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  • 特開-水質予測システム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024011353
(43)【公開日】2024-01-25
(54)【発明の名称】水質予測システム
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/00 20230101AFI20240118BHJP
   G06Q 50/06 20240101ALI20240118BHJP
【FI】
C02F1/00 T
C02F1/00 V
G06Q50/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022113285
(22)【出願日】2022-07-14
(71)【出願人】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹内 裕喜
(72)【発明者】
【氏名】森 結輝
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049CC06
(57)【要約】
【課題】浄化処理条件の容易な調整を支援する。
【解決手段】水質予測システム1は、予測水質情報導出部12Bを備える。予測水質情報導出部12Bは、処理対象の浄化処理前排水の水質情報を機械学習モデル16Aへ入力し、機械学習モデル16Aからの出力として予測水質情報を導出する。機械学習モデル16Aは、浄化処理前の浄化処理前排水の水質情報を入力とし、該水質情報によって表される水質の浄化処理前排水に対して、予め定められた浄化処理条件による浄化処理を行った後の浄化処理後排水の予測水質情報を出力とする、機械学習モデルである。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
浄化処理前の浄化処理前排水の水質情報を入力とし、該水質情報によって表される水質の前記浄化処理前排水に対して予め定められた浄化処理条件による前記浄化処理を行った後の浄化処理後排水の予測水質情報を出力とする、機械学習モデルを用いて、
処理対象の前記浄化処理前排水の水質情報を前記機械学習モデルへ入力し、前記機械学習モデルからの出力として前記予測水質情報を導出する予測水質情報導出部、
を備える水質予測システム。
【請求項2】
前記予測水質情報と、予め定められた目標水質情報と、に基づいて、
前記予測水質情報によって表される前記浄化処理後排水の水質が、前記目標水質情報によって表される目標水質となるように、前記浄化処理条件を調整するための調整情報を算出する調整情報算出部と、
前記予測水質情報および前記調整情報の少なくとも一方を出力部へ出力する出力制御部と、
を備える請求項1に記載の水質予測システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、水質予測システムに関する。
【背景技術】
【0002】
工場等から排出された汚水を化学的処理または生物学的処理などによって浄化するシステムが知られている。例えば、汚水などの浄化処理前排水を予め定めた浄化処理条件で浄化処理することが行われている。また、ユーザの感覚により浄化処理条件を手動で調整することが行われている(例えば、特許文献1~特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-279509号公報
【特許文献2】特開2011-169859号公報
【特許文献3】特開2004-77169号公報
【特許文献4】特開2009-216524号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ユーザの感覚による浄化処理条件の調整では、浄化処理工程を経た後の浄化処理後排水の水質が目標水質となるように管理することは難しく、薬剤の投入不足、過剰投入などが発生する場合があった。すなわち、従来技術では、浄化処理条件の容易な調整を支援することは困難であった。
【0005】
本開示が解決しようとする課題は、浄化処理条件の容易な調整を支援することができる、水質予測システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示にかかる水質予測システムは、予測水質情報導出部を備える。予測水質情報導出部は、浄化処理前の浄化処理前排水の水質情報を入力とし、該水質情報によって表される水質の前記浄化処理前排水に対して予め定められた浄化処理条件による前記浄化処理を行った後の浄化処理後排水の予測水質情報を出力とする、機械学習モデルを用いて、処理対象の前記浄化処理前排水の水質情報を前記機械学習モデルへ入力し、前記機械学習モデルからの出力として前記予測水質情報を導出する。
【発明の効果】
【0007】
本開示にかかる水質予測システムによれば、浄化処理条件の容易な調整を支援することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態の水質予測システムの一例を示す模式図である。
図2図2は、水質予測装置のハードウェア構成図の一例である。
図3図3は、水質予測装置の一例の機能ブロック図である。
図4図4は、水質予測装置が実行する情報処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に添付図面を参照して、本開示に係る水質予測システム1の実施形態を説明する。
【0010】
図1は、本実施形態の水質予測システム1の一例を示す模式図である。
【0011】
水質予測システム1は、水質予測装置10と、浄化システム20と、を備える。
【0012】
水質予測システム1は、浄化処理前排水30を浄化処理した後の浄化処理後排水32の水質を予測するためのシステムである。
【0013】
浄化処理前排水30とは、浄化処理前の排水である。浄化処理前排水30は、例えば、工場や家庭などから排出された排水、下水、汚水などである。
【0014】
浄化システム20は、浄化処理前排水30を浄化処理するシステムである。
【0015】
浄化システム20は、浄化処理前排水貯留部21と、浄化処理機構22と、を備える。
【0016】
浄化処理前排水貯留部21は、工場や家庭などから排出された浄化処理前排水30を貯留する機構である。例えば、浄化処理前排水貯留部21は、排水槽21Aと、水質センサ21Bと、を備える。排水槽21Aは、浄化処理前排水30を貯留するための貯留槽である。排水槽21Aには、浄化処理対象の浄化処理前排水30が貯留される。
【0017】
水質センサ21Bは、排水槽21Aに貯留された浄化処理前排水30の水質を検出し、水質情報を出力するセンサである。水質センサ21Bは、水質を検出可能なセンサであればよい。水質情報は、例えば、浮遊物質量(SS(suspended solids)値)、汚泥度合い、水温、水量、蛍光スペクトル、塩素濃度、残留酸化剤ハロゲン量、電位、ph、生物化学的酸素要求量(Biochemical Oxygen Demand:BOD)、化学的酸素要求量(Chemical Oxygen Demand:COD)等であるが、これらに限定されない。
【0018】
浄化処理機構22は、浄化システム20に対して予め定められた浄化処理条件による浄化処理を行うための機構である。
【0019】
浄化処理とは、浄化処理前排水30を浄化する処理である。本実施形態では、浄化処理機構22は、浄化処理前排水30に対して予め定められた浄化処理条件の浄化処理を実行する。
【0020】
浄化処理条件は、浄化処理対象の浄化処理前排水30や、浄化処理後排水32に要求される水質などに応じて予め設定すればよい。浄化処理条件は、例えば、浄化処理前排水30の浄化処理機構22への単位時間当たりの供給量、浄化処理前排水30の浄化処理機構22への供給タイミング、生物学的処理条件、凝集沈殿処理条件、化学的処理条件、などである。
【0021】
生物学的処理条件には、例えば、浄化処理用の細菌の種類、細菌の投入量、処理温度、等が含まれる。化学的処理条件には、酸化、還元、電位の調整、などに用いる薬剤の種類、薬剤の投入量、等が含まれる。凝集沈殿処理条件には、余剰汚泥引き抜き量などが含まれる。
【0022】
本実施形態では、浄化処理条件は、浄化処理前排水30に投入する薬剤の種類および投入量である形態を一例として説明する。また、本実施形態では、浄化処理機構22が、浄化処理前排水30に対して薬剤を投入することで、浄化処理前排水30に対して浄化処理を行い、浄化処理後排水32を生成する機構である形態を一例として説明する。
【0023】
例えば、浄化処理機構22は、ポンプ23と、薬品処理部24と、分離処理機構25と、濃縮槽26と、脱水処理機構27と、浄化処理後排水貯留部28と、を備える。
【0024】
ポンプ23は、排水槽21Aに貯留された浄化処理前排水30を薬品処理部24へ供給する。ポンプ23によって、浄化処理前排水30の薬品処理部24への単位時間当たりの供給量、および供給タイミングが調整される。
【0025】
薬品処理部24は、浄化処理前排水30に対して薬剤を投入するための機構である。
【0026】
例えば、薬品処理部24は、処理槽24Aと、水質センサ24Bと、薬剤供給部24Cと、を備える。処理槽24Aは、浄化処理前排水貯留部21からポンプ23によって供給された浄化処理前排水30を貯留する。水質センサ24Bは、処理槽24Aに貯留された浄化処理前排水30の水質を検出し、水質情報を出力するセンサである。水質センサ24Bは、水質を検出可能なセンサであればよい。水質情報は上記と同様である。
【0027】
薬剤供給部24Cは、処理槽24Aに貯留された浄化処理前排水30に予め定められた種類および投入量の薬剤を供給する供給機構である。薬剤供給部24Cによって添加された薬剤は、モータ24Dによって浄化処理前排水30内で撹拌される。薬剤を添加された浄化処理前排水30は、分離処理機構25へ供給される。
【0028】
薬剤を添加されることで、浄化処理前排水30は、汚泥と称される廃棄物31と浄化処理後排水32に分離される。分離処理機構25は、沈殿槽25Aを備える。沈殿槽25Aの底部には、所定時間をかけて廃棄物31が沈殿する。分離処理機構25の底部には排水路が設けられており、沈殿した廃棄物31は排水路を介して濃縮槽26へ供給される。
【0029】
濃縮槽26に供給された廃棄物31は、脱水処理機構27によって脱水処理された後に、廃棄物運搬用車両などによって所定の廃棄場所へと運ばれる。
【0030】
一方、分離処理機構25によって分離された浄化処理後排水32は、分離処理機構25から浄化処理後排水貯留部28へ供給される。
【0031】
浄化処理後排水貯留部28は、処理水槽28Aと水質センサ28Bとを備える。処理水槽28Aは、浄化処理後排水32を貯留する貯留槽である。水質センサ28Bは、浄化処理後排水32の水質を検出し、水質情報を出力するセンサである。水質センサ28Bは、水質を検出可能なセンサであればよい。水質情報は上記と同様である。処理水槽28Aに貯留された浄化処理後排水32は、例えば、下水道などに放流される。
【0032】
なお、浄化システム20は、浄化処理前排水30に対して予め定めた浄化処理条件で浄化処理を行い、浄化処理後排水32を排出するシステムであればよく、図1に示す構成に限定されない。
【0033】
次に、水質予測装置10について説明する。
【0034】
水質予測装置10は、浄化処理前排水30を浄化処理した後の浄化処理後排水32の水質を予測するための情報処理装置である。本実施形態では、水質予測装置10は、浄化処理機構22における浄化処理前の状態の浄化処理前排水30の水質情報から、該浄化処理前排水30に対して浄化処理機構22で浄化処理が行われた後の浄化処理後排水32の水質情報を予測する。
【0035】
まず、水質予測装置10のハードウェア構成を説明する。
【0036】
図2は、水質予測装置10のハードウェア構成図の一例である。
【0037】
水質予測装置10は、CPU(Central Processing Unit)11A、ROM(Read Only Memory)11B、RAM(Random Access Memory)11C、およびI/F11D等がバス11Eにより相互に接続され、通常のコンピュータを利用したハードウェア構成である。
【0038】
CPU11Aは、本実施形態の水質予測装置10を制御する演算装置である。ROM11Bは、CPU11Aによる各種処理を実現するプログラム等を記憶する。RAM11Cは、CPU11Aによる各種処理に必要なデータを記憶する。I/F11Dは、データを送受信するためのインターフェースである。
【0039】
本実施形態の水質予測装置10で実行される情報処理を実行するためのプログラムは、ROM11B等に予め組み込んで提供される。なお、本実施形態の水質予測装置10で実行されるプログラムは、水質予測装置10にインストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD-ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD-R、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録されて提供するように構成してもよい。
【0040】
次に、水質予測装置10の機能的構成を説明する。
【0041】
図3は、水質予測装置10の一例の機能ブロック図である。図3には、水質予測システム1に含まれる浄化システム20も併せて示す。
【0042】
水質予測装置10は、処理部12と、通信部14と、記憶部16と、UI(ユーザ・インターフェース)部18と、を備える。処理部12、通信部14、記憶部16、およびUI部18は、例えば、バス19を介して通信可能に接続されている。
【0043】
通信部14は、ネットワークNWなどを介して浄化システム20等の外部の情報処理装置または電子機器と通信するための通信インターフェースである。記憶部16は、各種の情報を記憶する。本実施形態では、記憶部16は、機械学習モデル16Aを予め記憶する。機械学習モデル16Aの詳細は後述する。
【0044】
UI部18は、出力部18Aおよび入力部18Bを含む。出力部18Aは、各種の情報を出力する。出力部18Aは、例えば、画像を表示するディスプレイ、投影装置、スピーカ等である。入力部18Bは、ユーザによる操作指示を受付ける。入力部18Bは、例えば、キーボード、マウス、等である。
【0045】
処理部12は、各種の情報処理を実行する。本実施形態では、処理部12は、学習部12Aと、予測水質情報導出部12Bと、調整情報算出部12Cと、出力制御部12Dと、を備える。学習部12A、予測水質情報導出部12B、調整情報算出部12C、および出力制御部12D、の一部または全ては、例えば、CPU等の処理装置にプログラムを実行させること、すなわち、ソフトウェアにより実現してもよい。また、学習部12A、予測水質情報導出部12B、調整情報算出部12C、および出力制御部12D、の一部または全ては、IC(Integrated Circuit)等のハードウェアにより実現してもよい。また、学習部12A、予測水質情報導出部12B、調整情報算出部12C、および出力制御部12D、の一部または全ては、ソフトウェアおよびハードウェアを併用して実現してもよい。
【0046】
学習部12Aは、機械学習により機械学習モデル16Aを予め学習する。
【0047】
機械学習モデル16Aは、浄化処理前の浄化処理前排水30の水質情報を入力とし、該水質情報によって表される水質の浄化処理前排水30に対して、予め定められた浄化処理条件による浄化処理を行った後の浄化処理後排水32の予測水質情報を出力とする、機械学習モデルである。
【0048】
例えば、学習部12Aでは、教師データを用いた機械学習により予め機械学習モデル16Aを学習する。教師データには、例えば、浄化処理前排水貯留部21に貯留されている浄化処理前排水30の水質センサ21Bにより検出された水質情報と、該水質情報の水質の浄化処理前排水30が浄化処理機構22によって浄化処理されて浄化処理後排水32とされたときに水質センサ28Bにより検出された水質情報と、の対を用いる。例えば、ユーザは、変動する環境下で浄化システム20を所定期間駆動し、水質センサ21Bによって検出された浄化処理前排水30の水質情報の異なる複数の教師データを予め用意し、記憶部16に記憶する。そして、学習部12Aは、これら複数の教師データを用いて、公知の機械学習により、上記入出力の機械学習モデル16Aを予め学習すればよい。
【0049】
そして、学習部12Aは、学習済の機械学習モデル16Aを記憶部16に記憶する。なお、学習部12Aを、ネットワークNWに接続された外部の情報処理装置に搭載した構成としてもよい。この場合、水質予測装置10は、外部の情報処理装置で学習された機械学習モデル16Aを、ネットワークNWおよび通信部14を介して受信し、記憶部16に予め記憶すればよい。
【0050】
予測水質情報導出部12Bは、処理対象の浄化処理前排水30の水質情報を取得する。予測水質情報導出部12Bは、浄化システム20の浄化処理前排水貯留部21に設けられた水質センサ21Bで検出された水質情報を、浄化処理前排水30の水質情報として通信部14を介して水質センサ21Bから取得する。
【0051】
そして、予測水質情報導出部12Bは、取得した浄化処理前排水30の水質情報を機械学習モデル16Aへ入力する。予測水質情報導出部12Bは、機械学習モデル16Aからの出力を取得することで、浄化処理後排水32の予測水質情報を導出する。
【0052】
すなわち、予測水質情報導出部12Bは、機械学習モデル16Aと、浄化処理前排水30の水質情報と、を用いて、該水質情報によって表される浄化処理前排水30が浄化処理機構22によって浄化処理された後の浄化処理後排水32の予測水質情報を導出する。
【0053】
調整情報算出部12Cは、予測水質情報導出部12Bで導出された予測水質情報によって表される浄化処理後排水32の水質が、目標水質情報によって表される目標水質となるように浄化処理条件を調整するための調整情報を算出する。例えば、調整情報算出部12Cは、予測水質情報導出部12Bで導出された予測水質情報と目標水質情報との差と、浄化処理条件の調整情報と、を対応付けたデータを予め記憶部16に記憶する。そして、調整情報算出部12Cは、予測水質情報導出部12Bで導出された予測水質情報と目標水質情報との差に対応する調整情報を記憶部16から読み取ることで、調整情報を算出する。
【0054】
出力制御部12Dは、予測水質情報および調整情報の少なくとも一方を出力部18Aへ出力する。
【0055】
例えば、出力制御部12Dは、排水槽21Aに貯留されている浄化処理前排水30を浄化処理機構22によって浄化処理した後の浄化処理後排水32の予測水質情報を、出力部18Aへ出力する。
【0056】
また、出力制御部12Dは、予測水質情報および調整情報算出部12Cで算出された調整情報の少なくとも一方を、出力部18Aへ出力する。
【0057】
このため、浄化システム20を管理するユーザは、出力部18Aに出力された予測水質情報を確認することで、浄化処理前排水30に現在貯留されている浄化処理前排水30を浄化処理した後の浄化処理後排水32の予測水質情報を、容易に確認することができる。
【0058】
よって、浄化システム20を管理するユーザは、予測水質情報を確認することで、浄化処理後の浄化処理後排水32の水質が目標水質となるように、浄化処理機構22における浄化処理条件を適宜調整することができる。
【0059】
また、出力制御部12Dは調整情報を出力部18Aへ出力する。このため、浄化システム20を管理するユーザは出力された調整情報に応じて浄化処理機構22の浄化処理条件を調整することで、浄化処理後排水32の水質が目標水質となるように、容易に浄化処理条件を調整することができる。
【0060】
なお、出力制御部12Dは、調整情報算出部12Cで算出された調整情報に応じて、浄化システム20の浄化処理条件を調整してもよい。例えば、出力制御部12Dは、浄化システム20の薬品処理部24で投入する薬剤の投入量を、調整情報に示される調整量分変更するように薬剤供給部24Cを制御してもよい。この場合、浄化処理機構22に供給される浄化処理前排水30の水質が変動した場合であっても、浄化処理機構22による浄化処理後の浄化処理後排水32の水質が目標水質となるように、自動的に浄化処理条件を調整することができる。
【0061】
次に、本実施形態の水質予測装置10で実行する情報処理の流れの一例を説明する。
【0062】
図4は、水質予測装置10が実行する情報処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0063】
予測水質情報導出部12Bは、浄化処理前排水30の水質情報を取得する(ステップS100)。予測水質情報導出部12Bは、浄化システム20の浄化処理前排水貯留部21に設けられた水質センサ21Bで検出された水質情報を、浄化処理前排水30の水質情報として通信部14を介して水質センサ21Bから取得する(ステップS100)。
【0064】
予測水質情報導出部12Bは、ステップS100で取得した浄化処理前排水30の水質情報を機械学習モデル16Aへ入力し、該機械学習モデル16Aからの出力として、浄化処理後排水32の予測水質情報を導出する(ステップS102)。
【0065】
調整情報算出部12Cは、ステップS102で導出された予測水質情報によって表される浄化処理後排水32の水質が、目標水質情報によって表される目標水質となるように浄化処理条件を調整するための調整情報を算出する(ステップS104)。
【0066】
出力制御部12Dは、ステップS102で導出された予測水質情報およびステップS104で算出された調整情報の少なくとも一方を出力部18Aへ出力する(ステップS106)。そして、本ルーチンを終了する。
【0067】
以上説明したように、本実施形態の水質予測システム1は、予測水質情報導出部12Bを備える。予測水質情報導出部12Bは、処理対象の浄化処理前排水30の水質情報を機械学習モデル16Aへ入力し、機械学習モデル16Aからの出力として予測水質情報を導出する。機械学習モデル16Aは、浄化処理前の浄化処理前排水30の水質情報を入力とし、該水質情報によって表される水質の浄化処理前排水30に対して、予め定められた浄化処理条件による浄化処理を行った後の浄化処理後排水32の予測水質情報を出力とする、機械学習モデルである。
【0068】
ここで、従来では、処理対象の浄化処理前排水30の水質に応じて、ユーザの感覚により浄化処理条件を手動で調整していた。しかし、ユーザの感覚による浄化処理条件の調整では、浄化処理工程を経た後の浄化処理後排水の水質が目標水質となるように管理することは難しく、薬剤の投入不足などの浄化処理不足、および、過剰投入などの過剰な浄化処理が発生する場合があった。また、浄化処理には数時間を必要とする場合があり、ユーザの感覚による浄化処理条件の調整不良により、浄化処理後排水の水質が目標水質からずれた状態になっていると判明するまで時間を要していた。このため、浄化処理条件の再調整までの間に、浄化処理不足または過剰な浄化処理が進行してしまう場合があった。すなわち、従来技術では、浄化処理条件の容易な調整を支援することは困難であった。
【0069】
一方、本実施形態の水質予測システム1では、機械学習モデル16Aを用いて、浄化処理前の浄化処理前排水30の水質情報から、該浄化処理前排水30に予め定められた浄化処理条件で浄化処理が行われることで得られる浄化処理後排水32の予測水質情報を導出する。
【0070】
このため、浄化システム20を管理するユーザは、出力された予測水質情報を確認することで、処理対象の浄化処理前排水30に対して浄化処理が行われた後の予測水質を把握することができ、把握した水質に応じて浄化処理条件を適宜調整することができる。
【0071】
従って、本実施形態の水質予測システム1は、浄化処理条件の容易な調整を支援することができる。
【0072】
また、本実施形態の水質予測システム1では、浄化処理条件の容易な調整を支援することができるため、浄化処理不足および過剰な浄化処理の発生を抑制することができる。このため、本実施形態の水質予測システム1は、上記効果に加えて、目標水質の浄化処理後排水32の得られる適切な浄化処理条件となるよう、容易な調整を支援することができる。また、本実施形態の水質予測システム1では、浄化処理不足による再浄化処理の発生を抑制することができる。
【0073】
また、本実施形態の水質予測システム1では、過剰な浄化処理を抑制することができるため、必要以上に薬品が過剰に使用されることなどによるコストの増大を抑制することができる。
【0074】
なお、上記実施形態の水質予測装置10で実行される上記各処理を実行するためのプログラムは、HDD(ハードディスクドライブ)に記憶されていてもよい。また、上記実施形態の水質予測装置10で実行される上記各処理を実行するためのプログラムは、ROM11Bに予め組み込まれて提供されていてもよい。
【0075】
また、上記実施形態の水質予測装置10で実行される上記処理を実行するためのプログラムは、インストール可能な形式または実行可能な形式のファイルでCD-ROM、CD-R、メモリカード、DVD(Digital Versatile Disk)、フレキシブルディスク(FD)等のコンピュータで読み取り可能な記憶媒体に記憶されてコンピュータプログラムプロダクトとして提供されるようにしてもよい。また、上記実施形態の水質予測装置10で実行される上記処理を実行するためのプログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するようにしてもよい。また、上記実施形態の水質予測装置10で実行される上記処理を実行するためのプログラムを、インターネット等のネットワーク経由で提供または配布するようにしてもよい。
【0076】
なお、上記には、本発明の実施形態を説明したが、上記実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施形態およびその変形は、発明の範囲および要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0077】
1 水質予測システム
10 水質予測装置
12B 予測水質情報導出部
12C 調整情報算出部
12D 出力制御部
30 浄化処理前排水
32 浄化処理後排水
図1
図2
図3
図4