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  • 特開-欠陥分類装置及び欠陥分類方法 図1
  • 特開-欠陥分類装置及び欠陥分類方法 図2
  • 特開-欠陥分類装置及び欠陥分類方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024113537
(43)【公開日】2024-08-22
(54)【発明の名称】欠陥分類装置及び欠陥分類方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/88 20060101AFI20240815BHJP
【FI】
G01N21/88 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023018602
(22)【出願日】2023-02-09
(71)【出願人】
【識別番号】000219314
【氏名又は名称】東レエンジニアリング株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】301014904
【氏名又は名称】東レエンジニアリング先端半導体MIテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大▲美▼ 英一
【テーマコード(参考)】
2G051
【Fターム(参考)】
2G051AA90
2G051AB02
2G051CA04
2G051EA12
2G051EB01
2G051EC01
2G051ED04
2G051ED08
2G051ED11
(57)【要約】
【課題】被検査対象に発生した欠陥のパターンを精度よく分類することにある。
【解決手段】自動欠陥分類装置1は、被検査対象Wに発生した欠陥Xのパターンを分類する。被検査対象Wは、互いに隣接した複数の視野Fに区画されるように、撮像されている。自動欠陥分類装置1は、複数の視野Fのうちの一の視野Fである任意視野FAとしての第1視野F1の外周F1aに欠陥Xが含まれ且つ複数の視野Fのうちの第1視野F1(任意視野FA)に隣接する他の視野Fである隣接視野FBとしての第2視野F2の外周F2aに欠陥Xが含まれる場合に、第1視野F1(任意視野FA)と第2視野F2(隣接視野FB)とを結合した状態にて欠陥Xのパターンを分類する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検査対象に発生した欠陥のパターンを分類する欠陥分類装置であって、
前記被検査対象は、互いに隣接した複数の視野に区画されるように撮像されており、
複数の前記視野のうちの一の前記視野である任意視野の外周に前記欠陥が含まれ且つ複数の前記視野のうちの前記任意視野に隣接する他の前記視野である隣接視野の前記外周に前記欠陥が含まれる場合に、前記任意視野と前記隣接視野とを結合した状態にて前記欠陥の前記パターンを分類する、欠陥分類装置。
【請求項2】
請求項1に記載の欠陥分類装置であって、
前記任意視野における前記隣接視野側の前記外周に前記欠陥が含まれ且つ前記隣接視野における前記任意視野側の前記外周に前記欠陥が含まれる場合に、前記任意視野と前記隣接視野とを結合した状態にて前記欠陥の前記パターンを分類する、欠陥分類装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の欠陥分類装置であって、
前記任意視野は、複数の画素に区画されており、
前記隣接視野は、複数の前記画素に区画されており、
前記任意視野における前記外周の前記画素に前記欠陥が含まれ且つ前記隣接視野における前記外周の前記画素に前記欠陥が含まれる場合に、前記任意視野と前記隣接視野とを結合した状態にて前記欠陥の前記パターンを分類する、欠陥分類装置。
【請求項4】
請求項3に記載の欠陥分類装置であって、
前記画素は、前記欠陥が含まれる状態を示す値と前記欠陥が含まれない状態を示す値との2値で構成されている、欠陥分類装置。
【請求項5】
請求項1に記載の欠陥分類装置であって、
前記隣接視野は、前記任意視野の上下左右の少なくともいずれかに配置されている、欠陥分類装置。
【請求項6】
請求項1に記載の欠陥分類装置であって、
前記任意視野の前記外周に前記欠陥が含まれる場合に、前記任意視野をメモリに記憶して、
前記隣接視野の前記外周に前記欠陥が含まれる場合に、前記隣接視野を前記メモリに記憶して、
前記任意視野と前記隣接視野とを前記メモリから出力して、前記任意視野と前記隣接視野とを結合した状態にて前記欠陥の前記パターンを分類する、欠陥分類装置。
【請求項7】
被検査対象に発生した欠陥のパターンを分類する欠陥分類方法であって、
前記被検査対象は、互いに隣接した複数の視野に区画されるように撮像されており、
複数の前記視野のうちの一の前記視野である任意視野の外周に前記欠陥が含まれ且つ複数の前記視野のうちの前記任意視野に隣接する他の前記視野である隣接視野の前記外周に前記欠陥が含まれる場合に、前記任意視野と前記隣接視野とを結合した状態にて前記欠陥の前記パターンを分類する、欠陥分類方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、欠陥分類装置及び欠陥分類方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、半導体デバイスの製造工程では、半導体ウエハ(基板)の表面に露光、現像、エッチング等の処理を行うことによって、半導体ウエハ表面に多数の回路パターンを形成する。そして、多数の回路パターンが形成された半導体ウエハを、複数のチップ部品として個片化する。個片化されたチップ部品は、パッケージングされた後、電子部品単体として出荷されたり、電気製品に組み込まれたりする。
【0003】
ここで、半導体ウエハが複数のチップ部品として個片化される前に、半導体ウエハ表面に対して、欠陥の検出が行われる。欠陥の検出は、例えば、光学顕微鏡や走査電子顕微鏡に接続されたカメラにより撮像された検査画像に基づいて、行われる。
【0004】
そして、欠陥の検出された半導体ウエハに対して、欠陥の形状やサイズや色などの特徴量に基づいて、欠陥パターンの分類が行われる。欠陥パターンとして、例えば、異物や傷などがある。
【0005】
従来、欠陥パターンの分類は、作業者による目視検査によって行われてきた。しかしながら、目視検査では、作業者の主観に応じて、欠陥パターンの分類結果にバラツキが生じ得るので、欠陥パターンを精度よく分類することができなかった。
【0006】
そこで、特許文献1に示すように、半導体ウエハ表面に発生した欠陥パターンを自動的に分類する自動欠陥分類装置(Automatic Defect Classification:ADC)が、知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004-47939号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に係る自動欠陥分類装置を用いて、作業者の主観を排して欠陥パターンを分類したとしても、依然として、欠陥パターンの分類精度に課題がある。
【0009】
被検査対象である半導体ウエハは、通常、カメラの視野(撮像範囲)よりも大きい。そこで、半導体ウエハを複数の視野に区画してカメラで撮像することによって、複数の視野毎に検査画像を得る。このとき、半導体ウエハに発生した欠陥が、複数の視野に亘って跨ることがある。
【0010】
このため、1つの視野のみに基づいて欠陥パターンを分類しようとすると、欠陥パターンを正確に分類できないことがある。例えば、当該1つの視野の外周に僅かに一部だけ欠陥が映っている場合、一部だけ映された欠陥の本来の特徴量(形状やサイズや色など)を十分に把握できないので、正確な欠陥パターンを把握することができない。
【0011】
上記課題は、半導体ウエハ以外の他の被検査対象にも、当てはまる。
【0012】
本開示は斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、被検査対象に発生した欠陥のパターンを精度よく分類することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本開示に係る欠陥分類装置は、被検査対象に発生した欠陥のパターンを分類する欠陥分類装置であって、前記被検査対象は、互いに隣接した複数の視野に区画されるように撮像されており、複数の前記視野のうちの一の前記視野である任意視野の外周に前記欠陥が含まれ且つ複数の前記視野のうちの前記任意視野に隣接する他の前記視野である隣接視野の前記外周に前記欠陥が含まれる場合に、前記任意視野と前記隣接視野とを結合した状態にて前記欠陥の前記パターンを分類する。
【0014】
撮像される被検査対象において、任意視野と隣接視野とは、互いに隣接している。任意視野の外周に欠陥が含まれ且つ隣接視野の外周に欠陥が含まれる場合、任意視野と隣接視野とが結合された状態にて欠陥のパターンが分類される。
【0015】
このように、任意視野と隣接視野とが結合された状態にて欠陥のパターンが分類されるので、被検査対象に発生した欠陥が任意視野と隣接視野とに亘って跨っている場合であっても、欠陥の本来の特徴量を把握することができる。
【0016】
以上、被検査対象に発生した欠陥のパターンを精度よく分類することができる。
【0017】
一実施形態では、前記任意視野における前記隣接視野側の前記外周に前記欠陥が含まれ且つ前記隣接視野における前記任意視野側の前記外周に前記欠陥が含まれる場合に、前記任意視野と前記隣接視野とを結合した状態にて前記欠陥の前記パターンを分類する。
【0018】
任意視野における隣接視野側の外周に欠陥が含まれ且つ隣接視野における任意視野側の外周に欠陥が含まれる場合、ある欠陥が任意視野と隣接視野とに亘って跨っている可能性が高い。このような場合に任意視野と隣接視野とを結合することによって、任意視野と隣接視野とに亘って跨る欠陥の全体像を把握する上で有利になる。
【0019】
一実施形態では、前記任意視野は、複数の画素に区画されており、前記隣接視野は、複数の前記画素に区画されており、前記任意視野における前記外周の前記画素に前記欠陥が含まれ且つ前記隣接視野における前記外周の前記画素に前記欠陥が含まれる場合に、前記任意視野と前記隣接視野とを結合した状態にて前記欠陥の前記パターンを分類する。
【0020】
各視野の外周における欠陥の有無を、画素における欠陥の有無によって、より明確に定義することができる。
【0021】
一実施形態では、前記画素は、前記欠陥が含まれる状態を示す値と前記欠陥が含まれない状態を示す値との2値で構成されている。
【0022】
各画素を2値で構成することによって、各画素に欠陥が含まれるか否かを明確にすることができる。
【0023】
一実施形態では、前記隣接視野は、前記任意視野の上下左右の少なくともいずれかに配置されている。
【0024】
欠陥が、任意視野と上下左右の少なくともいずれかの隣接視野とに亘って跨る場合であっても、被検査対象に発生した欠陥の本来の特徴量を把握することができる。
【0025】
一実施形態では、前記任意視野の前記外周に前記欠陥が含まれる場合に、前記任意視野をメモリに記憶して、前記隣接視野の前記外周に前記欠陥が含まれる場合に、前記隣接視野を前記メモリに記憶して、前記任意視野と前記隣接視野とを前記メモリから出力して、前記任意視野と前記隣接視野とを結合した状態にて前記欠陥の前記パターンを分類する。
【0026】
各視野の外周に欠陥が含まれる場合のみに、各視野がメモリに記憶されるので、メモリへの負担が少ない。
【0027】
本開示に係る欠陥分類方法は、被検査対象に発生した欠陥のパターンを分類する欠陥分類方法であって、前記被検査対象は、互いに隣接した複数の視野に区画されるように撮像されており、複数の前記視野のうちの一の前記視野である任意視野の外周に前記欠陥が含まれ且つ複数の前記視野のうちの前記任意視野に隣接する他の前記視野である隣接視野の前記外周に前記欠陥が含まれる場合に、前記任意視野と前記隣接視野とを結合した状態にて前記欠陥の前記パターンを分類する。
【発明の効果】
【0028】
本開示によれば、被検査対象に発生した欠陥のパターンを精度よく分類することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1図1は、自動欠陥分類装置による欠陥分類方法を模式的に示す。
図2図2は、被検査対象に発生した欠陥が第1視野と第2視野とに亘って跨る場合における第1視野と第2視野との結合を示す。
図3図3は、欠陥Xが第1視野と第2視野と第3視野とに亘って跨る場合における第1視野と第2視野と第3視野との結合を示す。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本開示の一実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本開示、その適用物あるいはその用途を制限することを意図するものでは全くない。
【0031】
(欠陥分類)
図1は、自動欠陥分類装置1による欠陥分類方法を模式的に示す。自動欠陥分類装置1は、被検査対象Wに発生した欠陥Xのパターンを、分類する。本例では、被検査対象Wは、半導体製造工程における半導体ウエハ(基板)の表面である。
【0032】
自動欠陥分類装置1による欠陥Xのパターンの分類工程の前工程において、欠陥検出装置(図示せず)による欠陥Xの検出が行われる。欠陥Xの検出にあたって、光学顕微鏡や走査電子顕微鏡に接続されたカメラ(図示せず)によって被検査対象Wを撮像して検査画像Jを得るとともに、検査画像Jを基準画像Kと比較する。
【0033】
基準画像Kは、フィッティング画像や統計的良品画像とも呼ばれる。基準画像Kは、例えば、良品判定された被検査対象Wの画像を平均化することによって、得られる。基準画像Kは、事前に設定されている。欠陥Xの検出にあたって、検査画像Jを、基準画像Kに重ね合わせる。
【0034】
自動欠陥分類装置1は、欠陥検出装置により欠陥Xが検出された被検査対象Wについてのみ、欠陥Xのパターンを分類する。ここで、欠陥Xのパターンとして、例えば、異物、傷、エッジリンス不良、スルーホール異常、塗膜ムラ、剥がれ、スクラッチ、ボンディングパッド異常、色ムラ、パターン異常、染み、変色、変形、などがある。
【0035】
自動欠陥分類装置1は、例えば、マイコン及びプログラムで構成されている。自動欠陥分類装置1は、被検査対象Wの検査画像Jに対して、欠陥Xにおける所定の特徴量に基づいて、欠陥Xのパターンを分類する。欠陥Xの特徴量として、例えば、面積、明るさ、色、輝度、形状、鮮明さ、長さ、幅、幅/長さ、角度、透明度、などがある。自動欠陥分類装置1には、欠陥Xの特徴量が、事前に登録されている。
【0036】
また、自動欠陥分類装置1は、被検査対象Wの検査画像Jに対して、AI(Artificial Intelligence)学習により生成された分類条件に基づいて、欠陥Xのパターンを分類してもよい。AI学習として、例えば、機械学習やディープラーニング等がある。また、機械学習として、「教師有り学習」、「教師無し学習」及び「強化学習」等がある。
【0037】
(視野の区画)
ここで、被検査対象Wは、通常、カメラの視野(撮像範囲)Fよりも大きい。そこで、被検査対象Wは、複数の視野Fに区画されるように、撮像される。これにより、複数の視野F毎に検査画像Jが得られる。
【0038】
各視野F(各検査画像J)は、互いに隣接している。本例では、各視野Fは、四角形である。各視野Fは、四角形の格子状に並んでいる。換言すると、各視野Fは、上下左右に互いに隣接している。
【0039】
図1では、複数の視野Fとして、左上の第1視野F1、右上の第2視野F2、左下の第3視野F3及び右下の第4視野F4を、例示する。第1視野F1と第2視野F2とは、左右方向に隣接しており、左右の辺を共有している。第1視野F1と第3視野F3とは、上下方向に隣接しており、上下の辺を共有している。第1視野F1と第4視野F4とは、斜め上下左右に隣接しているが、いずれの辺をも共有していない。
【0040】
カメラによって、4つの視野F1~F4に対応するように、4つの検査画像J1~J4が得られる。具体的には、第1視野F1に対応する第1検査画像J1、第2視野F2に対応する第2検査画像J2、第3視野F3に対応する第3検査画像J3及び第4視野F4に対応する第4検査画像J4が、カメラによって得られる。
【0041】
基準画像Kも、検査画像Jと同様である。すなわち、4つの視野F1~F4に対応するように、4つの基準画像K1~K4が予め用意されている。具体的には、第1視野F1に対応する第1基準画像K1、第2視野F2に対応する第2基準画像K2、第3視野F3に対応する第3基準画像K3及び第4視野F4に対応する第4基準画像K4が、用意されている。
【0042】
ここで、被検査対象Wに発生した欠陥Xが、複数の視野F(検査画像J)に亘って跨ることがある。図1では、被検査対象Wに発生した欠陥Xは、第1視野F1(第1検査画像J1)と第2視野F2(第2検査画像J2)とに亘って左右方向に跨っている。
【0043】
図1に示すように、欠陥Xは、第1視野F1(第1検査画像J1)における中央部から外周の右端まで延びた後に、第2視野F2(第2検査画像J2)における外周の左端付近に僅かに至っている。欠陥Xには、ノコギリの歯のようなギザギザの形状がある
ここで、欠陥検出装置は、被検査対象Wにおける第1視野F1(第1検査画像J1)及び第2視野F2(第2検査画像J2)において、欠陥Xを検出する。一方、欠陥検出装置は、被検査対象Wにおける第3視野F3(第3検査画像J3)及び第4視野F4(第4検査画像J4)において、欠陥Xを検出しない。なお、4つの基準画像K1~K4のいずれにも、欠陥Xは存在しない。
【0044】
自動欠陥分類装置1による欠陥Xのパターンの分類では、欠陥検出装置により欠陥Xの検出された視野F(検査画像J)のみを、抽出して、基準画像Kと比較する。本例では、欠陥Xの検出された視野F(検査画像J)として、第1視野F1(第1検査画像J1)及び第2視野F2(第2検査画像J2)が、先ず抽出される。そして、第1視野F1(第1検査画像J1)が第1基準画像K1と比較されるとともに、第2視野F2(第2検査画像J2)が第2基準画像K2と比較される。
【0045】
1つの視野Fのみに基づいて欠陥Xのパターンを分類しようとすると、欠陥Xのパターンを正確に分類できないことがある。例えば、第2視野F2(第2検査画像J2)には、その外周の左端付近に僅かにしか欠陥Xが映っていない。このため、第2視野F2(第2検査画像J2)を第2基準画像K2と比較したとしても、欠陥Xの本来の特徴量(形状やサイズや色など)を十分に把握できず、正確な欠陥Xのパターンを把握することができない。
【0046】
一方、第1視野F1(第1検査画像J1)には、その中央部から外周の右端に亘って大部分で欠陥Xが映っている。このため、第1視野F1(第1検査画像J1)を第1基準画像K1と比較した場合、欠陥Xの本来の特徴量を把握できるかもしれず、正確な欠陥Xのパターンを把握できるかもしれない。例えば、第1視野F1(第1検査画像J1)に映る欠陥Xにおけるギザギザの形状に基づいて、欠陥Xのパターンを「傷」と分類できるかもしれない。
【0047】
しかしながら、仮に、第1視野F1(第1検査画像J1)にも、第2視野F2(第2検査画像J2)と同様に僅かにしか欠陥Xが映っていなければ、やはり欠陥Xの本来の特徴量を把握できず、正確な欠陥Xのパターンを把握できないであろう。
【0048】
このように、被検査対象Wに発生した欠陥Xが複数の視野F(検査画像J)に亘って跨る場合に、欠陥Xのパターンを精度よく分類することは難しい。
【0049】
本実施形態に係る自動欠陥分類装置1では、以下の工夫を施すことによって、被検査対象Wに発生した欠陥Xが複数の視野F(検査画像J)に亘って跨る場合であっても、欠陥Xのパターンを精度よく分類することを可能にした。
【0050】
(欠陥の結合)
図2は、被検査対象Wに発生した欠陥Xが第1視野F1と第2視野F2とに亘って跨る場合における第1視野F1と第2視野F2との結合を示す。
【0051】
第1視野F1は、複数の視野F(第1視野F1、第2視野F2、第3視野F3及び第4視野F4)のうちの任意に選択された一の視野Fである任意視野FAとする。第2視野F2は、複数の視野F(第1視野F1、第2視野F2、第3視野F3及び第4視野F4)のうちの任意視野FA(第1視野F1)に隣接する他の視野である隣接視野FBとする。
【0052】
なお、隣接視野FBの候補として、第2視野F2の他にも、第1視野F1(任意視野FA)に上下方向に隣接する第3視野F3と、第1視野F1(任意視野FA)に斜め上下左右に隣接する第4視野F4とがあるが、これらには欠陥Xが検出されていないので今回は除外する(メモリ2の説明の際に後述する)。
【0053】
隣接視野FBは、任意視野FAの上下左右の少なくともいずれかに配置されている。本例では、隣接視野FBとしての第2視野F2は、任意視野FAとしての第1視野F1の右側に配置されている。
【0054】
自動欠陥分類装置1は、第1視野F1(任意視野FA)の外周F1aに欠陥Xが含まれ且つ第2視野F2(隣接視野FB)の外周F2aに欠陥Xが含まれる場合に、第1視野F1(任意視野FA)と第2視野F2(隣接視野FB)とを結合した状態にて、欠陥Xのパターンを分類する。
【0055】
詳細には、自動欠陥分類装置1は、第1視野F1(任意視野FA)における第2視野F2(隣接視野FB)側の外周F1a(右端F1b)に欠陥Xが含まれ且つ第2視野F2(隣接視野FB)における第1視野F1(任意視野FA)側の外周F2a(左端F2b)に欠陥Xが含まれる場合のみに、第1視野F1(任意視野FA)と第2視野F2(隣接視野FB)とを結合した状態にて、欠陥Xのパターンを分類する。
【0056】
換言すると、自動欠陥分類装置1は、第1視野F1(任意視野FA)及び第2視野F2(隣接視野FB)における互いに共有する辺同士(右端F1b及び左端F2b)に欠陥Xが含まれる場合のみに、欠陥Xのパターンを分類する。
【0057】
また、第1視野F1(任意視野FA)における第2視野F2(隣接視野FB)側の外周F1a(右端F1b)に欠陥Xが含まれるとしても、第2視野F2(隣接視野FB)における第1視野F1(任意視野FA)側の外周F2a(左端F2b)に欠陥Xが含まれない場合には、自動欠陥分類装置1は、第1視野F1(任意視野FA)及び第2視野F2(隣接視野FB)を後述のメモリ2に記憶しつつも、第1視野F1(任意視野FA)と第2視野F2(隣接視野FB)とを結合しない。
【0058】
より詳細には、第1視野F1(任意視野FA)は、複数の画素Gに区画されている。第2視野F2(隣接視野FB)は、複数の画素Gに区画されている。第3視野F3及び第4視野F4についても、同様である。
【0059】
画素Gは、欠陥Xが含まれる状態を示す値G1と欠陥Xが含まれない状態を示す値G0との2値で構成されている。欠陥Xが含まれる状態を示す値G1と欠陥Xが含まれない状態を示す値G0とは、例えば、画素Gにおける輝度(0~255)に基づいて所定の閾値(又は範囲)を基準に区分けされる。
【0060】
そして、自動欠陥分類装置1は、第1視野F1(任意視野FA)における第2視野F2(隣接視野FB)側の外周F1a(右端F1b)の画素Gに欠陥Xが含まれ(値G1)且つ第2視野F2(隣接視野FB)における第1視野F1(任意視野FA)側の外周F2a(左端F2b)の画素Gに欠陥Xが含まれる(値G1)場合のみに、第1視野F1(任意視野FA)と第2視野F2(隣接視野FB)とを結合した状態にて、欠陥Xのパターンを分類する。
【0061】
第1視野F1(任意視野FA)に映る欠陥Xと、第2視野F2(隣接視野FB)に映る欠陥Xとは、必ずしも画素G単位で隣接しなくてもよい。
【0062】
次に、メモリ2への各視野Fの記憶について説明する。なお、メモリ2は、例えば公知のRAMである。
【0063】
自動欠陥分類装置1は、第1視野F1(任意視野FA)における第2視野F2(隣接視野FB)側の外周F1a(右端F1b)の画素Gに欠陥Xが含まれる(値G1)場合に、第1視野F1(任意視野FA)をメモリ2に記憶する。
【0064】
同様に、自動欠陥分類装置1は、第2視野F2(隣接視野FB)における第1視野F1(任意視野FA)側の外周F2a(左端F2b)に欠陥Xが含まれる(値G1)場合に、第2視野F2(隣接視野FB)をメモリ2に記憶する。
【0065】
一方、自動欠陥分類装置1は、隣接視野FBとしての第3視野F3における第1視野F1(任意視野FA)側の外周F3a(上端F3b)に欠陥Xが含まれない(値G0)ので、第3視野F3をメモリ2に記憶しない。
【0066】
同様に、自動欠陥分類装置1は、隣接視野FBとしての第4視野F4における第1視野F1(任意視野FA)側の外周F4a(左上端F4b)に欠陥Xが含まれない(値G0)ので、第4視野F4をメモリ2に記憶しない。
【0067】
そして、自動欠陥分類装置1は、第1視野F1(任意視野FA)と第2視野F2(隣接視野FB)とをメモリ2から出力(呼び出して)して、第1視野F1(任意視野FA)と第2視野F2(隣接視野FB)とを結合した状態にて欠陥Xのパターンを分類する。
【0068】
なお、任意視野FAを第1視野F1とした場合における任意視野FA(第1視野F1)及び隣接視野FB(第2視野F2)のメモリ2への記憶が完了したら、次に、任意視野FAを、第2視野F2、第3視野F3及び第4視野F4に置き換えて、同様の手順を繰り返す。
【0069】
(作用効果)
撮像される被検査対象Wにおいて、第1視野F1(任意視野FA)と第2視野F2(隣接視野FB)とは、互いに隣接している。第1視野F1(任意視野FA)の外周F1aに欠陥Xが含まれ且つ第2視野F2(隣接視野FB)の外周F2aに欠陥Xが含まれる場合、第1視野F1(任意視野FA)と第2視野F2(隣接視野FB)とが結合された状態にて欠陥Xのパターンが分類される。
【0070】
このように、第1視野F1(任意視野FA)と第2視野F2(隣接視野FB)とが結合された状態にて欠陥Xのパターンが分類されるので、被検査対象Wに発生した欠陥Xが第1視野F1(任意視野FA)と第2視野F2(隣接視野FB)とに亘って跨っている場合であっても、欠陥Xの本来の特徴量を把握することができる。
【0071】
以上、被検査対象Wに発生した欠陥Xのパターンを精度よく分類することができる。
【0072】
第1視野F1(任意視野FA)における第2視野F2(隣接視野FB)側の外周F1a(右端F1b)に欠陥Xが含まれ且つ第2視野F2(隣接視野FB)における第1視野F1(任意視野FA)側の外周F2a(左端F2b)に欠陥Xが含まれる場合、ある欠陥Xが第1視野F1(任意視野FA)と第2視野F2(隣接視野FB)とに亘って跨っている可能性が高い。
【0073】
このような場合に第1視野F1(任意視野FA)と第2視野F2(隣接視野FB)とを結合することによって、第1視野F1(任意視野FA)と第2視野F2(隣接視野FB)とに亘って跨る欠陥Xの全体像を把握する上で有利になる。
【0074】
各視野F1,F2(FA,FB)の外周F1a,F2aにおける欠陥Xの有無を、画素Gにおける欠陥Xの有無によって、明確に定義することができる。
【0075】
各画素Gを2値G0,G1で構成することによって、各画素Gに欠陥Xが含まれるか否かを明確にすることができる。
【0076】
欠陥Xが、任意視野FAと上下左右の少なくともいずれかの隣接視野FBとに亘って跨る場合であっても、被検査対象Wに発生した欠陥Xの本来の特徴量を把握することができる。
【0077】
各視野F1,F2(FA,FB)の外周F1a,F2aに欠陥Xが含まれる場合のみに、各視野F1,F2(FA,FB)がメモリ2に記憶されるので、メモリ2への負担が少ない。
【0078】
(その他の実施形態)
以上、本開示を好適な実施形態により説明してきたが、こうした記述は限定事項ではなく、勿論、種々の改変が可能である。
【0079】
第1視野F1(任意視野FA)の外周F1aにおける左端に欠陥Xが含まれ且つ第2視野F2(隣接視野FB)の外周F2aにおける右端に欠陥Xが含まれる場合に、第1視野F1(任意視野FA)と第2視野F2(隣接視野FB)とを一先ず結合した状態にて、欠陥Xのパターンを分類してもよい。この場合、第1視野F1(任意視野FA)の左端に映る欠陥Xと、第2視野F2(隣接視野FB)の右端に映る欠陥Xとは、互いに別物である(両者は繋がっていない)と判断されるだろう。
【0080】
第1視野F1(任意視野FA)の外周F1aにおける右下端に欠陥Xが含まれ且つ第4視野F4(隣接視野FB)の外周F4aにおける左上端F4bに欠陥Xが含まれる場合に、第1視野F1(任意視野FA)及び第4視野F4(隣接視野FB)をメモリ2に記憶しつつも、第1視野F1(任意視野FA)と第4視野F4(隣接視野FB)とを結合しなくてもよい。第1視野F1(任意視野FA)と第4視野F4(隣接視野FB)とを四隅同士で結合するように画像処理することは、難しいからである。
【0081】
上記実施形態では、欠陥Xが、任意視野FAとしての第1視野F1と隣接視野FBとしての第2視野F2との間にのみ跨っているが、これに限定されない。図3に示すように、欠陥Xは、任意視野FAとしての第1視野F1と、隣接視野FBとしての第2視野F2と、隣接視野FBとしての第3視野F3と、に亘って跨ってもよい。
【0082】
この場合、第1視野F1(任意視野FA)と第2視野F2(隣接視野FB)と第3視野F3(隣接視野FB)とが結合された状態にて、欠陥XのパターンXが分類される。
【0083】
任意視野FAと隣接視野FBとの組合せは、複数ある。例えば、任意視野FAが第2視野F2である場合、隣接視野FBの候補として、第1視野F1、第3視野F3及び第4視野F4がある。
【0084】
視野Fは、四角形に限定されず、四角形以外の多角形や、多角形以外の形状などでもよい。
【0085】
被検査対象Wは、半導体ウエハに限定されず、種々の対象が考えられ得る。被検査対象Wは、例えば、ガラスや金属や樹脂等でもよい。被検査対象Wは、板材でなくてもよく、例えば電線等でもよい。
【0086】
画素Gにおける欠陥Xの有無を判定するにあたって、例えば、色相、明度、暗度、彩度、光度、照度などの、その他の光学情報を参照してもよい。
【0087】
本開示に係る欠陥分類方法は、被検査対象Wに発生した欠陥Xのパターンを分類する。
この欠陥分類方法では、被検査対象Wは、互いに隣接した複数の視野Fに区画されるように、撮像されている。この欠陥分類方法では、複数の視野Fのうちの一の視野Fである任意視野FAとしての第1視野F1の外周F1aに欠陥Xが含まれ且つ複数の視野Fのうちの第1視野F1(任意視野FA)に隣接する他の視野Fである隣接視野FBとしての第2視野F2の外周F2aに欠陥Xが含まれる場合に、第1視野F1(任意視野FA)と第2視野F2(隣接視野FB)とを結合した状態にて欠陥Xのパターンを分類する。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本開示は、欠陥分類装置及び欠陥分類方法に適用できるので、極めて有用であり、産業上の利用可能性が高い。
【符号の説明】
【0089】
W 被検査対象
X 欠陥
J 検査画像
J1 第1検査画像
J2 第2検査画像
J3 第3検査画像
J4 第4検査画像
K 基準画像
K1 第1基準画像
K2 第2基準画像
K3 第3基準画像
K4 第4基準画像
F 視野
F1 第1視野
F1a 外周
F1b 右端
F2 第2視野
F2a 外周
F2b 左端
F3 第3視野
F3a 外周
F3b 上端
F4 第4視野
F4a 外周
F4b 左上端
FA 任意視野
FB 隣接視野
G 画素
G0 値
G1 値
1 自動欠陥分類装置
2 メモリ
図1
図2
図3