(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024113523
(43)【公開日】2024-08-22
(54)【発明の名称】橋桁撤去用の仮設構造体と橋桁撤去装置
(51)【国際特許分類】
E01D 24/00 20060101AFI20240815BHJP
【FI】
E01D24/00
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023018575
(22)【出願日】2023-02-09
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-09-05
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和4年6月1日から開始された工事
(71)【出願人】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000237134
【氏名又は名称】株式会社富士ピー・エス
(71)【出願人】
【識別番号】505413255
【氏名又は名称】阪神高速道路株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】藤本 大輔
(72)【発明者】
【氏名】倉本 直也
(72)【発明者】
【氏名】新庄 皓平
(72)【発明者】
【氏名】今枝 拓也
(72)【発明者】
【氏名】多田 育修
(72)【発明者】
【氏名】田畑 晶子
(72)【発明者】
【氏名】大池 岳人
(72)【発明者】
【氏名】藤原 勝也
【テーマコード(参考)】
2D059
【Fターム(参考)】
2D059AA05
2D059BB06
2D059BB08
2D059BB33
2D059BB39
2D059GG05
2D059GG41
(57)【要約】
【課題】工事期間中に大地震が発生した際に、橋桁撤去用の仮設構造体に作用する地震荷重に起因する下部工の破損や仮設構造体の落下等を防止できる、橋桁撤去用の仮設構造体とその施工方法、及び橋桁撤去装置を提供する。
【解決手段】既設の橋脚Pの上に架設されている既設の橋桁Gを解体して搬送する、橋桁撤去施工に適用される、橋桁撤去用の仮設構造体100であり、橋桁Gの上方に間隔を置いて設置されている、複数の仮設支持体60と、複数の仮設支持体60に架設され、橋軸方向に延設している、仮設桁10とを有し、仮設支持体60は、橋桁撤去施工の際の地震時の慣性力を低減する免震支承80を備えている。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
既設の橋脚の上に架設されている既設の橋桁を解体して搬送する、橋桁撤去施工に適用される、橋桁撤去用の仮設構造体であって、
前記仮設構造体は、
前記橋桁の上方に間隔を置いて設置されている、複数の仮設支持体と、
複数の前記仮設支持体に架設され、橋軸方向に延設している、仮設桁とを有し、
前記仮設支持体は、前記橋桁撤去施工の際の地震時の慣性力を低減する免震支承を備えていることを特徴とする、橋桁撤去用の仮設構造体。
【請求項2】
前記仮設支持体が、前記橋桁を介して前記橋脚の上に設置されていることを特徴とする、請求項1に記載の橋桁撤去用の仮設構造体。
【請求項3】
前記仮設支持体は、前記免震支承の周囲に、複数の鋼材が井桁状に積層された状態で組み付けられている、鋼材積層ユニットを備え、
前記鋼材積層ユニットは、前記免震支承に対して橋軸方向に間隔を置いて配設されている仮受け支承を備え、該仮受け支承は仮プレートを備えており、
前記鋼材積層ユニットのうち、前記免震支承よりも上方にある上方ユニットの荷重を該免震支承に載荷させる前の段階では、前記仮受け支承と前記仮プレートが該上方ユニットの荷重を支持し、
前記仮プレートが取り外されて隙間が形成された際に、前記上方ユニットの荷重が前記免震支承に載荷され、
地震時に前記上方ユニットが橋軸方向へ変位する際に、前記隙間によって該上方ユニットが橋軸方向へ回動して前記仮受け支承に当接し、該仮受け支承がストッパーになることを特徴とする、請求項1又は2に記載の橋桁撤去用の仮設構造体。
【請求項4】
前記鋼材積層ユニットのうち、前記免震支承よりも下方にある下方ユニットに含まれる下鋼材と、前記上方ユニットに含まれる上鋼材が、前記免震支承を橋軸直角方向で挟む複数の鋼棒によって接続されており、
地震時に前記上方ユニットが橋軸直角方向へ変位した際の引張力に対して、前記鋼棒が対抗するようになっていることを特徴とする、請求項3に記載の橋桁撤去用の仮設構造体。
【請求項5】
前記仮設桁の長さは、前記橋桁の撤去範囲よりも長いことを特徴とする、請求項1又は2に記載の橋桁撤去用の仮設構造体。
【請求項6】
既設の橋脚の上に架設されている既設の橋桁を解体して搬送する、橋桁撤去装置であって、
請求項1又は2に記載の橋桁撤去用の仮設構造体と、
前記仮設桁に沿って移動する、移動式台車とを有し、
前記移動式台車には、前記橋桁の橋軸直角方向の幅以上の幅を備え、該橋桁の下方に配設されて、該橋桁を切断して搬送用の分割体とする作業床が垂下されていることを特徴とする、橋桁撤去装置。
【請求項7】
既設の橋脚の上に架設されている既設の橋桁を解体して搬送する、橋桁撤去装置であって、
請求項1又は2に記載の橋桁撤去用の仮設構造体と、
前記仮設桁に沿って移動する、運搬台車とを有し、
前記運搬台車には、前記橋桁が切断された搬送用の分割体を吊り上げる第1揚重設備と、該第1揚重設備にて吊り上げられた該分割体を収容する収容設備が設けられていることを特徴とする、橋桁撤去装置。
【請求項8】
既設の橋脚の上に架設されている既設の橋桁を解体して搬送する、橋桁撤去装置であって、
請求項1又は2に記載の橋桁撤去用の仮設構造体と、
前記仮設桁に沿って移動する、サスペンションクレーンとを有し、
前記サスペンションクレーンは、橋軸直角方向に延設するレールと、該レールに移動自在に設置されている第2揚重設備とを備えており、該第2揚重設備により、前記橋桁が切断された搬送用の分割体を橋軸直角方向に搬送することを特徴とする、橋桁撤去装置。
【請求項9】
既設の橋脚の上に架設されている既設の橋桁を解体して搬送する、橋桁撤去施工に適用される、橋桁撤去用の仮設構造体の施工方法であって、
前記橋桁の上方に間隔を置いて、複数の仮設支持体を設置する、A工程と、
複数の該仮設支持体に対して、橋軸方向に延設する仮設桁を架設して、該仮設支持体と該仮設桁とにより形成される前記仮設構造体を施工する、B工程とを有し、
前記A工程では、前記仮設支持体として、前記橋桁撤去施工の際の地震時の慣性力を低減する免震支承を含ませることを特徴とする、橋桁撤去用の仮設構造体の施工方法。
【請求項10】
前記A工程において、
前記仮設支持体は、前記免震支承の周囲に、複数の鋼材が井桁状に積層された状態で組み付けられている、鋼材積層ユニットを備え、
前記鋼材積層ユニットは、前記免震支承に対して橋軸方向に間隔を置いて配設されている仮受け支承を備え、該仮受け支承は仮プレートを備えており、
前記B工程では、
前記鋼材積層ユニットのうち、前記免震支承よりも上方にある上方ユニットの荷重を該免震支承に載荷させる前の段階では、前記仮受け支承と前記仮プレートに対して該上方ユニットの荷重を支持させ、
前記仮プレートを取り外して隙間を形成することにより、前記上方ユニットの荷重を前記免震支承に載荷して、前記仮設構造体を形成することを特徴とする、請求項9に記載の橋桁撤去用の仮設構造体の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、橋桁撤去用の仮設構造体とその施工方法、及び橋桁撤去装置に関する。
【背景技術】
【0002】
我が国においては、高度経済成長期に施工された様々な橋梁の老朽化が進んでおり、これら老朽化した橋梁の一部もしくは全部を解体して新規の橋梁を施工する、橋梁の改修工事(更新工事)の増加が予測される。
橋梁には、河川を横断する橋梁や、高速道路の一部を成して地上の車道や鉄道等を横断する橋梁など、様々な形態が存在するが、例えば、都市部において地上の車道を横断する橋梁の改修工事においては、車道を一部通行止めにしたり、一定期間に亘り車道を完全に通行止めにする等の措置を講じた上で、橋梁の改修工事を行う必要があることなどから、改修工事が周辺交通へ多大な影響を与え得るといった課題を有している。
また、例えば車道を一部通行止めにしながらの改修工事では、工事の進捗が往々にして進まず、結果として改修工事期間が長期に及ぶといった課題を有している。
【0003】
そして、改修工事期間が年単位の長期に及ぶ場合は、その期間に生じ得る大地震(大規模地震)によって、施工中の仮設構造体に作用する地震荷重が仮設構造体を支持する下部工(橋脚や橋台等)に作用し、下部工が破損や倒壊したり、仮設構造体が落下するといった事態が懸念される。すなわち、一般の仮設工事では、工事中における大地震の発生は考慮されないが、高速道路等の橋梁の長期に亘る改修工事等においては、仮に工事期間中に大地震が発生した場合の周辺環境への甚大な影響が懸念されることから、仮設構造体や仮設構造体と下部工全体の大地震に対する対策が肝要であり、このように大地震に対応可能な橋桁撤去用の仮設構造体や、この仮設構造体を備えた橋桁撤去装置が望まれる。
【0004】
ここで、特許文献1には、橋梁の架け替え工法が提案されている。この工法は、橋梁の径間に架け渡す撤去対象の既設桁を持ち上げる持ち上げ工程と、既設桁の後端に新設の更新桁を一列になるように連結する更新桁連結工程と、既設桁の先端に先端延長桁を一列状になるように連結する先端延長桁連結工程と、撤去対象の既設桁が配置されていた径間に新設の更新桁が送り出されるように、更新桁連結工程及び先端延長桁連結工程で連結した撤去対象の既設桁、新設の更新桁及び先端延長桁を、橋軸方向に送り出す送り出し工程と、撤去対象の既設桁が配置されていた径間と隣接する径間の橋梁上に送り出し工程で送り出された撤去対象の既設桁の部位を、解体する解体工程等を備えている。
既設桁を持ち上げる持ち上げ工程では、既設桁の下方の桁下空間に複数のベントを設置し、ベントの上端面にジャッキを配置し、既設桁をジャッキアップすることにより持ち上げることにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の橋梁の架け替え工法によれば、撤去対象の既設桁の搬出と新設の更新桁の架設を連続的に行うことができるため、効率的な橋梁の架け替えを行うことができるとしている。しかしながら、この橋梁の架け替え工法でも、上記するように、工事期間中に大地震が発生した際に、橋桁撤去用の仮設構造体に作用する地震荷重に起因する下部工の破損や倒壊、仮設構造体の落下等への解決手段に関する記載は一切ない。
【0007】
本発明は、工事期間中に大地震が発生した際に、橋桁撤去用の仮設構造体に作用する地震荷重に起因する下部工の破損や倒壊、仮設構造体の落下等を防止できる、橋桁撤去用の仮設構造体とその施工方法、及び橋桁撤去装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成すべく、本発明による橋桁撤去用の仮設構造体の一態様は、
既設の橋脚の上に架設されている既設の橋桁を解体して搬送する、橋桁撤去施工に適用される、橋桁撤去用の仮設構造体であって、
前記仮設構造体は、
前記橋桁の上方に間隔を置いて設置されている、複数の仮設支持体と、
複数の前記仮設支持体に架設され、橋軸方向に延設している、仮設桁とを有し、
前記仮設支持体は、前記橋桁撤去施工の際の地震時の慣性力を低減する免震支承を備えていることを特徴とする。
【0009】
本態様によれば、橋桁の上方に間隔を置いて設置され、橋軸方向に延設している仮設桁が架設される複数の仮設支持体が、橋桁撤去施工の際の地震時の慣性力を低減する免震支承を備えていることにより、橋桁撤去施工期間において大地震が発生した場合でも、免震支承にてその慣性力を低減することができ、橋桁撤去用の仮設構造体に作用する地震荷重に起因する下部工の破損や倒壊、仮設構造体の落下(落橋)等を防止できる。
ここで、「大地震」とは、例えば数百年に一度の発生確率であるレベル2地震の他に、想定外の最大級の極大地震である、レベル3相当の地震を含んでいる。
本態様の仮設構造体は、大地震にて下部工の破損や倒壊、仮設構造体の落下等を防止可能な構造体であることから、構造物の耐用年度中に1度以上受ける可能性のある、レベル1地震に対する破損等を防止可能であることは勿論のことである。
免震支承により、仮設構造体の全体や、仮設構造体の中で免震支承にて支持されている仮設支持体の一部(以下の上方ユニットやこれに支持される仮設桁)に作用する地震時の慣性力が低減され、地震荷重が低減されることにより、この地震荷重による下部工(建設から数十年が経過し、大地震に対する十分な耐力を有していない可能性のある下部工)への負担が抑制され、下部工の破損や倒壊が防止されるとともに、地震荷重による仮設構造体の落下等も防止されることになる。
【0010】
ここで、撤去対象の橋桁を備えている橋梁には、鋼橋、コンクリート橋、石橋、木橋等が含まれ、コンクリート橋には、鉄筋コンクリート橋(RC:Reinforced Concrete 橋)やプレストレストコンクリート橋(PC:Prestressed Concrete 橋)、鋼材とコンクリートの複合橋等が含まれる。また、撤去対象の橋桁には、桁橋やラーメン橋を構成する主桁の他、トラス橋を構成するトラス桁、吊り橋や斜張橋を構成する補剛桁等が含まれ、橋桁の断面形状による種類としては、I形やH形、T形、箱型、格子形等が含まれる。
【0011】
また、本発明による橋桁撤去用の仮設構造体の他の態様において、
前記仮設支持体が、前記橋桁を介して前記橋脚の上に設置されていることを特徴とする。
【0012】
本態様によれば、免震支承を備えている仮設支持体が橋桁を介して橋脚の上に設置されていることにより、橋脚を介した地震動を免震支承に効果的に入力することができるため、仮設構造体に作用する地震時の慣性力をより一層効果的に低減することができて好ましい。
【0013】
また、本発明による橋桁撤去用の仮設構造体の他の態様において、
前記仮設支持体は、前記免震支承の周囲に、複数の鋼材が井桁状に積層された状態で組み付けられている、鋼材積層ユニットを備え、
前記鋼材積層ユニットは、前記免震支承に対して橋軸方向に間隔を置いて配設されている仮受け支承を備え、該仮受け支承は仮プレートを備えており、
前記鋼材積層ユニットのうち、前記免震支承よりも上方にある上方ユニットの荷重を該免震支承に載荷させる前の段階では、前記仮受け支承と前記仮プレートが該上方ユニットの荷重を支持し、
前記仮プレートが取り外されて隙間が形成された際に、前記上方ユニットの荷重が前記免震支承に載荷され、
地震時に前記上方ユニットが橋軸方向へ変位する際に、前記隙間によって該上方ユニットが橋軸方向へ回動して前記仮受け支承に当接し、該仮受け支承がストッパーになることを特徴とする。
【0014】
本態様によれば、免震支承の周囲にある鋼材積層ユニットが、免震支承に対して橋軸方向に間隔を置いて配設されている仮受け支承を備え、仮受け支承が仮プレートを備えており、鋼材積層ユニットにおける免震支承よりも上方にある上方ユニットの荷重を最初に仮受け支承と仮プレートが支持し、次いで、上方ユニットがジャッキアップ等されて仮受け支承から仮プレートが取り外され、隙間が形成された際に上方ユニットの荷重が免震支承に載荷される、荷重の盛り替えが実行されるように構成されていることで、免震支承に対する上方ユニットの効率的かつ精緻な設置が実現される。
さらに、地震時に上方ユニットが橋軸方向へ変位する際に、荷重盛り替えの際に形成されている隙間(仮プレートの取り外しによって形成された隙間)によって上方ユニットが橋軸方向へ回動し、隙間の下方に位置する仮受け支承に当接して、仮受け支承がストッパーになることから、仮受け支承が地震時の橋軸方向に対するフェールセーフ機能を有することになる。
【0015】
また、本発明による橋桁撤去用の仮設構造体の他の態様において、
前記鋼材積層ユニットのうち、前記免震支承よりも下方にある下方ユニットに含まれる下鋼材と、前記上方ユニットに含まれる上鋼材が、前記免震支承を橋軸直角方向で挟む複数の鋼棒によって接続されており、
地震時に前記上方ユニットが橋軸直角方向へ変位した際の引張力に対して、前記鋼棒が対抗するようになっていることを特徴とする。
【0016】
本態様によれば、免震支承よりも下方にある下方ユニットに含まれる下鋼材と、上方ユニットに含まれる上鋼材が免震支承を橋軸直角方向で挟む複数の鋼棒によって接続され、上方ユニットが橋軸直角方向へ変位して例えば回動し、免震支承に対して上向きの引張力が作用した場合でも、この引張力に対して鋼棒が対抗することにより、上方ユニットの橋軸直角方向への過度な変位や回動を抑制でき、上方ユニットの橋軸直角方向への落下(落橋)を防止できる。
すなわち、本態様では、下鋼材と上鋼材とこれらを繋ぐ鋼棒が、地震時の軸直角方向に対するフェールセーフ機能を有することになる。
ここで、「鋼棒」には、PC鋼棒やPC鋼線等が含まれ、所定のプレストレス力が導入されていてもよいし、プレストレス力が導入されていなくてもよい。
【0017】
また、本発明による橋桁撤去用の仮設構造体の他の態様において、
前記仮設桁の長さは、前記橋桁の撤去範囲よりも長いことを特徴とする。
【0018】
本態様によれば、仮設桁の長さが橋桁の撤去範囲よりも長いことにより、仮設桁に沿って例えば移動式台車を移動させながら橋桁を順次撤去していく際に、桁下空間の一部もしくは全部を占有することなく、橋桁の全撤去範囲の撤去を行うことができる。
【0019】
また、本発明による橋桁撤去装置の一態様は、
既設の橋脚の上に架設されている既設の橋桁を解体して搬送する、橋桁撤去装置であって、
前記橋桁撤去用の仮設構造体と、
前記仮設桁に沿って移動する、移動式台車とを有し、
前記移動式台車には、前記橋桁の橋軸直角方向の幅以上の幅を備え、該橋桁の下方に配設されて、該橋桁を切断して搬送用の分割体とする作業床が垂下されていることを特徴とする。
【0020】
本態様によれば、既設の橋桁の上に配設された複数の仮設支持体に仮設桁が架設され、仮設桁に沿って移動する移動式台車から垂下している作業床を利用して、橋桁の解体を行い、搬送することにより、桁下空間の一部もしくは全部を占有することなく、効率的な橋桁の解体と搬送を実現できる。ここで、桁下空間の一部もしくは全部を利用しないことから、桁下空間が道路や鉄道等の場合は、これらの一部もしくは全部を通行止めにすることなく、供用させながら橋桁の解体搬送工事を行うことができる。
また、作業床が、橋桁の橋軸直角方向の幅以上の幅を備えて、橋桁の下方に配設されていることにより、橋桁が切断されて形成された搬送用の分割体が桁下空間に落下することが防止され、施工安全性を保証することができる。特に、高速道路を構成する橋桁等、橋軸直角方向の幅の広い橋桁の解体においても、作業床が橋桁の橋軸直角方向の幅を全てカバーしていることから、十分な施工安全性が保証される。
【0021】
ここで、「橋桁の橋軸直角方向の幅以上の幅」とは、例えば、橋脚に架設されている橋桁が1つの場合は、その全幅のことを意味しており、橋脚の上に複数の橋桁が併設している場合(高速道路の上下線に対応した複数の橋桁が併設している形態等)は、解体対象がそのうちの1つの橋桁の場合は当該1つの橋桁の幅となり、解体対象が全ての橋桁の場合は全ての橋桁の幅を合わせた全幅となる。
撤去対象の橋桁は、橋脚や橋台の上に架設されており、本明細書では、橋脚に橋台も含まれるものとする。
【0022】
また、本発明による橋桁撤去装置の他の態様は、
既設の橋脚の上に架設されている既設の橋桁を解体して搬送する、橋桁撤去装置であって、
前記橋桁撤去用の仮設構造体と、
前記仮設桁に沿って移動する、運搬台車とを有し、
前記運搬台車には、前記橋桁が切断された搬送用の分割体を吊り上げる第1揚重設備と、該第1揚重設備にて吊り上げられた該分割体を収容する収容設備が設けられていることを特徴とする。
【0023】
本態様によれば、既設の橋桁の上に配設された複数の仮設支持体に仮設桁が架設され、仮設桁に沿って移動する運搬台車を利用して、橋桁の解体を行い、搬送することにより、桁下空間の一部もしくは全部を占有することなく、効率的な橋桁の解体と搬送を実現できる。本態様によっても、桁下空間の一部もしくは全部を利用しないことから、桁下空間が道路や鉄道等の場合は、これらの一部もしくは全部を通行止めにすることなく、供用させながら橋桁の解体搬送工事を行うことができる。
また、運搬台車に設けられている第1揚重設備にて、橋桁が切断された搬送用の分割体が吊り上げられ、運搬台車に設けられている収容設備に吊り上げられた分割体が収容されて搬送されることにより、分割体をスムーズに吊り上げて安全に搬出することができる。
【0024】
また、本発明による橋桁撤去装置の他の態様は、
既設の橋脚の上に架設されている既設の橋桁を解体して搬送する、橋桁撤去装置であって、
前記橋桁撤去用の仮設構造体と、
前記仮設桁に沿って移動する、サスペンションクレーンとを有し、
前記サスペンションクレーンは、橋軸直角方向に延設するレールと、該レールに移動自在に設置されている第2揚重設備とを備えており、該第2揚重設備により、前記橋桁が切断された搬送用の分割体を橋軸直角方向に搬送することを特徴とする。
【0025】
本態様によれば、既設の橋桁の上に配設された複数の仮設支持体に仮設桁が架設され、仮設桁に沿って移動するサスペンションクレーンに設置されて橋軸直角方向に延設する第レールに対して、第2揚重設備が移動自在に設置されていることにより、橋桁が切断されて形成された分割体に第2揚重設備をアクセスさせ、吊り上げて橋軸直角方向の所望位置まで搬送することができ、かつ、サスペンションクレーンを橋軸方向に移動させて分割体を搬送することにより、桁下空間の一部もしくは全部を占有することなく、効率的な橋桁の解体と搬送を実現できる。
ここで、桁下空間の一部もしくは全部を利用しないことから、桁下空間が道路や鉄道等の場合は、これらの一部もしくは全部を通行止めにすることなく、供用させながら橋桁の解体搬送工事を行うことができる。
【0026】
また、本発明による橋桁撤去用の仮設構造体の施工方法の一態様は、
既設の橋脚の上に架設されている既設の橋桁を解体して搬送する、橋桁撤去施工に適用される、橋桁撤去用の仮設構造体の施工方法であって、
前記橋桁の上方に間隔を置いて、複数の仮設支持体を設置する、A工程と、
複数の該仮設支持体に対して、橋軸方向に延設する仮設桁を架設して、該仮設支持体と該仮設桁とにより形成される前記仮設構造体を施工する、B工程とを有し、
前記A工程では、前記仮設支持体として、前記橋桁撤去施工の際の地震時の慣性力を低減する免震支承を含ませることを特徴とする。
【0027】
本態様によれば、既設の橋桁の上に複数の仮設支持体を設置し、複数の仮設支持体に仮設桁を架設して、仮設支持体と仮設桁とにより形成される仮設構造体を施工する方法において、仮設支持体に対して橋桁撤去施工の際の地震時の慣性力を低減する免震支承を含ませることにより、橋桁撤去施工期間において大地震が発生した場合でも、免震支承にてその慣性力を低減することにより、橋桁撤去用の仮設構造体に作用する地震荷重に起因する下部工の破損や倒壊、仮設構造体の落下等を防止できる。
【0028】
また、本発明による橋桁撤去用の仮設構造体の施工方法の他の態様は、
前記A工程において、
前記仮設支持体は、前記免震支承の周囲に、複数の鋼材が井桁状に積層された状態で組み付けられている、鋼材積層ユニットを備え、
前記鋼材積層ユニットは、前記免震支承に対して橋軸方向に間隔を置いて配設されている仮受け支承を備え、該仮受け支承は仮プレートを備えており、
前記B工程では、
前記鋼材積層ユニットのうち、前記免震支承よりも上方にある上方ユニットの荷重を該免震支承に載荷させる前の段階では、前記仮受け支承と前記仮プレートに対して該上方ユニットの荷重を支持させ、
前記仮プレートを取り外して隙間を形成することにより、前記上方ユニットの荷重を前記免震支承に載荷して、前記仮設構造体を形成することを特徴とする。
【0029】
本態様によれば、免震支承の周囲にある鋼材積層ユニットが、免震支承に対して橋軸方向に間隔を置いて配設されている仮受け支承を備え、仮受け支承が仮プレートを備えており、鋼材積層ユニットにおける免震支承よりも上方にある上方ユニットの荷重を最初に仮受け支承と仮プレートが支持し、次いで、上方ユニットがジャッキアップ等されて仮プレートが取り外され、隙間が形成された際に上方ユニットの荷重が免震支承に載荷される、荷重の盛り替えが実行されるように構成されていることで、免震支承に対する上方ユニットの効率的かつ精緻な設置を実現できる。
【発明の効果】
【0030】
本発明の橋桁撤去用の仮設構造体とその施工方法、及び橋桁撤去装置によれば、工事期間中に大地震が発生した際に、橋桁撤去用の仮設構造体に作用する地震荷重に起因する下部工の破損や倒壊、仮設構造体の落下等を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】実施形態に係る橋桁撤去装置が適用される、施工エリアの一例の平面図である。
【
図2】
図1のII方向矢視図であって、解体対象の橋梁の側面図である。
【
図3】
図1のIII方向矢視図であって、橋梁の橋軸直角方向の縦断面図である。
【
図4】実施形態に係る橋桁撤去装置の一例を、解体対象の橋桁とともに橋軸方向から見た正面図である。
【
図5】実施形態に係る橋桁撤去装置のうち、複数の仮設桁に移動自在に設置されている移動式台車の一例のみを取り出して示した斜視図である。
【
図6A】実施形態に係る橋桁撤去装置のうち、複数の仮設桁に移動自在に設置されている運搬台車の一例のみを取り出して示した正面図である。
【
図6B】
図6AのB方向矢視図であって、運搬台車の一例の平面図である。
【
図6C】複数の仮設桁に移動自在に設置されている運搬台車の一例のみを取り出して示した斜視図である。
【
図7A】実施形態に係る橋桁撤去装置のうち、複数の仮設桁に移動自在に設置されているサスペンションクレーンの一例のみを取り出して示した正面図である。
【
図7B】複数の仮設桁に移動自在に設置されているサスペンションクレーンの一例のみを取り出して示した斜視図である。
【
図8A】橋桁の解体から収容設備への収容までの一連の施工の流れを説明する説明図である。
【
図8B】
図8Aに続いて、橋桁の解体から収容設備への収容までの一連の施工の流れを説明する説明図である。
【
図8C】
図8Bに続いて、橋桁の解体から収容設備への収容までの一連の施工の流れを説明する説明図である。
【
図9】実施形態に係る橋桁撤去用の仮設構造体の一例の斜視図である。
【
図10A】
図9のX方向矢視図であって、上方ユニットの荷重を免震支承に載荷させた状態を示す図である。
【
図10B】
図9のXI方向矢視図であって、上方ユニットの荷重を免震支承に載荷させた状態を示す図である。
【
図11A】
図9のX方向矢視図であって、上方ユニットの荷重を免震支承に載荷させる前の状態を示す図である。
【
図11B】
図9のXI方向矢視図であって、上方ユニットの荷重を免震支承に載荷させる前の状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、実施形態に係る橋桁撤去用の仮設構造体とその施工方法、及び橋桁撤去装置について、橋桁撤去方法とともに、添付の図面を参照しながら説明する。尚、本明細書及び図面において、実質的に同一の構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省く場合がある。
【0033】
[実施形態に係る橋桁撤去装置]
はじめに、
図1乃至
図8を参照して、実施形態に係る橋桁撤去装置の一例について説明する。
ここで、
図1は、実施形態に係る橋桁撤去装置が適用される、施工エリアの一例の平面図であり、
図2は、
図1のII方向矢視図であって、解体対象の橋梁の側面図であり、
図3は、
図1のIII方向矢視図であって、橋梁の橋軸直角方向の縦断面図である。また、
図4は、実施形態に係る橋桁撤去装置の一例を、解体対象の橋桁とともに橋軸方向から見た正面図であり、
図5は、実施形態に係る橋桁撤去装置のうち、複数の仮設桁に移動自在に設置されている移動式台車の一例のみを取り出して示した斜視図である。また、
図6Aは、実施形態に係る橋桁撤去装置のうち、複数の仮設桁に移動自在に設置されている運搬台車の一例のみを取り出して示した正面図であり、
図6Bは、
図6AのB方向矢視図であって、運搬台車の一例の平面図であり、
図6Cは、複数の仮設桁に移動自在に設置されている運搬台車の一例のみを取り出して示した斜視図である。また、
図7Aは、実施形態に係る橋桁撤去装置のうち、複数の仮設桁に移動自在に設置されているサスペンションクレーンの一例のみを取り出して示した正面図であり、
図7Bは、複数の仮設桁に移動自在に設置されているサスペンションクレーンの一例のみを取り出して示した斜視図である。さらに、
図8A乃至
図8Cは順に、橋桁の解体から収容設備への収容までの一連の施工の流れを説明する説明図である。
【0034】
図1に示すように、更新対象の橋梁Bを構成する橋桁Gは、市街地を東西に延びる高速道路の一部を成し、桁下空間には南北に延びる車道Rを備えている。平面視における車道Rと橋梁Bの交差点近傍には、橋梁Bを構成する橋脚P2,P3があり、その外側(交差点の反対側)には、別途の橋脚P1,P4があり、これら4基の橋脚Pに架設されている3径間の橋桁Gが撤去対象となる。
【0035】
尚、図示例は、高速道路の下り線に対応する橋桁G1と、上り線に対応する橋桁G2がいずれも鉄筋コンクリート製の箱桁により形成される。より詳細には、隣接する橋脚Pの間に架設される複数の単純桁同士が、PC鋼材により緊結されている、プレストレストコンクリート橋である。尚、更新対象の橋桁は、鉄筋コンクリート製の箱桁に限定されるものでなく、I形やT形の鋼桁等、様々な形態の橋桁であってよい。
【0036】
図4に示す橋桁撤去装置50は、
図1及び
図2に示す車道Rを供用しながら、その上部において交差した態様で延設する橋桁Gを解体し、搬送(搬出)する装置であり、橋桁Gの解体搬送に際して、橋桁Gの桁下空間を占有(利用)せずに施工を行うことを可能にした装置である。
【0037】
橋桁撤去装置50は、橋桁Gの上方に間隔を置いて配設される、複数の仮設支持体60(
図12C参照)の上に架設されて橋軸方向に延設する、複数(図示例は4本)の仮設桁10と、この仮設桁10に配設されている3種のレール(第1レール11,第2レール12、第3レール13)に移動自在に設置されている、移動式台車20と運搬台車30とサスペンションクレーン40を主たる構成要素とする。
【0038】
尚、仮設支持体60と、仮設支持体60に含まれる免震支承80と、及び仮設支持体60に架設される仮設桁10とにより、実施形態に係る橋桁撤去用の仮設構造体100が形成されるが、この仮設構造体100とその施工方法に関しては、
図9乃至
図11を参照して以下で詳説する。さらに、橋桁撤去装置50を適用した橋桁撤去方法に関しては、
図12乃至
図13を参照して以下で詳説する。
【0039】
図4に示すように、下り線の橋桁G1の上方には、
図4において図示を省略する仮設支持体60(
図9参照)を介して、2本の仮設桁10Aが橋軸方向に延設する姿勢で架設されている。一方、上り線の橋桁G2の上方には、同様に図示を省略する仮設支持体60を介して、2本の仮設桁10Bが橋軸方向に延設する姿勢で架設されている。
【0040】
各仮設桁10の上面10aの中央位置には、第1レール11が橋軸方向に延設する姿勢で設置されている。また、ともに2本の上り線と下り線の仮設桁10A,10Bのうち、内側に位置する仮設桁10A,10Bの上面10aの内側端には、第2レール12が橋軸方向に延設する姿勢で設置されている。さらに、各仮設桁10の左右の側面10bには、第3レール13が橋軸方向に延設する姿勢で設置されている。
【0041】
一対の仮設桁10Aのそれぞれの第1レール11に跨がるようにして、正面視逆Tの字状の主フレーム21の下端に設けられている電動車輪22が設置されており、同様に、一対の仮設桁10Bのそれぞれの第1レール11にも、正面視逆Tの字状の主フレーム21の下端に設けられている電動車輪22が設置されている。そして、これら一対の主フレーム21の上端には、橋軸直角方向に延設する第1上部桁24が掛け渡され、第1上部桁24の上方に屋根25が設けられることにより、移動式台車20が構成される。
【0042】
橋軸直角方向に延設する第1上部桁24の左右端近傍からは、ワイヤやチェーン、PC鋼棒等により形成される複数の吊り材26が垂下されており、各吊り材26の下端には、作業床27が固定されている。
【0043】
図4に示すように、作業床27は、解体対象である2つの橋桁G1,G2の下方に配設された状態で吊り材26を介して第1上部桁24から垂下されている。2つの橋桁G1,G2の橋軸直角方向の全幅:t1に対して、作業床27の橋軸直角方向の幅t2は相対的に広幅となっている。
【0044】
作業床27の左右端には、防護材27aが立設している。この防護材27aは、防護柵と、防護柵に設置されている吸音シート等の防護シートにより形成されている。作業床27は、平面視矩形を呈しており、その左右端には図示例の防護材27aが立設しているが、移動式台車20の移動方向と反対側の端辺にも不図示の防護材27aが立設している。以下で説明するように、移動式台車20の橋軸方向の移動に際して橋桁Gが解体撤去されるため、移動式台車20の移動方向の反対側には橋桁Gが存在しておらず、従って、移動式台車20の移動方向と反対側の端辺にある不図示の防護材27aは橋桁Gと干渉しないことからその設置が可能になる。
【0045】
このように、平面視矩形の作業床27の少なくとも3つの端辺に沿って防護材27aが立設していることにより、作業床27上にある資機材や作業員の落下が防止され、施工安全性の高い橋桁撤去装置50が形成される。
【0046】
図4に示すように、作業床27の上には、解体対象の橋桁Gを下方から支保する支保工28が設けられている。
【0047】
このように、支保工28にて橋桁Gを支保した状態で、橋桁Gを搬送用の大きさの複数の分割体に分割することにより、分割体を形成した際に作業床27の上に分割体が落下して作業床27が破損したり、落下した際の衝撃音が周辺に響き渡るといった問題を解消できる。
【0048】
ここで、
図5は、橋桁撤去装置50の中から、作業床27を垂下する移動式台車20のみを取り出して示した斜視図であり、
図4に示す上方の屋根25も省略している。尚、
図5に示す移動式台車20では、第1上部桁24Aが正面視ハット形を呈している、別形態の上部桁であるが、その他の基本構成は
図4に示す例と同様である。
【0049】
このように、移動式台車20は、橋桁Gを解体する際の作業床27を支持し、安全な作業空間を形成するための台車である。ここで、移動式台車20は、第1レール11に沿って橋軸方向に移動自在であることから、橋桁Gを解体して形成された分割体を撤去範囲外にある隣接桁近傍まで搬送し、隣接桁上に待機するクレーン等を介して分割体を搬出するような使用態様で使用されてもよい。
【0050】
図4に戻り、左右の内側にある仮設桁10A,10Bの第2レール12には、それぞれ、主フレーム31の下端に設けられている電動車輪32が設置されている。そして、これら一対の主フレーム31の上端には、橋軸直角方向に延設する第2上部桁34が掛け渡されることにより、運搬台車30が構成される。
【0051】
橋桁撤去装置50の中から、運搬台車30のみを取り出して示した
図6Aと、その平面図である
図6B、さらに斜視図で示す
図6Cを参照することにより、運搬台車30の構成がより一層明りょうになる。一対の主フレーム31は橋軸方向に沿う架構を呈しており、双方の主フレーム31の上端には、橋軸直角方向に延設する複数(図示例は3本)の第2上部桁34が掛け渡されている。その内の1本の第2上部桁34には、同様に橋軸直角方向に延設する第5レール35が設置され、第5レール35には、複数(図示例は2つ)の第1揚重設備37が電動トロリー37aを介して移動自在に設置されている。
【0052】
一対の主フレーム31の上端には、橋軸方向に延設する第4レール33が設置されており、第1揚重設備37を備えた第2上部桁34の両端に設けられている電動トロリー34aを介して、一対の第4レール33に対して当該第2上部桁34が橋軸方向に移動自在に設置されている。ここで、図示例の第1揚重設備37は、チェーンブロックにより形成される。
【0053】
一対の主フレーム31の間には、解体された搬送用の分割体を収容する収容設備38が設けられている。複数の第2上部桁34のうち、橋軸方向に間隔を置いて配設された一対の第2上部桁34Aの間の隙間S1を介して、第1揚重設備37にて吊り上げられた分割体は、収容設備38に収容されるようになっている。運搬台車30は、収容設備38に分割体を収容した後、第2レール12に沿って橋軸方向に走行し、分割体を場外へ搬出する。
【0054】
運搬台車30では、第1揚重設備37を垂下する第2上部桁34が第4レール33に沿って橋軸方向に移動し、第2上部桁34に設置されている第5レール35に沿って第1揚重設備37が電動トロリー37aを介して橋軸直角方向に移動することから、第1揚重設備37は橋軸方向と橋軸直角方向の双方向に移動自在となっている。従って、作業床27上(の支保工28上)の様々な位置に分割体が載置されていても、第1揚重設備37は容易にアクセスして分割体を吊り上げ、収容設備38に収容することができる。
【0055】
図4に戻り、各仮設桁10A,10Bの側面10bに設置されている第3レール13には、主フレーム41の上端に設けられている電動車輪42が設置されている。そして、これら複数の主フレーム41により、サスペンションクレーン40が構成される。
【0056】
橋桁撤去装置50の中から、サスペンションクレーン40のみを取り出して示した
図7A、
図7Bを参照することにより、サスペンションクレーン40の構成がより一層明りょうになる。サスペンションクレーン40は、橋軸方向に併設した一対の主フレーム41により構成され、主フレーム41の上方には橋軸直角方向に延設する第6レール43が設置され、第2揚重設備44が電動トロリー44aを介して第6レール43に対して橋軸直角方向に移動自在に設置されている。図示例の第2揚重設備44もチェーンブロックにより形成されており、第6レール43の左右にそれぞれ、2つで1組の第2揚重設備44が配設されている。各組の第2揚重設備44は、左右にある橋桁G1,G2の解体搬送にそれぞれ適用される。
【0057】
主フレーム41の橋軸直角方向の中央位置には、仮置き受け台46が垂下されており、1組の第2揚重設備44にて橋軸直角方向に搬送されてきた分割体は、仮置き受け台46に一旦仮置きされる。
【0058】
ここで、
図8A乃至
図8Cを参照して、サスペンションクレーン40を利用した分割体の橋軸直角方向への搬送から、運搬台車30による分割体の吊り上げと収容設備38への収容までの一連の流れを説明する。
【0059】
まず、
図8Aに示すように、鉄筋コンクリート製の橋桁G1,G2は、図示例のように、運搬台車30にて橋軸方向に運搬可能な規模と重量の複数の分割体Dに切断分割される。より具体的には、各分割体Dの橋軸方向の長さは、
図5や
図7B等で示すように作業床27の橋軸方向の幅未満の幅に切断される。
【0060】
このような橋桁Gの切断施工は、作業床27の上で、作業員がワイヤーソー等の切削工具を用いて行う。
【0061】
図8Aでは、一方の橋桁G1の端部の高欄を備えた分割体Dを切断し、搬送する状態を示している。尚、
図8A等では、橋桁Gを支保する支保工の図示を省略しており、橋桁Gの周囲の作業床27上に設置されている作業足場28'を示している。
【0062】
作業足場28'上で作業員が橋桁G1を切断して形成された分割体Dは、X1方向に運ばれて第2揚重設備44に垂下された後、第2揚重設備44が第6レール43に沿って橋軸直角方向へX2方向に移動することにより、サスペンションクレーン40の中央位置へ搬送される。
【0063】
次に、
図8Bに示すように、第2揚重設備44にて搬送された分割体Dは、サスペンションクレーン40の中央位置にある仮置き受け台46に一旦預けられる。
【0064】
仮置き受け台46の上方には、運搬台車30の収容設備38や、第1揚重設備37が配設されている。より詳細には、
図8Bからも明らかなように、第5レール35に沿って橋軸直角方向へ移動する第1揚重設備37の移動範囲t5は、仮置き受け台46の橋軸直角方向の幅t6よりも広く設定されている。
【0065】
そのため、ともに内側にある仮設桁10A,10Bの間の隙間S2を介して第1揚重設備37がX3方向に降下してきた際に、第1揚重設備37は仮置き受け台46の中に収容されている分割体Dにアクセスすることができ、分割体Dを第1揚重設備37にて吊り上げることができる。
【0066】
図8Cに示すように、第1揚重設備37にて吊り上げられた分割体Dは、収容設備38に収容される。運搬台車30は、橋桁G1,G2に配設されている第2レール12に沿って橋軸方向に移動し、分割体Dを撤去対象外の隣接桁等の上に待機するクレーン近傍まで移動した後、クレーンに分割体Dが受け渡され、場外へ搬出される。分割体Dをクレーンに受け渡した後、運搬台車30は第2レール12に沿って次の撤去領域に移動する。
【0067】
運搬台車30の収容設備38に分割体Dを収容した姿勢で分割体Dを搬送することにより、分割体Dを落下等させることなく、安全に搬出することができる。
【0068】
ここで、サスペンションクレーン40は、第3レール13に沿って橋軸方向に移動自在であることから、分割体Dを運搬台車30に受け渡すことなく、例えば
図8Aに示すように分割体Dを第2揚重設備44にて吊り上げた状態で、サスペンションクレーン40が第3レール13に沿って橋軸方向に移動し、分割体Dをクレーンに受け渡してもよい。
【0069】
以上、
図4乃至
図8の各図を参照すると明らかなように、3種の第1レール11,第2レール12、及び第3レール13が各仮設桁10の異なる位置に設置され、複数の仮設桁10の上方において、正面視寸法が相対的に大寸法で門型の移動式台車20が配設され、移動式台車20の内側に、相対的に小寸法で門型の運搬台車30が配設されるとともに、複数の仮設桁10の下方にサスペンションクレーン40が配設されていることにより、それぞれが相互に独立して橋軸方向に移動自在な橋桁撤去装置50が形成される。
【0070】
このことにより、移動式台車20と運搬台車30、及びサスペンションクレーン40が同時に個別の作業を行うことができ、解体搬送施工の効率が向上する。例えば、移動式台車20とサスペンションクレーン40が、橋桁Gの切断による分割体Dの形成や分割体Dの橋軸直角方向への搬送を行う施工と並行して、運搬台車30は既に撤去された分割体Dを橋軸方向に搬出する施工が実現でき、効率的に橋桁Gを解体して搬送することができる。
【0071】
また、橋桁撤去装置50によれば、撤去対象の橋桁Gの桁下空間を一切占有する必要がないことから、桁下空間にある車道Rを供用し、交通規制を行うことなく、橋桁Gの解体撤去施工を行うことができる。また、このこととの関連で、車道Rを規制しながらの解体撤去施工でないことから、可能であれば時間制限なく施工を継続することができ、資機材等の搬送を含めて全て車道Rの上空で行うことができることから、施工効率を一層向上させることができる。
【0072】
[実施形態に係る橋桁撤去用の仮設構造体とその施工方法]
次に、
図9乃至
図11を参照して、実施形態に係る橋桁撤去用の仮設構造体の一例について説明する。
ここで、
図9は、実施形態に係る橋桁撤去用の仮設構造体の一例の斜視図である。また、
図10Aと
図10Bはそれぞれ、
図9のX方向矢視図とXI方向矢視図であって、いずれも上方ユニットの荷重を免震支承に載荷させた状態を示す図である。さらに、
図11Aと
図11Bはそれぞれ、
図9のX方向矢視図とXI方向矢視図であって、いずれも上方ユニットの荷重を免震支承に載荷させる前の状態を示す図である。
【0073】
尚、
図9乃至
図11では、例えば上下に隣接する鋼材同士はボルト接合されており、従って仮設支持体60の解体はボルト接合を解除することにより行われるが、このボルト接合のボルトやナットの図示は省略する。
【0074】
図9に示すように、橋桁撤去用の仮設構造体100は、橋桁の上方に間隔を置いて設置されている複数の仮設支持体60と、複数の仮設支持体60に架設され、橋軸方向に延設している複数の仮設桁10と、仮設支持体60の内部に配設されて、橋桁撤去施工の際の地震時の慣性力を低減する免震支承80とを有する。
【0075】
仮設支持体60は、橋桁Gを介して橋脚Pの上(
図2参照)に設置されており、複数の鋼材67(H形鋼等の形鋼材や角形鋼管等)が井桁状に積層された状態で組み付けられている、鋼材積層ユニットにより形成されており、この鋼材積層ユニット60はベントを構成している。そして、この鋼材積層ユニット60の内部には、
図10Bに示すように、2本の仮設桁10に対して計3基の免震支承80が収容されている。ここで、免震支承80の数は、免震支承80に要求される免震性能に応じて適宜設定される。尚、
図9は、
図5に示す一対の仮設桁10A、10Bの一方に対応する領域を図示しており、従って、図示を省略している他方の一対の仮設桁10A、10Bに対応する領域に関しても、同様の構造が形成される。
【0076】
鋼材積層ユニット60のうち、免震支承80よりも上方にあるユニットが上方ユニット61であり、免震支承80よりも下方にあるユニットが下方ユニット62である。
【0077】
鋼材積層ユニット60は、
図10Aに明りょうに示すように、免震支承80に対して橋軸方向に間隔を置いて配設されている、仮受け支承90を備えている。この仮受け支承90は、下方の鋼材91と上方の鋼材92の間に、上下方向の幅u1の隙間94を有している。
【0078】
図10Aに示すように、各免震支承80には、免震支承80よりも上方にある上方ユニット61の荷重や仮設桁10の荷重の総荷重のうち、1基の免震支承80が分担する分担荷重W1が載荷されており、このように免震支承80がその上部工を支持した状態で橋桁撤去施工が進められることになる。
【0079】
ここで、適用される免震支承80には、免震ゴム支承(天然ゴムや特殊配合ゴムと鋼板を交互に積層した支承)や球面滑り支承(鋼板の湾曲面の上を可動体が滑る振り子型の免震支承)、平面滑り支承(鋼板の上を板状の滑り板が滑る免震支承)、平面式もしくは曲面式の単球転がり支承(1つの鋼球を一対の平板状の鋼板もしくは一対の湾曲面を有する鋼板で挟んだ支承)、直動転がり支承(相互に直交する鋼板をガイドに沿って相対移動させる支承)など、様々な形態が適用できる。いずれの形態の免震支承80であっても、地震時の水平変形と回転変形が許容される。
【0080】
また、免震支承80の上方には、鋼材81を介して、上方ユニット61に含まれる上鋼材63が設置されている。上鋼材63は、免震支承80の上方にある鋼材81の上方において橋軸方向に延設し、免震支承80を挟む一対の仮受け支承90を構成する双方の鋼材92を超える位置まで延びている。
【0081】
一方、免震支承80の下方には、下方ユニット62に含まれる下鋼材64が設置されており、下鋼材64には仮受け支承90を構成する鋼材91が固定されている。
【0082】
そして、上下の位置関係にある上鋼材63と下鋼材64の双方の対応する位置に、上下方向に延びるPC鋼棒65(鋼棒の一例)の両端が定着されている。このPC鋼棒65には、所定のプレストレス力が導入されていてもよいし、プレストレス力が導入されていなくてもよい。
【0083】
図10Aと
図10Bからも明らかなように、免震支承80を橋軸方向で挟む位置において、上鋼材63と下鋼材64とPC鋼棒65からなる一対のユニットが設けられ、3基の免震支承80を橋軸直角方向で挟む位置において、同様にこの一対のユニットが設けられている。
【0084】
また、上鋼材63と鋼材92との間の界面は、スムーズな水平方向への摺動を可能にする滑り面66となっており、上鋼材63と鋼材92はボルト接合されていない。この滑り面66は、例えば上鋼材63の下面や、鋼材92の上面のいずれか一方に、ステンレス板やテフロン(登録商標)シート等の摩擦軽減材を取り付けておくことにより形成される。
【0085】
このように、免震支承80に対して、上方ユニット61が水平方向へスムーズにスライドできる態様で載置されていることにより、大地震における免震支承80の自由なせん断変形が許容され、その地震エネルギー吸収性の発揮を保証できる。
【0086】
橋桁撤去施工が年単位の長期に亘る施工である場合に、施工途中において大地震が発生する可能性を否定することはできず、大地震が発生した際には、地震時の慣性力により、
図9に示すように、仮設構造体100の全体には橋軸方向であるZ1方向への水平変位と、橋軸直角方向であるZ3方向への水平変位が生じ得る。そして、仮設構造体100の変位による地震荷重が、建設から数十年が経過している既設の橋脚Pをはじめとする下部工に作用し、下部工が破損や倒壊することが懸念される。さらには、地震荷重により、仮設構造体100の落下等も懸念される。
【0087】
しかしながら、仮設構造体100を構成する仮設支持体60がその内部に免震支承80を備え、免震支承80が仮設支持体60の上方ユニット61や仮設桁10等を支持していることにより、大地震の際のこれらに作用する慣性力(地震時のエネルギー)を低減することにより、上記する下部工への負荷を低減してその破損や倒壊を防止でき、さらには、仮設構造体100の落下等を防止できる。
【0088】
また、
図10Aに示すように、免震支承80の橋軸方向の両側において、仮受け支承90がその内部に上下方向の幅u1の隙間94を備えていることにより、上方ユニット61や仮設桁10が橋軸方向であるZ1方向へ変位した際に、隙間94によって上方ユニット61が橋軸方向へZ2方向に回動して仮受け支承90の鋼材91に当接し、鋼材91がストッパーとして機能し、それ以上の回動を防止して上方ユニット61等の落橋を防止する。すなわち、仮受け支承90は、大地震時の橋軸方向に対するフェールセーフ機能を有することになる。
【0089】
ここで、隙間94の幅u1は、設計上想定される上方ユニット61の免震支承80を支点とした回動変形量(の上下方向成分)よりも大きな幅に設定されるのが望ましい。そして、仮にこの設計上の想定を上回る回転変形量が生じた場合でも、隙間94によって上方ユニット61等の回転変形を抑制する効果を期待することができ、仮受け支承90によるストッパー効果を期待できる。
【0090】
また、
図10Bに示すように、大地震時に上方ユニット61や仮設桁10が橋軸直角方向へZ3方向に水平変位し、Z4方向に回動した場合に、引張側となる免震支承80には上向きの引張力が作用し得る。しかしながら、上下の位置関係にある上鋼材63と下鋼材64の双方にPC鋼棒65の両端が定着されている構成を有することにより、その近傍に位置するPC鋼棒65がこの引張力に対抗することによって、免震支承80に作用し得る引張力を低減もしくは解消することができる。
【0091】
また、仮に、免震支承80が破損に至り得る過度なZ3方向への水平変位が生じた場合でも、上鋼材92とその周囲にある鋼材67が相互に当接することにより、それ以上の変位を防止することができる。
【0092】
次に、
図11A,11Bと、
図10A,10Bを順に参照しながら、実施形態に係る橋桁撤去用の仮設構造体の施工方法について説明する。
【0093】
仮設構造体の施工方法は、A工程として、橋桁Gの上方に間隔を置いて、複数の仮設支持体60を設置し、次いで、B工程として、複数の仮設支持体60に対して、橋軸方向に延設する仮設桁10を架設して、仮設支持体60と仮設桁10とにより形成される仮設構造体100を施工する。
【0094】
このA工程において、仮設支持体60の内部には、既に説明した通り、橋桁撤去施工の際の地震時(大地震時)の慣性力を低減する免震支承80を含ませる。
【0095】
さらに、A工程では、既に説明した通り、免震支承80の周囲において、複数の鋼材67を井桁状に相互に積層させ、ボルト接合しながら組み付けることによって、仮設支持体である鋼材積層ユニット60を施工する。鋼材積層ユニット60は、免震支承80に対して橋軸方向に間隔を置いて配設されている仮受け支承90を備えている。
【0096】
ここで、
図11Aと
図11Bに示すように、仮設構造体100の施工段階においては、まず、仮受け支承90を構成する上下の鋼材92,91の間(
図10A、
図10Bにおける隙間94に相当する位置)に、鋼製の仮プレート93を介在させておく。
【0097】
この構成により、仮設構造体100の施工初期の段階では、上記B工程において、上方ユニット61と仮設桁10等の荷重のうちの一部の分担荷重W2(仮受け支承90の負担する分担荷重W2の合計が
図10Aの分担荷重W1となる)を、免震支承80を橋軸方向で挟む一対の仮受け支承90にそれぞれ載荷させるようにし、一対の仮受け支承90にて上方ユニット61等を支持させる。
【0098】
次に、鋼材92等を不図示の油圧ジャッキ等でジャッキアップすることにより、上方ユニット61や仮設桁10を持ち上げた状態で各仮受け支承90から仮プレート93を取り外し、
図10Aと
図10Bに示すように隙間94を形成する。このことにより、上方ユニット61や仮設桁10等の分担荷重W1(分担荷重W2の合計)が免震支承80に載荷され、仮設構造体100が形成される。
【0099】
このように、仮設構造体100の施工過程において、免震支承80に上載荷重を載荷する前に仮受け支承90に一旦載荷させ、その後に免震支承80に荷重を盛り替えることにより、免震支承80に対する上方ユニット61と仮設桁10の効率的かつ精緻な設置を実現できる。
【0100】
【0101】
図12A乃至
図12Cは、橋桁撤去方法のうち、既設の橋桁Gの解体撤去に際して、橋桁Gの上に仮設桁10を設置する方法を説明する工程図である。
【0102】
図12Aに示すように、図示例において解体撤去される橋桁Gは、4本の橋脚Pにて支持される3径間に延設する単純桁が、PC鋼材により緊結されている橋桁である。撤去範囲の左右端にある橋脚P1,P4には、撤去範囲外にある隣接桁G'が架設されている。
【0103】
左右の隣接桁G'からそれぞれ、クレーンCが撤去範囲に進入して資機材を搬送したり、資材の設置を行う。まず、各クレーンCは、橋軸方向における撤去範囲の中央位置から順に、盛り替え支持体60A,60Bを橋桁Gの上に間隔を置いて設置し、複数の盛り替え支持体60A,60Bの上に仮設桁分割体10'を橋軸方向に連続するように並べ、隣接する仮設桁分割体10'の端部同士を連結していく。
【0104】
各クレーンCは、左右の隣接桁G'側へY1方向に後退しながら、盛り替え支持体60A,60Bの盛り替え設置と仮設桁分割体10'の設置を行っていく。ここで、盛り替え支持体60A,60Bの盛り替え設置は、例えば、
図12Aにおいて橋軸方向の中央側にある盛り替え支持体60Aを取り外して、新たに仮設桁分割体10'が設置される隣接桁G'側の所定位置に盛り替え支持体60Aを盛り替え、新たな仮設桁分割体10'をその上に載置する。以後、
図12Aに示す盛り替え支持体60Bを取り外して、同様の要領で、新たに仮設桁分割体10'が設置される隣接桁G'側の所定位置に盛り替え支持体60Bを盛り替え、新たな仮設桁分割体10'をその上に載置する。
【0105】
図12Bに示すように、橋脚P2,P3の上には、盛り替え支持体60A,60Bではなく、橋桁Gを撤去する際に仮設桁10を正規に支持するための仮設支持体60を設置する。仮設支持体60は、各径間に亘る長尺な仮設桁10を分担して直接支持する支持体であることから、仮設桁10を施工するために使用される盛り替え支持体60A,60Bに比べて剛性も高く、大規模な支持体である。ここで、仮設支持体60は、H形鋼や山形鋼、溝形鋼等の形鋼材が組み付けられ、必要に応じて短尺な鋼管や角形鋼管等が適用されることにより、形成される。
【0106】
仮設支持体60が各橋脚Pの上に設置され、この仮設支持体60にて長尺な仮設桁10が支持されることから、仮設桁10の荷重は仮設支持体60を介して橋脚Pにスムーズに伝達される。
【0107】
以後、クレーンCが後退しながら、盛り替え支持体60A,60Bの盛り替え設置と、仮設桁分割体10'の設置、仮設桁分割体10'同士の連結を繰り返し行い、
図12Cに示すように、さらに橋脚P1,P4の上に仮設支持体60を設置する。
【0108】
橋軸方向に並ぶ複数の仮設桁分割体10'が相互に連結されることにより、仮設桁10を形成し、4本の橋脚P1乃至P4の上方に設置された4基の仮設支持体60に仮設桁10を架設する。
【0109】
図12Cに示すように、仮設桁10の長さt9は、撤去範囲である橋脚P1~橋脚P4の区間長t8よりも長くなるように設定されている。このように、仮設桁10が撤去範囲よりも長い長さを有していることにより、橋桁Gの撤去範囲の全域の解体撤去を行うことができる。
【0110】
図12Cには、橋脚P4の近傍に設置される仮設桁分割体10'を、多軸台車Mを利用してY2方向に搬送する状態を合わせて示している。このように、仮設桁分割体10'の搬送は、クレーンCの他にも様々な搬送手段により行われてよい。
【0111】
また、各仮設桁分割体10'には、第1レール11,第2レール12、及び第3レール13を構成する各分割レールが予め設置されており、仮設桁10が形成された際に、各分割レールが橋軸方向に連続することにより、仮設桁10と同程度の長さを有する第1レール11,第2レール12、及び第3レール13が同時に形成される。
【0112】
次に、
図13A乃至
図13Cに示すように、仮設桁10を利用して橋桁Gを解体撤去する。まず、
図13Aに示すように、第1レール11(
図4参照)に移動式台車20を移動自在に設置し、第3レール13(
図4参照)にサスペンションクレーン40を移動自在に設置し、移動式台車20にて橋桁Gの下方に配設される作業床27を垂下させ、作業床27を防護材27aにて包囲する。尚、
図13Aの段階では、運搬台車30は第2レール12に設置されない。
【0113】
ここで、移動式台車20とサスペンションクレーン40は2台で1組を成し、中央にある橋脚P2の左右と、橋脚P3の左右のそれぞれに各組を配置する。そして、左右各組のそれぞれに対して、以後に設置予定の1台の運搬台車30が割り当てられる。
【0114】
橋桁Gの撤去は、大きく4つの撤去区間が設定されており、橋脚P2の左右には、バランス区間A,Bが設定され、各区間に対して各組の移動式台車20とサスペンションクレーン40が割り当てられる。そして、バランス撤去区間A,Bで生じた分割体Dは、これらの区間に割り当てられている運搬台車30にて、左側にある隣接桁G'上に待機しているクレーンCの近傍まで搬送され、クレーンCを介して運搬車Tに積み込まれ、場外へ搬出されることになる。
【0115】
一方、橋脚P3の左右には、バランス撤去区間C,Dが設定され、各区間に対して各組の移動式台車20とサスペンションクレーン40が割り当てられる。そして、バランス区間C,Dで生じた分割体Dも、これらの区間に割り当てられている運搬台車30にて、右側にある隣接桁G'上に待機しているクレーンCの近傍まで搬送され、クレーンCを介して運搬車Tに積み込まれ、場外へ搬出される。
【0116】
これらバランス撤去区間A,Bやバランス撤去区間C,Dにおける橋桁Gの解体撤去は、橋脚P2から左右に張り出す左側領域と右側領域の橋桁Gの張り出し長さをバランスさせながら解体撤去され、同様に、橋脚P3から左右に張り出す左側領域と右側領域の橋桁Gの張り出し長さをバランスさせながら解体撤去されることから、ここでは、「バランス撤去区間」と称している。
【0117】
例えば、橋脚P2の左側領域と右側領域の張り出し長さを比較した際に、左側領域の長さが長いことから、左右の張り出し長さをバランスさせながら撤去する施工に際して、左側領域における一部区間を、先行撤去区間A(差分区間)として先行撤去する。このことは、橋脚P3の左側領域と右側領域についても同様であり、橋脚P3の左側領域と右側領域の張り出し長さを比較した際に、右側領域の長さが長いことから、左右の張り出し長さをバランスさせながら撤去する施工に際して、右側領域における一部区間を、先行撤去区間B(差分区間)として先行撤去する。
【0118】
先行撤去区間A,Bの撤去に際しては、仮設桁10からPC鋼棒等からなる複数の仮吊り材70を垂下し、仮吊り材70にて橋桁Gにおける各先行撤去区間を吊持した状態で、移動式台車20とサスペンションクレーン40を撤去領域に移動させ、解体する。
【0119】
先行撤去区間A,Bの近傍には、クレーンCが待機し、クレーンCのブームの届く範囲に作業床27がある場合は、作業床27の上にある解体された橋桁Gの一部をクレーンCにて直接受け取り、搬出する。一方、クレーンCのブームの届く範囲に作業床27がない場合は、移動式台車20をクレーンC側へ移動させ、クレーンCにて解体された橋桁Gの一部を受け取らせた上で搬出する。
【0120】
このように、先行撤去区間A,Bを撤去することにより、橋脚P2,P3のそれぞれの左側領域と右側領域の張り出し長さは、同一、もしくはバランス撤去が可能な範囲で略同一に調整される。
【0121】
次に、
図13Bに示すように、橋脚P2の左側領域と右側領域を分担する運搬台車30と、橋脚P3の左側領域と右側領域を分担する運搬台車30が、仮設桁10の第2レール12に設置される。
【0122】
橋脚P2では、バランス撤去区間Aとバランス撤去区間Bのそれぞれの端に、対応する移動式台車20とサスペンションクレーン40を位置合わせし、橋桁Gを複数の分割体Dに分割しながら順次解体する。解体された分割体Dは、運搬台車30が順次積み込み、クレーンCの近傍まで移動してクレーンCに受け渡す輸送方法により、搬出される。
【0123】
橋脚P2の左側領域と右側領域では、双方の解体撤去のスピードをバランスさせ、橋脚P2の上の仮設支持体60からの張り出し長さが同程度となるように双方の長さをバランスさせながら、橋脚P2側へY3方向に解体撤去を進めていく。
【0124】
橋脚P3においても、上記橋脚P2の左右における解体撤去方法と同様の方法で、バランス撤去区間Cとバランス撤去区間Dにおける橋桁Gの解体撤去を進めていく。
【0125】
図13Cは、
図13Bを斜め上方から見た斜視図で示す図である。実施形態に係る解体搬送方法によれば、撤去対象の橋桁Gの桁下空間を一切占有しなくてよいことから、
図13Cに示すように、橋桁Gの解体撤去施工は、下方にある車道Rを供用しながら行うことができる。
【0126】
各橋脚P2,P3まで移動式台車20とサスペンションクレーン40の解体撤去が進み、撤去範囲にある全ての橋桁Gが解体撤去される。
【0127】
橋桁Gが解体された後、移動式台車20と運搬台車30とサスペンションクレーン40を解体して搬出し、橋脚P上に残された仮設桁10は、例えば、一方の隣接桁G'側に引き込んで順次解体することにより、仮設桁10が解体される。
【0128】
その後、既設の橋脚Pも解体撤去され、新設の橋脚が施工され、新設の橋脚上に新設の橋桁が架設されることにより、橋梁が更新される。
【0129】
尚、上記実施形態に挙げた構成等に対し、その他の構成要素が組み合わされるなどした他の実施形態であってもよく、ここで示した構成に本発明が何等限定されるものではない。この点に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更することが可能であり、その応用形態に応じて適切に定めることができる。
【符号の説明】
【0130】
10,10A,10B:仮設桁
10':仮設桁分割体
10a:上面
10b:側面
11:第1レール
12:第2レール
13:第3レール
15:安全柵
20:移動式台車
21:主フレーム
22:電動車輪
24,24A:第1上部桁
25:屋根
26:吊り材
27:作業床
27a:防護材
28:支保工
28':作業足場
29:第3揚重設備(チェーンブロック)
30:運搬台車
31:主フレーム
32:電動車輪
33:第4レール
34,34A:第2上部桁
34a:電動トロリー
35:第5レール
37:第1揚重設備(チェーンブロック)
37a:電動トロリー
38:収容設備
40:サスペンションクレーン
41:主フレーム
42:電動車輪
43:第6レール
44:第2揚重設備(チェーンブロック)
44a:電動トロリー
46:仮置き受け台
50:橋桁撤去装置
60:仮設支持体(鋼材積層ユニット、ベント)
60A,60B:盛り替え支持体
61:上方ユニット
62:下方ユニット
63:上鋼材
64:下鋼材
65:鋼棒(PC鋼棒)
66:滑り面
67:鋼材
70:仮吊り材(PC鋼棒)
80:免震支承
90:仮受け支承
91,92:鋼材
93:仮プレート
100:仮設構造体(橋桁撤去用の仮設構造体)
B:橋梁
P,P1~P4:橋脚
G,G1,G2:橋桁
G':隣接桁
R:車道
S1,S2:隙間
D:分割体
C:クレーン
M:多軸台車
T:運搬車
【手続補正書】
【提出日】2023-06-29
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
既設の橋脚の上に架設されている既設の橋桁を解体して搬送する、橋桁撤去施工に適用される、橋桁撤去用の仮設構造体であって、
前記仮設構造体は、
前記橋桁の上方のうち、複数の橋脚の直上に対応する位置にそれぞれ設置されている、複数の仮設支持体と、
複数の前記仮設支持体に架設され、橋軸方向に延設している、仮設桁とを有し、
前記仮設桁に沿って移動式台車と運搬台車が移動自在に設置されるようになっており、該移動式台車を利用して橋桁が切断されて搬送用の分割体とされ、該運搬台車を利用して該分割体が搬送されることにより、前記橋桁が解体されて搬送される橋桁撤去施工に適用されるものであり、
前記仮設支持体は、
複数の上鋼材が井桁状に積層されてなる上方ユニットと、複数の下鋼材が井桁状に積層されてなる下方ユニットとにより形成される、鋼材積層ユニットを有し、
前記上方ユニットと前記下方ユニットの間には、前記橋桁撤去施工の際の地震時の慣性力を低減する免震支承であって、免震ゴム支承、球面滑り支承、平面滑り支承、単球転がり支承、直動転がり支承のいずれか一種の免震支承が設置され、さらに、該免震支承を橋軸方向で挟む一対の位置には、該免震支承との間に間隔を置いて一対の仮受け支承が設置され、
前記免震支承の下部は前記下鋼材の上面に固定され、該免震支承の上部に鋼材が固定され、該鋼材の上に前記上鋼材の下面が載置されており、
前記仮受け支承は、下方の鋼材と上方の鋼材を備え、該下方の鋼材は前記下鋼材の上面に固定され、該上方の鋼材は前記上鋼材の下面に固定され、該下方の鋼材と該上方の鋼材の間には隙間が形成され、
前記下鋼材と前記上鋼材のうち、前記免震支承を橋軸直角方向で挟む一対の位置において、該下鋼材と該上鋼材が複数の鋼棒によって接続されており、
前記上方ユニットと前記仮設桁の荷重は前記免震支承に載荷されており、地震時に該上方ユニットが橋軸方向へ変位する際に、該免震支承を橋軸方向で挟む前記一対の仮受け支承の備える前記隙間によって該上方ユニットが橋軸方向へ回動することが可能になり、回動した該上方ユニットが該仮受け支承を構成する前記下方の鋼材に当接することで該上方ユニットのストッパーになり、
地震時に前記上方ユニットが橋軸直角方向へ変位した際の引張力に対して、前記鋼棒が対抗することを特徴とする、橋桁撤去用の仮設構造体。
【請求項2】
前記橋桁の上方に前記仮設支持体を設置し、該仮設支持体に前記仮設桁を架設して該仮設構造体を施工する、仮設構造体の施工過程では、前記上方ユニットと前記仮設桁の荷重を前記免震支承に載荷させないこととし、そのために、前記一対の仮受け支承の備える前記隙間には仮プレートが介在し、該仮受け支承は、前記下方の鋼材と該仮プレートと前記上方の鋼材の積層体となって、該上方ユニットと該仮設桁の荷重を該仮受け支承が負担し、
前記仮設構造体の施工の最終段階において、前記隙間から前記仮プレートが取り外されるようになっており、該仮プレートが取り外された際に、前記上方ユニットと前記仮設桁の荷重が前記免震支承に盛り替えて載荷されることにより、前記仮設構造体が形成されるようになっていることを特徴とする、請求項1に記載の橋桁撤去用の仮設構造体。
【請求項3】
前記仮設桁の長さは、前記橋桁の撤去範囲よりも長いことを特徴とする、請求項1又は2に記載の橋桁撤去用の仮設構造体。
【請求項4】
既設の橋脚の上に架設されている既設の橋桁を解体して搬送する、橋桁撤去装置であって、
請求項1又は2に記載の橋桁撤去用の仮設構造体と、
前記仮設桁に沿って移動する、前記移動式台車及び前記運搬台車とを有し、
前記移動式台車には、前記橋桁の橋軸直角方向の幅以上の幅を備え、該橋桁の下方に配設されて、該橋桁を切断して搬送用の分割体とする作業床が垂下されており、
前記運搬台車には、前記橋桁が切断された搬送用の分割体を吊り上げる第1揚重設備と、該第1揚重設備にて吊り上げられた該分割体を収容する収容設備が設けられていることを特徴とする、橋桁撤去装置。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0001
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0001】
本発明は、橋桁撤去用の仮設構造体と橋桁撤去装置に関する。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
本発明は、工事期間中に大地震が発生した際に、橋桁撤去用の仮設構造体に作用する地震荷重に起因する下部工の破損や倒壊、仮設構造体の落下等を防止できる、橋桁撤去用の仮設構造体と橋桁撤去装置を提供することを目的としている。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0030
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0030】
本発明の橋桁撤去用の仮設構造体と橋桁撤去装置によれば、工事期間中に大地震が発生した際に、橋桁撤去用の仮設構造体に作用する地震荷重に起因する下部工の破損や倒壊、仮設構造体の落下等を防止できる。