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特開2024-113554転がり軸受用弾性部材及び転がり軸受
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024113554
(43)【公開日】2024-08-22
(54)【発明の名称】転がり軸受用弾性部材及び転がり軸受
(51)【国際特許分類】
   C09K 3/12 20060101AFI20240815BHJP
   F16C 19/06 20060101ALI20240815BHJP
   F16C 33/78 20060101ALI20240815BHJP
【FI】
C09K3/12
F16C19/06
F16C33/78 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023018627
(22)【出願日】2023-02-09
(71)【出願人】
【識別番号】000211695
【氏名又は名称】中西金属工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003823
【氏名又は名称】弁理士法人柳野国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小島 康彦
(72)【発明者】
【氏名】島崎 奈穂
【テーマコード(参考)】
3J216
3J701
【Fターム(参考)】
3J216AA02
3J216AA12
3J216AB02
3J216BA09
3J216BA30
3J216CA01
3J216CA04
3J216CB03
3J216CB12
3J216CC03
3J216CC14
3J216CC33
3J216DA01
3J216DA30
3J701AA02
3J701AA32
3J701AA42
3J701AA52
3J701AA62
3J701EA63
3J701FA13
(57)【要約】
【課題】潤滑剤がエステル油を基油として含むエステル油系潤滑剤の場合であっても、転がり軸受用弾性部材のゴム成分としてエピクロルヒドリンゴムを含み、潤滑剤による体積変化及び硬度変化が抑制され、耐摩耗性及び硬度が良好な軸受用弾性部材及び当該軸受用弾性部材を有する転がり軸受を提供すること。
【解決手段】エピクロルヒドリンゴムとアクリルゴムとで構成されるゴム成分、分散向上剤、補強材及び改質クレーを含むゴム組成物の加硫物であり、前記ゴム成分が、エピクロルヒドリンゴムが50~75重量%、アクリルゴムが25~50重量%で、前記ゴム成分中の両ゴムの比率の合計が100重量%であり、前記アクリルゴムが、(メタ)アクリル酸エステルに由来する構成単位を含むゴム状共重合体、及び/又は、(メタ)アクリル酸エステルとアクリロニトリルに由来する構成単位を含むゴム状共重合体である、転がり軸受用弾性部材。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エピクロルヒドリンゴムとアクリルゴムとで構成されるゴム成分、分散向上剤、補強材及び改質クレーを含むゴム組成物の加硫物であり、
前記ゴム成分が、エピクロルヒドリンゴムが50~75重量%、アクリルゴムが25~50重量%で、前記ゴム成分中の両ゴムの比率の合計が100重量%であり、
前記アクリルゴムが、(メタ)アクリル酸エステルに由来する構成単位を主成分とし、反応性基含有単量体に由来する構成単位を含むゴム状共重合体(ACM)、及び/又は、(メタ)アクリル酸エステルとアクリロニトリルに由来する構成単位を主成分として含むゴム状共重合体(ANM)である、転がり軸受用弾性部材。
【請求項2】
前記ゴム組成物が、前記ゴム成分100重量部に対して、分散向上剤を1.0~3.0重量部、補強材を25~35重量部、改質クレーを40~80重量部含む、請求項1記載の転がり軸受用弾性部材。
【請求項3】
前記分散向上剤がカップリング剤である、請求項1又は2に記載の転がり軸受用弾性部材。
【請求項4】
前記補強材がシリカである、請求項1又は2に記載の転がり軸受用弾性部材。
【請求項5】
前記改質クレーが、クレーのシラン系カップリング剤による表面処理物であるシラン改質クレーである、請求項1又は2記載の転がり軸受用弾性部材。
【請求項6】
内輪、外輪、前記内輪と前記外輪の間に介在する転動体、及び、前記内輪及び外輪の軸方向両端開口部の少なくとも一方に設けられ、前記転動体の周囲に潤滑剤を封止するための弾性部材を有し、前記弾性部材が、請求項1又は2に記載の転がり軸受用弾性部材である、転がり軸受。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転がり軸受用弾性部材及びこれを有する転がり軸受に関し、特に、エピクロルヒドリンゴムを含有する転がり軸受用弾性部材及びこれを有する転がり軸受に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、転がり軸受は、内輪、外輪、内輪と外輪の間に介在する転動体を有し、これらに対して潤滑性を付与するため、潤滑剤が封入されている。そして、この潤滑剤が内輪と外輪の間の開口部から漏出するのを防止するため、その開口部を封止するための弾性部材を有する部材が軸受用シールとして設けられている。この弾性部材は、一般に内輪又は外輪と相対的に摺動しながら潤滑剤と接するため、耐摩耗性、潤滑剤に対する耐久性が求められる。
【0003】
このような弾性部材に対する要求性能を満たすべく、軸受用シールに使用される弾性部材の材料として、ニトリルゴム(NBR)、アクリルゴム(ACM)、エチレンアクリルゴム(AEM)、フッ素ゴム(FKM)、シリコーンゴム(VMQ)等のゴム成分が従来より使用されており、転がり軸受の用途に応じ、また、その性能向上等を目的に、改良が重ねられている。
【0004】
一方、エピクロルヒドリンゴムは、一般に、機械的強度、耐熱性、耐低温(耐寒)性、耐オゾン性、気体透過性、難燃性、耐油性などの特性が良好であるが、耐摩耗性が必ずしも十分ではないことが知られていた。そのため、エピクロルヒドリンゴムは、特許文献1に記載のようにホース材料として使用されるのが一般的で、例えば自動車用などの転がり軸受の潤滑剤を封入するために使用される弾性部材の材料としては、実際には用いられていないのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公昭60-33663号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者は、エピクロルヒドリンゴムの有する前述の良好な特性に着目し、転がり軸受用弾性部材のゴム成分としてエピクロルヒドリンゴムを適用することを試みた。しかし、このような転がり軸受用弾性部材は、転がり軸受用潤滑剤として一般的なエステル油系潤滑剤と接すると、弾性部材の体積変化及び硬度変化が大きく、(i)体積変化が大きいことでシールの締め代が安定しない、(ii)例えば硬度が低下することで弾性部材が軟化するため、内輪及び外輪で構成される軌道輪(レース)と弾性部材との接触面積が大きくなり、異常摩耗したり、緊迫力が低下する場合がある、などのため、転がり軸受用弾性部材のゴム成分としてエピクロルヒドリンゴムを採用するには改善が必要であることが判明した。
【0007】
そこで、本発明の目的は、潤滑剤がエステル油を基油として含むエステル油系潤滑剤の場合であっても、転がり軸受用弾性部材のゴム成分としてエピクロルヒドリンゴムを含み、潤滑剤による体積変化及び硬度変化が抑制され、耐摩耗性及び硬度が良好な軸受用弾性部材及び当該軸受用弾性部材を有する転がり軸受を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、前述の課題解決のために鋭意検討を行った。その結果、転がり軸受用弾性部材のゴム成分としてエピクロルヒドリンゴムと特定のアクリルゴムを用い、これらを所定の比率で配合し、さらに、分散向上剤、補強材及び改質クレーを含むように構成することで、前述の課題が解決可能であることを見出した。本発明の要旨は以下のとおりである。
【0009】
本発明の第一態様は、エピクロルヒドリンゴムとアクリルゴムとで構成されるゴム成分、分散向上剤、補強材及び改質クレーを含むゴム組成物の加硫物であり、前記ゴム成分が、エピクロルヒドリンゴムが50~75重量%、アクリルゴムが25~50重量%で、前記ゴム成分中の両ゴムの比率の合計が100重量%であり、前記アクリルゴムが、(メタ)アクリル酸エステルに由来する構成単位を主成分とし、反応性基含有単量体に由来する構成単位を含むゴム状共重合体(ACM)、及び/又は、(メタ)アクリル酸エステルとアクリロニトリルに由来する構成単位を主成分として含むゴム状共重合体(ANM)である、転がり軸受用弾性部材に関する。
【0010】
本発明の実施形態では、前記ゴム組成物が、前記ゴム成分100重量部に対して、分散向上剤を1.0~3.0重量部、補強材を25~35重量部、改質クレーを40~80重量部含んでもよい。
【0011】
本発明の実施形態では、前記分散向上剤がカップリング剤であってよい。
【0012】
本発明の実施形態では、前記補強材がシリカであってよい。
【0013】
本発明の実施形態では、前記改質クレーが、クレーのシラン系カップリング剤による表面処理物であるシラン改質クレーであってよい。
【0014】
本発明の第二態様は、内輪、外輪、前記内輪と前記外輪の間に介在する転動体、及び、前記内輪及び外輪の軸方向両端開口部の少なくとも一方に設けられ、前記転動体の周囲に潤滑剤を封止するための弾性部材を有し、前記弾性部材が、前述の転がり軸受用弾性部材である、転がり軸受に関する。
【0015】
尚、本発明の実施形態では、前述の各実施形態の構成を任意に組み合わせることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によると、潤滑剤がエステル油を基油として含むエステル油系潤滑剤の場合であっても、転がり軸受用弾性部材のゴム成分としてエピクロルヒドリンゴムを含み、潤滑剤による体積変化及び硬度変化が抑制され、耐摩耗性及び硬度が良好な軸受用弾性部材及び当該軸受用弾性部材を有する転がり軸受を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態に係る転がり軸受の断面図である。
図2図1の要部を拡大して示す断面図である。
図3】耐摩耗試験の実施方法を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施形態に係る転がり軸受用弾性部材(以下、単に「弾性部材」と称する場合がある。)は、エピクロルヒドリンゴムとアクリルゴムとで構成されるゴム成分、分散向上剤、補強材及び改質クレーを含むゴム組成物の加硫物である。そして、ゴム成分が、エピクロルヒドリンゴムが50~75重量%、アクリルゴムが25~50重量%で、ゴム成分中の両ゴムの比率の合計が100重量%である。また、アクリルゴムが、(メタ)アクリル酸エステルに由来する構成単位を主成分とし、反応性基含有単量体に由来する構成単位を含むゴム状共重合体(ACM)、及び/又は、(メタ)アクリル酸エステル類とアクリロニトリルに由来する構成単位を主成分として含むゴム状共重合体(ANM)である。ここで、(メタ)アクリル酸エステルとは、メタクリル酸及び/又はアクリル酸のエステルの総称を意味する。また、主成分とは、ACM、ANMに含まれる全単量体に由来する構成単位のうち、最も含有比率が多い成分であることを意味する。
【0019】
このように、特定のアクリルゴムとエピクロルヒドリンゴムとが所定の配合比となるゴム成分を用いることで、転がり軸受用潤滑剤として一般的なエステル油系潤滑剤と接する場合であっても、弾性部材の体積及び硬度の変化がエピクロルヒドリンゴム単独の場合よりも抑制される。さらに、分散向上剤と、補強材及び改質クレーと併用することで、ゴム成分中の補強材及び改質クレーの分散性が良好となる。そのため、特定のゴム成分を用いることと相俟って、弾性部材に良好な耐摩耗性及び硬度を付与することができ、軸受用シールに適用可能な切断時引張強さ及び切断時伸びを付与するこができる。
【0020】
ゴム組成物に含まれるゴム成分は、エピクロルヒドリンゴム及び特定のアクリルゴムである。即ち、ゴム成分は、両者を所定の比率で含有し、且つゴム成分中の両ゴムの比率の合計が100重量%であり、ゴム成分としてはこれ以外のゴム成分は実質的に含まれない。ゴム成分のゴム組成物中の含量は、転がり軸受の用途等に応じて適宜決定することができ、例えば、ゴム組成物全体中、35~75重量%とすることができる。
【0021】
エピクロルヒドリンゴムとしては、例えば、エピクロロヒドリンの単独重合体(COと略す場合がある)、エピクロロヒドリンとエチレンオキシドの共重合体(ECOと略す場合がある。)、エピクロロヒドリンとアリルグリシジルエーテルの共重合体(GCOと略す場合がある)、エピクロロヒドリンとエチレンオキシドとアリルグリシジルエーテルの共重合体(GECOと略す場合がある)などが挙げられ、何れでも用いることができる。このうち、CO及びECOが好ましい。また、エピクロルヒドリンとしては、植物原料に由来するのものを用いることができる。このような植物由来原料から得られるエピクロルヒドリンを用いることで、エピクロルヒドリンゴムを環境に配慮したゴム成分とすることができる。環境への配慮の観点からは、植物原料由来のエピクロルヒドリンを用いたものが好ましく、植物原料由来のエピクロルヒドリンの単独重合体(CO)がより好ましい。
【0022】
アクリルゴムは、(メタ)アクリル酸エステルに由来する構成単位を主成分とし、反応性基含有単量体に由来する構成単位を含むゴム状共重合体(ACM)、及び/又は、(メタ)アクリル酸エステル類とアクリロニトリルに由来する構成単位を主成分として含むゴム状共重合体(ANM)である。即ち、ACM及びANMから選択される少なくとも1種のアクリルゴムである。
【0023】
ACMの構成単位を形成する(メタ)アクリル酸エステルとしては、耐油性、耐熱性、耐寒性の観点から、(メタ)アクリル酸アルキルエステル及び(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルから選択される少なくとも1種であるのが好ましい。
【0024】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、特に限定はないが、炭素数1~12のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましく、炭素数1~8のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルがより好ましく、炭素数1~4のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルがさらに好ましい。(メタ)アクリル酸アルキルエステルの具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルなどが挙げられる。
【0025】
(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルとしては、特に限定はないが、炭素数1~12のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルが好ましく、炭素数1~8のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルがより好ましい。(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルの具体例としては、(メタ)アクリル酸メトキシメチル、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸メトキシプロピル、(メタ)アクリル酸メトキシブチル、(メタ)アクリル酸エトキシメチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル、(メタ)アクリル酸プロポキシエチル、(メタ)アクリル酸ブトキシエチルなどが挙げられる。
【0026】
ACMの構成単位を形成する反応性基含有単量体は、特に限定はなく、用途等に応じて適宜選択可能であるが、アクリル酸エステルと架橋可能で、カルボキシ基、塩素原子、エポキシ基から選択される少なくとも一種の反応性基を有する単量体が好ましい。カルボキシ基含有単量体としては、例えば、エチレン性不飽和カルボン酸、エチレン性不飽和カルボン酸エステル等が挙げられる。エポキシ基含有単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸グリシジルなどのエポキシ基含有(メタ)アクリル酸エステル;アリルグリシジルエーテル、ビニルグリシジルエーテルなどのエポキシ基含有ビニルエーテル;などが挙げられる。塩素原子含有単量体としては、例えば、塩素原子含有飽和カルボン酸の不飽和アルコールエステル、(メタ)アクリル酸クロロアルキルエステル、(メタ)アクリル酸クロロアシロキシアルキルエステル、(メタ)アクリル酸(クロロアセチルカルバモイルオキシ)アルキルエステル、塩素原子含有不飽和エーテル、塩素原子含有不飽和ケトン、クロロメチル基含有芳香族ビニル化合物、塩素原子含有不飽和アミド、クロロアセチル基含有不飽和単量体などが挙げられる。これらの反応性基含有単量体は、1種単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0027】
ACMには、これらの単量体と共重合可能な他の単量体を含むことができる。このような単量体として、例えば、芳香族ビニル、アクリルアミド系単量体、その他のオレフィン系単量体などが挙げられる。これらの他の単量体は、1種単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0028】
ACMは、(メタ)アクリル酸エステルに由来する構成単位を、ACMに含まれる全単量体に由来する構成単位のうち、最も含有比率が多いものであればよいが、(メタ)アクリル酸エステルに由来する構成単位の含有比率は、50~99.99重量%が好ましく、70~99.9重量%がより好ましく、80~99.5重量%がさらに好ましく、87~99重量%が特に好ましい。また、反応性基含有単量体に由来する構成単位の含有比率は、0.01~20重量%が好ましく、0.1~10重量%がより好ましく、0.5~5重量%さらに好ましく、1~3重量%が特に好ましい。他の単量体に由来する構成単位の含有比率は、通常0~30重量%であるが、含まないのが好ましい。つまり、ACMは、(メタ)アクリル酸エステルと反応性基含有単量体とのゴム状共重合体であるのが好ましい。
【0029】
ACMは、定法に従って製造することができるが、市販のものを利用可能であり、例えば、日本ゼオン(株)製の「Nipol」(商品名)では、エポキシ基を有するアクリル酸エステルの重合体又は共重合体として「AR31」、「AR42W」、「AR54」等、塩素原子(活性塩素基)を有するアクリル酸エステルの重合体又は共重合体であれば「AR71」、「AR72LS」等、カルボキシ基を有するアクリル酸エステルの重合体又は共重合体であれば「AR12」、「AR22」等が挙げられる。
【0030】
ANMとしては、(メタ)アクリル酸エステルとアクリロニトリルに由来する構成単位を主成分として含むゴム状共重合体であればよい。(メタ)アクリル酸エステルとしては、ACMと同じものを用いることができる。また、ANMは、これらの単量体と共重合可能な反応性基含有単量体、他の単量体を含むことができる。この反応性基含有単量体及び他の単量体は、ACMと同じものを用いることができる。ANMは、(メタ)アクリル酸エステルとアクリロニトリルに由来する構成単位の合計含有比率が、ANMに含まれる全単量体に由来する構成単位のうち、最も多いものであればよく、50~100重量%であればよいが、100重量%即ち(メタ)アクリル酸エステルとアクリロニトリルとのゴム状共重合体であるのが好ましい。(メタ)アクリル酸エステルに由来する構成単位とアクリロニトリルに由来する構成単位との比率は、弾性部材の用途等に応じて適宜決定することができる。
【0031】
分散向上剤は、補強材と改質クレーのゴム成分中の分散性を向上させることが可能なものであれば特に限定はなく、補強材及び改質剤の種類に応じて適宜選択することができる。このような分散向上剤としては、例えば、カップリング剤、界面活性剤などが挙げられる。これらのうち、分散性、耐摩耗性向上の観点から、カップリング剤が好ましい。カップリング剤としては、例えば、ビニル系シランカップリング剤、アミノ系シランカップリング剤、エポキシ系シランカップリング剤、メルカプト系シランカップリング剤等のシラン系カップリング剤、ジルコニア系カップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミネート系カップリング剤等が挙げられる。このうち、シラン系カップリング剤が好ましく、シラン系カップリング剤としては、メルカプト系シランカップリング剤が特に好ましい。メルカプト系シランカップリング剤は、例えば、Siに直結するメルカプト基(-SH)またはメルカプト基を含む官能基を1~3個有するものが挙げられ、メルカプト基を含む官能基としては、例えば、メルカプト基で置換された炭素数1~6個の炭化水素基などが挙げられる。この炭化水素基は、飽和炭化水素基でも不飽和炭化水素基でもよいが、飽和炭化水素基が好ましい。また、その炭化水素基の構造は、直鎖でも良いし、分岐鎖を有するものでもよいが、直鎖が好ましい。また、シラン系カップリング剤としては、アルコキシ基を有するものが好ましく、アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基などが挙げられ、メトキシ基がより好ましい。アルコキシ基の数は1~3であればいずれでもよい。また、分散向上剤は1種単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0032】
分散向上剤のゴム組成物中の含量は、転がり軸受の用途等に応じて適宜決定することができる。分散性、耐摩耗性の観点からは、ゴム成分100重量部に対して、0.5~5.0重量部が好ましく、1.0~3.0重量部がより好ましい。
【0033】
補強材としては、改質クレーと併用して弾性部材の耐摩耗性及び硬度を向上できるものであれば特に限定はなく、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、クレー(改質クレーを除く)、繊維、有機補強剤、有機充填剤等が挙げられる。補強材としては、これらのうち1種を単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。補強材は、それらの具体例のうちシリカが特に好ましい。シリカは、二酸化ケイ素又は二酸化ケイ素によって構成される物質であればよく、例えば、湿式シリカ、ヒュームドシリカ、珪藻土、ケイ酸マグネシウムなどのケイ酸塩などが挙げられる。このうち、シリカは湿式シリカやヒュームドシリカなどの二酸化ケイ素が好ましい。
【0034】
補強材のゴム組成物中の含量は、転がり軸受の用途等に応じて適宜決定することができる。弾性部材の硬度向上、耐摩耗性の観点からは、ゴム成分100重量部に対して、15~35重量部が好ましく、25~35重量部がより好ましい。
【0035】
改質クレーとしては、補強材と併用して弾性部材の耐摩耗性及び硬度を向上できるものであれば特に限定はない。このような改質クレーとしては、例えば、シラン改質クレーなどが挙げられる。シラン改質クレーは、クレーをシラン系カップリング剤にて表面処理して得られるもの(表面処理物)が好ましい。この処理の際に使用するクレーは、例えば、600℃で焼成することができる。このようなシラン改質クレーは、市販のものを使用可能であり、例えば、バーゲス社製のバーゲスKEなどが挙げられる。
【0036】
改質クレーのゴム組成物中の含量は、転がり軸受の用途等に応じて適宜決定することができる。弾性部材の硬度向上、耐摩耗性の観点からは、ゴム成分100重量部に対して、10~100重量部が好ましく、40~80重量部がより好ましい。
【0037】
ゴム組成物には、前述の各成分以外に他の成分を配合することができる。このような他の成分としては、例えば、加硫剤、加硫促進剤、安定剤、老化防止剤、潤滑油、可塑剤、軟化剤、着色剤、加工助剤、スコーチ防止剤などが挙げられる。
【0038】
加硫剤としては、硫黄;2,3-ジメルカプトキノキサリン、キノキサリン-2,3-ジチオカーボネート、6-メチルキノキサリン-2,3-ジチオカーボネート、5,8-ジメチルキノキサリン-2,3-ジチオカーボネート等のキノキサリン系加硫剤;2,4,6-トリメルカプト-s-トリアジン;テトラメチルチウラムモノスルフィド(TMTS)、テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、テトラエチルチウラムジスルフィド(TETD)、テトラブチルチウラムジスルフィド(TBTD)、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド(DPTT)等のチウラム類;、4,4′-ジチオ-ジモルフォリン等の硫黄系加硫剤等があげられる。これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。加硫剤の含有量は、エピクロルヒドリンゴム100重量部に対して、0.5~10重量部が好ましい。
【0039】
加硫促進剤としては、例えば、グアニジン化合物、イミダゾール化合物、第4級オニウム塩、第3級アミン化合物、第3級ホスフィン化合物、弱酸のアルカリ金属塩等が挙げられる。グアニジン化合物としては、例えば1,3-ジフェニルグアニジン、1,3-ジ-o-トリルグアニジン等が挙げられる。イミダゾール化合物としては、例えば2-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール等が挙げられる。第4級オニウム塩としては、例えばテトラn-ブチルアンモニウムブロマイド、オクタデシルトリn-ブチルアンモニウムブロマイド等が挙げられる。第3級アミン化合物としては、例えばトリエチレンジアミン、1,8-ジアザ-ビシクロ[5,4,0]ウンデセン-7等が挙げられる。第3級ホスフィン化合物としては、例えばトリフェニルホスフィン、トリ-p-トリルホスフィン等が挙げられる。弱酸のアルカリ金属塩としては、例えばナトリウム又はカリウムのリン酸塩、炭酸塩などの無機弱酸塩或いはステアリン酸塩、ラウリル酸塩などの有機弱酸塩等が挙げられる。加硫促進剤の含有量は、ゴム成分100重量部に対して、0.1~5重量部が好ましい。
【0040】
安定剤としては、酸化マグネシウム、ハイドロタルサイト類、ゼオライト類、酸化カルシウム、酸化アルミニウム、塩基性二酸化ケイ素、水酸化マグネシウム等があげられる。これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0041】
ゴム組成物は、前述の必須成分、必要に応じて用いるその他の成分を所望の配合比となるように混合し、均一に混練することで得ることができる。混練方法としては、従来公知の方法を採用することができる。例えば、ニーダー、バンバリーミキサ等の密封式混練機、ロール等の開放式混練機を用いて均一に混練する方法等が挙げられる。
【0042】
実施形態に係る弾性部材は、例えば前述のようにして得られたゴム組成物を、所定温度にて、例えば圧縮成形、射出成形、トランスファー成形、押出成形、カレンダー成形などの成形法により加硫、成形することによって所定形状のゴム組成物の加硫物(成形体)として得ることができる。
【0043】
前述のゴム組成物を加硫することで得られる弾性部材は、ゴム成分がエピクロルヒドリンゴムを含むが、転がり軸受の潤滑剤として汎用されているエステル油系潤滑剤であっても基油としてエステル油以外のものを含む潤滑剤であっても、これらと接触した場合に体積変化及び硬度変化(特に硬度の低下)が抑制されるとともに、良好な耐摩耗性及び硬度をも有する。また、転がり軸受用弾性部材として要求される切断時引張強さ及び切断時伸びを有する。したがって、このような弾性部材は、各種の転がり軸受に適用可能である。例えば、自動車用、例えば自動車の電装や補機用の潤滑剤を封入する弾性部材を有する転がり軸受に好適である。
【0044】
以下では、図面を参照しつつ、前述の弾性部材を用いた転がり軸受の実施形態について説明する。尚、以下において、回転軸の軸芯方向を「軸方向」といい、回転半径方向を「径方向」という。
【0045】
図1及び図2は、軸受用シール11を装着した転がり軸受1を示しており、転がり軸受1は、内輪2と外輪3とが、保持器4により保持された転動体5,…を介して相対的に回転するものであり、内輪2と外輪3との間には潤滑剤10が封入され、転動体5,…の軸方向両端(軸受幅方向左右)には、内輪2と外輪3との間の環状の軸方向両端開口部(環状開口)A,Aを塞ぐ、正面視略円環状の軸受用シール11、11が設けられる。
【0046】
潤滑剤は、液体の潤滑油でも良いし、半固体状又は固体状のグリースでもよいが、グリースが好ましい。グリースの場合、基油は特に限定はなく用途等に応じて適宜選択可能であり、各種の増ちょう剤等を含む。増ちょう剤は、公知のものであればよく、例えば、リチウム石鹸などの金属石鹸、ウレアなどが挙げられる。
【0047】
なお、軸受用シール11は、図1に示すような転がり軸受1の環状開口A,Aの両側を密封する両シールド形ではなく、使用箇所によっては転がり軸受1の片側だけを密封する片シールド形としてもよい。すなわち、軸受用シール11は、転がり軸受1の内輪2と外輪3との間の軸受幅方向左右の環状開口A,Aの少なくとも一方に設けられる。
【0048】
図2に示すように、軸受用シール11は、鋼板等からなる環状の金属製芯金12の外周部と内周部に連続して前述の弾性部材13を例えば加硫接着により被覆し、弾性部材13の内周側端部をシールリップ14とし、外周側端部を外径装着部15としたものである。そして、内輪2の径方向に延びる側壁面8にシールリップ14の軸方向内側の接触リップ(主リップ)14aが圧接されることにより、軸受1内部に充填された潤滑剤10の漏洩を防止することができるとともに、外部からの異物の浸入を防止することができる。また、シールリップ14の軸方向外側の非接触リップ(ダストリップ)14bが、内輪2の外周面に形成されたシール溝とも呼ばれる周方向に延びる内輪周溝6外側の内輪2の外周面に微小隙間を挟んで対向するため、そのラビリンスシール効果により外部からの異物の浸入を減少させることができる。
【0049】
図2に示す実施形態では、軸受用シール11の芯金12の内周面12Aとシールリップ14との間に括れ部16が形成され、軸受用シール11を外輪3に取り付けた状態で、上述のとおりシールリップ14の接触リップ14aは内輪2の側壁面8に圧接される。このように圧接するための構成は、外輪3の回転による遠心力によるリップ位置変動のバランスを考慮して、定法に従って、接触リップ14aと非接触リップ14bが外輪3の回転時に受ける遠心力がほぼ等しくなるように、シールリップ14及び括れ部16の形状、寸法、位置などを適宜決定することができる。このようにバランスを考慮することで、接触リップ14aの側壁面8への緊迫力が低下して、非接触リップ14bと内輪3との隙間が拡がってダストの浸入が容易になったり、接触リップ14aが側壁面8から離れて隙間が生じ、潤滑剤10が漏洩したり、外部からダスト、水等が浸入したりすることを防止することができる。また、シールリップ14及び括れ部16が、前述のゴム組成物の硬化物で構成される弾性部材であることで、各種の潤滑剤を用いても、所定のゴム成分に由来する機械的強度(引張破断強度、引張破断伸びなど)などの良好な特性とともに、良好な硬度及び耐摩耗性を有するため、シールリップ14の構造との相乗効果により、接触リップ14aと側壁面8との良好な圧接が継続して維持され、転がり軸受の寿命の低下を抑制することができる。
【0050】
図2に示すように、軸受用シール11には、芯金12の先端面12Aから軸受の内部方向に向かう凸部17が形成されており、凸部17と側壁面8の先端縁すなわち外輪方向端縁との間に微小隙間を設けて、ラビリンス効果により潤滑剤が接触リップ14a方向へ流れにくくするのが好ましい。
【0051】
図2に示すように、外径装着部15を外輪3の内周面に形成された外輪周溝7に嵌着することにより、軸受用シール11が軸受1に対して位置決め固定されるとともに、軸受用シール11の外径部からの異物の浸入を防止することができる。また、外径装着部15も前述のゴム組成物の硬化物で構成される弾性部材であることで、外径装着部15と外輪周溝7との密着が良好に維持可能であるため、異物の浸入を効果的に防止することができる。
【0052】
尚、本実施形態では、シールリップ14の接触リップ14aは内輪2の側壁面8に常時圧接される構成の転がり軸受に前述の弾性部材を適用する場合について説明したが、このような実施形態に限らず、例えば、特開2010-265968号公報に記載のように、外輪の回転速度が比較的低速である場合には、接触シールとして機能して転がり軸受を密封し、外輪の回転速度が比較的高速である場合には、シールリップが内輪から離間した状態でも非接触シールとして機能するような構造を有する弾性部材についても、前述のゴム組成物の加硫物である弾性部材を適用することができ、特に接触シールとして機能する際に良好な硬度を有し、良好な耐摩耗性を発揮することができる。
【実施例0053】
以下、本発明の実施形態に係る弾性部材について詳細に説明する。
【0054】
[試験例1]:ゴム成分の組成の検討
(実施例1)
エピクロルヒドリンゴム(日本ゼオン株式会社製、Hydrin H55、CO、天然物由来エピクロルヒドリン使用)75.0重量部、アクリルゴム(日本ゼオン株式会社製、Nipol AR71、ANM)25.0重量部、加硫剤(三協化成株式会社製、ジスネットF、2,4,6-トリメルカプト-s-トリアジン)1.8重量部、加硫促進剤(住友化学株式会社製、ソクシノールD-G、1,3-ジフェニルグアジニン)0.6重量部、分散向上剤(Momentive社製、A-189、シランカップリング剤、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン)1.0重量部、補強材(東ソー・シリカ株式会社、ニプシールER、二酸化ケイ素)30.0重量部、改質クレー(バーゲス社製、バーゲスKE、シラン改質クレー)60.0重量部を混合し8インチオープンロールで混練し、ゴム組成物を得た。得られたゴム組成物を用い、1次加硫(150~180℃、10~15分)、2次加硫(150~180℃×1~10時間)を実施してシート状に成形することによって、厚さ2mmのゴムシート(ゴム成形体、以下「弾性部材」と称する)を得た。
【0055】
(実施例2~3、比較例1、2)
表1に示す配合比とした以外は、実施例1と同様にして、厚さ2mmのゴムシート(ゴム成形体、以下「弾性部材」と称する)を得た。
【0056】
(評価)
<引張試験>
得られた弾性部材を用い、JIS K 6251に準拠して切断時引張強さ(切断時強度)及び切断時伸びを測定した。評価基準は以下のとおりである。
切断時引張強さについては、9.0MPa以上であれば「○」、9.0MPa未満の場合は「×」である。切断時伸びについては、220%以上であれば「○」、220%未満の場合は「×」である。
【0057】
<耐油性試験>
得られた弾性部材を用い、予め、JIS K 6253-3に準拠して硬度(ショアA硬度)を測定し、JIS K6258に準拠し、体積を測定した。次いで、エステル油系潤滑剤(協同油脂株式会社、マルテンプSRL、グリース)又はシリコーン油系潤滑剤(信越化学工業株式会社、G40M、グリース)に150℃で72時間浸漬した。その後、同様に硬度及び体積を測定し、下記式により硬度変化(ΔショアA)、体積変化率(ΔV)を測定し、耐油性を評価した。
ΔショアA=(潤滑剤に浸漬後のショアA硬度)-(潤滑材に浸漬前のショアA硬度)
ΔV(%)=[(潤滑剤に浸漬後の体積/潤滑剤に浸漬前の体積)-1]×100
【0058】
評価基準は下記のとおりである。
ΔショアAが-20以上20以下である場合に摩耗量を抑制でき、実用上使用可能である。
ΔVが-5%以上20%以下である場合に軸受用シールの締め代の変化量が少なくトルクが安定し、実用上使用可能である。
【0059】
評価結果を表1に示す。
【0060】
【表1】
【0061】
[試験例2]:分散向上剤の添加量の検討
(実施例4~7、比較例3)
表2に示す配合比とした以外は、実施例1と同様にして厚さ2mmのゴムシート(ゴム成形体、以下「弾性部材」と称する)を得た。
【0062】
(評価)
<摩耗試験>
各弾性部材を用いて試験片を作製し、図3に示すような耐摩耗性試験機を用いて、試験片の上から摩擦板で荷重をかけながら回転させ、試験片の摩耗量(mm)を確認した。試験条件は、荷重:200gf、回転数:10000rpm、時間:15分間である。
評価基準は下記のとおりであり、「×」の場合に実用上適用不可である。
○:0.10mm未満
△:0.10mm以上0.30mm以下
×:0.30mmより大きい
【0063】
<分散性試験>
得られた弾性部材を用い、JIS K 6251に準拠して、JIS3号ダンベルを長さ方向が列理方向になるように抜き出した。得られたダンベルの切断面のうち標線間に該当する範囲の2面(標線間20mm、厚み方向2mmの範囲で両側)をデジタルマイクロスコープにて撮像し、撮像中の分散物の大きさを測定し、分散性の確認を行った。
分散性の評価基準は以下のとおりであり、「×」の場合に実用上適用不可である。
○:撮像中に、大きさが0.029mm以下の分散物のみ観察される
△:撮像中に、大きさが0.029mmより大きく0.049mm以下の分散物が1つ以上観察される
×:撮像中に、大きさが0.049mmより大きい分散物が1つ以上観察される
【0064】
評価結果を表2に示す。
【0065】
【表2】
【0066】
[試験例3]:改質クレーの添加量の検討
(実施例8~17)
表3に示す配合比とした以外は、実施例1と同様にして厚さ2mmのゴムシート(ゴム成形体、以下「弾性部材」と称する)を得た。
【0067】
<摩耗試験>
試験例2の場合と同様にして摩耗試験を行い評価した。
【0068】
<硬度試験>
得られた弾性部材を用い、JIS K 6253-3に準拠して硬度(ショアA硬度)を測定し評価した。評価基準は以下のとおりであり、「×」の場合に実用上適用不可である。
◎:ショアA硬度が、65以上75以下
○:ショアA硬度が、60以上65未満
△:ショアA硬度が、75より大きく85以下
×:ショアA硬度が、60未満又は85より大きい
【0069】
評価結果を表3に示す。
【0070】
【表3】
【0071】
[試験例4]:補強材の添加量の検討
(実施例18~21)
表4に示す配合比とした以外は、実施例1と同様にして厚さ2mmのゴムシート(ゴム成形体、弾性部材)を得た。
【0072】
<摩耗試験>
試験例3の場合と同様にして摩耗試験を行い評価した。
【0073】
<硬度試験>
試験例3の場合と同様にして硬度試験を行い評価した。
【0074】
評価結果を表4に示す。
【0075】
【表4】
【0076】
表1より、エピクロルヒドリンゴムと所定のアクリルゴムの配合比が特定の場合に、軸受用シールへの適用可能な切断時引張強さ及び切断時伸びを有すること、エステル油系潤滑剤であってもそうでない場合であっても軸受用シールに適用可能であることが分かる。表2より分散向上剤を含むことで補強材及び改質クレーの分散性が良好で、転がり軸受への適用に対して実用上問題のないレベルの耐摩耗性を有することが分かる。表3、4より、補強材及び改質クレーを含むことで転がり軸受への適用に対して実用上問題のないレベルの耐摩耗性、硬度を有することが分かる。したがって、所定の弾性部材は、エピクロルヒドリンゴムをゴム成分として用いているが、汎用性の高いエステル油系潤滑剤が封入されている転がり軸受にも適用可能であることが分かる。
【符号の説明】
【0077】
A 環状開口
1 転がり軸受
2 内輪
3 外輪
4 保持器
5 転動体
6 内輪周溝
7 外輪周溝
8 側壁面
9 外周面
10 潤滑剤(グリース)
11 軸受用シール
12 芯金
12A 内周面
13 弾性部材
14 シールリップ
14a 接触リップ
14b 非接触リップ(ダストリップ)
15 外径装着部
16 括れ部
17 凸部
図1
図2
図3