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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024113535
(43)【公開日】2024-08-22
(54)【発明の名称】マーキングペン
(51)【国際特許分類】
   B43K 8/02 20060101AFI20240815BHJP
【FI】
B43K8/02 150
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023018600
(22)【出願日】2023-02-09
(71)【出願人】
【識別番号】000005957
【氏名又は名称】三菱鉛筆株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112335
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 英介
(74)【代理人】
【識別番号】100101144
【弁理士】
【氏名又は名称】神田 正義
(74)【代理人】
【識別番号】100101694
【弁理士】
【氏名又は名称】宮尾 明茂
(74)【代理人】
【識別番号】100124774
【弁理士】
【氏名又は名称】馬場 信幸
(72)【発明者】
【氏名】福本 剛生
(72)【発明者】
【氏名】大本 慶
【テーマコード(参考)】
2C350
【Fターム(参考)】
2C350GA04
2C350HA15
2C350HC01
(57)【要約】
【課題】 筆記方向のしなりと筆記荷重に対してしなり力を制御できるマーキングペンを提供する。
【解決手段】 軸筒内にインクを収容し、前記軸筒先端のペン体にインク誘導芯を介して前記インクを供給するマーキングペンであって、前記ペン体を保持するホルダー部を前記軸筒の先端部に備え、ホルダー部とペン体の曲げ弾性率は1~100Paかつホルダー部の曲げ弾性率がペン芯の曲げ弾性率よりも高いことを特徴とするマーキングペン。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸筒内にインクを収容し、前記軸筒先端のペン体にインク誘導芯を介して前記インクを供給するマーキングペンであって、
前記ペン体を保持するペン芯とホルダー部を前記軸筒の先端部に備え、ペン芯とホルダー部との曲げ弾性率の合計が5~10MPaであることを特徴とするマーキングペン。
【請求項2】
前記ペン芯の外周面と前記ホルダー部の内周面との間にクリアランスを形成したことを特徴とする請求項1に記載のマーキングペン。
【請求項3】
前記ホルダー部のペン体保持部より後方かつ前記軸筒先端より前方の前記ホルダー部側壁に、径方向外方及び径方向内方に開口する複数の切り欠きが形成され、
前記ホルダー部の前記切り欠き相互間に鍔部が形成され、
前記ホルダー部の前記鍔部相互間は、連結部によって連結されることを特徴とする請求項1または2に記載のマーキングペン。
【請求項4】
複数の切り欠きが軸方向に異なる位置に形成されていることを特徴とする請求項3に記載のマーキングペン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸筒内のインクを軸筒先端のペン体に供給するマーキングペンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ペン体を備えたマーキングペンに関し、限られた外形寸法で描線幅を太くし、塗布角度による描線幅変化が少ないペン体を備えたものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。このマーキングペンはペン芯の材質などを開示しており、ペン芯のみの強度によって接触面積を一定化させるようにしたものである。
【0003】
マーキングペンにおいて、ホルダーに柔軟性を持たせてペン体がしなる(径方向にしなって曲がる)ようにした筆記具やマーキングペンが種々に提案されている(特許文献2、特許文献3参照)。
【0004】
また、先端にボールを設けたボールペンチップ内に中継芯を内装し、ボールペンチップに窓穴を設けて筆記荷重で軸に対して一定方向に曲がるように弾性変形可能な構造のボールペンが提案されている(特許文献4参照)。
【0005】
また、筆記荷重で軸方向に伸長するペン先のマーキングペンが提案されている(特許文献5参照)。特許文献5のマーキングペンは、筆記部は、筆記荷重で前後動するが、しなり難い構造になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2019-14117号公報
【特許文献2】特開2018-103429号公報
【特許文献3】特開2018-103428号公報
【特許文献4】実公昭59-016227号公報
【特許文献5】特開2018-183988号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、線幅をある程度制御して筆記できるマーキングペンが要望されている。そのためには、線幅を縦と横で変わる文字を筆記する際に、ペン先のしなりが制御でき、かつ、軸方向への前後動(撓み)が制御できるマーキングペンが必要である。
【0008】
しかしながら、前述の特許文献1の塗布具用ペン先は引き線幅を太くできるが、ペン先にしなりを付けられず線幅を変化させにくいものであった。
【0009】
特許文献2、3のマーキングペンは、ペン先にしなりを付けられるが、筆記荷重に対してしなり力(筆記荷重に対して曲がらないように反発する力で生じるこし)を制御しにくいものであった。特許文献4のボールペンは軸方向への撓みが困難な構造である。特許文献5記載マーキングペンは荷重方向には撓むがしなり難いものである。
【0010】
本発明は、斯かる実情に鑑み、筆記方向のしなりと筆記荷重に対してしなり力を制御できるマーキングペンを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、軸筒内にインクを収容し、前記軸筒先端のペン体にインク誘導芯を介して前記インクを供給するマーキングペンであって、
前記ペン体を保持するホルダー部を前記軸筒の先端部に備え、ペン芯とホルダー部とペン体の曲げ弾性率の合計が5~10MPaであることを特徴とするマーキングペンである。曲げ弾性率を5MPa未満とすると曲がりやすくなることで曲がりすぎてペン芯を破損しやすくなったりしなり力の制御が困難となる。曲げ弾性率を10MPa以上とすると、曲がりにくくなり筆記方向のしなりを得られなくなる。また、ホルダー部の曲げ弾性率がペン芯の曲げ弾性率よりも低く形成することでペン芯の変形より先にホルダー部が変形するため、しなり力を容易に制御しやすくなる。
【0012】
本発明において、前記ペン芯の外周面と前記ホルダー部の内周面との間にクリアランスを形成したことが好適である。
【0013】
また、本発明において、前記ホルダー部のペン体保持部より後方かつ前記軸筒先端より前方の前記ホルダー部側壁に、径方向外方及び径方向内方に開口する複数の切り欠きが形成され、
前記ホルダー部の前記切り欠き相互間に鍔部が形成され、
前記ホルダー部の前記鍔部相互間は、連結部によって連結されることが好適である。
【0014】
また、本発明において、複数の切り欠きが軸方向に異なる位置に形成されていることが好適である。
【発明の効果】
【0015】
本発明のマーキングペンによれば、ペン体を保持するホルダー部を軸筒の先端部に備え、ホルダー部とペン体の曲げ弾性率は1~100Paかつホルダー部の曲げ弾性率がペン芯の曲げ弾性率よりも高いこととしたので、ペン体のしなりと軸方向への撓みを制御できるようにして所望の筆記を可能にするという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の第1実施形態に係るマーキングペンの全体説明図であって、(a)が正面図、(b)が縦断面図、(c)が(a)から軸中心に90度回転させた別の正面図、(d)が(c)における縦断面である。
図2】第1実施形態に係るマーキングペンの説明図であって、(a)が全体の正面図、(b)が全体の縦断面図、(c)がマーキングペンの先端部の拡大図、(d)が(c)の縦断面である。
図3】第1実施形態に係るマーキングペンの先端部の斜視説明図である。
図4】第1実施形態に係るマーキングペンの軸筒の部品図であって、(a)が前方からの視図、(b)が前方からの斜視図、(c)が正面図、(d)が縦断面、(e)が後方からの視図である。
図5】第1実施形態に係るマーキングペンのホルダー部(しなり部材)の部品図であって、(a)が前方からの斜視図、(b)が前方からの視図、(c)が(a)から軸中心に90度回転させた別の前方からの斜視図、(d)が正面図、(e)が(b)のE-Eに沿う縦断面図、(f)が(d)から軸中心に90度回転させた別の正面図、(g)が(b)のG-G線に沿う縦断面図、(h)が後方からの斜視図、(i)が後方からの視図、(j)が(h)から軸中心に90度回転させた別の後方からの斜視図である。
図6】本発明の第2実施形態に係るマーキングペンの全体説明図であって、(a)が正面図、(b)が縦断面図、(c)が(a)から軸中心に90度回転させた別の正面図、(d)が(c)における縦断面である。
図7】第2実施形態に係るマーキングペンの説明図であって、(a)が全体の正面図、(b)が全体の縦断面図、(c)がマーキングペンの先端部の拡大図、(d)が(c)の縦断面である。
図8】第2実施形態に係るマーキングペンの先端部の斜視説明図である。
図9】第2実施形態に係るマーキングペンのホルダー部の部品図であって、(a)が前方からの斜視図、(b)が前方からの視図、(c)が正面図、(d)が(b)のD-D線に沿う縦断面図、(e)が(c)から軸中心に90度回転させた別の正面図、(f)が(b)のF-F線に沿う縦断面図、(g)が後方からの斜視図、(h)が後方からの視図である。
図10】本発明の第3実施形態に係るマーキングペンの全体説明図であって、(a)が正面図、(b)が縦断面図、(c)が(a)から軸中心に90度回転させた別の正面図、(d)が(c)における縦断面、(e)が筆記部の拡大図、(f)が(e)の縦断面図である。
図11】本発明の第4実施形態に係るマーキングペンの全体説明図であって、(a)が正面図、(b)が縦断面図、(c)が(a)から軸中心に90度回転させた別の正面図、(d)が(c)における縦断面、(e)が筆記部の拡大図、(f)が(e)の縦断面図である。
図12】本発明の第5実施形態に係るマーキングペンの全体説明図であって、(a)が正面図、(b)が縦断面図、(c)が(a)から軸中心に90度回転させた別の正面図、(d)が(c)における縦断面、(e)が筆記部の拡大図、(f)が(e)の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照して説明する。
【0018】
図1図5は、本発明の第1実施形態に係るマーキングペンの説明図である。図1図3は全体及び部分を説明図、図4は軸筒の部品図、図5はホルダー部の部品図である。
【0019】
第1実施形態に係るマーキングペンは、図1に示すように、軸筒10内にインクを収容し、軸筒10先端のペン体12にインク誘導芯14を介してインクを供給するマーキングペンであって、ペン体12を保持するホルダー部16を軸筒10の先端部10aに備え、ホルダー部16とペン体12及びインク誘導芯14(「ペン芯」に相当)の曲げ弾性率は1~100Paかつホルダー部16の曲げ弾性率Ehがペン体12及びインク誘導芯14を備えたペン芯の曲げ弾性率Epよりも高いマーキングペンである。
図1図3に示すマーキングペンは、キャップの図示を省略している。
【0020】
〔軸筒10〕
図1図2図4に示すように、軸筒10は先端(先端部10a)から中央部10bを経由して後端(後端部10c)にかけて中空の概略筒状である。軸筒10の先端部10aが本体部である中央部10bに比較して外径及び内径が細径になっている。先端部10aは、外径が中央部10bに比較して二段階で細径になり、中央部10bに近い側の外周にキャップを外嵌する際に係止するためのリブ10dが環状に突出して形成されている。
【0021】
図2図4に示すように、軸筒10は、先端部10aの内部が中央部10bの内部収容空間よりも細径になっている。先端部10aの内部において、先端開口10a1よりも後方側であって、中央部10bに隣接する部分に通過部10a2が筒状に後方に延設されている。通過部10a2はその内部通路を通して中央部10内にインク誘導芯14を挿通させる。
【0022】
通過部10a2の内部通路は、先端開口10a1よりも細径に絞り込まれた通路になっており、この内部通路の内周面に対してインク誘導芯14がクリアランスを開けて挿通されて配置される。
【0023】
通過部10a2の外周と軸筒10内周との間に、複数(実施形態では6箇所)の板状の支持リブ10a3が通過部10a2から放射状に形成される。この支持リブ10a3は通過部10a2の後端よりも後方に延在して形成され、支持リブ10a3によって通過部10a2が軸筒10に支持される。支持リブ10a3の後端は、中央部10bの内部に面する部分であって、中綿18の先端が突き当り中綿18の位置決めをする。
【0024】
軸筒10の中央部10bの内周面には、内部に突出するリブ10b1が複数(実施形態では3箇所)、前記支持リブ10a3のうちのいくつかから軸方向に沿って中ほどまで形成されている。リブ10b1は、中央部10b内に収容する中綿18をその外周から挟み付けて径方向への動きを規制する(図1参照)。
【0025】
〔栓体20〕
軸筒10の後端部10cは栓体20が嵌め込まれて塞がれている。栓体20は外周にフランジ20aが形成され、フランジ20aが後端部10cの後端面に突き当たり位置決めがされる(図2参照)。
【0026】
〔中綿18〕
中綿18は、インクを貯留する円筒形状のポリエステル繊維素材で構成され、軸筒10の内部に収容されている。
【0027】
また、図2に示すように、中綿18は、軸筒10における支持リブ10a3の後端に、栓体20の先端とで先後が挟み付けられて固定される。中綿18の周囲がリブ10b1で支持される。
【0028】
中綿18に収容するインクは、電子供与性呈色性有機化合物、電子受容性化合物、電子供与性呈色性有機化合物成分及び電子受容性化合物成分による電子授受反応を特定温度域において可逆的に生起させる反応媒体からなる可逆熱変色性組成物を内包し、体積基準平均粒子径Xが0.1~1.5μmであり、前記マイクロカプセル顔料の数平均膜厚Yが0.02~0.2μmである熱変色性マイクロカプセル顔料と、ビヒクルとを含んだ熱変色性インクとすることが好適である。熱変色性インクとは、温度により変色及び複色を可能とするインクであり、例えば発色温度が-15℃、変色温度が55℃であり、黒色の状態から、摩擦熱等により加熱することにより黒色から無色に可逆的に変化することをいう。
電子供与性呈色性有機化合物は色を決める成分であり、顕色剤である電子受容性化合物成分に電子を供与し、発色する化合物である。電子供与性呈色性有機化合物としては、フルオラン化合物およびフタリド化合物が好ましい。
電子受容性化合物は、電子供与性呈色性有機化合物成分から電子を受け取り、顕色剤として機能する化合物である。電子受容性化合物としては、活性プロトンを有する化合物群から選択される化合物が好ましい。活性プロトンを有する化合物群でも、より有効に熱変色特性を発現させることができることから、フェノール性水酸基を有する化合物が好ましい。
電子供与性呈色性有機化合物成分及び電子受容性化合物成分による電子授受反応を特定温度域において可逆的に生起させる反応媒体は、アルコール類、エステル類、ケトン類、エーテル類、酸アミド類が挙げられる。
前記の成分比は、電子供与性呈色性有機化合物成分1に対して、電子受容性化合物成分0.5~20質量部、電子供与性呈色性有機化合物成分及び電子受容性化合物成分による電子授受反応を特定温度域において可逆的に生起させる反応媒体成分10~100質量部の範囲が好適である。
熱変色性マイクロカプセル顔料は、体積基準平均粒子径Xが、0.1~1.5μmである。マイクロカプセル顔料の平均粒子径が0.1μm未満では、一般的に発色濃度が低下する傾向にあり、1.5μmより大きいとマイクロカプセル顔料の沈降やインク吐出性低下の原因となることがある。体積基準平均粒子径Xが上記範囲内にあることで、発色濃度を維持しながら、インクの分散安定性とインク吐出性が改良できる。また、インク組成物のペン先からの吐出性および吐出安定性を維持するために、粗大なマイクロカプセル顔料の含有量が少ないことが好適であり、粒子径が5μm以上のマイクロカプセル顔料の含有率が、マイクロカプセル顔料の総体積を基準として1体積%以下であることが好ましい。また、数平均膜厚Yが0.02~0.2μmであることがより好ましい。数平均膜厚Yが適当な範囲内にあることによって、耐久性と発色濃度のバランスに優れた可逆熱変色性マイクロカプセル顔料を得ることができる。なお平均粒子径の測定方法として、体積基準平均粒子径Xは、画像解析法によりキャリブレーションを行ったレーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置(LA-300(商品名、株式会社堀場製作所製))を用いる。数平均膜厚Yは、可逆熱変色性組成物が発色状態のマイクロカプセル顔料の水分散体を凍結して、マイクロカプセル顔料の異形化をなくしたもの抽出し、ミクロトームにより、厚さ50μmの薄片試料を作製し、透過型電子顕微鏡(HT7700(商品名、株式会社日立ハイテク製))により、10個を選択した観察画像を解析して測定する。また、体積基準平均粒子径Xと数平均膜厚Yの比Y/Xは0.02以上0.2未満であることで、十分な筆跡濃度とマイクロカプセル顔料の耐久性が両立できるので好適である。
前記マイクロカプセル顔料を用い、ビヒクル(水または有機溶剤、又は両方の組み合わせにより各種添加剤を含む)により筆記用のインクとすることができる。ビヒクルは公知の一般的な材料により製造することができるが、水性ビヒクルが好適である。
インクの粘度は、20℃の環境下において、回転数30rpmの条件で測定した場合、1~20mPa・sの範囲であることで、インク組成物の流動性とマイクロカプセル顔料の分散安定性を向上させることができる。
また、インクの表面張力は、20℃の環境下において、35~45mN/mの範囲とすることにより、筆記線の滲みや、紙面への裏抜けを抑制することが容易であると共に、紙面に対する濡れ性を向上させることができる。表面張力は、表面張力計測器「DY-300」(協和界面科学株式会社製)を用いて、インクを20℃の環境下に置いて、ガラスプレートを用いた垂直平板法により測定することができる。また、pHは3~8の範囲であることで、インクに含有されるマイクロカプセル顔料の低温域での凝集または沈降を抑制することができる。pHは、pHメーター「IM-40S」(商品名、東亜ディーケーケー株式会社製)を用いて、インクを20℃の環境下に置いて、20℃の環境下に置いて測定することができる。
【0029】
〔ペン体12及びインク誘導芯14〕
図1図2に示すように、ペン体12は、インク誘導芯14の先端に一体に設けられたものである。ペン体12及びインク誘導芯14は、全体がポリアセタール樹脂の押出成形芯、またはポリエチレンテレフタレート樹脂の繊維束芯によって形成される。先端側のペン体12がインク誘導芯14に比較して太径であり、各形状がほぼ円筒形状をなしている。
【0030】
図2に示すように、ペン体12の先端においては、筆記先端部12aがペン体12の中心軸に対して斜めの稜線状に形成される。また、筆記先端部12aの両側に2つの斜面12b、12bが屋根状に形成されており、斜面12b、12b同士の間隔の設定によって筆記先端部12aが所定の細さになるように形成されている。
【0031】
ペン体12からインク誘導芯14にかけての外周面は、軸心に向けて段部12cが形成されペン体12の外径が細径になっている。インク誘導芯14は、段部12cから後方に延びている。延びたインク誘導芯14の後端部は、中綿18の先端部内に挿入されているので、中綿18内に含侵されたインクがインク誘導芯14に芯誘導される構造になっている。
【0032】
ペン体12及びインク誘導芯14は、前記に記載した以外の押出成形芯、繊維束芯やその他焼結芯等によるもので構成されていてもよい。
【0033】
〔ホルダー部16〕
図2に示すように、ホルダー部16は、中空部16a内にペン体12及びインク誘導芯14を装着している。ホルダー部16は、その曲げ弾性率が1~100Paであり、かつ、ペン体12及びインク誘導芯14の曲げ弾性率よりも高い。
【0034】
ホルダー部16の先端部にペン体12を嵌着するペン体保持部22より後方かつ前記軸筒10の先端部10aより前方のホルダー部16の側壁に、径方向外方及び径方向内方に開口する複数の切り欠き16b、16bが形成される。
【0035】
また、ホルダー部16の前記切り欠き16b、16b相互間にフランジ(鍔部)16fが形成され、ホルダー部16の鍔部16f相互間は、梁(連結部)16c、16cによって連結されている。複数の切り欠き16b、16bが軸方向に異なる位置に形成されている。
【0036】
詳しくは、ホルダー部16は、先端部において、外面が概略先細く、内部が中空部となる、全体的に概略中空筒状であり、外周から内周の中空部16aに貫通する切り欠き16b、16bがペン体保持部(ペン芯保持部)22の後方に形成される。切り欠き16b、16b間は弾性変形可能な斜めの梁16c、16cになっている(図5参照)。ペン体12への筆記荷重によって梁16c、16cが弾性変形可能であるので、ホルダー部16は、梁16c、16cによってスプリングの機能を奏するしなり部を有する構成になっている。
【0037】
ホルダー部16の中空部16aは、先端側のペン体保持部22の内径よりも中央部から後端部にかけての内径Eが小径になっており、ペン体保持部22から中央部にかけて段状部16eが形成されている。ホルダー部16の先端のペン体保持部22の内周にペン体12を圧入して外周から緊密に保持し、かつ、段状部16eに段部12cを係止してペン体12の位置決めをしている。したがって、位置決め及び固定を確実にしている。
【0038】
ホルダー部16の中空部16aは、中央部から後端部にかけての内径Eが、インク誘導芯14の外径Dよりも大径になっており、クリアランスσ1が形成されている。
【0039】
すなわち、ペン体12の外周面とホルダー部16の内周面との間にクリアランスσ1を形成したものである。
【0040】
なお、図5に示すように、複数の切り欠き16b、16bが軸方向に異なる位置に形成されている。つまり、切り欠き16b、16bは互いに逆の斜め方向になっており、軸方向に見て異なる位置になる。
【0041】
また、ホルダー部16の中央部の外周面にはフランジ16fが形成されており、軸筒10の先端部10aに突き当たり、潜り込みを防止している。ホルダー部16の後端部16gの外周面には通気溝16g1が形成されており、後端部が先端部10aに嵌入されているときに、通気溝16g1を介して気液置換可能になっている。先端開口10a1内の凹凸部(図4参照)に後端部16gの凹凸部が係合・嵌着して抜け止めの構造になっている。
【0042】
実施形態のマーキングペンにおいては、通過部10a2内周面とインク誘導芯14との間には、クリアランスσ2が設けられている。
【0043】
マーキングペンは、ペン体12への筆記圧によってホルダー部16の梁16cの形成箇所が曲がってしなる構造になっている。インク誘導芯14も曲がっても中空部16a内との間のクリアランスσ1と、通過部10a2内との間のクリアランスσ2によって、曲がりの余裕となる空間がとられているので当たりにくく、つまりインク誘導芯14が曲がり易い構造、つまりしなり易い構造になっている。
【0044】
したがって、筆記に際してペン体12とホルダー部16がしなり易くなり、筆記方向のしなりと、筆記荷重方向へのしなり力を分けて設定することが可能になり、多彩な文字の筆記に対応できる。実施形態の場合、ホルダー部16とペン芯(ペン体12及びインク誘導芯14との一体物)の曲げ弾性率は1~100Paかつホルダー部16の曲げ弾性率がペン芯の曲げ弾性率よりも高いこととしたので、多彩な文字の筆記に対応できる。また、特に、アラビア文字のように横線と縦線との太さを変える筆記に適する。全方位同等のしなりを目的としており、軸方向に撓むため、クッション性も期待できる。
【0045】
次に第2実施形態に係るマーキングペンについて説明する。
【0046】
図6図8は全体及び部分の説明図、図9はホルダー部の部品図である。前記第1実施形態に係るマーキングペンと同一部分に同一の符号を付している。
【0047】
第2実施形態に係るマーキングペンは、ホルダー部26とペン体12及びインク誘導芯14の曲げ弾性率は1~100Paかつホルダー部26の曲げ弾性率がペン体12及びインク誘導芯14の曲げ弾性率よりも高いこととすると共に、ホルダー部26のペン体保持部22より後方かつ前記軸筒10先端より前方の前記ホルダー部26側壁に、径方向外方及び径方向内方に開口する複数の切り欠き26b、26bが形成されたものである。
【0048】
切り欠き26b、26bはホルダー部26の中心軸を挟んで対向して形成されている。ホルダー部26は、先端部において、外面が概略先細く、内部が中空部となる、全体的に概略中空筒状であり、外周から内周の中空部26aに貫通する切り欠き26b、26bがペン体保持部22の後方に形成される。切り欠き26b、26b間は弾性変形可能な直線的な梁26c、26cになっている(図7参照)。ペン体12への筆記荷重によって梁26c、26cが弾性変形可能であるので、ホルダー部26は、梁26c、26cによってスプリングの機能を奏するしなり部を有する構成になっている。
【0049】
この第2実施形態では、梁26c、26cが直線的であるので、梁26c、26cの撓みの方向が切り欠き26b、26bに向かう方向に比較して、切り欠き26b、26bのない梁26c、26cに向かう方向はしなり難い。ホルダー部26とペン体12及びインク誘導芯14の曲げ弾性率は1~100Paかつホルダー部26の曲げ弾性率がペン体12及びインク誘導芯14の曲げ弾性率よりも高いこととしたため、ペン体のしなりと軸方向への撓みを制御できるため所望の筆記ができる。それとともに、第2実施形態のマーキングペンによれば、第1実施形態のマーキングペンに比較して、しなりに向きがあり梁26c、26cが軸方向に沿うので筆記方向への強度を確保できる。したがって、しなりと筆記方向強度を描線する際に縦線横線に差異を容易に付けて筆記することができる。
【0050】
本発明は前述の実施形態1、2に限定されず、本発明の範囲内で種々に変形実施できる。以下に説明する本発明に係る第3~第5実施形態は、ペン体12の先端部を砲弾形状にして軸筒の回転位置にかかわらずにパン体12をしならせて多彩な文字筆記が可能なマーキングペンである。
【0051】
図10は、第3実施形態に係るマーキングペンの全体説明図、図11は、第4実施形態に係るマーキングペンの全体説明図、図12は、第5実施形態に係るマーキングペンの全体説明図であって、いずれも前記第1実施形態に係るマーキングペンと同一部分に同一の符号を付している。
【0052】
図10に示すように、第3実施形態に係るマーキングペンは、ペン体12(A)の先端の筆記端部12aがポイント状であって、筆記端部12a後方を取り囲む周面12dが比較的細長い砲弾形状を呈したものである。
【0053】
図11に示すように、第4実施形態に係るマーキングペンは、ペン体12(B)の先端の筆記端部12aがポイント状であって、筆記端部12a後方を取り囲む周面12dが円錐側面状を呈しており、第3実施形態よりも太い砲弾形状を呈したものである。
【0054】
図12に示すように、第5実施形態に係るマーキングペンは、ペン体12(C)の先端の筆記端部12aがポイント状であって、筆記端部12a後方を取り囲む周面12dが第4実施形態よりも高さの低い円錐側面状を呈しており、第4実施形態よりも柱状に近い砲弾形状を呈したものである。
【0055】
第3~第5実施形態に係るマーキングペンは、それぞれが筆記時の軸筒10の傾き角度やしならせ具合に応じて筆記幅の異なる筆記ができる。所望の角度で好みの太さが筆記できるように第3~第5実施形態のマーキングペンを使用者は適宜選択可能である。
なお、第1~第2実施形態に比較して、これら第3~第5実施形態のマーキングペンは、ホルダー部16の中空部16a内周に対してペン体12(A)~12(C)及びインク誘導芯14外周とのクリアランスが少なく又は無いようにしており、通過部10a2内周面とのクリアランスσ2が設けられていることから、ホルダー部16の弾性力がペン芯のしなりに主に作用する。
なお、第3~5実施形態に係るマーキングペンのペン体以外の先端形状のマーキングペンを実施可能である。
【0056】
以下に、本発明の実施例を示す。各実施例における曲げ弾性率の測定は各部品の一端部を支点として曲げ応力を与えることによる変位量とその時の荷重の測定により算出することができる。
また、マーキングペン形態として以下のインクを用いた。
可逆熱変色性マイクロカプセル顔料分散液 23部
電子供与性呈色性有機化合物成分 3′,6′-ビス〔3-フェニル(3-メチルフェニル)アミノ〕-スピロ[イソベンゾフラン-1(3H),9′-[9H]キサンテン]-3-オン 2部
電子受容性化合物成分 2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン 8部
電子供与性呈色性有機化合物成分及び電子受容性化合物成分による電子授受反応を特定温度域において可逆的に生起させる反応媒体からなる可逆熱変色性組成物成分 カプリン酸4-ベンジルオキシフェニルエチル50部
の上記三種を混合して可逆熱変色性組成物を調製し、更に被膜材料として芳香族イソシアネートプレポリマーを45部、助溶剤を40部からなる混合溶液に投入した。この混合溶液を10%ポリビニルアルコール水溶液中で乳化分散し、加温しながらホモミキサーで10,000rpmの攪拌速度で攪拌を続けた後、水溶性脂肪族変性アミン2.5部を加え、さらに攪拌を続けてマイクロカプセル分散液を調製した。
・マイクロカプセル顔料の体積基準平均粒子径X:1.45μm
・マイクロカプセル顔料の数平均膜厚Y:0.08μm
・Y/X 0.55
・被膜材料添加量 30g
・攪拌速度 7000rpm
・大粒子含有率 0%
高分子凝集剤(ヒドロキシエチルセルロース)0.4部
アクリル系高分子分散剤0.4部
防腐剤(2-ピリジンチオール1-オキシドナトリウム)0.2部
防腐剤(3-ヨード-2-プロピニルN-ブチルカルバマート)0.2部
グリセリン30部
消泡剤0.01部
pH調整剤(10%希釈リン酸溶液)0.03部
水45.76部
上記材料をビヒクル中に混合し、可逆熱変色性水性インクを得た。前記インクは完全発色温度が-20℃、完全消色温度が60℃であり、発色している状態から、加熱することにより黒色から無色に可逆的に変化した。
【実施例0057】
ペン芯:ポリエチレンテレフタレート樹脂製の繊維束芯、気孔率50%、インク誘導芯部14の外径1.5mm、曲げ弾性率7MPa
ホルダー:ポリアセタール樹脂製とした第1実施形態の形状、曲げ弾性率0.5MPa
ペン芯とホルダーとの合計7.5MPa
【実施例0058】
ペン芯:ポリエチレンテレフタレート樹脂製の繊維束芯、気孔率60%、インク誘導芯部14の外径2mm、曲げ弾性率8MPa
ホルダー:ポリアセタール樹脂製とした第3実施形態の形状、曲げ弾性率0.5MPa
ペン芯とホルダーとの合計8.5MPa
【実施例0059】
ペン芯:ポリエチレンテレフタレート樹脂製の繊維束芯、気孔率50%、インク誘導芯部14の外径1mm、曲げ弾性率5.5MPa
ホルダー:ポリアセタール樹脂製とした第4実施形態の形状、曲げ弾性率0.5MPa
ペン芯とホルダーとの合計6MPa
【0060】
いずれの実施例においても発明者による筆記において、筆記方向のしなりと筆記荷重に対してしなり力を制御できることを確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明のマーキングペンは、筆記具、塗布具などに利用することができる。
【符号の説明】
【0062】
10 軸筒
10a 先端部
10a1 先端開口
10a2 通過部
10a3 支持リブ
10b 中央部
10b1 リブ
10c 後端部
10d リブ
12 ペン体
12(A) ペン体(第3実施形態)
12(B) ペン体(第4実施形態)
12(C) ペン体(第5実施形態)
12a 筆記先端部
12b 斜面
12c 段部
14 インク誘導芯
16 ホルダー部
16a 中空部
16b 切り欠き
16c 梁
16e 段状部
16f フランジ(鍔部)
16g 後端部
16g1 通気溝
18 中綿
20 栓体
20a フランジ
22 ペン体保持部
26 ホルダー部
26a 中空部
26b 切り欠き
26c 梁
E 内径
Eh 弾性率
Ep 弾性率
σ1 クリアランス
σ2 クリアランス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12