(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024011351
(43)【公開日】2024-01-25
(54)【発明の名称】トイレ装置
(51)【国際特許分類】
E03D 9/00 20060101AFI20240118BHJP
B01F 23/23 20220101ALI20240118BHJP
B01F 25/45 20220101ALI20240118BHJP
B01F 25/452 20220101ALI20240118BHJP
B01F 23/2375 20220101ALI20240118BHJP
E03D 9/08 20060101ALI20240118BHJP
E03C 1/084 20060101ALI20240118BHJP
【FI】
E03D9/00 Z
B01F23/23
B01F25/45
B01F25/452
B01F23/2375
E03D9/08 Z
E03C1/084
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022113279
(22)【出願日】2022-07-14
(71)【出願人】
【識別番号】000227711
【氏名又は名称】日邦産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096116
【弁理士】
【氏名又は名称】松原 等
(72)【発明者】
【氏名】土岐 良元
(72)【発明者】
【氏名】岩田 全弘
(72)【発明者】
【氏名】河村 学
【テーマコード(参考)】
2D038
2D060
4G035
【Fターム(参考)】
2D038JB00
2D060CC11
2D060CD08
4G035AB27
4G035AC26
4G035AE13
(57)【要約】
【課題】気泡発生構造で水中に発生する気泡をナノバブルとすることにより吐出部までの移動中にほとんど消滅しないようにして、高い洗浄能力を得るとともに、気泡発生構造の設置位置の自由度を高める。
【解決手段】トイレ装置は、トイレ装置の外部又は内部の水路27に設けられた、ナノバブルを発生させるナノバブル発生構造40と、前記ナノバブルを含む水を洗浄対象に吐出する吐出部13とを含む。ナノバブル発生構造は、流入部と絞り部と流出部とを含むベンチュリー通路を備え、絞り部は断面が多角形の穴からなり、流入部は流れ方向に従い縮径して絞り部に接続する断面が多角形の角錐内面からなるものが好ましい。各多角形は、三角形、四角形、五角形又は六角形が好ましい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トイレ装置の外部又は内部の水路(27,46,49)に設けられた、水中にナノバブルを発生させるナノバブル発生構造(40)と、
前記ナノバブルを含む水を洗浄対象に吐出する吐出部(13,18,19,51)と
を含むことを特徴とするトイレ装置。
【請求項2】
洗浄対象は、便器の内面、利用者の肛門又は利用者の局部である請求項1記載のトイレ装置。
【請求項3】
ナノバブル発生構造は、液体の流れ方向の順に流入部(3)と絞り部(4)と流出部(5)とを含むベンチュリー通路(2)を備え、液体がベンチュリー通路(2)を流れるときに生じるキャビテーションにより水中にナノバブルを発生させるものである請求項1記載のトイレ装置。
【請求項4】
絞り部(4)は断面が多角形の穴からなり、流入部(3)は流れ方向に従い縮径して絞り部(4)に接続する断面が多角形の角錐内面からなり、流出部(5)は絞り部(4)よりも拡径した部分を含む請求項3記載のトイレ装置。
【請求項5】
流出部(5)は、絞り部(4)に接続して流れ方向に従い拡径する断面が多角形の角錐内面からなる請求項4記載のトイレ装置。
【請求項6】
前記各多角形は、三角形、四角形、五角形又は六角形である請求項4記載のトイレ装置。
【請求項7】
入口側端面と出口側端面とを有するブロック体(1)に、一つのベンチュリー通路(2)を備えている請求項3~6のいずれか一項に記載のトイレ装置。
【請求項8】
入口側端面と出口側端面とを有するブロック体(1)に、複数のベンチュリー通路(2)を並列に備えている請求項3~6のいずれか一項に記載のトイレ装置。
【請求項9】
複数の流入部(3)の入口側端面での開口は、隣り合う開口の一辺どうしが共有又は平行するように配されている請求項8記載のトイレ装置。
【請求項10】
複数の流出部(5)の出口側端面での開口は、隣り合う開口の一辺どうしが共有又は平行するように配されている請求項8記載のトイレ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水を吐出して洗浄対象を洗浄するトイレ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、洗浄水中に空気を吸引混入させる空気混入手段と、洗浄水に液体薬剤を供給する薬剤供給手段と、ボウル(便器)の内面に洗浄水を吐出する吐出口とを備えた、洗浄水吐出装置が記載されている。空気混入手段が、上流大径部と小径部と下流大径部とを有するエジェクタ管に外部から空気を供給すると、空気はせん断力によりmmオーダー(3~5μm)に分割され、気泡混合洗浄水が生成されて吐出口から吐出されるため、ボウル部の内面を効率良く洗浄できるとされている。
【0003】
加えて薬剤供給手段が、エジェクタ管に薬剤としての界面活性剤を供給すると、水の表面張力が低下して上記気泡がμオーダー(50~60μm)に微小化され、微小気泡を含む薬剤混合洗浄水が生成されて吐出口から吐出されるため、ボウル部の内面を界面活性剤と防汚効果の高いμオーダーの微小泡で清潔にできるとされている。
【0004】
特許文献2には、泡径が150μm以下の微細気泡と水とが混在するマイクロバブルフォームを発生させるマイクロバブルフォーム発生器と、マイクロバブルフォームを便器に供給する供給部とを具備する、便器洗浄システムが記載されている。発生器は、発生室内で界面活性剤、空気および水を攪拌させてマイクロバブルフォームを発生させるものである。泡径が150マイクロメール以下の微細気泡と液相状の水とが混在するマイクロバブルフォームは、ミリメートル単位の大きな泡に比較して、消音性および跳ね返り抑制性が優れているとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008-138422号公報
【特許文献2】特開2011-252311号公報
【特許文献3】特開2007-50341号公報
【特許文献4】国際公開第2013/012069号
【特許文献5】特許第6182715号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
マイクロバブル発生装置が吐出口から遠く離れていると、吐出口までの移動中に水中のマイクロバブルの一部が消滅し、洗浄能力が低下する。そのため、特許文献1では、空気混入手段を吐出口の近傍に設置しており、特許文献2でも、マイクロバブルフォーム発生器を供給部の近傍に設置する必要がある。すなわち、マイクロバブル発生装置の設置位置の自由度が低いという問題がある。
【0007】
また、特許文献1のように、微細気泡(ファインバブル)を発生させるために気体を液体に混合して微細化するという混合方式では、気体を混合させるための構造が必要になり、複雑化するという問題もある。そこで、気体を液体に混合させるのではなく、液体中にキャビテーションにより微細気泡を発生させるキャビテーション方式の採用が考えられる。キャビテーション(空洞現象)は、液体の流れの中で圧力が飽和水蒸気圧より低くなった瞬間に泡が発生する物理現象であり、一種の沸騰現象である。キャビテーション方式の微細気泡(ファインバブル)発生装置としては、特許文献3~5のようなベンチュリー管を用いたものが知られている。
【0008】
ベンチュリー通路は、液体の流れ方向の順に流入部と絞り部と流出部とを含むものである。液体は、絞り部を通るときに流速が速くなると同時に圧力が上がり、ラッパ部で流速が遅くなると同時に圧力が下がる。この急激な圧力変化で生じるキャビテーションにより気泡が発生する。その気泡の発生効率を高めるために、特許文献3では複数の円孔を設けた整流板、特許文献4,5では絞り部に突出する衝突部(ねじ部材)、等を付加することが考えられている。
【0009】
なお、特許文献3~5における絞り部(くびれ部)はいずれも、断面が円形の穴からなる。特許文献5には、「絞り孔の軸断面形状はたとえば円形にすることが望ましいが、過度の損失を生じない限り、楕円や正多角形状( 正方形、正六角形、正八角形等) の軸断面形状も可能である」との記載があるが、正多角形状は望ましいものから外れており、よって実施例は円形の例のみである。
【0010】
また、特許文献3~5における流入口(テーパー部)はいずれも、断面が円形の円錐内面からなる。それ以外の形状の流入口については、特許文献5にも記載がない。
【0011】
そこで、本発明の主たる目的は、気泡発生構造で水中に発生する気泡をナノバブルとすることにより吐出部までの移動中にほとんど消滅しないようにして、高い洗浄能力を得るとともに、気泡発生構造の設置位置の自由度を高めることにある。
【0012】
また、特許文献3~5のように、気泡の発生効率を高めようとして旋回流発生部や整流板や衝突部(ねじ部材)を設けると構造が複雑化することから、本発明のさらなる目的は、シンプルな構造のベンチュリー通路によりナノバブルの発生数を増やすことにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
微細気泡(ファインバブル)には、直径が1μm以上100μm未満のマイクロバブルと、直径が1μm未満のナノバブルとがある。本発明は、ナノバブルが、マイクロバブルと比べて、液体中で消滅しにくく長時間残ることに着目し、さらに検討を重ねてなされたものである。
【0014】
本発明のトイレ装置は、
トイレ装置の外部又は内部の水路に設けられた、水中にナノバブルを発生させるナノバブル発生構造と、
前記ナノバブルを含む水を洗浄対象に吐出する吐出部と
を含むことを特徴とする。
【0015】
[作用]
ナノバブル発生構造で水中に発生したナノバブルは吐出部までの移動中にほとんど消滅しないため、十分な数量が水とともに吐出部から洗浄対象物に吐出される。
【発明の効果】
【0016】
本発明のトイレ装置によれば、気泡発生構造で水中に発生する気泡をナノバブルとすることにより吐出部までの移動中にほとんど消滅しないようにして、高い洗浄能力を得るとともに、気泡発生構造の設置位置の自由度を高めることができる。
【0017】
さらに、後述するように、ナノバブル発生構造がベンチュリー通路を備え、ベンチュリー通路の絞り部は断面が多角形の穴からなり、流入部は流れ方向に従い縮径して絞り部に接続する断面が多角形の角錐内面からなるものとすれば、シンプルな構造のベンチュリー通路によりナノバブルの発生数を増やすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は実施形態1のトイレ装置を示す斜視図である。
【
図2】
図2は実施形態2のトイレ装置を示す斜視図である。
【
図3】
図3は実施形態3のトイレ装置を示す斜視図である。
【
図4】
図4は実施形態4のトイレ装置を示す斜視図である。
【
図5】
図5は同実施形態1~4に使用する実施例1のナノバブル発生構造の実験概略図及び部分拡大断面図である。
【
図6】
図6は実施例1のナノバブル発生構造の(a)は正面図、(b)は(a)の縦断面図、(c)は斜視図である。
【
図7】
図7は実施例2のナノバブル発生構造の(a)は正面図、(b)は(a)の縦断面図、(c)は斜視図である。
【
図8】
図8は実施例3のナノバブル発生構造の(a)は正面図、(b)は(a)の縦断面図、(c)は斜視図である。
【
図9】
図9は実施例4のナノバブル発生構造の(a)は正面図、(b)は(a)の縦断面図、(c)は斜視図である。
【
図10】
図10は実施例1~4のナノバブル発生実験結果を示すグラフ図である。
【
図11】
図11は実施例5のナノバブル発生構造の(a)は正面図、(b)は(a)の縦断面図、(c)は斜視図である。
【
図12】
図12(a)~(e)は実施例5の変更例の正面図である。
【
図13】
図13は実施例6のナノバブル発生構造の(a)は正面図、(b)は(a)の縦断面図、(c)は斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
1.トイレ装置
トイレ装置としては、特に限定されないが、洋式(腰掛式)便器、和式便器、小便器等を用いたものを例示できる。
ナノバブル発生構造を設ける、トイレ装置の外部の水路としては、特に限定されないが、トイレルームの止水栓からタンクに接続される配管等を例示できる。同じくトイレ装置の内部部の水路としては、特に限定されないが、便器洗浄水タンクまでの水路、便器洗浄水タンク内の水路、便器内の水路、便座内の股部洗浄構造内の水路等を例示できる。
【0020】
2.洗浄対象
洗浄対象物としては、特に限定されないが、便器の内面、利用者の手、利用者の肛門、利用者の局部等を例示できる。
【0021】
3.ナノバブル発生構造
ナノバブル発生構造としては、特に限定されないが、気体を液体に混合して微細化する混合方式の構造や、液体中からキャビテーションにより微細気泡を発生させるキャビテーション方式の構造を例示できる。キャビテーション(空洞現象)は、液体の流れの中で圧力が飽和水蒸気圧より低くなった瞬間に泡が発生する物理現象であり、一種の沸騰現象である。キャビテーション方式は、混合方式と比べて、気体を混合させるための構造が不要である分、シンプルであるという特長がある。
【0022】
よって、ナノバブル発生構造は、液体の流れ方向の順に流入部と絞り部と流出部とを含むベンチュリー通路を備え、液体がベンチュリー通路を流れるときに生じるキャビテーションにより液体中からナノバブルを発生させるものであることが好ましい。
【0023】
ベンチュリー通路としては、次の(ア)(イ)を例示できるが、下の理由から(イ)が好ましい。
(ア)絞り部は断面が円形の穴からなり、流入部は流れ方向に従い縮径して絞り部に接続する断面が円形の円錐内面からなり、流出部は絞り部よりも拡径した部分を含むもの。なお、本発明明細書において「円錐内面」は、円錐の頂部が切れてなる部分円錐状の内面をいう。
(イ)絞り部は断面が多角形の穴からなり、流入部は流れ方向に従い縮径して絞り部に接続する断面が多角形の角錐内面からなり、流出部は絞り部よりも拡径した部分を含むもの。なお、本明細書において「角錐内面」は、角錐の頂部が切れてなる部分角錐状の内面をいう。
【0024】
液体が、断面が多角形の穴からなる絞り部を通過するとき、円形の穴からなる絞り部を通過するときと比べて、ナノバブルの発生数が増える。これは、多角形の穴の角部分で乱流や二次流れ(主流と直角な方向に引き起こされる流れ)が生じるためであると考えられる。
さらに、液体が、絞り部の前にある断面が多角形の角錐内面からなる流入部を通過するときにも、円錐内面からなる流入部を通過するときと比べて、乱流や二次流れが生じ、その乱流や二次流れを伴った液体が上記絞り部でさらに乱流や二次流れを増大させるため、ナノバブルを非常に効率よく発生すると考えられる。
このような断面が多角形のベンチュリー通路は、断面が円形のベンチュリー通路に対して僅かな形状変化があるにすぎず、シンプルな構造を保っている。
【0025】
流出部は、特に限定されず、次の(カ)(キ)を例示できるが、(キ)が好ましい。
(カ)断面が円形の穴からなる絞り部に接続して流れ方向に従い拡径する断面が円形の円錐内面又は多角形の角錐内面からなるもの、又は該絞り部に対して段付き状に拡径する内面からなるもの。
(キ)断面が多角形の穴からなる絞り部に接続して流れ方向に従い拡径する断面が多角形の角錐内面からなるもの、又は該絞り部に対して段付き状に拡径する内面からなるもの。
【0026】
流入部、絞り部及び流出部における前記各「多角形」としては、特に限定されないが、三角形、四角形、五角形又は六角形が好ましく、三角形、四角形又は五角形がより好ましく、三角形又は四角形がさらに好ましく、三角形が最も好ましい。これは、例えば正多角形における一つの角の内角は、円形に近い正八角形で135°であるのに対し、正六角形で120°、正五角形で108°、正四角形で90°、正三角形で60°と小さく(鋭く)なり、これが鋭いほど上述した角部分での乱流や二次流れが強く生じるからである。
【0027】
よって、三角形としては、特に限定されないが、鈍角を含まない鋭角三角形(正三角形等)又は直角三角形が好ましいということができる。
【0028】
ナノバブル発生構造の形態としては、次の態様を例示できる。
(ア)液体流路の途中部に、形態を問わずベンチュリー通路を一つ備えている態様
(イ)入口側端面と出口側端面とを有するブロック体に、一つのベンチュリー通路を備えている態様。
(ウ)入口側端面と出口側端面とを有するブロック体に、複数のベンチュリー通路を並列に備えている態様。
【0029】
態様(ウ)において、複数の流入部の入口側端面での開口は、隣り合う開口の一辺どうしが共有(辺間に該入口側端面の一部が実質的に無い)又は平行(辺間に該入口側端面の一部が有る)するように配されていることが好ましく、平行する場合の辺間距離は2mm以下が好ましい(より好ましくは1mm以下)。入口側端面における開口と開口との間の面積(これは流動損失になる)を減少させることができるからである。
【0030】
態様(ウ)において、複数の流出部の出口側端面での開口は、隣り合う開口の一辺どうしが共有又は平行するように配されていることが好ましく、平行する場合の辺間距離は2mm以下が好ましい(より好ましくは1mm以下)。出口側端面における開口と開口との間の面積(これは流動損失になる)を減少させることができるからである。
【0031】
絞り部の内断面積としては、特に限定されないが、0.025~260mm2 を例示でき、流動抵抗とコンパクト性の観点からは0.1~50mm2 が好ましい。
流入部の開口断面積としては、特に限定されないが、上記絞り部の内断面積に対して4~40倍を例示できる。
流出部の開口断面積としては、特に限定されないが、上記絞り部の内断面積に対して4~40倍を例示できる。
流入部の流れ方向に対するテーパー角度(多角錐の辺のテーパー角度。以下同じ。)としては、特に限定されないが、10~70°を例示できる。
流出部の流れ方向に対するテーパー角度(多角錐の辺のテーパー角度。以下同じ。)としては、特に限定されないが、10~70°を例示できる。
【0032】
4.吐出部
吐出部としては、特に限定されないが、水をストレート状に吐出するノズルや単純孔、水を複数の液滴状に吐出するノズル、水を霧状に吐出するノズル等を例示できる。
【0033】
次に、本発明を具体化した実施形態のトイレ装置について、図面を参照して説明する。なお、実施形態で記す洗浄対象、構造、形状等は例示であり、発明の要旨から逸脱しない範囲で適宜変更できる。
【0034】
[実施形態1]
図1に示す実施形態1のトイレ装置は、洋式便器12と、便器洗浄水タンク30と、ナノバブル発生構造40とを備える。洋式便器12には、便器内面を洗浄する水の吐出口13と、上部から吐出口13までの吐出路14が形成されている。便器洗浄水タンク30の給水接続部31には、トイレルームの止水栓26からの給水管27が接続されている。
【0035】
便器洗浄水タンク30の内部において、給水接続部31には注水管32が接続され、注水管32の途中部には開閉弁33が設けられ、注水管32の開閉弁33よりも先部には分岐管34が接続され、注水管32の先端には注水口35が開口している。また、タンク内の水位に応じて開閉弁33を開閉するボールタップ36と、タンク底の排水口を開閉するフロート弁37と、故障などでタンクに溜まりすぎた水を排出するオーバーフロー管38とが設けられている。
【0036】
便器洗浄水タンク30の外部には、分岐管34に接続された手洗栓39が設けられ、また、フロート弁37に鎖でつながれたレバー28が設けられている。タンク底の排水口は、前記洋式便器12の吐出路14に連通している。
【0037】
これら各部の働きは通常どおりである。すなわち、ボールタップ36の浮球が一定の位置まで下がると、開閉弁33が開いて、給水管27からの水が注水管32に流れ、注水口35から便器洗浄水タンク30内に注水されるとともに、分岐管34を経て手洗栓39から流れ出る。便器洗浄水タンク30内の水位が上がり、ボールタップ36の浮球が一定の位置まで上がると、開閉弁33が閉じる。そして、レバー28を回すと、フロート弁37が持ち上げられて、便器洗浄水タンク30内の水がタンク底の排水口から排出され、吐出路14を経て吐出口13から吐出される。
【0038】
実施形態1の特徴は、トイレ装置の外部の水路である給水管27に、水中にナノバブルを発生させるナノバブル発生構造40が設けられたところにある。ナノバブル発生構造40により発生したナノバブルを含む水は、(1)注水口35、便器洗浄水タンク30内、吐出路14等からなる水路を経て、吐出口13から吐出されて洗浄対象としての便器内面を洗浄し、(2)分岐管34からなる水路を経て、手洗栓39から吐出されて洗浄対象としての利用者の手を洗浄する。
【0039】
このように、気泡発生構造で水中に発生する気泡をナノバブルとすると、ナノバブル発生構造40から吐出部である吐出口13又は手洗栓39までが遠く離れていても、その長い水路の移動中にナノバブルはほとんど消滅しないため、高い洗浄能力を得ることができる。また、ナノバブル発生構造40の設置位置の自由度を高めることもできる。
【0040】
[実施形態2]
図2に示す実施形態2のトイレ装置は、タンクレス方式の洋式便器12と、ナノバブル発生構造40とを備える。洋式便器12の給水接続部15には、トイレルームの止水栓26からの給水管27が接続されている。洋式便器12の内部において、給水接続部15には注水路16が接続され、注水路16は逆流防止機能付きの開閉弁17を経て二つに別れている。一つの注水路16は便器上部に第一吐出口18として開口し、別の注水路16は便器下部に第二吐出口19として開口している。20は排出口である。
【0041】
これら各部の働きは通常どおりである。すなわち、スイッチ(図示略)の操作により開閉弁17が開くと、給水管27からの水が注水路16に流れ、第一吐出口18及び第二吐出口19から吐出される。
【0042】
実施形態2の特徴は、トイレ装置の外部の水路である給水管27に、ナノバブルを発生させるナノバブル発生構造40が設けられたところにある。ナノバブル発生構造40により発生したナノバブルを含む水は、注水路16を経て、第一吐出口18及び第二吐出口19から吐出されて洗浄対象としての便器内面を洗浄する。なお、ナノバブル発生構造40は、給水管27に設ける代わりに、
図2に鎖線で示すように注水路16に設けてもよい。
実施形態2によっても、実施形態1と同様の作用効果が得られる。
【0043】
[実施形態3]
図3に示す実施形態3のトイレ装置は、洋式便器12と、股部洗浄構造が組み込まれた便座装置44と、ナノバブル発生構造40とを備える。便座装置44の給水接続部45には、トイレルームの止水栓26からの給水管27が接続されている。便座装置44の内部において、給水接続部45には注水管46が接続され、注水管46には開閉弁(図示略)を介して加熱機能付きタンク47が接続されている。加熱機能付きタンク47にはポンプ48が接続され、ポンプ48には噴出管49が接続されている。噴出管49は股部洗浄ノズル50の吐出路(図示略)に接続され、吐出路の先端は吐出口51として開口している。
【0044】
実施形態3の特徴は、トイレ装置の内部の水路である注水管46(加熱機能付きタンク47よりも手前)に、ナノバブルを発生させるナノバブル発生構造40が設けられたところにある。ナノバブル発生構造40により発生したナノバブルを含む水は、タンク47に蓄えられて加熱により温水となる。このタンク内のナノバブルを含む温水は、ポンプ48により噴出管49及び吐出路を経て、吐出口51から吐出されて洗浄対象としての肛門又は局部を洗浄する。
実施形態3によっても、実施形態1と同様の作用効果が得られる。
【0045】
[実施形態4]
図4に示す実施形態4のトイレ装置は、加熱機能付きタンクを備えない点において実施形態3と相違するものである。便座装置44の内部において、給水接続部45には注水管46が接続され、注水管46にはポンプ48が接続されている。ポンプ48には噴出管49が接続され、噴出管49の途中部にナノバブル発生構造40が設けられている。その他は実施形態3と同様である。
実施形態4によっても、実施形態1と同様の作用効果が得られる。
【実施例0046】
[実施例1~4]
上記[実施形態1~4]のナノバブル発生構造40として使用する、実施例1~4のナノバブル発生構造について、
図5~
図10を参照して説明する。なお、実施例で記す構造、材料、数値、形状及び寸法は例示であり、発明の要旨から逸脱しない範囲で適宜変更できる。
【0047】
実施例1~4のナノバブル発生構造は、
図5に示すように、入口側端面と出口側端面とを有するブロック体1にベンチュリー通路2を備え、液体がベンチュリー通路2を流れるときに生じるキャビテーションにより液体中からナノバブルを発生させるものである。ベンチュリー通路2は、液体の流れ方向の順に流入部3と絞り部4と流出部5とを含む。
【0048】
ブロック体1は、プラスチックにより成形された直径8.5mm、長さ10mmの円柱状のものである。ブロック体1は、円筒状のホルダー6を介して、ホース7で構成される液体流路の途中部に取り付けられている。ホルダー6の内周面は、内直径8.5mmの中央部と、内直径8.0mmの両端部とからなり、中央部にブロック体1が抱持されている。ホルダー6の両端部外周に、ホース7が挿着されている。
【0049】
実施例1~4は、ベンチュリー通路2の形状寸法においてのみ互いに相違し、その他は共通であるから、
図6~
図9にはベンチュリー通路2を備えたブロック体1のみを図示する。
【0050】
図6に示す実施例1のベンチュリー通路2は、絞り部4が、断面が正三角形の穴からなり、正三角形の一辺は2.45mm、絞り部4の長さは1mmである。
流入部3は、流れ方向に従い縮径して絞り部4に各角を合致させて接続する断面が正三角形の三角錐内面からなり、流入部3の入口側端面での開口の一辺は7.0mm、流入部3の長さは4.5mm、流入部3の流れ方向に対するテーパー角度は最大部位で30.3°である。
流出部5は、絞り部4に各角を合致させて接続して流れ方向に従い拡径する断面が正三角形の三角錐内面からなり、流出部5の出口側端面での開口の一辺は7.0mm、流出部5の長さは4.5mm、流出部5の流れ方向に対するテーパー角度は最大部位で30.3°である。すなわち、流入部3と流出部5は形状寸法が対称である。
【0051】
図7に示す実施例2のベンチュリー通路2は、絞り部4が、断面が正四角形(正方形)の穴からなり、正四角形の一辺は1.6mm、絞り部4の長さは1mmである。
流入部3は、流れ方向に従い縮径して絞り部4に各角を合致させて接続する断面が正四角形の四角錐内面からなり、流入部3の入口側端面での開口の一辺は4.6mm、流入部3の長さは4.5mm、流入部3の流れ方向に対するテーパー角度は最大部位で25.3°である。
流出部5は、絞り部4に各角を合致させて接続して流れ方向に従い拡径する断面が正四角形の四角錐内面からなり、流出部5の出口側端面での開口の一辺は4.6mm、流出部5の長さは4.5mm、流出部5の流れ方向に対するテーパー角度は最大部位で25.3°である。すなわち、流入部3と流出部5は形状寸法が対称である。
【0052】
図8に示す実施例3のベンチュリー通路2は、絞り部4が、断面が正六角形の穴からなり、正六角形の一辺は1mm、絞り部4の長さは1mmである。
流入部3は、流れ方向に従い縮径して絞り部4に各角を合致させて接続する断面が正六角形の六角錐内面からなり、流入部3の入口側端面での開口の一辺は2.85mm、流入部3の長さは4.5mm、流入部3の流れ方向に対するテーパー角度は最大部位で22.4°である。
流出部5は、絞り部4に各角を合致させて接続して流れ方向に従い拡径する断面が正六角形の六角錐内面からなり、流出部5の出口側端面での開口の一辺は2.85mm、流出部5の長さは4.5mm、流出部5の流れ方向に対するテーパー角度は最大部位で22.4°である。すなわち、流入部3と流出部5は形状寸法が対称である。
【0053】
図9に示す実施例4のベンチュリー通路2は、絞り部4が、断面が円形の穴からなり、円の直径は1.8mm、絞り部4の長さは1mmである。
流入部3は、流れ方向に従い縮径して絞り部4に接続する断面が円形の円錐内面からなり、流入部3の入口側端面での開口の直径は5.2mm、流入部3の長さは4.5mm、流入部3の流れ方向に対するテーパー角度は20.7°である。
流出部5は、絞り部4に接続して流れ方向に従い拡径する断面が円形の円錐内面からなり、流出部5の出口側端面での開口の直径は5.2mm、流出部5の長さは4.5mm、流出部5の流れ方向に対するテーパー角度は20.7°である。すなわち、流入部3と流出部5は形状寸法が対称である。
【0054】
次の表1に示すように、流入部3の開口断面積及び絞り部4の内断面積は、実施例1~4の間で実質的に同一であり、流入部3の開口断面積は絞り部4の内断面積に対して約8倍である。
【0055】
【0056】
[ナノバブル発生実験]
以上のように構成された実施例1~4のナノバブル発生構造について、ナノバブル発生実験を行った。
・
図5に示すように、水(水道水)を水槽8からポンプ9によりホース7→ベンチュリー通路2→ホース7の順に流し、ベンチュリー通路2で発生した微細気泡を含むサンプル水11を該ホース7から貯留槽10に貯溜した。水圧は0.05MPaと0.2MPaの二通りとし、各例における水流量を表1に記した。
・貯溜した直後のサンプル水11を測定用セルに汲み取って日本カンタム・デザイン株式会社製の測定装置(装置名:ナノ粒子解析システム・ナノサイトLM20)に設置し、同装置により自動的にサンプル水11中の微細気泡の個数を測定するとともに、粒度分布からピーク泡径を測定した。
【0057】
実施例1~4のいずれにおいても、ピーク泡径は100~200nm程度であり、サンプル水11中の微細気泡が比較的小径のナノバブルであることを確認した。これは、ベンチュリー通路2ではマイクロバブルとナノバブルとが発生していても、サンプル水11中でマイクロバブルと比較的大径のナノバブルは早期に浮上して消滅してしまい、比較的小径のナノバブルが残っていることによるものと考えられる。
【0058】
なお、本実験前に、実施例3と同じ六角形タイプのベンチュリー通路(但し流入部3の開口断面積は10.4mm2 )に手動式ポンプで水を通す予備試験を行い、同じく貯溜した直後と2週間経過後の各サンプル水について微細気泡の個数を測定したところ、2週間経過後のサンプル水中にも上記ナノバブルは(貯溜した直後に対して個数が36%減少したが)十分な数量が保持されていた。すなわち、上記ナノバブルは分単位ではほとんど減少しない。このことから、実施例1~4で、貯溜した直後のサンプル水11で測定したナノバブルの個数は、ベンチュリー通路2で発生した時のピーク泡径100~200nm程度以下のナノバブルの発生個数とみなせると考えられる。
【0059】
上記のとおり、貯溜した直後のサンプル水11で測定したナノバブルの個数(発生個数)は、表1と
図10に示すとおりであり、実施例1>実施例2>実施例3>実施例4の順であった。
【0060】
[実施例1~4の変更例]
実施例1~4のブロック体1及びベンチュリー通路2の寸法は適宜変更することができ、次に実施例1~3の変更例を例示する。
(ア)ブロック体1の直径を20mmにして、実施例1の絞り部4の一辺を4.6mm、流入部3の開口の一辺を22mmにしたり、実施例2の絞り部4の一辺を3mm、流入部3の開口の一辺を14.5mmにしたり、実施例3の絞り部4の一辺を1.88mm、流入部3の開口の一辺を9mmにしたりする。これらの各絞り部4の内断面積は約9mm2 である。
(イ)ブロック体1の直径を20mmにして、実施例1の絞り部4の一辺を6.5mm、流入部3の開口の一辺を22mmにしたり(この場合、流入部3の三角形開口の角部がブロック体に収まらずに欠けるが、このような態様も本発明に含まれる。)、実施例2の絞り部4の一辺を4.3mm、流入部3の開口の一辺を14.5mmにしたり、実施例3の絞り部4の一辺を2.65mm、流入部3の開口の一辺を9mmにしたりする。これらの各絞り部4の内断面積は約18mm2 である。
【0061】
[実施例5]
次に、実施例5のナノバブル発生構造は、
図11に示すように、ブロック体1に六つのベンチュリー通路2を並列に備えている点において実施例1と相違するものであり、その他は基本的に実施例1と共通である。一つ一つのベンチュリー通路2の流入部3、絞り部4及び流出部5の各断面形状は正三角形であり、各部の寸法は適宜設定できる。六つの流入部3の入口側端面での開口は、隣り合う開口の一辺どうしが共有又は平行するように配されており、該辺間距離は1mm以下である。六つの流出部5の出口側端面での開口は、隣り合う開口の一辺どうしが共有又は平行するように配されており、該辺間距離は1mm以下である。
【0062】
[実施例5の変更例]
実施例5のベンチュリー通路2の数や断面形状は、例えば
図12(a)~(e)のように、適宜変更することができる。
(a)はベンチュリー通路2の数を二つとし、流入部3、絞り部4及び流出部5の各断面形状を直角三角形とした例である。
(b)はベンチュリー通路2の数を四つとし、流入部3、絞り部4及び流出部5の各断面形状を直角三角形とした例である。
(c)はベンチュリー通路2の数を五つとし、流入部3、絞り部4及び流出部5の各断面形状を鋭角三角形とした例である。
(d)はベンチュリー通路2の数を八つとし、流入部3、絞り部4及び流出部5の各断面形状を鋭角三角形とした例である。
(e)はベンチュリー通路2の数を四つとし、流入部3、絞り部4及び流出部5の各断面形状が正三角形のものと直角三角形のものとを混在させた例である。
【0063】
[実施例6]
次に、実施例6のナノバブル発生構造は、
図13に示すように、ブロック体1に七つのベンチュリー通路2を並列に備えている点と、一つ一つのベンチュリー通路2の流入部3、絞り部4及び流出部5の各断面形状は正六角形であにおいて実施例1と相違するものであり、その他は基本的に実施例1と共通である。ベンチュリー通路2の各部の寸法は適宜設定できる。七つの流入部3の入口側端面での開口は、隣り合う開口の一辺どうしが共有又は平行するように配されており、該辺間距離は1mm以下である。七つの流出部5の出口側端面での開口は、隣り合う開口の一辺どうしが共有又は平行するように配されており、該辺間距離は1mm以下である。
【0064】
これら、実施例1~3の変更例、実施例5及びその変更例、並びに実施例6によっても、断面形状が円形のベンチュリー通路と比べて、ナノバブルの発生数を増やすことができる。
【0065】
その他、各実施例(変更例を含む)によれば、次の作用効果も得られる。
(ア)ベンチュリー通路2を備える1個のブロック体1(モジュール)は、構造が非常にシンプルであり、部品点数も少なく、量産性に優れており、プラスチックの射出成形などで容易に製造することができる。
(イ)寸法の設計・製造の自由度が高く、数mm~数十mm程度の小さなブロック体1も製造することができるため、多種のトイレ装置に容易に搭載することができ、ナノバブル生成機能を簡単に付与することができる。
(ウ)搭載場所、水圧、水流量等に応じて、ベンチュリー通路2の数及び断面形状を調整することにより、用途に応じたナノバブル発生構造を作成することができる。
【0066】
なお、本発明は前記実施例に限定されるものではなく、発明の要旨から逸脱しない範囲で適宜変更して具体化することができる。