(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024113534
(43)【公開日】2024-08-22
(54)【発明の名称】コンタクトプローブの製造方法およびコンタクトプローブ
(51)【国際特許分類】
G01R 1/067 20060101AFI20240815BHJP
G01R 1/073 20060101ALI20240815BHJP
【FI】
G01R1/067 C
G01R1/073 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023018596
(22)【出願日】2023-02-09
(71)【出願人】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 佳男
(72)【発明者】
【氏名】高橋 秀志
(72)【発明者】
【氏名】木下 淳
【テーマコード(参考)】
2G011
【Fターム(参考)】
2G011AA04
2G011AA16
2G011AB01
2G011AB03
2G011AB04
2G011AB07
2G011AE22
2G011AF07
(57)【要約】
【課題】効率的に作製することができるコンタクトプローブの製造方法およびコンタクトプローブを提供すること。
【解決手段】本発明に係るコンタクトプローブの製造方法は、板状の材料に対し、接続部を介して基部にそれぞれ連結する複数の本体部母材であって、パイプ部材の本体部を成形するための本体部母材の外形を成形する外形成形工程と、本体部母材に対し、複数の突起部を成形する突起部成形工程と、突起部の突出側が内側となる態様で本体部母材に曲げ加工を施してC字状の前記パイプ部材を成形するカーリング工程と、接続部に接続された状態の前記パイプ部材に、第1および第2プランジャならびにコイルばねを挿入するプローブ組立工程と、パイプ部材と接続部とを切断する接続部切断工程と、を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向の両端で互いに異なる電極とそれぞれ接触して信号を伝送するコンタクトプローブであって、一方の電極と接触する第1プランジャと、他方の電極と接触する第2プランジャと、前記第1および第2プランジャの間に設けられるコイルばねと、前記第1および第2プランジャならびに前記コイルばねが挿通されるパイプ部材とを備えるコンタクトプローブの製造方法において、
板状の材料に対し、接続部を介して基部にそれぞれ連結する複数の本体部母材であって、前記パイプ部材の本体部を成形するための本体部母材の外形を成形する外形成形工程と、
前記本体部母材に対し、複数の突起部を成形する突起部成形工程と、
前記突起部の突出側が内側となる態様で前記本体部母材に曲げ加工を施してC字状の前記パイプ部材を成形するカーリング工程と、
前記接続部に接続された状態の前記パイプ部材に、前記第1および第2プランジャならびに前記コイルばねを挿入するプローブ組立工程と、
前記パイプ部材と前記接続部とを切断する接続部切断工程と、
を含むことを特徴とするコンタクトプローブの製造方法。
【請求項2】
前記カーリング工程前の前記本体部母材における前記接続部に連なる側の端部に潰し加工を施すコイニング工程、
をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載のコンタクトプローブの製造方法。
【請求項3】
前記外形成形工程において、前記本体部母材側の幅が小さい形状をなす前記接続部が成形される、
ことを特徴とする請求項1に記載のコンタクトプローブの製造方法。
【請求項4】
前記外形成形工程前の前記板状の材料に、めっき処理を施すめっき工程、
をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載のコンタクトプローブの製造方法。
【請求項5】
長手方向の両端で互いに異なる電極とそれぞれ接触して信号を伝送するコンタクトプローブであって、
一方の電極と接触する第1の先端部、および該第1の先端部に連なる第1のフランジ部を有する第1プランジャと、
他方の電極と接触する第2の先端部、および該第2の先端部に連なる第2のフランジ部を有する第2プランジャと、
前記第1および第2プランジャの間に設けられるコイルばねと、
前記第1および第2プランジャならびに前記コイルばねが挿通されるパイプ部材と、
を備え、
前記パイプ部材は、板状の部材をC字状に曲げてなる本体部を有し、
前記本体部には、
内部側に向かって突出してなり、前記第1のフランジ部が係止される複数の第1の突起部と、
内部側に向かって突出してなり、前記第2のフランジ部が係止される複数の第2の突起部と、
が形成されることを特徴とするコンタクトプローブ。
【請求項6】
前記パイプ部材は、前記第1および第2プランジャが延出する端部の一部において溶融痕が形成される、
ことを特徴とする請求項5に記載のコンタクトプローブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンタクトプローブの製造方法およびコンタクトプローブに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体集積回路や液晶表示装置などの検査対象物の導通状態検査や動作特性検査を行う際には、検査対象と検査用信号を出力する回路基板を有する信号処理装置との間の電気的な接続を図る導電性のコンタクトプローブが用いられる(例えば、特許文献1を参照)。特許文献1では、板状の部材に曲げ加工を施して筒状に成形し、この成形したパイプ部材に、二つのプランジャおよびコイルばねを挿入してコンタクトプローブとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来、特許文献1のように、接続部によって連結されている板状部材に曲げ加工を施した後、各パイプ部材を接続部から切り離してプランジャおよびコイルばねを挿入していたため、処理が煩雑になり、作業効率が低いという問題があった。特に、コンタクトプローブのようなサイズが小さい部材の組立では、一層作業効率が低下する。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、効率的に作製することができるコンタクトプローブの製造方法およびコンタクトプローブを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係るコンタクトプローブの製造方法は、長手方向の両端で互いに異なる電極とそれぞれ接触して信号を伝送するコンタクトプローブであって、一方の電極と接触する第1プランジャと、他方の電極と接触する第2プランジャと、前記第1および第2プランジャの間に設けられるコイルばねと、前記第1および第2プランジャならびに前記コイルばねが挿通されるパイプ部材とを備えるコンタクトプローブの製造方法において、板状の材料に対し、接続部を介して基部にそれぞれ連結する複数の本体部母材であって、前記パイプ部材の本体部を成形するための本体部母材の外形を成形する外形成形工程と、前記本体部母材に対し、複数の突起部を成形する突起部成形工程と、前記突起部の突出側が内側となる態様で前記本体部母材に曲げ加工を施してC字状の前記パイプ部材を成形するカーリング工程と、前記接続部に接続された状態の前記パイプ部材に、前記第1および第2プランジャならびに前記コイルばねを挿入するプローブ組立工程と、前記パイプ部材と前記接続部とを切断する接続部切断工程と、を含むことを特徴とする。
【0007】
また、本発明に係るコンタクトプローブの製造方法は、上記発明において、前記カーリング工程前の前記本体部母材における前記接続部に連なる側の端部に潰し加工を施すコイニング工程、をさらに含むことを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係るコンタクトプローブの製造方法は、上記発明において、前記外形成形工程において、前記本体部母材側の幅が小さい前記接続部が成形される、ことを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係るコンタクトプローブの製造方法は、上記発明において、前記外形成形工程前の前記板状の材料に、めっき処理を施すめっき工程、をさらに含むことを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係るコンタクトプローブは、長手方向の両端で互いに異なる電極とそれぞれ接触して信号を伝送するコンタクトプローブであって、一方の電極と接触する第1の先端部、および該第1の先端部に連なる第1のフランジ部を有する第1プランジャと、他方の電極と接触する第2の先端部、および該第2の先端部に連なる第2のフランジ部を有する第2プランジャと、前記第1および第2プランジャの間に設けられるコイルばねと、前記第1および第2プランジャならびに前記コイルばねが挿通されるパイプ部材と、を備え、前記パイプ部材は、板状の部材をC字状に曲げてなる本体部を有し、前記本体部には、内部側に向かって突出してなり、前記第1のフランジ部が係止される複数の第1の突起部と、内部側に向かって突出してなり、前記第2のフランジ部が係止される複数の第2の突起部と、が形成されることを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係るコンタクトプローブは、上記発明において、前記パイプ部材は、前記第1および第2プランジャが延出する端部の一部において溶融痕が形成される、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、コンタクトプローブを効率的に作製することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本発明の一実施の形態にかかるプローブユニットの構成を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施の形態にかかるコンタクトプローブの構成を示す部分断面図である。
【
図3】
図3は、本発明の一実施の形態にかかるコンタクトプローブの製造方法を説明するためのフローチャートである。
【
図4】
図4は、製造時における母材の状態を説明するための斜視図である。
【
図5】
図5は、本発明の一実施の形態にかかるコンタクトプローブの製造方法を説明するための図(その1)である。
【
図6】
図6は、本発明の一実施の形態にかかるコンタクトプローブの製造方法を説明するための図(その2)である。
【
図7】
図7は、本発明の一実施の形態にかかるコンタクトプローブの製造方法を説明するための図(その3)である。
【
図8】
図8は、本発明の一実施の形態にかかるコンタクトプローブの製造方法を説明するための図(その4)である。
【
図9】
図9は、本発明の一実施の形態にかかるコンタクトプローブの製造方法を説明するための図(その5)である。
【
図11】
図11は、変形例1にかかるコンタクトプローブの製造方法について説明するための図である。
【
図12】
図12は、変形例2にかかるコンタクトプローブの製造方法を説明するためのフローチャートである。
【
図13】
図13は、変形例2にかかるコンタクトプローブの製造方法を説明するための図(その1)である。
【
図14】
図14は、変形例2にかかるコンタクトプローブの製造方法を説明するための図(その2)である。
【
図15】
図15は、変形例2にかかるコンタクトプローブの製造方法を説明するための図(その3)である。
【
図16】
図16は、変形例3にかかるコンタクトプローブの製造方法を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態を図面と共に詳細に説明する。なお、以下の実施の形態により本発明が限定されるものではない。また、以下の説明において参照する各図は、本発明の内容を理解でき得る程度に形状、大きさ、および位置関係を概略的に示してあるに過ぎず、従って、本発明は各図で例示された形状、大きさ、および位置関係のみに限定されるものではない。
【0015】
(実施の形態)
図1は、本発明の一実施の形態にかかるプローブユニットの構成を示す斜視図である。
図1に示すプローブユニット1は、検査対象物である半導体集積回路100の電気特性検査を行う際に使用する装置であって、半導体集積回路100と半導体集積回路100へ検査用信号を出力する回路基板200との間を電気的に接続する装置である。
【0016】
プローブユニット1は、長手方向の両端で互いに異なる二つの被接触体である半導体集積回路100および回路基板200の電極に接触する導電性のコンタクトプローブ2(以下、単に「プローブ2」という)と、複数のプローブ2を所定のパターンにしたがって収容して保持するプローブホルダ3と、プローブホルダ3の周囲に設けられ、検査の際に複数のプローブ2と接触する半導体集積回路100の位置ずれが生じるのを抑制するホルダ部材4と、を備える。
【0017】
図2は、本発明の一実施の形態にかかるプローブの構成を示す部分断面図である。プローブ2は、導電性材料を用いて形成され、半導体集積回路100の検査を行なうときにその半導体集積回路100の電極に接触する第1プランジャ21と、検査回路を備えた回路基板200の電極に接触する第2プランジャ22と、第1プランジャ21と第2プランジャ22との間に設けられて第1プランジャ21および第2プランジャ22を互いに離間する方向に付勢するコイルばね23と、第1プランジャ21、第2プランジャ22を進退自在に保持するとともに、コイルばね23を収容するパイプ部材24とを備える。
図2において、プローブ2を構成する第1プランジャ21、第2プランジャ22およびコイルばね23は同一の軸線を有している。すなわち、第1プランジャ21、第2プランジャ22およびコイルばね23は、各々の中心軸が、同一の軸(長手軸)N上に位置している。なお、「同一の軸線」は、部材個別の歪みや製造上の誤差等によるずれを含む。プローブ2は、半導体集積回路100をコンタクトさせた際に、コイルばね23が軸線方向に伸縮することによって半導体集積回路100の電極への衝撃を和らげるとともに、半導体集積回路100および回路基板200に荷重を加える。
【0018】
第1プランジャ21は、先細な先端形状をなし、半導体集積回路100の電極に接触する先端部21aと、先端部21aの基端側に連なり、先端部21aの径と比して小さい径を有する縮径部21bと、縮径部21bを介して先端部21aと反対側に延び、縮径部21bの径と比して大きい径を有するフランジ部21cと、フランジ部21cと比して径が小さく、コイルばね23の一端部が挿入されるボス部21dとを有する。第1プランジャ21は、コイルばね23の伸縮作用によって軸線方向に移動が可能である。以下、第1プランジャ21において、半導体集積回路100側を「先端側」、当該第1プランジャ21の長手軸N方向における先端側と反対側を「基端側」とする。
【0019】
第2プランジャ22は、先細な先端形状をなし、回路基板200の電極に接触する先端部22aと、先端部22aの基端側に連なり、先端部22aの径と比して小さい径を有する縮径部22bと、縮径部22bを介して先端部22aと反対側に延び、縮径部22bの径と比して大きい径を有するフランジ部22cと、フランジ部22cを介して縮径部22bと反対側に延び、フランジ部22cと比して径が小さく、コイルばね23の他端部が挿入されるボス部22dとを有する。第2プランジャ22は、コイルばね23の伸縮作用によって軸線方向に移動が可能であり、コイルばね23の弾性力によって回路基板200方向に付勢され、回路基板200の電極と接触する。
【0020】
本実施の形態において、先端部21aは、先端が複数の爪部を有するクラウン状をなすものとして説明するが、錐状をなすものや、球面状等、他の形状をなすものであってもよい。同様に、先端部22aは、先端が錐状をなすものとして説明するが、複数の爪部を有するクラウン状をなすものや、球面状等、他の形状をなすものであってもよい。
また、本実施の形態では、先端部21aおよびフランジ部21c、ならびに先端部22aおよびフランジ部22cが同じ径である例について説明するが、互いに異なる径であってもよい。
【0021】
コイルばね23は、線材を所定の間隔をもって巻回してなる。コイルばね23は、例えば、一本の導電性の線材を巻回してなる。また、コイルばね23は、第1プランジャ21および第2プランジャ22に対し、軸N方向に対して互いに離れる方向の荷重を加える。
【0022】
パイプ部材24は、板状の部材に曲げ加工を施してなり、周方向の一部が開いた筒状をなす本体部241を有する。このため、パイプ部材24の長手軸方向(貫通方向)からみた形状が、C字状をなす。また、本体部241には、内部に向かって突出する複数の突起部242、243が形成される。突起部242、243は、本体部241を内周側に凹ませてなる。複数の突起部242は、パイプ部材24の一端側に形成される。また、複数の突起部243は、パイプ部材24の他端側に形成される。
【0023】
第1プランジャ21のフランジ部21cは、パイプ部材24の突起部242に当接することにより、プローブ2のプローブホルダ3からの抜止機能を有する。また、第2プランジャ22のフランジ部22cは、パイプ部材24の突起部243に当接することにより、プローブ2のプローブホルダ3からの抜止機能を有する。この際、突起部242は、縮径部21bに位置しており、先端部21aと縮径部21bとがなす段部によって第2プランジャ22側への移動が規制される。突起部243においても同様に、先端部22aと縮径部22bとがなす段部によって第1プランジャ21側への移動が規制される。なお、本実施の形態において、突起部242、243は、例えば、周方向に沿ってそれぞれ四つ配置される例について説明するが、フランジ部に係止して抜け止め効果が得られれば、形成数や配置についてはこれに限らない。
【0024】
プローブホルダ3は、樹脂、マシナブルセラミック、シリコンなどの絶縁性材料を用いて形成される。プローブホルダ3には、複数のプローブ2を収容するためのホルダ孔が形成される。ホルダ孔の形成位置は、半導体集積回路100の配線パターンに応じて定められる。
【0025】
半導体集積回路100の検査時には、半導体集積回路100および回路基板200からの接触荷重により、コイルばね23は長手方向に沿って圧縮された状態となる。検査時に回路基板200から半導体集積回路100に供給される検査用信号は、回路基板200の電極からプローブ2の第2プランジャ22、パイプ部材24(またはコイルばね23)、第1プランジャ21を経由して半導体集積回路100の接続用電極へ到達する。
【0026】
続いて、プローブ2の製造方法について、
図3~
図10を参照して説明する。
図3は、本発明の一実施の形態にかかるコンタクトプローブの製造方法を説明するためのフローチャートである。
図4は、製造時におけるパイプ部材の状態を説明するための斜視図である。
図5~
図9は、本発明の一実施の形態にかかるコンタクトプローブの製造方法を説明するための図である。
図10は、
図9に示すA-A線の部分断面図である。なお、
図4では、図中右側から順に、各工程におけるパイプ部材の状態を示している。また、
図7は、
図6の突起部242を、XZ平面を切断面とする平面で切断した場合の断面を示す。
【0027】
プローブ作製処理では、まず、板状の材料を打ち抜いてパイプ部材24の本体部241となる本体部母材300の外形を成形する(ステップS101:外周抜き工程(外形成形工程))。この際、複数の本体部母材300が、互いに連結された状態となるように成形される。具体的には、基部310に対し、各本体部母材300が、接続部311によってそれぞれ接続される(
図4、5参照)。この際、接続部311は、本体部母材300の一端側と、その反対側の端部に設けられる。なお、基部310が本体部母材300を支持できれば、一方のみに接続部311が設けられる構成としてもよいし、配列方向で隣り合う本体部母材300で互いに異なる端部側に接続部311が設けられる構成としてもよい。
【0028】
その後、本体部母材300の一部を凹ませて、突起部(
図4では突起部242のみ図示)を成形する(ステップS102:抜止成形工程(突起部成形工程))。本実施の形態では、本体部母材300の一端側に四つの突起部242、他端側に四つの突起部243が形成される(
図6、7参照)。この抜止成形工程では、互いに突出方向が同じ複数の突起部242、243が形成される。
なお、突起部242、243は、第1プランジャ21および第2プランジャ22に係止して抜止できる形状であればよく、例えば
図6および
図7に示すような、突出基端の形状が円状をなすもののほか、楕円状、矩形状、台形状、三角状等をなすものとしてもよい。
また、ステップS102は、ステップS101よりも前に実施してもよい。
【0029】
そして、本体部母材300に曲げ加工を施して、本体部母材300を筒状に成形する(ステップS103:カーリング工程)。この際、突起部242、243の突出側の面が内面となるように曲げ加工が施され、筒の貫通方向から見た形状が、周回方向端部同士が所定の距離をもって離間しているC字状をなす。カーリング工程では、例えば、凹面を有する部材と、凸面を有する部材とによって本体部母材300を挟み込むことによって本体部母材300に曲げ加工を施す(
図8参照)。これにより、本体部母材300が筒状に成形され、接続部311が連結した本体部241に相当する構成となる。なお、カーリング工程によって、本体部母材300は、周回方向の一部において、貫通方向に沿って延びる開口部S
1が形成される。この開口部S
1の形成によって、端部同士を当接させた閉塞した筒形状を成形する場合と比して、カーリングに求める精度を低減することができる。
【0030】
ステップS103において、筒状の本体部母材300が成形されると、当該本体部母材300に第1プランジャ21、第2プランジャ22およびコイルばね23を挿入し、プローブ2の組み立てを行う(ステップS104:プローブ組立工程)。この際、各本体部母材300は接続部311に接続された状態であり、基部310によって互いに連結した状態のまま、各本体部母材300に第1プランジャ21、第2プランジャ22およびコイルばね23が挿入される(
図9、10参照)。
なお、開口部S
1の形成によって、本体部母材300がプランジャ挿入時に拡径し易くなり、容易に挿入できる。
また、本実施の形態では、
図9に示すように、第1プランジャ21、第2プランジャ22およびコイルばね23を同一の方向(
図9に示す矢印の方向)から挿入する例について示しているが、逆方向から挿入してもよいし、一部の部材を他の部材とは異なる方向から挿入してもよい。例えば、第1プランジャ21を
図9の右方向から挿入し、第2プランジャ22およびコイルばね23を
図9の左方向から挿入してもよい。また、一方のプランジャが突起部に係止して本体部母材300(パイプ部材24)に対して摺動しないようにしてもよい。この場合、例えば係止する側のプランジャに、突起部に係止する凹部を形成してもよい。
【0031】
その後、各本体部母材300を連結している接続部をそれぞれ切断することによって、第1プランジャ21、第2プランジャ22、コイルばね23およびパイプ部材24を備えるプローブ2が作製される(ステップS105:接続部切断工程)。
この際の切断方法としては、レーザーを用いた切断方法や、折り曲げによって切断する方法が挙げられる。切断部分にバリの発生を抑制するという観点においては、レーザー切断を採用することが好ましい。また、レーザー切断では、照射方向や焦点距離を調節することによってプランジャへの熱影響を回避させることができる。この際、本体部母材300とプランジャとの間に隙間があれば、当該隙間に断熱材等を配設してもよい。レーザーによって切断した際は、パイプ部材24の第1プランジャ21および第2プランジャ22がそれぞれ延出する側の端部の一部において溶融痕が形成される。
【0032】
以上説明した実施の形態では、複数の本体部母材300を基部310および接続部311によって連結した状態で第1プランジャ21、第2プランジャ22およびコイルばね23を組み付け、その後接続部311を切断して複数のプローブ2を作製するようにした。本実施の形態によれば、基部310(接続部311)によって筒状の本体部母材300を規制した状態で第1プランジャ21、第2プランジャ22およびコイルばね23を組み付けるため、パイプ部材24(本体部母材300)の取扱い性が煩雑になることを抑制しつつ、プランジャおよびコイルばねが組付けられ、その結果、高い作業効率で作製することができる。
【0033】
(変形例1)
次に、本実施の形態の変形例1について、
図11を参照して説明する。
図11は、変形例1にかかるコンタクトプローブの製造方法について説明するための図である。変形例1は、実施の形態にかかる接続部311の構成を変えた以外は、上述した実施の形態の構成と同じである。上述した実施の形態と同じ構成には、同じ符号を付す。
【0034】
変形例1にかかる接続部311Aは、基部310から延びる第1接続部311aと、第1接続部311aの基部310側と反対側から延び、本体部母材300に接続する第2接続部311bとを有する。
【0035】
第1接続部311aにおける、基部310の長手方向の長さ(幅)は、第2接続部311bの同一方向の長さ(幅)よりも大きい。すなわち、接続部311Aは、本体部母材300側が、細い段付き形状をなしている。このため、本体部母材300を接続部311Aから切断する際に、切断に要する荷重および時間を削減することができる。
なお、本変形例1では、第1接続部311aと第2接続部311bとによって段部が形成される段付き形状をなす例を挙げているが、第1接続部311aと第2接続部311bとの接続部分において、本体部母材300に行くにしたがって連続的に幅が小さくなるテーパ形状をなすものとしてもよいし、接続部分が弧状をなすものとしてもよい。
【0036】
以上説明した変形例1では、実施の形態と同様に、複数の本体部母材300を基部310および接続部311Aによって連結した状態で第1プランジャ21、第2プランジャ22およびコイルばね23を組み付け、その後接続部311を切断して複数のプローブ2を作製するようにした。本変形例1によれば、基部310(接続部311A)によって本体部母材300を規制した状態で第1プランジャ21、第2プランジャ22およびコイルばね23を組み付けるため、パイプ部材24(本体部母材300)の取扱い性が煩雑になることを抑制しつつ、プランジャおよびコイルばねが組付けられ、その結果、高い作業効率で作製することができる。
【0037】
また、変形例1では、接続部311Aが、本体部母材300側が細くなる段付き形状をなしているため、切断位置における接続部311Aの強度が、接続部311の形状と比して脆弱化され、小さな荷重、または短時間で切断処理を施すことができる。変形例1にかかる接続部311Aの構成は、特に、折り曲げによって切断する際に効果的である。
【0038】
(変形例2)
次に、本実施の形態の変形例2について、
図12~
図15を参照して説明する。変形例2は、上述した実施の形態の製造方法に対し、コイニング工程をさらに含む。なお、上述した実施の形態と同じ構成には、同じ符号を付す。
【0039】
図12は、変形例2にかかるコンタクトプローブの製造方法を説明するためのフローチャートである。
本変形例2にかかるプローブ作製処理では、まず、
図3に示すステップS101、S102と同様にして、板状の材料を打ち抜いて本体部母材300の外形を成形し、本体部母材300の一部を凹ませて、突起部242、243を成形する(ステップS201、S202)。
【0040】
その後、本体部母材300の端部を成形するコイニング工程を実施する(ステップS203)。
図13~
図15は、変形例2にかかるコンタクトプローブの製造方法を説明するための図である。
図14は、
図13に示すB-B線の断面図である。コイニング工程では、本体部母材300の接続部311と接続する側の端部に対して、端面を滑らかにする処理が施される。例えば、接続部311が連結されていない部分に対し、金型400を当接させて、端部を潰す。
ステップS203は、ステップS202の前に実施してもよい。
【0041】
なお、本体部母材300の接続部311の連結部分にも、コイニングを施してもよい。
図15は、
図13に示すC-C線の断面図である。コイニング工程において、さらに、本体部母材300と接続部311との連結部分を金型400によって凹ませる。これにより、切断後の端部において、本体部母材300と接続部311との接続部分の厚さが薄くなり、切断が容易になるとともに、切断面(本体部241の端面)のバリの発生を抑制することができる。
【0042】
コイニング工程後、ステップS103と同様にして、本体部母材300に曲げ加工を施して、本体部母材300を筒状に成形する(ステップS204:カーリング工程)。ステップS204においてパイプ部材24が成形されると、ステップS104と同様にして、当該本体部母材300に第1プランジャ21、第2プランジャ22およびコイルばね23を挿入し、プローブ2の組み立てを行う(ステップS205:プローブ組立工程)。その後、ステップS105と同様にして、各本体部母材300を連結している接続部311をそれぞれ切断することによって、プローブ2が作製される(ステップS206:接続部切断工程)。
【0043】
以上説明した変形例2では、実施の形態と同様、複数の本体部母材300を基部310および接続部311によって連結した状態で第1プランジャ21、第2プランジャ22およびコイルばね23を組み付け、その後接続部311を切断して複数のプローブ2を作製するようにした。本変形例2によれば、基部310(接続部311)によって本体部母材300を規制した状態で第1プランジャ21、第2プランジャ22およびコイルばね23を組み付けるため、パイプ部材24(本体部母材300)の取扱い性が煩雑になることを抑制しつつ、プランジャおよびコイルばねが組付けられ、その結果、高い作業効率で作製することができる。
【0044】
さらに、変形例2では、コイニングを施すことによってバリの発生が抑制され、端面が滑らかになり、プランジャやコイルばね挿入時の挿入性を向上させることができる。さらに、端面が滑らかになると、パイプ部材24に対するプランジャの摺動性が向上する。
なお、上記の効果を得ることを目的としてコイニング工程を実施する場合、本体部241のプランジャおよびコイルばね挿入側の端部のみにコイニング工程を施せばよい。
【0045】
(変形例3)
次に、本実施の形態の変形例3について、
図16を参照して説明する。変形例3は、上述した実施の形態の製造方法に対し、めっき工程をさらに含む。
図16は、変形例3にかかるコンタクトプローブの製造方法を説明するためのフローチャートである。
【0046】
本変形例3にかかるプローブ作製処理では、まず、外周抜き工程前の材料に対し、めっき処理を施す(ステップS301)。例えば、材料の表面全体にめっき処理を施す。なお、めっき処理は、少なくともパイプ部材24の内周面に相当する面に施されていればよい。めっきとしては、例えば金めっきが挙げられる。
【0047】
その後は、
図3に示すステップS101、S102と同様にして、板状の材料を打ち抜いて本体部母材300の外形を成形し、本体部母材300の一部を凹ませて、突起部242、243を成形する(ステップS302、S303)。そして、ステップS103と同様にして、本体部母材300に曲げ加工を施して、母材を筒状に成形する(ステップS304:カーリング工程)。ステップS304において本体部母材300が成形されると、ステップS104と同様にして、当該本体部母材300に第1プランジャ21、第2プランジャ22およびコイルばね23を挿入し、プローブ2の組み立てを行う(ステップS305:プローブ組立工程)。その後、ステップS105と同様にして、各本体部母材300を連結している接続部311をそれぞれ切断することによって、プローブ2が作製される(ステップS306:接続部切断工程)。
【0048】
以上説明した変形例3では、実施の形態と同様、複数の本体部母材300を基部310および接続部311によって連結した状態で第1プランジャ21、第2プランジャ22およびコイルばね23を組み付け、その後接続部311を切断して複数のプローブ2を作製するようにした。本変形例3によれば、基部310(接続部311)によって本体部母材300を規制した状態で第1プランジャ21、第2プランジャ22およびコイルばね23を組み付けるため、パイプ部材24(本体部母材300)の取扱い性が煩雑になることを抑制しつつ、プランジャおよびコイルばねが組付けられ、その結果、高い作業効率で作製することができる。
【0049】
さらに、変形例3では、外周抜き工程前にめっき処理を施しているため、本体部母材300(本体部241)全体にムラなく均一に被膜が形成され、プランジャとパイプ部材24との間の接触抵抗が低減される。その結果、良好な電気伝導性を有するプローブ2を得ることができる。
【0050】
ここまで、本発明を実施するための形態を説明してきたが、本発明は上述した実施の形態によってのみ限定されるべきものではない。また、実施の形態において説明したプローブ2の構成はあくまでも一例に過ぎず、従来知られているさまざまな種類のプローブを適用することが可能である。例えば、上述したようなプランジャとコイルばねとで構成されるものに限らず、第1プランジャにおいてボス部を有しない構成としてもよいし、コイルばねに代えて他の弾性体を採用してもよい。
【0051】
また、上述した工程のほか、カーリング工程後に、洗浄工程を実施してもよい。さらに、カーリング工程後または洗浄工程後に、処理位置が変わる場合等において、カーリングまたは洗浄工程後の材料をリールで巻き取って移動させ、移動後の位置において材料をリールから解放する工程を含んでもよい。
【0052】
このように、本発明はここでは記載していない様々な実施の形態等を含みうるものであり、特許請求の範囲により特定される技術的思想を逸脱しない範囲内において種々の設計変更等を施すことが可能である。
【0053】
以上説明したように、本発明に係るコンタクトプローブの製造方法およびコンタクトプローブは、コンタクトプローブを効率的に作製するのに好適である。
【符号の説明】
【0054】
1 プローブユニット
2 コンタクトプローブ(プローブ)
3 プローブホルダ
21 第1プランジャ
21a、22a 先端部
21b、22b 縮径部
21c、22c フランジ部
21d、22d ボス部
22 第2プランジャ
23 コイルばね
24 パイプ部材
241 本体部
242、243 突起部
100 半導体集積回路
200 回路基板
300 本体部母材
310 基部
311 接続部