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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024113501
(43)【公開日】2024-08-22
(54)【発明の名称】ニーガード構造
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/045 20060101AFI20240815BHJP
   B60K 35/70 20240101ALI20240815BHJP
【FI】
B60R21/045 332
B60K37/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023018531
(22)【出願日】2023-02-09
(71)【出願人】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大須賀 真
【テーマコード(参考)】
3D344
【Fターム(参考)】
3D344AA07
3D344AB01
3D344AC07
3D344AC13
(57)【要約】
【課題】 車両衝突時のエネルギー吸収性能に優れたニーガード構造を提供する。
【解決手段】 ニーガード構造10は、車両1に設けられるものであり、インパネリーンフォース2と乗員膝部Kの車両前方に位置するロアパネル4との間に設けられるエネルギー吸収部材11と、エネルギー吸収部材11よりも車両前方に設けられる荷重受け部14,15,16と、エネルギー吸収部材11をガイドするガイド部17と、を備え、ガイド部17は、乗員膝部Kからエネルギー吸収部材11に衝撃が入力されたとき、エネルギー吸収部材11が車両上方へ移動するのを規制した状態でエネルギー吸収部材11を荷重受け部14,15,16に向けてガイドするように構成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に設けられるニーガード構造であって、
インパネリーンフォースと乗員膝部の車両前方に位置するロアパネルとの間に設けられるエネルギー吸収部材と、
上記エネルギー吸収部材よりも車両前方に設けられる荷重受け部と、
上記エネルギー吸収部材をガイドするガイド部と、
を備え、
上記ガイド部は、上記乗員膝部から上記エネルギー吸収部材に衝撃が入力されたとき、上記エネルギー吸収部材が車両上方へ移動するのを規制した状態で上記エネルギー吸収部材を上記荷重受け部に向けてガイドするように構成されている、ニーガード構造。
【請求項2】
上記ガイド部は、上記ロアパネルに上記エネルギー吸収部材の直上に位置するように設けられており、上記エネルギー吸収部材の上面に対向して車両前後方向に延びる摺動面を有する、請求項1に記載のニーガード構造。
【請求項3】
上記ガイド部よりも車両上方に設けられる規制部を備え、
上記ガイド部は、上記エネルギー吸収部材から受ける上向きの入力荷重が閾値を上回る場合に上記ロアパネルにおいて座屈するように構成されており、
上記規制部は、上記ガイド部が座屈した場合に上記ガイド部に代わり上記エネルギー吸収部材の車両上方への移動を規制するように構成されている、請求項2に記載のニーガード構造。
【請求項4】
上記荷重受け部は、上記インパネリーンフォース側から個別に延びる複数のブラケットを有し、上記複数のブラケットが車両前後方向に互いに隙間を隔てて配置されている、請求項1~3のいずれか一項に記載のニーガード構造。
【請求項5】
上記荷重受け部は、上記複数のブラケットのうちの少なくとも1つに接合された接合部材を有し、上記接合部材には上記隙間に介在する介在部が設けられている、請求項4に記載のニーガード構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に設けられるニーガード構造に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、この種のニーガード構造が開示されている。このニーガード構造は、車両衝突時に乗員膝部の衝撃を吸収するエネルギー吸収部材を備えている。エネルギー吸収部材は、インストルメントパネルとステアリングサポートビームとの間に配置されている。このエネルギー吸収部材は、ブラケットを介してインストルメントパネルに接続されるとともに、ステアリングサポートビームに支持されるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-88974号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種のニーガード構造の設計においては、乗員の体格の違いなどによってエネルギー吸収部材に対する乗員膝部の相対位置や衝撃の入力方向などの条件が変わる点に留意する必要がある。しかしながら、引用文献1に開示のニーガード構造は、この点を考慮したものではない。このため、乗員の体格の違いに伴って車両衝突時のエネルギー吸収性能にバラツキが生じ得る。
【0005】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、車両衝突時のエネルギー吸収性能に優れたニーガード構造を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、
車両に設けられるニーガード構造であって、
インパネリーンフォースと乗員膝部の車両前方に位置するロアパネルとの間に設けられるエネルギー吸収部材と、
上記エネルギー吸収部材よりも車両前方に設けられる荷重受け部と、
上記エネルギー吸収部材をガイドするガイド部と、
を備え、
上記ガイド部は、上記乗員膝部から上記エネルギー吸収部材に衝撃が入力されたとき、上記エネルギー吸収部材が車両上方へ移動するのを規制した状態で上記エネルギー吸収部材を上記荷重受け部に向けてガイドするように構成されている、ニーガード構造、
にある。
【発明の効果】
【0007】
上述の態様のニーガード構造において、インパネリーンフォースとロアパネルとの間に設けられるエネルギー吸収部材は、ガイド部によって荷重受け部に向けてガイドされる。このとき、ガイド部は、エネルギー吸収部材が車両上方へ移動するのを規制する機能を有する。これにより、乗員の体格の違いなどによってエネルギー吸収部材に対する乗員膝部の相対位置や衝撃の入力方向などの条件が変わる場合であっても、エネルギー吸収部材を荷重受け部に向けて効率よくガイドすることができる。そして、エネルギー吸収部材の入力荷重が荷重受け部で受けられる。
【0008】
従って、上述の態様によれば、車両衝突時のエネルギー吸収性能に優れたニーガード構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態1のニーガード構造を含む車体構造を車両側方から見た側面図。
図2図1のニーガード構造のうちインパネリーンフォースの周辺部の斜視図。
図3図1のIII-III線矢視断面図。
図4図1中のエネルギー吸収部材をロアパネルの裏面側から見た図。
図5】第1体格の乗員の場合のニーガード構造の第1段階の動作を示す側面図。
図6】第1体格の乗員の場合のニーガード構造の第2段階の動作を示す側面図。
図7】第1体格の乗員の場合のニーガード構造の第3段階の動作を示す側面図。
図8】第2体格の乗員の場合のニーガード構造の第1段階の動作を示す側面図。
図9】第2体格の乗員の場合のニーガード構造の第2段階の動作を示す側面図。
図10】第2体格の乗員の場合のニーガード構造の第3段階の動作を示す側面図。
図11】第2体格の乗員の場合のニーガード構造の第4段階の動作を示す側面図。
図12】第3体格の乗員の場合のニーガード構造の第1段階の動作を示す側面図。
図13】第3体格の乗員の場合のニーガード構造の第2段階の動作を示す側面図。
図14】第3体格の乗員の場合のニーガード構造の第3段階の動作を示す側面図。
図15】第3体格の乗員の場合のニーガード構造の第4段階の動作を示す側面図。
図16】第3体格の乗員の場合のニーガード構造の第5段階の動作を示す側面図。
図17】実施形態2のニーガード構造を含む車体構造を車両側方から見た側面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
上述の態様のニーガード構造において、上記ガイド部は、上記ロアパネルに上記エネルギー吸収部材の直上に位置するように設けられており、上記エネルギー吸収部材の上面に対向して車両前後方向に延びる摺動面を有するのが好ましい。
【0011】
このニーガード構造によれば、車両衝突時にエネルギー吸収部材の上面がガイド部の摺動面に接触したのち、エネルギー吸収部材がこの摺動面を車両前方に摺動する。これにより、エネルギー吸収部材をガイド部の摺動面を利用して荷重受け部に向けて円滑にガイドすることができる。
【0012】
上述の態様のニーガード構造は、上記ガイド部よりも車両上方に設けられる規制部を備え、上記ガイド部は、上記エネルギー吸収部材から受ける上向きの入力荷重が閾値を上回る場合に上記ロアパネルにおいて座屈するように構成されており、上記規制部は、上記ガイド部が座屈した場合に上記ガイド部に代わり上記エネルギー吸収部材の車両上方への移動を規制するように構成されているのが好ましい。
【0013】
このニーガード構造によれば、乗員の体格の違いなどによってエネルギー吸収部材の入力荷重が大きくなりガイド部が座屈した場合でも、エネルギー吸収部材の車両上方への移動を規制部によって規制できる。これにより、エネルギー吸収部材の入力荷重の変化に対応して、エネルギー吸収部材を荷重受け部に向けて確実にガイドすることができる。
【0014】
上述の態様のニーガード構造において、上記荷重受け部は、上記インパネリーンフォース側から個別に延びる複数のブラケットを有し、上記複数のブラケットが車両前後方向に互いに隙間を隔てて配置されているのが好ましい。
【0015】
このニーガード構造によれば、車両前後方向に互いに隙間を隔てて配置された複数のブラケットを使用して、エネルギー吸収部材の入力荷重を受けることができる。すなわち、エネルギー吸収部材の入力荷重は、多層配置された複数のブラケットによって複数段階で受けられる。この場合、ブラケットの数や配置を適宜に設定することによって、車両衝突時においてエネルギー吸収部材に対する荷重受け動作をコントロールすることが可能になる。
【0016】
上述の態様のニーガード構造において、上記荷重受け部は、上記複数のブラケットのうちの少なくとも1つに接合された接合部材を有し、上記接合部材には上記隙間に介在する介在部が設けられているのが好ましい。
【0017】
このニーガード構造によれば、接合部材の介在部も複数のブラケットと同様に、エネルギー吸収部材の入力荷重を受ける荷重受け部として使用できる。この場合、ブラケットに対する接合部材の接合強度を適宜に設定することによって、エネルギー吸収部材に対する荷重受け動作にバリエーションを付与できる。
【0018】
以下、本実施形態のニーガード構造について、図面を参照しつつ説明する。
【0019】
なお、本明細書の図面では、特に断わらない限り、車両前方を矢印FRで示し、車両上方を矢印UPで示し、車両内方を矢印INで示すものとする。
【0020】
(実施形態1)
図1に示されるように、実施形態1のニーガード構造10は、車両1に乗員膝部Kに対応して設けられるものである。このニーガード構造10は、エネルギー吸収部材11と、第1ブラケット14と、第2ブラケット15と、接合部材16と、ガイド部17と、規制部19と、を備えている。
【0021】
エネルギー吸収部材11は、車両1の衝突時に生じるエネルギーを吸収するためのものである。エネルギー吸収部材11は、インパネリーンフォース2とロアパネル4との間に設けられる。エネルギー吸収部材11は、本体部12を有する。本体部12の内部には、格子状のリブ12aが形成されている。
【0022】
ロアパネル4は、運転席に着座した乗員の乗員膝部Kの車両前方に位置する。このロアパネル4は、樹脂材料からなる。ロアパネル4のうち乗員膝部K側の面を表面4aとしたとき、表面4aとは反対側の面である裏面4bにエネルギー吸収部材11が取り付けられている。
【0023】
図1及び図2に示されるように、インパネリーンフォース2は、車幅方向を軸方向X(図2を参照)として延びる断面形状が円形のパイプ部材である。このインパネリーンフォース2は、金属材料からなる。インパネリーンフォース2には、リベット3aによって中間ブラケット3が固定されている。
【0024】
1.荷重受け部の構造
第1ブラケット14は、金属材料からなり、中間ブラケット3にレーザー溶接で接合されている。このため、第1ブラケット14は、中間ブラケット3を介してインパネリーンフォース2に固定されている。第1ブラケット14は、中間ブラケット3との接合部からインパネリーンフォース2の下方の緩衝領域Aに向けて下向きに延びている。したがって、第1ブラケット14は、エネルギー吸収部材11から受ける入力荷重によって、中間ブラケット3との接合部を中心に車両前方へ変形可能に構成されている。なお、必要に応じて、第1ブラケット14をインパネリーンフォース2に直に接合するようにしても良い。
【0025】
第2ブラケット15は、金属材料からなり、インパネリーンフォース2にレーザー溶接で接合されている。第2ブラケット15は、第1ブラケット14と同様に、インパネリーンフォース2との接合部から緩衝領域Aに向けて下向きに延びている。したがって、第2ブラケット15は、エネルギー吸収部材11から受ける入力荷重によって、インパネリーンフォース2との接合部を中心に車両前方へ変形可能に構成されている。
【0026】
このように、第1ブラケット14と第2ブラケット15はいずれも、インパネリーンフォース2側から個別に延びている。ここでいう「インパネリーンフォース2側」には、インパネリーンフォース2に直に接合される態様は勿論、インパネリーンフォース2に接合された別部材に直に接合される態様をも広く包含される。そして、第2ブラケット15は、第1ブラケット14よりも車両前方に配置されている。
【0027】
接合部材16は、金属材料からなり、第2ブラケット15にアーク溶接で接合されている。接合部材16は、第2ブラケット15との接合部16aと、接合部16aから第1ブラケット14と第2ブラケット15との間に介在する介在部16bと、を有する。このため、接合部材16は、エネルギー吸収部材11からの入力荷重を介在部16bで受けることができるように構成されている。
【0028】
図3に示されるように、第1ブラケット14は、エネルギー吸収部材11の前面11b(図1を参照)に対向する対向壁部14aを備えている。対向壁部14aは、車両前後方向を板厚方向とする部位である。
【0029】
第2ブラケット15は、略U字状または略コ字状の断面形状を有している。この第2ブラケット15は、第1ブラケット14と同様に、エネルギー吸収部材11の前面11bに対向し車両前後方向を板厚方向とする対向壁部15aを備えている。第2ブラケット15の対向壁部15aは、第1ブラケット14の対向壁部14aよりも車両前方に隙間Gを隔てて近接配置されている。これにより、省スペースでの荷重受け構造を構築できる。また、第2ブラケット15は、車両前後方向から見たとき、その対向壁部15aが第1ブラケット14の対向壁部14aと部分的に重なり合うように配置されている。
【0030】
接合部材16は、略L字状の断面形状を有している。この接合部材16は、その接合部16aが第2ブラケット15のうち車幅方向を板厚方向とする側壁部15bに接合されており、且つ、その介在部16bが接合部16aから車両後方に延びて隙間Gに介在するように構成されている。すなわち、第1ブラケット14の対向壁部14aよりも車両前方に接合部材16の介在部16bが配置されており、さらに、この介在部16bよりも車両前方に第2ブラケット15の対向壁部15aが配置されている。
【0031】
第1ブラケット14と第2ブラケット15と接合部材16はいずれも、エネルギー吸収部材11よりも車両前方に設けられており、車両1の衝突時にエネルギー吸収部材11(図3中の右側)から入力される荷重入力を受ける荷重受け部としての機能を果たす。したがって、以下の説明では、第1ブラケット14と第2ブラケット15と接合部材16の3つの部材をあわせて「荷重受け部」と称する。
【0032】
2.ガイド部17の構造
図1に示されるように、ガイド部17は、乗員膝部Kからエネルギー吸収部材11に衝撃が入力されたとき、エネルギー吸収部材11が車両上方へ移動するのを規制した状態でエネルギー吸収部材11を荷重受け部に向けてガイドする機能を果たすものである。すなわち、ガイド部17は、エネルギー吸収部材11に対してガイド機能及び規制機能を担うものである。これらの機能を達成するために、ガイド部17は、ロアパネル4にエネルギー吸収部材11の直上に位置するように設けられている。ガイド部17は、車両上下方向を板厚方向として車両前後方向に延びる板状部とされている。
【0033】
ガイド部17は、ロアパネル4に一体成形されており、さらに、ガイド部17の上側に設けられたリブ18で補強されている。ガイド部17には、エネルギー吸収部材11の本体部12の上面12cに対向して車両前後方向に延びる摺動面17aが設けられている。エネルギー吸収部材11は、車両前方に向かう荷重を受けた場合に、本体部12の上面12cがガイド部17の摺動面17aに沿って車両前方に摺動することができる。また、ガイド部17は、エネルギー吸収部材11から受ける上向きの入力荷重によって変形可能であり、この入力荷重が閾値を上回る場合にロアパネル4において座屈するように構成されている。
【0034】
3.規制部19の構造
図1に示されるように、規制部19は、ガイド部17よりも車両上方に設けられている。この規制部19は、ガイド部17が座屈した場合にガイド部17に代わりエネルギー吸収部材11の車両上方への移動を規制する機能を果たすものである。この機能を達成するために、規制部19は、ロアパネル4の裏面4bに設けられたガイド部17を隔てて乗員膝部Kに対向する対向壁部として構成されている。
【0035】
本形態では、規制部19は、樹脂材料からなるインパネ本体部5の下端部(インパネ本体部5のうち下斜め後方に延出した部位)によって形成されている。インパネ本体部5は、嵌合孔5aを有しており、この嵌合孔5aに樹脂材料からなるアッパーパネル6の爪部6aを嵌合させることによって、アッパーパネル6と連結されている。これにより、規制部19の剛性がガイド部17の剛性を上回るように構成されている。
【0036】
4.エネルギー吸収部材11の構造
図4に示されるように、エネルギー吸収部材11は、本体部12と、本体部12をロアパネル4の裏面4bに取り付けるための取付座13と、を有する。取付座13は、スクリュー8でロアパネル4に固定されている。
【0037】
エネルギー吸収部材11の取付座13には、筒状部13aが設けられている。筒状部13aの筒内空間は、ロアパネル4を貫通する貫通穴4cに連通しており、この筒内空間にスイッチ7が収容されて固定されている。すなわち、エネルギー吸収部材11の取付座13は、スイッチ7の取付座を兼務している。このため、スイッチ7の取付構造を簡素化できる。スイッチ7として、乗員の手動操作によって走行支援を行うための各種のスイッチが挙げられる。
【0038】
エネルギー吸収部材11の本体部12は、格子状のリブ12aによって高剛性化されている。これにより、スイッチ7が乗員によって操作された場合や、車両衝突時以外でロアパネル4が乗員膝部Kで膝押しされた場合の剛性を向上させることができる。
【0039】
5.ニーガード構造10の動作
次に、図5図16を参照しつつ、車両1の衝突時のニーガード構造10の動作を説明する。この説明では、3つの異なる体格(第1体格、第2体格、第3体格)を想定して、各体格別のニーガード構造10の動作について例示する。また、この説明では、図1に記載の要素から説明に関連する要素のみを抽出した模式的な図面を使用する。
【0040】
5.1 第1体格の乗員の場合
第1体格は、成人女性、子供、若しくは小柄な乗員などを想定した体格である。この場合、乗員膝部Kからエネルギー吸収部材11に入力される入力荷重は比較的小さく、且つ、エネルギー吸収部材11に対する乗員膝部Kの相対位置は比較的低所となる。
【0041】
図5に示されるように、乗員が第1体格の場合、車両衝突時のニーガード構造10の第1段階P1では、乗員膝部Kから入力される入力荷重は、エネルギー吸収部材11のロアパネル4側の下部に前斜め上方に向けて作用する。これにより、エネルギー吸収部材11の本体部12は、その上面12cがガイド部17の摺動面17aに当接したのち、入力荷重の水平方向の荷重成分によって摺動面17aを車両前方へとスライドする。このとき、本体部12の車両上方への移動はガイド部17によって規制される。
【0042】
図6に示されるように、ニーガード構造10の第2段階P2では、先ず、エネルギー吸収部材11の本体部12の前面12bが第1ブラケット14に当接する。そして、本体部12が第1ブラケット14を車両前方へと押圧して座屈荷重に達するまで塑性変形させる。第1ブラケット14が座屈することによって入力荷重が低下する。また、第1ブラケット14は、その塑性変形に伴って接合部材16を押圧して塑性変形させる。このとき、接合部材16は、第2ブラケット15から離脱することなく接合状態が維持される。したがって、第1ブラケット14に入力された荷重は接合部材16を介して第2ブラケット15で受けられる。その結果、エネルギー吸収部材11の本体部12の車両前方への移動が第2ブラケット15によって阻止される。
【0043】
図7に示されるように、ニーガード構造10の第3段階P3では、ガイド部17が受ける上向きの入力荷重が閾値を上回る。これにより、ガイド部17は、ロアパネル4において座屈して、前述のガイド機能及び規制機能を失う。ガイド部17の座屈により入力荷重がさらに低下する。そして、エネルギー吸収部材11の本体部12は、ガイド部17よりも車両上方に控えている規制部19に当接し、これにより車両上方への移動が阻止される。
【0044】
上述のように、第1体格の乗員の場合には、ニーガード構造10の第1段階P1から第3段階P3までの一連の動作によって車両衝突時のエネルギー吸収を行うことが可能になる。
【0045】
5.2 第2体格の乗員の場合
第2体格は、標準的な成人男性などを想定した体格である。この場合、乗員膝部Kからエネルギー吸収部材11に入力される入力荷重は、第1体格の場合よりも大きく、且つ、エネルギー吸収部材11に対する乗員膝部Kの相対位置は、第1体格の場合よりも高所となる。また、入力荷重の向きは、第1体格の場合よりも若干上向きになる。
【0046】
図8に示されるように、乗員が第2体格の場合、車両1の衝突時の第1段階Q1では、乗員膝部Kから入力される入力荷重は、エネルギー吸収部材11のロアパネル4側の概ね中央部に前斜め上方に向けて作用する。これにより、エネルギー吸収部材11の本体部12は、その上面12cがガイド部17の摺動面17aに当接する。このとき、本体部12の車両上方への移動はガイド部17によって規制される。
【0047】
第2体格の場合は、第1体格の場合よりも入力荷重の向きが上向きであり入力荷重の垂直方向の荷重成分が大きい。したがって、図9に示されるように、ニーガード構造10の第2段階Q2では、ガイド部17が受ける上向きの入力荷重が閾値を上回る。これにより、ガイド部17は、ロアパネル4において座屈して、前述のガイド機能及び規制機能を失う。ガイド部17の座屈により入力荷重が低下する。そして、エネルギー吸収部材11の本体部12は、ガイド部17よりも車両上方に控えている規制部19に当接し、これにより車両上方への移動が阻止される。
【0048】
図10に示されるように、ニーガード構造10の第3段階Q3では、エネルギー吸収部材11の本体部12の前面12bが第1ブラケット14に当接する。そして、エネルギー吸収部材11の本体部12が第1ブラケット14を車両前方へと押圧して座屈荷重に達するまで塑性変形させる。第1ブラケット14が座屈することによって入力荷重が低下する。また。第1ブラケット14は、その塑性変形に伴って接合部材16を押圧して塑性変形させる。
【0049】
第2体格の場合は、第1体格の場合よりも入力荷重の水平方向の荷重成分が大きい。したがって、図11に示されるように、ニーガード構造10の第4段階Q4では、第1ブラケット14から受ける荷重によって接合部材16が第2ブラケット15から離脱する。そして、第1ブラケット14が第2ブラケット15に当接する。したがって、第1ブラケット14に入力された荷重は第2ブラケット15で直に受けられる。その結果、エネルギー吸収部材11の本体部12の車両前方への移動が第2ブラケット15によって阻止される。
【0050】
上述のように、第2体格の乗員の場合には、ニーガード構造10の第1段階Q1から第4段階Q4までの一連の動作によって車両衝突時のエネルギー吸収を行うことが可能になる。
【0051】
5.3 第3体格の乗員の場合
第3体格は、大柄な成人男性などを想定した体格である。この場合、乗員膝部Kからエネルギー吸収部材11に入力される入力荷重は、第2体格の場合よりも大きく、且つ、エネルギー吸収部材11に対する乗員膝部Kの相対位置は、第2体格の場合よりも高所となる。また、入力荷重の向きは、第2体格の場合よりも若干下向きになる。
【0052】
図12に示されるように、乗員が第3体格の場合、車両1の衝突時の第1段階R1では、乗員膝部Kから入力される入力荷重は、エネルギー吸収部材11のロアパネル4側の概ね中央部に前斜め上方に向けて作用する。これにより、エネルギー吸収部材11の本体部12は、その上面12cがガイド部17の摺動面17aに当接する。このとき、本体部12の車両上方への移動はガイド部17によって規制される。
【0053】
第3体格の場合は、第1体格の場合よりも入力荷重の垂直方向の荷重成分が大きい。したがって、図13に示されるように、ニーガード構造10の第2段階R2では、ガイド部17が受ける上向きの入力荷重が閾値を上回る。これにより、ガイド部17は、ロアパネル4において座屈して、前述のガイド機能及び規制機能を失う。ガイド部17の座屈により入力荷重が低下する。そして、エネルギー吸収部材11の本体部12は、ガイド部17よりも車両上方に控えている規制部19に当接し、これにより車両上方への移動が阻止される。また、第3体格の場合は、第2体格の場合よりも入力荷重の水平方向の荷重成分が大きい。したがって、エネルギー吸収部材11の本体部12の前面12bが第1ブラケット14に当接する。そして、本体部12が第1ブラケット14を車両前方へと押圧して座屈荷重に達するまで塑性変形させる。第1ブラケット14が座屈することによって入力荷重が低下する。また。第1ブラケット14は、その塑性変形に伴って接合部材16を押圧して塑性変形させる。
【0054】
図14に示されるように、ニーガード構造10の第3段階R3では、第1ブラケット14が第2ブラケット15に当接する。したがって、第1ブラケット14に入力された荷重は第2ブラケット15で直に受けられる。
【0055】
図15に示されるように、ニーガード構造10の第4段階R4では、エネルギー吸収部材11の本体部12が第1ブラケット14を介して或いは第1ブラケット14から外れて第2ブラケット15を車両前方へと押圧して座屈荷重に達するまで塑性変形させる。第2ブラケット15が座屈することによって入力荷重がさらに低下する。
【0056】
図16に示されるように、ニーガード構造10の第5段階R5では、エネルギー吸収部材11の本体部12自体が大きく座屈する。エネルギー吸収部材11の本体部12が座屈することによって入力荷重がさらに低下する。
【0057】
上述のように、第3体格の乗員の場合には、ニーガード構造10の第1段階R1から第5段階R5までの一連の動作によって車両衝突時のエネルギー吸収を行うことが可能になる。
【0058】
6.作用効果
上述の実施形態1によれば、以下のような作用効果が得られる。
【0059】
実施形態1のニーガード構造10において、インパネリーンフォース2とロアパネル4との間に設けられるエネルギー吸収部材11は、ガイド部17によって荷重受け部(第1ブラケット14、第2ブラケット15及び接合部材16)に向けてガイドされる。このとき、ガイド部17は、エネルギー吸収部材11が車両上方へ移動するのを規制する機能を有する。これにより、乗員の体格の違いなどによってエネルギー吸収部材11に対する乗員膝部Kの相対位置や衝撃の入力方向などの条件が変わる場合であっても、エネルギー吸収部材11を荷重受け部に向けて効率よくガイドすることができる。そして、エネルギー吸収部材11の入力荷重が荷重受け部で受けられる。
【0060】
従って、実施形態1によれば、車両衝突時のエネルギー吸収性能に優れたニーガード構造10を提供することができる。
【0061】
また、ニーガード構造10によれば、車両衝突時にエネルギー吸収部材11の本体部12の上面12cがガイド部17の摺動面17aに接触したのち、エネルギー吸収部材11がこの摺動面17aを車両前方に摺動する。これにより、エネルギー吸収部材11をガイド部17の摺動面17aを利用して荷重受け部に向けて円滑にガイドすることができる。
【0062】
また、ニーガード構造10によれば、乗員の体格の違いなどによってエネルギー吸収部材11の入力荷重が大きくなりガイド部17が座屈した場合でも、エネルギー吸収部材11の車両上方への移動を規制部19によって規制できる。これにより、エネルギー吸収部材11の入力荷重の変化に対応して、エネルギー吸収部材11を荷重受け部に向けて確実にガイドすることができる。
【0063】
また、ニーガード構造10によれば、車両前後方向に互いに隙間を隔てて配置された複数のブラケット14,15を使用して、エネルギー吸収部材11の入力荷重を受けることができる。すなわち、エネルギー吸収部材11の入力荷重は、多層配置された複数のブラケット14,15によって複数段階で受けられる。これにより、車両衝突時においてエネルギー吸収部材11に対する荷重受け動作をコントロールすることが可能になる。
【0064】
また、ニーガード構造10によれば、接合部材16の介在部16bも複数のブラケット14,15と同様に、エネルギー吸収部材11の入力荷重を受ける荷重受け部として使用できる。この場合、第2ブラケット15に対する接合部材16の接合強度を適宜に設定することによって、エネルギー吸収部材11に対する荷重受け動作にバリエーションを付与できる。
【0065】
次に、上述の実施形態1に関連する他の形態について図面を参照しつつ説明する。他の形態において、実施形態1の要素と同一の要素には同一の符号を付しており、当該同一の要素についての説明は省略する。
【0066】
(実施形態2)
図17に示されるように、実施形態2のニーガード構造10Aは、接合部材16に代えて第3ブラケット20を有するという点で、実施形態1のニーガード構造10と相違している。第3ブラケット20は、金属材料からなり、インパネリーンフォース2にレーザー溶接で接合されている。この第3ブラケット20は、インパネリーンフォース2との接合部から第1ブラケット14と第2ブラケット15との間に介在するように延びている。
【0067】
その他の構成は、実施形態1と同様である。
【0068】
実施形態2のニーガード構造10Aによれば、実施形態1のニーガード構造10の場合と同様に、車両衝突時において3つのブラケット14,15,20を利用してエネルギー吸収部材11に対する荷重受け動作をコントロールすることが可能になる。
【0069】
その他、実施形態1の場合と同様に作用効果を奏する。
【0070】
本発明は、上述の典型的な形態のみに限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の応用や変形が考えられる。例えば、上述の形態を応用した次の各形態を実施することもできる。
【0071】
上述の形態では、ガイド部17がロアパネル4に一体成形される場合について例示したが、これに代えて、ガイド部17をロアパネル4とは別部材として構成したうえで、ロアパネル4に固定されるようにしても良い。また、ガイド部17を設ける箇所はロアパネル4に限定されるものではなく、例えば、インパネ本体部5やアッパーパネル6にガイド部17を設けるようにしても良い。
【0072】
上述の形態では、ガイド部17よりも車両上方に規制部19が配置される場合について例示したが、規制部19の数は特に限定されるものではなく、必要に応じて複数の規制部19を配置しても良い。
【符号の説明】
【0073】
1…車両、 2…インパネリーンフォース、 4…ロアパネル、 10,10A…ニーガード構造、 11…エネルギー吸収部材、 12c…上面、 14…第1ブラケット(荷重受け部)、 15…第2ブラケット(荷重受け部)、 16…接合部材(荷重受け部)、 16b…介在部、 17…ガイド部、 17a…摺動面、 19…規制部、 20…第3ブラケット(荷重受け部)、 K…乗員膝部、 G…隙間
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