(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024113525
(43)【公開日】2024-08-22
(54)【発明の名称】表面粗さ評価方法、及び表面粗さ評価装置
(51)【国際特許分類】
G01N 21/17 20060101AFI20240815BHJP
G01N 21/954 20060101ALI20240815BHJP
【FI】
G01N21/17 A
G01N21/954 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】40
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023018577
(22)【出願日】2023-02-09
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】前田 哲次
(72)【発明者】
【氏名】原田 淳司
(72)【発明者】
【氏名】古川 久明
【テーマコード(参考)】
2G051
2G059
【Fターム(参考)】
2G051AA07
2G051AB20
2G051BA01
2G051BA20
2G051CA04
2G051CB01
2G051CB05
2G059AA05
2G059BB08
2G059EE02
2G059FF01
2G059GG01
2G059GG02
2G059GG03
2G059HH02
2G059KK03
2G059KK04
2G059MM01
2G059MM03
2G059MM05
2G059MM09
2G059MM10
(57)【要約】
【課題】評価する金属面の表面粗さが目標表面粗さか否かを、より確実に評価可能とする。
【解決手段】評価する金属面の表面粗さが、目標表面粗さであるかどうかを評価する表面粗さ評価方法であって、照明装置10で評価する金属面に照明光を照射し、上記照明装置の照射軸と交わる位置を含む領域を明部領域ARA-1とし、上記明部領域ARA-1に隣接し当該明部領域ARA-1よりも相対的に輝度が低い領域を暗部領域ARA-2とし、上記明部領域ARA-1における、予め設定した輝度以上の領域の割合である輝度割合を求め、上記暗部領域ARA-2の平均輝度を暗部輝度として求め、上記輝度割合が予め設定した第1の閾値未満で、且つ、上記暗部輝度が予め設定した第2の閾値より大きい場合に、上記評価する金属面が上記目標表面粗さと評価する。
【選択図】
図13
【特許請求の範囲】
【請求項1】
評価する金属面の表面粗さが、目標表面粗さであるかどうかを評価する表面粗さ評価方法であって、
照明装置で評価する金属面に照明光を照射し、
上記照明光が当たる上記評価する金属面を撮像し、
撮像した画像における、輝度が明るい領域である明部領域と、上記明部領域よりも輝度が低い暗部領域とをそれぞれ定め、
上記明部領域の輝度と上記暗部領域の輝度に基づき、上記評価する金属面の表面粗さを評価する、
ことを特徴とする表面粗さ評価方法。
【請求項2】
上記明部領域の平均輝度を明部輝度として求め、
上記暗部領域の平均輝度を暗部輝度として求め、
上記明部輝度と上記暗部輝度との輝度の差が、予め設定した第3の閾値以下の場合、上記評価する金属面が目標表面粗さであると評価する、
ことを特徴とする請求項1に記載した表面粗さ評価方法。
【請求項3】
上記明部領域における、予め設定した輝度以上の領域の割合である輝度割合を求め、
上記輝度割合に基づき、上記評価する金属面の表面粗さを評価する、
ことを特徴とする請求項1に記載した表面粗さ評価方法。
【請求項4】
上記輝度割合が予め設定した第1の閾値未満の場合に、上記評価する金属面が目標表面粗さと評価する、
ことを特徴とする請求項3に記載した表面粗さ評価方法。
【請求項5】
上記予め設定した輝度は、上記評価する金属面でハレーションが発生した場合における当該ハレーションが発生している部分の輝度若しくはその輝度から安全代分だけ小さくした輝度である、
ことを特徴とする請求項4に記載した表面粗さ評価方法。
【請求項6】
上記撮像した画像における、上記明部領域よりも輝度が低い暗部領域を定め、
上記暗部領域の平均輝度を暗部輝度として求め、
上記輝度割合と暗部輝度に基づき、上記評価する金属面の表面粗さを評価する、
ことを特徴とする請求項3に記載した表面粗さ評価方法。
【請求項7】
上記輝度割合が予め設定した第1の閾値未満で、且つ、上記暗部輝度が予め設定した第2の閾値より大きい場合に、上記評価する金属面が目標表面粗さと評価する、
ことを特徴とする請求項6に記載した表面粗さ評価方法。
【請求項8】
上記第2の閾値は、上記明部領域の全域でハレーションが発生した場合における、上記暗部領域の平均輝度よりも大きな輝度である、
ことを特徴とする請求項7に記載した表面粗さ評価方法。
【請求項9】
上記明部領域の平均輝度を明部輝度として求め、
上記明部輝度と上記暗部輝度との輝度の差が、予め設定した第3の閾値を超える場合、上記評価する金属面が上記目標表面粗さとの評価を、目標表面粗さよりも表面粗さが小さいと評価を変更する、
ことを特徴とする請求項7に記載した表面粗さ評価方法。
【請求項10】
面形状が予め設定した凹凸形状となっている領域を有する金属面を評価対象とし、その金属面の表面粗さが目標表面粗さであるかどうかを評価する表面粗さ評価方法であって、
照明装置で上記凹凸形状となっている領域の金属面に照明光を照射し、
上記照明光が当たる上記評価する金属面を撮像し、
撮像した画像における、上記凹凸形状となっている領域のうちの輝度が明るい領域である明部領域を定め、
上記明部領域における、予め設定した輝度以上の領域の割合である輝度割合を求め、
上記輝度割合に基づき、上記評価する金属面の表面粗さを評価する、
ことを特徴とする表面粗さ評価方法。
【請求項11】
上記輝度割合が予め設定した第1の閾値未満の場合に、上記評価する金属面が目標表面粗さと評価する、
ことを特徴とする請求項10に記載した表面粗さ評価方法。
【請求項12】
上記予め設定した輝度は、上記評価する金属面でハレーションが発生した場合における当該ハレーションが発生している部分の輝度若しくはその輝度から安全代分だけ小さくした輝度である、
ことを特徴とする請求項10又は請求項11に記載した表面粗さ評価方法。
【請求項13】
上記撮像した画像における、上記凹凸形状となっている領域のうちの上記明部領域よりも輝度が低い暗部領域を定め、
上記暗部領域の平均輝度を暗部輝度として求め、
上記輝度割合が上記第1の閾値未満で、且つ、上記暗部輝度が予め設定した第2の閾値より大きい場合に、上記評価する金属面が目標表面粗さと評価する、
ことを特徴とする請求項10又は請求項11に記載した表面粗さ評価方法。
【請求項14】
上記第2の閾値は、上記明部領域全域でハレーションが発生した場合における、上記暗部領域の平均輝度よりも大きな輝度である、
ことを特徴とする請求項13に記載した表面粗さ評価方法。
【請求項15】
上記明部領域の平均輝度を明部輝度として求め、
上記輝度割合が上記第1の閾値未満で、且つ、上記暗部輝度が予め設定した第2の閾値より大きく、更に、上記明部輝度と上記暗部輝度との輝度の差が、予め設定した第3の閾値以下の場合に、上記評価する金属面が目標表面粗さと評価する、
ことを特徴とする請求項13に記載した表面粗さ評価方法。
【請求項16】
予め設定された凹凸形状がねじ形状である、
請求項10又は請求項11に記載した表面粗さ評価方法。
【請求項17】
上記評価する金属面は、表面処理で表面を粗くした金属面である、
請求項1~請求項11のいずれか1項に記載した表面粗さ評価方法。
【請求項18】
上記明部領域は、上記表面処理を施す前の金属面に上記照明光を照明した場合に、ハレーションが発生する部分を含む領域とする、
請求項17に記載した表面粗さ評価方法。
【請求項19】
上記予め設定した輝度は、上記表面処理を施す前の金属面に上記照明光を照明した場合に発生したハレーションの位置の輝度、若しくはその輝度から安全代分だけ小さくした輝度である、
ことを特徴とする請求項18に記載した表面粗さ評価方法。
【請求項20】
上記評価する金属面が、油井管の管端ねじ部であり、
管端を撮像した画像の画像処理によって、管端位置を検出し、
検出した管端位置によって、画像における管端部の水平方向位置を補正する、
ことを特徴とする請求項16に記載した表面粗さ評価方法。
【請求項21】
管に周方向に沿ったレーザー光を照射し、そのレーザー光を照射した管を撮像し、
撮像した画像中のレーザー光の位置によって、管の上下位置を検出し、
検出した管の上下位置から、画像における管端部の上下方向位置を補正する、
ことを特徴とする請求項16に記載した表面粗さ評価方法。
【請求項22】
評価する金属面の表面粗さが、目標表面粗さであるかどうかを評価する表面粗さ評価装置であって、
評価する金属面に照明光を照射する照明装置と、
上記照明光が当たる領域である照明領域を撮像する撮像装置と、
撮像した画像内における上記照明領域内から選択した領域であって、輝度が明るい領域である明部領域と、上記明部領域よりも輝度が低い暗部領域をそれぞれ設定する設定部と、
上記明部領域の輝度と上記暗部領域の輝度に基づき、上記評価する金属面の表面粗さを評価する評価部と、
を備えることを特徴とする表面粗さ評価装置。
【請求項23】
上記明部領域の平均輝度を明部輝度として求める明部輝度算出部と、
上記暗部領域の平均輝度を暗部輝度として求める暗部輝度算出部と、を備え、
上記評価部は、上記明部輝度と上記暗部輝度との輝度の差が、予め設定した第3の閾値以下の場合、上記評価する金属面が目標表面粗さであると評価する、
ことを特徴とする請求項22に記載した表面粗さ評価装置。
【請求項24】
上記明部領域における、予め設定した輝度以上の領域の割合である輝度割合を求める輝度割合算出部を備え、
上記評価部は、上記輝度割合に基づき、上記評価する金属面の表面粗さを評価する、
を備えることを特徴とする請求項22に記載した表面粗さ評価装置。
【請求項25】
上記評価部は、上記輝度割合が予め設定した第1の閾値未満の場合に、上記評価する金属面が目標表面粗さと評価する、
ことを特徴とする請求項24に記載した表面粗さ評価装置。
【請求項26】
上記予め設定した輝度は、上記評価する金属面でハレーションが発生した場合における当該ハレーションが発生している部分の輝度若しくはその輝度から安全代分だけ小さくした輝度である、
ことを特徴とする請求項25に記載した表面粗さ評価装置。
【請求項27】
上記設定部は、上記撮像した画像における、上記明部領域よりも輝度が低い暗部領域を設定し、
更に、上記暗部領域の平均輝度を暗部輝度として求める暗部輝度算出部を有し、
上記評価部は、上記輝度割合と暗部輝度に基づき、上記評価する金属面の表面粗さを評価する、
ことを特徴とする請求項24に記載した表面粗さ評価装置。
【請求項28】
上記評価部は、上記輝度割合が予め設定した第1の閾値未満で、且つ、上記暗部輝度が予め設定した第2の閾値より大きい場合に、上記評価する金属面が目標表面粗さと評価する、
ことを特徴とする請求項27に記載した表面粗さ評価装置。
【請求項29】
上記第2の閾値は、上記明部領域の全域でハレーションが発生した場合における、上記暗部領域の平均輝度よりも大きな輝度である、
ことを特徴とする請求項28に記載した表面粗さ評価装置。
【請求項30】
上記明部領域の平均輝度を明部輝度として求める明部輝度算出部を備え、
上記評価部は、上記明部輝度と上記暗部輝度との輝度の差が、予め設定した第3の閾値を超える場合、上記評価する金属面が目標表面粗さとの評価を、目標表面粗さよりも小さい表面粗さであると評価を変更する、
ことを特徴とする請求項27に記載した表面粗さ評価装置。
【請求項31】
面形状が予め設定した凹凸形状となっている領域を有する金属面を評価対象とし、その金属面の表面粗さが、目標とする表面粗さである目標表面粗さであるかどうかを評価する表面粗さ評価装置であって、
上記凹凸形状となっている領域の金属面に照明光を照射する照明装置と、
上記照明光が当たる領域である照明領域を撮像する撮像装置と、
撮像した画像内における上記照明領域内から選択した領域であって、上記凹凸形状となっている領域のうちの輝度が明るい領域である明部領域を設定する設定部と、
上記明部領域における、予め設定した輝度以上の領域の割合である輝度割合を求める輝度割合算出部と、
上記輝度割合に基づき、上記評価する金属面の表面粗さを評価する評価部と、
を備えることを特徴とする表面粗さ評価装置。
【請求項32】
上記評価部は、上記輝度割合が予め設定した第1の閾値未満の場合に、上記評価する金属面が上記目標表面粗さと評価する、
を備えることを特徴とする請求項31に記載した表面粗さ評価装置。
【請求項33】
上記予め設定した輝度は、上記評価する金属面でハレーションが発生した場合における当該ハレーションが発生している部分の輝度若しくはその輝度から安全代分だけ小さくした輝度である、
ことを特徴とする請求項32に記載した表面粗さ評価装置。
【請求項34】
上記設定部は、上記撮像した画像における、上記凹凸形状となっている領域のうちの上記明部領域よりも輝度が低い暗部領域を定め、
更に、上記暗部領域の平均輝度を暗部輝度として求める暗部輝度算出部を有し、
上記評価部は、上記輝度割合が予め設定した第1の閾値未満で、且つ、上記暗部輝度が予め設定した第2の閾値より大きい場合に、上記評価する金属面が目標表面粗さと評価する、
ことを特徴とする請求項31に記載した表面粗さ評価装置。
【請求項35】
上記第2の閾値は、上記明部領域全域でハレーションが発生した場合における、上記暗部領域の平均輝度よりも大きな輝度である、
ことを特徴とする請求項34に記載した表面粗さ評価装置。
【請求項36】
上記明部領域の平均輝度を明部輝度として求める明部輝度算出部を備え、
上記評価部は、上記輝度割合が上記第1の閾値未満で、且つ、上記暗部輝度が予め設定した第2の閾値より大きく、更に、上記明部輝度と上記暗部輝度との輝度の差が、予め設定した第3の閾値以下の場合に、上記評価する金属面が目標表面粗さと評価する、
ことを特徴とする請求項34に記載した表面粗さ評価装置。
【請求項37】
予め設定された凹凸形状がねじ形状である、
ことを特徴とする請求項31~請求項36のいずれか1項に記載した表面粗さ評価装置。
【請求項38】
上記評価する金属面は、表面処理で表面を粗くした金属面である、
ことを特徴とする請求項22~請求項36のいずれか1項に記載した表面粗さ評価装置。
【請求項39】
上記明部領域は、上記表面処理を施す前の金属面に上記照明光を照明した場合に、ハレーションが発生する部分を含む領域とする、
ことを特徴とする請求項38に記載した表面粗さ評価装置。
【請求項40】
上記予め設定した輝度は、上記表面処理を施す前の金属面に上記照明光を照明した場合に発生したハレーションの位置の輝度、若しくはその輝度から安全代分だけ小さくした輝度である、
ことを特徴とする請求項38に記載した表面粗さ評価装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、評価する金属面が、目標とする表面粗さを有するかどうかを評価する、表面粗さの評価技術に関する。本発明は、例えば、表面処理を施して面を粗くした金属面の表面粗さの評価、つまり施した表面処理の評価に好適な技術である。
なお、本発明は、表面処理が施されていない金属面にも適用可能な技術である。
【背景技術】
【0002】
最終製品形状として、金属面に所定の表面粗さを付与する場合、その金属面にショットブラストその他の表面処理が施される場合がある。
例えば、油井管の管端に形成される管端ねじ部は、NCねじ切り機により切削されることで形成される。この管端ねじ部1は、
図1に示すように、ねじ部(以下、ねじ部本体1Aとも記載する)、シール部1B、ショルダー部1C、内面部1Dで構成される。なお、一般に、ねじ部本体1Aとシール部1Bを合わせて、外面部1Eと呼称される。また、管の管端ねじ部1のねじ形状としては、例えば、丸山ねじ、台形ねじ、フックねじが存在する。
【0003】
上記のように作製された管端ねじ部は、通常、その金属面に対しブラスト処理(表面処理)を施すことで、ねじ部表面を粗くしている。
ここで、油井管と油井管との連結は、例えば、上述した管端ねじ部にコンパウンドを塗布し、継手を締め込むことで実行される。このとき、ねじ部が未ブラスト状態であると、締め込む際に焼付きが発生する可能性がある。これを防止する目的で、管端ねじ部全体にブラストメディアを一定の圧力で吹き付け、ねじ部表面を粗くしている。
【0004】
そのブラスト処理は、例えば、
図2のような装置で、上記管端ねじ部1に対し、SUSビーズ・アルミナなどのブラストメディア4を噴射して実行する。例えば、
図2に示すように、油井管2の軸直方向Hから、互いに反対方向に、油井管2の軸方向側に傾けた2つのノズル5A,5Bからブラストメディア4を噴射する。そして、油井管2を軸回転させつつ管軸方向(長手方向)に移動することで、管端ねじ部1の金属面全面にブラスト処理を行う。
そして、従来、その粗くした表面を目視により確認し、表面処理の良否判断を行っていた。しかし、管の1本1本を目視による確認する方法は、油井管製造の生産性を阻害するという課題があった。
【0005】
ここで、対象が油井管ではないが、目視確認が不要な、表面処理を施した金属面の評価方法としては、例えば特許文献1に記載の方法がある。
特許文献1には、金属板の表面欠陥(外観異常)を検出する表面欠陥検査方法が記載されている。その方法は、金属板の表面上にある撮像対象部位に照明光を照射し、撮像対象部位からの反射光を撮像する。そして、その方法は、撮像画像を2値化し、その2値化のうちの明部分となる領域について、所定の判定ルールに基づいて、評価する金属板の表面欠陥を検出する、というものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1は、金属板表面に照明を当てて撮像することで得られる明部分のみで、金属板表面内に存在する疵状態について、画像判定ができると記載されている。
しかし、発明者が確認したところ、油井管の管端ねじ部のねじ形状のような凹凸が形成されている金属面に表面処理を施した場合、特許文献1に記載の画像判定では精度が悪いとの知見を得た。すなわち、ねじ部のような面形状を有する金属面では、金属面が有する凹凸による陰影や反射の影響で明部分の輝度がバラつく。
このため、特許文献1に記載の方法では、面の凹凸の影響が不可避な管端ねじ部のような金属面を被検体としたとき、全体として、未ブラスト状態かブラスト済であるかのどちらかを明確に評価することが出来なかった。
【0008】
本発明は、上記のような点に着目してなされたもので、評価する金属面の表面粗さが目標表面粗さか否かを、より確実に評価可能とすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
ここで、本発明の一態様は、表面処理を施した金属面の領域から、表面欠陥の部分を部分的(ピンポイント)に検出することを主な目的としたものでは無い。本発明の一態様は、評価する金属面が、全体として、所定の目標表面粗さとなっているか否かを評価することを第1の目的としている。
【0010】
そして、課題解決のために、本発明の一態様は、評価する金属面の表面粗さが、目標表面粗さであるかどうかを評価する表面粗さ評価方法であって、照明装置で評価する金属面に照明光を照射し、上記照明光が当たる上記評価する金属面を撮像し、撮像した画像における、輝度が明るい領域である明部領域と、上記明部領域よりも輝度が低い暗部領域とをそれぞれ定め、上記明部領域の輝度と上記暗部領域の輝度に基づき、上記評価する金属面の表面粗さを評価する。
【0011】
また、本発明の他の態様は、面形状が予め設定した凹凸形状となっている領域を有する金属面を評価対象とし、その金属面の表面粗さが目標表面粗さであるかどうかを評価する表面粗さ評価方法であって、照明装置で上記凹凸形状となっている領域の金属面に照明光を照射し、上記照明光が当たる上記評価する金属面を撮像し、撮像した画像における、上記凹凸形状となっている領域のうちの輝度が明るい領域である明部領域を定め、上記明部領域における、予め設定した輝度以上の領域の割合である輝度割合を求め、上記輝度割合に基づき、上記評価する金属面の表面粗さを評価する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の態様によれば、評価する金属面が目標表面粗さとなっているか否かを評価することが可能となる。
また、本発明の態様によれば、予め設定した凹凸形状(ねじ形状など)が形成されているような金属面を対象としても、表面粗さをより確実に評価することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図2】管端ねじ部にブラスト処理を行う装置例を示す模式図である。
【
図3】正常にブラスト処理が実行される場合の管とノズルの関係を示す模式図である。
【
図4】ノズル5Aが詰まった場合のねじへのブラスト処理例を説明する図である。
【
図5】ノズル5Bが詰まった場合のねじへのブラスト処理例を説明する図である。
【
図6】ブラスト処理の実行の際に、ノズル5Bが目詰まりした場合の管とノズルの関係を示す模式図である。
【
図7】本発明に基づく実施形態に係る表面粗さ評価装置の構成例を示す図である。
【
図8】カメラ11Aと照明装置10Aの配置関係を示す図である。
【
図10】未ブラスト時のねじ部を撮像した画像を示す図である。
【
図11】ブラスト処理済みの外面部(ねじ部本体とシール部)を撮像した画像を示す図である。
【
図12】ブラストが薄い場合の外面部(ねじ部本体とシール部)を撮像した画像を示す図である。
【
図13】評価する外面部(ねじ部本体とシール部)を撮像した画像の例であって、明部領域及び暗部領域を例示した図である。
【
図15】第1の評価部の処理フロー例を示す図である。
【
図16】第2の評価部の処理フロー例を示す図である。
【
図17】表面粗さによる反射光の違いを説明する図である。(a)は表面粗さが小さくて正反射が多い場合を、(b)は、表面粗さが大きく、拡散反射光が多い場合をそれぞれ示す。
【
図19】未ブラストによる、内面部でのハレーション発生を示す画像の図である。
【
図20】水平方向(横方向)の位置補正の方法を説明する図である。
【
図21】垂直方向(上下方向)の位置補正の方法を説明する図である。
【
図22】管端ねじ部でのブラスト不良と評価方法の例を示す図である。
【
図23】実施例における評価テスト結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明に基づく実施形態について、図面を参照して説明する。
本実施形態では、評価する金属面として、表面処理が施されて面が粗くなった金属面を例に挙げて説明する。すなわち、表面処理の評価としての表面粗さの評価を例に挙げて説明する。ただし、本開示は、表面処理が施されていない金属面であっても適用可能である。
【0015】
(表面処理について)
本実施形態では、金属面の表面粗さを大きくする(粗くする)表面処理の方法として、ブラスト処理を例示する。しかし、本開示が適用可能な表面を粗くする表面処理方法は、ブラスト処理に限定されず、化学処理など他の方法でもよい。
また、以下の説明では、評価する金属面が、油井管の管端ねじ部1の面である場合を例に挙げて説明する。
【0016】
(管端ねじ部1について)
上述のように、油井管の管端に形成される管端ねじ部1は、NCねじ切り機により切削されることで形成される。この状態では、管端ねじ部1が有する金属面は、表面粗さが例えばRa:1.7μm以下の状態となっている。
評価する管端ねじ部1の面は、
図1に示すように、ねじ部本体1A、シール部1B、ショルダー部1C、内面部1D(管端面近傍の内径面)で構成される。一般に、ねじ部本体1Aとシール部1Bを合わせて、外面部1Eと呼称される。
ねじ部本体1Aは、予め設定した凹凸形状としてのねじ形状(ねじの山や谷)が形成された、凹凸形状となっている領域である。評価対象の金属面の凹凸形状が予め分かっていれば本開示の対象となる。本開示は、陰影が生じる複雑な面形状で特に効果を奏する。本開示は、評価される金属面に、凹凸形状が予め設定されたパターンで形成されている場合に適用可能であるが、凹凸形状が不定形に形成されている場合であっても適用可能である。ただし、凹凸形状が予め設定されたパターンで形成されている金属面を対象とする場合の方が汎用性が高い。
【0017】
(ブラスト処理)
本実施形態では、上記のように形成された管端ねじ部1の金属面に対し、ブラスト処理(表面処理)が施される。
図2に、ブラスト処理に使用されるブラスト装置3における、ブラスト噴射部周りの構成を示す。このブラスト装置3は、閉空間内(ボックス内)で、管端ねじ部1に対し、SUSビーズ・アルミナなどのブラストメディア4を噴射してブラスト処理を行う構成となっている。ブラストメディア4を噴射するノズルとして、ノズル5A及びノズル5Bの2種類のノズルを有する。そのノズル5A及びノズル5Bの噴射軸は、
図2に示すように、油井管の軸直方向H(法線方向)から、互いに反対方向に向けて軸が傾けられて配置されている。これによって、ねじ部の底面に対して、確実にブラスト処理が実行可能に構成されている。
図2中、符号6は、油井管2の内部へのブラストメディア4の侵入を阻止する中栓である。
また、ブラスト装置3は、油井管2を軸回転させる回転駆動部(不図示)と、油井管2を軸方向(長手方向)に進退させる進退機構(不図示)を備える。
【0018】
そして、油井管2を軸回転させつつ、
図3に示すように、管軸方向(長手方向)に移動しながら、2つのノズル5A,5Bからブラストメディア4を管端ねじ部1に噴射する。これによって、管端ねじ部1を構成する、ねじ部本体1A、シール部1B、ショルダー部1C、内面部1D(管端の内径面)がブラストされる。すなわち、鋼管の内面以外の管端ねじ部1の金属面全面の表面粗さを大きくする処理が行われる。
なお、内面部1Dは面を粗くする必要はないが、ショルダー部1Cを粗くする際に、管端近傍の内径面も同様に粗くなる。
【0019】
ここで、ノズル5Aが目詰まりしてブラストメディア4を噴射出来ない場合、ねじ部本体1Aのねじ形状によっては、
図4のように、ねじ底角部Bがブラストされない場合がある。ただし、この場合、ノズル5Bからの噴射によって、平坦部1Fであるシール部1B及びショルダー部1Cはブラストされる(
図3参照)。このようなことから、平坦部1Fがブラストされていれば、
図4の符号Aがブラストされていると判断することができる。
【0020】
ブラスト処理においては、
図4のAやBで示すような被加工面の向きが異なる部分があるとき、同じ向きのノズルを用いて被加工面全体のブラスト処理が困難な場合がある。このような複雑な金属面の形状の場合、次のリスクがある。すなわち、ノズルが詰まってメディアが十分当たらなかったり、2方向からのメディアが互いに衝突する影響によって、メディアの衝突圧が低下したりして、所定の粗さに至らないリスクがある。これは、油井管の管端ねじ部に限らず被検査体において、面の向きが大きく異なる検査において生じ得る問題であって本実施形態の効果が大きい。
【0021】
一方、ノズル5Bが目詰まりしてブラストメディア4を噴射出来ない場合、ねじ形状によっては、
図5のように、ねじ底角部Aがブラストされない場合がある。この場合、
図5から分かるように、ショルダー部1Cは未ブラスト状態のため、管は、ブラスト不良品となる。
【0022】
(表面粗さ評価装置)
本実施形態の表面粗さ評価装置は、金属面の表面粗さを評価する装置である。本実施形態の表面粗さ評価装置は、管端ねじ部1のように、複数の凹凸が形成された面形状の領域も対象とする。本開示は、複数の凹凸で複数の陰影が形成された領域の面の表面粗さを大きくする処理をした場合に、その処理の有効性を評価する場合に、大きな効果を奏する。本実施形態の表面粗さ評価装置は、具体的には、ブラスト処理などによって、目的とする表面粗さである目標表面粗さの金属面となっているか否かを評価する装置である。つまり、本実施形態の表面粗さ評価装置は、ブラスト処理が正常に処理されたかを評価するために、金属面の表面粗さを評価する装置である。
【0023】
<評価する金属面(領域)>
本実施形態では、評価する金属面が、第1の金属面領域MT1と、第2の金属面領域MT2との二つの領域に区分される(
図1参照)。そして、各領域MT1,MT2毎に個別に、各表面の表面粗さ(単に、粗さと記載する)を評価する構成となっている。
【0024】
第1の金属面領域MT1は、管端ねじ部1の外径面を構成する、ねじ部本体1Aとシール部1Bとからなる外面部1Eが構成する金属面の領域である。ねじ部本体1Aとシール部1Bとを別の領域として、それぞれを個別に評価してもよい。この第1の金属面領域MT1は、主としてねじ部本体1Aの金属面を評価するものである。ねじ部本体1Aは、予め設定した凹凸形状が形成されている金属面を構成する。
【0025】
第2の金属面領域MT2は、ショルダー部1Cと内面部1D(管端面近傍の内径面)とからなる平坦部1Fが構成する金属面の領域である。本実施形態では、ブラスト装置3との干渉を考慮して、内面部1Dで評価する。内面部1Dがブラストされていれば、ショルダー部1Cがブラストされていると見なせるからである。なお、油井管2の軸方向外方位置から画像を取得することで、ショルダー部1Cを直接評価可能である。内面部1Dは、平坦な金属面からなる。なお、本実施形態は、ブラスト装置3の設備の一部として表面粗さ評価装置を設けた例である。
【0026】
<装置構成>
本実施形態の表面粗さ評価装置は、
図7、及び
図9に示すように、照明装置10、撮像装置(カメラ11)、設定部22、画像処理が可能なコンピュータからなる演算処理部12、位置補正部を備える。
【0027】
<照明装置10>
照明装置10は、
図4に示すように、第1の金属面領域MT1用の照明装置10Aと、第2の金属面領域MT2用の照明装置10Bとを備える。
照明装置10Aは、例えば、ねじ部本体1A及びシール部1Bを上方(例えば軸直方向)から管端ねじ部1に照明光を照射する構成となっている。例えば、照明装置10Aは、光源としてLEDが例示され、管軸方向に並んだ複数のLEDで構成する。すなわち、照明装置10Aは、管端ねじ部1の外面部を均等に照明可能に構成されている。この場合、照明装置10Aの照明軸10Pとして、管軸方向に沿って一直線に並ぶように複数の照明軸10Pが設定される。
照明装置10Bは、管端近傍の内径面の周方向下側部分に照明光を照射するように構成されている。
なお、照明装置10の各光源について特に制限はない。
【0028】
<撮像装置>
撮像装置は、カメラ11からなる。カメラ11は、第1の金属面領域MT1用のカメラ11Aと、第2の金属面領域MT2用のカメラ11Bとを備える。
カメラ11Aは、例えば軸方向に並ぶ複数の照明軸10Pのうちの並びの中央辺りの照明軸10Pに撮像軸11Pを向けて配置され(
図8参照)、照明装置10Aが照明光を照射した照明領域を撮像可能となっている。
なお、カメラ11Aは、管軸方向において、後述のレーザー光が当たっている領域も撮像可能に配置されている。
カメラ11Bは、照明装置10Bが照明光を照射した管端内径面部分を含む領域を撮像する。
取得する画像は、モノクロ画像でもカラー画像でもよい。
なお、照明及び撮像は、周囲を暗くして実行するものとする。すなわち、閉空間を構成する暗室(暗幕)内で画像の取得処理を実行する。
【0029】
<位置補正部>
位置補正部は、レーザー光照射装置13と、補正処理部21とを備える。補正処理部21は、
図9に示すように、水平方向補正処理部21Aと、垂直方向位置補正部21Bとを備える。
レーザー光照射装置13は、管端側における、ねじ部本体1A近傍の管外径面に対し、管の軸直方向と推定される方向から周方向に沿ったレーザー光を当てる。照射位置は、カメラ11Aでの撮像範囲とする。
【0030】
水平方向補正処理部21Aは、管端ねじ部1を撮像した画像に、2値化処理などの画像処理を施して、画像内における管の端面位置を検出する。そして、検出した管の端面位置(の横方向中央位置)に基づき、画像における、管端ねじ部1の水平方向(横方向)の位置補正を行う。例えば、画像自体、若しくは明部領域などの各領域の枠位置を、基準とする管軸位置と、画像内の実際の管端ねじ部1の中央軸とが一致するように補正する。
垂直方向位置補正部21Bは、カメラ11Aが撮像したレーザー光を含む画像に基づき、レーザー光の濃淡の変化を根拠に、画像中の管の上下端部位置をそれぞれ検出して、垂直方向の位置補正を行う。
【0031】
ここで、カメラ11Aは、
図8のように、管の斜め上方から撮像している。このため、管端ねじ部1が水平方向や上下方向に変位していると、画像中における、仮想した管の軸(基準軸)から変位した位置に実際の管端ねじ部1が撮像されている。補正処理部21は、この変位を検出して、実際の管端ねじ部1の軸が基準軸と一致するように画像を補正する。若しくは基準軸の位置を、実際の管端ねじ部1の軸に補正する。
なお、カメラ11Aを真上から撮像した場合には、上下方向の変位による影響は小さい。しかし、カメラ11Bは、斜め上方から、管端面近傍の周方向下部位置を撮像するため、上下方向に変位が発生すると、目的の撮像領域を撮像することができないおそれがある。このためにも、水平方向及び垂直方向の補正が必要である。
ここで、基準軸の位置に基づき、明部領域ARA-1や暗部領域ARA-2などの位置が規定される。
【0032】
<設定部22>
設定部22は、画像に対する、明部領域ARA-1と、暗部領域ARA-2を設定するための規定値を得る。
「明部と暗部の設定について」
一般に表面粗度(粗さ)と輝度(撮影された画像の明るさ)は、粗度が小さい場合には明るく、粗度が大きい場合には暗くなる。また、照明の光源に近く照明が被検査体に垂直に近い角度で照射される場合、すなわち照射軸に垂直な場合には明るくハレーションが生じやすく、当該ポイントが光源から遠く照射角度が垂直よりもより浅い場合に暗くなる。表面処理加工においては、バフなどの研磨工程では粗度が小さく、ショットブラストなど粗面化の加工では、加工後に粗度が大きくなる方向に変化する。
【0033】
本実施形態は、表面粗さの各部における測定が可能で予め適正な表面粗さになった供試体を用いて、明部、暗部の満足すべき輝度等の画像情報の範囲を決めることが出来れば、当該製品の生産時には画像情報のみによって、所定の表面粗さになっていることが判定可能である。
面の形状が複雑に変化する油井管のねじ部品のような場合、照明、カメラなどを複数用いると、それぞれの面のいずれにおいても所定の表面粗さを得ることが出来るので、その効果が大きい。
【0034】
ここで、照明装置10から照明光が当たる領域を照明領域と規定する。例えば照明装置10Aは上方から管端ねじ部1の外面部1Eに照射するため、例えば、管の周方向における約上半周分の部分が照明領域となる(
図8参照)。
【0035】
明部領域ARA-1は、照明領域内から選択した領域であって、相対的に明るい領域である。本実施形態では、明部領域ARA-1は、照明装置の照射軸と交わる位置を含む領域から選択した。
本実施形態では、明部領域ARA-1は、例えば、表面処理前の面において、照明光でハレーションが発生する領域の全てを含む領域として設定する。
【0036】
ここで、表面処理を施す前の管端ねじ部1の外面部1Eの金属面に照明光を照明した場合、
図10に示すように、照射軸と交わる位置及びその近傍すなわち、照明光が強く当たる位置で、ハレーションHAが発生する。そして、そのハレーションHAが発生している部分の最大幅HH(管の周方向の幅)を求めて予め記憶する。この最大幅HHは、油井管2の径がほぼ同じであれば、同じ値を適用可能である。最大幅HHの代わりに、ハレーションHA位置の軸方向に沿って検出した平均値の幅などでもよい。ただし、後述の暗部領域にハレーションが発生している部分ができるだけ含まれないように設定する。
【0037】
そして、設定部22は、
図13のように、照明装置の照射軸と交わる位置を中心として、記憶した上記最大幅HHで管周方向の幅位置を規定し、且つ長手方向に沿って、シール部1Bとねじ部本体1Aの全体が入る矩形の領域を明部領域ARA-1とする。なお、明部領域ARA-1の大半をねじ本体が占める。ここで、
図13では、明部領域ARA-1の幅方向中央位置に沿って、複数の照明軸10Pと交わる位置が有る。
なお、本実施形態では、明部領域ARA-1のうち、照射軸と交わる位置を中心にしたまま、周方向の幅を若干狭めた領域を、明部本体領域ARA-1Aとしている。
【0038】
また、設定部22は、明部領域ARA-1に管周方向で隣接し、当該明部領域ARA-1よりも相対的に輝度が低い領域を暗部領域ARA-2として設定する(
図13参照)。暗部領域ARA-2も明部領域ARA-1と同じ管長手方向の長さを有する長方形形状の領域として設定する。互いに長さが異なっていても良い。本実施形態では、明部領域ARA-1よりも幅が狭い領域とする。明部領域ARA-1と暗部領域ARA-2との領域の大きさが形状は同じである必要は無い。粗度を評価する明るさの指標として輝度等の情報を、評価範囲全体に対する特定の輝度以上の領域の面積の割合に変換したり、特定の領域の輝度の平均値で求めているためである。
【0039】
ここで、予め上記最大幅HHを求めること無く、例えば管の直径の1/3を、明部領域ARA-1の幅として設定してもよい。直径の1/3程度であれば、上記ハレーションが発生する領域を含むと推定可能である。また、暗部領域ARA-2は、例えば、管の直径の1/4を幅として設定する。
【0040】
また、設定部22は、例えば、上記ハレーションが発生している部分の輝度、若しくはそのハレーションの輝度から安全代分だけ小さくした輝度を、ハレーション輝度として記憶する。
ここで、上記説明は、外面部1E(第1の金属面領域MT1)についての設定について説明している。平坦部1F(第2の金属面領域MT2)での設定についても、上記説明と同様な考えで設定すれば良い。
【0041】
各評価で使用する組を成す明部領域ARA-1と暗部領域ARA-2とは、同様な金属面形状となっている領域の中から選択して設定する。平坦部分の表面粗さを評価する場合には、表面処理が施された平坦部の領域から、組を成す明部領域ARA-1と暗部領域ARA-2を選択して設定する。また、ねじ部本体では、ねじ形状(凹凸形状)が形成された領域中から、組を成す明部領域ARA-1と暗部領域ARA-2とを選択した設定する。組を成す明部領域ARA-1と暗部領域ARA-2は、表面処理を施す前の金属面の面形状の条件(凹凸の条件など)が同じ若しくは近似した条件となる部分から選択して設定することが好ましい。
【0042】
<評価演算部20>
評価演算部20は、
図14に示すように、画像領域確認部20A、輝度割合算出部20B、暗部輝度算出部20C、明部輝度算出部20D、比較輝度算出部20E、画像明度確認部20F、及び評価部20Gを備える。
【0043】
[画像領域確認部20A]
画像領域確認部20Aは設定部の処理の一部を構成する。
画像領域確認部20Aは、照明装置10Aの照明軸10Pと交わる位置と、設定部22で設定された明部領域ARA-1、明部本体領域ARA-1A、暗部領域ARA-2を規定する各規定値とに基づき、カメラ11Aが撮像した画像に対し、明部領域ARA-1、明部本体領域ARA-1A、暗部領域ARA-2の枠を検出し、設定する(
図13参照)。
画像領域確認部20Aは、第2の金属面領域MT2についても同様の処理を行う。すなわち、照明装置10Bの照明軸10Pと交わる位置及びその近傍を明部領域ARA-1として設定し、その外周から選択した領域を暗部領域ARA-2とする。第2の金属面領域MT2には、予め設定した凹凸形状がある金属面でないため、明部本体領域ARA-1Aを別に設定しなくても良い。以下、第1の金属面領域MT1側を例に挙げて説明する。
【0044】
画像領域確認部20Aは、例えば、照明軸10Pと交わる位置を幅方向中心位置として、最大幅HHに基づき、明部領域ARA-1、明部本体領域ARA-1Aを検出する。また、明部領域ARA-1に対し、管周方向で隣接する位置に暗部領域ARA-2の枠を設定する。
ここで、撮像した画像は、補正処理部21の処理によって、画像中の管端ねじ部の位置が、基準とする管の軸(基準軸)と一致するように補正されているとする。
【0045】
[輝度割合算出部20B]
輝度割合算出部20Bは、明部領域ARA-1内における、予め設定した輝度(ハレーション輝度)以上の領域の割合である輝度割合を求める。
ここで、上述のように、ハレーション輝度は、ブラスト未処理の金属面でのハレーションの位置の輝度である。安全を考え、ハレーション輝度として、ハレーションの輝度よりも若干低めの輝度を設定しても良い。なお、ハレーション輝度として、照明の光量が一定であれば、同種の材質からなる金属面の粗度が低い面状態の場合に測定したハレーションの輝度を採用してもよい、
輝度割合は、例えば、画像における、明部領域ARA-1内の全画素数に対する、ハレーション輝度以上の画素数の割合で求める。
【0046】
[暗部輝度算出部20C]
暗部輝度算出部20Cは、暗部領域ARA-2の平均輝度を暗部輝度として求める。
[明部輝度算出部20D]
明部輝度算出部20Dは、明部本体領域ARA-1Aの平均輝度を明部輝度として求める。
明部輝度算出部20Dは、明部領域ARA-1の平均輝度を明部輝度として求めてもよい。本実施形態では、より明部の輝度を明瞭とするために、明部本体領域ARA-1Aの平均輝度を求めている。第2の金属面領域MT2では、明部領域ARA-1の平均輝度を明部輝度として求めるとする。
[比較輝度算出部20E]
比較輝度算出部20Eは、上記求めた明部輝度と上記暗部輝度との輝度の差を輝度差として求める。
【0047】
[画像明度確認部20F]
画像明度確認部20Fは、明部輝度が、予め設定した下限閾値以下か否かを評価する。
画像明度確認部20Fは、明部輝度が下限閾値C以下と評価した場合、装置の整備不良と評価して、処理を中断する。
上記装置不良は、例えば、照明装置10の光量が低下していたり、カメラ11のレンズが汚れたりして、輝度が低下しているという、装置の不良検出である。
上記下限閾値Cは、実験その他によって設定すれば良い。
[評価部20G]
評価部20Gは、評価する金属面が目標表面粗さかどうかの評価処理を実行する。
評価部20Gは、第1の金属面領域MT1用の第1の評価部20G1と、第2の金属面領域MT2用の第2の評価部20G2とを備える。
【0048】
[第1の評価部20G1]
第1の評価部20G1の処理を、
図15のフローに沿って説明する。
第1の評価部20G1では、ステップS10にて、輝度割合が第1の閾値(上限閾値)未満であるか評価する。輝度割合が第1の閾値(上限閾値)未満である場合には、ステップS20に移行する。
一方、輝度割合が第1の閾値(上限閾値)以上である場合には、輝度の割合が多すぎるとして、ブラスト処理異常(不良)と評価する。例えば、ブラスト処理が実行されていない場合の異常である。また、ブラスト処理が薄く、表面粗さが目標表面粗さよりも小さい場合の異常である。
ステップS20では、暗部輝度が、予め設定した第2の閾値(下限輝度)より大きいか否かを評価する。暗部輝度が、予め設定した第2の閾値(下限輝度)より大きい場合には、ステップS30に移行する。
【0049】
一方、暗部輝度が、予め設定した第2の閾値(下限輝度B)以下の場合には、ブラスト処理異常と評価する。例えば、評価する管端ねじ部1が設置されていない場合などで発生する異常である。
ここで、ステップS10の評価だけでも、評価する金属面が上記目標表面粗さと評価可能であるが、より評価精度を上げる目的でステップS20の評価を実行している。
【0050】
図10は、未ブラスト状態の一例であり、
図11は、ブラスト済み状態の一例である。また、
図12は、ブラストが薄い状態の一例である。この
図10~
図12のように、暗部輝度は、未ブラスト状態に比べ、ブラスト済み状態の方が高いことが分かる。従って、第2の閾値を、未ブラスト状態の暗部輝度よりも高い値に設定すればよい。より好ましくは、第2の閾値を、例えば、ブラスト済み状態で計測した暗部輝度から安全代分だけ小さな輝度に設定するとよい。または、第2の閾値として、例えば、未ブラスト時の輝度とブラスト済みでの輝度の中間値を設定してもよい。すなわち、第2の閾値は、実験その他によって求めれば良い。
【0051】
そして、ステップS30に移行する場合、評価する金属面が上記目標表面粗さと評価できる。
ステップS30では、明部輝度と暗部輝度との輝度の差が、予め設定した第3の閾値を超えるか否かを評価する。明部輝度と暗部輝度との輝度の差が、予め設定した第3の閾値を超える場合は、評価する金属面の表面粗さが、目標表面粗さよりも小さいと評価を変更し、ブラスト処理異常と評価する。
【0052】
明部輝度と暗部輝度との輝度の差が、予め設定した第3の閾値以下の場合には、目標表面粗さと評価して、ブラスト処理を合格と評価する。
ここで、未ブラストの
図10では、輝度の差が162であった。ブラスト済みの
図11では、輝度の差は76であった。また、ブラストが薄い
図12では、輝度の差は141であった。この場合、第3の閾値を、バラツキ(安全代)を考え、例えば、76よりも大きい90に設定する。
【0053】
上記例においては、
図22に示すような観点から、1台目のカメラで(2)以外の項目を評価し、2台目のカメラで(2)の部分の評価を行うこととし、判定には3条件の閾値を用いる例を紹介した。
以上から、対象とする金属面の面形状に応じて、各閾値の条件の数がその値を、実験などによって予め設定することが可能である。
【0054】
[第2の評価部20G2]
第2の評価部20G2の処理を、
図16のフローに沿って説明する。
第2の評価部20G2では、ステップS100にて、輝度割合が第1の閾値(上限閾値)未満で且つ暗部輝度が、予め設定した第2の閾値(下限輝度)より大きいか否かを評価する。
条件を満足する場合は、ステップS110に移行する。
一方、条件を満足しない場合には、ブラスト処理異常と評価する。例えば、処理する管端ねじ部1が配置されていないとか、ブラスト処理が不十分などの異常である。
【0055】
ステップS110では、明部輝度と暗部輝度との輝度の差が、予め設定した第3の閾値を超えるか否かを評価する。明部輝度と暗部輝度との輝度の差が、予め設定した第3の閾値を超える場合は、評価する金属面の表面粗さが、目標表面粗さよりも小さいと評価を変更し、ブラスト処理異常と評価する。
このことは、明部輝度と暗部輝度との輝度の差が、予め設定した第3の閾値以下の場合に、評価する金属面の表面粗さが目標表面粗さと評価することが可能である。この評価だけで、評価する金属面の表面粗さを評価してもよい。
【0056】
明部輝度と暗部輝度との輝度の差が、予め設定した第3の閾値以下の場合には、目標表面粗さと評価して、ブラスト処理を合格と評価する。
ここで、以上の各閾値は、実験などによって決定すれば良い。また、第1の評価部20G1と第2の評価部20G2とで同様な評価用の閾値の値を互いに違う値、つまり、それぞれ個別に設定しても良い。
そして、第1の評価部20G1で合格評価となり、且つ第2の評価部20G2で合格評価となった場合に、管端ねじ部1全体として、ブラスト処理が合格と評価する。
【0057】
(動作その他)
発明者が、種々の検討をしたところ、ねじ部本体1Aのブラスト状態の評価に関しては、画像処理によって、明るい領域の平均輝度(明部輝度)や、照射軸から離れた領域での平均輝度(暗部輝度)だけでは、ブラスト処理の良否を明確に評価することが不可能である、との知見を得た。なお、明部輝度と暗部輝度の和、つまり、照明領域全体の平均輝度を求めた場合、未ブラストもブラスト済も同様の値になってしまい、明確に評価することは不可能である。
本実施形態において、明部領域ARA-1での輝度割合を使用する理由は、次の通りである。
【0058】
なお、輝度割合は、ブラスト処理前にハレーション発生位置を含む領域として設定した明部領域ARA-1での平均輝度を用いた評価とは異なる。輝度割合は、明部領域ARA-1において、所定以上の輝度(明るく見える輝度)がどの程度減少したかを評価している。輝度割合は、例えば、どの程度ハレーションが減少したかを評価している。特に、凹凸形状がある金属面では、明部領域ARA-1内でも明暗が明確にあり、その割合から、ハレーションが発生する面積が明瞭に評価できる。
上記明暗の割合は、予め設定した凹凸形状によって影響するため、例えば、正常にブラスト処理が実行された金属面での輝度割合に基づき、ハレーション輝度を設定すればよい。
【0059】
ここで、ブラスト処理において、2つのブラスト噴射ノズル5A,5Bのうちの一方のブラスト噴射ノズルが詰まった場合を考える。この場合、ねじ底の微小な角部が未ブラスト状態となるおそれがある(
図4,
図5参照)。この場合に、明部輝度、暗部輝度、及び明部輝度と暗部輝度の差は、それぞれ少し変化するが、変化が微小であるため、明確に評価することは困難である。これに対し、輝度割合は、このような不良に対し、相対的に変化が大きい。このため、輝度割合が第1の閾値未満か否かで、部分的な未ブラスト状態かどうかが評価可能となる。
【0060】
ただし、第2の金属面領域MT2などのように、ねじ形状のような凹凸形状が無い平坦な面では、輝度割合が第1の閾値未満か否かだけでは精度が落ちると推定される。このため、本実施形態では、暗部輝度が第2の閾値以上か否かを評価して、評価精度を高くしている。
【0061】
次に、暗部輝度が第2の閾値以上か否かの評価を行っている理由を説明する。
まず、ブラスト処理が行われていない金属面について説明する。そのような金属面は、粗度が低い状態となっており、照明を当てた場合、照明軸10Pと交差する位置及びその近傍(明部領域ARA-1相当の光が強く当たる領域)では、ハレーションが発生して明るい。しかし、照明光が当たっている領域でも、照明軸10Pと交差する位置から離れた領域(暗部領域ARA-2)では、大幅に暗くなっており輝度が低い。すなわち、
図17(a)に示すように、凹凸が少ない(表面粗さが小さい)表面に対して、照明を当てた時、正反射光のみがカメラ11に取り込まれる。それが影響し、正反射光があたった部分(明部領域)のみがハレーションし、ハレーション部以外の周辺部では非常に暗く撮像される。
【0062】
一方、表面処理が施された後では、金属面は表面粗さが大きい。このため、そのような表面に対し照明を当てた場合、表面が粗くなっているため、
図17(b)に示すように、多方向から少量の拡散反射光がカメラ11に取り込まれることになる。それが影響し、照明が直接当たる部分の明るさが減ることで、照明軸10Pが交わる位置から離れた周辺部(暗部領域ARA-2)は、相対的に明るく撮像される。
このように、暗部輝度が第2の閾値以上の場合に、ブラスト処理が実行されていることが評価できる。
【0063】
特に、管端ねじ部のような曲面において、その傾向が強く生じる。
すなわち、未ブラスト状態の
図10から分かるように、未ブラストの場合にはねじ部表面の粗さが低いため、照明装置からの照明光を、照明軸10P近傍でのみ強く反射する。一方、ブラスト済のねじ部表面は粗さが高いため、
図11のように、照明装置からの光を拡散反射し、管端全体を明るく撮像できる。なお、ブラストが薄い
図12では、
図11に比べ、暗部領域ARA-2の平均輝度が低い。このように、暗部輝度が第2の閾値以上か否かで、表面粗さを評価することが可能である。
【0064】
また、油井管2は長尺であることから、油井管2の曲がりによって、管端ねじ部1が、管の軸に対し、横方向(水平方向)や縦方向(垂直方向)に変位している場合がある。変位している場合、画像を用いた上記評価に悪影響があるため、本実施形態では、画像中の管端ねじ部1の位置に補正を施している。本実施形態の補正は、例えば、画像自体に処理を施して、油井管の軸(基準軸)に、実際の管端ねじ部1の軸が一致するように画像処理を施す。
【0065】
以上のようなことから、本実施形態は、油井管2の管端ねじ部1など、仮にねじ形状などの予め決まった凹凸形状がある金属面であっても適用可能となる。そして、ブラスト等の表面処理の良否評価において、目視による評価ではなく、装置での自動評価が可能となる。この結果、本実施形態では、生産性が向上し、また、ブラスト不良による管の大量不良を防止することが可能となる。
【0066】
ここで、本実施形態では、管端ねじ部1における、外面部1Eの全周に対する、上部側に位置する外面部1E部分(ねじ部本体1Aの上部、及びシール部1Bの上部)を部分的にサンプリングして評価している。つまり、その部分的な評価で、管端ねじ部1全体のブラスト処理を評価している。
また、本実施形態の主目的は、評価する金属面から表面処理の欠陥部分を検出するものではく、評価する金属面全体として、目的とする目標表面粗さとなっているかを評価するものである。
【0067】
「油井管の管端ねじ部への適用について」
以下、本実施形態の装置及び方法を、管端ねじ部1へ適用する場合について、更に、設定条件等の例を説明する。
(装置構成や処理の一例)
以下、本実施形態の装置構成の条件や処理の一例について補足説明する。
ここで、本実施形態で使用する、カメラ11A、カメラ11B、レーザー光照射装置13の条件の一例を、
図18に示す。(a)は、カメラ11Aの条件を、(b)はカメラ11Bの条件を、(c)はレーザー光照射装置13の各条件の一例を示している。
【0068】
<撮像の好適条件について>
・管端ねじ部1については、幅(x軸方向の長さ)が、例えば30mm~300mmが好ましい。
・照明装置10A、照明装置10Bは、例えば、16~46Wの消費電力で白色光を照射する。相関色温度は、例えば5600Kである。
・カメラ11仕様の一例を次に示す(
図18(a))。
種類:2Mグレー
撮像素子:インターライン方式、1/1.8型 CCD 固定撮像素子
画素数:水平1600画素×垂直1200画素
画素サイズ:4.4μm×4.4μm、
フレームレート:最大30フレーム/秒
【0069】
ここで、各画像の取得、つまり撮像は、例えば、次のように実行する。
カメラ11Aでの撮像が開始されてから0.5msec後に、照明装置10Aにて照明光を1msec照射する。カメラ11Aの露光時間(シャッタースピード)は例えば20msecである。その後、余裕時間を例えば80msecを設ける。余裕時間を設ける理由は、照明装置10Aで照射された光が、次に撮像する撮像カメラ11B内に取り込まれないようにするためである。
余裕時間を設けた後、カメラ11Bで撮像する。カメラ11Bでの撮像が開始されてから0.5msec後に、照明装置10Bにて光を1msec照射する。カメラ11Bの露光時間(シャッタースピード)は例えば10msecである。
【0070】
カメラ11Aの露光時間(シャッタースピード)20msecが、カメラ11Bの露光時間(シャッタースピード)10msecよりも長くしている理由は、次の通りである。すなわち、油井管2の管端曲がり垂直方向位置補正用のレーザー光照射装置13から発せられるレーザー光の照射位置RRをはっきりと画像上に取り込むためである。
なお、管端曲がり垂直方向位置補正用のレーザー光照射装置13から発せられるレーザー光は、常時、点灯させておいてもよいし、撮像時のみ点灯させてもよい。
【0071】
<「明部輝度」の閾値を決定する方法の一例>
明部輝度の閾値は、照明装置10Aの光量低下発見のために設定する。
「未ブラスト状態の明部輝度の下限値」と、「ブラスト状態の明部輝度の下限値」を比較した場合、光の拡散反射によって、必ず、ブラスト済状態の明部輝度が低くなる。
このことから、明部輝度の閾値は、例えば、予め求めたブラスト済での明部輝度の下限値に係数T(0.5≦T≦0.9)を掛けた値とする。係数Tは、安全代を付与する安全係数である。これによって、正常に評価可能となる。係数Tは、好ましくは、0.7≦T≦0.8である。0.9<Tの場合は、誤検知が多くなる。T<0.5の場合は、照明装置10Aの光量低下の発見が遅れるおそれがある。
【0072】
<「暗部輝度」の閾値(第2の閾値)を決定する方法の一例>
暗部輝度の閾値は、主に、ブラスト処理が薄い場合や管端ねじ部1が設置されていない状態を検出するためである。
「合格となるブラスト時のエアー圧でブラスト処理した時の暗部輝度」と、「ブラスト時のエアー圧を故意に低下させて、不合格となるエアー圧でブラスト処理した時の暗部輝度」とを求める。そして、暗部輝度の閾値として、例えば、両者の暗部輝度の中間値を設定する。
【0073】
実際に行ったところ、エアー圧0.24Mpaでブラスト処理した時は合格、エアー圧0.23Mpaでブラスト処理した時は不合格であった。エアー圧0.24Mpaでブラスト処理した合格品の暗部輝度は25で、エアー圧0.23Mpaでブラスト処理した不合格品の暗部輝度は11であった。そして、例えば、暗部輝度の閾値として、25と11の中間値である18を設定する、上限閾値が必要な場合には、例えば、255を上限閾値とすることで正常に良否評価可能となる。
【0074】
<「明部輝度-暗部輝度」の閾値(第3の閾値)を決定する方法の一例>
「明部輝度-暗部輝度」の閾値は、主としてブラスト処理が薄い場合を検出することを目的とする。
「合格となるエアー圧でブラスト処理した時の「明部輝度-暗部輝度」と、「ブラスト時のエアー圧を故意に低下させ、不合格となるエアー圧でブラスト処理した時の「明部輝度-暗部輝度」」を求める。そして、両者の中間値を、例えば、「明部輝度-暗部輝度」の閾値(第3の閾値)として設定する。
【0075】
実際に行ったところ、エアー圧0.24Mpaはブラスト処理合格、エアー圧0.23Mpaはブラスト処理不合格であった。エアー圧0.24Mpaでブラスト処理した合格品の「明部輝度-暗部輝度」は52で、エアー圧0.23Mpaでブラスト処理した不合格品の「明部輝度-暗部輝度」は82であった。そして、例えば、52と82の中間値である67を、第3の閾値として設定する。「明部輝度-暗部輝度」の閾値の下限閾値が必要な場合には、例えば、0を下限閾値とすることで正常に良否評価可能となる。
なお、各閾値について、上記のように設定した閾値を用いた評価と、オペレーターの判断に相違がある場合は、その都度、設定閾値を微調整することで評価精度を向上させることができる。
【0076】
<カメラ11A:外面部1Eでの輝度割合によるブラスト良否評価について>
未ブラストでは、ねじ部表面の粗さが低く、照明装置10Aから放たれた光が直接あたった部分がハレーションする。そのハレーションが撮像された画素数が、設定した閾値以上であれば、ハレーションした画素数が多いとして検知できる。この場合は、「ハレーションが発生しているため、ブラスト処理不合格である」と、オペレーターによって判断される。
【0077】
逆に、ハレーションが撮像された画素数が設定した閾値未満であれば、ハレーションしていない画素数が多いとして検知できる。この場合、「ハレーションは発生していないため、ブラスト処理合格である」と、オペレーターによって判断される。
そして、「ハレーションが発生しているため、ブラスト処理不合格である」と判断された画素数の割合が、未ブラスト時の輝度割合より小さい輝度割合であればブラスト済みと評価可能である。すなわち、輝度割合で、未ブラストであるかブラスト済であるかを評価できる。
【0078】
ここで、油井管2の管端ねじ部1の外面部1Eに対して、照明装置10Aを用いて照明をあてたとき、ねじ山のねじ山頂部、ねじ底部、ねじ側面部、管外面の黒皮部、シール部1Bの部位を個別に評価していない。しかし、その評価は、行う必要はない。
【0079】
ねじ山のねじ山頂部、ねじ底部の表面粗さ(ブラスト処理の良否)を評価する方法として、シール部1Bでの表面粗さを測定(評価)し、ブラスト処理の良否を評価する方法がある。これは、シール部1Bの表面粗さを、ねじ山のねじ山頂部、ねじ底部の表面粗さと同等とみなしての評価である。つまり、ブラスト処理は、
図2に示すように、油井管2を回転させながら、油井管2の管端に対して、一定の圧力で全体に行われるため、1回のブラスト処理において、シール部1B以外の表面粗さは、シール部1Bの表面粗さと同等とみなして問題ない。
【0080】
<「外面部1Eでの輝度割合の閾値を決定する方法の一例>
「外面部1Eでの輝度割合の閾値は、主に、フック部ねじ底角部が未ブラストの場合、黒皮を含むねじ部が未ブラストの場合、ブラスト処理なしの場合を発見することができる。
【0081】
[フック部ねじ底角部Bが未ブラスト(
図4)の場合]
ノズル5Aが詰まっている時は、
図4に示す通り、ねじ底角部Bが未ブラストとなるおそれがある。このため、ハレーションが検知され、ハレーション面積の割合(ハレーションが発生している画素数の割合)として検知される。これに基づき、例えば、ハレーション面積の割合と、ブラスト済合格品のハレーション面積の割合との中間値を、輝度割合の閾値として設定する。
【0082】
実際に実施したところ、ノズル5Aが詰まっている時は、
図4の場合には、ねじ底角部Bが未ブラストとなるため、ハレーション面積を検知すると、82であった。なお、面積値の単位は画素数である(以下、同様)。そのハレーション面積値82と、ブラスト済合格品のハレーション面積0との中間値41を閾値とする。閾値の下限値が必要であれば、0を下限閾値として設定することで正常に良否評価可能となる。
【0083】
[非フック部ねじ底角部Aが未ブラスト(
図5)の場合]
ノズル5Bが詰まっている時は、
図5に示す場合には、ねじ底角部Aが未ブラストとなる。このため、ハレーションが検知され、ハレーション面積の割合(画素数の割合)として検知される。このため、例えば、そのハレーション面積の割合と、ブラスト済合格品のハレーション面積の割合との中間値を閾値(上限閾値)として設定する。
【0084】
実際に行ったところ、ノズル5Bが詰まっている時は、
図7の場合には、ねじ底角部Aが未ブラストとなるため、ハレーション面積が検知され94であった。例えば、そのハレーション面積値94と、ブラスト済合格品のハレーション面積0との中間値47を、閾値(上限閾値)とすれがよい。閾値の下限値が必要な場合には、0を下限閾値として設定することで正常に良否評価可能となる。
なお、上記のように設定した各閾値を用いた評価と、オペレーターの判断に相違がある場合は、その都度、設定閾値を微調整することで評価精度を向上させることができる。
【0085】
<内面部1Dでの輝度割合によるブラスト良否評価の例>
図6(b)から分かるように、上記と同様にノズル5Bが詰まった場合は、必ず、ショルダー部1Cや内面部1Dが未ブラストになる。この場合、内面部1Dの表面粗さが低くなるため、照明装置10Bから放たれた光があたった内面部1Dがハレーションする(
図19参照)。なお、
図19の符号HAがハレーションが発生している位置である。
【0086】
画像における、そのハレーションが撮像された画素数が、設定した閾値以上であれば、ハレーションした画素数が多いとして検知する。この場合は、「ハレーションが発生しているため、ブラスト処理不合格である」と、オペレーターによって判断される。
逆に、ハレーションが撮像された画素数が設定した閾値未満であれば、ハレーションしていない画素数が多いとして検知される。この場合、「ハレーションは発生していないため、ブラスト処理合格である」と、オペレーターによって判断される。
【0087】
そして、「ハレーションが発生しているため、ブラスト処理不合格である」と判断された画素数の割合である輝度割合よりも低い輝度割合を閾値として設定することで、未ブラストであるかブラスト済であるかを評価できる。この評価は、ねじ底角部A・ショルダー部1Cの未ブラスト検出に代替することができる(
図4、
図5参照)。
ここで、本実施形態では、斜め上方からの照明では、ショルダー部1Cは、管の端面であるため、反射光を検知できない。そのため、内面部1Dでの表面粗さで評価している。
【0088】
<「内面部1Dの輝度割合の閾値を決定する方法の例>
内面部1Dでの輝度割合の閾値は、主に非フック部ねじ底角部が未ブラストの場合を検出することが可能である。
ノズル5Bが詰まっている時は、
図6に示す通り、ショルダー部1Cや内面部1Dが必ず未ブラストとなる。このため、内面部1Dでハレーションが検知され、そのハレーション面積の割合である輝度割合で、その状態を検知できる。そして、例えば、そのハレーション面積の割合と、ブラスト済合格品のハレーション面積の割合との中間値を、閾値として設定する。
【0089】
実際に行ったところ、ノズル5Bが詰まっている時は、
図6の場合には、ショルダー部1Cや内面部1Dが必ず未ブラストとなる。そして、この場合、内面部1Dにおけるハレーション面積を検知すると、52であった。そして、例えば、そのハレーション面積値52と、ブラスト済合格品のハレーション面積0との中間値26を閾値を設定する。閾値の下限値が必要な場合には、0を下限閾値として設定することで正常に良否評価可能となる。
なお、上記のように設定した閾値を用いた評価と、オペレーターの判断に相違がある場合は、その都度、設定閾値を微調整することで評価精度を向上させることができる。
【0090】
<管端ねじ部1の位置補正(水平方向・垂直方向)の一例>
長軸の管を搬送して処理を行うため、管の軸に対し、水平方向の管端位置の微小なズレが発生する。このため、管毎に水平方向(横方向)の位置補正を行う必要がある。
また、管毎に管の曲がりが違う影響で、管毎に垂直方向の管端ねじ部1の位置が基準位置から変位する。そのため、管毎に、水平方向や垂直方向の位置補正を行う必要がある。
【0091】
[水平方向]
水平方向の位置補正は、画像処理によって行う。水平方向の管端位置の微小なズレを補正する方法は、次の通りである。
図20のような評価枠内において、右から左に向けて、つまり管端から離れた側から管端に向けて検知していき、黒から白への濃淡の変わり目を、画像処理で検出し、管端を認識する。そして、認識した管端位置(の幅方向中央位置)に基づき、管端ねじ部1の水平方向(横方向)の位置について補正する。
【0092】
[垂直方向]
垂直方向の位置補正は、レーザー光照射装置13によるレーザー光を用い、画像処理を行うことで実行する。
管の曲がりによって、管端ねじ部1では垂直方向の位置が変化する。例えば、外径73.1mm未満の小径油井管では、油井管2の管端の曲がりが大きく、最大4mm/300mm変化する。
そのため、垂直方向の位置補正対策として、レーザー照射を実行している。
【0093】
図21に示すように、油井管2の管端ねじ部1から少し離れた管軸方向位置に向けて、斜め上方からレーザー光を照射する。レーザー光は、管側面に対し上下方向に向けた光として照射する。そして、レーザー光の照射位置RRを含む画像の画像処理にて、評価枠内において、レーザー光がとぎれた黒と白の濃淡の境目を管端ねじ部1での上下の各エッジEg1,Eg2と認識する。このように管端ねじ部の上下のエッジEg1,Eg2を認識することで、管端ねじ部1で上下方向に曲がりがあったとしても、曲がりに追従して、正確に、実際の管端ねじ部1の軸を認識することが可能である。そして、認識した上下のエッジEg1,Eg2に基づき、上下方向の位置補正を行う。
なお、小径サイズを超える油井管2(73.1mm以上)では、管の剛性が高くなり、位置ズレは少なくなる傾向にある。しかし、微小なズレは発生するため、垂直方向の位置補正用レーザー照射による補正は、実行することが好ましい。
【0094】
<ブラスト不良パターンと評価方法の一例>
油井管2の管端ねじ部1で発生する不良パターンの例を、
図22に示す。
この管端ねじ部1において発生しうるブラスト不良名称・それらの不良原因・不良発生箇所・評価方法の例について、纏めて説明する。
【0095】
(1)「ブラストが薄い」場合
不良原因は「ブラスト時のエアー圧低下(ホース継手穴あき、ノズル噴射孔摩耗など)」である。ブラスト不良発生箇所は、「外面部1E(ねじ部、シール部1B)、ショルダー部1C」である。
その評価方法は、例えば、外面部1Eをカメラ11Aで撮像後、暗部輝度が設定した閾値の範囲から外れているかどうかで評価する。又は、外面部1Eをカメラ11Aで撮像後、明部輝度と暗部輝度の差が設定した閾値の範囲から外れているかどうかで評価する。
【0096】
(2)「非フック部ねじ底角部が未ブラスト」の場合
不良原因は「ノズル5B 詰まり」である。ブラスト不良発生箇所は、「外面部1E(非フック部ねじ底角部)、ショルダー部1C」である。
その評価方法は、例えば、内面部1Dをカメラ11Bで撮像後、ハレーション部を2値化し、そのハレーションの合計値(ハレーション面積の割合:輝度割合)が設定した閾値の範囲から外れているかどうかで評価する。
【0097】
(3)「フック部ねじ底角部が未ブラスト」の場合
であるが、不良原因は「ノズル5A詰まり」である。ブラスト不良発生箇所は、「外面部1E(フック部ねじ底角部)」である。
その評価方法は、例えば、外面部1Eをカメラ11Aで撮像後、ハレーション部を2値化し、そのハレーションの合計値(ハレーション面積の割合:輝度割合)が設定した閾値の範囲から外れているかどうかで評価する。
【0098】
(4)「黒皮を含むねじ部が未ブラスト」の場合
不良原因は「ノズル固定治具がずれ、ノズル角度が大幅にずれる(サイズ替え時のみ発生)」である。
その評価方法は、例えば外面部1Eをカメラ11Aで撮像後、ハレーション部を2値化し、そのハレーションの合計値(ハレーション面積の割合:輝度割合)が設定した閾値の範囲から外れているかどうかで評価する。
【0099】
(5)「ブラストなし」の場合
不良原因は「エアー圧が大幅に下がる(ホース継手穴あき、ノズル噴射孔摩耗など)」である。
その評価方法は、例えば、外面部1Eをカメラ11Aで撮像後、暗部輝度が設定した閾値の範囲から外れているかどうかで評価する。また、外面部1Eをカメラ11Aで撮像後、明部輝度と暗部輝度の差が設定した閾値の範囲から外れているかどうかで評価する。また、「外面部1Eをカメラ11Aで撮像後、ハレーション部を2値化し、そのハレーションの合計値(ハレーション面積の割合:輝度割合)が設定した閾値の範囲から外れているかどうかで評価する。
【0100】
(6)「撮像対象材なし」の場合
不良原因は「管が押されて視野外になる(例えば、サイズ替え時の内栓の取付けサイズ間違いにより発生)」である。
その評価方法は、例えば、外面部1Eをカメラ11Aで撮像後、暗部輝度が設定した閾値の範囲から外れているかどうかで評価する。また、外面部1Eをカメラ11Aで撮像後、明部輝度と暗部輝度の差が設定した閾値の範囲から外れているかどうかで評価する。
さらに、照明装置10の光量低下については、外面部1Eをカメラ11Aで撮像後、明部輝度が設定した閾値の範囲から外れているかどうかで評価可能である。
【0101】
以上のように評価処理を行うことで、本実施形態の装置にて、油井管2の管端ねじ部1を対象として、表面粗さに基づき、全てのブラスト不良を検出可能となる。
これによって、例えば、油井管2の管端ねじ部1のブラスト良否の自動評価が可能となる。
【0102】
(変形例)
以上の説明では、金属面に対するブラスト処理などの表面処理によって、加工前に対し加工後の粗度が高くなる場合における、加工後の金属面の表面粗さの評価を例にして説明した。
本開示は、金属面に対するバフ研磨処理などの表面処理によって、加工前に対し加工後の粗度が低くなる場合における、加工後の金属面の表面粗さの評価にも適用可能である。この場合には、上述の説明の考え方に基づき、例えば、明部輝度と暗部輝度との輝度の差が、予め設定した第3の閾値を超える場合に、評価する金属面が目標表面粗さであると評価する。第3の閾値は、目標とする表面粗さに応じた実験や、表面処理が正常となった金属面の計測などを行うことで求めれば良い。
【0103】
(その他)
本開示は、次の構成も取り得る。
(1)評価する金属面の表面粗さが、目標表面粗さであるかどうかを評価する表面粗さ評価方法であって、
照明装置で評価する金属面に照明光を照射し、
上記照明光が当たる上記評価する金属面を撮像し、
撮像した画像における、輝度が明るい領域である明部領域と、上記明部領域よりも輝度が低い暗部領域とをそれぞれ定め、
上記明部領域の輝度と上記暗部領域の輝度に基づき、上記評価する金属面の表面粗さを評価する、
ことを特徴とする表面粗さ評価方法。
【0104】
(2)上記明部領域の平均輝度を明部輝度として求め、
上記暗部領域の平均輝度を暗部輝度として求め、
上記明部輝度と上記暗部輝度との輝度の差が、予め設定した第3の閾値以下の場合、上記評価する金属面が目標表面粗さであると評価する。
(3)上記明部領域における、予め設定した輝度以上の領域の割合である輝度割合を求め、
上記輝度割合に基づき、上記評価する金属面の表面粗さを評価する。
【0105】
(4)上記輝度割合が予め設定した第1の閾値未満の場合に、上記評価する金属面が目標表面粗さと評価する。
(5)上記予め設定した輝度は、上記評価する金属面でハレーションが発生した場合における当該ハレーションが発生している部分の輝度若しくはその輝度から安全代分だけ小さくした輝度である。
(6)上記撮像した画像における、上記明部領域よりも輝度が低い暗部領域を定め、
上記暗部領域の平均輝度を暗部輝度として求め、
上記輝度割合と暗部輝度に基づき、上記評価する金属面の表面粗さを評価する。
【0106】
(7)上記輝度割合が予め設定した第1の閾値未満で、且つ、上記暗部輝度が予め設定した第2の閾値より大きい場合に、上記評価する金属面が目標表面粗さと評価する。
(8)上記第2の閾値は、上記明部領域の全域でハレーションが発生した場合における、上記暗部領域の平均輝度よりも大きな輝度である。
(9)上記明部領域の平均輝度を明部輝度として求め、
上記明部輝度と上記暗部輝度との輝度の差が、予め設定した第3の閾値を超える場合、上記評価する金属面が上記目標表面粗さとの評価を、目標表面粗さよりも表面粗さが小さいと評価を変更する。
【0107】
(10)面形状が予め設定した凹凸形状となっている領域を有する金属面を評価対象とし、その金属面の表面粗さが目標表面粗さであるかどうかを評価する表面粗さ評価方法であって、
照明装置で上記凹凸形状となっている領域の金属面に照明光を照射し、
上記照明光が当たる上記評価する金属面を撮像し、
撮像した画像における、上記凹凸形状となっている領域のうちの輝度が明るい領域である明部領域を定め、
上記明部領域における、予め設定した輝度以上の領域の割合である輝度割合を求め、
上記輝度割合に基づき、上記評価する金属面の表面粗さを評価する、
ことを特徴とする表面粗さ評価方法。
【0108】
(11)上記輝度割合が予め設定した第1の閾値未満の場合に、上記評価する金属面が目標表面粗さと評価する。
(12)上記予め設定した輝度は、上記評価する金属面でハレーションが発生した場合における当該ハレーションが発生している部分の輝度若しくはその輝度から安全代分だけ小さくした輝度である。
(13)上記撮像した画像における、上記凹凸形状となっている領域のうちの上記明部領域よりも輝度が低い暗部領域を定め、
上記暗部領域の平均輝度を暗部輝度として求め、
上記輝度割合が上記第1の閾値未満で、且つ、上記暗部輝度が予め設定した第2の閾値より大きい場合に、上記評価する金属面が目標表面粗さと評価する。
【0109】
(14)上記第2の閾値は、上記明部領域全域でハレーションが発生した場合における、上記暗部領域の平均輝度よりも大きな輝度である。
(15)上記明部領域の平均輝度を明部輝度として求め、
上記輝度割合が上記第1の閾値未満で、且つ、上記暗部輝度が予め設定した第2の閾値より大きく、更に、上記明部輝度と上記暗部輝度との輝度の差が、予め設定した第3の閾値以下の場合に、上記評価する金属面が目標表面粗さと評価する。
(16)予め設定された凹凸形状がねじ形状である。
(17)上記評価する金属面は、表面処理で表面を粗くした金属面である。
(18)上記明部領域は、上記表面処理を施す前の金属面に上記照明光を照明した場合に、ハレーションが発生する部分を含む領域とする。
(19)上記予め設定した輝度は、上記表面処理を施す前の金属面に上記照明光を照明した場合に発生したハレーションの位置の輝度、若しくはその輝度から安全代分だけ小さくした輝度である。
【0110】
(20)上記評価する金属面が、油井管の管端ねじ部であり、
管端を撮像した画像の画像処理によって、管端位置を検出し、
検出した管端位置によって、画像における管端部の水平方向位置を補正する。
(21)管に周方向に沿ったレーザー光を照射し、そのレーザー光を照射した管を撮像し、
撮像した画像中のレーザー光の位置によって、管の上下位置を検出し、
検出した管の上下位置から、画像における管端部の上下方向位置を補正する。
【0111】
(22)評価する金属面の表面粗さが、目標表面粗さであるかどうかを評価する表面粗さ評価装置であって、
評価する金属面に照明光を照射する照明装置と、
上記照明光が当たる領域である照明領域を撮像する撮像装置と、
撮像した画像内における上記照明領域内から選択した領域であって、輝度が明るい領域である明部領域と、上記明部領域よりも輝度が低い暗部領域をそれぞれ設定する設定部と、
上記明部領域の輝度と上記暗部領域の輝度に基づき、上記評価する金属面の表面粗さを評価する評価部と、
を備えることを特徴とする表面粗さ評価装置。
【0112】
(23)上記明部領域の平均輝度を明部輝度として求める明部輝度算出部と、
上記暗部領域の平均輝度を暗部輝度として求める暗部輝度算出部と、を備え、
上記評価部は、上記明部輝度と上記暗部輝度との輝度の差が、予め設定した第3の閾値以下の場合、上記評価する金属面が目標表面粗さであると評価する。
(24)上記明部領域における、予め設定した輝度以上の領域の割合である輝度割合を求める輝度割合算出部を備え、
上記評価部は、上記輝度割合に基づき、上記評価する金属面の表面粗さを評価する。
(25)上記評価部は、上記輝度割合が予め設定した第1の閾値未満の場合に、上記評価する金属面が目標表面粗さと評価する。
【0113】
(26)上記予め設定した輝度は、上記評価する金属面でハレーションが発生した場合における当該ハレーションが発生している部分の輝度若しくはその輝度から安全代分だけ小さくした輝度である。
(27)上記設定部は、上記撮像した画像における、上記明部領域よりも輝度が低い暗部領域を設定し、
更に、上記暗部領域の平均輝度を暗部輝度として求める暗部輝度算出部を有し、
上記評価部は、上記輝度割合と暗部輝度に基づき、上記評価する金属面の表面粗さを評価する。
【0114】
(28)上記評価部は、上記輝度割合が予め設定した第1の閾値未満で、且つ、上記暗部輝度が予め設定した第2の閾値より大きい場合に、上記評価する金属面が目標表面粗さと評価する。
(29)上記第2の閾値は、上記明部領域の全域でハレーションが発生した場合における、上記暗部領域の平均輝度よりも大きな輝度である。
(30)上記明部領域の平均輝度を明部輝度として求める明部輝度算出部を備え、
上記評価部は、上記明部輝度と上記暗部輝度との輝度の差が、予め設定した第3の閾値を超える場合、上記評価する金属面が目標表面粗さとの評価を、目標表面粗さよりも小さい表面粗さであると評価を変更する。
【0115】
(31)面形状が予め設定した凹凸形状となっている領域を有する金属面を評価対象とし、その金属面の表面粗さが、目標とする表面粗さである目標表面粗さであるかどうかを評価する表面粗さ評価装置であって、
上記凹凸形状となっている領域の金属面に照明光を照射する照明装置と、
上記照明光が当たる領域である照明領域を撮像する撮像装置と、
撮像した画像内における上記照明領域内から選択した領域であって、上記凹凸形状となっている領域のうちの輝度が明るい領域である明部領域を設定する設定部と、
上記明部領域における、予め設定した輝度以上の領域の割合である輝度割合を求める輝度割合算出部と、
上記輝度割合に基づき、上記評価する金属面の表面粗さを評価する評価部と、
を備えることを特徴とする表面粗さ評価装置。
【0116】
(32)上記評価部は、上記輝度割合が予め設定した第1の閾値未満の場合に、上記評価する金属面が上記目標表面粗さと評価する。
(33)上記予め設定した輝度は、上記評価する金属面でハレーションが発生した場合における当該ハレーションが発生している部分の輝度若しくはその輝度から安全代分だけ小さくした輝度である。
(34)上記設定部は、上記撮像した画像における、上記凹凸形状となっている領域のうちの上記明部領域よりも輝度が低い暗部領域を定め、
更に、上記暗部領域の平均輝度を暗部輝度として求める暗部輝度算出部を有し、
上記評価部は、上記輝度割合が予め設定した第1の閾値未満で、且つ、上記暗部輝度が予め設定した第2の閾値より大きい場合に、上記評価する金属面が目標表面粗さと評価する。
【0117】
(35)上記第2の閾値は、上記明部領域全域でハレーションが発生した場合における、上記暗部領域の平均輝度よりも大きな輝度である。
(36)上記明部領域の平均輝度を明部輝度として求める明部輝度算出部を備え、
上記評価部は、上記輝度割合が上記第1の閾値未満で、且つ、上記暗部輝度が予め設定した第2の閾値より大きく、更に、上記明部輝度と上記暗部輝度との輝度の差が、予め設定した第3の閾値以下の場合に、上記評価する金属面が目標表面粗さと評価する。
(37)予め設定された凹凸形状がねじ形状である。
(38)上記評価する金属面は、表面処理で表面を粗くした金属面である。
(39)上記明部領域は、上記表面処理を施す前の金属面に上記照明光を照明した場合に、ハレーションが発生する部分を含む領域とする。
(40)上記予め設定した輝度は、上記表面処理を施す前の金属面に上記照明光を照明した場合に発生したハレーションの位置の輝度、若しくはその輝度から安全代分だけ小さくした輝度である。
【実施例0118】
油井管2の管端ねじ部1に対する、画像処理による、未ブラストであるかブラスト済であるかの自動評価を行った。装置として、Panasonic社製の画像処理装置PV200、竹中オプトニック社製のレーザー光照射装置LDU20515LZ3-Aを使用している。
ここで、表面の状態、表面粗さ(以下、Raと記載する)、良否評価については、
図23の通りである。
なお、未ブラスト時では、Raは1.7μ以下である。また、目標表面粗さを、2.1μ以上、3.8μm以下に設定した。
【0119】
まず、
図22に示したような発生し得るパターンを想定し、カメラ11Aのみでの評価テストを実施した。
ブラスト処理での正常噴射圧Pは0.24Mpa≦P≦0.44Mpa、好ましくは0.29Mpa≦P≦0.39Mpaであった。
【0120】
P<0.24Mpaの場合、未ブラスト状態と同等である。未ブラストであると、継手を締め込んだ際にねじ部・継手間で焼付が発生するため、ブラスト不良品となった。
また、0.44Mpa<Pの場合、管端ねじ部1に対して、過剰に表面を粗くしてしまうことになり、摩擦係数が上昇する。その結果、継手を締め込んだ際にねじ部・継手間で焼付が発生するため、不合格品となった。これは、目標表面粗さに範囲を設定することで検知可能である。
【0121】
上記の評価テストの結果を
図23に示す。
当初は、水準Dにおいて、カメラ11Aのみで外面部1Eを正面から撮像し、全てのねじ種でシール部1B・ねじ部本体1Aのハレーションを得られると考えていた。しかし、
図4,
図5に記載の角度θ1の値によって、ねじ底角部Aのブラスト状態が未ブラストにもブラスト済にもなることが分かった。
【0122】
<前提条件>
管端ねじ部のネジ形状の前提条件を記載する(
図4,
図5参照)。
θ3=40°(ノズルは40°固定が一般的)
θ4=40°(40°が一般的)
θ5=θ4÷2 →θ5=40°÷2=20°
θ6=θ3-θ5 →θ6=40°-20°=20°
錯角により、θ1=θ6
θ1>20°、好ましくはθ1>22°の場合、ブラストされ、拡散反射光を撮像することになる。
θ1≦20°の場合、ねじ底角部Aがブラストされず、未ブラスト状態となる。
【0123】
<実施例>
Xねじθ1=15° → ねじ底角部Aがブラストされず、未ブラスト状態となる。
Yねじθ1=25° → ねじ底角部Aがブラストされ、ブラスト済状態となる。
また、水準Dにおいて、ノズル5Bが詰まっている状況では、必ずショルダー部1Cや内面部1Dが未ブラストとなり(
図6(b))、ブラスト不良品となる。この場合と、ねじ底角部Aがブラスト済である場合とが重なると、カメラ11A・照明装置10Aのみの良否評価では不合格品を次工程に送ってしまうことになる。
すなわち、カメラ11A・照明装置10Aのみでは、ショルダー部1Cや内面部1Dのブラスト状態の良否が不明であることが分かった。
【0124】
次に、内面部1Dを撮像できるカメラ11B、照明装置10Bを追加した。そして、カメラ11A、照明装置10A、カメラ11B、照明装置10Bでの評価テストを試みた。この場合、水準Dのショルダー部1Cや内面部1Dが未ブラスト時において、内面部1Dのハレーションを確認できた。
すなわち、水準Dにおいて、ノズル5Bが詰まっている影響から、次のことを考える。すなわち、ショルダー部1Cや内面部1Dが未ブラストである場合と、ねじ底角部Aがブラスト済である
図6の場合とが重なった場合を考える。この場合でも、カメラ11Bにて、内面部1Dのハレーションを確認でき、その管がブラスト不良品であると評価できた。
【0125】
また、小径油井管(外径73.1mm未満)では、油井管2の管端の曲がりが大きく、その際は、垂直方向の位置が最大4.0mm/300mm変化する。
このため、垂直方向の位置補正用にレーザー光照射装置13を導入した。管端ねじ部1近傍の管側面にレーザー光を照射し、レーザー光が途切れた箇所を濃淡差による画像処理評価で管の上下エッジと認識させる原理を用いた。
【0126】
なお、小径サイズを超える油井管2(73.1mm以上)では、位置ズレは少なくなる傾向にあるが、微小なズレは発生するため、垂直方向の位置補正用レーザー光照射装置13は必要である。
以上のことから、カメラ11A、照明装置10A、カメラ11B、照明装置10B、レーザー光照射装置13を組み合わせることで、油井管2の管端ねじ部1のブラスト良否を自動で評価可能となった。