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  • 特開-梁および接合構造 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024113515
(43)【公開日】2024-08-22
(54)【発明の名称】梁および接合構造
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/21 20060101AFI20240815BHJP
   E04B 1/58 20060101ALI20240815BHJP
【FI】
E04B1/21 D
E04B1/58 503C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023018562
(22)【出願日】2023-02-09
(71)【出願人】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096091
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 誠一
(72)【発明者】
【氏名】日向 大樹
(72)【発明者】
【氏名】岡安 隆史
(72)【発明者】
【氏名】高稻 宜和
【テーマコード(参考)】
2E125
【Fターム(参考)】
2E125AA13
2E125AB12
2E125AC02
2E125BA41
2E125BA46
(57)【要約】
【課題】カーボンニュートラル実現に貢献できる梁等を提供する。
【解決手段】梁2は、複数の梁材1を梁幅方向に並べて構成される。梁材1は、二酸化炭素固定化養生処理を行ったコンクリートによるプレキャスト部材であり、主筋12およびせん断補強筋が埋設される。梁2と柱4の接合構造3では、柱4の上端部に配置された柱梁接合部41から側方に延びる鉄筋412と、梁材1から突出する主筋12とが継手部32によって接続され、継手部32およびその両側の鉄筋412および主筋12を囲むように、環状のせん断補強筋31が配置される。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化炭素固定化養生処理を行ったコンクリートによるプレキャスト部材を用いた梁であって、
複数の梁材を梁幅方向に並べて構成され、
前記梁材の少なくとも一つが前記プレキャスト部材であり、
当該プレキャスト部材に、主筋およびせん断補強筋が埋設されたことを特徴とする梁。
【請求項2】
前記コンクリートは、二酸化炭素を固定させるための材料として、γビーライト、高炉スラグ、石炭灰のうちの少なくとも一つを含み、当該材料によって二酸化炭素が固定されたことを特徴とする請求項1記載の梁。
【請求項3】
前記梁材の少なくとも一つが、前記プレキャスト部材でないことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の梁。
【請求項4】
前記梁は建物の外周部に配置され、前記建物の外側に位置する梁材は、前記プレキャスト部材でないことを特徴とする請求項3記載の梁。
【請求項5】
前記梁材の少なくとも一つが、木部材であることを特徴とする請求項3記載の梁。
【請求項6】
請求項1記載の梁と柱の接合構造であって、
前記柱と前記梁の接合部に配置された接合部プレキャスト部材から側方に延びる鉄筋と、前記梁のプレキャスト部材から突出する前記主筋とが継手部によって接続され、
前記継手部およびその両側の前記鉄筋および前記主筋を囲むように、環状のせん断補強筋が配置されたことを特徴とする接合構造。
【請求項7】
前記接合部プレキャスト部材は、前記柱よりも側方に延びる梁部分を有し、
前記梁は、前記梁の両側に位置する前記接合部プレキャスト部材の梁部分の間に配置されたことを特徴とする請求項6記載の接合構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリートによるプレキャスト部材を用いた梁等に関する。
【背景技術】
【0002】
カーボンニュートラル実現に貢献できる建築技術として、二酸化炭素をコンクリートに吸収、固定化させるもの(炭酸化技術)が知られている。
【0003】
これは、コンクリート中のセメントを特殊な混和材であるγビーライト(γ-CS)や産業副産物である高炉スラグ、石炭灰等に置き換え、当該コンクリートによるプレキャスト部材の製造時に、火力発電所の排気ガスなどに含まれる二酸化炭素を材齢の若いコンクリートに大量に固定する二酸化炭素固定化養生(炭酸化養生)を行うことにより、コンクリート中に二酸化炭素を吸収、固定化させるものである(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5504000号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の養生過程ではコンクリートの表面から二酸化炭素が吸収されるため、表面積の大きい部材ほど二酸化炭素を多く吸収できるという特性がある。そのため、前記の炭酸化技術は、ボリュームに対する表面積の大きい床や壁などの板状部材や、ボリュームそのものが小さいブロックなどへの適用が検討されることが多く、梁については、ボリュームに対する表面積が小さいことから、適用の検討が進んでいない。
【0006】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、カーボンニュートラル実現に貢献できる梁等を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述した課題を解決するための第1の発明は、二酸化炭素固定化養生処理を行ったコンクリートによるプレキャスト部材を用いた梁であって、複数の梁材を梁幅方向に並べて構成され、前記梁材の少なくとも一つが前記プレキャスト部材であり、当該プレキャスト部材に、主筋およびせん断補強筋が埋設されたことを特徴とする梁である。
【0008】
本発明の梁は、梁を梁幅方向に分割した複数の梁材で構成され、個々の梁材のボリュームに対する表面積が大きくなるので、当該梁材をコンクリートによるプレキャスト部材として前記した炭酸化技術を有効に適用でき、カーボンニュートラルの推進につながる。またプレキャスト部材は、その主筋とせん断補強筋により、梁に求められる構造性能を確保できる。さらに本発明では、梁を複数の梁材に分割することで重量が軽減されるので、梁材の運搬等に必要なクレーンのサイズを小さくして施工時のコストを削減することも期待できる。
【0009】
前記コンクリートは、二酸化炭素を固定させるための材料として、γビーライト、高炉スラグ、石炭灰のうちの少なくとも一つを含み、当該材料によって二酸化炭素が固定されたことが望ましい。
これにより、二酸化炭素をコンクリートに好適に固定化できる。
【0010】
前記梁材の少なくとも一つが、前記プレキャスト部材でないことも望ましい。
これにより、梁の適用場面に幅ができ、汎用性が向上する。
【0011】
前記梁は建物の外周部に配置され、前記建物の外側に位置する梁材は、前記プレキャスト部材でないことが望ましい。
建物の外側に位置する梁材を、前記の養生処理を経ない部材とすることで、建物の外側からの中性化の進行による鉄筋の腐食を防ぐことができる。
【0012】
前記梁材の少なくとも一つが、木部材であることも望ましい。
梁材として、コンクリートによるプレキャスト部材の代わりに木部材を用いることで、カーボンニュートラルへの更なる貢献が可能になる。木部材とコンクリートによるプレキャスト部材とを組み合わせれば、たとえ木部材が燃え落ちても長期荷重分はプレキャスト部材に負担させることが可能であり、木部材の設計が容易になる。
【0013】
第2の発明は、第1の発明の梁と柱の接合構造であって、前記柱と前記梁の接合部に配置された接合部プレキャスト部材から側方に延びる鉄筋と、前記梁のプレキャスト部材から突出する前記主筋とが継手部によって接続され、前記継手部およびその両側の前記鉄筋および前記主筋を囲むように、環状のせん断補強筋が配置されたことを特徴とする接合構造である。
第2の発明によれば、第1の発明の梁と柱とを好適に接合できる。
【0014】
前記接合部プレキャスト部材は、前記柱よりも側方に延びる梁部分を有し、前記梁は、前記梁の両側に位置する前記接合部プレキャスト部材の梁部分の間に配置されることが望ましい。
これにより、上記の梁部分と第1の発明の梁とで大梁を構成し、その際、第1の発明の梁を、大梁の梁端の塑性ヒンジ領域を避けて配置することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、カーボンニュートラル実現に貢献できる梁等を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】梁2を示す図。
図2】梁材1を示す図。
図3】梁2の架設箇所を示す図。
図4】梁2と柱4の接合構造3を示す図。
図5】梁2aを示す図。
図6】梁材1aを示す図。
図7】梁2bを示す図。
図8】梁2cを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面に基づいて本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0018】
図1は、本発明の実施形態に係る梁2を示す図である。図1に示すように、梁2は、当該梁2を梁幅方向に分割した複数(図1の例では3つ)の梁材1によって構成される。すなわち、梁2は、複数の梁材1を梁幅方向に並べて構成される。梁幅方向は、梁軸方向と平面において直交する方向であり、図1の奥行方向に対応する。
【0019】
図2は梁材1を示す図である。梁材1は、コンクリート14に主筋12やせん断補強筋13を埋設したプレキャスト部材である。
【0020】
主筋12は、梁軸方向に沿って延びる鉄筋であり、その両端部が梁材1の小口面(梁軸方向の端面)から突出する。本実施形態では、主筋12が梁材1の上下に1本ずつ配置される。ただしこれに限ることはなく、例えば梁材1の上部と下部のそれぞれで、複数の主筋12が梁幅方向や梁せい方向に並べて配置されてもよい。
【0021】
せん断補強筋13は、梁材1内の主筋12を囲むように設けられる鉄筋であり、梁軸方向に間隔を空けて複数配置される。本実施形態では、せん断補強筋13を上下の端部に180°のフックを付けたものとし、これにより鉄筋の加工が容易になる。上下の主筋12は、これらのフックの内側にそれぞれ配置される。ただし、せん断補強筋13の形状は上記に限定されず、例えば主筋12を囲む環状のものであってもよい。また図2の例では、梁軸方向に隣り合うせん断補強筋13の間で、フックの向きが逆となる(図2の手前側と奥側)となるように、せん断補強筋13が配置される。なお、前記したように、梁材1の上部と下部のそれぞれで、複数の主筋12を梁せい方向に並べて配置する場合、梁材1の上部の主筋12と下部の主筋12のうち梁せい方向の中央部側に位置する主筋12が上下のフック内に収まるようにせん断補強筋13を配置するとともに、これとは別のせん断補強筋13を、梁材1の上部の主筋12と下部の主筋12のうち梁せい方向の上下の端部側に位置する主筋12が上下のフック内に収まるように配置してもよい。これらのせん断補強筋13は、フックの向きが逆となるように配置される。
【0022】
コンクリート14は、二酸化炭素固定化養生(炭酸化養生)処理を行ったコンクリートである。梁材1は、工場等において予め製作され、この際、コンクリート14に対する二酸化炭素固定化養生処理が行われる。この養生処理は既知の手法により行うことができ、ここではその説明を省略する。コンクリート14は、二酸化炭素を固定させるための材料として、γビーライト(γ-CS)、高炉スラグ、石炭灰のうちの少なくとも一つを含み、当該材料によって二酸化炭素が固定される。
【0023】
梁材1は工場等から現場まで運搬され、梁2の架設箇所で複数の梁材1を梁幅方向に並べて設置することで、梁2が形成される。
【0024】
構造的には、梁幅方向に隣り合う梁材1同士の間でせん断力等を伝達する必要は無いので、梁材1は並べて設置するだけで十分であり、隣り合う梁材1同士を接合する必要は特に無い。また梁材1間のコッターなども不要であり、隣り合う梁材1の間に数mm~数cm程度の隙間が生じても問題は無い。ただし、梁幅方向のボルト等を用いて隣り合う梁材1同士を接合することは可能である。また梁2の上にスラブコンクリートを打設する場合は、ノロが下階に垂れないように、梁2の上面において、隣り合う梁材1の隙間を塞いでおくことが望ましい。
【0025】
図3は梁2の架設箇所の例である。梁2は、典型的には、地上においてRC(鉄筋コンクリート)造の柱4の間に架設され、梁軸方向の両端部が、各柱4の上端部の柱梁接合部41に接合される。図4はこの接合構造3を示す図である。
【0026】
柱梁接合部41は、梁2と柱4の接合部に配置されるコンクリート製のプレキャスト部材(接合部プレキャスト部材)であり、鉄筋412等を内部に埋設したRC造とされる。
【0027】
柱梁接合部41は、柱4よりも側方に延びる梁部分411を有する。梁部分411は梁2側に突出し、梁部分411の梁軸方向に沿った複数の鉄筋412が、梁部分411から梁2側へと側方に延びるように設けられる。これらの鉄筋412は、梁部分411の梁軸方向と直交する面において、梁2を構成する梁材1の主筋12と対応する位置に配置される。
【0028】
接合構造3では、梁部分411から延びる各鉄筋412と、各鉄筋412に対応する位置の各主筋12とが、カプラ等の継手部32によって接続される。
【0029】
また、継手部32およびその両側の鉄筋412や主筋12を囲んで束ねるように、環状のせん断補強筋31が配置される。せん断補強筋31は、梁軸方向に間隔を空けて複数設けられる。
【0030】
さらに、梁部分411と梁2の間にはコンクリート(図3、4の符号Con参照)が打設される。これにより梁2と柱4が柱梁接合部41を介して接合されるとともに、梁2を構成する各梁材1が一体化される。
【0031】
図3の例では、梁2と、梁2の両側に位置する梁部分411とが大梁を構成する。大梁は、その梁端に塑性ヒンジ領域を有するが、塑性ヒンジ領域の梁軸方向の長さは梁せいの1.0~1.5倍程度である。梁部分411の梁軸方向の長さは、この塑性ヒンジ領域の長さに対応し、梁2そのものは、塑性ヒンジ領域を避けて大梁の中間部に設けられる。
【0032】
このように、本実施形態の梁2は、梁2を梁幅方向に分割した複数の梁材1で構成され、個々の梁材1のボリュームに対する表面積が大きくなるので、当該梁材1をコンクリートによるプレキャスト部材として前記した炭酸化技術を有効に適用でき、カーボンニュートラルの推進につながる。また梁材1は、その主筋12とせん断補強筋13により、梁2に求められる構造性能を確保できる。さらに、梁2を複数の梁材1に分割することで重量が軽減されるので、梁材1の運搬等に必要なクレーンのサイズを小さくして施工時のコストを削減することも期待できる。
【0033】
また本実施形態では、コンクリート14が、二酸化炭素を固定させるための材料として、γビーライトや高炉スラグ、石炭灰を含み、当該材料によって二酸化炭素をコンクリート14に好適に固定化できる。
【0034】
また本実施形態では、前記の接合構造3により梁2と柱4を好適に接合でき、梁2の架設箇所では、大梁の梁端の塑性ヒンジ領域を避けて梁2を配置することができる。そのため、梁2に要求される構造的性能を軽減できる。
【0035】
しかしながら、本発明は前記の実施形態に限定されない。例えば梁幅方向に配置される梁材1の数は特に限定されず、2本以上の梁材1が並べて配置されればよい。また図3の例では梁2を地上部に架設しているが、基礎梁などに梁2を適用することも可能である。また梁2は小梁として用いられるケースもあり、そのようなケースでは、塑性ヒンジ領域を避けて梁2を配置する必要も特に無く、前記の梁部分411を省略することが可能である。
【0036】
また、梁2や梁材1の形状、寸法等も特に限定されず、例えば図5の梁2aに示すように、一部の梁材1の梁せいを大きくし、当該梁材1の上部を他の梁材1よりも上方に突出させることもできる。これにより、梁2aの上にスラブコンクリートを打設する際に、梁材1の突出部分をシアキーとして活用できる。図5の例では梁幅方向の中間部の梁材1を突出させているが、他の梁材1を突出させてもよい。
【0037】
また梁2を構成する各梁材1に、配管等を梁2に通すための梁幅方向の貫通孔を設けても良い。梁材1に貫通孔を設けることで表面積が増え、養生過程でより多くの二酸化炭素を吸収、固定化できる可能性がある。
【0038】
また図6の梁材1aに示すように、梁材1aの小口面に、コッターなどのせん断抵抗部材15を設けてもよい。これにより、前記の接合構造3(図3等参照)において、せん断抵抗部材15を、梁材1aとコンクリート(図3の符号Con参照)の間のせん断に対して抵抗させ、梁材1aとコンクリートの一体性を高めることができる。なお、せん断抵抗部材15は図6のようなコッターに限らず、小口面から鉄筋等のダボを突出させてもよいし、コッターとダボとを併用してもよい。
【0039】
また本実施形態では、梁2を構成する全ての梁材1が、前記の養生処理を行ったプレキャスト部材であるが、梁2を構成する梁材の少なくとも一つを、上記プレキャスト部材でない部材としてもよい。これにより、梁2の適用場面に幅ができ、汎用性が向上する。
【0040】
例えば図7の梁2bでは、1つの梁材1bを前記の養生処理を行わないプレキャスト部材とし、その他の梁材1を前記の養生処理を行ったプレキャスト部材としている。この梁2bは、建物の外周部に配置される梁であり、梁材1bは、梁幅方向において建物の外側に位置する。梁材1bは、前記の養生処理が行われない点のみ梁材1と異なり、その他の構成は梁材1と同様である。
【0041】
従来、二酸化炭素固定化養生処理を経た梁は、養生過程でコンクリートが中性化(あるいは酸性化)することで、アルカリ性のコンクリートが持つ鉄筋の防錆効果が期待できなくなる懸念があり、当該梁の建物の外周部への利用を妨げる要因となっていた。一方、上記の梁2bは、建物の外側に位置する梁材1bを養生処理を経ない部材とすることで、コンクリート14のアルカリ性が維持される。そのため、梁材1bやその内側の梁材1の主筋12やせん断補強筋13が、屋外の降雨等で生じる建物の外側からの中性化により腐食するのを防ぐことができ、建物の外周部への適用が可能となる。
【0042】
一方、図1等で説明した梁2は、建物の内部に設けられる梁であるが、建物の外周部であっても、庇がある場合などでは梁2を適用することも可能であり、また梁2に防水被覆を施すことで建物の外周部に適用することも可能である。
【0043】
また図8の梁2cは、梁幅方向の両側の梁材1が、前記の養生処理を行ったプレキャスト部材であり、これらの梁材1によって挟まれた梁幅方向の中間部の梁材1cは、前記の養生処理を行わない集成材等の木部材となっている。
【0044】
梁材1cでは、前記した主筋12の代わりに、両端の小口面から挿し筋12aが突出する。挿し筋12aは梁軸方向の鉄筋であり、一方の端部が小口面から突出し、他方の端部が梁材1cに埋設される。なお、梁材1cには前記のせん断補強筋13は配置されない。
【0045】
この梁2cは、梁材1cとして、コンクリートによるプレキャスト部材の代わりに木部材を用いることで、カーボンニュートラルへの更なる貢献が可能である。木部材による梁を単独で適用する際には、耐火性能を確保するために、燃え代層を加味した設計とすることで構造的に不経済な断面になったり、別途の耐火被覆層が必要になったりするが、上記の梁2cでは、仮に梁材1cが燃え落ちても長期荷重分を梁材1に負担させることができ、燃え代層を加味した設計や別途の耐火被覆層が不要であり、木部材の設計が容易になる。
【0046】
なお、梁2cでは2本の梁材1で梁材1cを挟み込んだが、梁材の本数や組み合わせはこれに限らず、木部材による梁材1cを含んでいればよい。例えば、梁材1cによって梁材1を挟み込んでもよい。また、梁幅方向の一方の側を梁材1cとし、他方の側を梁材1としてもよい。
【0047】
以上、添付図面を参照しながら、本発明に係る好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、本願で開示した技術的思想の範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0048】
1、1a、1b、1c:梁材
2、2a、2b、2c:梁
3:接合構造
4:柱
12:主筋
13、31:せん断補強筋
14:コンクリート
15:せん断抵抗部材
32:継手部
41:柱梁接合部
411:梁部分
412:鉄筋
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8