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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024113532
(43)【公開日】2024-08-22
(54)【発明の名称】燃料供給装置
(51)【国際特許分類】
   B67D 7/54 20100101AFI20240815BHJP
   B67D 7/40 20100101ALI20240815BHJP
【FI】
B67D7/54
B67D7/40 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023018592
(22)【出願日】2023-02-09
(71)【出願人】
【識別番号】000110099
【氏名又は名称】トキコシステムソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】伊東 直人
(72)【発明者】
【氏名】黒丸 達郎
【テーマコード(参考)】
3E083
【Fターム(参考)】
3E083AA06
3E083AD11
3E083AF04
3E083AG08
3E083AG11
3E083AH12
(57)【要約】
【課題】懸垂式の燃料供給装置において、吐出パイプ内やベーパ回収部内への雨水や異物の混入や付着を抑制したり、吐出パイプ内に残留する燃料が吐出パイプの先端から垂れ落ちるのを抑制することが可能な技術を提供する。
【解決手段】燃料供給装置4は、固定部31から下方に垂れ下がるホース32と、ホース32の下方の先端に設けられるノズル33と、ノズル33に設けられ、燃料を燃料タンク5aに向けて吐出する吐出パイプ136と、吐出パイプ136の周囲に設けられ、燃料タンク5aに燃料が供給される際に自動車5の給油口5cを覆うベーパ回収用カバー180と、吐出パイプ136燃料タンク5aに燃料が吐出される際に、給油口5cからベーパ回収用カバー180内に流出する燃料のベーパを回収するベーパ回収機構170と、ベーパ回収用カバー180の開口部182、及び吐出パイプ136の吐出口136aを覆うキャップ34と、を備える。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料供給施設の高所から下方に垂れ下がるように設けられ、燃料を供給するホースと、
前記ホースの下方の先端に回動可能に取り付けられ、車両の燃料タンクに燃料を供給するノズルと、
前記ノズルに設けられ、燃料を前記燃料タンクに向けて吐出する吐出パイプと、
前記吐出パイプの周囲に設けられ、前記吐出パイプが前記車両における燃料の供給口に差し込まれた際に、前記供給口を覆うカバー部材と、
前記吐出パイプから前記燃料タンクに燃料が吐出される際に、前記供給口から前記カバー部材内に流出する燃料のベーパを回収するベーパ回収部と、
前記カバー部材の開口部を覆うと共に前記吐出パイプの吐出口を覆うキャップ部材と、を備える、
燃料供給装置。
【請求項2】
前記キャップ部材は、前記カバー部材の開口部を覆う第1の部位と、前記第1の部位から前記カバー部材側に延びる第2の部位とを有し、
前記キャップ部材は、前記第2の部位の先端部が前記カバー部材に当接するように配置される、
請求項1に記載の燃料供給装置。
【請求項3】
前記キャップ部材と、前記ノズル又は前記ホースとを連結する連結部材を備える、
請求項1又は2に記載の燃料供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、燃料供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、高所から垂下する給油ホースの先端に設けられる給油ノズルを用いて車両に燃料を供給する懸垂式の燃料供給装置が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1では、車両への燃料供給時に当該車両の燃料供給口から流出する燃料のベーパ(以下、「ベーパ」)を回収するためのベーパ回収部を給油ノズルに設け、ベーパ回収部から流入するベーパを、専用のホースを通じて地下タンクに回収することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭61-47399号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、燃料供給を行う作業者は、車両への燃料の供給が行われない状態において吐出パイプの先端(吐出口)から吐出パイプ内に残留する燃料が垂れ落ちるのを防止するために、吐出パイプの先端が上向きになるように操作する。
【0006】
しかしながら、吐出パイプ先端が上向きとなった状態では、吐出パイプの吐出口やベーパ回収部から異物や雨水等が侵入し、車両に供給される燃料や地下タンクの燃料に異物や雨水等が混入してしまう可能性がある。
【0007】
そこで、上記課題に鑑み、懸垂式の燃料供給装置において、吐出パイプ内やベーパ回収部内への雨水や異物等の侵入や付着を抑制したり、吐出パイプ内に残留する燃料が吐出パイプの先端から垂れ落ちるのを抑制することが可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本開示の一実施形態では、
燃料供給施設の高所から下方に垂れ下がるように設けられ、燃料を供給するホースと、
前記ホースの下方の先端に回動可能に取り付けられ、車両の燃料タンクに燃料を供給するノズルと、
前記ノズルに設けられ、燃料を前記燃料タンクに向けて吐出する吐出パイプと、
前記吐出パイプの周囲に設けられ、前記吐出パイプが前記車両における燃料の供給口に差し込まれた際に、前記供給口を覆うカバー部材と、
前記吐出パイプから前記燃料タンクに燃料が吐出される際に、前記供給口から前記カバー部材内に流出する燃料のベーパを回収するベーパ回収部と、
前記カバー部材の開口部を覆うと共に前記吐出パイプの吐出口を覆うキャップ部材と、を備える、
燃料供給装置が提供される。
【発明の効果】
【0009】
上述の実施形態によれば、懸垂式の燃料供給装置において、燃料への雨水や異物の混入を抑制したり、吐出パイプ内に残留する燃料が吐出パイプの先端から垂れ落ちるのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】燃料供給システムの構成の一例を示す図である。
図2】ノズル及びノズルの周辺の構成の一例を示す図である。
図3】燃料供給装置のノズルから自動車に燃料が供給されている状況を示す図である。
図4】ノズルの構造の一例を示す図である。
図5】ノズルの構造の一例を示す図である。
図6】キャップの第1例を示す図である。
図7】キャップの第2例を示す図である。
図8】キャップの第3例を示す図である。
図9】キャップの第4例を示す図である。
図10】キャップの第4例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して実施形態について説明する。
【0012】
[燃料供給システムの構成]
まず、図1図5を参照して、本実施形態に係る燃料供給システム1の構成について説明する。
【0013】
図1は、燃料供給システム1の構成の一例を示す図である。図2は、ノズル33及びノズル33の周辺の構成の一例を示す図である。図3は、燃料供給装置4のノズル33から自動車5に燃料が供給されている状況を示す図である。図4図5は、ノズル33の構造の一例を示す図である。具体的には、図4は、ノズル33の構造の一例を示す側面断面図であり、図5は、ノズル33の構造の一例を示す平面断面図である。
【0014】
尚、図4図5中の白抜き矢印は、自動車5(燃料タンク5a)に供給される燃料の流れを表し、図5中の黒塗り矢印は、回収されるベーパの流れを表す。
【0015】
図1に示すように、燃料供給システム1は、燃料供給施設の建屋2と、貯蔵タンク3と、燃料供給装置4と、自動車5とを含む。
【0016】
燃料供給システム1は、貯蔵タンク3に貯蔵される燃料を、燃料供給装置4を用いて燃料供給施設に来訪する自動車5(車両の一例)の燃料タンク5aに供給する。燃料供給施設は、例えば、ガソリンスタンド(給油所)である。燃料は、例えば、ガソリンや軽油等である。また、燃料供給施設で自動車5に供給可能な燃料は、1種類であってもよいし、複数の種類(例えば、ハイオクガソリン、レギュラーガソリン、及び軽油等)であってもよい。
【0017】
建屋2は、建屋本体部2aと、キャノピ部2bとを含む。
【0018】
キャノピ部2bは、建屋本体部2aの上部から略水平に延び出すように設けられ、自動車5(燃料タンク5a)への燃料供給の作業が行われる空間の上方を覆う。
【0019】
貯蔵タンク3は、燃料供給装置4を通じて自動車5に供給される燃料を貯蔵する。例えば、貯蔵タンク3は、燃料供給施設の地下に設置される。また、燃料供給装置4を通じて自動車5に供給可能な燃料の種類が複数ある場合、貯蔵タンク3は、その種類数に合わせて複数設けられる。
【0020】
燃料供給装置4は、いわゆる懸垂式の燃料供給装置である。燃料供給装置4は、燃料供給経路10と、本体部20と、供給部30と、表示部40と、ベーパ回収経路50と、気液分離装置60と、ベーパ液化回収装置70と、制御装置80とを含む。
【0021】
燃料供給経路10は、貯蔵タンク3から本体部20を経由して供給部30に燃料を供給する経路である。燃料供給経路10は、例えば、管路として構成され、建屋本体部2aの内部及びキャノピ部2bの内部を通過するように設けられる。
【0022】
本体部20は、燃料供給経路10上に設けられ、貯蔵タンク3の燃料を下流側の燃料供給経路10を通じて供給部30に送り出す。本体部20は、ポンプ21と、モータ22と、流量計23と、発信器24と、電磁弁25とを含む。
【0023】
ポンプ21は、上流側の燃料供給経路10を通じて貯蔵タンク3から燃料を吸い込み、下流側の燃料供給経路10に吐出する。これにより、ポンプ21は、燃料供給経路10を通じて供給部30に燃料を供給することができる。
【0024】
モータ22は、制御装置80の制御下で、ポンプ21を駆動する。
【0025】
流量計23は、燃料供給経路10を通じて供給部30に供給される燃料の流量を計測する。
【0026】
発信器24は、流量計23の計測結果に相当する信号、即ち、流量計23により計測された流量を表す信号を制御装置80に送信する。これにより、制御装置80は、自動車5に供給された燃料の流量を演算し、表示部40に表示させることができる。
【0027】
電磁弁25は、燃料供給経路10上に設けられる。電磁弁25は、制御装置80の制御下で、貯蔵タンク3から供給部30に燃料が通流可能な開状態と、貯蔵タンク3から供給部30に燃料が通流不可能な閉状態(遮断状態)とを切り替える。これにより、燃料供給装置4は、供給部30を通じて自動車5に燃料が供給される場面で供給部30に燃料が供給することができる一方、供給部30を通じて自動車5に燃料が供給されない場面で供給部30に燃料が供給されないようにすることができる。また、電磁弁25は、貯蔵タンク3から供給部30に燃料が通流可能な開状態において、その開度を調整可能であってもよい。
【0028】
供給部30は、燃料供給施設の作業者による操作の下で、自動車5に燃料を供給する。供給部30は、固定部31と、ホース32と、ノズル33と、キャップ34と、連結部材35とを含む。
【0029】
固定部31(燃料供給施設の高所の一例)は、キャノピ部2bの下面に固定される。
【0030】
固定部31は、例えば、略直方体形状を有し、ホース32の一端が接続される。固定部31の筐体の内部には、ホースリール及びホースリールを駆動するモータ等が収容される。
【0031】
ホースリールは、制御装置80の制御下で、モータにより駆動される。ホースリールは、ホース32の基端が接続され、巻き取り及び巻き出しが可能に構成される。ホース32の基端には、固定部31の筐体内の引き込み管を通じて燃料供給経路10及びベーパ回収経路50が接続される。
【0032】
ホース32は、固定部31から垂下するように設けられる。
【0033】
ホース32の基端には、上述の如く、燃料供給経路10が接続され、燃料供給経路10を通じて供給される燃料をノズル33に供給することができる。
【0034】
ホース32は、その内部にベーパ吸引チューブ32aが挿通された2重構造を有する。燃料は、ホース32の内部において、ベーパ吸引チューブ32aに占有される範囲を除く領域を通流する。
【0035】
ベーパ吸引チューブ32aは、基端が引き込み管を通じてベーパ回収経路50に接続されると共に、先端がノズル33に設けられた、後述のベーパ回収室200に接続される。そして、ベーパ吸引チューブ32aは、ベーパ回収室200に連通する後述のベーパ回収用カバー180(カバー部材の一例)内からベーパを吸引しベーパ回収経路50にベーパを回収する。例えば、ベーパ吸引チューブ32aは、ホース32における固定部31側の基端部と、ノズル33側の先端部との間を挿通するように、ホース32の内部の径方向の中央部に配置される。
【0036】
ノズル33は、ホース32の先端に回転継手134を介して接続され、吐出パイプ136が自動車5の給油口5c(供給口の一例)に差し込まれることにより、吐出パイプ136からフィラーパイプ5bを経由して燃料タンク5aに燃料を供給する。ノズル33は、回転継手134によって、ホース32の先端部を上下方向に沿って配置した状態で吐出パイプ136の先端側を上向き或いは下向きに自在に回転させることができる。
【0037】
上述の如く、ホース32は、固定部31の内部のホースリールによって、固定部31から下方に露出するホース32の長さを調整することができる。これにより、ホース32の先端に設けられるノズル33の高さ位置を変化させることができる。例えば、ノズル33の高さ位置は、通常、地上からある程度離れた高さ位置(待機位置)に保持され、自動車5の燃料タンク5aへの燃料の供給が行われる際には、自動車5の給油口5cに届く高さ位置(作業位置)に下げられる。
【0038】
例えば、図4図5に示すように、ノズル33は、吐出パイプ136と、ノズル本体部140と、ノズルレバー150とを含む。
【0039】
ノズル本体部140は、ユーザ(作業者)によるノズルレバー150の操作によって開弁される主弁142と、吐出パイプ136の先端に設けられる液面検知孔160からの空気導入が遮断されると主弁142を自動で閉弁させる自動閉弁機構144とを含む。
【0040】
また、ノズル本体部140は、主弁142の下流(吐出パイプ側)において、ノズル本体部140の燃料流路を下流側から閉止する逆止弁152を含む。
【0041】
逆止弁152は、主弁142の開弁し、燃料が下流側に吐出されると開弁し、主弁142の閉弁し、燃料の下流側への吐出が停止されると閉弁位置に付勢され吐出パイプ136内の燃料が上流側に逆流するのを防止する。また、逆止弁152は、流路内に開口する負圧発生部167の開口端を開閉させる開閉弁としても機能する。
【0042】
ノズル本体部140は、ホース32を介して燃料供給経路10に接続され、ノズルレバー150が開弁方向に操作されると、弁軸143が連動して主弁142を開弁させることにより、吐出パイプ136から燃料を吐出させる。
【0043】
吐出パイプ136は、自動車5の給油口に差し込まれる、先端側の直線状のパイプ部と、ノズル本体部から延びる、基端側の直線状のパイプ部と、先端側のパイプ部と基端側のパイプ部との間を所定の曲率で連結する湾曲状のパイプ部とを含む。例えば、吐出パイプ136は、直線状の金属製のパイプの軸方向の中間部が所定の曲率半径で湾曲される形で加工されることにより形成される。吐出パイプ136の先端部には、吐出パイプ136の外周面と内周面との間を連通する液面検知孔160が設けられる。
【0044】
液面検知孔160は、吐出パイプ136の内部に挿通された細管162、及びノズル本体部140に設けられる通路145を介して自動閉弁機構144のダイヤフラム室146に連通されている。
【0045】
ダイヤフラム室146を画成するダイヤフラム148は、主弁142の弁軸143を開弁位置に保持する。この状態で、液面検知孔160がフィラーパイプ5b内を上昇する燃料によって閉塞されると、負圧発生部167の空気吸引によりダイヤフラム室146が減圧されると共に、ダイヤフラム148が掛止解除方向に動作して弁軸143の掛止を解除する。これにより、自動閉弁機構144は、液面検知孔160に燃料の液面が達した時点で、主弁142が弁軸143と共にコイルばね147,149の付勢力によって閉弁させ、燃料の吐出を自動的に停止させることができる。
【0046】
また、ノズル33は、ベーパ回収機構170と、ベーパ回収用カバー180とを含む。
【0047】
ベーパ回収機構170(ベーパ回収部の一例)は、吐出パイプ136から燃料タンク5aに燃料が供給される際に燃料タンク5aからフィラーパイプ5bを介して放出されるベーパを、図示しないポンプにより回収しベーパ吸引チューブ32aに導入する。ベーパ回収機構170は、ベーパ回収室200やベーパ吸引チューブ32aを含む。
【0048】
ベーパ回収用カバー180は、吐出パイプ136の根元部分の外周を覆うと共に、先端側に向かってテーパ上に開き先端側に開口部182が形成されるカップ形状を有する。ベーパ回収用カバー180は、例えば、ゴム製である。ベーパ回収用カバー180は、ノズル33の吐出パイプ136が自動車5の給油口5cに挿入される際に給油口5cの周辺の車体に密着状態に押圧される。これにより、ベーパ回収用カバー180は、給油口5cを覆い、給油口5cから放出されたベーパの大気中への拡散を抑制することができる。
【0049】
ベーパ回収室200とベーパ回収用カバー180の内部とは連通している。そのため、自動車5の燃料タンク5aへの燃料供給に伴い燃料タンク5aから排出されベーパ回収用カバー180内に流入するベーパは、ベーパ回収室200及びベーパ吸引チューブ32aを介して回収される。
【0050】
図1図2に示すように、自動車5(燃料タンク5a)への燃料の供給が行われない状態(以下、「待機状態」)において、ノズル33は、吐出パイプ136が上向きになるように保持される。具体的には、ノズル33は、上述の如く、回転継手134によりホース32に対して回動可能となっている。そのため、図2の状態から自動車5に燃料を供給する際には、作業者は、ノズル33を吐出パイプ136の先端が下向きになるようにノズル33を回転させ、自動車5への燃料供給が終わり待機状態に戻す際には、吐出パイプ136の先端が上向きになるようにノズル33を回転させる。そして、回転継手134或いはノズル33に設けられた、図示しない回り止め構造によりノズル33が上向き状態にて固定(保持)される。
【0051】
キャップ34(キャップ部材の一例)は、待機状態において、吐出パイプ136の先端の吐出口136a、及びベーパ回収用カバー180の開口部182を上方から覆うように、ノズル33(吐出パイプ136及びベーパ回収用カバー180)に取り付けられる。これにより、自動車5への燃料供給が行われない状態において上向きに開放される、吐出パイプ136の吐出口136aやベーパ回収用カバー180の開口部182への雨水や異物等の混入を抑制することができる。また、自動車5への燃料給油の作業を行う作業者は、キャップ34を吐出パイプ136の吐出口136aに取り付けることによって、ベーパ回収用カバー180の開口部182の双方を同時に閉塞させることができる。そのため、吐出口136aと開口部182とをそれぞれ別の部材で閉塞させる場合と比べて、作業員の作業性を向上させることができる。
【0052】
連結部材35は、キャップ34がノズル33と分離しないようにノズル33やホース32と連結する部材である。これにより、キャップ34とノズル33とが非常に近い距離関係で維持されることから、作業者は、キャップ34のノズル33への取り付け及び取り外しを容易に行うことができる。また、自動車5への燃料の供給が行われる際に、作業者によりノズル33から取り外されたキャップ34の紛失等を抑制することができる。
【0053】
例えば、図2に示すように、連結部材35は、キャップ34の先端部と、ノズル33の吐出パイプ136よりも基端側の部分(具体的には、ノズル本体部140)との間を連結する、金属製のワイヤや樹脂製のコード等である。また、連結部材35としてのワイヤやコード等には、両端の間の長さを調整するためのストッパ等の調整部が設けられてもよい。これにより、作業者は、吐出パイプ136及びベーパ回収用カバー180にキャップ34を取り付けた後に、ワイヤやコード等の長さを調整することができる。そのため、例えば、作業者は、キャップ34を吐出パイプ136及びベーパ回収用カバー180に取り付けた後にストッパ等の調整部によってワイヤやコードの長さを短く調整することで、キャップ34が抜け落ちてしまうのを抑制することができる。また、連結部材35は、キャップ34とホース32の先端部との間を連結するように設けられてもよい。
【0054】
表示部40は、制御装置80の制御下で、ノズル33から自動車5(燃料タンク5a)に供給された燃料の量(給油量)を表示する。例えば、表示部40は、キャノピ部2bの下面に吊り下げられる形で取り付けられる。
【0055】
ベーパ回収経路50は、ノズル33からベーパ吸引チューブ32aを経由して回収されるベーパを気液分離装置60に回収するための経路である。例えば、ベーパ回収経路50は、一端が固定部31の引き込み管を経由してホース32に挿通されるベーパ吸引チューブ32aに接続され、他端が気液分離装置60に接続されるように、建屋本体部2aの内部及びキャノピ部2bの内部に設けられる。
【0056】
気液分離装置60は、ベーパ回収経路50を通じて回収されるベーパを気体成分(燃料のベーパ)と液体成分(液体の燃料)とに分離する。ベーパ回収経路50を通じて回収されるベーパは、その過程において冷却され、その一部又は全部が液化する場合があるからである。気液分離装置60により分離された気体成分(燃料のベーパ)及び液体成分(液体の燃料)のうち、前者は、ベーパ液化回収装置70に送られる。一方、後者(液体の燃料)は、本体部20よりも上流側の燃料供給経路10に戻される。これにより、気液分離装置60は、ベーパ回収経路50を通じて回収される過程で液化したベーパ(液体の燃料)を貯蔵タンク3に戻したり、燃料供給経路10を通じて供給部30に再度供給したりすることができる。
【0057】
ベーパ液化回収装置70は、ベーパ回収経路50及び気液分離装置60を通じて回収されるベーパを液化し、液体の燃料として回収する。ベーパ液化回収装置70により回収された液体の燃料は、本体部20よりも上流側の燃料供給経路10に戻される。これにより、ベーパ液化回収装置70は、ベーパ回収経路50及び気液分離装置60を通じて回収されたベーパを液体の燃料として貯蔵タンク3に戻したり、燃料供給経路10を通じて供給部30に再度供給したりすることができる。
【0058】
制御装置80は、燃料供給システム1の各種構成要素の動作に関する制御(例えば、ポンプの駆動及び停止の制御)を行う。制御装置80は、例えば、建屋本体部2aの内部に設けられる。
【0059】
[キャップの構造]
次に、図6図10を参照して、キャップ34の構造について説明する。
【0060】
<第1例>
図6は、キャップ34の構造の第1例を示す図である。具体的には、図6は、図2のキャップ34及びノズル33の先端部の縦断面図である。
【0061】
図6に示すように、キャップ34は、カバー部34a~34cを含む。
【0062】
カバー部34aは、ノズル33の待機状態において、吐出パイプ136の吐出口136aの上方を覆う。
【0063】
本例では、カバー部34aは、吐出パイプ136の先端の直線状のパイプ部が内部に挿入可能な円筒形状を有し、円筒形状の一端が閉塞される。これにより、作業者が、カバー部34aの一端の開口から吐出パイプ136を挿入させる形でキャップ34を吐出口136aに上から被せることにより、キャップ34は、吐出口136aを上方から覆うことができる。
【0064】
カバー部34b(第1の部位の一例)は、ベーパ回収用カバー180の開口部182の上方を覆う。
【0065】
本例では、カバー部34bは、円筒形状のカバー部34aの開口側の一端において、全周で径方向の外側に向かって広がる、平板状のフランジ形状(鍔形状)を有する。例えば、平板状のカバー部34bの外形(外縁)は、円筒形状のカバー部34aの軸方向で見たときに、ベーパ回収用カバー180の開口部182の外形よりも大きくなるように設定される。
【0066】
カバー部34c(第2の部位の一例)は、カバー部34bとベーパ回収用カバー180との間の隙間を覆う。
【0067】
本例では、カバー部34cは、カバー部34bにおける図中の下面から垂直に下方に延びるように設けられる円筒形状を有する。円筒形状のカバー部34cの外形(外縁)は、円筒形状のカバー部34aの軸方向で見たときに、ベーパ回収用カバー180の開口部182の外形(外縁)よりも小さくなるように設けられる。また、円筒形状のカバー部34cの先端部(図中の下端部)は、カバー部34aに吐出パイプ136が完全に挿入された状態で、ベーパ回収用カバー180の内面に全周で当接するように設定される。これにより、カバー部34cは、カバー部34bとベーパ回収用カバー180との間の隙間を埋めることができる。そのため、カバー部34cは、カバー部34bとベーパ回収用カバー180との間の隙間から雨水や異物がベーパ回収用カバー180の内部に混入してしまうような事態の発生を抑制することができる。また、ノズル33が上向きになっていない場合(ノズル33が下向きや横向きになっている場合)においても、ノズル33の吐出パイプ136の先端から燃料が垂れ落ちるのを抑制することができる。また、キャップ34の円筒形状のカバー部34aが吐出パイプ136の外周を覆うため、吐出パイプ136に設けられた液面検知孔160がカバー部34aによって覆われる。これにより、液面検知孔160から雨水や異物が吐出パイプ136内に混入してしまうことを抑制することができる。
【0068】
<第2例>
図7は、キャップ34の構造の第2例を示す図である。
【0069】
以下、本例では、上述の第1例と同じ或いは対応する構成に同じ符号を付し、上述の第1例と異なる部分を中心に説明を行う。
【0070】
図7に示すように、キャップ34は、可撓性が比較的低く変形しにくい連結部材35によってホース32の先端部に固定される。連結部材35は、例えば、樹脂製である。
【0071】
キャップ34は、カバー部34a,34bを含む。
【0072】
カバー部34a,34bの周方向の一部には、可撓部34dが設けられる。
【0073】
可撓部34dは、カバー部34a,34bとは異なり、可撓性を有する部材で構成される。可撓部34dは、ゴム製である。可撓部34dには、切れ目34eが設けられる。
【0074】
切れ目34eは、カバー部34aの先端部からカバー部34a,34bの接続部を経由してカバー部34bの外周側の端部まで連続して形成される。これにより、作業者は、切れ目34eを起点として可撓部34dを変形させ、可撓部34dが設けられる範囲を開口部として、吐出パイプ136をカバー部34aの内部に押し込む形で、キャップ34をノズル33に取り付けることができる。また、作業者は、切れ目34eを起点として可撓部34dを変形させ、可撓部34dが設けられる範囲を開口部として、吐出パイプ136を外に引き出す形で、キャップ34をノズル33から取り外すことができる。
【0075】
連結部材35は、待機状態のノズル33における吐出パイプ136をカバー部34aに収容可能な位置に保持するように設けられる。また、可撓部34dは、ノズル33を利用した自動車5への燃料供給の作業後に、ノズル33が待機状態に戻る動作の際に吐出パイプ136が可撓部34dの範囲に相当する開口部を通過可能なように設定される。これにより、作業者は、ノズル33を利用した自動車5への燃料供給の作業後に、ノズル33を待機状態に戻す過程において、ノズル33にキャップ34を容易に取り付けることができる。
【0076】
尚、本例では、上述の第1例と同様、キャップ34は、カバー部34cを有してもよい。この場合、カバー部34a~34cに可撓部34dが設けられ、カバー部34aからカバー部34bを経由しカバー部34cに亘る範囲に切れ目34eが設けられる。また、本例では、可撓部34dに相当する範囲が切り欠かれた開口部が設けられてもよい。
【0077】
<第3例>
図8は、キャップ34の構造の第3例を示す図である。
【0078】
以下、本例では、上述の第1例や第2例と同じ或いは対応する構成に同じ符号を付し、上述の第1例や第2例と異なる部分を中心に説明を行う。
【0079】
図8に示すように、キャップ34は、カバー部34a~34cを含む。
【0080】
カバー部34cは、上述の第1例と異なり、カバー部34bの外縁からカバー部34bに垂直に図中の下方に延びるように設けられる。これにより、カバー部34cは、ベーパ回収用カバー180の側方を全周に亘って覆うことができる。そのため、カバー部34cは、カバー部34bとベーパ回収用カバー180との間の隙間から雨水や異物がベーパ回収用カバー180の内部に混入したり、ノズル33の吐出パイプ136の先端から燃料が垂れ落ちたりするのを抑制することができる。
【0081】
尚、ベーパ回収用カバー180の側方を覆うことが可能であれば、カバー部34cは、カバー部34cの外縁ではなく、カバー部34cの外縁よりも内側の下面から下方に延びるように設けられてもよい。
【0082】
<第4例>
図9図10は、キャップ34の構造の第4例を示す図である。具体的には、図9は、本例に係るキャップ34がノズル33に取り付けられた状態を表す斜視図であり、図10は、本例に係るキャップ34の単体の斜視図である。
【0083】
図9に示すように、キャップ34は、待機状態のノズル33の上方及び側方の全体を覆う袋形状を有する。キャップ34は、例えば、皮革製である。
【0084】
キャップ34の側面には、袋形状のキャップ34の内部と外部との間を貫通する孔部34fが設けられる。これにより、キャップ34は、待機状態のノズル33の上下方向の中央部付近から延び出すホース32を孔部34fに通過させるように、ノズル33に取り付けることができる。
【0085】
図10に示すように、孔部34fは、キャップ34の開放端(下端)から離れるように設けられる。キャップ34における孔部34fの開放端側(下側)の部分は、周方向に分離され、周方向に分離される一方と他方との間が連結部34gにより連結される。連結部34gは、例えば、周方向に分離される一方と他方のそれぞれに設けられる面ファスナ34g1,34g2を含む。これにより、作業者は、連結部34gが未連結の状態で、キャップ34をノズル33に上から被せた後に、ホース32の下方で連結部34gを連結させることで、キャップ34をノズル33に取り付けることができる。
【0086】
尚、孔部34fは、袋形状のキャップ34の開放端(下端)と繋がるように切り欠かれていてもよい。
【0087】
[作用]
次に、本実施形態に係る燃料供給装置の作用について説明する。
【0088】
本実施形態では、燃料供給装置は、ホースと、ノズルと、吐出パイプと、カバー部材と、ベーパ回収部と、キャップ部材と、を備える。燃料供給装置は、例えば、上述の燃料供給装置4である。ホースは、例えば、上述のホース32である。ノズルは、例えば、上述のノズル33である。吐出パイプは、例えば、上述の吐出パイプ136である。カバー部材は、例えば、上述のベーパ回収用カバー180である。ベーパ回収部は、例えば、上述のベーパ回収機構170である。キャップ部材は、例えば、上述のキャップ34である。具体的には、ホースは、燃料供給施設の高所から下方に垂れ下がるように設けられ、燃料を供給する。燃料供給施設の高所は、例えば、上述の固定部31である。また、ノズルは、ホースの下方の先端に回動可能に取り付けられ、車両の燃料タンクに燃料を供給する。車両は、例えば、上述の自動車5である。燃料タンクは、例えば、上述の燃料タンク5aである。また、ノズルの吐出パイプの吐出口は、例えば、上述の吐出口136aである。カバー部材は、吐出パイプの周囲に設けられ、吐出パイプが車両における燃料の供給口に差し込まれた際に、供給口を覆う。供給口は、例えば、上述の給油口5cである。また、ベーパ回収部は、吐出パイプから燃料タンクに燃料が吐出される際に、供給口からカバー部材内に流出する燃料のベーパを回収する。そして、キャップ部材は、燃料タンクへの燃料の供給が行われない状態で、カバー部材の開口部を覆うと共に吐出パイプの吐出口を覆う。
【0089】
これにより、燃料供給装置は、キャップ部材によりカバー部材の開口部やパイプの吐出口を覆うことができ、その結果、カバー部材の内部やパイプの内部への雨水や異物等の混入を抑制することができる。そのため、燃料供給装置は、車両に供給される燃料や燃料の供給元の貯蔵タンクの燃料への雨水や異物の混入や吐出パイプの先端からの燃料の垂れ落ちを抑制することができる。
【0090】
また、本実施形態では、キャップ部材は、カバー部材の開口部を覆う第1の部位と、第1の部位からカバー部材側に延びる第2の部位とを有してもよい。第1の部位は、例えば、上述のカバー部34bである。第2の部位は、例えば、上述のカバー部34cである。そして、キャップ部材は、第2の部位の先端部がカバー部材に当接するように配置されてもよい。
【0091】
これにより、燃料供給装置は、第2の部位によって、第1の部位とカバー部材との間の隙間を埋めることができる。そのため、燃料供給装置は、カバー部材の内部への雨水や異物等の混入や吐出パイプの先端からの燃料の垂れ落ちをより適切に抑制することができる。
【0092】
また、本実施形態では、燃料供給装置は、連結部材を備えてもよい。連結部材は、例えば、上述の連結部材35である。具体的には、連結部材は、キャップ部材と、ノズル又はホースとを連結する。
【0093】
これにより、燃料供給装置は、連結部材によって、キャップ部材とノズルやホースとの位置関係を規制することができる。そのため、燃料供給装置は、キャップ部材のノズルへの取り付けやノズルからの取り外しを作業者により容易に行わせることができる。また、燃料供給装置は、キャップ部材の紛失等を抑制することができる。
【0094】
以上、実施形態について詳述したが、本開示はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0095】
1 燃料供給システム
2 建屋
2a 建屋本体部
2b キャノピ部
3 貯蔵タンク
4 燃料供給装置
5 自動車
5a 燃料タンク
5c 給油口
10 燃料供給経路
32 ホース
32a ベーパ吸引チューブ
33 ノズル
34 キャップ
34a,34b,34c カバー部
34d 可撓部
34e 切れ目
34f 孔部
34g 連結部
34g1,34g2 面ファスナ
35 連結部材
40 表示部
50 ベーパ回収経路
134 回転継手
136 吐出パイプ
136a 吐出口
170 ベーパ回収機構
180 ベーパ回収用カバー
182 開口部
200 ベーパ回収室
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10