1mm以下である。六つの流出部5の出口側端面での開口は、隣り合う開口の一辺どうしが共有又は平行するように配されており、該辺間距離は1mm以下である。
【0053】
[実施例5の変更例]
実施例5のベンチュリー通路2の数や断面形状は、例えば
図9(a)~(e)のように、適宜変更することができる。
(a)はベンチュリー通路2の数を二つとし、流入部3、絞り部4及び流出部5の各断面形状を直角三角形とした例である。
(b)はベンチュリー通路2の数を四つとし、流入部3、絞り部4及び流出部5の各断面形状を直角三角形とした例である。
(c)はベンチュリー通路2の数を五つとし、流入部3、絞り部4及び流出部5の各断面形状を鋭角三角形とした例である。
(d)はベンチュリー通路2の数を八つとし、流入部3、絞り部4及び流出部5の各断面形状を鋭角三角形とした例である。
(e)はベンチュリー通路2の数を四つとし、流入部3、絞り部4及び流出部5の各断面形状が正三角形のものと直角三角形のものとを混在させた例である。
【0054】
[実施例6]
次に、実施例6のナノバブル発生構造は、
図10に示すように、ブロック体1に七つのベンチュリー通路2を並列に備えている点と、一つ一つのベンチュリー通路2の流入部3、絞り部4及び流出部5の各断面形状は正六角形であにおいて実施例1と相違するものであり、その他は基本的に実施例1と共通である。ベンチュリー通路2の各部の寸法は適宜設定できる。七つの流入部3の入口側端面での開口は、隣り合う開口の一辺どうしが共有又は平行するように配されており、該辺間距離は1mm以下である。七つの流出部5の出口側端面での開口は、隣り合う開口の一辺どうしが共有又は平行するように配されており、該辺間距離は1mm以下である。
【0055】
これら、実施例1~3の変更例、実施例5及びその変更例、並びに実施例6によっても、断面形状が円形のベンチュリー通路と比べて、ナノバブルの発生数を増やすことができる。
【0056】
その他、各実施例(変更例を含む)によれば、次の作用効果も得られる。
(ア)ベンチュリー通路2を備える1個のブロック体1(モジュール)は、構造が非常にシンプルであり、部品点数も少なく、量産性に優れており、プラスチックの射出成形などで容易に製造することができる。
(イ)寸法の設計・製造の自由度が高く、数mm~数十mm程度の小さなブロック体1も製造することができるため、多種のウォッシャに容易に搭載することができ、ナノバブル生成機能を簡単に付与することができる。
(ウ)搭載場所、水圧、水流量等に応じて、ベンチュリー通路2の数及び断面形状を調整することにより、用途に応じたナノバブル発生構造を作成することができる。
【0057】
なお、本発明は前記実施例に限定されるものではなく、発明の要旨から逸脱しない範囲で適宜変更して具体化することができる。