(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024113544
(43)【公開日】2024-08-22
(54)【発明の名称】装置、温調システムおよび方法
(51)【国際特許分類】
G05B 23/02 20060101AFI20240815BHJP
G05D 23/19 20060101ALI20240815BHJP
【FI】
G05B23/02 Z
G05D23/19 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023018611
(22)【出願日】2023-02-09
(71)【出願人】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100189555
【弁理士】
【氏名又は名称】徳山 英浩
(74)【代理人】
【識別番号】100172236
【弁理士】
【氏名又は名称】岩木 宣憲
(72)【発明者】
【氏名】山田 隆章
(72)【発明者】
【氏名】津端 創
【テーマコード(参考)】
3C223
5H323
【Fターム(参考)】
3C223AA13
3C223BA03
3C223CC02
3C223DD03
3C223EA04
3C223EA06
3C223EB01
3C223FF03
3C223FF35
3C223GG01
3C223HH02
5H323AA05
5H323BB01
5H323CA06
5H323CB02
5H323DB01
5H323GG00
5H323HH02
5H323KK05
5H323MM02
5H323NN03
5H323QQ05
5H323SS01
5H323SS05
(57)【要約】
【課題】対象のモード分類の精度を向上させることが可能な装置を提供すること。
【解決手段】装置が、複数のモードを有する対象の複数種類の特徴量のデータを取得可能な取得部と、取得された特徴量のデータに基づいて対象の状態ベクトルを算出可能な算出部と、算出された状態ベクトルに基づいて、複数のモードのいずれかに現在モードを分類可能な分類部とを備える。分類部は、複数のモードの各々に設定されている基準ベクトルと現在ベクトルとに基づいて算出される類似度に基づいて、現在モードを分類する。類似度が第1閾値以上の場合、現在モードの分類が行われ、類似度が第1閾値未満の場合、現在モードの分類が行われない。
【選択図】
図14
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のモードを有する対象の複数種類の特徴量のデータを取得可能な取得部と、
取得された前記特徴量のデータに基づいて前記対象の状態ベクトルを算出可能な算出部と、
算出された前記状態ベクトルに基づいて、複数の前記モードのいずれかに、現在の前記対象の前記モードである現在モードを分類可能な分類部と
を備え、
前記分類部は、
複数の前記モードの各々に設定されている基準ベクトルと、前記現在モードの前記状態ベクトルである現在ベクトルとに基づいて算出される類似度に基づいて、前記現在モードを分類し、
前記類似度が第1閾値以上の場合、前記現在モードの分類を行い、前記類似度が前記第1閾値未満の場合、前記現在モードの分類を行わないように構成されている、装置。
【請求項2】
前記分類部は、前記基準ベクトルおよび前記現在ベクトルが成す角度、または、前記基準ベクトルに直交する方向における前記基準ベクトルおよび前記現在ベクトル間の距離に基づいて、前記類似度を算出する、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記分類部は、算出された前記現在ベクトルのうち、原点からの距離が第2閾値未満の部分を前記現在モードの分類に用いないように構成されている、請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
前記対象が、温度調節器であり、
前記特徴量には、少なくとも、前記温度調節器の温度に関する特徴量と、前記温度調節器の操作量に関する特徴量とが含まれる、請求項1または2に記載の装置。
【請求項5】
前記分類部が、算出された前記類似度が最も大きい前記モードに、前記現在モードを分類するように構成されている、請求項1または2に記載の装置。
【請求項6】
前記類似度が、コサイン類似度、前記基準ベクトルおよび前記現在ベクトルの角度差の1次関数で表される数値である、請求項1または2に記載の装置。
【請求項7】
前記基準ベクトルおよび前記現在ベクトルに基づいて前記対象の異常可能性を判定可能な判定部を備える、請求項1または2に記載の装置。
【請求項8】
前記判定部は、前記基準ベクトルおよび前記現在ベクトルの距離が第3閾値を超える場合に、前記対象が異常であると判定する、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記判定部は、前記基準ベクトルおよび前記現在ベクトルのベクトル要素の差のうち、少なくとも1つのベクトル要素の差が第4閾値を超える場合に、前記対象が異常であると判定する、請求項7に記載の装置。
【請求項10】
請求項1または2に記載の装置と、
前記対象である温度調節器と
を備える、温調システム。
【請求項11】
前記類似度、前記基準ベクトルおよび前記現在ベクトルの角度差、および、分類された前記現在モードの少なくともいずれかを表示可能な表示装置を備える、請求項10の温調システム。
【請求項12】
複数のモードを有する対象の複数種類の特徴量のデータを取得し、
取得された前記特徴量のデータに基づいて前記対象の状態ベクトルを算出し、
算出された前記状態ベクトルに基づいて、複数の前記モードの各々のいずれかに、現在の前記対象のモードである現在モードを分類する方法であって、
複数の前記モードの各々に対して設定されている基準ベクトルと、前記現在モードの前記状態ベクトルである現在ベクトルとに基づいて算出される類似度に基づいて、前記現在モードを分類し、
前記類似度が第1閾値以上の場合、前記現在モードの分類を行い、前記類似度が前記第1閾値未満の場合、前記現在モードの分類を行わない、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、装置、温調システムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、センシングデータにおける所定期間の波形である期間波形と予め定められた基準データの波形である基準波形との位置関係を異ならせ、異ならせる毎に両者の類似度を算出する類似度算出部を備えるデータ解析装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のデータ解析装置を用いて、現在のモードを複数のモードのいずれかに分類する場合、現在のモードおよび複数のモードの各々の類似度を用いることが考えられる。この場合、複数のモードの中に現在のモードに近いモードがない場合であっても、現在のモードを類似度の最も高いモードに分類してしまい、分類精度が低下する場合がある。
【0005】
本開示は、対象のモード分類の精度を向上させることが可能な装置、温調システムおよび方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様の装置は、
複数のモードを有する対象の複数種類の特徴量のデータを取得可能な取得部と、
取得された前記特徴量のデータに基づいて前記対象の状態ベクトルを算出可能な算出部と、
算出された前記状態ベクトルに基づいて、複数の前記モードのいずれかに、現在の前記対象の前記モードである現在モードを分類可能な分類部と
を備え、
前記分類部は、
複数の前記モードの各々に設定されている基準ベクトルと、前記現在モードの前記状態ベクトルである現在ベクトルとに基づいて算出される類似度に基づいて、前記現在モードを分類し、
前記類似度が第1閾値以上の場合、前記現在モードの分類を行い、前記類似度が前記第1閾値未満の場合、前記現在モードの分類を行わないように構成されている。
【0007】
本開示の一態様の温調システムは、
前記態様の装置と、
前記対象である温度調節器と
を備える。
【0008】
本開示の一態様の方法は、
複数のモードを有する対象の複数種類の特徴量のデータを取得し、
取得された前記特徴量のデータに基づいて前記対象の状態ベクトルを算出し、
算出された前記状態ベクトルに基づいて、複数の前記モードの各々のいずれかに、現在の前記対象のモードである現在モードを分類する方法であって、
複数の前記モードの各々に対して設定されている基準ベクトルと、前記現在モードの前記状態ベクトルである現在ベクトルとに基づいて算出される類似度に基づいて、前記現在モードを分類し、
前記類似度が第1閾値以上の場合、前記現在モードの分類を行い、前記類似度が前記第1閾値未満の場合、前記現在モードの分類を行わない。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、対象のモード分類の精度を向上させることが可能な装置、温調システムおよび方法を実現きる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本開示の一実施形態の温調システムを示すブロック図。
【
図2】特徴量の一例を説明するための第1のグラフ。
【
図3】特徴量の一例を説明するための第2のグラフ。
【
図4】特徴量の一例を説明するための第3のグラフ。
【
図5】特徴量の一例を説明するための第4のグラフ。
【
図6】特徴量の一例を説明するための第5のグラフ。
【
図7】特徴量の一例を説明するための第6のグラフ。
【
図8】現在ベクトル算出処理の一例を説明するためのフローチャート。
【
図9】特徴量の計測処理の一例を説明するためのフローチャート。
【
図10】基準ベクトルの設定処理の一例を説明するためのフローチャート。
【
図11】第1閾値および第2閾値の第1の例を示すグラフ。
【
図12】第1閾値および第2閾値の第2の例を示すグラフ。
【
図13】基準ベクトルおよび現在ベクトルの一例を示すグラフ。
【
図14】現在モードの分類処理の一例を説明するためのフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の一例を添付図面に従って説明する。以下の説明は、本質的に例示に過ぎず、本開示、本開示の適用物、または、本開示の用途を制限することを意図するものではない。図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは必ずしも合致していない。
【0012】
本開示の一実施形態の温調システム1は、
図1に示すように、温度調節器10と、上位コントローラ(装置の一例)20とを備える。本実施形態では、温調システム1は、閾値設定部40と、設定入力部50と、表示装置60とを備える。
【0013】
温度調節器10は、SSR(ソリッドステートリレー)110を介して、熱処理装置100の熱処理温度を制御可能に構成されている。SSR110には、ヒータ電源120が接続されている。SSR110を介して、熱処理装置100に電力が供給される。熱処理装置100は、ウェハ等の熱処理対象物101(対象の一例)に対して熱処理を実行可能に構成されている。熱処理装置100の熱処理温度は、温度センサ130により検出され、アナログ信号として温度調節器10に送信される。
【0014】
温度調節器10は、例えば、少なくとも1つのプロセッサ17、記憶部18および通信部19を含む。プロセッサ17は、CPU、MPU、GPU、DSP、FPGA、ASIC等を含む。記憶部18は、例えば、内部記録媒体または外部記録媒体で構成されている。内部記録媒体は、不揮発メモリ等を含む。外部記録媒体は、ハードディスク(HDD)、ソリッドステートドライブ(SSD)、光ディスク装置等を含む。通信部19は、例えば、サーバ等の外部装置との間でデータの送受信を行うための通信回路または通信モジュールで構成されている。
【0015】
温度調節器10は、A/D変換部11、温度制御部12、特徴量計測部13および受信部14を含む。A/D変換部11、温度制御部12、特徴量計測部13および受信部14は、例えば、記憶部18に記憶されている所定のプログラムを単一のプロセッサ17または複数のプロセッサ17が実行することにより実現される。
【0016】
A/D変換部11には、温度センサ130で検出された熱処理装置100の熱処理温度データがアナログ信号として入力される。A/D変換部11は、アナログ信号として入力された熱処理装置100の熱処理温度データをデジタル信号に変換して、温度制御部12および特徴量計測部13に送信する。
【0017】
温度制御部12は、熱処理装置100の熱処理温度の目標値に基づいて、SSR110に制御信号(開閉信号)を送信する。
【0018】
特徴量計測部13は、制御波形を取得可能に構成されている。例えば、特徴量計測部13は、制御波形として、A/D変換部11から熱処理温度の時系列データを取得し、温度制御部12から制御信号の操作量、電流および制御信号のデューティ比の時系列データの少なくともいずれかを取得する。
【0019】
特徴量計測部13は、取得した制御波形から、特徴量を算出可能に構成されている。算出された特徴量には、例えば、熱処理温度が整定状態であるとき、および、外乱を受けたときの熱処理装置100の制御波形の特徴量が含まれる。算出された特徴量は、例えば、温度調節器10の記憶部18に記憶される。例えば、特徴量計測部13は、取得部15による制御波形の取得終了を待たずに、特徴量を逐次算出する。
【0020】
一例として、特徴量計測部13は、制御波形の取得終了以降に(言い換えると、制御波形の測定終了以降に)、算出された特徴量(例えば、特徴量のみ)を有線または無線通信により上位コントローラ20に送信する。このとき、特徴量計測部13は、上位コントローラ20にリアルタイムで、取得した制御波形を送信しないように構成されている。これは、例えば、サンプリング時間が高頻度(例えば、50ms)である場合、制御波形のデータ量が、センサ数より多く膨大となり通信負荷が大きくなるためである。例えば、特徴量計測部13は、上位コントローラ20からの通信コマンドで、リアルタイムの特徴量の現在値(言い換えると、最新の特徴量)を上位コントローラ20に送信可能に構成されている。「リアルタイムで送信しない」とは、例えば、サンプリングより長い周期で定期的に送信する、および、上位からのデータ要求コマンドを受信したタイミングで送信する等、所定のタイミングで送信することを含む。
【0021】
図2~
図4を参照して、昇温時に取得された制御波形から算出可能な特徴量の一例を以下に示す。
図2には、熱処理温度の時系列データを示し、
図3には、加熱時の制御信号の操作量または電流の時系列データを示し、
図4には、冷却時の制御信号の操作量または制御信号のデューティ比の時系列データを示す。
図2では、熱処理温度の目標値を「SP」で示している。
図2~
図4では、波形取得開始時間T1から特徴量計測部13で特徴量を逐次算出し、更新する。また、波形取得停止時間T2時点で、最新の特徴量が上位コントローラ20に送信される。
・温度波形の最大傾き:
図2のA1参照
・温度波形の最小傾き:
図2のB1参照
・温度波形の最小偏差(アンダーシュート値):
図2のC1参照
・温度波形の最大偏差(オーバーシュート値):
図2のD1参照
・温度波形における目標温度からの誤差面積:
図2のE1、H1参照
・温度波形におけるオーバーシュート時間:
図2のF1参照
・温度波形における無駄時間:
図2のG1参照
・温度波形における偏差の絶対値平均:
図2の斜線部分の面積(=E1+H1)/波形取得停止時間-波形取得開始時間(=T2-T1)
・温度波形における定常偏差
・温度整定時間
・操作量波形(加熱)における平均操作量または平均電流:
図3の斜線部分の面積(=I1+J1)/波形取得停止時間-波形取得開始時間(=T2-T1)
・温度整定時の操作量または電流:
図3のK1参照(温度整定時の操作量または電流は、波形測定開始および終了とは無関係に算出される)
・最大操作量または最大電流:
図3のL1参照
・最小操作量または最小電流:
図3のM1参照
・操作量波形(冷却)における平均操作量または平均電流:
図4の斜線部分の面積(=N1)/波形取得停止時間-波形取得開始時間(=T2-T1)
・温度整定時の操作量または電流:
図4のO1参照(温度整定時の操作量または電流は、波形測定開始および終了とは無関係に算出される)
・最大操作量または最大デューティ比:
図4のP1参照
・最小操作量または最小デューティ比:
図4のQ1参照
・電流標準偏差
【0022】
図5~
図7を参照して、外乱時に取得された制御波形から算出可能な特徴量の一例を以下に示す。
図5には、熱処理温度の時系列データを示し、
図6には、加熱時の制御信号の操作量または電流の時系列データを示し、
図7には、冷却時の制御信号の操作量または制御信号のデューティ比の時系列データを示す。
図5では、熱処理温度の目標値を「SP」で示している。
図5~
図7では、波形取得開始時間T1から特徴量計測部13で特徴量を逐次算出し、更新する。また、波形取得停止時間T2時点で、最新の特徴量が上位コントローラ20に送信される。
・温度波形の最大傾き:
図5のA2参照
・温度波形の最小傾き:
図5のB2参照
・温度波形の最小偏差(アンダーシュート量):
図5のC2参照
・温度波形の最大偏差(オーバーシュート量):
図5のD2参照
・温度波形における目標温度からの誤差面積:
図5のG2、H2参照
・温度波形におけるオーバーシュート時間:
図5のE2参照
・温度波形における無駄時間:
図5のF2参照
・温度波形における偏差の絶対値平均:
図5の斜線部分の面積(=G2+H2)/波形取得停止時間-波形取得開始時間(=T2-T1)
・温度波形における定常偏差
・温度整定時間
・操作量波形(加熱)における平均操作量または平均電流:
図6の斜線部分の面積(=I2+J2)/波形取得停止時間-波形取得開始時間(=T2-T1)
・温度整定時の操作量または電流:
図6のK2参照(温度整定時の操作量または電流は、波形測定開始および終了とは無関係に算出される)
・最大操作量または最大電流:
図6のL2参照
・最小操作量または最小電流:
図6のM2参照
・操作量波形(冷却)における平均操作量または平均電流:
図7の斜線部分の面積(=N2)/波形取得停止時間-波形取得開始時間(=T2-T1)
・温度整定時の操作量または電流:
図7のO2参照(温度整定時の操作量または電流は、波形測定開始および終了とは無関係に算出される)
・最大操作量または最大デューティ比:
図7のP2参照
・最小操作量または最小デューティ比:
図7のQ2参照
・電流標準偏差
【0023】
図4および
図7における「制御信号のデューティ比」には、例えば、冷却弁の開閉信号のデューティ比が含まれる。冷却手段として、電流により動作する素子(例えば、ペルチェ素子)を用いる場合、「制御信号のデューティ比」に代えて「電流」の時系列データから特徴量を算出できる。
【0024】
受信部14は、上位コントローラ20から送信された制御信号を取得可能に構成されている。受信部14は、上位コントローラ20から送信された制御信号により、例えば、設定された熱処理装置100の熱処理温度の目標値を取得する。取得された熱処理装置100の熱処理温度の目標値は、温度制御部12および特徴量計測部13に送信される。
【0025】
上位コントローラ20は、温度調節器10に対して制御信号を送信可能に構成されている。上位コントローラ20は、例えば、少なくとも1つのプロセッサ21、記憶部22および通信部23を含む。プロセッサ21は、CPU、MPU、GPU、DSP、FPGA、ASIC等を含む。記憶部22は、例えば、内部記録媒体または外部記録媒体で構成されている。内部記録媒体は、不揮発メモリ等を含む。外部記録媒体は、ハードディスク(HDD)、ソリッドステートドライブ(SSD)、光ディスク装置等を含む。通信部23は、例えば、サーバ等の外部装置との間でデータの送受信を行うための通信回路または通信モジュールで構成されている。
【0026】
上位コントローラ20は、取得部31、算出部32および分類部33を備える。本実施形態では、上位コントローラ20は、判定部34をさらに備える。取得部31、算出部32、分類部33および判定部34は、例えば、記憶部22に記憶されている所定のプログラムを単一のプロセッサ21または複数のプロセッサ21が実行することにより実現される。
【0027】
取得部31は、複数のモードを有する対象(本実施形態では、熱処理対象物101)の複数種類の特徴量のデータを取得可能に構成されている。本実施形態では、取得部31は、通信部23を介して温度調節器10の特徴量計測部13で算出された特徴量のデータを取得可能に構成されている。取得部31は、特徴量に加えて、閾値設定部40で設定された閾値と、各モードに設定されている基準ベクトルとを取得可能に構成されている。
【0028】
算出部32は、取得された特徴量のデータに基づいて対象の状態ベクトルを算出可能に構成されている。算出される状態ベクトルは、現在の対象のモードである現在モードの状態ベクトル(現在ベクトルともいう)である。
【0029】
図8~
図10を参照して、「現在ベクトルの算出処理」の一例、「特徴量の計測処理」の一例および「基準ベクトルの設定処理」の一例を説明する。ここでは、対象が、複数のモードとして、第1モードおよび第2モードを有し、第1特徴量として「操作量波形における平均操作量」と、第2特徴量として「温度波形の最大偏差(オーバーシュート値)」とが取得される場合について説明する。
【0030】
図8を参照して、現在ベクトルの算出処理の一例を説明する。
図8に示す現在ベクトルの算出処理は、一例として、上位コントローラ20の少なくとも1つのプロセッサ21が記憶部22に記憶されている所定のプログラムを実行することで実施される。
【0031】
図8に示すように、取得部31が、対象の複数種類の特徴量(ここでは、第1特徴量および第2特徴量)のデータを取得すると(ステップS1)、算出部32は、取得された特徴量を要素とするベクトルに対して基準値を原点とする座標変換を行う(ステップS2)。基準値は、特徴量の変動がない状態であり、例えば、予め計測により設定される。
【0032】
座標変換における「基準値」、「座標変換前のベクトル」および「座標変換後のベクトル」の一例を以下に示す。
(基準値)
・第1特徴量の基準値=「20%」
・第2特徴量の基準値=「摂氏10度」
(座標変換前のベクトル)
・第1特徴量=「20%」
・第2特徴量=「摂氏15度」
(座標変換後のベクトル)
・第1要素=「第1特徴量」-「第1特徴量の基準値」=「20%」-「20%」=「ゼロ%」
・第2要素=「第1特徴量」-「第1特徴量の基準値」=「摂氏15度」-「摂氏10度」=「摂氏5度」
【0033】
座標変換が行われると、算出部32は、座標変換されたベクトルを規格化して現在ベクトルを算出し(ステップS3)、現在ベクトルの算出処理が終了する。規格化とは、ベクトルの各要素の感度およびばらつき幅を均一にするために、適当な定数(以下、規格化定数という。)を乗じる、または、除算することによって、ベクトルの各要素のスケールを変更することである。規格化することで、各特徴量のスケール差が大きい場合であっても、スケールが大きい特徴量に偏重したベクトルが生成されることなく、適切な分類結果を得ることができる。
【0034】
規格化における「規格化定数」、「規格化前のベクトル」および「規格化後のベクトル」の一例を以下に示す。
(規格化定数)
・第1特徴量の規格化定数=「10%」
・第2特徴量の規格化定数=「摂氏10度」
(規格化前のベクトル=座標変換後のベクトル)
・第1要素=「20%」-「20%」=「ゼロ%」
・第2要素=「摂氏15度」-「摂氏10度」=「摂氏5度」
(規格化後のベクトル=現在ベクトル)
・第1要素=「ゼロ%」/「10%」=「0.0」
・第2要素=「摂氏5度」/「摂氏10度」=「0.5」
【0035】
図9を参照して、特徴量の計測処理について説明する。
図9に示す特徴量の計測処理は、一例として、温度調節器10の少なくとも1つのプロセッサ17が記憶部18に記憶されている所定のプログラムを実行することで実施される。
【0036】
図9に示すように、特徴量の計測処理が開始されると、特徴量計測部13は、初期設定を行う(ステップS11)。初期設定には、例えば、サンプリング幅、サンプリング回数、初期温度等が含まれる。
【0037】
初期設定が行われると、特徴量計測部13は、制御波形のサンプリング値を取得し(ステップS12)、取得された制御波形のサンプリング値から、第1特徴量の計測条件が充足されているか否かを判定する(ステップS13)。第1特徴量の計測条件が充足されていると判定されると、特徴量計測部13は、取得された制御波形のサンプリング値から、第1特徴量を計測し(ステップS14)、ステップS15に進む。ステップS13で第1特徴量の計測条件が充足されていると判定されなかった場合、特徴量計測部13は、第1特徴量の計測を行わず、ステップS15に進む。
【0038】
例えば、第1特徴量が「操作量波形における平均操作量」である場合、全てのサンプリング時間における操作量が用いられる。このため、ステップS13では、第1特徴量の計測条件が充足されていると判定される。ステップS14では、全てのサンプリング時間における操作量の平均値が第1特徴量として計測される。
【0039】
ステップS15では、特徴量計測部13が、取得された制御波形のサンプリング値から、第2特徴量の計測条件が充足されているか否かを判定する。第2特徴量の計測条件が充足されていると判定されると、特徴量計測部13は、取得された制御波形のサンプリング値から、第2特徴量を計測し(ステップS16)、ステップS17に進む。ステップS15で第2特徴量の計測条件が充足されていると判定されなかった場合、特徴量計測部13は、第2特徴量の計測を行わず、ステップS17に進む。
【0040】
例えば、第2特徴量が「温度波形の最大偏差(オーバーシュート値)」である場合、ステップS15では、「現在の温度偏差>第2特徴量」のときに、第2特徴量の計測条件が充足されていると判定される。ステップS16では、現在の温度偏差が第2特徴量として計測される。
【0041】
ステップS17では、特徴量計測部13が、特徴量の計測処理を終了するか否かを判定する。特徴量の計測処理が終了すると判定されなかった場合、ステップS12に戻り、制御波形のサンプリング値が取得される。
【0042】
図10を参照して、基準ベクトルの設定処理について説明する。
図10に示す基準ベクトルの設定処理は、一例として、上位コントローラ20の少なくとも1つのプロセッサ21が記憶部22に記憶されている所定のプログラムを実行することで実施される。
【0043】
図10に示すように、算出部32は、対象の各モードに対して基準値を設定する(ステップS21)。設定された各特徴量の基準値の一例を以下に示す。
・第1特徴量の基準値=「20%」
・第2特徴量の基準値=「摂氏10度」
【0044】
基準値が設定されると、算出部32は、対象の各モードの状態ベクトル(特徴量の数値)を設定する(ステップS22)。設定された各モードの状態ベクトルの一例を以下に示す。
(第1モード)
・第1要素(第1特徴量)=「20%」
・第2要素(第2特徴量)=「摂氏15度」
(第2モード)
・第1要素(第1特徴量)=「30%」
・第2要素(第2特徴量)=「摂氏10度」
【0045】
対象の各モードの状態ベクトルが設定されると、算出部32は、規格化定数を設定する(ステップS23)。規格化定数は、各特徴量に対して設定される。ここで設定された規格化定数は、
図8のステップS3で用いてもよい。設定された規格化定数の一例を以下に示す。
・第1特徴量の規格化定数=「10%」
・第2特徴量の規格化定数=「摂氏10度」
【0046】
規格化定数が設定されると、算出部32は、設定された対象の各モードの状態ベクトルに対して、設定された基準値を原点とする座標変換を行う(ステップS24)。ステップS21~S23の設定例を用いた座標変換の一例を以下に示す。
(第1モード)
・第1要素=「第1モードの第1特徴量」-「第1特徴量の基準値」=「20%」-「20%」=「ゼロ%」
・第2要素=「第1モードの第2特徴量」-「第2特徴量の基準値」=「摂氏15度」-「摂氏10度」=「摂氏5度」
(第2モード)
・第1要素=「第2モードの第1特徴量」-「第2特徴量の基準値」=「30%」-「20%」=「10%」
・第2要素=「第2モードの第2特徴量」-「第2特徴量の基準値」=「摂氏10度」-「摂氏10度」=「摂氏ゼロ度」
【0047】
座標変換が行われると、算出部32は、設定された規格化定数を用いて、座標変換された各モードの状態ベクトルを規格化し、規格化されたベクトルを基準ベクトルとして設定する(ステップS25)。基準ベクトルが設定されると、基準ベクトルの設定処理が終了する。各モードの基準ベクトルの一例を以下に示す。
(第1モードの基準ベクトル)
・第1要素=「ゼロ%」/「10%」=「0.0」
・第2要素=「摂氏5度」/「摂氏10度」=「0.5」
(第2モードの基準ベクトル)
・第1要素=「10%」/「10%」=「1.0」
・第2要素=「摂氏ゼロ度」/「摂氏10度」=「0.0」
【0048】
分類部33は、算出部32で算出された対象の状態ベクトルに基づいて、複数のモードのいずれかに、現在の対象のモードである現在モードを分類可能に構成されている。詳しくは、分類部33は、複数のモードの各々に設定されている基準ベクトルと現在ベクトルとに基づいて算出される類似度に基づいて、現在モードを分類可能に構成されている。
【0049】
本実施形態では、類似度は、基準ベクトルおよび現在ベクトルが成す角度(以下、ベクトル間角度ともいう。)、または、基準ベクトルに直交する方向における基準ベクトルおよび現在ベクトル間の距離(以下、ベクトル間距離ともいう。)に基づいて算出される。
図11および
図12に、
図10のステップS25で設定された第1モードおよび第2モードの基準ベクトルを示す。
図11および
図12において、第1モードを破線で示し、第2モードを実線で示している。類似度は、ベクトル間角度またはベクトル間距離がゼロに近づくについて、大きくなる。例えば、類似度は、ベクトル間角度に基づいて算出される場合、コサイン類似度(=cos角度差)、または、基準ベクトルおよび現在ベクトルの角度差の1次関数で表される一致度(=90deg-角度差/90deg)で表される。
【0050】
ベクトル間角度に基づいた類似度の算出例を説明する。ここでは、熱処理対象物101が「半導体ウェハ」であり、熱処理装置100が「半導体ウェハの加熱装置」であり、第1モードが「プロキシミティギャップの変動に関するモード」であり、第2モードが「ヒータ抵抗の劣化による変動関するモード」である場合について説明する。
【0051】
プロキシミティギャップは、加熱装置の熱板と、熱板上の半導体ウェハとの間の微小な空隙の距離であり、熱板または半導体ウェハの反り、熱板および半導体ウェハ間の異物の有無等によって変動する。プロキシミティギャップが大きいほど、半導体ウェハは加熱され難くなる。熱処理装置100の電熱ヒータは劣化すると抵抗値が増加する。その結果、同じ操作量を与えたときに電熱ヒータが発生する熱量が低下する。
【0052】
下記表1に示す特徴量が取得されたとする。この場合における第1モードの基準ベクトルV1、第2モードの基準ベクトルV2および現在ベクトルV3を
図13に示す。
図13に示すように、第1モードの基準ベクトルV1と現在ベクトルV3とは、ゼロ度の角度を成し、第2モードの基準ベクトルV2と現在ベクトルV3とは、45度の角度を成している。この場合における第1モードおよび現在モードの類似度と、第2モードおよび現在モードの類似度とは、以下のように算出される。
【表1】
(第1モードおよび現在モードの類似度)
・コサイン類似度=cos0度=1.0
・一致度=(90-0/90)=1.0(100%)
(第2モードおよび現在モードの類似度)
・コサイン類似度=cos45度≒0.707
・一致度=(90-45)/90=0.5(50%)
【0053】
ここで、角度が「0deg」、「10deg」、「20deg」および「45deg」の場合におけるコサイン類似度および一致度を表2に示す。コサイン類似度の「0.985」と「0.940」の差が10度の角度に相当することをイメージすることは難しい場合がある。類似度として一致度を用いることで、各モードの基準ベクトルに対する現在ベクトルの角度および方向の差が、容易にイメージできるようになる。
【表2】
【0054】
分類部33は、類似度が第1閾値以上の場合、現在モードの分類を行い、類似度が第1閾値未満の場合、現在モードの分類を行わないように構成されている。本実施形態では、第1閾値は、閾値設定部40から出力され、上位コントローラ20の記憶部22に記憶される。
図11および
図12において、第1モードの第1閾値は「L11」で示され、第2モードの第1閾値は「L12」で示されている。
【0055】
例えば、第1モードの基準ベクトルとのベクトル間角度がL11以下であり、第2モードの基準ベクトルとのベクトル間角度がL12よりも大きい場合、分類部33は、現在モードを第1モードに分類する。第2モードの基準ベクトルとのベクトル間角度がL12以下であり、第1モードの基準ベクトルとのベクトル間角度がL11よりも大きい場合、分類部33は、現在モードを第2モードに分類する。第1モードの基準ベクトルとのベクトル間角度がL11よりも大きく、かつ、第2モードの基準ベクトルとのベクトル間角度がL12よりも大きい場合、分類部33は、現在モードの分類を行わない。
【0056】
例えば、第1モードの基準ベクトルとのベクトル間角度がL11以下であり、かつ、第2モードの基準ベクトルとのベクトル間角度がL12以下である場合、分類部33は、算出された類似度が最も大きいモードに現在モードを分類する。第1モードの基準ベクトルとのベクトル間角度が、第2モードの基準ベクトルとのベクトル間角度よりも小さい(=類似度が高い)場合、分類部33は、現在モードを第1モードに分類する。
【0057】
本実施形態では、分類部33は、座標変換後の現在ベクトルにおける原点からの距離が第2閾値L2未満の部分を現在モードの分類に用いないように構成されている。第2閾値L2は、例えば、異常判定を行えるか否かの境界値であり、閾値設定部40から出力され、上位コントローラ20の記憶部22に記憶される。
【0058】
判定部34は、基準ベクトルおよび現在ベクトルに基づいて対象の異常可能性を判定可能に構成されている。異常判定方法の一例と以下に示す。第3閾値および第4閾値は、例えば、分類された現在モードに応じて設定される値であり、閾値設定部40から出力され、上位コントローラ20の記憶部22に記憶される。
・判定部34は、基準ベクトルおよび現在ベクトルの距離が第3閾値を超える場合に、対象が異常であると判定する。基準ベクトルおよび現在ベクトルの距離は、例えば、ユークリッド距離、マンハッタン距離またはチェビシェフ距離として算出される。
・判定部34は、基準ベクトルおよび現在ベクトルのベクトル要素の差のうち、少なくとも1つのベクトル要素の差が第4閾値を超える場合に、対象が異常であると判定する。
【0059】
判定部34での判定の結果、対象が異常であると判定された場合は、その結果が異常信号として警報装置140に出力される。警報装置140は、異常信号が出力されると、警報等により対象が異常であることを報知する。
【0060】
閾値設定部40は、例えば、サーバ等の外部装置に設けられ、現在モードの分類および異常判定に用いられる閾値を設定可能に構成されている。閾値設定部40は、例えば、外部装置の少なくとも1つのプロセッサが所定のプログラムを実行することにより実現される。閾値設定部40は、上位コントローラ20に対して通信可能な状態で接続されている。設定された閾値は、有線または無線通信により上位コントローラ20に出力される。
【0061】
設定入力部50は、例えば、サーバ等の外部装置の入力装置で構成されている。ユーザは、設定入力部50を介して、現在モードの分類および異常判定に用いられる閾値を入力できる。設定入力部50を介して入力された閾値は、閾値設定部40に出力される。閾値設定部40は、設定入力部50を介して入力された閾値を現在モードの分類および異常判定に用いられる閾値として設定する。
【0062】
図14を参照して、現在モードの分類処理の一例を説明する。
図14に示す処理は、一例として、上位コントローラ20の少なくとも1つのプロセッサ21が記憶部22に記憶されている所定のプログラムを実行することで実施される。
【0063】
図14に示されているように、各モードの基準ベクトルが設定されると(ステップS31)、上位コントローラ20は、対象の監視を開始するか否かを判定する(ステップS32)。各モードの基準ベクトルの設定は、例えば、
図10に示すように実行される。上位コントローラ20は、例えば、通信部23を介して開始トリガが入力された場合に、対象の監視を開始すると判定する。ステップS32は、対象の監視を開始すると判定されるまで繰り返される。
【0064】
対象の監視を開始すると判定されると、特徴量計測部13は、対象の複数種類の特徴量を計測する(ステップS33)。特徴量の計測は、例えば、
図9に示すように実行される。計測された複数種類の特徴量のデータは、上位コントローラ20の取得部31に出力される。
【0065】
対象の複数種類の特徴量が計測されると、算出部32は、取得された対象の複数種類の特徴量のデータに基づいて、現在ベクトルを算出する(ステップS34)。現在ベクトルの算出は、例えば、
図8に示すように実行される。
【0066】
現在ベクトルが算出されると、分類部33は、各モードに設定されている基準ベクトルと現在ベクトルとに基づいて、類似度を算出する(ステップS35)。類似度は、基準ベクトルおよび現在ベクトルが成す角度(
図11参照)、または、基準ベクトルに直交する方向における基準ベクトルおよび現在ベクトル間の距離(
図12参照)に基づいて算出される。
【0067】
類似度が算出されると、分類部33は、算出された類似度が第1閾値以上であるか否かを判定する(ステップS36)。算出された類似度が第1閾値以上であると判定されると、分類部33は、算出された類似度に基づいて現在モードを分類する(ステップS37)。ステップS36で算出された類似度が第1閾値以上であると判定されなかった場合、分類部33は、現在モードを分類しない。ステップS36で算出された類似度が第1閾値以上であると判定されると、または、ステップS37で算出された類似度に基づいて現在モードが分類されると、現在モードの分類処理が終了する。
【0068】
上位コントローラ20によれば、次のような効果を発揮できる。
【0069】
上位コントローラ20が、複数のモードを有する対象の複数種類の特徴量のデータを取得可能な取得部31と、取得された特徴量のデータに基づいて対象の状態ベクトルを算出可能な算出部32と、算出された状態ベクトルに基づいて、複数のモードのいずれかに、現在の対象の前記モードである現在モードを分類可能な分類部33とを備える。分類部33は、複数のモードの各々に設定されている基準ベクトルと、現在モードの状態ベクトルである現在ベクトルとに基づいて算出される類似度に基づいて、現在モードを分類する。類似度が第1閾値以上の場合、現在モードの分類を行い、類似度が第1閾値未満の場合、現在モードの分類を行わない。このような構成により、対象のモード分類の精度を向上させることが可能な上位コントローラ20を実現できる。
【0070】
上位コントローラ20は、次に示す複数の構成のいずれか1つまたは複数の構成を任意に採用できる。つまり、次に示す複数の構成のいずれか1つまたは複数の構成は、前記実施形態に含まれていた場合は任意に削除でき、前記実施形態に含まれていない場合は任意に付加することができる。このような構成を採用することにより、対象のモード分類の精度を向上させることが可能な上位コントローラ20をより確実に実現できる。
【0071】
分類部33は、基準ベクトルおよび現在ベクトルが成す角度、または、基準ベクトルに直交する方向における基準ベクトルおよび現在ベクトル間の距離に基づいて、類似度を算出する。
【0072】
分類部33は、算出された現在ベクトルのうち、原点からの距離が第2閾値未満の部分を現在モードの分類に用いないように構成されている。変動が小さい原点付近は、SN比が悪いため、誤分類が増加するおそれがある。上記構成を採用することで、対象のモード分類の精度を向上させることが可能な上位コントローラ20を実現できる。
【0073】
対象が、温度調節器10であり、特徴量には、少なくとも、温度調節器10の温度に関する特徴量と、温度調節器10の操作量に関する特徴量とが含まれる。
【0074】
分類部33は、算出された類似度が最も大きいモードに、現在モードを分類するように構成されている。
【0075】
類似度が、コサイン類似度、または、基準ベクトルおよび現在ベクトルの角度差の1次関数で表される数値である。
【0076】
上位コントローラ20が、基準ベクトルおよび現在ベクトルに基づいて対象の異常可能性を判定可能な判定部34を備える。例えば、算出された現在ベクトルのうち、原点からの距離が第2閾値未満の部分を現在モードの分類に用いないように分類部33を構成することで、対象の異常可能性をより正確に判定できる。
【0077】
判定部34は、基準ベクトルおよび現在ベクトルの距離が第3閾値を超える場合に、対象が異常であると判定する。
【0078】
判定部34は、基準ベクトルおよび現在ベクトルのベクトル要素の差のうち、少なくとも1つのベクトル要素の差が第4閾値を超える場合に、対象が異常であると判定する。
【0079】
温調システム1によれば、次のような効果を発揮できる。
【0080】
温調システム1は、上位コントローラ20と温度調節器10とを備える。このような構成により、対象のモード分類の精度を向上させることが可能な温調システム1を実現できる。
【0081】
温調システム1は、類似度、基準ベクトルおよび現在ベクトルの角度差、および、分類された現在モードの少なくともいずれかを表示可能な表示装置60を備える。このような構成により、類似度および現在モード等を確認し易い温調システム1を実現できる。
【0082】
本開示の方法によれば、次のような効果を発揮できる。
【0083】
本開示の方法は、複数のモードを有する対象の複数種類の特徴量のデータを取得し、取得された特徴量のデータに基づいて対象の状態ベクトルを算出し、算出された状態ベクトルに基づいて、複数のモードの各々のいずれかに、現在の対象のモードである現在モードを分類する方法であって、次の構成を備える。このような構成により、対象のモード分類の精度を向上させることが可能な方法を実現できる。
・複数のモードの各々に対して設定されている基準ベクトルと、現在モードの状態ベクトルである現在ベクトルとに基づいて算出される類似度に基づいて、現在モードを分類する。
・基準ベクトルおよび現在ベクトルが成す角度、または、基準ベクトルに直交する方向における基準ベクトルおよび現在ベクトル間の距離に基づいて類似度を算出する。
・類似度が第1閾値以上の場合、現在モードの分類を行い、類似度が前記第1閾値未満の場合、現在モードの分類を行わない。
【0084】
本開示の方法は、コンピュータに実行させることができる。つまり、本開示には、異常判定方法をコンピュータに実行させるためのプログラム、および、異常判定方法をコンピュータに実行させるためのプログラムを記憶するコンピュータ可読性の記憶媒体が含まれる。
【0085】
上位コントローラ20、温調システム1および本開示の方法は、次のように構成することもできる。
【0086】
分類部33は、以下に示すように構成されていてもよいし、構成されていなくてもよい。
・基準ベクトルおよび現在ベクトルが成す角度、または、基準ベクトルに直交する方向における基準ベクトルおよび現在ベクトル間の距離に基づいて、類似度を算出する。つまり、分類部33は、基準ベクトルおよび現在ベクトルが成す角度、および、基準ベクトルに直交する方向における基準ベクトルおよび現在ベクトル間の距離以外のパラメータに基づいて、類似度を算出するように構成されてもよい。
・算出された現在ベクトルのうち、原点からの距離が第2閾値未満の部分を現在モードの分類に用いない。
・算出された類似度が最も大きいモードに、現在モードを分類する。
【0087】
対象は、温度調節器10に限らず、複数のモードを有し、複数種類の特徴量を取得可能な任意の機器であってもよい。
【0088】
類似度は、コサイン類似度、または、基準ベクトルおよび現在ベクトルの角度差の1次関数で表される数値に限らず、他の数値を用いて表されていてもよい。
【0089】
判定部34は、省略できる。この場合、サーバ等の外部装置に判定部34に相当する構成を設けてもよい。上位コントローラ20および外部装置は、通信部23を介して有線または無線通信で接続される。
【0090】
表示装置60は、省略できる。この場合、上位コントローラ20は、通信部23を介して類似度および現在モード等を外部の表示装置(例えば、PCのモニタ)に出力するように構成してもよい。上位コントローラ20および外部の表装置は、有線通信または無線通信で接続される。
【0091】
以上、図面を参照して本開示における種々の実施形態を詳細に説明したが、最後に、本開示の種々の態様について説明する。以下の説明では、一例として、参照符号も添えて記載する。
【0092】
本開示の第1態様の装置は、
複数のモードを有する対象の複数種類の特徴量のデータを取得可能な取得部31と、
取得された前記特徴量のデータに基づいて前記対象の状態ベクトルを算出可能な算出部32と、
算出された前記状態ベクトルに基づいて、複数の前記モードのいずれかに、現在の前記対象の前記モードである現在モードを分類可能な分類部33と
を備え、
前記分類部33は、
複数の前記モードの各々に設定されている基準ベクトルと、前記現在モードの前記状態ベクトルである現在ベクトルとに基づいて算出される類似度に基づいて、前記現在モードを分類し、
前記類似度が第1閾値以上の場合、前記現在モードの分類を行い、前記類似度が前記第1閾値未満の場合、前記現在モードの分類を行わないように構成されている。
【0093】
本開示の第2態様の装置は、第1態様の装置において、
前記分類部33は、前記基準ベクトルおよび前記現在ベクトルが成す角度、または、前記基準ベクトルに直交する方向における前記基準ベクトルおよび前記現在ベクトル間の距離に基づいて、前記類似度を算出する。
【0094】
本開示の第3態様の装置は、第1態様または第2態様の装置において、
前記分類部33は、算出された前記現在ベクトルのうち、原点からの距離が第2閾値未満の部分を前記現在モードの分類に用いないように構成されている。
【0095】
本開示の第4態様の装置は、第1態様~第3態様のいずれかの装置において、
前記対象が、温度調節器10であり、
前記特徴量には、少なくとも、前記温度調節器10の温度に関する特徴量と、前記温度調節器10の操作量に関する特徴量とが含まれる。
【0096】
本開示の第5態様の装置は、第1態様~第4態様のいずれかの装置において、
前記分類部33が、算出された前記類似度が最も大きい前記モードに、前記現在モードを分類するように構成されている。
【0097】
本開示の第6態様の装置は、第1態様~第5態様のいずれかの装置において、
前記類似度が、コサイン類似度、または、前記基準ベクトルおよび前記現在ベクトルの角度差の1次関数で表される数値である。
【0098】
本開示の第7態様の装置は、第1態様~第6態様のいずれかの装置において、
前記基準ベクトルおよび前記現在ベクトルに基づいて前記対象の異常可能性を判定可能な判定部34を備える。
【0099】
本開示の第8態様の装置は、第7態様の装置において、
前記判定部34は、前記基準ベクトルおよび前記現在ベクトルの距離が第3閾値を超える場合に、前記対象が異常であると判定する。
【0100】
本開示の第9態様の装置は、第7態様または第8態様の装置において、
前記判定部34は、前記基準ベクトルおよび前記現在ベクトルのベクトル要素の差のうち、少なくとも1つのベクトル要素の差が第4閾値を超える場合に、前記対象が異常であると判定する。
【0101】
本開示の第10態様の温調システム1は、
第1態様~第9態様の装置と、
前記対象である温度調節器10と
を備える。
【0102】
本開示の第11態様の温調システム1は、第10態様の温調システム1において、
前記類似度、前記基準ベクトルおよび前記現在ベクトルの角度差、および、分類された前記現在モードの少なくともいずれかを表示可能な表示装置60を備える。
【0103】
本開示の第12態様の方法は、
複数のモードを有する対象の複数種類の特徴量のデータを取得し、
取得された前記特徴量のデータに基づいて前記対象の状態ベクトルを算出し、
算出された前記状態ベクトルに基づいて、複数の前記モードの各々のいずれかに、現在の前記対象のモードである現在モードを分類する方法であって、
複数の前記モードの各々に対して設定されている基準ベクトルと、前記現在モードの前記状態ベクトルである現在ベクトルとに基づいて算出される類似度に基づいて、前記現在モードを分類し、
前記類似度が第1閾値以上の場合、前記現在モードの分類を行い、前記類似度が前記第1閾値未満の場合、前記現在モードの分類を行わない。
【0104】
本開示の第13態様のプログラムは、
複数のモードを有する対象の複数種類の特徴量のデータを取得し、
取得された前記特徴量のデータに基づいて前記対象の状態ベクトルを算出し、
算出された前記状態ベクトルに基づいて、複数の前記モードの各々のいずれかに、現在の前記対象のモードである現在モードを分類する方法であって、
複数の前記モードの各々に対して設定されている基準ベクトルと、前記現在モードの前記状態ベクトルである現在ベクトルとに基づいて算出される類似度に基づいて、前記現在モードを分類し、
前記類似度が第1閾値以上の場合、前記現在モードの分類を行い、前記類似度が前記第1閾値未満の場合、前記現在モードの分類を行わない、方法をコンピュータに実行させる。
【0105】
前記様々な実施形態または変形例のうちの任意の実施形態または変形例を適宜組み合わせることにより、それぞれの有する効果を奏するようにすることができる。また、実施形態同士の組み合わせまたは実施例同士の組み合わせまたは実施形態と実施例との組み合わせが可能であると共に、異なる実施形態または実施例の中の特徴同士の組み合わせも可能である。
【0106】
本開示は、添付図面を参照しながら好ましい実施形態に関連して充分に記載されているが、この技術の熟練した人々にとっては種々の変形や修正は明白である。そのような変形や修正は、添付した請求の範囲による本開示の範囲から外れない限りにおいて、その中に含まれると理解されるべきである。
【産業上の利用可能性】
【0107】
本開示の装置、温調システムおよび方法は、例えば、半導体製造装置に適用できる。
【符号の説明】
【0108】
1 温調システム
10 温度調節器
11 A/D変換部
12 温度制御部
13 特徴量計測部
14 受信部
15 取得部
17 プロセッサ
18 記憶部
19 通信部
20 上位コントローラ
21 プロセッサ
22 記憶部
23 通信部
31 取得部
32 算出部
33 分類部
34 判定部
40 閾値設定部
50 設定入力部
60 表示装置
100 熱処理装置
101 熱処理対象物
101 半導体ウェハ
120 ヒータ電源
130 温度センサ
140 警報装置