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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024113546
(43)【公開日】2024-08-22
(54)【発明の名称】酸素検知剤、及び酸素検知剤ラベル
(51)【国際特許分類】
   B65D 81/26 20060101AFI20240815BHJP
   G01N 31/00 20060101ALI20240815BHJP
   G01N 31/22 20060101ALI20240815BHJP
【FI】
B65D81/26 S
G01N31/00 L
G01N31/22 121A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023018614
(22)【出願日】2023-02-09
(71)【出願人】
【識別番号】594052799
【氏名又は名称】ピアテック有限会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124419
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 敬也
(74)【代理人】
【識別番号】100162293
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷 久生
(72)【発明者】
【氏名】瓜生 喜章
【テーマコード(参考)】
2G042
3E067
【Fターム(参考)】
2G042AA01
2G042BA07
2G042CB01
2G042DA08
2G042FB05
2G042FC03
3E067AA05
3E067AB96
3E067BA12A
3E067BB15A
3E067BB16A
3E067CA03
3E067CA11
3E067CA24
3E067EA06
3E067EE47
3E067FA01
3E067FB07
3E067FC01
3E067GD01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】酸素透過性を維持しつつ、メチレンブルー等の酸化還元色素が染み出して包装袋に転写してしまい酸素検知剤機能を果たさなくなるという問題を解決し、さらに、メチレンブルー等の酸化還元色素の染み出しに拠る食品への害も起こさない、更に変色スピードも速いので出荷スピードアップにも貢献することができる酸素検知剤、及び酸素検知剤ラベルを提供すること。
【解決手段】包装内部の脱酸素状態を包装外部から視認することができる酸素検知剤であって、外側が有孔フィルム60、内側が透過性樹脂膜70からなる二重構造フィルムシートの内部に、酸素検知インキを多孔性粉末に含侵させた酸素検知インキ体20を封入する酸素検知剤、及び食品等の包装内に食品等と一緒に封入される脱酸素剤の表面に貼ることで包装内の脱酸素状態を外部から視認することができる酸素検知剤ラベル10とした。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
包装内部の脱酸素状態を包装外部から視認することができる酸素検知剤であって、
外側が有孔フィルム、内側が透過性樹脂膜からなる二重構造フィルムシートの内部に、
酸素検知インキを多孔性粉末に含侵させた酸素検知インキ体を封入することを特徴とする酸素検知剤。
【請求項2】
前記酸素検知インキは、塩基性物質、酸化還元色素、還元剤、着色剤の中から少なくとも1つ以上、及び溶媒(水溶液又はエタノール溶液)を備えることを特徴とする請求項1に記載の酸素検知剤。
【請求項3】
前記有孔フィルムは、孔径0.3mm~0.5mmの複数の孔が0.6mm~0.8mm間隔で穿設されており、前記透過性樹脂膜は、厚み3μm~8μmであり、酸素透過度が100000~130000(CC/m・24hr)であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の酸素検知剤。
【請求項4】
食品等の包装内部に食品等と一緒に封入される脱酸素剤の表面に貼ることで包装内部の脱酸素状態を包装外部から視認することができる酸素検知剤ラベルであって、
酸素検知インキを印刷したもの、前記酸素検知インキを含侵させた多孔性粉末、前記酸素検知インキを含侵させた吸湿紙のいずれか1つである酸素検知インキ体と、
前記酸素検知インキ体の土台となる土台フィルムと、
前記酸素検知インキ体と前記土台フィルムを上下から挟むように設置された粘着剤層と、
前記土台フィルム側に設置された離型紙と、
前記酸素検知インキ体側に設置された有孔フィルムを備え、さらに、該有孔フィルム上に透過性樹脂膜を備えることを特徴とする酸素検知剤ラベル。
【請求項5】
前記酸素検知インキは、塩基性物質、酸化還元色素、還元剤、着色剤の中から少なくとも1つ以上、及び溶媒(水溶液又はエタノール溶液)を備えることを特徴とする請求項4に記載の酸素検知剤ラベル。
【請求項6】
前記有孔フィルムは、孔径0.3mm~0.5mmの複数の孔が0.6mm~0.8mm間隔で穿設されており、前記透過性樹脂膜は、厚み3μm~8μmであり、酸素透過度が100000~130000(CC/m・24hr)であることを特徴とする請求項4または請求項5に記載の酸素検知剤ラベル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品や電子部品等の包装袋の内部に食品等と一緒に梱包、或いは封入される脱酸素剤の表面に貼ることで包装内部の脱酸素状態を包装外部から視認することができる酸素検知剤ラベルに関する。
【背景技術】
【0002】
食品の市場規模、及び流通範囲の拡大に伴って酸化による食品劣化の問題が増加している。食品の品質低下、栄養価値低下等の大きな要因は、食品中に含まれる成分の酸化によることが多いからである。食品の酸化により、食品本来の美味しさが損なわれてしまうばかりか、顧客からのクレームや食品廃棄等に繋がる一因ともなっている。
【0003】
包装袋におけるガス漏れ(ピンホールに拠る)の有無、あるいは包装袋の酸素透過に対するバリヤー性能が十分であるか等の確認のために、酸素検知剤を食品等と一緒に梱包、或いは、脱酸素剤に貼り付けた状態で食品等と共に封入することが一般的に行われている。酸素検知剤(ラベル状にすることで出荷作業効率の向上に寄与する)の酸化判定に用いられる酸素検知剤(或いは、酸素検知剤ラベル)の多くは,酸化時には青色,還元時には無色(なので視認性向上のため赤色色素等を混在させる)になるメチレンブルー等の酸化還元色素を主成分として,それらを層状化合物や粉末シリカ等に担持させ、インキ体にして土台となるフィルム等に塗布する等の手法で製造されている。
【0004】
しかしながら、酸素検知剤(或いは、酸素検知剤ラベル)は、粉末シリカ等の基材に担持されたメチレンブルー(視認性向上のための赤色色素も含まれる)等の酸化還元色素が染み出して包装袋に転写してしまい酸素検知機能を果たさなくなるという問題があった。さらに、メチレンブルー(視認性向上のための赤色色素も含まれる)等の酸化還元色素の染み出しに拠る食品への被害も指摘されており何らかの対策が必要であるという品質管理上の問題があった。
【0005】
更なる問題として、食品メーカー等は、商品である食品を脱酸素剤・酸素検知剤等と同梱(一緒に梱包すること)した後、(食品が梱包された袋等の内部に)酸素が存在し無くなったことを、酸素検知剤等の色を目視することで確認した後、出荷している。この際、酸素検知剤等の変色(例えば青色→ピンク色)スピードが遅くなると、その分、出荷のタイミングが遅れることになる。以上のことより、酸素を検知した際の酸素検知剤等の変色スピードは重要な要素である。
【0006】
特許文献1には、「シート状基剤層の上に酸素検知能を有する色素層が形成され、さらにその上に透明な重合硬化樹脂層が形成されている酸素検知シート(特許文献1:要約)」が開示されている。即ち、「シート状基材の上に、酸素検知能を有する色素層が形成され、更に、その上に透明な重合硬化樹脂層が形成されている酸素検知シート(特許文献1:段落0004より抜粋)」が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平6-034619号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に係る酸素検知シート(特許文献1:発明の名称)は、「シート状基材の上に、酸素検知能を有する色素層が形成され、更に、その上に透明な重合硬化樹脂層が形成されている酸素検知シート(特許文献1:段落0004より抜粋)」である。透明な重合硬化樹脂層としては、熱硬化型樹脂、紫外線硬化型樹脂等を使用している。特許文献1に係る酸素検知シート(特許文献1:発明の名称)の熱硬化型樹脂(層)、紫外線硬化型樹脂(層)は、保管期間が長期に亘ると熱硬化型樹脂(層)、紫外線硬化型樹脂(層)の経時劣化による、ひび割れ発生等により、メチレンブルー等の酸化還元色素が染み出して包装袋に転写してしまい酸素検知機能を果たさなくなるし、内包する食品に接触することに拠る害も起こり得ると言う問題があった。さらに言えば、熱硬化性樹脂は熱可塑性樹脂と比較して熱圧着ができないので生産効率的に宜しく無いという問題もある。
【0009】
本発明の目的は、酸素透過性を維持しつつ、メチレンブルー等の酸化還元色素が染み出して包装袋に転写してしまい酸素検知剤機能を果たさなくなるという問題を解決し、さらに、メチレンブルー等の酸化還元色素が染み出して内包する食品に接触することに拠る被害も起こさない、更に変色スピードも速いので、出荷スピードアップにも貢献することができる酸素検知剤、及び酸素検知剤ラベルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、請求項1に記載された発明は、包装内部の脱酸素状態を包装外部から視認することができる酸素検知剤であって、
外側が有孔フィルム、内側が透過性樹脂膜からなる二重構造フィルムシートの内部に、
酸素検知インキを多孔性粉末に含侵させた酸素検知インキ体を封入することを特徴とする酸素検知剤であることを特徴とするものである。
【0011】
請求項2に記載された発明は、請求項1に記載された発明において、前記酸素検知インキは、塩基性物質、酸化還元色素、還元剤、着色剤の中から少なくとも1つ以上、及び溶媒(水溶液又はエタノール溶液)を備える酸素検知剤であることを特徴とするものである。
【0012】
請求項3に記載された発明は、請求項1または請求項2に記載された発明において、前記有孔フィルムは、孔径0.3mm~0.5mmの複数の孔が0.6mm~0.8mm間隔で穿設されており、前記透過性樹脂膜は、厚み3μm~8μmであり、酸素透過度が100000~130000(CC/m・24hr)であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の酸素検知剤であることを特徴とするものである。
【0013】
請求項4に記載された発明は、食品等の包装内部に食品等と一緒に封入される脱酸素剤の表面に貼ることで包装内部の脱酸素状態を包装外部から視認することができる酸素検知剤ラベルであって、
酸素検知インキを印刷したもの、前記酸素検知インキを含侵させた多孔性粉末、前記酸素検知インキを含侵させた吸湿紙のいずれか1つである酸素検知インキ体と、
前記酸素検知インキ体の土台となる土台フィルムと、
前記酸素検知インキ体と前記土台フィルムを上下から挟むように設置された粘着剤層と、
前記土台フィルム側に設置された離型紙と、
前記酸素検知インキ体側に設置された有孔フィルムを備え、さらに、該有孔フィルム上に透過性樹脂膜を備えることを特徴とする酸素検知剤ラベルであることを特徴とするものである。
【0014】
請求項5に記載された発明は、請求項4に記載された発明において、前記酸素検知インキは、塩基性物質、酸化還元色素、還元剤、着色剤の中から少なくとも1つ以上、及び溶媒(水溶液又はエタノール溶液)を備える酸素検知剤ラベルであることを特徴とするものである。
【0015】
請求項6に記載された発明は、請求項4または請求項5に記載された発明において、前記有孔フィルムは、孔径0.3mm~0.5mmの複数の孔が0.6mm~0.8mm間隔で穿設されており、前記透過性樹脂膜は、厚み3μm~8μmであり、酸素透過度が100000~130000(CC/m・24hr)である酸素検知剤ラベルであることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、食品等の包装内部に食品等と一緒に梱包、或いは一緒に封入される脱酸素剤の表面に貼ることで包装内部の脱酸素状態を包装外部から視認することができる酸素検知剤、及び酸素検知剤ラベルである。
【0017】
酸素検知剤は、包装内部の脱酸素状態を包装外部から視認することができるものである。外側が有孔フィルム、内側が透過性樹脂膜からなる二重構造フィルムシートの内部に、多孔性粉末(酸化還元色素を主成分とする酸素検知インキを含侵させた多孔性粉末シリカ:酸素検知インキ体)を封入したものである。尚、酸素検知インキ体は、酸素検知インキを含侵させた吸湿紙であっても良いし、酸素検知インキを含侵させた多孔性粉末シリカを固めたタブレット(錠剤)であっても良い。
【0018】
酸素検知剤ラベルは、食品等の包装内部に食品等と一緒に封入される脱酸素剤の表面に貼ることで包装内部の脱酸素状態を包装外部から視認することができるものである。酸素検知インキを(そのまま)印刷(スクリーン印刷、グラビア印刷等)したもの、酸素検知インキを含侵させた多孔性粉末シリカ、酸素検知インキを含侵させた吸湿紙のいずれか1つである酸素検知インキ体と、酸素検知インキ体の土台となる土台フィルムと、酸素検知インキ体と土台フィルムを上下から挟むように設置された粘着剤層と、土台フィルム側に設置された離型紙と、酸素検知インキ体側に設置された有孔フィルムを備えている。さらに、有孔フィルム上に透過性樹脂膜を備えている。
【0019】
本発明において(技術的に)特徴的な部分である有孔フィルムと透過性樹脂膜は、有孔フィルムと透過性樹脂膜を、生産性が良好な押し出しラミネーションにより熱圧着することにより製造する。尚、「酸素検知インキ」を「酸素検知剤」に適用する際、「酸素検知インキ体」の製法は、酸素検知インキを吸湿紙に含侵させる製法、酸素検知インキを多孔性粉末シリカ等の粉末に含侵させる(含侵させた後、固めてタブレット(錠剤)にしても良い)製法等があり、「酸素検知インキ」を「酸素検知剤ラベル」に適用する際、「酸素検知インキ体」の製法は、酸素検知インキをそのまま印刷(スクリーン印刷、グラビア印刷等)する製法、酸素検知インキを吸湿紙に含侵させる製法、酸素検知インキを多孔性粉末シリカ等の粉末に含侵させる製法等がある。
【0020】
有孔フィルムは、(フィルムの)厚み25μm~35μmで、孔径0.3mm~0.5mmの多数個の孔が0.6mm~0.8mm間隔で穿設されており、透過性樹脂膜は、厚み3μm~8μmであり、酸素ガス透過度が100000~130000(CC/m・24hr)であるので酸素透過性を維持でき、透過性樹脂膜は、厚み3μm~8μmであるので、メチレンブルー等の染み出しを押さえることができる。
【0021】
要するに、酸素透過性を維持しつつ、メチレンブルー等の染み出しを押さえることができるようになった。従って、メチレンブルー等の酸化還元色素が染み出して包装袋に転写してしまい酸素検知剤機能を果たさなくなるという問題を解決し、さらに、メチレンブルー等の酸化還元色素の染み出しに拠る食品への害も起こさない酸素検知剤ラベルを提供することができるようになった。更なる効果として、酸素を検知した際の変色スピードをアップさせることができる、即ち、出荷スピードアップにも貢献することができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明に係る酸素検知剤の側面断面図である。
図2】酸素検知剤ラベルの上面図(a)、側面図(b)、及び部分拡大図(c)である。
図3】酸素検知剤ラベルの使用方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
<酸素検知剤、及び酸素検知剤ラベルの構造>
以下、本発明に係る酸素検知剤1、及び酸素検知剤ラベル10の一実施形態について、図1~3に基づいて詳細に説明する。図1は、酸素検知剤1の側面断面図である。図1に記載したように、酸素検知剤1は、有効フィルム60(有孔OPPフィルム)と、透過性樹脂膜70(ポリエチレンフィルム(PE))の二重構造フィルムシート中に、(シリカゲル等の)多孔性粉末シリカに(酸化還元色素等からなる)酸素検知インキを担持させた酸素検知インキ体20(酸素検知剤パウダー)が封入されている。尚、多孔性粉末シリカに(酸化還元色素等からなる)酸素検知インキを担持させた態様の酸素検知インキ体20(図1参照)以外にも、吸湿紙に酸素検知インキを含侵させた酸素検知インキ体20でも良いし、酸素検知インキを担持させた酸素検知インキ体20(酸素検知剤パウダー)を固めてタブレット(錠剤)にした酸素検知インキ体20でも良い。
【0024】
有孔フィルム60としては、延伸ポリプロピレンフィルム(OPP)を使用することができる。有孔フィルム60は、孔径0.3mm~0.5mmの複数(多数)の孔が0.6mm~0.8mm間隔で穿設されている。有孔フィルム60の表面における空孔面積率に換算すれば6%~10%になる。尚、有孔フィルム60の厚さ25μm~35μm、透過性樹脂膜の厚さ3μm~8μmの組み合わせが酸素透過性の観点、及び製造技術の観点からも好ましい。
【0025】
透過性樹脂膜70は、酸素透過性(酸素透過度が100000~130000(CC/m・24hr)を備えた熱可塑性樹脂製フィルムである。透過性樹脂膜70は、酸素透過性を有するものであれば特に限定されるものではないが、例えば、ポリプロピレン(PP)フィルム、ポリエチレン(PE)フィルム、一般用ポリスチレン(GP-PS)フィルム、耐衝撃性ポリエチレン(HI-PS)フィルム、二軸延伸ポリスチレン(OPS)フィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリカーボネート(PC)フィルム、ポリビニルアルコール(PVA)フィルム、ポリ塩化ビニル(PVC)フィルム、アイオノマーフィルム、セルロース系プラスチックフィルム、熱可塑性エラストマーフィルム等から使用目的に応じて選択することができる。更に、前記のような単一フィルムの他に共押出しフィルムや接着用樹脂層を介したドライラミネーション又はサンドラミネーションで貼り合わせた多層フィルムであってもよい。
【0026】
図2は、本発明に係る酸素検知剤ラベル10の上面図(a)、側面図(b)、及び部分拡大図(c)である。(尚、図2(b)において(各々の層の厚さは説明用図面のため)実際の縮尺にはなっていないことに留意。)
【0027】
酸化検知剤ラベル10は、食品と一緒に包装袋の中に入れる脱酸化剤等に(離型紙50を剥がすことにより粘着剤層40を剥き出しにして、その状態で)手軽に貼って使用することで、(食品の)香りや色調に明確な影響を及ぼす食品の酸素混入に起因する劣化を未然に検知することで品質管理することを目的とする酸素検知剤ラベル10である。特徴的には、酸素透過性を担保しつつ異物(水分、雑菌等)混入を防ぐことができる酸化検知剤ラベル10である(図1(a)参照)。即ち、酸素透過性を維持しつつ、メチレンブルー等の酸化還元色素の染み出しに拠る被害も起こさない、更に変色スピードも速いので出荷スピードアップにも貢献することができる酸素検知剤、及び酸素検知剤ラベル10である。
【0028】
酸素検知剤ラベル10は、図2(b)に記載したように、塩基性物質、酸化還元色素等(メチレンブルーは酸素無し雰囲気で無色を示すので識別性を担保するために着色インキを添加する)還元剤、着色剤、水溶液、又はエタノール溶液等からなる酸素検知インキをそのまま(土台フィルム30上に)印刷(スクリーン印刷、グラビア印刷等)、或いは、被含侵物(多孔性粉末シリカ、吸湿紙等)に含侵させた酸素検知インキ体20と、酸素検知インキ体20の土台となる土台フィルム30と、酸素検知インキ体20と土台フィルム30を上下から挟むように設置された粘着剤層40と、土台フィルム30側に設置された離型紙50と、酸素検知インキ体20側に設置された有孔フィルム60を備え、さらに、有孔フィルム上60に透過性樹脂膜70を備えている。
【0029】
土台フィルム30はオレフィンフィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム等の乳白フィルムを使用することができる。本発明における技術的特徴として、酸素検知インキ体20側に設置された有孔フィルム60を備えており、さらに、有孔フィルム上60に透過性樹脂膜70を備えていることが挙げられる。
【0030】
図2(c)は、酸素検知剤ラベル10の部分拡大図(図2(b)の「A」の部分を拡大した図)である。包装内部の食品から発生する微細な異物(水分、雑菌等)は、透過性樹脂膜70がバリア(妨げ)となることで通過させないようにすることができるが、透過性樹脂膜70のみでは、包装内部の食品から発生する炭酸ガス(CO)の通過による酸素検知インキ体20への侵入を妨げることはできない。もしも炭酸ガス(CO)が酸素検知インキ体20内部に侵入すると、酸素検知インキ体20内部に炭酸ガス(CO)が存在することで酸素検知剤ラベル10の酸素検知能力に悪影響を与えてしまう怖れがある。
【0031】
有孔フィルム60に穿設された孔内部にフィルター粉状体80を充填させることで(図2(c)参照)、食品から発生する炭酸ガス(CO)を通過させずに、酸素(O)のみが通過できるように(フィルター作用にて選択的に)することができる。尚、フィルター粉状体80は、酸素透過性を阻害しない程度に有孔フィルム60に穿設された孔内部に充填することになる。具体的には、孔部容積の30%~50%であることが望ましい。
【0032】
フィルター粉状体80としては、炭酸ガス(CO)を通過させずに、酸素(O)のみが通過できるように調整された合成ゼオライト粉状体を使用することができる。合成ゼオライトは金属またはアルカリ土類金属の結晶性含水アルミノ珪酸塩で、一般式はMeMeO・Al・mSiO・nHO(Me:アルカリ金属2原子またはアルカリ土類金属1原子)で表される(細孔が規則的に並んだ)多孔性アルミノ珪酸塩総称を指す。
【0033】
<酸素検知剤ラベルの使用方法>
図3は、酸素検知剤ラベル10の使用方法を説明するための図である。酸素検知剤ラベル10は、離型紙50を剥がすことにより粘着剤層40を剥き出しにして、脱酸素剤(袋状)の表面に貼りつける。そして、脱酸素剤(袋状)と酸素検知剤ラベル10を一体化させたものを、図3に記載したように、食品等と一緒に包装する。食品等の包装内に食品等と一緒に封入される脱酸素剤の表面に貼ることで包装内部の脱酸素状態を包装外部から視認することができる。
【0034】
酸素検知インキ体20は,酸化時には青色,還元時には無色のメチレンブルー(無色なので視認性向上のため赤色系色素を混在させる)を使用している。要するに、酸素雰囲気では青色、酸素無し雰囲気(脱酸素状態)では着色インキの色(例えばピンク色)になるように設計されている。
【0035】
包装直後においては、包装内部に酸素が存在するので、酸素検知剤ラベル10(正確には酸素検知インキ体20)は青色を示す。包装後、一定時間経過すると、脱酸素剤が酸素を吸着するので包装内部(正確に言うと脱酸素剤部分を除いた包装内部)は酸素無し雰囲気(脱酸素状態)になるので、酸素検知剤ラベル10(正確には酸素検知インキ体20)は、ピンク色を示すようになる。この状態(包装内部が酸素無し雰囲気(脱酸素状態)なので食品に悪影響を与えることが無い)を確認して出荷作業を開始することになる。
【0036】
ところが、包装袋にピンホールが空いていたり、食品流通時に何らかの物理的作用による損傷があったりして包装が不完全であると、包装内部に酸素が混入して来ることがあり得る。包装内部に酸素が混入すると、酸素検知剤ラベル10(正確には酸素検知インキ体20)は青色を示すことになる。酸素検知剤ラベル10があれば、これを包装外部から視認することで包装内部の食品が酸素により劣化している可能性があると判断することができる。このようにして酸素に拠り劣化した食品が消費者に売られてしまうことを未然に防ぐことができる。
【0037】
<酸素検知剤、及び酸素検知剤ラベルの効果>
本発明に係る酸素検知剤1、及び酸素検知剤ラベル10により、従来品との比較において、酸素透過性を維持しつつメチレンブルー等の染み出しを押さえることができるようになった。メチレンブルー等の酸化還元色素が染み出して包装袋に転写してしまい酸素検知剤機能を果たさなくなるという問題を解決し、さらに、メチレンブルー等の酸化還元色素の染み出しに拠る食品への害も起こさない酸素検知剤1、及び酸素検知剤ラベル10を提供することができるようになった。
【0038】
本発明における(従来品には無かった)技術的特徴として、酸素検知インキ体20側に設置された有孔フィルム60を備えており、さらに、有孔フィルム上60に透過性樹脂膜70を備えていることが挙げられる。この技術的特徴により、従来品(透過性樹脂膜のみ)との比較において、酸素雰囲気(青色)、酸素無し雰囲気(着色インキの色:ピンク色)変色するまでの時間を短縮することができるようになった。酸素を検知した際、色変化速度が、従来品との比較において最大10倍程度促進されるようになったので、出荷スピードアップにも貢献することができるようになった。
【0039】
具体的には、青色(酸素雰囲気)からピンク色(酸素無し雰囲気)の変色時間が、従来品では、8時間~10時間だったのに対し、(本発明に係る)酸素検知剤1、及び酸素検知剤ラベル10では、2時間~4時間に短縮された。一方、ピンク色(酸素無し雰囲気)から青色(酸素雰囲気)の変色時間が、従来品では30分程度だったのに対し、(本発明に係る)酸素検知剤1、及び酸素検知剤ラベル10では、3分~5分に短縮することができるようになった。要するに、インジケート能力(反応時間)が格段に向上したと言える。
【0040】
<酸素検知剤1の実施例>
(酸化還元色素として)メチレンブルー0.016g、(赤色色素)赤色104号、エチレングリコール3.6g、D-フルクトース2.1g、酸化マグネシウム10g、をエタノールと蒸留水に溶解し、酸素検知インキを調整した。その後、調整した酸素検知インキをシリカゲルパウダーに含侵させた後、乾燥させ酸素検知パウダー(酸素検知インキ体20)とした。その酸素検知パウダー(酸素検知インキ体20)を、有効フィルム60(有孔OPP)/透過性樹脂膜70(ポリエチレンフィルム(PE))内部に封入し酸素検知剤1とした。
【0041】
<酸素検知剤ラベル10の実施例>
(酸化還元色素として)メチレンブルー0.016g、(赤色色素)赤色104号、エチレングリコール3.6g、D-フルクトース2.1g、酸化マグネシウム10g、セルロースアセテートプロピオネート1.0gを、IPA(イソプロピルアルコール)と酢酸エチルに溶解し、酸素検知インキを調整した。その酸素検知インキをグラビア印刷、シルクスクリーン印刷等を利用して、ユポ(登録商標)粘着素材(リンテック(株)製ユポ(登録商標)60PAT1)に印刷し、上面に粘着剤/有孔OPP/PEを貼合し(下面には粘着剤、(抜き加工後)離型紙を貼合)、所定の大きさに抜き加工することで酸素検知ラベル10とした。
【0042】
<酸素検知剤ラベルの変更例>
本発明に係る酸素検知剤、及び酸素検知剤ラベルは、上記した各実施形態の態様に何ら限定されるものではなく、酸素検知インキ体、土台フィルム、粘着剤層、離型紙、有孔フィルム、透過性樹脂膜、フィルター粉状体等の構成を、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、必要に応じて適宜変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明に係る酸素検知剤、及び酸化検知剤ラベルは、上記の如く優れた効果を奏するものであるので、食品や電子部品等の包装袋内に食品や電子部品等と一緒に封入される脱酸素剤の表面に貼ることで包装袋内の脱酸素状態を外部から視認することができる酸素検知剤、及び酸化検知剤ラベルとして好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0044】
1・・酸素検知剤
10・・酸素検知剤ラベル
20・・酸素検知インキ体
30・・土台フィルム
40・・粘着剤層
50・・離型紙
60・・有孔フィルム
70・・透過性樹脂膜
80・・フィルター粉状体
図1
図2
図3