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  • 特開-車両用シートのトリム構造 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024113564
(43)【公開日】2024-08-22
(54)【発明の名称】車両用シートのトリム構造
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/58 20060101AFI20240815BHJP
   B60N 2/22 20060101ALI20240815BHJP
   A47C 31/02 20060101ALI20240815BHJP
【FI】
B60N2/58
B60N2/22
A47C31/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023018642
(22)【出願日】2023-02-09
(71)【出願人】
【識別番号】000151760
【氏名又は名称】株式会社東洋シート
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】保木本 淳
(72)【発明者】
【氏名】松川 凌大
【テーマコード(参考)】
3B087
【Fターム(参考)】
3B087BD03
3B087DE10
(57)【要約】
【課題】シートバックの角度に関わらず、内部機構が見えるのを抑制して見栄えを良好にする。
【解決手段】シートクッションの車両後部に対してリクライニング装置を介して傾動可能に連結されたシートバックの背面を覆うトリム10を備えた車両用シートのトリム構造において、トリムの下部は、シートクッションの車両後部を経てシートクッションの下面に達するまで延びた延長部11と、シートクッションの車両後部における車幅方向の端部に固定される被固定部13、14とを有している。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートクッションの車両後部に対してリクライニング装置を介して傾動可能に連結されたシートバックの背面を覆うトリムを備えた車両用シートのトリム構造であって、
前記トリムの下部は、前記シートクッションの車両後部を経て当該シートクッションの下面に達するまで延びる延長部と、前記シートクッションの車両後部における車幅方向の端部に固定される被固定部とを有していることを特徴とする車両用シートのトリム構造。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用シートのトリム構造において、
前記トリムの下部の車幅方向一端部及び他端部には、前記シートクッションの車両後部における車幅方向一端部及び他端部にそれぞれ固定される一側被固定部と他側被固定部とが設けられていることを特徴とする車両用シートのトリム構造。
【請求項3】
請求項1に記載の車両用シートのトリム構造において、
前記シートクッションの車両後部における車幅方向の端部には、ブラケットが設けられ、
前記ブラケットには、係止部が設けられ、
前記被固定部には、前記係止部が差し込まれる係止孔が設けられていることを特徴とする車両用シートのトリム構造。
【請求項4】
請求項3に記載の車両用シートのトリム構造において、
前記係止部は、車幅方向外側へ向けて突出していることを特徴とする車両用シートのトリム構造。
【請求項5】
請求項4に記載の車両用シートのトリム構造において、
前記係止部と、前記被固定部の前記係止孔が形成された部分とを車幅方向外側から覆うカバーが設けられていることを特徴とする車両用シートのトリム構造。
【請求項6】
請求項5に記載の車両用シートのトリム構造において、
前記カバーには、前記係止部の前記被固定部よりも突出方向先端側に当接する当接部が設けられていることを特徴とする車両用シートのトリム構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、例えば自動車等に搭載される車両用シートのトリム構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば自動車に搭載されるシートは、シートクッションとシートバックとを備えており、シートバックはシートクッションの後端部に対してリクライニング機構を介して連結されている。特許文献1には、シートバックの下端のコーナー部を、該シートバックの表皮材の下端に連結された連結部材によって被覆する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8-275848号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1のような連結部材を用いてシートバックの下端のコーナー部を被覆することで、内部機構が見えなくなって見栄えを良好にすることができると考えられる。ところが、シートバックはリクライニング動作するものなので、例えばシートバックが大きく前傾すると特許文献1の連結部材が引っ張られて内部機構が見えてしまうおそれがある。反対にシートバックを後に倒すと、特許文献1の連結部材が弛み、弛んだ連結部材とシートクッションとの間に隙間ができてしまい、その隙間から内部機構が見えてしまうおそれがある。つまり、特許文献1の連結部材では、シートバックが大きく前傾した場合や後に倒れた場合に内部機構が見えてしまう懸念があった。
【0005】
本開示は、かかる点に鑑みたものであり、その目的とするところは、シートバックの角度に関わらず、内部機構が見えるのを抑制して見栄えを良好にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、シートクッションの車両後部に対してリクライニング装置を介して傾動可能に連結されたシートバックの背面を覆うトリムを備えた車両用シートのトリム構造を前提とすることができる。前記トリムの下部は、前記シートクッションの車両後部を経て当該シートクッションの下面に達するまで延びる延長部と、前記シートクッションの車両後部における車幅方向の端部に固定される被固定部とを有している。
【0007】
この構成によれば、シートバックの背面を覆うトリムの延長部がシートクッションの車両後部を経て当該シートクッションの下面に達するまで延びているので、内部機構が延長部によって覆われて後方から見えなくなる。さらに、トリムの下部がシートクッションの車両後部における車幅方向の端部に固定されるので、シートバックを大きく前傾させた場合や、後に倒した場合に延長部とシートクッションとの間に隙間ができにくくなり、よって内部機構が側方からも見えなくなる。
【0008】
前記トリムの下部の車幅方向一端部及び他端部には、前記シートクッションの車両後部における車幅方向一端部及び他端部にそれぞれ固定される一側被固定部と他側被固定部とが設けられていてもよい。これにより、トリムの下部の車幅方向両側をシートクッションに固定することができるので、見栄えをより一層良好にすることができる。
【0009】
前記シートクッションの車両後部における車幅方向の端部にブラケットが設けられていてもよい。この場合、前記ブラケットには、係止部が設けられ、前記被固定部には、前記係止部が差し込まれる係止孔が設けられた構成とすることができる。これにより、被固定部の係止孔にブラケットの係止部を差し込むだけで、トリムの下部をシートクッションに簡単に固定できる。
【0010】
前記ブラケットに設けられている前記係止部が車幅方向外側へ向けて突出していてもよい。これにより、ブラケットの係止部が被固定部の係止孔から抜け難くなる。
【0011】
さらに、前記係止部と、前記被固定部の前記係止孔が形成された部分とを車幅方向外側から覆うカバーが設けられていてもよい。これにより、係止部及び係止孔が外から見えなくなるので、見栄えが良好になる。
【0012】
前記カバーには、前記係止部の前記被固定部よりも突出方向先端側に当接する当接部が設けられていてもよい。カバーの当接部が係止部の先端側に当接していることで、ブラケットの係止部が被固定部の係止孔からより一層抜け難くなる。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように、シートバックの背面を覆うトリムの下部がシートクッションの後部を経て下面に達するまで延びた延長部と、シートクッションの車両後部における車幅方向の端部に固定される被固定部とを有しているので、シートバックの角度に関わらず、内部機構が見えるのを抑制して見栄えを良好にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態に係る車両用シートの左側面図である。
図2】車両用シートの左側下部を左後方から見た斜視図である。
図3】車両用シートの左側下部を右後方から見た斜視図である。
図4】トリムの展開図である。
図5図1におけるV-V線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0016】
図1図3は、本発明の実施形態に係るトリム構造1が設けられた車両用シート2を示すものである。車両用シート2は、例えば自動車の車室内に配設されるものであり、運転席であってもよいし、助手席であってもよく、また後部座席であってもよい。この実施形態の説明では、車両前側を単に「前」といい、車両後側を単に「後」というものとする。また、車両左側を単に「左」といい、車両右側を単に「右」というものとする。左右方向は車幅方向に一致している。
【0017】
車両用シート2は、自動車のフロアパネル(図示せず)に取り付けられるシートクッション3と、シートクッション3の後部に対してリクライニング装置4を介して連結されたシートバック5とを備えている。シートクッション3は、着座時の乗員の臀部から太腿の裏側を支持する部材である。一方、シートバック5は、着座時の乗員の腰部、背中、肩を支持する部材である。シートクッション3は、左右方向に間隔をあけて配設された2本のスライドレール6を介して車体のフロアパネル(図示せず)に取り付けられている。スライドレール6は前後方向に延びており、スライドレール6により車両用シート2の前後方向の位置調整が可能になっている。
【0018】
リクライニング装置4は、従来から周知のものであり、シートバック5をシートクッション3に対して前後方向に傾動させ、所望の傾動角度で固定可能な構造を備えている。リクライニング装置4は、電動式のものであってもよいし、手動式のものであってもよい。リクライニング装置4は、内部機構の一例である。
【0019】
図2及び図3に示すように、トリム構造1は、シートバック5の背面を覆うトリム10を備えている。トリム10は、例えば布材や合成樹脂製の可撓性を有するシート材等で構成されている。図2及び図3に示すように、トリム10の下部は、シートクッション3の後部を経て当該シートクッション3の下面に達するまで延びた延長部11を有している。図4は、トリム10をシートバック5に取り付ける前の状態、即ち、トリム10を展開した状態を示している。この図に示すように、トリム10は、シートバック5の背面を覆うトリム本体12と、延長部11と、左側被固定部(一側被固定部)13と、右側被固定部(他側被固定部)14とを有している。トリム本体12は、シートバック5の背面に沿って上下方向及び左右方向に延びるように形成されており、シートバック5の背面に固定される。図4に示す仮想線Lよりも上側部分がトリム本体12であり、仮想線Lよりも下側部分が延長部11である。仮想線Lは、シートバック5の下端に相当する部分を示しており、従って、仮想線Lよりも下側部分は、シートクッション3の後部を覆うとともに、シートクッション3の下面を覆うことが可能な部分となる。トリム本体12と、延長部11とは同一の部材で構成されていてもよいし、別部材で構成されていてもよい。別部材で構成する場合には、トリム本体12と延長部11とを縫い合わせて一体化することができる。
【0020】
延長部11の先端部には、引っ掛け部11aが設けられている。引っ掛け部11aは、シートクッション3の下面に設けられたフック等(図示せず)に引っ掛けられるようになっている。引っ掛け部11aは例えばゴム等の伸縮性を有する部材で構成されており、延長部11の前側部分に対して前方へ向かう付勢力を作用させる。例えば、シートバック5が前へ傾動すると、延長部11が上方へ引っ張られることになり、この延長部11の上方への引っ張り力により引っ掛け部11aが伸長する。一方、シートバック5が後へ倒されると、引っ掛け部11aが縮むことにより延長部11の前側部分が前方へ引っ張られる。
【0021】
左側被固定部13は、シートクッション3の後部における左端部に固定される部分であり、延長部11の左端部から左へ向けて延出している。また、右側被固定部14は、シートクッション3の後部における右端部に固定される部分であり、延長部11の右端部から右へ向けて延出している。したがって、本実施形態では、トリム10の下部の左端部(車幅方向一端部)及び右端部(車幅方向他端部)には、シートクッション3の後部における左端部及び右端部にそれぞれ固定される左側被固定部13と右側被固定部14とが設けられている。
【0022】
左側被固定部13には、左側係止孔13aが形成されている。また、右側被固定部14には、右側係止孔14aが形成されている。左側係止孔13a及び右側係止孔14aはそれぞれ左側被固定部13及び右側被固定部14を貫通するスリット状をなしている。
【0023】
図5に示すように、シートクッション5の左側部には、側方部材50が設けられている。側方部材50には、シートクッション5の後部における車幅方向の端部に位置するブラケット51が固定されている。このブラケット51はトリム構造1を構成する部材である。ブラケット51は、前後方向に延びる板状の基部51aと、基部51aの後端部から左(車幅方向外側)へ突出する係止部51bとを有している。基部51aは、側方部材50の左側面に固定されている。係止部51bは、例えば板状をなしており、上下方向に延びるように形成されている。この実施形態では、基部51aと係止部51bとが略直角であるが、これに限られるものではなく、基部51aと係止部51bとが鋭角をなしていてもよいし、鈍角をなしていてもよい。
【0024】
左側被固定部13の左側係止孔13aには、係止部51bが差し込まれるようになっている。すなわち、トリム10の左側被固定部13をシートクッション3の後部における左端部に固定する際には、作業者が左側被固定部13をブラケット51の係止部51bよりも左まで引っ張った後、左側被固定部13の左側係止孔13aに係止部51bを差し込む。すると、図5に示すように、左側被固定部13の左側係止孔13aが形成された部分は、係止部51bの基端(右端)に位置付けられる。これにより、左側被固定部13をブラケット51の係止部51bに簡単に引っ掛けて固定することができる。尚、左側被固定部13をブラケット51から外す際には、左へ引っ張って係止部51bを左側係止孔13aから抜けばよい。
【0025】
図示しないが、シートクッション3の後部の右側にも同様なブラケットが設けられている。このブラケットの係止部は右へ向けて突出しており、右側被固定部14の右側係止孔14aに係止部を差し込むことで、右側被固定部14をシートクッション3の後部の右側に固定することができる。
【0026】
車両用シート2には、ブラケット51の係止部51bと、左側被固定部13の左側係止孔13aが形成された部分とを左側(車幅方向外側)から覆うカバー60が設けられている。カバー60は、トリム構造1を構成する部材であり、例えば樹脂材等で構成されている。カバー60には、前後方向及び上下方向に延びる側板部61と、側板部61の後端から右へ向けて延びる後板部62とが設けられている。側板部61は、シートクッション3の後部の左側に対して着脱可能に取り付けられている。後板部62は、トリム10の延長部11の左端部及びブラケット51の係止部51bの後方に配置される部分であり、延長部11の左端部及び係止部51bを後方から覆うように形成されている。
【0027】
カバー60には、係止部51bの左側被固定部13よりも突出方向先端側に当接する当接部63が設けられている。すなわち、左側被固定部13の左側係止孔13aが形成された部分は、係止部51bの基端に位置しているので、係止部51bの左側被固定部13よりも突出方向先端側には、左側被固定部13が接触していない。係止部51bにおける左側被固定部13が接触していない部分に、当接部63が後方から当接している。これにより、例えばトリム10の延長部11が撓んだとしても、左側被固定部13の左側係止孔13aから係止部51bが抜け難くなる。
【0028】
(実施形態の作用効果)
以上説明したように、シートバック5の背面を覆うトリム10の延長部11がシートクッション3の後部を経て当該シートクッション3の下面に達するまで延びているので、内部機構が延長部11によって覆われて見えなくなる。さらに、トリム10の下部がシートクッション3の後部における左端部及び右端部に固定されるので、シートバック5を大きく前傾させた場合や、後に倒した場合に延長部11とシートクッション3との間に隙間ができにくくなり、よって内部機構が見えなくなる。
【0029】
また、シートクッション3の後部に設けたブラケット51の係止部51bを左側被固定部13の左側係止孔13aに差し込むようにしたので、トリム10の下部をシートクッション3に簡単に固定できる。
【0030】
そして、ブラケット51の係止部51bと、左側被固定部13の係止孔13aが形成された部分とをカバー60によって覆うことができるので、見栄えが良好になる。
【0031】
上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0032】
以上説明したように、本発明に係る車両用シートのトリム構造は、例えば自動車等に搭載される車両用シートに適用できる。
【符号の説明】
【0033】
1 トリム構造
2 車両用シート
3 シートクッション
4 リクライニング装置
5 シートバック
10 トリム
11 延長部
13 左側被固定部(一側被固定部)
13a 左側係止孔
14 右側被固定部(他側被固定部)
51 ブラケット
51b 係止部
60 カバー
63 当接部
図1
図2
図3
図4
図5