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特開2024-113529紙幣処理装置の制御方法、及び、紙幣処理装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024113529
(43)【公開日】2024-08-22
(54)【発明の名称】紙幣処理装置の制御方法、及び、紙幣処理装置
(51)【国際特許分類】
   G07D 11/24 20190101AFI20240815BHJP
   G07D 11/12 20190101ALI20240815BHJP
【FI】
G07D11/24
G07D11/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023018586
(22)【出願日】2023-02-09
(71)【出願人】
【識別番号】000001432
【氏名又は名称】グローリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂本 正雄
(72)【発明者】
【氏名】出水田 剛志
【テーマコード(参考)】
3E141
【Fターム(参考)】
3E141AA01
3E141BA06
3E141CA11
3E141FA01
3E141FG11
(57)【要約】
【課題】収納部に収納している紙幣を、識別番号を用いて管理することを可能にする。
【解決手段】紙幣処理装置1000の制御方法は、N枚(但しNは、2以上の自然数)の紙幣を収納している収納部1002が、紙幣の識別番号取得処理として、n枚(但しnは、Nより小さい自然数)の紙幣を繰り出し、識別部1003が、紙幣の識別番号を読み取り、収納部が、識別番号が読み取られた紙幣を再収納し、記憶部1004が、識別部の読み取り結果に基づいて、収納部から繰り出される前には識別番号が記憶されていなかった紙幣であって収納部に再収納された紙幣の識別番号を記憶する。
【選択図】図15
【特許請求の範囲】
【請求項1】
N枚(但しNは、2以上の自然数)の紙幣を収納している収納部が、紙幣の識別番号取得処理として、n枚(但しnは、Nより小さい自然数)の紙幣を繰り出し、
識別部が、前記収納部から繰り出された紙幣の識別番号を読み取り、
前記収納部が、前記識別部によって前記識別番号が読み取られた紙幣を再収納し、
記憶部が、前記識別部の読み取り結果に基づいて、前記収納部から繰り出される前には識別番号が記憶されていなかった紙幣であって前記収納部に再収納された紙幣の識別番号を記憶する、紙幣処理装置の制御方法。
【請求項2】
前記収納部は、収納した紙幣を、収納順とは逆順で繰り出し、
前記記憶部は、前記収納部が前記逆順で繰り出したn枚の紙幣の識別番号を、繰り出し順に記憶する、請求項1に記載の紙幣処理装置の制御方法。
【請求項3】
前記識別部が、入金処理において、入金される紙幣の識別番号を読み取り、
前記収納部が、前記識別部によって前記識別番号が読み取られた紙幣を収納し、
前記記憶部が、前記入金処理において前記収納部に収納された紙幣の識別番号を追加して記憶する、請求項1又は2に記載の紙幣処理装置の制御方法。
【請求項4】
前記入金処理のキャンセルの場合、
前記収納部が、前記入金処理の際に収納した紙幣を繰り出し、
前記識別部が、前記収納部から繰り出された紙幣の識別番号を読み取り、
搬送部が、前記識別部が読み取った識別番号と、前記記憶部が記憶している識別番号と、に基づいて、前記入金処理において収納された紙幣のみを返却部へ搬送する、請求項3に記載の紙幣処理装置の制御方法。
【請求項5】
前記収納部は、出金処理において、紙幣を繰り出し、
前記出金処理後、前記記憶部が識別番号を記憶している紙幣の枚数が閾値t(但しtは、n以下の自然数)枚を下回った場合に、
前記収納部が、n枚の紙幣を繰り出し、
前記識別部が、前記収納部から繰り出された紙幣の識別番号を読み取り、
前記収納部が、前記識別部によって前記識別番号が読み取られた紙幣を、再収納し、
前記記憶部が、前記収納部に再収納された紙幣の識別番号を記憶する、請求項1~4のいずれか1項に記載の紙幣処理装置の制御方法。
【請求項6】
一時保留部が、前記収納部が繰り出したn枚の紙幣を一時的に収納すると共に、前記収納部の再収納のために、収納した紙幣を繰り出し、
前記識別部は、前記収納部と前記一時保留部との間で紙幣が搬送されている間に、識別番号を読み取る、請求項1~5のいずれか1項に記載の紙幣処理装置の制御方法。
【請求項7】
搬送部が、前記識別部によって識別番号が読み取られなかった紙幣を、退避部へ搬送する、請求項6に記載の紙幣処理装置の制御方法。
【請求項8】
前記収納部は、n枚の紙幣の識別番号が読み取られるまで、紙幣を繰り出す、請求項7に記載の紙幣処理装置の制御方法。
【請求項9】
前記記憶部は、前記紙幣処理装置に紙幣が補充される補充処理の後に、前記収納部が繰り出したn枚の紙幣の識別番号を記憶する、請求項1~8のいずれか1項に記載の紙幣処理装置の制御方法。
【請求項10】
前記補充処理において、前記紙幣処理装置から取り外された前記収納部に、前記収納部の開口を通じてN枚の紙幣が直接収納されると共に、N枚の紙幣を収納する前記収納部が、前記紙幣処理装置に取り付けられる、請求項9に記載の紙幣処理装置の制御方法。
【請求項11】
前記補充処理において、前記紙幣処理装置から前記収納部が取り外されると共に、N枚の紙幣を収納している第2の収納部が、前記紙幣処理装置に取り付けられる、請求項9に記載の紙幣処理装置の制御方法。
【請求項12】
前記収納部は、紙幣を重ねて収納すると共に、重なった紙幣のうちの前記収納部の通過スリットに近い紙幣から順に繰り出す、請求項1~11のいずれか1項に記載の紙幣処理装置の制御方法。
【請求項13】
搬送路に沿って紙幣を搬送する搬送部と、
前記搬送路に接続されかつ、紙幣の収納と繰り出しとを行う収納部と、
前記搬送路に接続されかつ、前記搬送路に沿って搬送される紙幣の識別番号を読み取る識別部と、
前記収納部に収納されている紙幣の情報を記憶する記憶部と、を備え、
前記収納部は、N枚(但しNは、2以上の自然数)の紙幣を収納している状態において、紙幣の識別番号取得処理として、n枚(但しnは、Nより小さい自然数)の紙幣を前記搬送路へ繰り出し、
前記識別部は、前記収納部から繰り出された紙幣の識別番号を読み取り、
前記搬送部は、前記識別部によって前記識別番号が読み取られた紙幣を、前記収納部へ搬送し、前記収納部は、紙幣を再収納し、
前記記憶部は、前記識別部の読み取り結果に基づいて、前記収納部から繰り出される前には識別番号が記憶されていなかった紙幣であって前記収納部に再収納された紙幣の識別番号を記憶する、紙幣処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここに開示する技術は、紙幣処理装置の制御方法、及び、紙幣処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、紙幣処理部を有する取引処理装置が記載されている。この従来の取引処理装置は、入金処理及び出金処理を実行する。取引処理装置は、入金処理において、紙幣を装置内の収納カセットへ収納する。取引処理装置は、出金処理において、収納カセット内の紙幣を装置外へ払い出す。
【0003】
紙幣処理部への紙幣の補充時に、担当者は、紙幣処理部内の補充カセットに直接、紙幣を入れる。補充カセットは紙幣を一枚一枚繰り出し、識別部は、補充カセットから繰り出された各紙幣を識別する。紙幣は、識別結果に応じて収納カセットに収納される。紙幣の枚数が増えるほど、補充に要する時間は長くなる。
【0004】
特許文献2には、紙幣処理装置を有する処理システムが記載されている。CIT(Cash in Transit)の担当者は、紙幣処理装置に対する紙幣の回収/補充時に、紙幣処理装置から収納カセットを取り外すことによって、収納カセットと共に紙幣を回収し、紙幣が収納されている別の収納カセットを、紙幣処理装置に取り付けることによって、紙幣処理装置に紙幣を補充する。収納カセットの交換による紙幣の回収/補充は、回収/補充に要する時間が短いという利点がある。時間の短縮は、紙幣処理装置の速やかな再稼働を可能にする。また、回収/補充に要する時間の短縮は、CITの担当者の滞在時間が短縮するから、チャージ料の削減にも有利である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016-173778号公報
【特許文献2】特開2021-149751号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
収納カセットに収納されている紙幣の記番号を記憶している紙幣処理装置は、記番号を用いて紙幣を管理できる。例えば入金処理時に収納カセットへ紙幣を収納した後、当該入金処理がキャンセルされた場合、紙幣処理装置は、収納した紙幣を収納カセットから繰り出して、返却しなければならない。入金処理前に収納カセットに収納されている紙幣の記番号が記憶されていれば、紙幣処理装置は、記番号を用いて、返却対象の紙幣と返却対象でない紙幣とを区別できる。紙幣処理装置は、返却対象の紙幣のみを返却できる。
【0007】
特許文献1に記載された従来の取引処理装置は、記番号を記憶しないため、記番号を用いた紙幣の管理を行うことができない。
【0008】
ここに開示する技術は、収納部に収納している紙幣を、識別番号を用いて管理することを可能にする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
特許文献2に記載された従来の処理システムに用いられる収納カセットは、通信装置と記憶部とを有している。記憶部は、収納カセットに収納されている紙幣の記番号を記憶している。通信装置は、紙幣処理装置との間で通信を行う。従来の処理システムでは、収納カセットが紙幣処理装置に取り付けられると、通信装置が、記憶部に記憶されている各紙幣の記番号を、紙幣処理装置へ送信する。紙幣処理装置は、収納カセットに収納されている紙幣全ての記番号を取得できる。
【0010】
ところが、通信装置と記憶部とを有している収納カセットは、高価であると共に、紙幣処理装置にも、収納カセットの通信装置と通信を行うための通信部が必要である。
【0011】
そこで、特許文献1に記載された従来の取引処理装置において、補充カセットから繰り出された各紙幣を識別部が識別する際に、識別部が各紙幣の記番号を読み取ることが考えられる。
【0012】
しかしながら、補充される紙幣全ての記番号を読み取ろうとすると、補充に要する時間が長くなってしまう。また、そもそも、補充される紙幣の全てを、補充カセットから収納カセットへ搬送することは、例えば紙幣の詰まりといった搬送エラーが発生する可能性が高くなるという問題がある。
【0013】
ここに開示する技術は、収納部に収納されている紙幣の識別番号が記憶されていない場合に、収納部に収納されている紙幣のうちの一部の紙幣の識別番号のみを読み取って記憶することを特徴とする。
【0014】
具体的に、ここに開示する技術は、紙幣処理装置の制御方法に係る。この制御方法は、N枚(但しNは、2以上の自然数)の紙幣を収納している収納部が、紙幣の識別番号取得処理として、n枚(但しnは、Nより小さい自然数)の紙幣を繰り出し、識別部が、前記収納部から繰り出された紙幣の識別番号を読み取り、前記収納部が、前記識別部によって前記識別番号が読み取られた紙幣を再収納し、記憶部が、前記識別部の読み取り結果に基づいて、前記収納部から繰り出される前には識別番号が記憶されていなかった紙幣であって前記収納部に再収納された紙幣の識別番号を記憶する。
【0015】
「紙幣処理装置」は、例えば金融機関に設置されかつ、顧客が操作を行う装置であってもよい。紙幣処理装置は、ATMのようなセルフ機、又は、ATMの一部であってもよい。但し、紙幣処理装置は、金融機関に設置されることに限定されない。紙幣処理装置の設置場所は任意である。紙幣処理装置はまた、金融機関の顧客が操作を行う装置に限定されない。紙幣処理装置の操作者も任意である。
【0016】
収納部は、紙幣を収納している。収納部は、例えば入金処理において紙幣を収納する。「入金処理」は、広義の入金処理である。ここでいう入金処理は、入金部から機内に取り込まれるとともに、識別部を通過した紙幣が収納部に収納される処理を意味する。例えば利用者が自身の口座に入金する入金取引は、ここでいう入金処理の一例である。また、例えば利用者が他人の口座へ送金する振込取引も、ここでいう入金処理の一例である。入金処理において、利用者は、紙幣を紙幣処理装置に投入し、紙幣処理装置は紙幣を収納部に収納する。
【0017】
収納部は、例えば出金処理において紙幣を繰り出す。「出金処理」も、広義の出金処理である。ここでいう出金処理は、収納部から紙幣を繰り出して装置の外へ払い出す処理を意味する。例えば利用者が自身の口座から出金する出金取引は、ここでいう出金処理の一例である。出金処理において、利用者は、出金すべき金額を指定、又は、出金すべき金種及び枚数を指定し、紙幣処理装置は、収納部から繰り出された紙幣を装置の外に払い出す。
【0018】
収納部は、紙幣の識別番号取得処理として、n枚の紙幣を繰り出す。つまり、収納部は、収納しているN枚よりも少ない数の紙幣を、繰り出す。識別番号取得処理において、収納部から繰り出される紙幣は、収納部から繰り出される前には識別番号が記憶されていなかった紙幣である。識別番号取得処理は、必要最低限の識別番号情報を取得し、紙幣処理において等が取得した識別番号を使う処理を行えるようにするためのものである。
【0019】
識別部は、収納部から繰り出された紙幣の識別番号を読み取る。識別番号は、紙幣に付与された固有の番号である。識別番号は、例えば紙幣に印刷された、複数の記号の列なりから構成される。識別番号は、記番号と呼ばれることもある。尚、識別部は、紙幣の識別番号の読み取りと共に、少なくとも紙幣の金種の識別と、紙幣の計数とを行ってもよい。識別部によって識別番号が読み取られた紙幣は、収納部へ再収納される。収納部が繰り出す紙幣の枚数が少ないため、識別番号取得処理に要する時間は短い。また、識別番号取得処理中に搬送エラーが発生する可能性も低い。
【0020】
記憶部は、識別部の読み取り結果に基づいて、収納部から繰り出される前には識別番号が記憶されていなかった紙幣であって収納部に再収納された紙幣の識別番号を記憶する。収納部に収納されている紙幣のうちの、少なくとも一部の紙幣の識別番号が記憶されているから、紙幣処理装置は、当該識別番号を利用して、収納部に収納されている紙幣を管理できる。
【0021】
前記収納部は、収納した紙幣を、収納順とは逆順で繰り出し、前記記憶部は、前記収納部が前記逆順で繰り出したn枚の紙幣の識別番号を、繰り出し順に記憶する、としてもよい。
【0022】
収納部は、いわゆる先入れ後出し構造である。記憶部は、収納部に収納されている紙幣のうち、先に繰り出されるn枚分の紙幣の識別番号を記憶する。先入れ後出し構造の収納部においては、後に収納された紙幣は、先に収納された紙幣より、収納部のスリット(取込口)に近い位置にある。したがって、繰り出し時には、後に収納された紙幣が先に収納された紙幣よりも、先に繰り出される。当該収納部に新たな紙幣が収納される場合、収納部内において、既に収納されていた紙幣と、新たに収納された紙幣と、が隣り合う。記憶部は、新たに収納された紙幣に隣り合う紙幣であって、既に収納されていた紙幣の識別番号を記憶している。
【0023】
前記紙幣処理装置の制御方法では、前記識別部が、入金処理において、入金される紙幣の識別番号を読み取り、前記収納部が、前記識別部によって前記識別番号が読み取られた紙幣を収納し、前記記憶部が、前記入金処理において前記収納部に収納された紙幣の識別番号を追加して記憶する、としてもよい。
【0024】
入金処理時に、新たに収納される紙幣の識別番号が追加で記憶されるから、記憶部は、収納部に収納されている紙幣のうち、先に繰り出される紙幣の識別番号を記憶している状態を維持できる。また、入金処理時に識別番号の読み取りと記憶とが行われるため、入金処理後に改めて識別番号取得処理を行うことは不要である。
【0025】
前記入金処理のキャンセルの場合、前記収納部が、前記入金処理の際に収納した紙幣を繰り出し、前記識別部が、前記収納部から繰り出された紙幣の識別番号を読み取り、搬送部が、前記識別部が読み取った識別番号と、前記記憶部が記憶している識別番号と、に基づいて、前記入金処理において収納された紙幣のみを返却部へ搬送する、としてもよい。
【0026】
前述したように、記憶部は、入金処理時に収納された紙幣に隣り合う紙幣であって、既に収納されていた紙幣の識別番号を記憶している。紙幣処理装置は、記憶している紙幣の識別番号を利用することによって、入金処理時に収納された紙幣と、既に収納されていた紙幣との境を把握できる。入金処理のキャンセルによって紙幣を収納部から繰り出す際に、収納部から繰り出された紙幣の識別番号が読み取られれば、搬送部は、入金処理時に収納された紙幣のみを返却部へ搬送できる。
【0027】
前記収納部は、出金処理において、紙幣を繰り出し、前記出金処理後、前記記憶部が識別番号を記憶している紙幣の枚数が閾値t(但しtは、n以下の自然数)枚を下回った場合に、前記収納部が、n枚の紙幣を繰り出し、前記識別部が、前記収納部から繰り出された紙幣の識別番号を読み取り、前記収納部が、前記識別部によって前記識別番号が読み取られた紙幣を、再収納し、前記記憶部が、前記収納部に再収納された紙幣の識別番号を記憶する、としてもよい。閾値tを、n未満の自然数としてもよい。
【0028】
出金処理において収納部から紙幣が繰り出される結果、記憶部が識別番号を記憶している紙幣の枚数が減ってしまう場合がある。当該紙幣の枚数が閾値t枚を下回った場合に、紙幣処理装置は、識別番号取得処理を行う。記憶部は、n枚の紙幣の識別番号の記憶を維持できる。
【0029】
前記の紙幣処理装置の制御方法では、一時保留部が、前記収納部が繰り出したn枚の紙幣を一時的に収納すると共に、前記収納部の再収納のために、収納した紙幣を繰り出し、前記識別部は、前記収納部と前記一時保留部との間で紙幣が搬送されている間に、識別番号を読み取る、としてもよい。
【0030】
一時保留部の利用は、収納部が、識別番号が読み取られた紙幣を再収納することを可能にする。
【0031】
前記の紙幣処理装置の制御方法では、搬送部が、前記識別部によって識別番号が読み取られなかった紙幣を、退避部へ搬送する、としてもよい。
【0032】
識別部は、例えば紙幣の搬送異常の場合、識別番号を読み取ることが難しい。搬送異常は、例えば複数枚の紙幣が重なっていたり、紙幣が大きく傾いたりしていることである。
【0033】
識別番号が読み取られなかった紙幣を収納部に再収納することは難しい。識別番号が読み取られなかった紙幣が退避部へ搬送されることによって、紙幣処理装置は、当該紙幣を、収納部に再収納される紙幣と分けて管理できる。尚、退避部は、収納部とは別の収納部であってもよい。退避部は、紙幣を装置外へ払い出すための出金部であってもよい。担当者は、出金部へ払い出された紙幣を紙幣処理装置へ再投入してもよい。紙幣処理装置へ再投入されれば、搬送異常の解消によって識別番号が読み取られて、当該紙幣が収納部へ収納できる可能性がある。
【0034】
前記収納部は、n枚の紙幣の識別番号が読み取られるまで、紙幣を繰り出す、としてもよい。
【0035】
つまり、識別部によって識別番号が読み取られなかった紙幣が発生した場合、収納部は、n枚を超える枚数の紙幣を繰り出す。記憶部は、収納部に収納されている紙幣のうち、n枚分の紙幣の識別番号を記憶する。
【0036】
前記記憶部は、前記紙幣処理装置に紙幣が補充される補充処理の後に、前記収納部が繰り出したn枚の紙幣の識別番号を記憶する、としてもよい。
【0037】
識別番号取得処理は、n枚の紙幣についてのみ行われるため、前述したように、処理に要する時間が短い。補充処理時に、補充される紙幣全ての識別番号の取得が行われないため、補充処理に要する時間も短い。紙幣処理装置は、補充処理の実行に伴い稼働を中断した後、速やかに再稼働できる。
【0038】
前記補充処理において、前記紙幣処理装置から取り外された前記収納部に、前記収納部の開口を通じてN枚の紙幣が直接収納されると共に、N枚の紙幣を収納する前記収納部が、前記紙幣処理装置に取り付けられる、としてもよい。
【0039】
また、前記補充処理において、前記紙幣処理装置から前記収納部が取り外されると共に、N枚の紙幣を収納している第2の収納部が、前記紙幣処理装置に取り付けられる、としてもよい。
【0040】
いずれにおいても、補充処理に要する時間が短い。補充処理を行う担当者の拘束時間が短縮する。
【0041】
前記収納部は、紙幣を重ねて収納すると共に、重なった紙幣のうちの前記収納部の通過スリットに近い紙幣から順に繰り出す、としてもよい。
【0042】
収納部は、いわゆるスタック式の収納部としてもよい。スタック式の収納部は、繰り出し不良が生じる結果、繰り出す必要のない紙幣が繰り出されてしまう恐れがある。前述した識別番号取得処理によって、収納されている紙幣の識別番号が記憶されていることは、スタック式の収納部から繰り出される紙幣を、繰り出し要の紙幣と不要の紙幣とに区別することを可能にする。前記の制御方法は、スタック式の収納部を有する紙幣処理装置の制御方法として有用である。
【0043】
ここに開示する技術は、紙幣処理装置に係る。紙幣処理装置は、搬送路に沿って紙幣を搬送する搬送部と、前記搬送路に接続されかつ、紙幣の収納と繰り出しとを行う収納部と、前記搬送路に接続されかつ、前記搬送路に沿って搬送される紙幣の識別番号を読み取る識別部と、前記収納部に収納されている紙幣の情報を記憶する記憶部と、を備え、前記収納部は、N枚(但しNは、2以上の自然数)の紙幣を収納している状態において、紙幣の識別番号取得処理として、n枚(但しnは、Nより小さい自然数)の紙幣を前記搬送路へ繰り出し、前記識別部は、前記収納部から繰り出された紙幣の識別番号を読み取り、前記搬送部は、前記識別部によって前記識別番号が読み取られた紙幣を、前記収納部へ搬送し、前記収納部は、紙幣を再収納し、前記記憶部は、前記識別部の読み取り結果に基づいて、前記収納部から繰り出される前には識別番号が記憶されていなかった紙幣であって前記収納部に再収納された紙幣の識別番号を記憶する。
【0044】
識別番号取得処理は、収納部に収納されている紙幣の枚数よりも少ない枚数の紙幣について行われるため、処理に要する時間が短くかつ、識別番号取得処理中に搬送エラーが発生する可能性も低い。また、識別番号取得処理によって、記憶部は、収納部に収納されている紙幣のうちの、少なくとも一部の紙幣の識別番号を記憶しているから、紙幣処理装置は、当該識別番号を利用することによって、収納部に収納されている紙幣を管理できる。
【発明の効果】
【0045】
前述した紙幣処理装置の制御方法、及び、紙幣処理装置によると、収納部に収納している紙幣を、識別番号を用いて管理することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
図1図1は、紙幣処理装置の構造を示している。
図2図2は、カセットを示している。
図3図3は、紙幣処理装置のブロック図である。
図4図4は、入金処理における紙幣の搬送経路を示している。
図5図5は、出金処理における紙幣の搬送経路を示している。
図6図6は、回収/補充処理を説明する図である。
図7図7は、識別番号取得処理における紙幣の搬送経路を示している。
図8図8は、識別番号取得処理の前後における、識別番号リストの遷移を示している。
図9図9は、入金処理のキャンセル時における、識別番号リストの遷移を示している。
図10図10は、出金処理後における、識別番号リストの遷移を示している。
図11図11は、識別番号取得処理における紙幣の搬送経路の変形例を示している。
図12図12は、識別番号取得処理における紙幣の搬送経路の変形例を示している。
図13図13は、識別番号取得処理に係るフローチャートである。
図14図14は、入金/出金処理に係るフローチャートである。
図15図15は、紙幣処理装置、及び、紙幣処理装置の制御方法を示している。
【発明を実施するための形態】
【0047】
以下、紙幣処理装置及び紙幣処理装置の制御方法の実施形態について、図面を参照しながら説明する。ここで説明する紙幣処理装置及び紙幣処理装置の制御方法は例示である。
【0048】
図15は、紙幣処理装置、及び、紙幣処理装置の制御方法を説明している。紙幣処理装置1000は、紙幣の処理を行う。紙幣処理装置1000は、例えば入金処理において、紙幣を、紙幣処理装置1000の筐体の外から中へ取り込む。紙幣処理装置1000は、例えば出金処理において、紙幣を、紙幣処理装置1000の筐体の中から外へ払い出す。
【0049】
紙幣処理装置1000は、搬送部1001を備えている。搬送部1001は、搬送路を有している。搬送路は、図15においては、実線で描かれている。搬送路は、紙幣処理装置1000の筐体の中に位置している。搬送部1001は、紙幣を搬送路に沿って搬送する。紙幣は、一枚一枚、間隔を開けて搬送される。紙幣は、搬送路において、その長辺又は短辺の縁を前にして搬送される。
【0050】
紙幣処理装置1000は、収納部1002を備えている。収納部1002は、紙幣を収納している。収納部1002は、紙幣処理装置1000の筐体の中に位置している。収納部1002の通過スリット1006は、搬送路に接続されている。通過スリット1006は、収納部1002の内外をつなぐと共に、紙幣が通過する口である。収納部1002は、入金処理において、搬送路に沿って搬送されてきた紙幣を収納する。収納部1002は、出金処理において、収納している紙幣を搬送路へ繰り出す。収納部1002は、スタック式の収納部であってもよい。スタック式の収納部は、紙幣を重ねて収納すると共に、重なった紙幣のうちの通過スリット1006に近い紙幣から順に繰り出す。紙幣の収納と繰り出しとが同じ通過スリット1006を通じて行われる場合、収納部1002は、収納した紙幣を、収納順とは逆順で繰り出す。尚、収納部1002は、紙幣をドラムに巻き取って収納する、いわゆるドラム巻取式の収納部であってもよい。ドラム巻取式の収納部も、収納した紙幣を、収納順とは逆順で繰り出す。
【0051】
紙幣処理装置1000は、識別部1003を備えている。識別部1003は、搬送路に接続されている。識別部1003は、搬送途中の紙幣を識別する。紙幣は、識別部1003を通過する。識別部1003は、紙幣の特徴を取得するための、一又は複数のセンサを有している。入金処理及び出金処理において、識別部1003は、紙幣の金種を識別すると共に、その枚数を数える。識別部1003はまた、紙幣の識別番号を取得する。識別番号は、例えば紙幣に印刷されている。識別番号は、例えば複数の記号の列なりから構成される。識別番号は、数字、文字、及び、符号の少なくとも二種類を含んでいる。
【0052】
紙幣処理装置1000は、記憶部1004を備えている。記憶部1004は、識別部1003に対して、直接的に又は間接的に、信号の授受可能に接続されている。記憶部1004は、収納部1002に収納されている紙幣の識別番号であって、識別部1003が読み取った識別番号を記憶する。記憶部1004は、例えば不揮発性メモリ又は磁気記憶装置である。
【0053】
紙幣処理装置1000は、受入部1005を備えている。受入部1005は、紙幣処理装置1000の中と外とをつなぐ。受入部1005は、搬送路に接続されている。受入部1005は、例えば入金される紙幣を受け入れる。受入部1005は、入金される紙幣を、装置内へ送り出す。搬送部1001は、紙幣を、識別部1003を介して収納部1002へ搬送する。
【0054】
受入部1005は、例えば出金される紙幣を受け入れる。搬送部1001は、収納部1002から繰り出された紙幣を、識別部1003を介して受入部1005へ搬送する。受入部1005は、収納部1002から繰り出された紙幣を受け入れる。
【0055】
紙幣処理装置1000は、識別番号取得処理を実行する。識別番号取得処理は、識別部1003が収納部1002に収納されている紙幣のうちの、一部の紙幣の識別番号を読み取り、記憶部1004がそれを記憶する処理である。図15は、紙幣処理装置1000の、識別番号取得処理時の動作を示している。ステップS151は、識別番号取得処理時における紙幣の搬送経路を、矢印の向きによって示している。識別番号取得処理の開始時に、収納部1002はN枚の紙幣を収納している。但し、Nは、2以上の自然数である。記憶部1004は、収納部1002に収納されている紙幣の識別番号を記憶していない。例えば、N枚の紙幣を収納している収納部1002が、紙幣処理装置1000に取り付けられた場合、記憶部1004は、紙幣の識別番号を記憶していないことになる。
【0056】
収納部1002は、n枚の紙幣を繰り出す。ただし、nは、Nより小さい自然数である。搬送部1001は、紙幣を識別部1003へ搬送する。識別部1003は、紙幣の識別番号を読み取る。
【0057】
識別部1003が紙幣の識別番号を読み取れば、ステップS152において、収納部1002は、当該紙幣を再収納する。例えばステップS151において、搬送部1001は、識別番号が読み取られた紙幣を受入部1005へ搬送し、ステップS152において、受入部1005が、紙幣を装置内へ繰り出してもよい。また、紙幣処理装置1000は、識別番号が読み取られた紙幣を一時的に収納する一時保留部を有していてもよい。ステップS151において、搬送部1001は、識別番号が読み取られた紙幣を一時保留部へ搬送し、ステップS152において、一時保留部が、紙幣を装置内へ繰り出してもよい。
【0058】
記憶部1004は、識別部1003の読み取り結果に基づいて、収納部1002から繰り出される前には識別番号が記憶されていなかった紙幣であって、収納部1002に再収納された紙幣の識別番号を記憶する。識別番号取得処理後、記憶部1004は、収納部1002に収納されている紙幣のうちの、少なくとも一部の紙幣の識別番号を記憶している。紙幣処理装置1000は、当該識別番号を利用することによって、収納部1002に収納されている紙幣を管理できる。
【0059】
識別番号取得処理では、収納部1002が繰り出す紙幣の枚数が少ない。識別番号取得処理に要する時間は短い。また、識別番号取得処理中に搬送エラーが発生する可能性も低い。
【0060】
識別番号取得処理の後に、紙幣処理装置1000が入金処理を行うことによって、新たな紙幣が収納部1002に収納された場合、記憶部1004は、入金処理時に収納された紙幣に隣り合う紙幣であって、既に収納されていた紙幣の識別番号を記憶している。入金処理のキャンセルによって、収納部1002へ収納された紙幣を収納部1002から繰り出す場合、紙幣処理装置1000は、記憶している紙幣の識別番号を利用することによって、入金処理時に収納された紙幣と、既に収納されていた紙幣との境を把握できる。搬送部1001は、入金処理時に収納された紙幣のみを受入部1005へ搬送して、入金処理をキャンセルした利用者へ返却できる。
【0061】
図1は、紙幣処理装置1を示している。紙幣処理装置1は、図15の紙幣処理装置1000の変形例である。紙幣処理装置の変形例におけるそれぞれの構成は、合理的な範囲で、個別に、または他の構成と組み合わせて、図15の紙幣処理装置1000に適用できる。また、以下に示す紙幣処理装置の制御方法は、合理的な範囲で、図15の紙幣処理装置1000及び紙幣処理装置1000の制御方法およびその変形例に適用できる。
【0062】
紙幣処理装置1は、例えば金融機関に設置される。紙幣処理装置1の利用者は、例えば金融機関の顧客である。利用者は、紙幣処理装置1を使って、入金取引を行ったり、出金取引を行ったりできる。尚、紙幣処理装置1の設置場所は、特定の場所に限定されない。尚、入金取引は、利用者が自身の口座に入金する取引であって、紙幣処理装置1が行う入金処理の一例である。また、出金取引は、利用者が自身の口座から出金する取引であって、紙幣処理装置1が行う出金処理の一例である。
【0063】
紙幣処理装置1は、バラ紙幣を取り扱う。すなわち、紙幣処理装置1は、紙幣を一枚ずつ、後述する入金部21から、後述する搬送部4に紙幣が取り込まれるように動作する。また紙幣処理装置1は、紙幣を一枚ずつ、搬送部4から、後述する出金部22に紙幣が排出されるように動作する。紙幣処理装置1は、利用者の紙幣を入金したり、利用者へ紙幣を出金したりする。紙幣処理装置1は、単体で設置されてもよいし、他の装置、例えば硬貨を取り扱う硬貨処理装置、及び/又は、小切手を取り扱う小切手処理装置と組み合わされてもよい。
【0064】
(紙幣処理装置の構造)
紙幣処理装置1は、処理部11と金庫部13とを有している。処理部11は、紙幣処理装置1の上部に位置する。処理部11は、上部筐体111を有している。金庫部13は、処理部11の下側に位置している。金庫部13は、金庫筐体131を有している。金庫筐体131は、収容物を所定以上のセキュリティレベルで防護する。金庫筐体131のセキュリティレベルは上部筐体111よりも高い。具体的に金庫筐体131は、所定の厚み以上の金属板によって形成されている。紙幣処理装置1は、たとえばリサイクラーである。
【0065】
処理部11は、入金部21を有している。入金部21は、例えば入金処理において、利用者が入金のための紙幣を投入する部位である。入金部21は、入金口211を有している。入金部21は、入金口211によって上部筐体111の外に開放されている。利用者は、入金口211を通じて、紙幣を入金部21へ手で投入する。入金部21は、ボックス形状であって、複数枚の紙幣を保持できる。入金部21は、紙幣を一枚ずつ上部筐体111の中へ繰り出す機構を有している。
【0066】
処理部11は、出金部22を有している。出金部22は、例えば出金処理において、出金のための紙幣が払い出される部位である。出金部22は、ボックス形状であって、複数枚の紙幣を保持できる。出金部22は、出金口221を有している。出金部22は、出金口221によって上部筐体111の外に開放されている。利用者は、出金部22に保持されている紙幣を、出金口221を通じて手で取り出す。
【0067】
処理部11は、一時保留部24を有している。一時保留部24は、後述するように、入金処理においては、基本的には利用されなくてもよい。一時保留部24は、後述する識別番号取得処理において、紙幣を一時的に収納することに利用される。尚、一時保留部24に、その他の機能が与えられてもよい。
【0068】
一時保留部24は、例えばドラム巻取式の収納ユニットである。ドラム巻取式の収納ユニットは、ドラムとテープとを有している。ドラムは、一時保留部24の通過スリットを通じて中に入った紙幣を、テープと共に巻き取る。ドラムに巻き取られたテープが引き出されることによって、紙幣は通過スリットを通じて一時保留部24の外へ繰り出される。ドラム巻取式の一時保留部24は、先入れ後出し構造である。一時保留部24には、公知の様々な構造が採用できる。ドラム巻取式の一時保留部24は、紙幣を収納する時及び紙幣を繰り出す時に、紙幣の順番が入れ替わらないという特徴を有している。
【0069】
処理部11は、スタックビン23を有している。スタックビン23は、後述するように、特定の紙幣の収納用に利用される場合がある。スタックビン23は、上部筐体111の中において、一時保留部24に近くに位置している。尚、スタックビン23の位置は、図1の位置に限定されない。スタックビン23は、紙幣を重ねて収納する。スタックビン23は、取出口231を有している。スタックビン23の内部は、取出口231を通じて上部筐体111の外に開放される。取出口231は開閉可能である。担当者は、取出口231を開けることによって、スタックビン23に収納されている紙幣を、取出口231を通じて取り出すことができる。紙幣の回収のために、後述する金庫筐体131の扉133を開ける必要がないため、担当者は、金庫筐体131の扉133を開けるための特別な権限は不要である。尚、取出口231は、省略してもよい。また、紙幣処理装置1において、スタックビン23は省略することも可能である。
【0070】
処理部11は、上部搬送路41を有している。紙幣は、上部搬送路41に沿って、一枚一枚、間隔を開けて搬送される。上部搬送路41は、ループ状の搬送路を有している。紙幣は、ループ状の搬送路に沿って、図1における時計回り方向又は反時計回り方向に搬送される。入金部21、出金部22、スタックビン23、及び、一時保留部24はそれぞれ、ループ状の搬送路から分岐した搬送路に接続されている。入金部21に投入された紙幣は、入金部21からループ状の搬送路へ搬送される。また、ループ状の搬送路に沿って搬送される紙幣は、選択的に、出金部22、スタックビン23、又は、一時保留部24へ搬送される。一時保留部24から繰り出された紙幣は、一時保留部24からループ状の搬送路へ搬送される。
【0071】
処理部11は、識別部25を有している。識別部25は、ループ状の搬送路に位置している。紙幣は、識別部25を通過する。識別部25は、識別部25を通過する紙幣の一枚一枚について識別を行う。識別部25は、紙幣の特徴を取得するためのセンサを有している。識別部25は、例えば、画像センサ、赤外線センサ、紫外線センサ、及び磁気センサを有している。識別部25は、紙幣の特徴に基づいて、紙幣の金種、真偽、及び、正損を識別する。識別部25はまた、紙幣に印刷されている識別番号を取得する。識別番号は、前述したように、例えば複数の記号の列なりから構成される。
【0072】
金庫部13は、収納部を有している。金庫部13は、第1収納部31、第2収納部32、第3収納部33、第4収納部34、及び、第5収納部35を有している。第1収納部31、第2収納部32、第3収納部33、第4収納部34、及び、第5収納部35はそれぞれ、金庫部13における装着部132に着脱可能に装着される。
【0073】
第1収納部31、第2収納部32、第3収納部33、第4収納部34、及び、第5収納部35はそれぞれ、スタック式のカセットである。
【0074】
図2は、カセット30の構造を、模式的に例示している。カセット30は、本体の内部に収納領域301を有している。カセット30の本体の上面には、通過スリット303が形成されている。通過スリット303は、カセット30の内外をつなぐ。紙幣は、通過スリット303を通ってカセット30の中に収納されると共に、カセット30の外へ繰り出される。
【0075】
カセット30は、通過スリット303から中に入った紙幣を、収納領域301において上下に重ねて収納する。先に収納された紙幣は、収納領域301の昇降テーブル305の上において通過スリット303から離れて位置し、後に収納された紙幣は、昇降テーブル305の上において通過スリット303の近くに位置する。図2に示されているスタック式のカセット30は、収納した紙幣を、収納順とは逆順で繰り出す。つまり、カセット30は、いわゆる先入れ後出し構造の収納部である。尚、昇降テーブル305は、紙幣の枚数に応じて、収納領域301内を昇降する。
【0076】
カセット30は、カバー302を有している。カバー302は収納領域301の開口304を覆う。図2に示すようにカバー302が取り外されると、収納領域301が開放される。担当者は、カセット30から紙幣を回収する場合に、開口304を通じて、収納領域301から紙幣を手で直接取り出すことができる。担当者はまた、カセット30に紙幣を補充する場合に、開口304を通じて、収納領域301へ紙幣を手で直接入れることができる。尚、スタック式のカセット30には、公知の様々な構造が採用できる。
【0077】
図1に示すように、第1収納部31、第2収納部32、第3収納部33、及び、第5収納部35はそれぞれ、一つの収納領域を有している。第1収納部31、第2収納部32、第3収納部33、及び、第5収納部35は、図2のカセット30である。第4収納部34は、上領域51と下領域52との二つの収納領域を有している。上領域51と下領域52とは互いに独立している。第4収納部34は、図2のカセット30の収納領域301が、上下に分割されている。第4収納部34は、上領域51の通過スリットと下領域52の通過スリットとを有している。上領域51の通過スリットは、第4収納部34の上面に位置している。下領域52の通過スリットは、第4収納部34の側面に位置している。尚、第4収納部34は、一つの収納領域のみを有していてもよい。第5収納部35は、第4収納部34のように、二つの収納領域を有していてもよい。
【0078】
例えば、第1収納部31、第2収納部32、第3収納部33、又は、第4収納部34の上領域51若しくは下領域52は、一つの金種の紙幣を収納してもよい。第1収納部31、第2収納部32、第3収納部33、並びに、第4収納部34の上領域51及び下領域52は、互いに異なる金種の紙幣を収納してもよい。第1収納部31、第2収納部32、第3収納部33、並びに、第4収納部34の上領域51及び下領域52は、入金処理時に、紙幣を収納する。第1収納部31、第2収納部32、第3収納部33、並びに、第4収納部34の上領域51及び下領域52は、出金処理時に、紙幣を繰り出す。
【0079】
第5収納部35は、第1収納部31、第2収納部32、第3収納部33、及び、第4収納部34が収納しない紙幣を収納してもよい。第5収納部35は、例えば、第1収納部31、第2収納部32、第3収納部33、又は、第4収納部34が満量になった後に、これらの収納部31~34へ収納される紙幣を収納してもよい。つまり、第5収納部35は、オーバーフローした紙幣を収納してもよい。第5収納部35はまた、後述するように、出金処理時にリジェクト紙幣であると判断された紙幣を収納してもよい。
【0080】
金庫部13は、下部搬送路42を有している。紙幣は、下部搬送路42に沿って、一枚一枚、間隔を開けて搬送される。下部搬送路42は、それぞれ上部搬送路41のループ状の搬送路から分岐した、複数の分岐路を有している。第1収納部31、第2収納部32、第3収納部33、第4収納部34の上領域51及び下領域52、並びに、第5収納部35はそれぞれ、下部搬送路42の複数の分岐路に接続されている。ループ状の搬送路に沿って搬送される紙幣は、選択的に、下部搬送路42を介して、第1収納部31、第2収納部32、第3収納部33、第4収納部34の上領域51若しくは下領域52、又は、第5収納部35へ搬送される。また、第1収納部31、第2収納部32、第3収納部33、第4収納部34の上領域51若しくは下領域52、又は、第5収納部35から下部搬送路42へ繰り出された紙幣は、ループ状の搬送路へ搬送される。
【0081】
金庫筐体131は、鍵付きの扉133を有している。扉133が開くと、金庫筐体131の中が開放される。図6に示すように、金庫筐体131の中に収容されている第1~第5収納部31~35が、装着部132と共に、金庫筐体131の外に引き出される。第1~第5収納部31~35が、金庫筐体131の外に引き出されれば、担当者は、第1~第5収納部31~35のそれぞれを、個別に、装着部132に対して着脱することができる。金融機関の運用上、金庫筐体131の扉133を開ける人は、特別な権限を必要とする。
【0082】
尚、図1の金庫部の構成は一例である。金庫筐体131内に収容される収納部の数及び配置、並びに、各収納部の構造は、図1の構成に限定されない。
【0083】
搬送部4は、上部搬送路41又は下部搬送路42に沿って、紙幣を搬送する。これらの搬送路は、多数のローラ、複数のベルト、これらを駆動するモータ、及び、複数のガイドの組み合わせによって構成されている。各紙幣は、上部搬送路41及び下部搬送路42において、その長辺の縁を前にして搬送される。尚、各紙幣は、その短辺の縁を前にして搬送されてもよい。
【0084】
上部搬送路41及び下部搬送路42における各分岐箇所には、分岐機構が配設されている。分岐機構は、紙幣の搬送方向を切り替える。分岐機構の構造は公知である。また、上部搬送路41及び下部搬送路42における各所には、通過センサが配設されている。通過センサは、光学式、超音波式又は機械式のセンサであって、紙幣の通過を検知する。通過センサは、後述するコントローラー15へ検知信号を出力する。搬送部4は、コントローラー15からの制御信号と通過センサの検知信号とに基づいて各分岐機構を制御する。紙幣は、所定の搬送先へ搬送される。
【0085】
尚、図1の搬送部4の構成は一例である。上部搬送路41及び下部搬送路42の構成は、入金部21、出金部22、スタックビン23、一時保留部24、識別部25、及び、収納部31~35の配置に応じて、適宜変更することができる。
【0086】
紙幣処理装置1は、図3に示すように、コントローラー15を備えている。コントローラー15は、制御部の一例である。コントローラー15は、CPU(Central Processing Unit)、メモリ、及び、I/O回路を含んで構成することができる。CPUは、プログラムを実行する。メモリは、紙幣処理装置1の動作のためのプログラム及びデータを格納する。メモリは、例えばRAM(Random Access Memory)及び/又はROM(Read Only Memory)である。I/O回路は、コントローラー15とコントローラー15に接続された各機器との間の電気信号の入出力を行う。コントローラー15には、入金部21、出金部22、スタックビン23、一時保留部24、識別部25、搬送部4、第1収納部31、第2収納部32、第3収納部33、第4収納部34、及び、第5収納部35が、それぞれ信号の授受可能に接続されている。
【0087】
紙幣処理装置1は、入力部26を有している。入力部26は、コントローラー15に信号の授受可能に接続されている。入力部26は、利用者が操作を行う部位である。入力部26は、例えばタッチパネルディスプレイ、及び/又は、EPP(Encrypting Pin Pad)としてもよい。利用者は、入力部26を通じて、入金処理又は出金処理の実行を、紙幣処理装置1へ指示することができる。入力部26はまた、外部装置からの信号を受信する受信機であってもよい。利用者が外部装置を操作することにより、外部装置は入力部26へ信号を送信する。入力部26は、利用者の操作に対応する信号を、コントローラー15へ出力する。
【0088】
紙幣処理装置1は、記憶部27を有している。記憶部27は、各種の情報を記憶する。記憶部27は、例えば、第1収納部31、第2収納部32、第3収納部33、第4収納部34、及び、第5収納部35のそれぞれに収納されている紙幣の情報を記憶する。記憶部27は、具体的には、各収納部31~35に収納されている紙幣の枚数及び金種を記憶している。記憶部27はまた、各収納部31~35の在高を記憶している。在高は、紙幣の枚数及び金種に基づく合計金額である。
【0089】
詳細は後述するが、記憶部27は、各収納部31~35に収納されている紙幣のうちの、少なくとも一部の紙幣の識別番号を記憶している。記憶部27は、図8図10に例示するように、各収納部31~35における紙幣の収納順に、識別番号を記憶している。紙幣の収納順と識別番号とを対応付けた情報を、以下において識別番号リスト270と呼ぶ場合がある。
【0090】
コントローラー15は、利用者の指示に関する信号であって、入力部26からの信号を受けた場合に、紙幣処理装置1が所定の動作を行うよう、入金部21、出金部22、スタックビン23、一時保留部24、識別部25、搬送部4、第1収納部31、第2収納部32、第3収納部33、第4収納部34、及び、第5収納部35へ制御信号を出力する。以下、紙幣処理装置1が各種の処理を実行する際の動作を説明する。
【0091】
(入金処理)
図4は、紙幣処理装置1における、入金処理時の、紙幣の搬送経路を、矢印によって示している。利用者は、入金のための紙幣を、入金部21に投入する。入金部21は、紙幣を一枚一枚、上部筐体111の中へ繰り出す。搬送部4は、紙幣を識別部25へ搬送する。識別部25は、紙幣を識別する。識別部25はまた、紙幣から識別番号を読み取る。
【0092】
搬送部4は、識別部25の識別結果に従って、紙幣を、第1収納部31、第2収納部32、第3収納部33、第4収納部34、又は、第5収納部35へ搬送する。尚、図4では、紙幣の搬送先が、第3収納部33である場合を例示している。収納部31~35は、紙幣を収納する。尚、搬送部4は、識別部25がリジェクト紙幣であると識別した紙幣を、利用者へ返却するために、出金部22へ搬送する。
【0093】
入金部21に投入された紙幣が全て紙幣処理装置1の中に取り込まれた後、紙幣処理装置1は、利用者に対し、識別部25の識別結果に基づく入金金額を提示する。利用者が入力部26を通じて確定操作を行えば、入金処理は終了する。利用者が入力部26を通じてキャンセル操作を行えば、収納部31~35へ収納された紙幣が、収納部31~35から繰り出されて、出金部22へ払い出される(つまり、紙幣の返却)。
【0094】
紙幣処理装置1は、入金処理において、一時保留部24を利用しない処理を行うことができる。尚、紙幣処理装置1は、一時保留部24を利用した入金処理も可能である。つまり、一時保留部24は、識別部25が識別を行った紙幣を収納する。利用者が入力部26を通じて確定操作を行えば、一時保留部24が紙幣を繰り出すと共に、収納部31~35は、紙幣を収納する。利用者が入力部26を通じてキャンセル操作を行えば、一時保留部24が紙幣を繰り出すと共に、搬送部4は、紙幣を出金部22へ搬送する。
【0095】
前述した入金処理は、一時保留部24を介さずに、収納部31~35へ直接紙幣が収納されるため、ダイレクト入金処理と呼ぶことができる。一方、一時保留部24を介した、収納部31~35へ紙幣が収納される入金を、一時保留入金処理と呼ぶことができる。
【0096】
入金処理が終了すれば、記憶部27は、収納部31~35に収納された紙幣に関する情報を記憶する。記憶部27は、識別番号リスト270を更新する。つまり、記憶部27は、識別部25が紙幣から読み取った識別番号を、収納部毎に、紙幣の収納順に、追加して記憶する。図8~10に例示される識別番号リスト270では、収納部に収納されている紙幣の通し番号(図9の例では、「89」~「104」)と、紙幣の金種(図9の例では、$1)と、識別番号(図9の例では、G61938等)とが対応付けられている。最も上位の通し番号は、収納部に収納されている紙幣の枚数に相当する。記憶部27は、入金処理が行われる度に、各収納部31~35の識別番号リスト270を更新する。記憶部27が記憶している識別番号リスト270には、各収納部31~35の最新の収納状態が反映される。
【0097】
(出金処理)
図5は、紙幣処理装置1における、出金処理時の、紙幣の搬送経路を、矢印によって示している。利用者は、入力部26を通じて、出金すべき紙幣の金種及び枚数を指定する。利用者は、出金すべき金額を指定してもよい。
【0098】
第1~第4収納部31~34は、出金のための紙幣を繰り出す。具体的には、出金すべき金種の紙幣を収納している収納部が、紙幣を繰り出す。尚、図5では、第3収納部33が、紙幣を繰り出す例を示している。搬送部4は、紙幣を、識別部25へ搬送する。識別部25は、紙幣の識別を行う。搬送部4は、識別部25によって非リジェクト紙幣と判断された紙幣、つまり正常紙幣を、出金部22へ搬送する。出金部22は紙幣を保持する。
【0099】
識別部25は、重送及び/又は斜行している紙幣を、リジェクト紙幣と判断する。搬送部4は、図5に破線の矢印で示すように、識別部25によってリジェクト紙幣であると判断された紙幣を、第5収納部35へ搬送する。第5収納部35は、リジェクト紙幣を収納する。
【0100】
出金すべき紙幣が全て、出金部22に出金されれば、出金処理は終了する。出金処理においてリジェクト紙幣が発生した場合、収納部31~34は、出金すべき紙幣よりも多い枚数の紙幣を繰り出すことになる。
【0101】
記憶部27は、出金処理後に、収納部31~34から繰り出された紙幣に関するデータを、消去する。記憶部27は、出金処理中に識別部25が紙幣から読み取った識別番号を、識別番号リスト270から消去する。記憶部27は、出金処理が行われる度に、各収納部31~35の識別番号リスト270を更新する。記憶部27が記憶している識別番号リスト270には、各収納部31~35の最新の収納状態が反映される。
【0102】
尚、紙幣処理装置1は、出金処理中に発生したリジェクト紙幣を第5収納部35へ収納する代わりに、スタックビン23へ収納してもよい。
【0103】
(補充処理)
図6は、回収/補充処理を説明する図である。紙幣処理装置1の回収処理は、担当者が、紙幣を収納しているカセット30を、紙幣処理装置1から取り外すことにより行われる。担当者は、例えばCITの担当者である。図6に例示するように、担当者は、紙幣処理装置1の扉133を開けて、第1~第5収納部31~35を、金庫筐体131の外に引き出す。そして、回収対象のカセット、図6の例では、第3収納部33に相当するカセット331を、装着部132から取り外す。紙幣は、カセット331と共に、回収される。
【0104】
紙幣処理装置1の補充処理は、担当者が紙幣を収納しているカセット30を、紙幣処理装置1に取り付けることにより行われる。図6の例では、担当者は、カセット332を、装着部132における第3収納部33に相当する位置に取り付ける。仮にカセット332には、1ドル紙幣が100枚収納されている、とする。尚、第5収納部35に紙幣は補充されないため、第5収納部35に相当する位置に取り付けられるカセット30は、空である。
【0105】
装着部132に全てのカセット30が取り付けられれば、担当者は、第1~第5収納部31~35を、金庫筐体131の中に戻し、扉133を閉じる。
【0106】
担当者は、装着部132に取り付けたカセット30に収納されている紙幣の情報、具体的には、紙幣の金種とその枚数とを、例えば入力部26を通じて紙幣処理装置1へ入力する。記憶部27は、第1~第4収納部31~34それぞれが収納している紙幣の情報を記憶する。図6の例では、記憶部27は、第3収納部33が、1ドル紙幣を100枚収納していることを記憶する(図8の左図81参照)。
【0107】
こうして、回収処理及び補充処理が完了する。回収処理及び補充処理は、カセット30の交換によって行われるため、処理に要する時間が短いという利点がある。時間の短縮は、CITの担当者のチャージ料を削減する。
【0108】
尚、回収/補充処理においてカセット30の交換を行う代わりに、担当者は、次のように回収及び補充を行ってもよい。担当者が、紙幣処理装置1から取り外したカセット30のカバー302を取り外し、開口304を通じて収納領域301から紙幣を取り出す(つまり、回収する)と共に、開口304を通じて収納領域301に紙幣を入れる(つまり、補充する)、としてもよい。担当者は、紙幣を入れたカセット30を、紙幣処理装置1に、再び取り付ける。
【0109】
(識別番号取得処理)
補充処理の直後において、紙幣が補充された収納部31~34について、記憶部27は、紙幣の識別番号を記憶していない。紙幣処理装置1は、補充処理の後に、識別番号取得処理を実行する。識別番号取得処理は、各収納部31~34に収納されている紙幣のうちの、一部の紙幣を識別部25を通過させることで、当該一部の紙幣の識別番号を取得する処理である。
【0110】
図7は、識別番号取得処理時の、紙幣の搬送経路を、矢印によって示している。処理対象の収納部31~34が、紙幣を繰り出す。尚、図7では、第3収納部33が、紙幣を繰り出す例を示している。収納部31~34は、N枚の紙幣を収納しているとする。収納部31~34は、n枚の紙幣を繰り出す。Nは2以上の自然数であり、nは、Nよりも小さい自然数である。Nは、通常は、補充処理において補充された紙幣の枚数に相当する。図6の例の第3収納部33において、Nは100枚である。nは、例えば10枚としてもよい。nが大きすぎると、識別番号取得処理に要する時間が長くなると共に、識別番号取得処理中に搬送エラーが発生する可能性が高くなる。nが小さすぎると、後述する紙幣の管理において、支障が生じる恐れがある。
【0111】
なお識別番号取得処理において、収納部から繰り出される紙幣の枚数nは、n<Nの関係を満たす限り、種々変更することができる。紙幣の枚数nは、上記のように特定数(例えば10枚)としてもよい。また、紙幣の枚数nは、収納部に収納した紙幣の枚数Nを基準とした割合、たとえば、(1/10)*Nとしてもよい。
【0112】
図7の上図に示すように、搬送部4は、紙幣を、識別部25へ搬送する。識別部25は、紙幣の識別及び識別番号の読み取りを行う。搬送部4は、識別部25によって非リジェクト紙幣と判断された紙幣、つまり正常紙幣であって、識別番号を読み取ることができた紙幣を、一時保留部24へ搬送する。一時保留部24は紙幣を収納する。搬送部4は、識別部25によってリジェクト紙幣と判断された紙幣、換言すれば識別番号を読み取ることができなかった紙幣を、図7の上図に破線で示すように、出金部22へ搬送する。尚、担当者は、出金部22へ搬送されたリジェクト紙幣を、識別番号取得処理の後に、入金部21を通じて紙幣処理装置1へ再投入してもよい。
【0113】
リジェクト紙幣が発生した場合、収納部31~34は、紙幣を追加で繰り出す。収納部31~34は、n枚の紙幣の識別番号が読み取られるまで、紙幣の繰り出しを継続する。収納部31~34が繰り出す紙幣の枚数は、n枚を超える場合がある。
【0114】
n枚の紙幣の識別番号が読み取られれば、収納部31~34は繰り出しを終了する。図7の下図に示すように、一時保留部24は、収納したn枚の紙幣を繰り出す。ドラム巻取式の収納部である一時保留部24は、収納した順番とは逆順でかつ、その順番が入れ替わることなく、紙幣を繰り出すことができる。搬送部4は、紙幣を元の収納部31~34へ搬送する。紙幣は、識別部25を通過するが、識別部25は、紙幣の識別及び識別番号の読み取りを省略してもよい。収納部31~34は、紙幣を再収納する。
【0115】
記憶部27は再収納された紙幣の識別番号を記憶する。つまり、記憶部27は、識別番号取得処理の前に識別番号が記憶されていなかった紙幣の識別番号を、その処理後に記憶する。識別番号取得処理とは、補充処理の直後には識別番号が記憶されていなかった紙幣の識別番号を、新規に(始めて)取得する処理ということもできる。
【0116】
図8は、記憶部27が記憶している、識別番号リスト270を例示している。尚、図8~10に示す識別番号リスト270の構造は例示である。
【0117】
図8の左図81は、補充処理直後の識別番号リスト270を例示している。補充処理直後の識別番号リスト270の通し番号及び金種は、前述したように、補充処理において担当者が入力した紙幣の情報(枚数及び金種)に基づく。補充処理直後の識別番号リスト270には、識別番号が含まれていない。
【0118】
また、図8の識別番号リスト270において、上方の紙幣は、収納部から先に繰り出される紙幣に相当し、下方の紙幣は、収納部から後に繰り出される紙幣に相当する。尚、以下においては、図8の識別番号リスト270の上方の情報を、リストにおける上位(の情報)、下方の情報を、リストにおける下位(の情報)と呼ぶ場合がある。
【0119】
識別番号取得処理において、収納部31~34からn枚の紙幣が繰り出されてそれらの識別番号が取得された後、紙幣が収納部31~34に再収納されれば、記憶部27は、識別番号リスト270を更新する。図8の右図82は、識別番号取得処理後の、識別番号リスト270を例示している。収納部から10枚の紙幣が繰り出された後に、10枚の紙幣が収納部に再収納された結果、識別番号リスト270における上位に、識別番号が追加されている。
【0120】
識別番号取得処理が終了すれば、紙幣処理装置1は、入金処理、及び/又は、出金処理を含む各種の処理を実行できる。尚、紙幣処理装置1は、識別番号取得処理が終了前であっても、入金処理、及び/又は、出金処理を含む各種の処理を実行してもよい。
【0121】
識別番号取得処理は、収納部31~34に収納されている紙幣のうちの、一部の紙幣についてのみ実行される。処理対象の紙幣の枚数が少ないため、識別番号取得処理に要する時間は短い。前述したように、補充処理に要する時間も短いため、紙幣処理装置1は、補充処理の開始後、速やかに、再稼働できる。
【0122】
また、識別番号取得処理の対象の紙幣の枚数が少ないため、識別番号取得処理中に、搬送エラーが発生する可能性も低い。このことによっても、紙幣処理装置1は、速やかに再稼働できる。
【0123】
(識別番号を利用した紙幣の管理)
図9は、識別番号取得処理の後に、紙幣処理装置1が入金処理、より詳細にはダイレクト入金処理を行った場合の、識別番号リスト270の変化を例示している。収納部31~34は、既に収納されている紙幣に重ねて、新たに収納された紙幣を収納する。
【0124】
図9の左図91は、入金処理において、識別番号が読み取られた4枚の紙幣が収納部31~34に収納された後の、識別番号リスト270を例示している。記憶部27は、収納部31~34に収納された4枚の紙幣の識別番号を追加して記憶する。追加される識別番号は、既に収納されている紙幣の情報(通し番号91~100)に連続する、当該情報よりも上位の情報(通し番号101~104)である。
【0125】
尚、このときに、入金処理は確定されていない。入金処理の確定前に、記憶部27は、収納部31~34に収納された紙幣の識別番号を、識別番号リスト270に追加しないこともできる。
【0126】
図9の右図92は、入金処理が、利用者によってキャンセルされた場合の識別番号リスト270を例示している。入金処理がキャンセルされた場合、入金処理時に収納部31~34に収納された紙幣は、利用者に返却されなければならない。収納部31~34は、返却対象の紙幣を繰り出す。紙幣処理装置1は、識別番号リスト270を使って、入金処理前に収納部31~34に収納されていた返却対象外の紙幣と、入金処理時に収納部31~34に収納された紙幣であって、返却対象の紙幣とを区別することができる。
【0127】
搬送部4は、収納部31~34から繰り出された紙幣を識別部25へ搬送し、識別部25は、紙幣を識別する。紙幣の搬送経路は、出金処理時における紙幣の搬送経路と同じである(図5参照)。
【0128】
スタック式の収納部31~34では、紙幣の繰り出し時に紙幣が傾いたり、複数枚の紙幣が重なって繰り出されたりする場合がある。そうした繰り出し不良が発生すると、紙幣が搬送異常になって、識別部25は紙幣の計数を正確に行うことができなくなる。
【0129】
仮に識別番号取得処理が行われていなければ、入金処理前に既に収納されていた紙幣の識別番号は不明である。紙幣処理装置1は、入金処理時に収納部31~34に収納された紙幣の枚数のみに基づいて、返却対象の紙幣と返却対象外の紙幣とを区別しなければならない。しかし、識別部25が紙幣の計数を正確に行うことができなくなることを考慮すれば、返却対象の紙幣と返却対象外の紙幣とを分けることは困難である。
【0130】
しかし、この紙幣処理装置1は、補充処理後でかつ、入金処理前に、識別番号取得処理を行っている。紙幣処理装置1は、入金処理前に既に収納されていた、一部の紙幣の識別番号を取得している。そのため、入金処理のキャンセルに伴い繰り出した紙幣が搬送異常になって、識別部25が紙幣の識別及び識別番号の読み取りができなかったとしても、識別部25が、その前後の紙幣の識別番号を読み取れば、紙幣処理装置1は、返却対象の紙幣と返却対象外の紙幣とを区別できる。ここで、記憶部27は、入金処理前に既に収納されていた紙幣のうち、先に繰り出される紙幣の識別番号を記憶しており、入金処理時には、識別番号が記憶されている紙幣に隣り合うように、新たな紙幣が収納部に収納される。紙幣処理装置1は、収納部31~34に収納されている全ての紙幣の識別番号を取得していなくても、返却対象の紙幣と返却対象外の紙幣とを区別できる。
【0131】
入金処理がキャンセルされれば、記憶部27は、図9の右図92に示すように、返却された紙幣の情報を、識別番号リスト270から消去する。
【0132】
入金処理がキャンセルされずに確定されれば、記憶部27は、図9の左図91に示すように、入金された紙幣の情報を、識別番号リスト270の上位に追加して記憶する。記憶部27は、n枚以上の紙幣の識別番号を記憶した状態を維持できる。
【0133】
図10の左図101は、識別番号取得処理の後の出金処理において、2枚の紙幣が収納部31~34から繰り出された場合の、識別番号リスト270を例示している。記憶部27は、収納部31~34から繰り出された2枚の紙幣の識別番号を消去する。具体的に記憶部27は、出金処理中に識別部25が紙幣から読み取った識別番号を、識別番号リスト270の上位から消去する。
【0134】
出金処理が行われた結果、識別番号が記憶されている紙幣の枚数が、n枚よりも減ってしまう場合がある。この状態では、識別番号取得処理において識別番号が取得された紙幣が収納部にないので、上述した識別番号を利用した紙幣の管理が行えない。
【0135】
紙幣処理装置1は、例えば、記憶部27が識別番号を記憶している紙幣の枚数が、閾値t枚を下回った場合に、識別番号取得処理を再度実行する。尚、tは、n以下の自然数である。図10の例においてtは、10又は9である。図10の左図101の識別番号リスト270において識別番号が記憶されている枚数が8枚であるため、紙幣処理装置1は、識別番号取得処理を再度実行する。
【0136】
閾値tは、n<tの関係を満たす限り、種々変更することができる。閾値tは、上記のように特定数としてもよい。また、閾値tは、識別番号取得処理において識別番号が取得された紙幣の枚数nを基準とした割合、たとえば、(1/5)*nとしてもよい。
【0137】
前述したように、識別番号取得処理において、収納部31~34は、n枚(例えば10枚)の紙幣を繰り出し、識別部25は、繰り出された紙幣の識別番号を読み取る。識別番号が読み取られた紙幣は、元の収納部31~34へ搬送されて、収納部31~34は、紙幣を再収納する。その結果、図10の右図102に示すように、記憶部27は、収納部31~34に収納されている紙幣のうち、先に繰り出されるn枚の紙幣(つまり、通し番号89~98)の識別番号を記憶した状態を維持できる。
【0138】
尚、入金処理、出金処理、及び/又は、識別番号取得処理が繰り返し実行される結果、記憶部27は、収納部31~34に収納されている紙幣のうち、n枚を超える紙幣の識別番号を記憶することもある。識別番号が記憶されている紙幣の枚数が増えれば、紙幣処理装置1は、識別番号リスト270を利用して、収納部31~34に収納されている紙幣についての管理をさらに実行できる。
【0139】
紙幣処理装置1は、識別番号が記憶されている紙幣の枚数が増えれば、例えば収納部31~34の識別番号リスト270を利用したショート精査処理を実行できる。ショート精査処理は、識別番号リスト270を利用することによって、収納部31~34から全ての紙幣を繰り出さなくても、収納部31~34の在高を確定できる処理である。ショート精査処理の詳細は、本願出願人による特許第5759289号公報に記載されている。
【0140】
具体的に、ショート精査処理の対象の収納部31~34は、一枚以上の紙幣を繰り出す。紙幣の繰り出し枚数は任意に設定できるが、2枚以上で、最大5枚としてもよい。紙幣の繰り出し枚数が多いと処理に要する時間が長くなるためである。また、スタック式の収納部31~34は、紙幣の収納時に紙幣の順番が入れ替わる場合があり、収納部31~34に実際に収納されている紙幣の順番と、識別部25の識別順に基づく識別番号リスト270における紙幣の順番とが一致しないことが起こり得る。後述するように、複数の識別番号を照合するために、紙幣の繰り出し枚数は、2枚以上であることが好ましい。
【0141】
搬送部4は、収納部31~34から繰り出された紙幣を識別部25へ搬送する。識別部25は、紙幣の識別及び識別番号の読み取りを行う。読み取られた複数の識別番号からなるグループ(以下、対象グループと呼ぶ)が形成される。尚、識別後の紙幣は、繰り出した収納部31~34とは別の収納部、例えば一時保留部24へ、一旦、収納される。
【0142】
コントローラー15は、識別番号リスト270と、対象グループとを照合することにより、識別番号リスト270において、対象グループに対応するグループ(以下、対応グループ)を決定する。尚、対象グループにおける識別番号の順番と、対応グループにおける識別番号の順番とは不一致であることを許容する。前述の通り、収納部31~34に実際に収納されている紙幣の順番と、識別番号リスト270における紙幣の順番とが一致しないことが起こり得るためである。
【0143】
識別番号リスト270において、対応グループが決定できれば、コントローラー15は、当該収納部31~34に、対応グループよりも下位の紙幣が収納されていると確定できる。つまり、コントローラー15は、収納部31~34の在高を確定させることができる。
【0144】
尚、ショート精査処理において繰り出された紙幣は、ショート精査処理の終了後に、元の収納部へ再収納される。コントローラー15は、再収納した紙幣を含めて、収納部の在高を確定させる。
【0145】
紙幣処理装置1は、例えば出金処理においてリジェクト紙幣が発生した場合、当該出金処理が終了した後に、ショート精査処理を実行してもよい。リジェクト紙幣の発生に伴い、収納部の在高が不定になるものの、ショート精査処理を実行により、紙幣処理装置1は、短時間で、収納部の在高を確定できる。
【0146】
(識別番号取得処理の変形例)
図7においては、識別番号が読み取られなかったリジェクト紙幣は、出金部22へ搬送される。識別部25は、識別番号が読み取られなかった紙幣の枚数を正確に数えることができないため、紙幣処理装置1は、出金部22へ搬送された紙幣の枚数を把握することができない。ひいては、収納部から繰り出された紙幣の枚数が不定になるため、リジェクト紙幣を繰り出した収納部の在高も不定になる。
【0147】
リジェクト紙幣が出金部22へ搬送されれば、担当者が、識別番号取得処理の後に、リジェクト紙幣を、入金部21を通じて紙幣処理装置1へ再投入してもよい。識別部25は、再投入された紙幣の識別及び識別番号の読み込みを行う。正常紙幣であれば、紙幣処理装置1は、当該正常紙幣を収納部へ収納できる。リジェクト紙幣が全て収納部へ収納されれば、収納部の在高は、識別番号取得処理前の在高であると確定できる。
【0148】
また、担当者がリジェクト紙幣の枚数を数えて、入力部26を通じて、識別番号取得処理後の収納部の在高を補正してもよい。つまり、識別番号取得処理後の収納部の在高は、識別番号取得処理前の収納部の在高からリジェクト紙幣の枚数を差し引くことによって確定できる。
【0149】
尚、リジェクト紙幣が出金部22へ払い出される場合、識別番号取得処理の実行時に、担当者が紙幣処理装置1の側にいる必要がある。
【0150】
図11は、識別番号取得処理における紙幣の搬送経路の変形例を示している。図11の上図に破線で示すように、リジェクト紙幣は、出金部22へ搬送される代わりに、第5収納部35へ収納されてもよい。第5収納部35は、前述したように、オーバーフローした紙幣を収納したり、出金処理時に発生したリジェクト紙幣を収納したりする。リジェクト紙幣が第5収納部35へ収納される場合、識別番号取得処理の実行時に担当者が紙幣処理装置1の側にいる必要はない。但し、識別番号取得処理において発生したリジェクト紙幣の枚数が確定できないため、第5収納部35の在高が不定になると共に、識別番号取得処理の対象の収納部の在高も不定になる。尚、紙幣処理装置1の全体の在高は不定にならない。
【0151】
また、図11の上図に一点鎖線で示すように、リジェクト紙幣は、出金部22又は第5収納部35へ搬送される代わりに、スタックビン23へ収納されてもよい。スタックビン23は、識別番号取得処理において発生したリジェクト紙幣専用の収納部としてもよい。リジェクト紙幣がスタックビン23へ収納される場合、識別番号取得処理の実行時に担当者が紙幣処理装置1の側にいる必要はない。但し、識別番号取得処理において発生したリジェクト紙幣の枚数が確定できないため、識別番号取得処理の対象の収納部の在高、及び、スタックビン23の在高が不定になる。尚、第5収納部35の在高は不定にならず、紙幣処理装置1の全体の在高も不定にならない。
【0152】
尚、図11における下図は、図7の下図と同じである。紙幣処理装置1は、第5収納部35又はスタックビン23に収納された紙幣を、元の収納部に戻さない。
【0153】
図12は、識別番号取得処理における紙幣の搬送経路のさらなる変形例を示している。図12の上図は、収納部31~34が繰り出した紙幣を一時保留部24に収納している。このときに、識別部25は紙幣の識別及び識別番号の取得を行わない。収納部31~34が繰り出した紙幣は全て、一時保留部24に収納される。
【0154】
図12の下図では、一時保留部24が繰り出した紙幣が識別部25へ搬送され、識別部25が、紙幣の識別及び識別番号の取得を行う。識別番号が取得された紙幣は、図12の下図に実線の矢印で示すように、元の収納部に収納される。
【0155】
識別番号が取得されなかった紙幣は、図12の下図に破線の矢印で示すように、出金部22へ搬送されてもよい。リジェクト紙幣が出金部22へ搬送されれば、前述したように、リジェクト紙幣の枚数を確定させることができる。但し、識別番号取得処理時に、担当者紙幣処理装置1の側にいる必要がある。また、この紙幣処理装置1における一時保留部24と出金部22の位置関係から、一時保留部24から識別部25へ搬送される紙幣の経路と、識別部25から出金部22へ搬送される紙幣の経路とが交差するため、紙幣の搬送をスムースに行うことが難しい。識別番号取得処理に要する時間が長くなる恐れがある。
【0156】
また、図12の下図に点線で示すように、リジェクト紙幣が第5収納部35へ搬送されてもよい。リジェクト紙幣が第5収納部35へ搬送されれば、前述したように、識別番号取得処理時に、担当者が紙幣処理装置1の側にいる必要がない。また、一時保留部24から識別部25へ搬送される紙幣の経路と、識別部25から第5収納部35へ搬送される紙幣の経路とが交差しない。但し、リジェクト紙幣の枚数を確定させることはできない。また、収納部の在高、及び、第5収納部35の在高が不定になる。
【0157】
さらに、図12の下図に一点鎖線で示すように、リジェクト紙幣がスタックビン23へ搬送されてもよい。リジェクト紙幣がスタックビン23へ搬送されれば、前述したように、識別番号取得処理時に、担当者が紙幣処理装置1の側にいる必要がない。また、第5収納部35の在高は不定にならない。但し、リジェクト紙幣の枚数を確定させることはできないため、収納部の在高、及び、スタックビン23の在高は不定になる。また、一時保留部24から識別部25へ搬送される紙幣の経路と、識別部25からスタックビン23へ搬送される紙幣の経路とが交差する。
【0158】
(制御フロー)
図13は、紙幣処理装置1の識別番号取得処理に関する制御手順を示している。尚、図13のフローは、図7又は図11に示す紙幣の搬送経路に従っている。また、図13のフローにおいては、リジェクト紙幣が搬送される出金部22、第5収納部35、又は、スタックビン23を総称して、退避部と呼んでいる。
【0159】
スタート後のステップS131において、コントローラー15は、補充処理が完了したか否かを判断する。補充処理は、前述したように、カセット30の交換、又は、カセット30内の紙幣の入れ替えによって行われる。
【0160】
ステップS131の判断がYesの場合、コントローラー15は、ステップS132において、補充された紙幣を収納している収納部31~34について、記憶部27が記憶している識別番号を消去させる(図8の左図81参照)。尚、ステップS132は、ステップS131よりも前の、補充処理時に実行されてもよい。
【0161】
ステップS133においてコントローラー15は、収納部31~34に紙幣を繰り出させる。ステップS134においてコントローラー15は、識別部25が、繰り出された紙幣の識別番号を読み取ることができたか否かを判断する。ステップS134の判断がYesの場合、コントローラー15は、当該紙幣の搬送先を一時保留部24に設定する。ステップS135において搬送部4は、当該紙幣を一時保留部24へ搬送し、一時保留部24は、当該紙幣を収納する。ステップS134の判断がNoの場合、コントローラー15は、当該紙幣の搬送先を退避部に設定する。ステップS135において搬送部4は、当該紙幣を退避部へ搬送する。
【0162】
ステップS137においてコントローラー15は、n枚の紙幣の識別番号の読み取りが完了したか否かを判断する。ステップS137の判断がNoの場合、ステップS133において、収納部31~34は、紙幣の繰り出しを継続する。
【0163】
ステップS137の判断がYesの場合、コントローラー15は、ステップS138において、一時保留部24に、収納している紙幣を繰り出させる。続くステップS139において、搬送部4は、紙幣を元の収納部31~34へ搬送し、収納部31~34は、紙幣を再収納する。そして、ステップS1310において、コントローラー15は、記憶部27に、n枚分の紙幣の識別番号を記憶させる(図8の右図82参照)。こうして、補充処理後の識別番号取得処理が終了する。
【0164】
ステップS131に戻り、ステップS131の判断がNoの場合、コントローラー15は、ステップS1311において、入金処理又は出金処理を行う。
【0165】
図14は、ステップS1311の処理に関する制御手順を示している。先ず、ステップS141において、コントローラー15は、入金処理を実行するか否かを判断する。コントローラー15は、入力部26からの信号に基づいて、入金処理を実行するか否かを判断する。
【0166】
ステップS141の判断がYesの場合、紙幣処理装置1は、ステップS142~S1410においてダイレクト入金処理を実行する。ステップS142において、入金部21は紙幣を装置内へ繰り出す。ステップS143において、識別部25が紙幣を識別し、ステップS144において、識別結果に応じて、収納部31~34が紙幣を収納する。そして、ステップS145において、記憶部27は、収納部31~34に新たに収納された紙幣の識別番号を、追加で記憶する(図9の左図91参照)。
【0167】
ステップS146において、コントローラー15は、入力部26からの信号に基づいて、入金処理が確定されたか否かを判断する。入金処理が確定された場合、つまり、ステップS146の判断がYesの場合、プロセスは図13のフローに戻る。ステップS146の判断がNoの場合、収納部31~34に収納された紙幣が返却される。ステップS147において、収納部31~34は、返却対象の紙幣を繰り出す。ステップS148において識別部25は、紙幣の識別及び識別番号を読み取り、ステップS149において搬送部4は、紙幣を出金部22へ搬送する。ステップS148及びS149において、記憶されている識別番号リスト270に基づき、紙幣処理装置1は、返却対象の紙幣のみを出金部22へ払い出す。
【0168】
そして、ステップS1410において、記憶部27は、返却した紙幣の識別番号を、識別番号リスト270から消去する(図9の右図92参照)。
【0169】
尚、ステップS145の識別番号の記憶は、ステップS146において入金処理が確定した後に実行してもよい。この場合、ステップS1410は省略される。
【0170】
ステップS141に戻り、ステップS141の判断がNoの場合、コントローラー15は、ステップS1411において、入力部26からの信号に基づいて、出金処理を実行するか否かを判断する。ステップS1411の判断がNoの場合、プロセスは図13のフローに戻る。
【0171】
ステップS1411の判断がYesの場合、紙幣処理装置1は、ステップS1412~S1415において出金処理を実行する。ステップS1412において、収納部31~34は紙幣を繰り出す。ステップS1413において、識別部25が紙幣を識別し、ステップS1414において、搬送部4は、紙幣を出金部22へ搬送する。出金部22は紙幣を保持する。そして、ステップS1415において、記憶部27は、出金部22へ払い出された紙幣の識別番号を識別番号リスト270から消去する(図10の左図101参照)。
【0172】
ステップS1416において、コントローラー15は、識別番号リスト270において識別番号が記憶されている紙幣の枚数が閾値tを下回るか否かを判断する。ステップS1416の判断がNoの場合、プロセスは図13のフローに戻る。ステップS1416の判断がYesの場合、紙幣処理装置1は、ステップS1417において識別番号取得処理を実行する。具体的に紙幣処理装置1は、図13のステップS133~1310を実行する。
【0173】
尚、ここに開示する技術は、図1に示す紙幣処理装置1に適用されることに限らない。ここに開示する技術は、様々な構造の紙幣処理装置に採用することができる。
【0174】
また、図13及び図14に示すフローチャートにおいて、可能な範囲でステップを入れ替えたり、一部のステップを省略したり、新たなステップを追加したりすることができる。
【符号の説明】
【0175】
1000 紙幣処理装置
1001 搬送部
1002 収納部
1003 識別部
1004 記憶部
1 紙幣処理装置
22 出金部(退避部)
23 スタックビン(退避部)
24 一時保留部
25 識別部
27 記憶部
31~34 収納部
35 第5収納部(退避部)
303 通過スリット
304 開口
4 搬送部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図15