IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ KDDI株式会社の特許一覧

特開2024-113502移動通信ネットワークに設定するスライスのコントローラ及び移動通信ネットワークにアクセスする無線装置
<>
  • 特開-移動通信ネットワークに設定するスライスのコントローラ及び移動通信ネットワークにアクセスする無線装置 図1
  • 特開-移動通信ネットワークに設定するスライスのコントローラ及び移動通信ネットワークにアクセスする無線装置 図2
  • 特開-移動通信ネットワークに設定するスライスのコントローラ及び移動通信ネットワークにアクセスする無線装置 図3
  • 特開-移動通信ネットワークに設定するスライスのコントローラ及び移動通信ネットワークにアクセスする無線装置 図4
  • 特開-移動通信ネットワークに設定するスライスのコントローラ及び移動通信ネットワークにアクセスする無線装置 図5
  • 特開-移動通信ネットワークに設定するスライスのコントローラ及び移動通信ネットワークにアクセスする無線装置 図6
  • 特開-移動通信ネットワークに設定するスライスのコントローラ及び移動通信ネットワークにアクセスする無線装置 図7
  • 特開-移動通信ネットワークに設定するスライスのコントローラ及び移動通信ネットワークにアクセスする無線装置 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024113502
(43)【公開日】2024-08-22
(54)【発明の名称】移動通信ネットワークに設定するスライスのコントローラ及び移動通信ネットワークにアクセスする無線装置
(51)【国際特許分類】
   H04L 47/24 20220101AFI20240815BHJP
   H04W 28/084 20230101ALI20240815BHJP
   H04W 48/16 20090101ALI20240815BHJP
【FI】
H04L47/24
H04W28/084
H04W48/16 135
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023018538
(22)【出願日】2023-02-09
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-10-30
(71)【出願人】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】星野 友紀男
【テーマコード(参考)】
5K030
5K067
【Fターム(参考)】
5K030HA08
5K030HC01
5K030HC09
5K030HD03
5K030JA07
5K030JA11
5K030MA04
5K067AA23
5K067EE02
5K067EE10
5K067EE16
5K067HH22
5K067LL11
(57)【要約】
【課題】通信状況に応じて、移動通信ネットワークにアクセスする無線装置に対して設定するスライスを制御する。
【解決手段】コントローラは、無線装置から複数の種別それぞれのトラフィック量を判定するための情報を繰り返し受信する受信手段と、複数の種別の内の第1種別のトラフィック量の割合に基づき、第1種別のトラフィックを第1スライスにマッピングするか、第1スライスとは異なる種別の第2スライスにマッピングするかを判定する判定手段と、第2スライスにマッピングされている第1種別のトラフィックを第1スライスにマッピングすると判定手段が判定した場合、無線装置に対する第1スライスの設定を移動通信ネットワークに通知する処理と、第1種別のトラフィックを第1スライスに送信することを無線装置に通知する処理と、を行う処理手段と、を備えている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動通信ネットワークにアクセスする無線装置から複数の種別それぞれのトラフィック量を判定するための情報を繰り返し受信する受信手段と、
前記複数の種別の内の第1種別のトラフィック量の割合に基づき、前記第1種別のトラフィックを第1スライスにマッピングするか、前記第1スライスとは異なる種別の第2スライスにマッピングするかを判定する判定手段と、
前記第2スライスにマッピングされている前記第1種別のトラフィックを前記第1スライスにマッピングすると前記判定手段が判定した場合、前記無線装置に対する前記第1スライスの設定を前記移動通信ネットワークに通知する処理と、前記第1種別のトラフィックを前記第1スライスに送信することを前記無線装置に通知する処理と、を行う処理手段と、
を備えている、コントローラ。
【請求項2】
前記第1スライスにマッピングされている前記第1種別のトラフィックを前記第2スライスにマッピングすると前記判定手段が判定した場合、前記処理手段は、前記無線装置に対する前記第1スライスの削除を前記移動通信ネットワークに通知する処理と、前記第1種別のトラフィックを前記第2スライスに送信することを前記無線装置に通知する処理と、を行う、請求項1に記載のコントローラ。
【請求項3】
前記第1種別のトラフィックを前記第1スライスに送信することを前記無線装置に通知する前記処理は、前記第1種別のトラフィックを前記第1スライスに送信することを前記移動通信ネットワークに通知する処理であり、
前記移動通信ネットワークは、前記第1種別のトラフィックを前記第1スライスに送信することを、前記移動通信ネットワークの制御プレーンのシグナリングにより前記無線装置に通知する、請求項1に記載のコントローラ。
【請求項4】
前記処理手段は、前記移動通信ネットワークのユーザプレーンを介して、或いは、前記移動通信ネットワークとは異なるネットワークを介して、前記第1種別のトラフィックを前記第1スライスに送信することを前記無線装置に通知する、請求項1に記載のコントローラ。
【請求項5】
前記無線装置が前記移動通信ネットワークに接続している間、前記無線装置に対する前記第2スライスは、常に、前記移動通信ネットワークに設定される、請求項1に記載のコントローラ。
【請求項6】
前記判定手段は、前記第1種別のトラフィック量の割合が閾値より大きい場合、前記第1種別のトラフィックを前記第1スライスにマッピングすると判定し、前記第1種別のトラフィック量の割合が前記閾値より小さい場合、前記第1種別のトラフィックを前記第2スライスにマッピングすると判定する、請求項1から5のいずれか1項に記載のコントローラ。
【請求項7】
前記第1種別のトラフィック量の割合は、前記無線装置が送信する前記第1種別のトラフィック量の割合、又は、前記無線装置が受信する前記第1種別のトラフィック量の割合である、請求項6に記載のコントローラ。
【請求項8】
前記判定手段は、前記第1種別のトラフィック量の割合として、前記無線装置が送信する前記第1種別のトラフィック量の第1割合と、前記無線装置が受信する前記第1種別のトラフィック量の第2割合と、を求め、前記第1割合が第1閾値より大きい、又は、前記第2割合が第2閾値より大きい場合、前記第1種別のトラフィックを前記第1スライスにマッピングすると判定し、前記第1割合が前記第1閾値より小さく、かつ、前記第2割合が前記第2閾値より小さい場合、前記第1種別のトラフィックを前記第2スライスにマッピングすると判定する、請求項1から5のいずれか1項に記載のコントローラ。
【請求項9】
前記複数の種別それぞれのトラフィック量を判定するための情報は、アプリケーション毎のトラフィック量を示す情報である、請求項1から5のいずれか1項に記載のコントローラ。
【請求項10】
前記第1スライスは、前記第2スライスより低遅延又は広帯域の通信が可能なスライスである、請求項1から5のいずれか1項に記載のコントローラ。
【請求項11】
移動通信ネットワークにアクセスする無線装置であって、
複数の種別それぞれのトラフィック量を判定するための情報をコントローラに繰り返し報告する報告手段と、
前記コントローラが前記複数の種別それぞれのトラフィック量に基づき判定した、前記複数の種別それぞれのトラフィックに対して使用するスライスの種別を示すマッピング情報を、前記コントローラから直接、又は、前記移動通信ネットワークの制御プレーンを介して受信する受信手段と、
前記マッピング情報が示す種別のスライスを使用して、前記複数の種別それぞれのトラフィックを前記移動通信ネットワークに送信する送信手段と、
を備えている、無線装置。
【請求項12】
前記送信手段は、1つ以上の通信装置からのトラフィックを前記移動通信ネットワークに送信し、
前記無線装置は、さらに、
前記受信手段が受信した前記マッピング情報に基づき、前記複数の種別それぞれのトラフィックのパケットのヘッダに設定する値を前記1つ以上の通信装置に通知する通知手段を備えている、請求項11に記載の無線装置。
【請求項13】
前記パケットのヘッダに設定する値は、前記パケットを送信するために使用する前記スライスの種別を示す、請求項12に記載の無線装置。
【請求項14】
前記パケットのヘッダに設定する値は、前記パケットのヘッダのタイプオブサービス(ToS)フィールドに設定される、請求項12又は13に記載の無線装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、移動通信ネットワークにアクセスする無線装置に対して設定するスライスの制御技術に関する。
【背景技術】
【0002】
非特許文献1は、3GPP(登録商標)の第5世代(5G)ネットワークを利用したSD-WAN(Software Defined Wide Area Network)の実証実験結果を開示している。非特許文献1によると、2つの拠点間を、インターネットを介する伝送路と、5Gネットワーク及び閉域ネットワークを介する伝送路と、により接続している。この様に、5Gネットワーク等の移動通信ネットワークは、SD-WANのアンダーレイヤネットワークとして使用され得る。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】"5Gネットワークを利用したSD-WAN実証実験により、IoTやDX向け利用シーンでの有用性を確認~5Gネットワークの特性を最大限に生かしたネットワークの高度化~"、[Online]、2020年1月23日、[令和5年1月23日検索]、インターネット<URL:https://www.nttpc.co.jp/press/2020/01/202001231500.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
現在、移動通信ネットワークも仮想化が行われ、移動通信ネットワークにアクセスする無線装置には、サービス種別に応じた"スライス"が提供される。スライスは、伝送遅延や、伝送速度等の観点から区別され、現在のところ、高速通信用のスライスであるeMMB(Enhanced Mobile Broadband)スライスや、高信頼かつ低遅延通信用のスライスであるURLLC(Ultra-High Reliability & Low Latency)スライス等が定義されている。
【0005】
SD-WANのアンダーレイヤネットワークとして移動通信ネットワークを利用する拠点には、移動通信ネットワークに接続可能な無線装置が配置される。無線装置は、1つ以上の情報処理装置(以下、パーソナルコンピュータ(PC)と表記する。)と移動通信ネットワークとの間でパケットを中継する。つまり、無線装置は、同じ拠点の第1PCが他の拠点の第2PCとの通信において送信するパケットを第1PCから受信して移動通信ネットワークに送信する。また、無線装置は、第2PCから第1PCに向けて送信されたパケットを移動通信ネットワークから受信すると、当該パケットを第1PCに送信する。拠点間には、Web会議、ファイル転送、メール等、様々なアプリケーションの様々な特性(種別)のトラフィックが流れる。また、拠点間を流れるトラフィックの種別やそのトラフィック量も時間と共に変化する。したがって、拠点毎の通信状況に応じて、移動通信ネットワークにアクセスしている無線装置に対して設定するスライスを制御する必要が生じる。
【0006】
本開示は、通信状況に応じて、移動通信ネットワークにアクセスする無線装置に対して設定するスライスを制御する技術を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様によると、コントローラは、移動通信ネットワークにアクセスする無線装置から複数の種別それぞれのトラフィック量を判定するための情報を繰り返し受信する受信手段と、前記複数の種別の内の第1種別のトラフィック量の割合に基づき、前記第1種別のトラフィックを第1スライスにマッピングするか、前記第1スライスとは異なる種別の第2スライスにマッピングするかを判定する判定手段と、前記第2スライスにマッピングされている前記第1種別のトラフィックを前記第1スライスにマッピングすると前記判定手段が判定した場合、前記無線装置に対する前記第1スライスの設定を前記移動通信ネットワークに通知する処理と、前記第1種別のトラフィックを前記第1スライスに送信することを前記無線装置に通知する処理と、を行う処理手段と、を備えている。
【発明の効果】
【0008】
本開示によると、通信状況に応じて、移動通信ネットワークにアクセスする無線装置に対して設定するスライスを制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】SD-WANを介した拠点間の通信の説明図。
図2】実施形態の説明に使用するシステム構成図。
図3】スライスの種別の例を示す図。
図4】一実施形態による、スライス制御処理のシーケンス図。
図5】一実施形態による、コントローラが実行する処理のフローチャート。
図6】ToS情報の例を示す図。
図7】一実施形態による、コントローラの構成図。
図8】一実施形態による、アクセス装置の構成図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明に必須のものとは限らない。実施形態で説明されている複数の特徴のうちの二つ以上の特徴が任意に組み合わされてもよい。また、同一若しくは同様の構成には同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0011】
図1は、ある事業者の3つの拠点3-1~拠点3-3がSD-WAN4に接続している状態を示している。なお、拠点数は3に限定されず、2以上の任意の数であり得る。以下では、3つの拠点3-1~拠点3-3を総称して拠点3とも表記する。拠点3間のトラフィックは、例えば、SD-WAN4に生成される当該事業者用のスライスを介して搬送される。当該事業者用のスライスは、例えば、当該事業者の2つの拠点3をエンド・トゥ・エンドで接続するスライスであり得る。SD-WAN4は、複数の種類のネットワークをアンダーレイヤネットワークとして構成され、その内の1つは、移動通信ネットワークであり得る。移動通信ネットワークは、SD-WAN4のアクセス区間に使用される。なお、移動通信ネットワークとは異なる種別のネットワーク、例えば、PON(Passive Optical Network)等もSD-WAN4のアクセス区間のアンダーレイヤネットワークとして使用され得る。したがって、例えば、3つの拠点3の内の1つ以上の拠点3は、移動通信ネットワークとPON等の2つ以上の種類のネットワークに接続され得る。また、3つの拠点3の内の1つ以上の拠点3は、移動通信ネットワークとは異なる種類のネットワークのみに接続され得る。
【0012】
図2は、SD-WAN4のアクセス区間として、移動通信ネットワーク42を少なくとも使用する場合の構成図である。アクセス装置30は、移動通信ネットワーク42に接続可能な無線装置であり、例えば、3GPP(登録商標)では、ユーザ装置(UE)又は無線デバイス(WD)等と呼ばれる。アクセス装置30は、移動通信ネットワーク42にアクセスするためのエアインタフェースに加えて、ローカルエリアネットワーク(LAN)31を介して情報処理装置であるPC32と通信するためのLANインタフェースを有する。LAN31は、有線LAN及び/又は無線LANであり得る。アクセス装置30は、さらに、PON等の移動通信ネットワーク42とは異なる種類の他のネットワークにアクセスするためのインタフェースを有し得る。アクセス装置30は、例えば、LAN31と移動通信ネットワーク42又は他のネットワークとの間でパケットを中継(転送)するパケット中継(転送)装置とも呼ばれ得る。
【0013】
拠点3のPC32は、アクセス装置30を介して他の拠点3のPC32と通信することができる。なお、このとき、拠点3のPC32が他の拠点3のPC32に送信するパケットや、他の拠点3のPC32から受信するパケットは、アクセス装置30が接続している移動通信ネットワーク42や他のネットワークをアンダーレイヤネットワークとするSD-WAN4を介して伝送される。
【0014】
移動通信ネットワーク42は、制御システム421を有する。制御システム421は、移動通信ネットワーク42の制御プレーンの1つ以上のネットワーク機能(NF)を実装する1つ以上の装置を含む。3GPP(登録商標)の第5世代(5G)移動通信ネットワークでの用語で説明すると、NFの例は、ユーザ装置のモビリティを管理するアクセス及びモビリティ管理機能(AMF)、PDUセッションを管理するセッション管理機能(SMF)、ポリシーを制御するポリシー制御機能(PCF)、スライスのSMFを選択するネットワークスライス選択機能(NSSF)等である。なお、移動通信ネットワーク42は、第5世代の移動通信ネットワークに限定されず、スライスを設定可能な任意の世代の移動通信ネットワークであり得る。
【0015】
コントローラ1は、制御システム421及びアクセス装置30と通信可能に構成される。なお、コントローラ1とアクセス装置30との間の通信は、移動通信ネットワーク42を介するものであっても、PON等の移動通信ネットワーク42とは異なる他のネットワークを介するものであっても良い。図示していないが、移動通信ネットワーク42は、インターネットや、移動通信ネットワーク42のオペレータが運用する閉域ネットワーク等の1つ以上の異なるデータネットワーク(DN)に接続され得る。
【0016】
本実施形態において、移動通信ネットワーク42は、図3に示す様に、"デフォルト"、"低遅延"及び"広帯域"の3つの種別のスライスを提供する。以下では、種別が"デフォルト"、"低遅延"及び"広帯域"のスライスを、それぞれ、デフォルトスライス、低遅延スライス及び広帯域スライスと表記する。デフォルトスライスは、SD-WAN4用にアクセス装置30に対して常に設定されるスライスであり、その特性は、ベストエフォートである。デフォルトスライスの優先度は、3つの種別のスライスの中で最も低い。低遅延スライスは、デフォルトスライスや広帯域スライスよりも低遅延の通信を提供するためのスライスである。低遅延スライスの優先度は、3つの種別スライスの中で最も高い。一例として、低遅延スライスは、3GPP(登録商標)のURLLCスライスである。広帯域スライスは、デフォルトスライスや低遅延スライスよりも高速な通信を提供するためのスライスである。広帯域のスライスの優先度は、デフォルトスライスよりも高いが、低遅延スライスより低い。一例として、広帯域スライスは、3GPP(登録商標)のeMMBスライスである。
【0017】
図4は、本実施形態によるスライス制御処理のシーケンス図である。アクセス装置30が移動通信ネットワーク42にアクセスして移動通信ネットワーク42への接続状態になると、制御システム421は、SD-WAN4用のデフォルトスライスをアクセス装置30に対して設定する。なお、アクセス装置30には、インターネットに接続するためのスライスが、SD-WAN4用のスライスとは別に設定され得るが、実施形態の説明には無関係であるため省略する。また、以下の説明において、"スライス"とは、他のものであることが明記されていない限り、SD-WAN4用のスライスを意味するものとする。
【0018】
S1で、制御システム421は、アクセス装置30に対して設定しているスライスの種別をコントローラ1に通知する。図4には明記していないが、制御システム421は、アクセス装置30に対して設定しているスライスの種別を追加/削除する度に、アクセス装置30に対して設定しているスライスの種別をコントローラ1が判定するための情報をコントローラ1に通知する。
【0019】
アクセス装置30は、S2で、他の拠点3とのトラフィック情報をコントローラ1に報告する。トラフィック情報は、移動通信ネットワーク42を介する他の拠点3との通信における、トラフィック種別毎のトラフィック量を判定するための情報である。本実施形態では、トラフィック種別をスライス種別と同じ3つに分類する。具体的には、Web会議や、遠隔操作等の低遅延が好ましいアプリケーションのトラフィックを種別Rとし、大容量ファイル転送等の大量のデータ送信を行うアプリケーションのトラフィックを種別Bとし、それ以外のアプリケーションのトラフィックを種別Nとする。なお、以下の説明において、種別RのトラフィックをRトラフィックと表記し、種別BのトラフィックをBトラフィックと表記し、種別NのトラフィックをNトラフィックと表記する。
【0020】
本実施形態では、アプリケーション毎の送信側のトラフィック量及び受信側のトラフィック量を示す情報をトラフィック情報とする。なお、送信側のトラフィックとは、アクセス装置30が移動通信ネットワーク42に向けて送信するトラフィックであり、受信側のトラフィックとは、アクセス装置30が移動通信ネットワーク42から受信するトラフィックである。また、各アプリケーションのトラフィックがどのトラフィック種別に対応するかを判定するための判定情報が、コントローラ1及びアクセス装置30に事前に格納されているものとする。
【0021】
したがって、アクセス装置30は、他の拠点3に送信したトラフィックのトラフィック量(送信側)と、他の拠点3から受信したトラフィックのトラフィック量(受信側)をアプリケーション(App)毎に集計し、これをトラフィック情報としてコントローラ1に報告する。初期状態において、アクセス装置30に対してはデフォルトスライスのみが設定されているため、アプリケーションに拘わらず、総てのトラフィックは、デフォルトスライスを介して送受信される。なお、図4には明記してないが、アクセス装置30によるコントローラ1へのトラフィック情報の報告は繰り返し行われる。例えば、トラフィック情報の報告は所定周期毎に行われる。
【0022】
コントローラ1は、S3で、トラフィック情報に基づき、アプリケーション毎のトラフィックに対して使用するスライスの種別を決定する。つまり、アプリケーションとスライスの種別とのマッピングを決定する。
【0023】
図5は、S3でコントローラ1が行う処理のフローチャートである。なお、図5の処理を開始する前に、コントローラ1は、アクセス装置30から受信したトラフィック情報に基づき、送信側及び受信側それぞれについて、トラフィック種別毎のトラフィック量と、合計のトラフィック量と、を求める。以下では、Rトラフィックの送信側及び受信側のトラフィック量をRt及びRrとし、Bトラフィックの送信側及び受信側のトラフィック量をBt及びBrとし、Nトラフィックの送信側及び受信側のトラフィック量をNt及びNrとする。また、送信側の合計トラフィック量をTt(=Rt+Bt+Nt)とし、受信側の合計トラフィック量をTr(=Rr+Br+Nr)とする。上述した様に、アプリケーションのトラフィックの種別を判定するための判定情報は、予めコントローラ1に設定されている。
【0024】
コントローラ1は、S21で、Rr/Tr及びRt/Ttのいずれかが第1閾値より大きいか否かを判定する。つまり、送信側と受信側のいずれかについて、Rトラフィックの合計トラフィックに対する割合が第1閾値より大きいかを判定する。Rr/Tr及びRt/Ttのいずれかが第1閾値より大きい場合、コントローラ1は、S22で、Rトラフィックを低遅延スライスにマッピングすると判定する。一方、Rr/Tr及びRt/Ttの両方が第1閾値以下の場合、コントローラ1は、S23で、Rトラフィックをデフォルトスライスにマッピングすると判定する。
【0025】
コントローラ1は、S24で、Br/Tr及びBt/Ttのいずれかが第2閾値より大きいか否かを判定する。つまり、送信側と受信側のいずれかについて、Bトラフィックの合計トラフィックに対する割合が第2閾値より大きいかを判定する。第2閾値は第1閾値と同じであっても異なるものであっても良い。Br/Tr及びBt/Ttのいずれかが第2閾値より大きい場合、コントローラ1は、S25で、Bトラフィックを広帯域スライスにマッピングすると判定する。一方、Br/Tr及びBt/Ttの両方が第2閾値以下の場合、コントローラ1は、S26で、Bトラフィックをデフォルトスライスにマッピングすると判定する。
【0026】
なお、本実施形態において、Nトラフィックは、常にデフォルトスライスにマッピングされる。コントローラ1は、トラフィック種別をどの種別のスライスにマッピングするかを決定すると、判定情報に基づき、各アプリケーションを、どの種別のスライスにマッピングするかを決定する。
【0027】
図4に戻り、コントローラ1は、S3において、アプリケーションのスライスへのマッピングを決定すると、追加するスライス又は削除するスライスを判定する。例えば、Rトラフィックをデフォルトスライスにマッピングしている状態において、Rトラフィックを低遅延スライスにマッピングすると決定した場合、コントローラ1は、低遅延スライスを追加すると判定する。一方、Rトラフィックを低遅延スライスにマッピングしている状態において、Rトラフィックをデフォルトスライスにマッピングすると決定した場合、コントローラ1は、低遅延スライスを削除すると判定する。Bトラフィックの場合は、上記Rトラフィックの説明における"低遅延スライス"が"広帯域スライス"となる。纏めると、コントローラ1は、決定したマッピングに必要な種別のスライスが設定されていない場合、当該必要な種別のスライスを追加すると判定し、決定したマッピングにより不要となった種別のスライスが生じると、当該不要な種別のスライスを削除すると判定する。図4のS4以降の処理は、追加するスライス又は削除するスライスがある場合にのみ実施され得る。言い換えると、追加するスライス又は削除するスライスがない場合、S4~S6の処理は省略され得る。
【0028】
S4で、コントローラ1は、追加または削除するスライスを制御システム421に通知する。さらに、コントローラ1は、S4で、アプリケーションと、当該アプリケーションのトラフィックに対して使用するスライスの種別との関係を示すマッピング情報を制御システム421に通知する。制御システム421は、コントローラ1から通知又は削除するスライスの通知を受信すると、当該通知に従い、スライスの追加や削除を行う。また、制御システム421は、S5で、マッピング情報を、例えば、高次レイヤシグナリングによりアクセス装置30に通知する。マッピング情報は、例えば、URSP(user equipment route selection policies)の形式であり得る。
【0029】
アクセス装置30は、マッピング情報に従いPC32から受信するアプリーションのトラフィックのパケットを送信するスライスを決定する。このため、アクセス装置30は、S6において、PC32にタイプオブサービス(ToS)情報を通知する構成とし得る。ToS情報は、アプリケーション又はトラフィック種別と、パケットヘッダのToSフィールドに設定する値と、の関係を示す。PC32は、ToS情報に従い、他の拠点に送信するパケットのヘッダのToSフィールドに値を設定する。図6は、ToS情報の例を示している。図6によると、低遅延スライスにマッピングされるアプリケーションが送信するパケットのヘッダにはToS値"1"が格納され、広帯域スライスにマッピングされるアプリケーションが送信するパケットのヘッダにはToS値"2"が格納され、デフォルトスライスにマッピングされるアプリケーションが送信するパケットのヘッダにはToS値"3"が格納される。
【0030】
ToS値は、アクセス装置30が、PC32から受信するパケットを送信するスライスを判定するために使用され得る。例えば、Web会議のアプリケーションが低遅延スライスにマッピングされる場合、PC32は、Web会議のアプリケーションからの送信パケットのヘッダにToS値"1"を設定する。そして、アクセス装置30は、ToS値"1"が設定されたパケットを低遅延スライスに送信する。一方、Web会議のアプリケーションがデフォルトスライスにマッピングされる場合、PC32は、Web会議のアプリケーションからの送信パケットのヘッダにToS値"3"を設定する。そして、アクセス装置30は、ToS値"3"が設定されたパケットをデフォルトスライスに送信する。なお、ToS値ではなく、PC32から受信するパケットのポート番号等の他の情報に基づきアクセス装置30が当該パケットを送信するスライスを判定する構成であっても良い。この場合、S6の処理は省略され得る。
【0031】
以上の構成により、拠点3の通信状況に応じて移動通信ネットワーク42にアクセスするアクセス装置30に対して設定するスライスを制御することができる。
【0032】
なお、図5において、コントローラ1は、RトラフィックとBトラフィックについて、送信側及び受信側のいずれかのトラフィック量の割合が閾値より大きい場合に、低遅延や広帯域のスライスを使用すると判定していた。しかしながら、送信側のトラフィック量の割合のみに基づき判定し、受信側のトラフィック量を使用しない構成とすることもできる。逆に、受信側のトラフィック量の割合のみに基づき判定し、送信側のトラフィック量を使用しない構成とすることもできる。さらに、送信側及び受信側の両方のトラフィック量の割合が閾値より大きい場合に、低遅延や広帯域のスライスを使用する構成とすることもできる。また、送信側のトラフィック量と受信側のトラフィック量を使用する場合、送信側と受信側では閾値の値を異ならせることもできる。なお、S21では、Rr/Tr又はRt/Ttが第1閾値より大きいかを判定していたが、Rr/Tr又はRt/Ttが第1閾値以上であるかを判定する構成であっても良い。同様に、S24では、Br/Tr又はBt/Ttが第2閾値より大きいかを判定していたが、Br/Tr又はBt/Ttが第2閾値以上であるかを判定する構成であっても良い。
【0033】
また、図4のシーケンスでは、S5において、制御システム421がマッピング情報をアクセス装置30に高次レイヤシグナリングで通知していたが、コントローラ1が直接アクセス装置30に対して通知する構成とすることもできる。この場合、マッピング情報は、移動通信ネットワーク42の制御プレーンのシグナリングではなく、移動通信ネットワーク42のユーザプレーンのユーザデータとして移動通信ネットワーク42を介してアクセス装置30に送信、或いは、移動通信ネットワーク42とは異なるPON等を介してアクセス装置30に送信される。
【0034】
また、図4において、アクセス装置30は、アプリケーション毎のトラフィック量をコントローラ1に通知し、コントローラ1が、アプリケーション毎のトラフィック量に基づきRトラフィックやBトラフィック等のトラフィック種別毎のトラフィック量を集計していた。しかしながら、アクセス装置30がRトラフィックやBトラフィックといった、トラフィック種別毎のトラフィック量に集計してコントローラ1に報告する形態であっても良い。また、本実施形態では、マッピング情報を、アプリケーションの種別とスライスの種別とのマッピングを示すものとしたが、マッピング情報は、トラフィックの種別とスライスの種別とのマッピングを示すものであっても良い。マッピング情報がトラフィックの種別とスライスの種別とのマッピングを示すものであっても、アクセス装置30は、判定情報により、アプリケーションの種別とスライスの種別とのマッピングを判定することができる。
【0035】
<コントローラ1の構成図>
図7は、一実施形態によるコントローラ1の構成図である。図7に示すコントローラ1の各機能ブロックは、1つ以上のプロセッサと、1つ以上のメモリデバイスと、を備えた装置の前記1つ以上のプロセッサに適切なプログラムを実行させることで実現され得る。なお、コントローラ1は、1つのコンピュータ(装置)で実現することも、相互に通信可能な複数のコンピュータで実現することもできる。
【0036】
通信部13は、制御システム421との通信インタフェースと、アクセス装置30との通信インタフェースと、を有し、それぞれ、送信部及び受信部とを有する。なお、制御システム421との通信インタフェースと、アクセス装置30との通信インタフェースは、同じであっても良い。判定部11は、図5を用いて説明した様に、通信部13を介してアクセス装置30から繰り返し受信するトラフィック情報に基づき、アプリケーションやトラフィックの種別とスライスの種別とのマッピングを決定する。
【0037】
処理部12は、判定部11による判定結果に基づきスライスの追加や削除が必要となった場合、移動通信ネットワーク42にスライスの追加や削除を通知する処理を行う。また、処理部12は、判定結果に従いアクセス装置30が各種別のトラフィックを対応するスライスに送信する様に、マッピング情報をアクセス装置30に通知する処理を行う。マッピング情報のアクセス装置30への通知は、例えば、移動通信ネットワーク42の制御プレーンを介して行われ得る。この場合、処理部12は、移動通信ネットワーク42の制御システム421にマッピング情報を通知する。また、マッピング情報は、コントローラ1から、直接、アクセス装置30に送信され得る。この場合、マッピング情報は、例えば、移動通信ネットワーク42のユーザプレーン又は移動通信ネットワーク42とは異なるネットワークを介してアクセス装置30に送信される。
【0038】
<アクセス装置30の構成図>
図8は、一実施形態によるアクセス装置30の構成図である。図8に示すアクセス装置30の各機能ブロックは、1つ以上のプロセッサと、1つ以上のメモリデバイスと、を備えた装置の前記1つ以上のプロセッサに適切なプログラムを実行させることで実現され得る。
【0039】
通信部304は、移動通信ネットワーク42と無線で通信するためのエアインタフェース、LAN31へのインタフェース、移動通信ネットワークとは異なる他のネットワークに接続するためインタフェース等を有する。各インタフェースは、送信部と受信部とを有する。
【0040】
通信処理部302は、各インタフェース間でのトラフィックの中継処理、つまり、パケットの転送処理を行う。報告部301は、トラフィック情報をコントローラ1に繰り返し送信する。トラフィック情報は、アプリケーション又はトラフィック種別毎のトラフィック量を示す情報であり得る。トラフィック情報は、また、方向毎、つまり、送信側のトラフィック量と、受信側のトラフィック量を示す情報であり得る。
【0041】
通信処理部302は、コントローラ1からマッピング情報を受信すると、マッピング情報に従い、移動通信ネットワーク42を介して他の拠点に送信するトラフィックについては、マッピング情報に示されたスライスを使用して移動通信ネットワーク42に送信する。通知部303は、マッピング情報に従いTоS情報をPC32に通知する。当該通知は、例えば、ブロードキャストにより総てのPC32に対して同時に行うことも、ユニキャストにより各PC32に対して個別に行うこともできる。
【0042】
なお、上記実施形態では、トラフィックを3つの種別に分類し、それに合わせて3つの種別のスライスを使用していた。しかしながら、トラフィックの種別数は、3に限定されず、2つ以上とすることができる。スライスの種別数は、例えば、トラフィックの種別数と同じにし得る。複数の種別のスライスは、常に設定されるデフォルトスライスを含む。
【0043】
本開示によるコントローラ1やアクセス装置30は、1つ以上のプロセッサを有する装置の当該1つ以上のプロセッサで実行されると、当該装置を上記実施形態で説明したコントローラ1やアクセス装置30として機能させるコンピュータプログラムにより実現され得る。コンピュータプログラムは、1つ以上のプロセッサが実行可能なプログラム命令を含み得る。コンピュータプログラムは、コンピュータが読み取り可能な非一時的な記憶媒体に記憶されて、又は、ネットワーク経由で配布が可能なものである。
【0044】
以上の構成により、通信状況に応じて、移動通信ネットワークにアクセスする無線装置に対して設定するスライスを制御することができる。したがって、国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)の目標9「レジリエントなインフラを整備し、持続可能な産業化を推進するとともに、イノベーションの拡大を図る」に貢献することが可能となる。
【0045】
発明は上記の実施形態に制限されるものではなく、発明の要旨の範囲内で、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0046】
11:判定部、12:処理部、13:通信部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8