(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024113541
(43)【公開日】2024-08-22
(54)【発明の名称】検査装置及び検査方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/88 20060101AFI20240815BHJP
G02B 21/00 20060101ALN20240815BHJP
【FI】
G01N21/88 Z
G02B21/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023018607
(22)【出願日】2023-02-09
(71)【出願人】
【識別番号】000219314
【氏名又は名称】東レエンジニアリング株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】301014904
【氏名又は名称】東レエンジニアリング先端半導体MIテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 朋也
(72)【発明者】
【氏名】大▲美▼ 英一
【テーマコード(参考)】
2G051
2H052
【Fターム(参考)】
2G051AA51
2G051AB01
2G051AB02
2G051EA23
2H052AA05
2H052AB01
2H052AD02
(57)【要約】
【課題】微分干渉顕微鏡にて被検査対象を投影して像を得た場合であっても、像内における光学情報のバラツキをシェーディング補正で好適に抑制し得る検査手法を提供する。
【解決手段】検査装置1は、互いに直交する2つの偏光La,LbのシャーHを変化させるプリズム11が設けられた微分干渉顕微鏡10にて基板Wの表面Waを投影して像Gを得るとともに、像Gに対してシェーディング補正を行って基板Wの表面Waを検査する。プリズム11は、複数のシャーHに対応する複数のプリズム位置Kに移動可能である。検査装置1には、複数のプリズム位置Kに対応し且つシェーディング補正を行うための複数のシェーディング補正データXが、保持されいる。シェーディング補正は、プリズム位置K毎に得られたシェーディング補正データXに基づいて行われる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに直交する2つの偏光のシャーを変化させるプリズムが設けられた微分干渉顕微鏡にて被検査対象を投影して像を得るとともに前記像に対してシェーディング補正を行って前記被検査対象を検査する検査装置であって、
前記プリズムは、複数の前記シャーに対応する複数のプリズム位置に移動可能であり、
複数の前記プリズム位置に対応し且つ前記シェーディング補正を行うための複数のシェーディング補正データが、保持されており、
前記シェーディング補正は、前記プリズム位置毎に得られた前記シェーディング補正データに基づいて行われる、検査装置。
【請求項2】
請求項1に記載の検査装置であって、
前記プリズムを複数の前記プリズム位置に移動させるプリズム移動機構を備え、
複数の前記シェーディング補正データは、前記プリズム移動機構における複数の出力値に対応している、検査装置。
【請求項3】
互いに直交する2つの偏光のシャーを変化させるプリズムが設けられた微分干渉顕微鏡にて被検査対象を投影して像を得るとともに前記像に対してシェーディング補正を行って前記被検査対象を検査する検査方法であって、
前記プリズムは、複数の前記シャーに対応する複数のプリズム位置に移動可能であり、
複数の前記プリズム位置に対応し且つ前記シェーディング補正を行うための複数のシェーディング補正データを、保持して、
前記シェーディング補正を、前記プリズム位置毎に得られた前記シェーディング補正データに基づいて行う、検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、検査装置及び検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に示すように、微分干渉顕微鏡を用いて被検査対象(例えば基板の表面など)を検査する手法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
微分干渉顕微鏡は、被検査対象(例えば基板の表面など)を投影して像を得る。微分干渉顕微鏡には、プリズムが設けられている。微分干渉顕微鏡では、光源から出射された光は、プリズムを通過して、互いに直交する2つの偏光に変換されるとともに、それらの光路間に微小なシャー(横方向のずれ)を発生させる。2つの偏光は、被検査対象における異なる2点へ入射して反射する。反射した2つの偏光は、プリズムを再び通過して同じ光路に合流する。
【0005】
2つの偏光が入射した2点間に高低差(勾配)がある場合、2つの偏光の位相が互いにずれて、2つの偏光は、合流時に干渉する。2つの偏光の干渉強度は、それらが入射した2点間の高低差の大きさによって、異なる。このため、被検査対象に高低差の分布があると、明暗のコントラストが発生して凹凸が強調される。このように、微分干渉顕微鏡では、通常の光学系(例えば同軸落射照明など)では視認できないような被検査対象における微小な段差を可視化する。
【0006】
プリズムは、そのプリズム位置を変化させることによって、2つの偏光同士のシャー(横方向のずれ)を変化させる。これにより、被検査対象における2つの偏光が入射する2点間の高低差が変化して、被検査対象を反射する2つの偏光の位相差が調整される。
【0007】
ところで、被検査対象を投影して得られる像では、像内の各領域間において光学情報(例えば輝度など)のバラツキ(ムラ)が生じることがある。このような像内における光学情報のバラツキを抑制するために、像に対してシェーディング補正が行われる。
【0008】
しかしながら、微分干渉顕微鏡によって被検査対象を投影して像を得た場合、像内における光学情報のバラツキの態様が、プリズムにおけるプリズム位置(2つの偏光のシャー、2つの偏光の位相差)毎に異なる。
【0009】
このため、微分干渉顕微鏡にて被検査対象を投影して像を得た場合には、像内における光学情報のバラツキをシェーディング補正で抑制するのが特に難しかった。
【0010】
本開示は斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、微分干渉顕微鏡にて被検査対象を投影して像を得た場合であっても、像内における光学情報のバラツキをシェーディング補正で好適に抑制し得る検査手法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示に係る検査装置は、互いに直交する2つの偏光のシャーを変化させるプリズムが設けられた微分干渉顕微鏡にて被検査対象を投影して像を得るとともに前記像に対してシェーディング補正を行って前記被検査対象を検査する検査装置であって、前記プリズムは、複数の前記シャーに対応する複数のプリズム位置に移動可能であり、複数の前記プリズム位置に対応し且つ前記シェーディング補正を行うための複数のシェーディング補正データが、保持されており、前記シェーディング補正は、前記プリズム位置毎に得られた前記シェーディング補正データに基づいて行われる。
【0012】
かかる構成によれば、微分干渉顕微鏡では、プリズムは、複数のプリズム位置を移動可能である。プリズムは、そのプリズム位置Kを変化させることによって、2つの偏光同士のシャーを変化させる。2つの偏光における複数のシャーは、プリズムにおける複数のプリズム位置に対応するように、複数パターンある。2つの偏光のシャーは、2つの偏光の位相差に関係する。
【0013】
ここで、微分干渉顕微鏡によって被検査対象を投影して像を得た場合、像内における光学情報のバラツキの態様は、プリズムにおけるプリズム位置(2つの偏光のシャー、2つの偏光の位相差)毎に異なる。
【0014】
そこで、検査装置は、複数のプリズム位置に対応するように、複数のシェーディング補正データを保持している。検査装置は、プリズムにおける実際のプリズム位置に応じて、複数のシェーディング補正データの中から、当該プリズム位置に対応するシェーディング補正データを得る。検査装置は、得られたシェーディング補正データに基づいて、像に対してシェーディング補正を行う。
【0015】
このように、プリズム位置毎に異なるシェーディング補正データを用意することによって、プリズムにおける実際のプリズム位置に応じて、すなわち像内における光学情報のバラツキの態様に応じて、像に対して最適なシェーディング補正を行って、像内における光学情報のバラツキを好適に抑制することができる。
【0016】
以上、微分干渉顕微鏡にて被検査対象を投影して像を得た場合であっても、像内における光学情報のバラツキをシェーディング補正で好適に抑制し得る検査手法を提供することができる。
【0017】
一実施形態では、前記プリズムを複数の前記プリズム位置に移動させるプリズム移動機構を備え、複数の前記シェーディング補正データは、前記プリズム移動機構における複数の出力値に対応している。
【0018】
かかる構成によれば、複数のシェーディング補正データをプリズム移動機構における複数の出力値に対応させることによって、プリズムにおける複数のプリズム位置を直接的に測定しなくても、シェーディング補正データを得ることができる。
【0019】
本開示に係る検査方法は、互いに直交する2つの偏光のシャーを変化させるプリズムが設けられた微分干渉顕微鏡にて被検査対象を投影して像を得るとともに前記像に対してシェーディング補正を行って前記被検査対象を検査する検査方法であって、前記プリズムは、複数の前記シャーに対応する複数のプリズム位置に移動可能であり、複数の前記プリズム位置に対応し且つ前記シェーディング補正を行うための複数のシェーディング補正データを、保持して、前記シェーディング補正を、前記プリズム位置毎に得られた前記シェーディング補正データに基づいて行う。
【発明の効果】
【0020】
本開示によれば微分干渉顕微鏡にて被検査対象を投影して像を得た場合であっても、像内における光学情報のバラツキをシェーディング補正で好適に抑制し得る検査手法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図2】
図2は、プリズムが第1プリズム位置にある場合において2つの偏光が基板の表面に入射したときの第1シャー及び第1高低差を示す。
【
図3】
図3は、プリズムが第2プリズム位置にある場合において2つの偏光が基板の表面に入射したときの第2シャー及び第2高低差を示す。
【
図4】
図4は、プリズムが第1プリズム位置にある場合に微分干渉顕微鏡によって基板の表面を投影して得られる第1像に対するシェーディング補正の態様を示す。
【
図5】
図5は、プリズムが第2プリズム位置にある場合に微分干渉顕微鏡によって基板の表面を投影して得られる第2像に対するシェーディング補正の態様を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本開示の一実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本開示、その適用物あるいはその用途を制限することを意図するものでは全くない。
【0023】
(検査装置)
図1は、検査装置1を模式的に示す。検査装置1は、被検査対象としての基板Wの表面Waを検査する。基板Wは、例えば半導体基板である。基板Wの表面Waには、欠陥Nが形成されている。検査装置1は、欠陥Nを検出してもよい。
【0024】
欠陥Nとして、例えば、異物、クラック(傷、ひび割れ、裂け目、亀裂)、エッジリンス不良、スルーホール異常、塗膜ムラ、剥がれ、スクラッチ、ボンディングパッド異常、色ムラ、パターン異常、染み、変色、変形、などがある。本例では、欠陥Nとして、クラックを例示する。
【0025】
検査装置1は、微分干渉顕微鏡10と、プリズム移動機構としてのアクチュエータ20と、制御部としてのコントローラ30と、を備える。
【0026】
検査装置1は、微分干渉顕微鏡10にて、基板Wの表面Waを投影して像Gを得る。微分干渉顕微鏡10には、プリズム11が設けられている。微分干渉顕微鏡10では、光源(図示せず)から出射された光Lは、プリズム11を通過して、互いに直交する2つの偏光La,Lbに変換されるとともに、それらの光路間に微小なシャー(横方向のずれ)Hを発生させる。
【0027】
ここで、横方向は、2つの偏光La,Lbの光路方向(進行方向)に直交する方向である。
【0028】
2つの偏光La,Lbは、基板Wの表面Waにおける異なる2点Pa,Pbへ入射して反射する。反射した2つの偏光La,Lbは、プリズム11を再び通過して同じ光路に合流して、受光器(図示せず)に至る。
【0029】
2つの偏光La,Lbが入射した2点Pa,Pb間に高低差(勾配)δがある場合、2つの偏光La,Lbの位相が互いにずれて、2つの偏光La,Lbは、合流時に干渉する。2つの偏光La,Lbの干渉強度は、それらが入射した2点Pa,Pb間の高低差δの大きさによって、異なる。
【0030】
このため、基板Wの表面Waに高低差δの分布があると、明暗のコントラストが発生して凹凸が強調される。このように、微分干渉顕微鏡10では、通常の光学系(例えば同軸落射照明など)では視認できないような基板Wの表面Waにおける微小な段差を可視化する。
【0031】
プリズム11は、複数のプリズム位置Kに移動可能である。プリズム11の移動方向は、横方向である。プリズム11は、そのプリズム位置Kを変化させることによって、2つの偏光La,Lb同士のシャーHを変化させる。これにより、基板Wの表面Waにおける2つの偏光La,Lbが入射する2点Pa,Pb間の高低差δが変化して、基板Wの表面Waを反射する2つの偏光La,Lbの位相差が調整される。
【0032】
2つの偏光La,Lb同士のシャーHは、プリズム11におけるプリズム位置Kのパターン数に対応するように、複数パターンある。基板Wの表面Waにおける2つの偏光La,Lbが入射する2点Pa,Pb間の高低差δは、プリズム11におけるプリズム位置Kのパターン数に対応するように、複数パターンある。2つの偏光La,Lbにおける位相差は、プリズム11におけるプリズム位置Kのパターン数に対応するように、複数パターンある)。
【0033】
プリズム11における複数のプリズム位置Kは、2つの偏光La,Lb同士の複数のシャーHに対応する。プリズム11における複数のプリズム位置Kは、基板Wの表面Waにおける2つの偏光La,Lbが入射する2点Pa,Pb間の複数の高低差δに、対応する。プリズム11における複数のプリズム位置Kは、2つの偏光La,Lbにおける複数の位相差に対応する。
【0034】
本例では、複数のプリズム位置Kとして第1プリズム位置K1及び第2プリズム位置K2を、複数のシャーHとして第1シャーH1及び第2シャーH2を、複数の高低差δとして第1高低差δ1及び第2高低差δ2を、例示する。
【0035】
図2は、プリズム11が第1プリズム位置K1にある場合において2つの偏光La,Lbが基板Wの表面Waに入射したときの第1シャーH1及び第1高低差δ1を示す。
図3は、プリズム11が第2プリズム位置K2にある場合において2つの偏光La,Lbが基板Wの表面Waに入射したときの第2シャーH2及び第2高低差δ2を示す。
【0036】
第1プリズム位置K1と第2プリズム位置K2とは、横方向において互いに異なる。第1シャーH1及び第1高低差δ1は、第1プリズム位置K1に対応している。第2シャーH2及び第2高低差δ2は、第2プリズム位置K2に対応している。第1シャーH1と第2シャーH2とは、互いに異なる。第1高低差δ1と第2高低差δ2とは、互いに異なる。
【0037】
第1プリズム位置K1のプリズム11を通過する2つの偏光La,Lbは、第2プリズム位置K2のプリズム11を通過する2つの偏光La,Lbに比較して、早い段階(上流側)で斜めから真直(平行)に変化する。このため、第1シャーH1は、第2シャーH2よりも小さい。また、第1シャーH1が第2シャーH2よりも小さいので、基板Wの表面Waにおける勾配が一定と仮定した場合、第1高低差δ1は、第2高低差δ2よりも小さい。
【0038】
アクチュエータ20は、プリズム11を複数のプリズム位置Kに移動させる。本例では、アクチュエータ20は、プリズム11を、第1プリズム位置K1と第2プリズム位置K2とに、移動させる。
【0039】
アクチュエータ20は、例えば、電磁ソレノイドである。アクチュエータ20(電磁ソレノイド)では、プランジャ(可動鉄心)21が横方向に進退する。プランジャ21の先端は、プリズム11の横方向一端部に接続されている。アクチュエータ20は、プランジャ21を横方向に進退させることによって、プリズム11を複数のプリズム位置K(第1プリズム位置K1及び第2プリズム位置K2)に移動させる。
【0040】
アクチュエータ20における複数の出力値Qは、プリズム11における複数のプリズム位置Kに対応する。本例では、複数の出力値Qとして、第1出力値Q1及び第2出力値Q2を例示する。第1出力値Q1は、第1プリズム位置K1に対応する。第2出力値Q2は、第2プリズム位置K2に対応する。第1出力値Q1と第2出力値Q2とは、互いに異なる。
【0041】
出力値Q(第1出力値Q1及び第2出力値Q2)は、具体的には、アクチュエータ20に与えられる電圧や、プランジャ21の横方向位置(例えば突出寸法)など、様々ある。出力値Qは、センサ等によって検知される。
【0042】
ところで、基板Wの表面Waを投影して得られる像Gでは、像G内の各領域間において光学情報としての輝度のバラツキ(ムラ)が生じることがある。なお、像Gは、複数の画素に分割されており、各画素には0~255の輝度の数値が与えられている。輝度の数値が大きいほど明るく、輝度の数値が小さいほど暗い。
【0043】
このような像G内における輝度のバラツキを抑制するために、コントローラ30は、像Gに対してシェーディング補正を行う。なお、コントローラ30は、例えばマイコン及びプログラムで構成されている。
【0044】
しかしながら、微分干渉顕微鏡10によって基板Wの表面Waを投影して像Gを得た場合に、像G内における輝度のバラツキの態様は、プリズム11におけるプリズム位置K(2つの偏光のシャー、2つの偏光La,Lbの位相差)毎に異なる。
【0045】
図4は、プリズム11が第1プリズム位置K1にある場合に微分干渉顕微鏡10によって基板Wの表面Waを投影して得られる第1像G1に対するシェーディング補正の態様を示す。
図5は、プリズム11が第2プリズム位置K2にある場合に微分干渉顕微鏡10によって基板Wの表面Waを投影して得られる第2像G2に対するシェーディング補正の態様を示す。第1像G1は、第1プリズム位置K1に対応する。第2像G2は、第2プリズム位置K2に対応する。
【0046】
図4,5に示すように、プリズム11が第1プリズム位置K1にある場合におけるシェーディング補正前(原画像)での第1像G1である補正前第1像G1a内における輝度のバラツキの態様と、プリズム11が第2プリズム位置K2にある場合におけるシェーディング補正前での第2像G2である補正前第2像G2a内における輝度のバラツキの態様とは、互いに異なる。補正前第1像G1aは、第1プリズム位置K1に対応する。補正前第2像G2aは、第2プリズム位置K2に対応する。
【0047】
第1プリズム位置K1での補正前第1像G1aは、全体的にやや暗く、四隅が若干明るい。第2プリズム位置K2での補正前第2像G2aは、補正前第1像G1aに比較して全体的に明るく、特に四隅が顕著に明るい。
【0048】
微分干渉顕微鏡10にて基板Wの表面Waを投影して像Gを得た場合には、像G内における輝度のバラツキをシェーディング補正で抑制するのが特に難しかった。
【0049】
本実施形態では、以下の工夫を施すことによって、微分干渉顕微鏡10にて基板Wの表面Waを投影して像Gを得た場合であっても、像G内における輝度のバラツキをシェーディング補正で好適に抑制し得る検査手法を提供する。
【0050】
(シェーディング補正データ)
図1に示すように、検査装置1のコントローラ30には、複数のシェーディング補正データXが、保持(保存、格納、登録)されている。複数のシェーディング補正データXは、複数のプリズム位置Kに対応する。換言すると、複数のシェーディング補正データXは、アクチュエータ20における複数の出力値Qに対応する。
【0051】
シェーディング補正データXは、像Gに対してシェーディング補正を行うためにある。複数のシェーディング補正データXは、検査装置1のコントローラ30の記憶部に予め保持されている。
【0052】
シェーディング補正データXは、複数の画素に分割されており、各画素には0~255の輝度の数値が与えられている。
【0053】
図4,5に示すように、本例では、複数のシェーディング補正データXとして、第1シェーディング補正データX1及び第2シェーディング補正データX2を、例示する。第1シェーディング補正データX1は、第1プリズム位置K1に対応する。第2シェーディング補正データX2は、第2プリズム位置K2に対応する。第1シェーディング補正データX1は、第1出力値Q1に対応する。第2シェーディング補正データX2は、第2出力値Q2に対応する。
【0054】
第1プリズム位置K1では、第1シェーディング補正データX1は、補正前第1像G1aに対して適用される。第1シェーディング補正データX1は、補正前第1像G1aと逆の関係にある。第1シェーディング補正データX1は、全体的にやや明るく、四隅が若干暗い。
【0055】
第2プリズム位置K2では、第2シェーディング補正データX2は、補正前第2像G2aに対して適用される。第2シェーディング補正データX2は、補正前第2像G2aと逆の関係にある。第2シェーディング補正データX2は、第1シェーディング補正データX1に比較して全体的に暗く、特に四隅が顕著に暗い。
【0056】
第1シェーディング補正データX1は、例えば、以下のように設定される。ユーザは、プリズム11を第1プリズム位置K1に動かすとともに、第1プリズム位置K1での微分干渉顕微鏡10にて基板Wの表面Waを投影することによって、補正前第1像G1を得る。ユーザは、得られた補正前第1像G1と逆の関係になるように、第1シェーディング補正データX1を作成する。ユーザは、作成された第1シェーディング補正データX1を、検査装置1のコントローラ30に対して入力して記憶させる。第2シェーディング補正データX2についても、同様である。
【0057】
検査装置1のコントローラ30は、プリズム位置K毎に得られたシェーディング補正データXに基づいて、シェーディング補正を行う。検査装置1のコントローラ30は、プリズム11における実際(現在)のプリズム位置Kに関する情報を得て(呼び出して)、得られたプリズム位置Kに対応するシェーディング補正データXに基づいて、像Gに対してシェーディング補正を行う。
【0058】
図4に示すように、検査装置1のコントローラ30は、プリズム11が第1プリズム位置K1にあるとき、補正前第1像G1aに対して第1シェーディング補正データX1を適用して、補正後第1像G1bを得る。補正後第1像G1bでは、輝度のバラツキが無く一様である。
【0059】
図5に示すように、検査装置1のコントローラ30は、プリズム11が第2プリズム位置K2にあるとき、補正前第2像G2aに対して第2シェーディング補正データX2を適用して、補正後第2像G2bを得る。補正後第2像G2bでは、輝度のバラツキが無く一様である。
【0060】
(作用効果)
本実施形態によれば、微分干渉顕微鏡10では、プリズム11は、複数のプリズム位置K(第1プリズム位置K1、第2プリズム位置K2)を移動可能である。プリズム11は、そのプリズム位置Kを変化させることによって、2つの偏光La,Lb同士のシャーH(第1シャーH1、第2シャーH2)を変化させる。
【0061】
2つの偏光La,Lbにおける複数のシャーH(第1シャーH1、第2シャーH2)は、プリズム11における複数のプリズム位置K(第1プリズム位置K1、第2プリズム位置K2)に対応するように、複数パターンある。2つの偏光La,LbのシャーHは、2つの偏光La,Lbの位相差に関係する。
【0062】
ここで、微分干渉顕微鏡10によって基板Wの表面Waを投影して像G(補正前第1像G1a、補正前第2像G2a)を得た場合、像G内における輝度のバラツキの態様は、プリズム11におけるプリズム位置K(第1プリズム位置K1、第2プリズム位置K2)毎に異なる。
【0063】
そこで、検査装置1は、複数のプリズム位置K(第1プリズム位置K1、第2プリズム位置K2)に対応するように、複数のシェーディング補正データX(第1シェーディング補正データX1、第2シェーディング補正データX2)を保持している。
【0064】
検査装置1は、プリズム11における実際のプリズム位置K(第1プリズム位置K1、第2プリズム位置K2)に応じて、複数のシェーディング補正データX(第1シェーディング補正データX1、第2シェーディング補正データX2)の中から、当該プリズム位置Kに対応するシェーディング補正データXを得る。
【0065】
検査装置1は、得られたシェーディング補正データX(第1シェーディング補正データX1、第2シェーディング補正データX2)に基づいて、像G(補正前第1像G1a、補正前第2像G2a)に対してシェーディング補正を行う。
【0066】
このように、検査装置1は、プリズム位置K(第1プリズム位置K1、第2プリズム位置K2)毎に異なるシェーディング補正データX(第1シェーディング補正データX1、第2シェーディング補正データX2)を用意する。
【0067】
これにより、検査装置1は、プリズム11における実際のプリズム位置K(第1プリズム位置K1、第2プリズム位置K2)に応じて、すなわち像G(補正前第1像G1a、補正前第2像G2a)内における輝度のバラツキの態様に応じて、像Gに対して最適なシェーディング補正を行って、像G内における輝度のバラツキを好適に抑制することができる。
【0068】
以上、微分干渉顕微鏡10にて基板Wの表面Waを投影して像Gを得た場合であっても、像G内における輝度のバラツキをシェーディング補正で好適に抑制し得る検査手法を提供することができる。
【0069】
複数のシェーディング補正データX(第1シェーディング補正データX1、第2シェーディング補正データX2)をアクチュエータ20における複数の出力値Q(第1出力値Q1、第2出力値Q2)に対応させることによって、プリズム11における複数のプリズム位置K(第1プリズム位置K1、第2プリズム位置K2)を直接的に測定しなくても、シェーディング補正データXを得ることができる。
【0070】
(その他の実施形態)
以上、本開示を好適な実施形態により説明してきたが、こうした記述は限定事項ではなく、勿論、種々の改変が可能である。
【0071】
アクチュエータ(プリズム移動機構)20は、ボールねじ機構やシリンダ機構などでもよい。
【0072】
プリズム11における複数のプリズム位置Kを、位置センサ等によって、直接的に測定してもよい。
【0073】
被検査対象Wは、基板Wに限定されない。被検査対象は、板材でなくてもよい。被検査対象は、半導体に限定されず、例えば、ガラスや金属や樹脂その他でもよい。
【0074】
光学情報として、輝度以外の指標を用いてもよい。光学情報として、輝度の他に、例えば、色相、明度、暗度、彩度、光度、照度などがある。
【0075】
本開示に係る検査方法は、互いに直交する2つの偏光La,LbのシャーHを変化させるプリズム11が設けられた微分干渉顕微鏡10にて被検査対象(基板W)の表面Waを投影して像Gを得るとともに、像Gに対してシェーディング補正を行って被検査対象(基板W)の表面Waを検査する。
【0076】
この検査方法では、プリズム11は、複数のシャーHに対応する複数のプリズム位置Kに移動可能である。この検査方法では、複数のプリズム位置Kに対応し且つシェーディング補正を行うための複数のシェーディング補正データXを、保持して、シェーディング補正を、プリズム位置K毎に得られたシェーディング補正データXに基づいて行う。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本開示は、検査装置及び検査方法に適用できるので、極めて有用であり、産業上の利用可能性が高い。
【符号の説明】
【0078】
W 基板(被検査対象)
Wa 表面
N 欠陥
G 像
G1 第1像
G1a 補正前第1像
G1b 補正後第1像
G2 第2像
G2a 補正前第2像
G2b 補正後第2像
L 光
La 偏光
Lb 偏光
Pa 点
Pb 点
H シャー
H1 第1シャー
H2 第2シャー
δ 高低差
δ1 第1高低差
δ2 第2高低差
K プリズム位置
K1 第1プリズム位置
K2 第2プリズム位置
Q 出力値
Q1 第1出力値
Q2 第2出力値
X シェーディング補正データ
X1 第1シェーディング補正データ
X2 第2シェーディング補正データ
1 検査装置
10 微分干渉顕微鏡
11 プリズム
20 アクチュエータ(プリズム移動機構)
21 プランジャ
30 コントローラ(制御部)