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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024113511
(43)【公開日】2024-08-22
(54)【発明の名称】ワイヤーロック
(51)【国際特許分類】
   E05B 73/00 20060101AFI20240815BHJP
【FI】
E05B73/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023018556
(22)【出願日】2023-02-09
(71)【出願人】
【識別番号】592098403
【氏名又は名称】ジーエスケー産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076473
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100188765
【弁理士】
【氏名又は名称】赤座 泰輔
(74)【代理人】
【識別番号】100112900
【弁理士】
【氏名又は名称】江間 路子
(74)【代理人】
【識別番号】100163164
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 敏之
(72)【発明者】
【氏名】丸山 重夫
(57)【要約】
【課題】コンパクトなワイヤーロックを提供する。
【解決手段】ワイヤーロックは、対象物を繋縛するワイヤー3と、ワイヤー3を係止可能に把持するロック本体部1と、を有する。ロック本体部1は、ワイヤー3が貫入される貫入孔112を有する内筒110と、内筒110を被覆する外筒120と、が設けられ、外筒120の一端側の内側に、一端側に向けて狭窄された凹条部121が形成され、内筒110の一端側の外側に、凹条部121に適合する凸条部111が形成され、凸条部111に、ワイヤー3を押圧する球状のワイヤー押圧体116が、内筒110の中心軸に向けた方向に移動可能に設けられている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物を繋縛するワイヤーと、該ワイヤーを係止可能に把持するロック本体部と、を有するワイヤーロックであって、
該ロック本体部は、該ワイヤーが貫入される貫入孔を有する内筒と、該内筒を被覆する外筒と、が設けられ、
該外筒の軸方向の一端側の内側に、該一端側に向けて狭窄された凹条部が形成され、該内筒の該一端側の外側に、該凹条部に適合する凸条部が形成され、
該凸条部に、該ワイヤーを押圧するワイヤー押圧体が、該内筒の中心軸に向けた方向に移動可能に設けられ、
該内筒に、該内筒を該一端側に付勢する付勢部材が設けられていることを特徴とするワイヤーロック。
【請求項2】
前記外筒の側面に、前記内筒を他端側に摺動させるロックレバーが前記軸方向に摺動可能に設けられ、
該ロックレバーは、該ロックレバーの摺動の規制する開錠機構の開錠操作により、該内筒を該他端側に摺動させ、開錠させることを特徴とする請求項1に記載のワイヤーロック。
【請求項3】
前記一端側を前方に揃えて左右に平行に前記ロック本体部を2組備え、
該ロック本体部の前記ロックレバーは、前記開錠機構の左右にそれぞれ設けられ、該開錠機構の開錠操作により、該ロック本体部のそれぞれが開錠され、
前記ワイヤーは、両端部が該ロック本体部のそれぞれの該一端側から前記貫入孔に貫入され、中間部が繋縛ループを形成することを特徴とする請求項2に記載のワイヤーロック。
【請求項4】
前記ロック本体部のそれぞれの前記内筒及び前記外筒が前後左右方向の面に沿って扁平に形成され、
前記凹条部は、前記一端側の前方に向けて左右が狭窄され、
前記ワイヤー押圧体は、円柱状に形成されたことを特徴とする請求項3に記載のワイヤーロック。
【請求項5】
前記ワイヤー押圧体の側面にローレット加工が施されたことを特徴とする請求項4に記載のワイヤーロック。
【請求項6】
前記ワイヤーが樹脂で被覆されたことを特徴とする請求項5に記載のワイヤーロック。
【請求項7】
前記開錠機構は、前記ロックレバーを摺動させる開錠操作体と、該ロックレバーの摺動の規制を解除するキーとを備え、
該キーは、該開錠操作体に接する平面部に複数の開錠凹部からなるキー溝を備え、
該開錠操作体は、該キーが差し込まれるキー収容部と、該キー収容部の該キーの該平面部が接する側に配置され、該平面部または該キー溝に略垂直方向から係合する複数の開錠ピンと、該開錠ピンを上下に移動可能に収容したピン収容体と、を備え、
該キーが該キー収容部に差し込まれた際に、該開錠ピンが略垂直方向に移動し、該開錠ピンのコードピンとドライバーピンとの境界が開錠線と一致したとき、該開錠機構が開錠されることを特徴とする請求項2~6の何れかに記載のワイヤーロック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書の技術分野は、ワイヤーを用いて施錠するワイヤーロックに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ワイヤーを用いて施錠するワイヤーロックとして、下記特許文献1に、ロック本体部とワイヤーを有し、ロック本体部に、ワイヤーが貫入する貫入孔と、ワイヤーを付勢してワイヤーの移動を規制するロックアームと、が設けられたワイヤーロックが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第3229706号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されたワイヤーロックは、てこの原理を用いてロックアームがワイヤーを付勢することによって施錠されるため、ロック本体部をコンパクトにすることができないという課題があった。
【0005】
本明細書の技術が解決しようとする課題は、上述の点に鑑みてなされたものであり、コンパクトなワイヤーロックを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書の実施形態に係るワイヤーロックは、対象物を繋縛するワイヤーと、該ワイヤーを係止可能に把持するロック本体部と、を有するワイヤーロックであって、
該ロック本体部は、該ワイヤーが貫入される貫入孔を有する内筒と、該内筒を被覆する外筒と、が設けられ、
該外筒の軸方向の一端側の内側に、該一端側に向けて狭窄された凹条部が形成され、該内筒の該一端側の外側に、該凹条部に適合する凸条部が形成され、
該凸条部に、該ワイヤーを押圧するワイヤー押圧体が、該内筒の中心軸に向けた方向に移動可能に設けられ、
該内筒に、該内筒を該一端側に付勢する付勢部材が設けられていることを特徴とする。
【0007】
本明細書の実施形態に係るワイヤーロックによれば、ワイヤーを貫入孔に貫入させた内筒が、付勢部材によって一端側に付勢されることにより、外筒の一端側に摺動する。内筒が外筒の一端側に摺動することによって、内筒の凸条部が外筒の凹条部に嵌入しようとする。このとき、内筒の中心軸に向けた方向に移動可能に設けられた凸条部のワイヤー押圧体が、外筒の凹条部に接触して中心軸に向けた方向に移動し、ワイヤーを押圧する。このため、ワイヤーの一端側への移動が規制(ロック)される。逆に、ワイヤーが内筒(外筒)の他端側に付勢される際は、付勢部材の付勢に抗して内筒が外筒の他端側に摺動し、ワイヤー押圧体によるワイヤーの押圧が解除され、ワイヤーの他端側への移動は規制されることなく、ワイヤーが他端側へ移動可能となる。つまり、ワイヤーロックは、ワイヤーをループ状にし、繋縛する対象物を繋縛し、繋縛ループを形成してロック機能を発揮したとき、ワイヤーの他端側への移動は可能で、一端側への移動がロックされ、繋縛ループを締めることはできるが、緩めることができない、ロック位置調整型のロック機能を発揮する。また、実施形態に係るワイヤーロックは、ロック本体部がワイヤーを貫入する貫入孔を有する内筒と内筒を被覆する外筒とから構成されているため、コンパクトなものとすることができる。
【0008】
ここで、上記ワイヤーロックにおいて、前記外筒の側面に、前記内筒を他端側に摺動させるロックレバーが前記軸方向に摺動可能に設けられ、
該ロックレバーは、該ロックレバーの摺動の規制する開錠機構の開錠操作により、該内筒を該他端側に摺動させ、開錠させる構成とすることができる。
【0009】
これによれば、開錠機構の開錠操作により、ロックレバーが内筒を該他端側に摺動させて、ワイヤー押圧体によるワイヤーの押圧を解除し、ロックを解除することができる。
【0010】
また、上記ワイヤーロックにおいて、前記一端側を前方に揃えて左右に平行に前記ロック本体部を2組備え、
該ロック本体部の前記ロックレバーは、前記開錠機構の左右にそれぞれ設けられ、該開錠機構の開錠操作により、該ロック本体部のそれぞれが開錠され、
前記ワイヤーは、両端部が該ロック本体部のそれぞれの該一端側から前記貫入孔に貫入され、中間部が繋縛ループを形成する構成とすることができる。
【0011】
これによれば、ワイヤーの中間部の繋縛ループは、両端部が2組のロック本体部のそれぞれの貫入孔に一端側から嵌入されることにより、開錠操作がされない限り、繋縛ループを小さく締めることはできるが、広げ緩めることができないロック機能を発揮することができる。
【0012】
また、上記ワイヤーロックにおいて、前記ロック本体部のそれぞれの前記内筒及び前記外筒が前後左右方向の面に沿って扁平に形成され、
前記凹条部は、前記一端側の前方に向けて左右が狭窄され、
前記ワイヤー押圧体は、円柱状に形成された構成とすることができる。
【0013】
これによれば、ワイヤーロックの上下方向の厚みを薄くすることができ、ワイヤーロックを小型化することができる。
【0014】
また、上記ワイヤーロックにおいて、前記ワイヤー押圧体の側面にローレット加工が施された構成とすることができる。
【0015】
これによれば、ローレット加工により、ワイヤーを強固に押圧することができる。
【0016】
また、上記ワイヤーロックにおいて、前記ワイヤーが樹脂で被覆された構成とすることができる。
【0017】
これによれば、繋縛する対象物をワイヤーで傷つけることを防止することができるとともに、ワイヤーロックがワイヤーを被覆する樹脂に食い込み、ワイヤーロックの押圧を強固なものとすることができる。
【0018】
また、上記ワイヤーロックにおいて、前記開錠機構は、前記ロックレバーを摺動させる開錠操作体と、該ロックレバーの摺動の規制を解除するキーとを備え、
該キーは、該開錠操作体に接する平面部に複数の開錠凹部からなるキー溝を備え、
該開錠操作体は、該キーが差し込まれるキー収容部と、該キー収容部の該キーの該平面部が接する側に配置され、該平面部または該キー溝に略垂直方向から係合する複数の開錠ピンと、該開錠ピンを上下に移動可能に収容したピン収容体と、を備え、
該キーが該キー収容部に差し込まれた際に、該開錠ピンが略垂直方向に移動し、該開錠ピンのコードピンとドライバーピンとの境界が開錠線と一致したとき、該開錠機構が開錠されるものとすることができる。
【0019】
これによれば、キーがキー収容部に差し込まれることにより、複数の開錠ピンが平面部又はキー溝に係合する。正しいキーが用いられ、開錠ピンのコードピンとドライバーピンとの境界が開錠線(shear line)と一致したとき、該開錠機構が開錠されるため、セキュリティを向上させることができる。
【発明の効果】
【0020】
本明細書のワイヤーロックによれば、コンパクトなものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】第1実施形態のワイヤーロックの斜視図である。
図2】ワイヤーを施錠方向に摺動させた状態の図1のII-II線断面図である。
図3】ワイヤーを開錠方向に付勢させた状態の図1のIII-III線断面図である。
図4】開錠させた状態の図1のIV-IV線断面図である。
図5】第2実施形態のワイヤーロックの斜視図である。
図6】上ケースを外した状態の同ワイヤーロックの斜視図である。
図7】開錠操作体と内筒とを組み合わせた状態の斜視図である。
図8】ワイヤーを施錠方向に摺動させた状態の図5のVIII-VIII線断面図である。
図9】ワイヤーを開錠方向に付勢させた状態の図5のIX-IX線断面図である。
図10図5のX-X線断面図であり、(A)は施錠された状態を示す図、(B)はキーが挿入された状態を示す図、(C)はキーが挿入されて開錠された状態を示す図である。
図11図5のXI-XI線断面図であり、(A)は施錠された状態を示す図、(B)は開錠された状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
実施形態に係るワイヤーロックは、集配金バッグの施錠において使用されるプラスチック製の使い捨ての結束バンドの代替品として使用することができ、結束バンドの使い捨てを無くすことにより、脱プラスチック化を図ることができるものである。また、実施形態に係るワイヤーロックは、傘、靴、スキー板などの携行品などを固定物や互いに繋縛して、これらの盗難や取り違えの予防などに使用することもできるものである。
【0023】
本明細書において、ワイヤーロックの向きは、図1及び図5に示すように、内筒110の軸方向を前後方向とし、凸条部111を有する一端側を前、他端側を後とする。上下は、ワイヤーロックの開錠機構2を有する側を上とし、内筒110を有する側を下とする。左右は、ワイヤーロックを前側から見た際の左右とする。そして、図示で使用する、Fは前、Bは後、Uは上、Dは下、Lは左、Rは右を示す。また、ロック本体部1、1Aの中心を基準に、内側又は外側と表現することがある。
【0024】
(第1実施形態)
以下、本明細書の第1実施形態に係るワイヤーロックを図1図4に基づいて説明する。なお、本発明の範囲は、実施形態で開示される範囲に限定されるものではない。
【0025】
第1実施形態のワイヤーロックは、図1図4に示すように、ワイヤー3を備え、ワイヤー3がロック本体部1の前方内側から前方に突出するように接続されている。ワイヤーロックは、ワイヤー3を用いて、集配金バッグの施錠をし、又は、携行品などを固定物や互いに繋ぎ止め、ワイヤー3の先端をロック本体部1のワイヤー入口103から連通する内筒110の貫入孔112へ貫入させることにより、ワイヤー3から繋縛ループ4を形成する。繋縛ループ4によって、ワイヤーロックは、集配金バッグの施錠をし、又は、携行品を固定物や互いに繋縛させて携行品の盗難等を防止する。
【0026】
ワイヤー3は、耐食性に優れるステンレス鋼を糸状にして、より合わせたストランド(小縄)を心綱とし、これを複数本より合わせた、φ1mm(外径1mm)のステンレスワイヤーロープを用いた。
【0027】
ロック本体部1は、図2図4に示すように、前後方向に、ワイヤー3が貫入される貫入孔112を有する内筒110と、内筒110を被覆する外筒120とが備えられ、外筒120に対して内筒110は前後方向に摺動可能に設置されている。外筒120の一端側となる前側の内側には、前方に向けて狭窄された凹条部121が形成され、内筒110の前側の外側は、前方が尖って、外筒120の凹条部121に適合する凸条部111が形成されている。内筒110が前方に摺動したとき、図3に示すように、凸条部111が凹条部121に嵌合する。凹条部121の中心前方には、ワイヤー3の入口となるワイヤー入口103が形成され、ワイヤー3は、ワイヤー入口103から内筒110の貫入孔112へ貫入するように構成されている。外筒120の後側には、閉塞された後壁123が形成され、後壁123の中心には、ワイヤー3の出口となるワイヤー出口104が形成され、ワイヤー3は、内筒110の貫入孔112からワイヤー出口104を経てロック本体部1の外側に出るように構成されている。
【0028】
内筒110の凸条部111には、図2図4に示すように、凸条部111の周方向から内筒110中心軸へ向かう半径方向に、互いに周方向の等間隔に3つの孔状の押圧体収容孔113が設けられ、押圧体収容孔113には、それぞれ、貫入孔112に貫入したワイヤー3を押圧する球状のワイヤー押圧体116が半径方向に移動可能に装入されている。
【0029】
貫入孔112に貫入されたワイヤー3が前側に付勢されることにより、摩擦と内筒付勢バネ126の付勢により、内筒110が外筒120の前側に摺動する。内筒110が外筒120の前側に摺動することによって、内筒110の凸条部111が外筒120の凹条部121に嵌入しようとする。このとき、凸条部111の半径方向の押圧体収容孔113内に移動可能に装入された球状のワイヤー押圧体116が、外筒120の凹条部121に接触して半径方向内側に移動し、ワイヤー3を押圧する。このため、ワイヤーの前側への移動が規制(ロック)される。逆に、ワイヤー3が後側に付勢される際は、内筒付勢バネ126の付勢に抗して、内筒110が外筒120の他端側である後側に摺動し、球状のワイヤー押圧体116によるワイヤー3への押圧が解除されるため、ワイヤー3の後側への移動は規制されることなく、ワイヤー3が後側へ移動可能となる。つまり、ワイヤーロックは、ワイヤー3から繋縛ループ4を形成してロック機能を発揮したとき、ワイヤー3の後側への移動は可能でありながら、前側への移動がロックされ、繋縛ループ4を締めることはできるが、緩めることができない、ロック位置調整型のロック機能を発揮することができる。
【0030】
外筒120の内側の後側に、内筒110の後側の外周を覆うように、付勢部材としての内筒付勢バネ126が設けられている。内筒付勢バネ126は、内筒110の前後方向略中間の外側の周方向に設けられた掛止リング114と、外筒120の後壁123とに、挟持され、内筒110を前側に付勢する。これにより、ワイヤー3が後側に付勢されない限り、常に、ワイヤー3が球状のワイヤー押圧体116によって押圧されるため、ワイヤー3の前側への移動がロックされる。
【0031】
図2図4に示すように、外筒120の上側の前後方向略中央の部分には、開口した開口部125が設けられ、開口部125の下に位置する内筒110の周方向に、付勢リング115が設けられ、開口部の上側には、付勢リング115を介して内筒110を後方に付勢可能とするロックレバー130が設けられている。ロックレバー130を用いて、内筒110を後方に付勢することにより、ワイヤーロックのロックを解除(図4)することができる。
【0032】
実施形態のワイヤーロックは、キー230によって開錠することができる開錠機構2をロック本体部1の上側に備え、開錠操作によりロックレバー130を介して内筒110を後方に摺動させることにより、ワイヤーロックのロックを解除することができる。
【0033】
図2から図4に示すように、開錠機構2は、前方に開口した鍵穴201と、鍵穴201に差し込まれるキー230と、鍵穴201内に沿って配置され、キー230に下側から係合する複数の開錠ピン210と、を備える。キー230は、鍵穴201に差し込まれる平面部231に、複数の開錠凹部としてのキー溝232が形成されている。
【0034】
開錠ピン210は、ドライバーピン212とコードピン211とからなり、コードピン211の長さは、キー溝232の深さに応じて求められる。開錠ピン210は、ピン収容孔214aの下側の奥に収容されたピン付勢バネ213によって上方に付勢されている。鍵穴201にキー230が差し込まれ、全てのコードピン211とドライバーピン212の境界が開錠線2aと一致したとき、開錠状態となり、ピン収容体214に対して開錠操作体220が解除方向となる後方に摺動可能となる。開錠操作体220の前方下側には、ロック本体部1のロックレバー130を後方に付勢する係合脚部222が突設され、係合脚部222は、ピン収容体214の前方に備えられた操作体付勢バネ215によって、非解除方向である前方に付勢されている。
【0035】
開錠操作体220が後方に摺動すると、係合脚部222がロック本体部1のロックレバー130を後方に付勢し、ロックレバー130を介して内筒110を後方に摺動させることにより、ワイヤー3のワイヤー押圧体116による押圧が解除され、ワイヤーロックのロックを解除することができる。
【0036】
上記構成のワイヤーロックは、集配金バッグの施錠において使用されるプラスチック製の使い捨ての結束バンドの代替品として使用することができ、結束バンドの使い捨てを無くすことにより、脱プラスチック化を図ることができる。また、上記構成のワイヤーロックは、傘、靴、スキー板などの携行品などを固定物や互いに繋縛して、これらの盗難や取り違えの予防などに使用することができる。
【0037】
集配金バッグの施錠や携行品をロックする場合、ロック本体部1の前方内側から前に表出したワイヤー3で集配金バッグや携行品を繋ぎ止めながら、ワイヤー3から繋縛ループ4を形成して、ワイヤー3の先端をロック本体部1のワイヤー入口103から内筒110の貫入孔112へ貫入させる。この際、内筒110が外筒120の他端側である後側に摺動し、球状のワイヤー押圧体116によるワイヤー3の押圧が解除されるため、ワイヤー3の後側への移動は規制されることなく、ワイヤー3が後側へ移動することができる。一方、ロック後に、繋縛ループ4を拡げる方向に伸ばそうとすると、貫入孔112に貫入されたワイヤー3が前側に付勢されることとなり、摩擦により、内筒110が外筒120の前側に摺動する。内筒110が外筒120の前側に摺動することによって、内筒110の凸条部111が外筒120の凹条部121に嵌入しようとする。凸条部111の半径方向の押圧体収容孔113内に移動可能に設けられた球状のワイヤー押圧体116が、外筒120の凹条部121に接触して半径方向内側に移動し、ワイヤー3を押圧する。このため、ワイヤーの前側への移動が規制(ロック)される。つまり、ワイヤーロックは、ワイヤー3から繋縛ループ4を形成してロック機能を発揮したとき、ワイヤー3の後側への移動は可能でありながら、前側への移動がロックされ、繋縛ループ4を締めることはできるが、緩めることができない、ロック位置調整型のロック機能を発揮することができる。
【0038】
ロックされたワイヤーロックは、鍵穴201にキー230を差し込むことにより、ロックを解除(開錠)することができる。開錠する場合、鍵穴201にキー230を差し込み、開錠操作体220を後方に押し込んで、開錠する。鍵穴201にキー230を差し込むと、全てのコードピン211とドライバーピン212との境界が開錠線2aと一致し、開錠操作体220が解除方向となる後方に摺動可能となる。開錠操作体220が後方に摺動することによって、開錠操作体220の前方下側に突設された係合脚部222がロック本体部1のロックレバー130を後方に付勢する。キー230が開錠操作体220とロックレバー130を介して内筒110を後方に摺動させることにより、ワイヤー3のワイヤー押圧体116による押圧が解除され、ワイヤーロックのロックを解除(開錠)することができる。
【0039】
第1実施形態に係るワイヤーロックによれば、ワイヤー3を貫入孔112に貫入させた内筒110が、付勢部材としての内筒付勢バネ126によって一端側に付勢されることにより、外筒120の一端側に摺動する。内筒110が外筒120の一端側に摺動することによって、内筒110の凸条部111が外筒120の凹条部121に嵌入しようとする。このとき、内筒110の中心軸に向けた方向に移動可能に設けられた凸条部111の球状のワイヤー押圧体116が、外筒120の凹条部121に接触して中心軸に向けた方向に移動し、ワイヤー3を押圧する。このため、ワイヤー3の一端側への移動が規制(ロック)される。逆に、ワイヤー3が内筒110(外筒120)の他端側に付勢される際は、付勢部材の付勢に抗して内筒110が外筒120の他端側に摺動し、球状のワイヤー押圧体116によるワイヤー3の押圧が解除され、ワイヤー3の他端側への移動は規制されることなく、ワイヤー3が他端側へ移動可能となる。つまり、ワイヤーロックは、ワイヤー3から繋縛ループ4を形成してロック機能を発揮したとき、ワイヤー3の他端側への移動は可能であり、一端側への移動がロックされ、繋縛ループ4を締めることはできるが、緩めることができない、ロック位置調整型のロック機能を発揮することができる。また、実施形態に係るワイヤーロックのロック本体部1は、ワイヤー3が貫入される貫入孔112を有する内筒110と、内筒110を被覆する外筒120と、から構成されているため、コンパクトなものとすることができる。
【0040】
(第2実施形態)
以下、本明細書の第2実施形態に係るワイヤーロックを図5図11に基づいて説明する。なお、第2実施形態において、第1実施形態と共通する要素については同じ符号を用いてその説明を省略する。
【0041】
第2実施形態のワイヤーロックは、図6に示すように、ロック本体部1Aの2組が、内筒110の凸条部111を有する一端側を前方に揃えて左右に平行に配置される。ワイヤー3Aは、ロック本体部1Aと脱着可能な別部材として用意され、両端部のそれぞれが、2組のロック本体部1Aのワイヤー入口103から内筒110の貫入孔112に嵌入され、ワイヤー3Aの中間部が繋縛ループ4Aを形成する。繋縛ループ4Aは、ワイヤー3Aの両端部の2本を均等にワイヤーロックから引くことによって、繋縛ループ4Aの中心を移動させることなく、繋縛ループ4Aを狭めることができるため、容易に繋縛させることができるとともに、繋縛する対象物をワイヤー3Aで傷つけることを防止することができる。
【0042】
ワイヤーロックは、開錠機構2の開錠操作により、開錠操作体220に付設されたロックレバー131がそれぞれの内筒110を後方に摺動させ、2組のロック本体部1Aを開錠させて、繋縛ループ4Aを拡げて開放する。
【0043】
ワイヤー3Aは、耐食性に優れるステンレス鋼を糸状にして、より合わせたストランド(小縄)を心綱とし、これを複数本より合わせた、φ1mm(外径1mm)ステンレスワイヤーロープの表面に樹脂被覆を施したものを使用した。ワイヤー3Aに、樹脂被覆を施したステンレスワイヤーロープを使用することにより、繋縛する対象物をワイヤー3Aで傷つけることを防止することができるとともに、ワイヤー押圧体117がワイヤー3Aを被覆する樹脂被覆に食い込み、ワイヤーロックの押圧を強固なものとすることができる。
【0044】
ロック本体部1Aは、図6に示すように、左右に並んで前後方向に2組配置され、それぞれ、ワイヤー3Aが貫入される貫入孔112を有する前後左右方向に扁平した扁平状の内筒110と、内筒110を被覆する前後左右方向に扁平した扁平状の外筒120と、が備えられている。外筒120は、図7及び図8に示すように、ロック本体部1Aを形成する下ケース102の内側を削り出すことによって成形されている。外筒120の一端側となる前側の内側には、前側に向けて左右が狭窄された凹条部121が形成され、内筒110の一端側となる前側の外側には、前側に向けて左右が狭められた凸条部111が形成されている。内筒110が前方に摺動したとき、図9に示す如く、凸条部111は凹条部121に嵌合するように形成されている。凹条部121の中心前方には、ワイヤー3Aの入口となるワイヤー入口103が形成され、ワイヤー3Aは、図6に示すように、ワイヤー入口103から内筒110の貫入孔112へ貫入できるように構成されている。外筒120の後側には、閉塞された後壁123(図9)が形成され、それぞれの後壁123の中心には、ワイヤー3の出口となるワイヤー出口104が形成され、ワイヤー3は、内筒110の貫入孔112からワイヤー出口104を経てロック本体部1の外側に出るように構成されている。
【0045】
内筒110の凸条部111には、図6図9に示すように、凸条部111から内筒110内側に向けて、左右から2つの押圧体収容孔113が設けられ、押圧体収容孔113には、それぞれ、貫入孔112に貫入したワイヤー3Aを押圧する円柱状のワイヤー押圧体117が内筒110内側に向けて移動可能に装入されている。
【0046】
円柱状のワイヤー押圧体117は、内筒110の上下左右方向の扁平面に直交する回動軸を中心に回動可能に形成され、側面にはその表面に細かい凹凸を形成させるローレット加工が施されている。側面のローレット加工により、ワイヤー押圧体117は、ローレット加工の凹凸がワイヤー3Aの樹脂被覆に食い込み、ワイヤー3Aを強固に押圧することができる。
【0047】
ロック本体部1Aと外筒120を形成する上ケース101及び下ケース102、内筒110、並びに、ワイヤー押圧体117は、金属の削り出しによって成形されている。
【0048】
繋縛ループ4Aを拡げようとする場合など、貫入孔112に貫入されたワイヤー3Aが前側に付勢されると、ワイヤー3Aによる摩擦と内筒付勢バネ126による付勢により、内筒110が外筒120の前側に摺動する。内筒110が外筒120の前側に摺動することによって、内筒110の凸条部111が外筒120の凹条部121に嵌入しようとする。そして、凸条部111の左右の押圧体収容孔113内に移動可能に配置された円柱状のワイヤー押圧体117が、外筒120の凹条部121に接触して内側に移動し、ワイヤー3Aを押圧する。このとき、ワイヤー押圧体117のローレット加工の凹凸がワイヤー3Aの樹脂被覆に食い込み、ワイヤー3Aを強固に押圧する。さらに、ワイヤー3Aを前側に引き抜こうとするように、ワイヤー3Aが前側にさらに強く付勢されると、ワイヤー押圧体117には、外筒120の凹条部121を左右に押し広げようとする力(つまりは、内筒110を後方へ移動させようとする力)が加わるとともに、ワイヤー押圧体117のローレット加工の凹凸がワイヤー3Aの樹脂被覆により食い込み、ワイヤー3Aをより強固に押圧する。このため、ワイヤー3Aの前側への移動が規制され、繋縛ループ4Aを拡げることが規制(ロック)される。
【0049】
逆に、繋縛ループ4Aを狭めようとする場合など、ワイヤー3Aが後側に付勢される際は、内筒110が外筒120の他端側である後側に摺動し、円柱状のワイヤー押圧体117によるワイヤー3Aへの押圧が解除されるため、ワイヤー3Aの後側への移動は規制されることなく、ワイヤー3Aが後側へ移動可能となる。つまり、ワイヤーロックは、ワイヤー3Aから繋縛ループ4Aを形成してロック機能を発揮したとき、ワイヤー3の後側への移動は可能でありながら、前側への移動がロックされ、繋縛ループ4Aを締めることはできるが、緩めることができない、ロック位置調整型のロック機能を発揮することができる。
【0050】
内筒110の後方のバネ収容孔119に、付勢部材としての内筒付勢バネ126が収められている。内筒付勢バネ126は、内筒110と外筒120の後壁123とに挟持され、内筒110を前側に付勢する。これにより、ワイヤー3Aが後側に付勢されない限り、常に、ワイヤー3Aが球状の円柱状のワイヤー押圧体117によって押圧されるため、ワイヤー3の前側への移動がロックされる。
【0051】
図6図7及び図11に示すように、内筒110の上面に、付勢段差118が設けられ、内筒110の上側には、付勢段差118を後方に付勢可能とするロックレバー131が付設された開錠操作体220が設置されている。開錠操作体220を介してロックレバー131によって、内筒110を後方に付勢することにより、ワイヤーロックのロックを解除(開錠)することができる。
【0052】
ロックされたワイヤーロックは、鍵穴201にキー230を差し込み、開錠操作体220を後方に押し込むことによって、ロックを解除(図8図11(B))することができる。鍵穴201にキー230を差し込まれると、全てのコードピン211とドライバーピン212との境界が開錠線2aと一致し、開錠操作体220が解除方向となる後方に摺動可能となる。開錠操作体220が後方に押し込まれることによって、開錠操作体220付設されたロックレバー131が左右それぞれの内筒110を後方に摺動させる。これにより、左右それぞれのワイヤー3Aのワイヤー押圧体117による押圧が解除され、ワイヤーロックのロックを解除(開錠)する。
【0053】
第2実施形態のワイヤーロックによれば、ワイヤー3Aの中間部の繋縛ループ4Aは、両端部が2組のロック本体部1Aのそれぞれの貫入孔112に一端側から嵌入されることにより、開錠操作がされない限り、繋縛ループ4Aを小さく締めることはできるが、広げ緩めることができないロック機能を発揮することができる。
【0054】
(その他実施形態)
なお、実施形態のワイヤーロックは、その他実施形態として、以下のような形態であってもその実施をすることができる。
【0055】
第1実施形態のワイヤーロックでは、内筒110の凸条部111から内筒110の半径方向に、3つの組の押圧体収容孔113と球状のワイヤー押圧体116が設けられたものとしたが、押圧体収容孔113と球状のワイヤー押圧体116の組の数は、1~6組とすることができる。球状のワイヤー押圧体116が好適にワイヤー3を押圧することができるためである。押圧体収容孔113と球状のワイヤー押圧体116の組の数が1組未満である場合(つまり、押圧体収容孔113と球状のワイヤー押圧体116がない場合)には、球状のワイヤー押圧体116がワイヤー3を押圧することができず、ワイヤーロックは、ロック機能を発揮することができないおそれがある。一方、押圧体収容孔113と球状のワイヤー押圧体116の組の数が6組を超える場合には、球状のワイヤー押圧体116がワイヤー3を押圧することはできるものの、内筒110の内部の構造が複雑になり、簡便に製造することができないおそれがある。より好ましくは、押圧体収容孔113と球状のワイヤー押圧体116の組の数は、2~4組であり、さらに好ましくは、3組である。
【0056】
第1実施形態のワイヤーロックでは、ワイヤー3がロック本体部1の前方内側から前方に突出するように接続され、ワイヤー3がロック本体部1と一体化されたものとしたが、ワイヤー3とロック本体部1とを別体とするものとすることができる。この場合、ワイヤー3の一端を輪状の掛止輪とし、集配金バッグや携行品などを固定物や互いに繋縛して、ワイヤー3の他端の先端部を掛止輪内に通し、他端の先端部からロック本体部1に通すことにより、ワイヤーロックはその機能を発揮することができる。
【0057】
第2実施形態のワイヤーロックでは、内筒110の凸条部111に、左右から2つの押圧体収容孔113が設けられ、2つの押圧体収容孔113にそれぞれ円柱状のワイヤー押圧体117が装入されたものとしたが、押圧体収容孔113とワイヤー押圧体117は、右又は左の一組の押圧体収容孔113とワイヤー押圧体117を備えるものであっても、ワイヤー3Aを押圧することができる。
【0058】
第2実施形態のワイヤーロックでは、ロック本体部1Aと外筒120を形成する上ケース101及び下ケース102、内筒110、並びに、ワイヤー押圧体117は、金属の削り出しによって成形したが、予め成型した鋳型に溶融金属を流し込む鋳造による成形や、型枠に溶融樹脂を流し込む樹脂成形によっても成形することができる。ワイヤーロックは、樹脂成形によって成形することによって、軽量化を図ることができる。
【0059】
実施形態のワイヤーロックでは、ワイヤー3としてφ1mm(外径1mm)ステンレスワイヤーロープを用いたが、ワイヤー3は、内筒110の貫入孔112の径を合わせることにより、その太さとして、例えば、φ0.45mm~φ3mmであるものを用いることができる。ワイヤー3の太さがφ0.45mm~φ3mmであることによって、ワイヤー3の強度とロック本体部1の取り扱い性を保つことができるためである。ワイヤー3の太さがφ0.45mm未満である場合には、ワイヤー3の強度が不足するおそれがある。一方、ワイヤー3の太さがφ3mmを超えると、ロック本体部1が大きくなり、ロック本体部1の取り扱い性が劣るおそれがある。より好ましくは、ワイヤー3の太さはφ0.81mm~φ2mmとすることができる。また、実施形態のワイヤーロックでは、ワイヤー3の材質としてステンレス鋼を用いたが、材質はこれに限定されることなく、ピアノ線などの鉄鋼系、黄銅などの非鉄系、タングステン、チタンなどであっても使用することができる。
【符号の説明】
【0060】
1 ロック本体部
1A ロック本体部
2 開錠機構
2a 開錠線
3 ワイヤー
3A ワイヤー
4 繋縛ループ
4A 繋縛ループ
101 上ケース
102 下ケース
103 ワイヤー入口
104 ワイヤー出口
110 内筒
111 凸条部
112 貫入孔
113 押圧体収容孔
114 掛止リング
115 付勢リング
116 ワイヤー押圧体
117 ワイヤー押圧体
118 付勢段差
119 バネ収容孔
120 外筒
121 凹条部
123 後壁
125 開口部
126 内筒付勢バネ
130 ロックレバー
131 ロックレバー
201 鍵穴
210 開錠ピン
211 コードピン
212 ドライバーピン
213 ピン付勢バネ
214 ピン収容体
214a ピン収容孔
215 操作体付勢バネ
220 開錠操作体
222 係合脚部
230 キー
231 平面部
232 キー溝
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
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図11