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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024113565
(43)【公開日】2024-08-22
(54)【発明の名称】補強システムおよび補強構造物
(51)【国際特許分類】
   E04G 23/02 20060101AFI20240815BHJP
【FI】
E04G23/02 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023018643
(22)【出願日】2023-02-09
(71)【出願人】
【識別番号】000227593
【氏名又は名称】日之出水道機器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109896
【弁理士】
【氏名又は名称】森 友宏
(72)【発明者】
【氏名】竹山 清宏
(72)【発明者】
【氏名】藤原 俊之
(72)【発明者】
【氏名】木村 哲夫
【テーマコード(参考)】
2E176
【Fターム(参考)】
2E176AA04
2E176AA11
2E176BB29
(57)【要約】
【課題】補強対象部材に対する補強効果の持続に有効な補強システムを提供する。
【解決手段】補強システム3は、補強対象部材2を、補強対象部材2の軸方向に直交する径方向の外側から包囲するパネルユニット4を備える。パネルユニット4は、補強対象部材2の周方向に沿って並んで配置されるパネル部10A,10Bと、パネル部10A,10B同士を連結する連結部50C,50Dと、パネル部10A,10Bの間に連結部50C,50Dを介してくさび力を導入するくさび力導入部80C,80Dとを含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
補強対象部材を、前記補強対象部材の軸方向に直交する径方向の外側から包囲するパネルユニットを備え、
前記パネルユニットは、前記補強対象部材の周方向に沿って並んで配置される複数のパネル部と、
前記複数のパネル部のうち互いに隣接するパネル部同士を連結する連結部と、
前記隣接するパネル部間に前記連結部を介してくさび力を導入するくさび力導入部とを含む、補強システム。
【請求項2】
請求項1において、
前記連結部は、前記隣接するパネル部同士を前記周方向に対向させることにより形成される第1の連結部と、
前記第1の連結部に連結される第2の連結部とを含み、
前記第1の連結部は、前記隣接するパネル部同士の対向部に形成された一対の第1の凸部であって、前記軸方向に沿う第1の方向に延びる一対の第1の凸部同士を組み合わせることにより形成される第1の結合凸部を含み、
前記第2の連結部は、前記第1の結合凸部に連結される第1の凹部を含み、
前記くさび力導入部は、前記第1の結合凸部に対して前記第1の凹部を前記第1の方向の一方側から他方側に向けて連結する際、前記一対の第1の凸部同士が互いに押し当てられることにより前記隣接するパネル部間にくさび力が導入されるように、前記第1の結合凸部の断面積が前記一方側から前記他方側に向けて漸次的に拡大する第1の漸次拡大断面部を含む、補強システム。
【請求項3】
請求項2において、
前記第1の結合凸部は、前記径方向の外側を向いた第1の頂面を含み、
前記第1の凹部は、前記第1の頂面に対向するように前記径方向の内側を向いた第1の底面を含む、補強システム。
【請求項4】
請求項2において、
前記連結部は、前記隣接するパネル部同士を前記周方向に対向させることにより形成される第3の連結部と、
前記第3の連結部に連結される第4の連結部とを含み、
前記第3の連結部は、前記隣接するパネル部同士の対向部に形成された一対の第2の凸部であって、前記軸方向に沿う第1の方向に延びる一対の第2の凸部同士を組み合わせることにより形成される第2の結合凸部を含み、
前記第4の連結部は、前記第2の結合凸部に連結される第2の凹部を含み、
前記くさび力導入部は、前記第2の結合凸部に対して前記第2の凹部を前記第1の方向の前記他方側から前記一方側に向けて連結する際、前記一対の第2の凸部同士が互いに押し当てられることにより前記隣接するパネル部間にくさび力が導入されるように、前記第2の結合凸部の断面積が前記他方側から前記一方側に向けて漸次的に拡大する第2の漸次拡大断面部であって、前記第1の漸次拡大断面部の前記他方側に位置する第2の漸次拡大断面部を含む、補強システム。
【請求項5】
請求項4において、
前記第1の結合凸部は、前記径方向の内側を向いた第1の頂面を含み、
前記第1の凹部は、前記第1の頂面に対向するように前記径方向の外側を向いた第1の底面を含み、
前記第2の結合凸部は、前記径方向の内側を向いた第2の頂面を含み、
前記第2の凹部は、前記第2の頂面に対向するように前記径方向の外側を向いた第2の底面を含む、補強システム。
【請求項6】
請求項1において、
前記連結部は、前記隣接するパネル部のうち一方のパネル部に形成された第1の連結部と、
他方のパネル部に形成された第2の連結部と、
前記第1の連結部と前記第2の連結部とを連結する第3の連結部とを含み、
前記第1の連結部は、前記軸方向に沿う第1の方向に延びる第1の部分を含み、
前記第2の連結部は、前記第1の部分に対して前記周方向に空間部を隔てて対向する第2の部分を含み、
前記第3の連結部は、前記第1の部分と前記第2の部分とに接触する接触部を含み、
前記接触部は、前記第1の部分と前記第2の部分とが前記周方向に引き離される移動を規制する規制部を含み、
前記くさび力導入部は、前記空間部に対して前記径方向の一方側から他方側に向けて挿入する挿入部を含み、
前記挿入部は、前記第1の部分と前記第2の部分とが前記規制部に押し当てられることにより前記隣接するパネル部間にくさび力が導入されるように、前記第1の部分および前記第2の部分に対して互いに引き離す向きの力を付与するくさび状部を含む、補強システム。
【請求項7】
請求項1において、
前記連結部は、前記隣接するパネル部のうち一方のパネル部に形成された第1の連結部と、
他方のパネル部に形成された第2の連結部とを含み、
前記第1の連結部は、前記軸方向に沿う第1の方向に延びる第1の凸部と、
前記第1の凸部に対して前記周方向に連なる凹部とを含み、
前記第2の連結部は、前記凹部に空間部を残した状態で前記第1の凸部に接触するように配置される第2の凸部を含み、
前記くさび力導入部は、前記空間部に対して前記径方向の一方側から他方側に向けて挿入する挿入部を含み、
前記挿入部は、前記第1の凸部と前記第2の凸部とが互いに押し当てられることにより前記隣接するパネル部間にくさび力が導入されるように、前記第1の凸部および前記第2の凸部に対して互いに引き寄せる向きの力を付与するくさび状部を含む、補強システム。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項において、
前記複数のパネル部のそれぞれは、前記補強対象部材に接触する内周壁を含む、補強システム。
【請求項9】
請求項1~7のいずれか一項に記載の補強システムと、
前記補強システムにより補強される補強対象部材とを備え、
前記補強対象部材は、柱部材または梁部材である、補強構造物。
【請求項10】
請求項8に記載の補強システムと、
前記補強システムにより補強される補強対象部材とを備え、
前記補強対象部材は、柱部材または梁部材である、補強構造物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、補強システムおよび補強構造物に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、耐震補強という本来の機能を損なうことなく、経済性と作業性に優れなおかつ工事規模の簡略化や工期の短縮が可能な耐震補強パネルを提供することが記載されている。
【0003】
特許文献1において、耐震補強パネルは、矩形断面をなすコンクリート柱としてのRC柱の周囲を取り囲むようにして巻立て可能に構成された鋼製の補強パネルと鋼製の接続パネルとから構成してあること、補強パネルは、断面がL字状をなす4枚の補強パネルピースで構成してあること、接続パネルは、補強パネルピースのうち、水平方向に隣接する補強パネルピース同士を相互に接合可能に構成してあることが記載されている。そして、補強パネルピースの接続縁部近傍には、RC柱の周囲に巻き立てたとき、該RC柱の側面方向に向けて突設されるように矩形状の接続用突設部をプレス加工で形成してあるとともに、接続パネルには、かかる接続用突設部が嵌合される矩形状の接続用開口を形成してあることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-183318号公報(要約)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、補強対象部材に対する補強効果の持続に有効な補強システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、補強対象部材を、補強対象部材の軸方向に直交する径方向の外側から包囲するパネルユニットを備える補強システムである。パネルユニットは、補強対象部材の周方向に沿って並んで配置される複数のパネル部と、複数のパネル部のうち互いに隣接するパネル部同士を連結する連結部と、隣接するパネル部間に連結部を介してくさび力を導入するくさび力導入部とを含む。
【0007】
この補強システムでは、互いに隣接するパネル部同士を連結する連結部を介してくさび力を導入することにより、補強対象部材の周方向に沿って並ぶ複数のパネル部内における各パネル部間にくさび効果(くさび作用)を発現させることができる。これにより、複数のパネル部の並び方向(以下単に「並び方向」という。)においてパネル部相互間の相対的な変位が拘束される。このため、パネル部相互間の連結の緩みが抑制される結果、並び方向の全域にわたりパネル部相互間の強固な連結状態を維持することができる。したがって、補強対象部材の周方向の全周にわたる補強効果を持続させることができる。
【0008】
連結部は、隣接するパネル部同士を周方向に対向させることにより形成される第1の連結部と、第1の連結部に連結される第2の連結部とを含み、第1の連結部は、隣接するパネル部同士の対向部に形成された一対の第1の凸部であって、軸方向に沿う第1の方向に延びる一対の第1の凸部同士を組み合わせることにより形成される第1の結合凸部を含み、第2の連結部は、第1の結合凸部に連結される第1の凹部を含み、くさび力導入部は、第1の結合凸部に対して第1の凹部を第1の方向の一方側から他方側に向けて連結する際、一対の第1の凸部同士が互いに押し当てられることにより隣接するパネル部間にくさび力が導入されるように、第1の結合凸部の断面積が一方側から他方側に向けて漸次的に拡大する第1の漸次拡大断面部を含むことが好ましい。
【0009】
この補強システムでは、第1の凹部を、第1の結合凸部の第1の漸次拡大断面部に対して、第1の方向の一方側から連結する際にくさび力を導入することができる。このため、隣接するパネル部同士を連結するのと同時にパネル部間にくさび効果を発現させることができる。したがって、補強作業の作業効率を向上させることができる。
【0010】
第1の結合凸部は、径方向の外側を向いた第1の頂面を含み、第1の凹部は、第1の頂面に対向するように径方向の内側を向いた第1の底面を含むことが好ましい。第1の凹部を第1の結合凸部に対して、第1の方向の一方側から連結する作業を、周方向に沿って並ぶ複数のパネル部の外周側から行うことができる。したがって、隣接するパネル部同士の連結作業および補強作業を容易に行うことができる。
【0011】
連結部は、隣接するパネル部同士を周方向に対向させることにより形成される第3の連結部と、第3の連結部に連結される第4の連結部とを含み、第3の連結部は、隣接するパネル部同士の対向部に形成された一対の第2の凸部であって、軸方向に沿う第1の方向に延びる一対の第2の凸部同士を組み合わせることにより形成される第2の結合凸部を含み、第4の連結部は、第2の結合凸部に連結される第2の凹部を含み、くさび力導入部は、第2の結合凸部に対して第2の凹部を第1の方向の他方側から一方側に向けて連結する際、一対の第2の凸部同士が互いに押し当てられることにより隣接するパネル部間にくさび力が導入されるように、第2の結合凸部の断面積が他方側から一方側に向けて漸次的に拡大する第2の漸次拡大断面部であって、第1の漸次拡大断面部の他方側に位置する第2の漸次拡大断面部を含むことが好ましい。
【0012】
この補強システムでは、第2の漸次拡大断面部が、第1の漸次拡大断面部の他方側に位置している。このため、第2の凹部を、第2の結合凸部の第2の漸次拡大断面部に対して、第1の方向の他方側から連結する際にくさび力を導入することができる。すなわち、並び方向におけるパネル部相互間に対して、第1の方向の両側からくさび力を導入することができる。したがって、第1の凹部および/または第2の凹部の第1の方向における長さを短縮化しやすく、補強対象部材の軸方向の両側が狭い狭隘環境下においても補強作業を効率的に行うことができる。
【0013】
第1の結合凸部は、径方向の内側を向いた第1の頂面を含み、第1の凹部は、第1の頂面に対向するように径方向の外側を向いた第1の底面を含み、第2の結合凸部は、径方向の内側を向いた第2の頂面を含み、第2の凹部は、第2の頂面に対向するように径方向の外側を向いた第2の底面を含むことが好ましい。各凹部を各結合凸部に対して、第1の方向の両側から連結する作業を、周方向に沿って並ぶ複数のパネル部の内周側から行うことができる。したがって、各パネル部において外周側に張り出すフランジ等の部位を設けた場合であっても、当該部位に干渉することなく補強作業を効率的に行うことができる。
【0014】
連結部は、隣接するパネル部のうち一方のパネル部に形成された第1の連結部と、他方のパネル部に形成された第2の連結部と、第1の連結部と第2の連結部とを連結する第3の連結部とを含み、第1の連結部は、軸方向に沿う第1の方向に延びる第1の部分を含み、第2の連結部は、第1の部分に対して周方向に空間部を隔てて対向する第2の部分を含み、第3の連結部は、第1の部分と第2の部分とに接触する接触部を含み、接触部は、第1の部分と第2の部分とが周方向に引き離される移動を規制する規制部を含み、くさび力導入部は、空間部に対して径方向の一方側から他方側に向けて挿入する挿入部を含み、挿入部は、第1の部分と第2の部分とが規制部に押し当てられることにより隣接するパネル部間にくさび力が導入されるように、第1の部分および第2の部分に対して互いに引き離す向きの力を付与するくさび状部を含むものであってもよい。
【0015】
この補強システムでは、くさび状部を、第1の部分と第2の部分との間の空間部に対して、径方向の一方側(典型的には径方向の外側)から挿入することによりくさび力を導入することができる。このため、補強作業の際、補強対象部材の外周側からくさび状部を挿入する度合を調整することにより、第1の部分と第2の部分とを引き離す向きの力を制御することができ、結果として、パネル部間に導入するくさび力を容易に制御することができる。したがって、補強作業の作業効率を向上させるとともに、パネル部間に所望のくさび効果を発現させることができる。
【0016】
連結部は、隣接するパネル部のうち一方のパネル部に形成された第1の連結部と、他方のパネル部に形成された第2の連結部とを含み、第1の連結部は、軸方向に沿う第1の方向に延びる第1の凸部と、第1の凸部に対して周方向に連なる凹部とを含み、第2の連結部は、凹部に空間部を残した状態で第1の凸部に接触するように配置される第2の凸部を含み、くさび力導入部は、空間部に対して径方向の一方側から他方側に向けて挿入する挿入部を含み、挿入部は、第1の凸部と第2の凸部とが互いに押し当てられることにより隣接するパネル部間にくさび力が導入されるように、第1の凸部および第2の凸部に対して互いに引き寄せる向きの力を付与するくさび状部を含むものであってもよい。
【0017】
この補強システムでは、くさび状部を、凹部の空間部に対して、径方向の一方側(典型的には径方向の外側)から挿入することによりくさび力を導入することができる。このため、補強作業の際、補強対象部材の外周側からくさび状部を挿入する度合を調整することにより、第1の凸部と第2の凸部とを引き寄せる向きの力を制御することができ、結果として、パネル部間に導入するくさび力を容易に制御することができる。したがって、補強作業の作業効率を向上させるとともに、パネル部間に所望のくさび効果を発現させることができる。
【0018】
複数のパネル部のそれぞれは、補強対象部材に接触する内周壁を含むものであってもよい。周方向に沿って並ぶ複数のパネル部を補強対象部材に密着させることができるため、補強対象部材とこれを包囲するパネルユニットとの間にモルタル等の充填材を充填する作業を省略することができる。
【0019】
本発明の他の態様は、上記の補強システムと、補強システムにより補強される補強対象部材とを備える補強構造物である。典型的には、補強対象部材は、柱部材または梁部材である。柱部材または梁部材の周方向の全周にわたる補強効果を持続させた補強構造物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、本発明の第1の実施形態における補強構造物を模式的に示す斜視図である。
図2図2は、図1に示す補強構造物の平面図である。
図3図3は、図1に示す補強構造物におけるパネルユニットの分解斜視図である。
図4A図4Aは、図3に示すパネルユニットにおけるパネル部の拡大平面図である。
図4B図4Bは、図4Aに示すパネル部の背面図である。
図4C図4Cは、図4Aに示すパネル部の右側面図である。
図4D図4Dは、図4Aに示すパネル部の左側面図である。
図5図5は、図3に示すパネル部を互いに突き合わせた状態を示す斜視図である。
図6A図6Aは、図3に示すパネルユニットにおける凹部の拡大平面図である。
図6B図6Bは、図6Aに示す凹部の左側面図である。
図7図7は、図3に示すパネルユニットの連結部を模式的に示す図である。
図8図8は、本発明の第2の実施形態における補強構造物を模式的に示す斜視図である。
図9図9は、図8に示す補強構造物の平面図である。
図10図10は、図8に示す補強構造物におけるパネルユニットの分解斜視図である。
図11A図11Aは、図10に示すパネルユニットにおけるパネル部の拡大平面図である。
図11B図11Bは、図11Aに示すパネル部の背面図である。
図11C図11Cは、図11AのA-A線断面である。
図11D図11Dは、図11BのB-B線断面である。
図12図12は、図10に示すパネル部を互いに突き合わせた状態を示す部分破断斜視図である。
図13A図13Aは、図10に示すパネルユニットにおける凹部の拡大平面図である。
図13B図13Bは、図13Aに示す凹部の左側面図である。
図14図14は、図10に示すパネルユニットの連結部を模式的に示す図である。
図15図15は、本発明の第3の実施形態における補強構造物を模式的に示す斜視図である。
図16図16は、図15に示す補強構造物の平面図である。
図17図17は、図15に示す補強構造物におけるパネルユニットの分解斜視図である。
図18A図18Aは、図17に示すパネルユニットにおけるパネル部の拡大平面図である。
図18B図18Bは、図18Aに示すパネル部の背面図である。
図18C図18Cは、図18AのC-C線断面である。
図18D図18Dは、図18BのD-D線断面である。
図19図19は、図17に示すパネル部を互いに突き合わせた状態を示す部分破断斜視図である。
図20A図20Aは、図17に示すパネルユニットにおける凹部の拡大平面図である。
図20B図20Bは、図20Aに示す凹部の左側面図である。
図21図21は、図17に示すパネルユニットにおける挿入部を示す斜視図である。
図22図22は、図16のE-E線断面図である。
図23図23は、図17に示すパネルユニットの連結部を模式的に示す図である。
図24図24は、本発明の第4の実施形態における補強構造物を模式的に示す斜視図である。
図25図25は、図24に示す補強構造物の平面図である。
図26図26は、図24に示す補強構造物におけるパネルユニットの分解斜視図である。
図27A図27Aは、図26に示すパネルユニットにおけるパネル部の拡大平面図である。
図27B図27Bは、図27Aに示すパネル部の背面図である。
図27C図27Cは、図27AのF-F線断面図である。
図27D図27Dは、図27Aに示すパネル部の左側面図である。
図28図28は、図26に示すパネル部を互いに突き合わせた状態を示す斜視図である。
図29図29は、図26に示すパネルユニットの連結部を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る補強システムおよび補強構造物の実施形態について図1から図29を参照して詳細に説明する。図1から図29において、同一または相当する構成要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。また、図1から図29においては、各構成要素の縮尺や寸法が誇張されて示されている場合や一部の構成要素が省略されている場合がある。以下の説明では、特に言及がない場合には、「第1」や「第2」などの用語は、構成要素を互いに区別するために使用されているだけであり、特定の順位や順番を表すものではない。
【0022】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態における補強構造物1を模式的に示す斜視図、図2は平面図である。図1および図2に示すように、補強構造物1は、柱部材である補強対象部材2と、補強対象部材2を補強する補強システム3とを備えている。例えば、補強対象部材2は軸方向(Z方向)に延びる架線用コンクリート柱であり、その端部(下端部)は地盤Gに埋め込まれている。なお、本実施形態では、便宜的に、+Z方向を「上」または「上方」と表記し、-Z方向を「下」または「下方」と表記することがある。また、軸方向を「軸方向Z」と表記することがある。以下の実施形態においても同様である。
【0023】
図1および図2に示すように、補強システム3は、補強対象部材2を、補強対象部材2の軸方向に直交する径方向の外側から包囲するパネルユニット4を備えている。このパネルユニット4は、補強対象部材2を径方向の外側から全周にわたり包囲するパネル体6を有している。パネル体6は、補強対象部材2の周方向に沿って並んで配置される2つのパネル部10A,10Bと、隣接するパネル部10A,10B同士を連結する連結部50と、隣接するパネル部10A,10B間に連結部50を介してくさび力を導入するくさび力導入部80とを有している。
【0024】
図3はパネルユニット4の分解斜視図である。図3に示すように、パネル部10A,10Bは、それぞれ略半円筒状の部材であり、互いに隣接して周方向に対向するように配置されている。図1から図3に示すように、連結部50は、隣接するパネル部10A,10Bにより円筒状のパネル体6が形成されるように、隣接するパネル部10A,10B同士を連結する一対の連結部50C,50Dを有している。連結部50Cは、隣接するパネル部10A,10B同士を周方向に対向させることにより形成される第1の連結部50C1と、第1の連結部50C1に連結される第2の連結部50C2とを有している。なお、本実施形態では、周方向において、隣接するパネル部10A,10B同士が対向する方向を特にX方向(対向方向)と表記することがある。また、本実施形態では、X方向(対向方向)およびZ方向(軸方向)の両方に直交する方向をY方向(対向直交方向)と表記することがある。また、対向方向を「対向方向X」と表記し、対向直交方向を「対向直交方向Y」と表記することがある。以下の実施形態においても同様である。なお、連結部50Cと連結部50Dとは同様の構成を有しているため、以下では主として連結部50Cについてのみ説明し、連結部50Dについての説明は省略するが、以下の説明は連結部50Dについても同様に当てはまるものである。
【0025】
図1および図2に示すように、くさび力導入部80は、隣接するパネル部10A,10B間に一対の連結部50C,50Dを介してくさび力を導入する一対のくさび力導入部80C,80Dを有している。くさび力導入部80Cは、第1の連結部50C1に対して第2の連結部50C2を第1の方向の一方側(上方側)から他方側(下方側)に向けて連結する際、隣接するパネル部10A,10B間にくさび力が導入されるように、第1の連結部50C1の第1の結合凸部30-1(後述)の断面積が一方側から他方側に向けて漸次的に拡大する第1の漸次拡大断面部32-1(後述)を有している。なお、くさび力導入部80Cとくさび力導入部80Dとは同様の構成を有しているため、以下では主としてくさび力導入部80Cについてのみ説明し、くさび力導入部80Dについての説明は省略するが、以下の説明はくさび力導入部80Dについても同様に当てはまるものである。
【0026】
図4Aはパネル部10Aの拡大平面図、図4Bは背面図、図4Cは右側面図、図4Dは左側面図である。図4Aから図4Dに示すように、パネル部10Aは、半円筒状の本体部11Aと、本体部11Aの下端部12Aから径方向の外側に延出するフランジ部13Aとを有している。フランジ部13Aには、パネル部10Aを地盤G(図1参照)に固定するためのボルト5(図1および図2参照)を挿通するための貫通孔14Aが周方向に沿って例えば等間隔に並んで形成されている。
【0027】
図4Aに示すように、パネル部10Aは、周方向において隣接するパネル部10Bに対向する対向部15-1Aおよび対向部15-2Aを含んでいる。また、パネル部10Aの本体部11Aは、径方向の外側を向いた半円状の外周壁7Aと、一方の対向部15-1Aにおいて外周壁7Aに対して径方向の内側に窪む凹部18-1Aと、凹部18-1Aの底面8-1Aに対して径方向の外側に突出する凸部16-1Aと、他方の対向部15-2Aにおいて外周壁7Aに対して径方向の内側に窪む凹部18-2Aと、凹部18-2Aの底面8-2Aに対して径方向の外側に突出する凸部16-2Aとを含んでいる。これらの凸部16-1A,16-2Aは、いずれもパネル部10Aの上端部17Aから下端部12Aまで軸方向(Z方向)に沿う方向(第1の方向)に延びている。本実施形態においては、パネル部10Aの対向部15-1Aにおける構成と対向部15-2Aにおける構成は、XZ平面に対して対称となっている。
【0028】
図4Aに示すように、対向部15-1Aの凸部16-1Aは、凹部18-1Aの底面8-1Aから対向直交方向Yに向かうにつれ対向方向Xに張り出す傾斜面41-1Aと、傾斜面41-1Aの対向直交方向Yの端部から対向方向Xに延びるとともに径方向の外側を向いた頂面40-1Aと、頂面40-1Aの対向方向Xの端部から対向直交方向Yに延びるとともに隣接するパネル部10Bと対向する端面19-1Aとを有している。また、図4Cに示すように、凸部16-1Aの頂面40-1Aの対向方向Xに沿った幅W1は、パネル部10Aの上端部17Aから下端部12Aに向かって漸次的に大きくなっている。このため、凸部16-1AのXY平面における断面積は、パネル部10Aの上端部17Aから下端部12Aに向かって漸次的に大きくなっている。
【0029】
同様に、対向部15-2Aの凸部16-2Aは、凹部18-2Aの底面8-2Aから対向直交方向Yに向かうにつれ対向方向Xに張り出す傾斜面41-2Aと、傾斜面41-2Aの対向直交方向Yの端部から対向方向Xに延びるとともに径方向の外側を向いた頂面40-2Aと、頂面40-2Aの対向方向Xの端部から対向直交方向Yに延びるとともに隣接するパネル部10Bと対向する端面19-2Aとを有している。この頂面40-2Aの対向方向Xに沿った幅W2は、パネル部10Aの上端部17Aから下端部12Aに向かって漸次的に大きくなっており、本実施形態においては凸部16-1Aの頂面40-1Aの対向方向Xに沿った幅W1と等しくなるように変化している。このため、凸部16-2AのXY平面における断面積は、パネル部10Aの上端部17Aから下端部12Aに向かうにつれ漸次的に大きくなっている。
【0030】
ここで、パネル部10Bはパネル部10Aと同様の構成を有しているため、上述したパネル部10Aの構成要素に対応するパネル部10Bの構成要素については、パネル部10Aの構成要素に付されていた符号中の添字「A」に代えて添字「B」を付すことで重複する説明を省略する。例えば、パネル部10Bの凸部16-1Bは、上述したパネル部10Aの凸部16-1Aと同様の構成を有する。
【0031】
2つのパネル部10A,10Bは、凸部16-1Aの端面19-1Aと凸部16-2Bの端面19-2Bとが対向方向Xにおいて互いに対面して接触し、また、凸部16-2Aの端面19-2Aと凸部16-1Bの端面19-1Bとが互いに対向方向Xにおいて対面して接触するように構成されている。すなわち、凸部16-1Aと凸部16-2Bとが対になり、凸部16-2Aと凸部16-1Bとが対になっている。このように、端面19-1Aと端面19-2Bとを接触させるとともに、端面19-2Aと端面19-1Bとを接触させてパネル部10Aとパネル部10Bとを互いに対向させると、図5に示すように、凸部16-1Aと凸部16-2Bとが組み合わされることにより結合凸部30-1(第1の連結部50C1の第1の結合凸部)が形成され、また、凸部16-2Aと凸部16-1Bとが組み合わされることにより結合凸部30-2(第1の連結部50D1の第1の結合凸部)が形成される。
【0032】
図5に示すように、結合凸部30-1は、凸部16-1Aの頂面40-1Aと凸部16-2Bの頂面40-2Bとにより構成される頂面31-1(第1の頂面)を有しており、この頂面31-1は径方向の外側を向いている。同様に、結合凸部30-2は、凸部16-2Aの頂面40-2Aと凸部16-1Bの頂面40-1Bの頂面とにより構成される頂面31-2(第1の頂面)を有しており、この頂面31-2は径方向の外側を向いている。
【0033】
上述したように、凸部16-1AのXY平面における断面積はパネル部10Aの上端部17Aから下端部12Aに向かうにつれ漸次的に大きくなっており、同様に、凸部16-2BのXY平面における断面積はパネル部10Bの上端部17Bから下端部12Bに向かうにつれ漸次的に大きくなっている。したがって、これらの凸部16-1Aおよび凸部16-2Bにより形成される結合凸部30-1は、XY平面における断面積S1図5参照)が上端部17A,17Bから下端部12A,12Bに向かって漸次的に拡大する漸次拡大断面部32-1(第1の漸次拡大断面部)を含む。同様に、凸部16-2Aおよび凸部16-1Bにより形成される結合凸部30-2は、XY平面における断面積が上端部17A,17Bから下端部12A,12Bに向かって漸次的に拡大する漸次拡大断面部32-2(第1の漸次拡大断面部)を含む。
【0034】
図6Aは第2の連結部50C2の拡大平面図、図6Bは左側面図である。図6Aおよび図6Bに示すように、第2の連結部50C2は、全体がアリ溝状に形成された凹部20C(第1の凹部)を含んでいる。凹部20Cは、第1の連結部50C1(結合凸部30-1)(図5参照)に対して連結する際、結合凸部30-1を径方向の外側から覆うように対向方向Xに延びる基部25と、基部25の対向方向Xの両側から径方向の内側に突出する一対の係合部21,22とを含んでいる。基部25は、結合凸部30-1の頂面31-1(図5参照)に対向するように径方向の内側を向いた底面27(第1の底面)を含んでいる。係合部21は、凸部16-1Aに係合し、係合部22は、凸部16-2Bに係合するようになっている。係合部21は、底面27から対向直交方向Yに向かうにつれ対向方向Xに張り出す傾斜面21aを有している。係合部22は、対向直交方向Yに向かうにつれ対向方向Xに張り出す傾斜面22aを有している。係合部21と係合部22とは対向方向Xにおいて互いに対向しており、係合部22と係合部22との間には、径方向の内側に向かって次第に対向方向Xに沿った幅が狭くなるアリ溝状の空間24が形成されている。図6Bに示すように、凹部20Cの底面27の対向方向Xに沿った幅P1は、上述した結合凸部30-1の頂面31-1の対向方向Xに沿った幅(凸部16-1Aの幅W1+凸部16-2Bの幅W2)に対応して、凹部20Cの上端部28から下端部29に向かって漸次的に大きくなっている。係合部21の傾斜面21aおよび係合部22の傾斜面22aによって形成される溝(空間)24の断面は、上述した結合凸部30-1の断面に対応した形状(密着する形状)を有しており、係合部22と係合部22との間に形成された溝(空間)24に上述した結合凸部30-1が嵌まるようになっている。
【0035】
図7は、凹部20Cおよび結合凸部30-1の関係を模式的に示す図である。上述したように、結合凸部30-1の漸次拡大断面部32-1のXY平面における断面積S1は、パネル部10A,10Bの上端部17A,17Bから下端部12A,12Bに向かって漸次的に拡大し、これに対応して、凹部20C内の溝24のXY平面における断面積T1も上端部28から下端部29に向かって漸次的に拡大している。このため、凹部20Cの下端部29における溝24の大きさは、パネル部10A,10Bの上端部17A,17Bにおける結合凸部30-1の大きさよりも大きくなっている。したがって、図7に示すように、凹部20Cの下端部29側の溝24を結合凸部30-1の上端部に嵌め込み、凹部20Cを結合凸部30-1に対して上方から下方側に向けて移動することで、結合凸部30-1に凹部20Cを連結することができる。
【0036】
ここで、結合凸部30-1に対して凹部20Cを上方から下方に向けて連結する際に、結合凸部30-1の凸部16-1A,16-2B同士が接触した状態から、さらに凹部20Cを結合凸部30-1に対して下方に向けて押し込むと、凸部16-1A,16-2B間で反力が生じるが、この反力に逆らうように凹部20Cをさらに押し込むことにより、凹部20C(第1の凹部)と結合凸部30-1(第1の結合凸部)の漸次拡大断面部32-1(第1の漸次拡大断面部)との接触によって凸部16-1A,16-2B同士が互いに押し当てられ、これにより隣接するパネル部10A,10B間にくさび力が導入される。
【0037】
また、結合凸部30-2に対しても、凹部20Cと同様の構成を有する凹部20D(第1に凹部)を上方から下方に向けて嵌め込むことができる。このとき、結合凸部30-2の凸部16-2A,16-1B同士が接触した状態から、さらに凹部20Dを結合凸部30-2に対して下方に向けて押し込むと、凸部16-2A,16-1B間で反力が生じるが、この反力に逆らうように凹部20Dをさらに押し込むことにより、凹部20D(第1の凹部)と結合凸部30-2(第1の結合凸部)の漸次拡大断面部32-2(第1の漸次拡大断面部)との接触によって凸部16-2A,16-1B同士が互いに押し当てられ、これにより隣接するパネル部10A,10B間にくさび力が導入される。
【0038】
このようにして、凹部20C,20Dを結合凸部30-1,30-2に連結することで隣接するパネル部10A,10B間にくさび力を導入した状態で補強対象部材2の周囲でパネルユニット4を組み立てることができる。パネルユニット4を組み立てた後、パネル部10A,10Bのフランジ部13A,13Bの貫通孔14A,14Bにボルト5を挿通してボルト5を地盤Gに固定することで、補強対象部材2をパネルユニット4によって補強することができる。
【0039】
上記のように、本実施形態においては、隣接するパネル部10A,10Bの対向部15-1A,15-2Bに形成された凸部16-1A,凸部16-2Bが組み合わされることにより形成される結合凸部30-1と、結合凸部30-1に嵌め込まれる凹部20Cとが、連結部50Cとして機能する。したがって、連結部50Cは、隣接するパネル部10A,10B同士を周方向に対向させることにより形成される結合凸部30-1(第1の連結部)と、結合凸部30-1に連結される凹部20C(第2の連結部)とを含んでいる。さらに、本実施形態においては、隣接するパネル部10A,10Bの対向部15-2A,15-1Bに形成された凸部16-2A,凸部16-1Bが組み合わされることにより形成される結合凸部30-2と、結合凸部30-2に嵌め込まれる凹部20Dとが、連結部50Dとして機能する。したがって、連結部50Dは、隣接するパネル部10A,10B同士を周方向に対向させることにより形成される結合凸部30-2(第1の連結部)と、結合凸部30-2に連結される凹部20D(第2の連結部)とを含んでいる。
【0040】
また、本実施形態においては、結合凸部30-1に対して凹部20Cを第1の方向の上方側(一方側)から下方側(他方側)に向けて連結する際、結合凸部30-1の漸次拡大断面部32-1が、隣接するパネル部10A,10B間にくさび力を導入するくさび力導入部80Cとして機能する。したがって、くさび力導入部80Cは、結合凸部30-1(第1の結合凸部)に対して凹部20C(第1の凹部)を第1の方向の上方側(一方側)から下方側(他方側)に向けて連結する際、凸部16-1A,16-2B(一対の第1の凸部)同士が互いに押し当てられることにより隣接するパネル部10A,10B間にくさび力が導入されるように、結合凸部30-1(第1の結合凸部)の断面積S1が一方側から他方側に向けて漸次的に拡大する漸次拡大断面部32-1(第1の漸次拡大断面部)を含んでいる。さらに、本実施形態においては、結合凸部30-2に対して凹部20Dを第1の方向の上方側(一方側)から下方側(他方側)に向けて連結する際、結合凸部30-2の漸次拡大断面部32-2が、隣接するパネル部10A,10B間にくさび力を導入するくさび力導入部80Dとして機能する。したがって、くさび力導入部80Dは、結合凸部30-2(第1の結合凸部)に対して凹部20D(第1の凹部)を第1の方向の上方側(一方側)から下方側(他方側)に向けて連結する際、凸部16-2A,16-1B(一対の第1の凸部)同士が互いに押し当てられることにより隣接するパネル部10A,10B間にくさび力が導入されるように、結合凸部30-2(第1の結合凸部)の断面積が一方側から他方側に向けて漸次的に拡大する漸次拡大断面部32-2(第1の漸次拡大断面部)を含んでいる。
【0041】
このように、本実施形態における補強システム3によれば、上述したくさび力導入部80によって、互いに隣接するパネル部10A,10B同士を連結する連結部50を介して互いに隣接するパネル部10A,10Bの間にくさび力を導入することにより、補強対象部材2の周方向に沿って並ぶパネル部10A,10Bの間にくさび効果(くさび作用)を発現させることができる。これにより、パネル部10A,10Bの並び方向においてパネル部10A,10B間の相対的な変位が拘束される。このため、パネル部10A,10B相互間の連結の緩みが抑制される結果、パネル部10A,10Bの並び方向の全域にわたりパネル部10A,10B相互間の強固な連結状態を維持することができる。したがって、補強対象部材2の周方向の全周にわたる補強効果を持続させることができる。
【0042】
特に本実施形態によれば、凹部20C,20Dを、結合凸部30-1,30-2の漸次拡大断面部32-1,32-2に対して第1の方向の一方側(上方)から他方側(下方)に向けて連結する際にくさび力を導入することができる。このため、隣接するパネル部10A,10B同士を連結するのと同時にパネル部10A,10B間にくさび効果を発現させることができる。したがって、補強作業の作業効率を向上させることができる。
【0043】
また、本実施形態では、結合凸部30-1の頂面31-1および結合凸部30-2の頂面31-2がそれぞれ径方向の外側を向き、凹部20C,20Dの底面27がそれぞれ径方向の内側を向いているため、凹部20C,20Dを結合凸部30-1,30-2に対して連結する作業を、周方向に沿って並ぶ複数のパネル部10A,10Bの外周側から行うことができる。したがって、隣接するパネル部10A,10B同士の連結作業および補強作業を容易に行うことができる。
【0044】
本実施形態では、凸部16-1A,16-2Aがパネル部10Aと一体的に形成され、凸部16-1B,16-2Bがパネル部10Bと一体的に形成されている例を説明したが、これらの凸部をパネル部10A,10Bと別体で形成し、これらをパネル部10A,10Bに取り付けることとしてもよい。
【0045】
また、本実施形態では、結合凸部30-1,30-2がパネル部10A,10Bの上端部17A,17Bから下端部12A,12Bまで延びるように形成されているが、パネル部10A,10Bの軸方向に沿った一部分にのみ結合凸部30-1,30-2が形成されていてもよい。
【0046】
[第2の実施形態]
図8は、本発明の第2の実施形態における補強構造物101を模式的に示す斜視図、図9は、図8に示す補強構造物の平面図である。図8および図9に示すように、補強構造物101は、柱部材である補強対象部材2と、補強対象部材2を補強する補強システム103とを備えている。補強システム103は、補強対象部材2を、補強対象部材2の軸方向に直交する径方向の外側から包囲するパネルユニット104を備えている。このパネルユニット104は、補強対象部材2を径方向の外側から全周にわたり包囲するパネル体106を有している。パネル体106は、補強対象部材2の周方向に沿って並んで配置される2つのパネル部110A,110Bと、隣接するパネル部110A,110B同士を連結する連結部150と、隣接するパネル部110A,110B間に連結部150を介してくさび力を導入するくさび力導入部180とを有している。
【0047】
図10はパネルユニット104の分解斜視図である。図10に示すように、パネル部110A,110Bは、それぞれ略半円筒状の部材であり、互いに隣接して周方向に対向するように配置されている。図8から図10に示すように、連結部150は、隣接するパネル部110A,110Bにより円筒状のパネル体106が形成されるように、隣接するパネル部110A,110B同士を連結する一対の連結部150C,150Dを有している。連結部150Cは、隣接するパネル部110A,110B同士を周方向に対向させることにより形成される第1の連結部150C1と、第1の連結部150C1に連結される第2の連結部150C2と、隣接するパネル部110A,110B同士を周方向に対向させることにより形成される第3の連結部150C3と、第3の連結部150C3に連結される第4の連結部150C4とを有している。連結部150C1,150C2はパネル体106の上方側に位置し、連結部150C3,150C4はパネル体106の下方側(連結部150C1,150C2の下方側)に位置している。なお、連結部150Cと連結部150Dとは同様の構成を有しているため、以下では主として連結部150Cについてのみ説明し、連結部150Dについての説明は省略するが、以下の説明は連結部150Dについても同様に当てはまるものである。
【0048】
図8および図9に示すように、くさび力導入部180は、隣接するパネル部110A,110B間に一対の連結部150C,150Dを介してくさび力を導入する一対のくさび力導入部180C,180Dを有している。くさび力導入部180Cは、第1の連結部150C1に対して第2の連結部150C2を第1の方向の一方側(上方側)から他方側(下方側)に向けて連結する際、隣接するパネル部110A,110B間にくさび力が導入されるように、第1の連結部150C1の第1の結合凸部130-1(後述)の断面積が一方側から他方側に向けて漸次的に拡大する第1の漸次拡大断面部132-1(後述)と、第3の連結部150C3に対して第4の連結部150C4を第1の方向の他方側(下方側)から一方側(上方側)に向けて連結する際、隣接するパネル部110A,110B間にくさび力が導入されるように、第3の連結部150C3の断面積が他方側から一方側に向けて漸次的に拡大する第2の漸次拡大断面部133-1(後述)とを有している。なお、くさび力導入部180Cとくさび力導入部180Dとは同様の構成を有しているため、以下では主としてくさび力導入部180Cについてのみ説明し、くさび力導入部180Dについての説明は省略するが、以下の説明はくさび力導入部180Dについても同様に当てはまるものである。
【0049】
図11Aはパネル部110Aの拡大平面図、図11Bは背面図、図11C図11AのA-A線断面、図11D図11BのB-B線断面である。図11Aから図11Dに示すように、パネル部110Aは、半円筒状の本体部111Aと、本体部111Aの下端部112Aから径方向の外側に延出するフランジ部113Aとを有している。フランジ部113Aには、パネル部110Aを地盤Gに固定するためのボルト5を挿通するための貫通孔114Aが周方向に沿って例えば等間隔に並んで形成されている。
【0050】
図11Aに示すように、パネル部110Aは、周方向において隣接するパネル部110Bに対向する対向部115-1Aおよび対向部115-2Aを含んでいる。また、パネル部110Aの本体部111Aは、径方向の内側を向いた半円状の内周壁107Aと、一方の対向部115-1Aにおいて内周壁107Aに対して径方向の外側に窪む凹部118-1Aと、凹部118-1Aの底面108-1Aに対して径方向の内側に突出する凸部116-1Aと、他方の対向部115-2Aにおいて内周壁107Aに対して径方向の外側に窪む凹部118-2Aと、凹部118-2Aの底面108-2Aに対して径方向の内側に突出する凸部116-2Aとを含んでいる。これらの凸部116-1A,116-2Aは、いずれもパネル部110Aの上端部117Aから下端部112Aまで軸方向(Z方向)に沿う方向(第1の方向)に延びている。本実施形態においては、パネル部110Aの対向部115-1Aにおける構成と対向部115-2Aにおける構成は、XZ平面に対して対称となっている。
【0051】
図11Aに示すように、凸部116-1Aは、凹部118-1Aの底面108-1Aから対向直交方向Yに向かうにつれ対向方向Xに張り出す傾斜面141-1Aと、傾斜面141-1Aの対向直交方向Yの端部から対向方向Xに延びるとともに径方向の内側を向いた頂面140-1Aと、頂面140-1Aの対向方向Xの端部から対向直交方向Yに延びるとともに隣接するパネル部110Bと対向する端面119-1Aとを有している。また、図11Cに示すように、凸部116-1Aの頂面140-1Aの対向方向Xに沿った幅W3は、パネル部110Aの上端部117Aから中間部105Aに向かって漸次的に大きくなっており、また、下端部112Aから中間部105Aに向かって漸次的に大きくなっている。すなわち、凸部116-1Aの頂面140-1Aの対向方向Xに沿った幅W3は、上端部117Aおよび下端部112Aから中間部105Aに向かってそれぞれ漸次的に大きくなっており、中間部105Aにおいて最も大きくなっている。このため、凸部116-1AのXY平面における断面積は、上端部117Aおよび下端部112Aから中間部105Aに向かってそれぞれ漸次的に大きくなっており、中間部105Aにおいて最も大きくなっている。
【0052】
同様に、対向部115-2Aの凸部116-2Aは、凹部118-2Aの底面108-2Aから対向直交方向Yに向かうにつれ対向方向Xに張り出す傾斜面141-2Aと、傾斜面141-2Aの対向直交方向Yの端部から対向方向Xに延びるとともに径方向の内側を向いた頂面140-2Aと、頂面140-2Aの対向方向Xの端部から対向直交方向Yに延びるとともに隣接するパネル部110Bと対向する端面119-2Aとを有している。この頂面140-2Aの対向方向Xに沿った幅W4は、パネル部110Aの上端部117Aおよび下端部112Aから中間部105Aに向かってそれぞれ漸次的に大きくなっており、中間部105Aにおいて最も大きくなっている。本実施形態においては、頂面140-2Aの対向方向Xに沿った幅W4は、凸部116-1Aの頂面140-1Aの対向方向Xに沿った幅W3と等しくなるように変化している。このため、凸部116-2AのXY平面における断面積は、パネル部110Aの上端部117Aおよび下端部112Aから中間部105Aに向かってそれぞれ漸次的に大きくなっており、中間部105Aにおいて最も大きくなっている。
【0053】
ここで、パネル部110Bはパネル部110Aと同様の構成を有しているため、上述したパネル部110Aの構成要素に対応するパネル部110Bの構成要素については、パネル部110Aの構成要素に付されていた符号中の添字「A」に代えて添字「B」を付すことで重複する説明を省略する。例えば、パネル部110Bの凸部116-1Bは、上述したパネル部110Aの凸部116-1Aと同様の構成を有する。
【0054】
2つのパネル部110A,110Bは、凸部116-1Aの端面119-1Aと凸部116-2Bの端面119-2Bとが対向方向Xにおいて互いに対面して接触し、また、凸部116-2Aの端面119-2Aと凸部116-1Bの端面119-1Bとが対向方向Xにおいて互いに対面して接触するように構成されている。すなわち、凸部116-1Aと凸部116-2Bとが対になり、凸部116-2Aと凸部116-1Bとが対になっている。このように、端面119-1Aと端面119-2Bとを接触させるとともに、端面119-2Aと端面119-1Bとを接触させてパネル部110Aとパネル部110Bとを互いに対向させると、図12に示すように、凸部116-1Aと凸部116-2Bとが組み合わされることにより結合凸部130-1(第1の連結部150C1の第1の結合凸部および第3の連結部150C3の第2の結合凸部)が形成され、また、凸部116-2Aと凸部116-1Bとが組み合わされることにより結合凸部130-2(図9参照、第1の連結部の第1の結合凸部および第3の連結部の第2の結合凸部)が形成される。
【0055】
図12に示すように、結合凸部130-1は、凸部116-1Aの頂面140-1Aと凸部116-2Bの頂面140-2Bとにより構成される頂面131-1(第1の頂面および第2の頂面)を有しており、この頂面131-1は径方向の内側を向いている。同様に、結合凸部130-2は、凸部116-2Aの頂面140-2Aと凸部116-1Bの頂面140-1Bの頂面とにより構成される頂面131-2(図9参照、第1の頂面および第2の頂面)を有しており、この頂面131-2は径方向の内側を向いている。
【0056】
上述したように、凸部116-1AのXY平面における断面積は、パネル部110Aの上端部117Aから中間部105Aに向かって漸次的に大きくなっており、同様に、凸部116-2BのXY平面における断面積は、パネル部110Bの上端部117Bから中間部105Bに向かって漸次的に大きくなっている。また、凸部116-1AのXY平面における断面積は、パネル部110Aの下端部112Aから中間部105Aに向かって漸次的に大きくなっており、同様に、凸部116-2BのXY平面における断面積は、パネル部110Bの下端部112Bから中間部105Bに向かって漸次的に大きくなっている。したがって、これらの凸部116-1Aおよび凸部116-2Bにより形成される結合凸部130-1は、XY平面における断面積S2図12参照)が、上端部117A,117Bから中間部105A,105Bに向かって漸次的に拡大する第1の漸次拡大断面部132-1(第1の漸次拡大断面部)と、下端部112A,112Bから中間部105A,105Bに向かって漸次的に拡大する第2の漸次拡大断面部133-1(第2の漸次拡大断面部)とを含む。すなわち、結合凸部130-1は、第1の漸次拡大断面部132-1を含む第1の結合凸部130-1a(第1の結合凸部)と、第2の漸次拡大断面部133-1を含む第2の結合凸部130-1b(第2の結合凸部)とを含んでいる。
【0057】
図13Aは第2の連結部150C2の拡大平面図、図13Bは左側面図である。図13Aおよび図13Bに示すように、第2の連結部150C2は、全体がアリ溝状に形成された凹部120C(第1の凹部)を含んでいる。凹部120Cは、第1の連結部150C1(第1の結合凸部130-1a)(図12参照)に対して連結する際、結合凸部130-1aを径方向の内側から覆うように対向方向Xに延びる基部125と、基部125の対向方向Xの両側から径方向の外側に突出する一対の係合部121,122とを含んでいる。基部125は、第1の結合凸部130-1aの頂面131-1(図12参照)に対向するように径方向の外側を向いた底面127(第1の底面)を含んでいる。係合部121は、凸部116-1Aに係合し、係合部122は、凸部116-2Bに係合するようになっている。係合部121は、底面127から対向直交方向Yに向かうにつれ対向方向Xに張り出す傾斜面121aを有している。係合部122は、対向直交方向Yに向かうにつれ対向方向Xに張り出す傾斜面122aを有している。係合部121と係合部122とは対向方向Xにおいて互いに対向しており、係合部121と係合部122との間には、径方向の外側に向かって次第に対向方向Xに沿った幅が狭くなるアリ溝状の空間124が形成されている。図13Bに示すように、凹部120Cの底面127の対向方向Xに沿った幅P2は、上述した第1の結合凸部130-1aの頂面131-1のY方向に沿った幅(凸部116-1Aの幅W3+凸部116-2Bの幅W4)に対応して、凹部120Cの上端部128から下端部129に向かって漸次的に大きくなっている。係合部121の傾斜面121aおよび係合部122の傾斜面122aによって形成される溝(空間)124の断面は、上述した第1の結合凸部130-1aの断面に対応した形状(密着する形状)を有しており、係合部122と係合部122との間に形成された溝(空間)124に上述した第1の結合凸部130-1aが嵌まるようになっている。
【0058】
第4の連結部150C4は、上述した凹部120Cの上下を逆にして配置した凹部120C’(第2の凹部)を含んでいる。凹部120C’の底面127(第2の底面)は、第2の結合凸部130-1bの頂面131-1(図12参照)に対向するように径方向の外側を向いている。凹部120C’の係合部121は、凸部116-2Bに係合し、係合部122は、凸部116-1Aに係合するようになっている。凹部120C’は、第3の連結部150C3(第2の結合凸部130-1b)(図12参照)に対して連結される。
【0059】
図14は、凹部120C,120C’および結合凸部130-1の関係を模式的に示す図である。上述したように、第1の結合凸部130-1aのXY平面における断面積S2は、パネル部110A,110Bの上端部117A,117Bから中間部105A,105Bに向かって漸次的に拡大し、これに対応して、凹部120Cの溝124のXY平面における断面積T2は上端部128から下端部129に向かって漸次的に拡大している。このため、凹部120Cの下端部129における溝124の大きさは、パネル部110A,110Bの上端部117A,117Bにおける第1の結合凸部130-1aの大きさよりも大きくなっている。したがって、図14に示すように、凹部120Cの下端部129側の溝124を第1の結合凸部130-1aの上端部に嵌め込み、凹部120Cを第1の結合凸部130-1aに対して上方から下方に向けて移動させることで、第1の結合凸部130-1aに凹部120Cを連結することができる。
【0060】
また、第2の結合凸部130-1bのXY平面における断面積S2は、パネル部110A,110Bの下端部112A,112Bから中間部105A,105Bに向かって漸次的に拡大している。上述したように、凹部120C’は凹部120Cの上下を逆にして配置したものであるから、凹部120C’の溝124のXY平面における断面積T3は下端部128(凹部120Cの上端部128に対応する)から上端部129(凹部120Cの下端部129に対応する)に向かって漸次的に拡大している。このため、凹部120C’の上端部129における溝124の大きさは、パネル部110A,110Bの下端部112A,112Bにおける第2の結合凸部130-1bの大きさよりも大きくなっている。したがって、凹部120C’の上端部129側の溝124を第2の結合凸部130-1bの下端部に嵌め込み、凹部120C’を第2の結合凸部130-1bに対して凹部120Cとは逆方向、すなわち下方から上方に向けて移動させることで、第2の結合凸部130-1bに凹部120C’を連結することができる。
【0061】
ここで、第1の結合凸部130-1aに対して凹部120Cを上方から下方に向けて連結する際に、第1の結合凸部130-1aの凸部116-1A,116-2B同士が接触した状態から、さらに凹部120Cを第1の結合凸部130-1aに対して下方に向けて押し込むと、凸部116-1A,116-2B間で反力が生じるが、この反力に逆らうように凹部120Cをさらに押し込むことにより、凹部120C(第1の凹部)と第1の結合凸部130-1a(第1の結合凸部)の第1の漸次拡大断面部132-1(第1の漸次拡大断面部)との接触によって凸部116-1A,116-2B同士が互いに押し当てられ、これにより隣接するパネル部110A,110B間にくさび力が導入される。
【0062】
また、第2の結合凸部130-1bに対して凹部120C’を下方から上方に向けて連結する際に、第2の結合凸部130-1bの凸部116-1A,116-2B同士が接触した状態から、さらに凹部120C’を第2の結合凸部130-1bに対して上方に向けて押し込むと、凸部116-1A,116-2B間で反力が生じるが、この反力に逆らうように凹部120C’をさらに押し込むことにより、凹部120C’(第2の凹部)と第2の結合凸部130-1b(第2の結合凸部)の第2の漸次拡大断面部133-1(第2の漸次拡大断面部)との接触によって凸部116-1A,116-2B同士が互いに押し当てられ、これにより隣接するパネル部110A,110B間にくさび力が導入される。
【0063】
さらに、結合凸部130-2に対しても、凹部120Cと同様の構成を有する凹部120D(第1の凹部)を上方から下方に向けて嵌め込むことができる。このとき、パネル部110A,110Bの中間部105A,105Bよりも上側に位置する結合凸部130-2(第1の結合凸部)の漸次拡大断面部132-2(第1の漸次拡大断面部)と凹部120D(第1の凹部)との接触によって凸部116-2A,116-1B同士が互いに押し当てられ、これにより隣接するパネル部110A,110B間にくさび力が導入される。また、結合凸部130-2に対して、凹部120Dの上下を逆にして配置した凹部120D’(第2の凹部)を下方から上方に向けて嵌め込むことができる。このとき、パネル部110A,110Bの中間部105A,105Bよりも下側に位置する結合凸部130-2(第2の結合凸部)の漸次拡大断面部133-2(第2の漸次拡大断面部)と凹部120D’(第2の凹部)との接触によって凸部116-2A,116-1B同士が互いに押し当てられ、これにより隣接するパネル部110A,110B間にくさび力が導入される。
【0064】
このようにして、凹部120C,120C’,120D,120D’を結合凸部130-1,130-2に連結することで隣接するパネル部110A,110B間にくさび力を導入した状態で補強対象部材2の周囲でパネルユニット104を組み立てることができる。パネルユニット104を組み立てた後、パネル部110A,110Bのフランジ部113A,113Bの貫通孔114A,114Bにボルト5を挿通してボルト5を地盤Gに固定することで、補強対象部材2をパネルユニット104によって補強することができる。
【0065】
上記のように、本実施形態においては、隣接するパネル部110A,110Bの対向部115-1A,115-2Bに形成された凸部116-1A,凸部116-2Bが組み合わされることにより形成される結合凸部130-1と、結合凸部130-1に嵌め込まれる凹部120C,120C’とが、連結部150Cとして機能する。したがって、連結部150Cは、隣接するパネル部110A,110B同士を周方向に対向させることにより形成される第1の結合凸部130-1a(第1の連結部)と、第1の結合凸部130-1aに連結される凹部120C(第2の連結部)と、隣接するパネル部110A,110B同士を周方向に対向させることにより形成される第2の結合凸部130-1b(第3の連結部)と、第2の結合凸部130-1bに連結される凹部120C’(第4の連結部)とを含んでいる。
【0066】
さらに、本実施形態においては、隣接するパネル部110A,110Bの対向部115-2A,115-1Bに形成された凸部116-2A,凸部116-1Bが組み合わされることにより形成される結合凸部130-2と、結合凸部130-2に嵌め込まれる凹部120D,120D’とが、連結部150Dとして機能する。したがって、連結部150Dは、隣接するパネル部110A,110B同士を周方向に対向させることにより形成される結合凸部130-2の上側部分(第1の連結部)と、結合凸部130-2の上側部分に連結される凹部120D(第2の連結部)と、隣接するパネル部110A,110B同士を周方向に対向させることにより形成される結合凸部130-2の下側部分(第3の連結部)と、結合凸部130-2の下側部分に連結される凹部120D’(第4の連結部)とを含んでいる。
【0067】
また、本実施形態においては、結合凸部130-1に対して凹部120Cを第1の方向の上方側(一方側)から下方側(他方側)に向けて連結する際、第1の結合凸部130-1aの漸次拡大断面部132-1が、隣接するパネル部110A,110B間にくさび力を導入するくさび力導入部180Cとして機能する。さらに、結合凸部130-1に対して凹部120C’を第1の方向の下方側(他方側)から上方側(一方側)に向けて連結する際、第2の結合凸部130-1bの漸次拡大断面部133-1に、隣接するパネル部110A,110B間にくさび力を導入するくさび力導入部180Cとして機能する。したがって、くさび力導入部180Cは、第1の結合凸部130-1a(第1の結合凸部)に対して凹部120C(第1の凹部)を第1の方向の上方側(一方側)から下方側(他方側)に向けて連結する際、凸部116-1A,116-2B(一対の第1の凸部)同士が互いに押し当てられることにより隣接するパネル部110A,110B間にくさび力が導入されるように、第1の結合凸部130-1a(第1の結合凸部)の断面積S2が一方側から他方側に向けて漸次的に拡大する第1の漸次拡大断面部132-1(第1の漸次拡大断面部)と、第2の結合凸部130-1b(第2の結合凸部)に対して凹部120C’(第2の凹部)を第1の方向の下方側(他方側)から上方側(一方側)に向けて連結する際、凸部116-1A,116-2B(一対の第2の凸部)同士が互いに押し当てられることにより隣接するパネル部110A,110B間にくさび力が導入されるように、第2の結合凸部130-1b(第2の結合凸部)の断面積S2が他方側から一方側に向けて漸次的に拡大する第2の漸次拡大断面部133-1(第2の漸次拡大断面部)とを含んでいる。
【0068】
さらに、本実施形態においては、結合凸部130-2に対して凹部120Dを第1の方向の上方側(一方側)から下方側(他方側)に向けて連結する際、結合凸部130-2の上側部分の漸次拡大断面部132-2が、隣接するパネル部110A,110B間にくさび力を導入するくさび力導入部180Dとして機能する。さらに、結合凸部130-2に対して凹部120D’を第1の方向の下方側(他方側)から上方側(一方側)に向けて連結する際、結合凸部130-2の下側部分の漸次拡大断面部133-2も、隣接するパネル部110A,110B間にくさび力を導入するくさび力導入部180Dとして機能する。したがって、くさび力導入部180Dは、結合凸部130-2の上側部分(第1の結合凸部)に対して凹部120D(第1の凹部)を第1の方向の上方側(一方側)から下方側(他方側)に向けて連結する際、凸部116-2A,116-1B(一対の第1の凸部)同士が互いに押し当てられることにより隣接するパネル部110A,110B間にくさび力が導入されるように、結合凸部130-2の上側部分(第1の結合凸部)の断面積が一方側から他方側に向けて漸次的に拡大する漸次拡大断面部132-2(第1の漸次拡大断面部)と、結合凸部130-2の下側部分(第2の結合凸部)に対して凹部120D’(第2の凹部)を第1の方向の下方側(他方側)から上方側(一方側)に向けて連結する際、凸部116-2A,116-1B(一対の第2の凸部)同士が互いに押し当てられることにより隣接するパネル部110A,110B間にくさび力が導入されるように、結合凸部130-2の下側部分(第2の結合凸部)の断面積が他方側から一方側に向けて漸次的に拡大する漸次拡大断面部133-2(第2の漸次拡大断面部)とを含んでいる。
【0069】
このように、本実施形態における補強システム103によれば、上述したくさび力導入部180によって、互いに隣接するパネル部110A,110B同士を連結する連結部150を介して互いに隣接するパネル部110A,110Bの間にくさび力を導入することにより、補強対象部材2の周方向に沿って並ぶパネル部110A,110Bの間にくさび効果(くさび作用)を発現させることができる。これにより、パネル部110A,110Bの並び方向においてパネル部110A,110B間の相対的な変位が拘束される。このため、パネル部110A,110B相互間の連結の緩みが抑制される結果、パネル部110A,110Bの並び方向の全域にわたりパネル部110A,110B相互間の強固な連結状態を維持することができる。したがって、補強対象部材2の周方向の全周にわたる補強効果を持続させることができる。
【0070】
特に本実施形態によれば、凹部120C,120Dを、結合凸部130-1,130-2の上側部分の漸次拡大断面部132-1,132-2に対して第1の方向の一方側(上方)から他方側(下方)に向けて連結する際にくさび力を導入することができ、また、凹部120C’,120D’を、結合凸部130-1,130-2の下側部分の漸次拡大断面部133-1,132-2に対して第1の方向の下方から上方に向けて連結する際にくさび力を導入することができる。このため、隣接するパネル部110A,110B同士を連結するのと同時にパネル部110A,110B間にくさび効果を発現させることができる。したがって、補強作業の作業効率を向上させることができる。
【0071】
また、本実施形態では、第2の結合凸部130-1bの第2の漸次拡大断面部133-1が、第1の結合凸部130-1aの第1の漸次拡大断面部132-1の他方側(下方)に位置しているため、凹部120C’を、第2の結合凸部130-1bの第2の漸次拡大断面部133-1に対して第1の方向の他方側(下方)から一方側(上方)に向けて連結する際にくさび力を導入することができる。同様に、凹部120D’を、結合凸部130-2の下側部分の漸次拡大断面部132-2に対して第1の方向の他方側(下方)から一方側(上方)に向けて連結する際にくさび力を導入することができる。すなわち、並び方向におけるパネル部110A,110B相互間に対して、第1の方向の両側からくさび力を導入することができる。したがって、凹部120C,120Dおよび/または凹部120C’,120D’の第1の方向における長さを短縮化しやすく、補強対象部材2の軸方向の両側が狭い狭隘環境下においても補強作業を効率的に行うことができる。
【0072】
また、本実施形態では、第1の結合凸部130-1aおよび第2の結合凸部130-1bのそれぞれの頂面131-1が径方向の内側を向き、凹部120C,120C’のそれぞれの底面127が径方向の内側を向いているため、凹部120C,120C’を結合凸部130-1に対して、第1の方向の両側から連結する作業を、周方向に沿って並ぶ複数のパネル部110A,110Bの内周側から行うことができる。同様に、結合凸部130-2の頂面131-2が径方向の内側を向き、凹部120D,120D’のそれぞれの底面127が径方向の内側を向いているため、凹部120D,120D’を結合凸部130-2に対して、第1の方向の両側から連結する作業を、周方向に沿って並ぶ複数のパネル部110A,110Bの内周側から行うことができる。したがって、各パネル部110A,110Bが外周側に張り出すフランジ部113A,113Bなどの部位を有する場合であっても、当該部位に干渉することなく補強作業を効率的に行うことができる。
【0073】
本実施形態では、凸部116-1A,116-2Aがパネル部110Aと一体的に形成され、凸部116-1B,116-2Bがパネル部110Bと一体的に形成されている例を説明したが、これらの凸部をパネル部110A,110Bと別体で形成し、これらをパネル部110A,110Bに取り付けることとしてもよい。
【0074】
また、本実施形態では、結合凸部130-1,130-2がパネル部110A,110Bの上端部117A,117Bから下端部112A,112Bまで延びるように形成されているが、パネル部110A,110Bの軸方向に沿った一部分にのみ結合凸部130-1,130-2が形成されていてもよい。また、本実施形態では、第1の漸次拡大断面部132-1と第2の漸次拡大断面部133-1とが同一の結合凸部130-1にZ方向に並んで形成されているが、第2の漸次拡大断面部133-1が第1の漸次拡大断面部132-1の他方側(下方)に位置していれば、第1の漸次拡大断面部132-1と第2の漸次拡大断面部133-1とが別個の結合凸部に形成されていてもよい。結合凸部130-2においける漸次拡大断面部132-2,133-2についても同様である。
【0075】
[第3の実施形態]
図15は、本発明の第3の実施形態における補強構造物201を模式的に示す斜視図、図16は、平面図である。図15および図16に示すように、補強構造物201は、柱部材である補強対象部材2と、補強対象部材2を補強する補強システム203とを備えている。補強システム203は、補強対象部材2を、補強対象部材2の軸方向に直交する径方向の外側から包囲するパネルユニット204を備えている。このパネルユニット204は、補強対象部材2を径方向の外側から全周にわたり包囲するパネル体206を有している。パネル体206は、補強対象部材2の周方向に沿って並んで配置される2つのパネル部210A,210Bと、隣接するパネル部210A,210B同士を連結する連結部250と、隣接するパネル部210A,210B間に連結部250を介してくさび力を導入するくさび力導入部280とを有している。
【0076】
図17はパネルユニット204の分解斜視図である。図17に示すように、パネル部210A,210Bは、それぞれ略半円筒状の部材であり、互いに隣接して周方向に対向するように配置されている。図15から図17に示すように、連結部250は、隣接するパネル部210A,210Bにより円筒状のパネルユニット204が形成されるように、隣接するパネル部210A,210B同士を連結する一対の連結部250C,250Dを有している。連結部250Cは、隣接するパネル部210A,210Bのうち一方のパネル部210Aに形成された第1の連結部250C1と、他方のパネル部210Bに形成された第2の連結部250C2と、第1の連結部250C1と第2の連結部250C2とを連結する第3の連結部250C3とを有している。なお、連結部250Cと連結部250Dとは同様の構成を有しているため、以下では主として連結部250Cについてのみ説明し、連結部250Dについての説明は省略するが、以下の説明は連結部250Dについても同様に当てはまるものである。
【0077】
図15および図16に示すように、くさび力導入部280は、隣接するパネル部210A,210B間に一対の連結部250C,250Dを介してくさび力を導入する一対のくさび力導入部280C,280Dを有している。くさび力導入部280Cは、第1の連結部250C1と第2の連結部250C2との間に形成される空間部R1(後述)に対して径方向の一方側から他方側に向けて挿入する挿入部270(後述)を含んでいる。この挿入部270は、第1の連結部250C1と第2の連結部250C2とが第3の連結部250C3に押し当てられることにより隣接するパネル部210A,210B間にくさび力が導入されるように、第1の連結部250C1と第2の連結部250C2に対して互いに引き離す向きの力を付与するくさび状部272(後述)を含んでいる。なお、くさび力導入部280Cとくさび力導入部280Dとは同様の構成を有しているため、以下では主としてくさび力導入部280Cについてのみ説明し、くさび力導入部280Dについての説明は省略するが、以下の説明はくさび力導入部280Dについても同様に当てはまるものである。
【0078】
図18Aはパネル部210Aの拡大平面図、図18Bは背面図、図18C図18AのC-C線断面、図18D図18BのD-D線断面である。図18Aから図18Dに示すように、パネル部210Aは、半円筒状の本体部211Aと、本体部211Aの下端部212Aから径方向の外側に延出するフランジ部213Aとを有している。フランジ部213Aには、パネル部210Aを地盤Gに固定するためのボルト5を挿通するための貫通孔214Aが周方向に沿って例えば等間隔に並んで形成されている。
【0079】
図18Aに示すように、パネル部210Aは、周方向において隣接するパネル部210Bに対向する対向部215-1Aおよび対向部215-2Aを含んでいる。また、パネル部210Aの本体部211Aは、径方向の内側を向いた半円状の内周壁297Aと、一方の対向部215-1Aにおいて内周壁297Aに対して径方向の外側に窪む凹部218-1Aと、凹部218-1Aの底面298-1Aに対して径方向の内側に突出する凸部216-1A(第1の部分)と、他方の対向部215-2Aにおいて内周壁297Aに対して径方向の外側に窪む凹部218-2Aと、凹部218-2Aの底面298-2Aに対して径方向の内側に突出する凸部216-2A(第2の部分)とを含んでいる。本実施形態においては、パネル部210Aの対向部215-1Aにおける構成と対向部215-2Aにおける構成は、XZ平面に対して対称となっている。
【0080】
図18Cに示すように、凸部216-1Aは、軸方向Zに沿う方向(第1の方向)に延びており、凸部216-1Aには軸方向Zに沿って一定の間隔で切欠き206-1Aが形成されている。したがって、凸部216-1Aは、切欠き206-1AによりY方向の幅が狭くなった幅狭部207-1Aと、切欠き206-1Aが形成されていない幅広部208-1Aとを含んでいる。
【0081】
図18Aに示すように、凸部216-1Aは、凹部218-1Aの底面298-1Aから対向直交方向Yに向かうにつれ対向方向Xに張り出す傾斜面241-1Aと、傾斜面241-1Aの対向直交方向Yの端部から対向方向Xに延びるとともに径方向の内側を向いた頂面240-1Aとを有している。また、凸部216-1Aは、幅広部208-1Aの頂面240-1Aの対向方向Xの端部から対向直交方向Yに延びるとともに隣接するパネル部210Bと対向する端面219-1Aと、幅狭部207-1Aの頂面240-1Aの対向方向Xの端部から対向直交方向Yに延びるとともに隣接するパネル部210Bと対向する端面209-1Aとを有している。
【0082】
同様に、凸部216-2Aは、軸方向Zに沿う方向(第1の方向)に延びており、凸部216-2Aには軸方向Zに一定の間隔で切欠き206-2Aが形成されている。したがって、凸部216-2Aは、切欠き206-2AによりY方向の幅が狭くなった幅狭部207-2Aと、切欠き206-2Aが形成されていない幅広部208-2Aとを含んでいる。
【0083】
凸部216-2Aは、凹部218-2Aの底面298-2Aから対向直交方向Yに向かうにつれ対向方向Xに張り出す傾斜面241-2Aと、傾斜面241-2Aの対向直交方向Yの端部から対向方向Xに延びるとともに径方向の内側を向いた頂面240-2Aを有している。また、凸部216-2Aは、幅広部208-2Aの頂面240-2Aの対向方向Xの端部から対向直交方向Yに延びるとともに隣接するパネル部210Bと対向する端面219-2Aと、幅狭部207-2Aの頂面240-2Aの対向方向Xの端部から対向直交方向Yに延びるとともに隣接するパネル部210Bと対向する端面209-2Aとを有している。
【0084】
ここで、パネル部210Bはパネル部210Aと同様の構成を有しているため、上述したパネル部210Aの構成要素に対応するパネル部210Bの構成要素については、パネル部210Aの構成要素に付されていた符号中の添字「A」に代えて添字「B」を付すことで重複する説明を省略する。例えば、パネル部210Bの凸部216-1Bは、上述したパネル部210Aの凸部216-1Aと同様の構成を有する。
【0085】
2つのパネル部210A,210Bは、凸部216-1Aの端面219-1A,209-1Aと凸部216-2Bの端面219-2B,209-2Bとが対向方向Xにおいて互いに離間した状態で対面し、また、凸部216-2Aの端面219-2A,209-2Aと凸部216-1Bの端面219-1B,209-1Bとが対向方向Xにおいて互いに離間した状態で対面するように配置される。
【0086】
図19は、パネル部210A,210Bを互いに突き合わせた状態を示す部分破断斜視図である。図19に示すように、幅広部208-1Aの端面219-1Aと幅広部208-1Bの端面219-2Bとの間には間隙G1が形成されている。また、幅狭部207-1Aの端面209-2Aと幅狭部207-2Bの端面209-1Bとの間には空間部R1(空間部)が形成されており、幅狭部207-1A(第1の部分)と幅狭部207-2B(第2の部分)とは、周方向に空間部R1を隔てて互いに対向している。それぞれの空間部R1には径方向の外側から内側に向けて図17に示す挿入部270(挿入部)が挿入される。この挿入部270の詳細については後述する。なお、図17においては、理解を容易にするために、一部の挿入部270およびネジ290のみ図示し、他の挿入部270およびネジ290については図示を省略している。
【0087】
図20Aは第3の連結部250C3の拡大平面図、図20Bは左側面図である。図20Aおよび図20Bに示すように、第3の連結部250C3は、接触部220C(接触部)を含んでおり、この接触部220Cは、第1の連結部250C1(凸部216-1A)および第2の連結部250C2(凸部216-2B)に対して連結する際、凸部216-1A,216-2Bを径方向の内側から覆うように対向方向Xに延びる基部225と、基部225の対向方向Xの両側から径方向の外側に突出する一対の規制部221,222とを含んでいる。基部225は、凸部216-1A,216-2Bの頂面240-1A,240-2Bに対向するように径方向の外側を向いた底面227を含んでいる。底面227には、軸方向Zに所定の間隔でネジ孔260が形成されており、このネジ孔260には後述するようにネジ290が螺合される。規制部221は、底面227から対向直交方向Yに向かうにつれ対向方向Xに張り出す傾斜面221aを有している。規制部222は、対向直交方向Yに向かうにつれ対向方向Xに張り出す傾斜面222aを有している。規制部221と規制部222とは対向方向Xにおいて互いに対向しており、規制部221と規制部222との間には、径方向の外側に向かって次第に対向方向Xに沿った幅が狭くなる空間224が形成されている。この空間224に凸部216-1Aおよび凸部216-2Bが配置される。したがって、接触部220Cの規制部221,222により、凸部216-1Aと凸部216-2Bとが周方向に引き離される移動が規制される。
【0088】
図20Bに示すように、接触部220Cの底面227の対向方向Xに沿った幅P3は、上端部228から下端部229まで一定となっている。この幅P3は、凸部216-1Aの幅広部208-1Aの幅W5図18C参照)と凸部216-2Bの幅W6図18D参照)の合計よりも大きくなっているため、凸部216-1Aおよび凸部216-2Bを接触部220Cの規制部221と規制部222との間に配置することができる。
【0089】
図21は、くさび力導入部280Cを示す斜視図である。図21に示すように、くさび力導入部280Cは、凸部216-1A,216-2Bの端面209-1A,209-2Bに接触する傾斜面271を有するくさび状部272を有する挿入部270を含んでいる。くさび状部272の中央にはネジ290が挿通される貫通孔273が形成されている。
【0090】
図22は、図16のE-E線断面図である。図22に示すように、上述した空間部R1に挿入部270のくさび状部272が挿入されている。くさび状部272の貫通孔273にはネジ290が挿通され、このネジ290が接触部220Cのネジ孔260に螺合される。これにより、挿入部270が接触部220Cに固定される。
【0091】
図23は、接触部220C、凸部216-1A,216-2B、および挿入部270の関係を模式的に示す図である。図23に示すように、幅狭部207-1Aの端面209-1Aと幅狭部207-1Bの端面209-2Bとの間に形成される空間部R1の内部に挿入部270を径方向の外側から内側に向けて挿入し、挿入部270を接触部220Cに固定することにより、接触部220Cの規制部221,222と凸部216-1A,216-2Bとを係合させて、パネル部210Aとパネル部210Bとを互いに連結することができる。
【0092】
ここで、空間部R1に対して挿入部270を径方向の外側から内側に向けて挿入する際に、くさび状部272の傾斜面271が幅狭部207-1Aの端面209-1Aおよび幅狭部207-2Bの端面209-2Bに接触した状態から、さらに挿入部270を凸部216-1Aおよび凸部216-2Bに対して径方向内側に向けて押し込むと、挿入部270のくさび状部272は、幅狭部207-1A,207-2Bに対して互いに引き離す向きの力を付与する。これにより、凸部216-1A,216-2Bが接触部220Cの規制部221,222に押し当てられ、隣接するパネル部210A,210B間にくさび力が導入される。
【0093】
また、凸部216-2A,216-1Bを接触部220Cと同様の構成を有する接触部220Dの規制部221と規制部222との間に配置し、幅狭部207-2Aと幅狭部207-1Bとの間に形成された空間部R1に、挿入部270のくさび状部272を挿入することで、接触部220Dの規制部221,222と凸部216-2A,216-1Bとを係合させて、パネル部210Aとパネル部210Bとを互いに連結することができる。空間部R1に対して挿入部270を径方向の外側から内側に向けて挿入する際に、挿入部270のくさび状部272の傾斜面271が幅狭部207-2Aの端面209-2Aおよび幅狭部207-1Bの端面209-1Bに接触した状態から、さらに挿入部270を凸部216-2Aおよび凸部216-1Bに対して径方向内側に向けて押し込むと、挿入部270のくさび状部272は、幅狭部207-2A,207-1Bに対して互いに引き離す向きの力を付与する。これにより、凸部216-2A,216-1Bが接触部220Dの規制部221,222に押し当てられ、隣接するパネル部210A,210B間にくさび力が導入される。
【0094】
このようにして、挿入部270を接触部220C,220Dに固定することで隣接するパネル部210A,210B間にくさび力を導入した状態で補強対象部材2の周囲でパネルユニット204を組み立てることができる。パネルユニット204を組み立てた後、パネル部210A,210Bのフランジ部213A,213Bの貫通孔214A,214Bにボルト5を挿通してボルト5を地盤Gに固定することで、補強対象部材2をパネルユニット204によって補強することができる。
【0095】
上記のように、本実施形態においては、隣接するパネル部210A,210Bに形成された凸部216-1A,216-2Bと、凸部216-1Aと凸部216-2Bとが周方向に引き離される移動を規制する接触部220Cとが、連結部250Cとして機能する。したがって、連結部250Cは、隣接するパネル部210A,210Bのうち一方のパネル部210Aに形成された凸部216-1A(第1の連結部)と、他方のパネル部210Bに形成された凸部216-2B(第2の連結部)と、凸部216-1Aと凸部216-2Bとを連結する接触部220C(第3の連結部)とを含んでいる。また、本実施形態においては、隣接するパネル部210A,210Bに形成された凸部216-2A,216-1Bと、凸部216-2Aと凸部216-1Bとが周方向に引き離される移動を規制する接触部220Dとが、連結部250Dとして機能する。したがって、連結部250Dは、隣接するパネル部210A,210Bのうち一方のパネル部210Aに形成された凸部216-2A(第1の連結部)と、他方のパネル部210Bに形成された凸部216-1B(第2の連結部)と、凸部216-2Aと凸部216-1Bとを連結する接触部220D(第3の連結部)とを含んでいる。
【0096】
また、本実施形態においては、凸部216-1A,216-2Bの幅狭部207-1A,207-2B間に形成された空間部R1に対して径方向の外側(一方側)から内側(他方側)に向けて挿入される挿入部270のくさび状部272が、隣接するパネル部210A,210B間にくさび力を導入するくさび力導入部280Cとして機能する。したがって、くさび力導入部280Cは、凸部216-1Aの幅狭部207-1A(第1の部分)と凸部216-2Bの幅狭部207-2B(第2の部分)とが接触部220Cの規制部221,222(規制部)に押し当てられることにより隣接するパネル部210A,210B間にくさび力が導入されるように、幅狭部207-1A(第1の部分)および幅狭部207-2B(第2の部分)に対して互いに引き離す向きの力を付与するくさび状部272(くさび状部)を含んでいる。また、本実施形態においては、凸部216-2A,216-1Bの幅狭部207-2A,207-1B間に形成された空間部R1に対して径方向の外側(一方側)から内側(他方側)に向けて挿入される挿入部270のくさび状部272が、隣接するパネル部210A,210B間にくさび力を導入するくさび力導入部280Dとして機能する。したがって、くさび力導入部280Cは、凸部216-2Aの幅狭部207-2A(第1の部分)と凸部216-1Bの幅狭部207-1B(第2の部分)とが接触部220Dの規制部221,222(規制部)に押し当てられることにより隣接するパネル部210A,210B間にくさび力が導入されるように、幅狭部207-2A(第1の部分)および幅狭部207-1B(第2の部分)に対して互いに引き離す向きの力を付与するくさび状部272(くさび状部)を含んでいる。
【0097】
このように、本実施形態における補強システム203によれば、上述したくさび力導入部280によって、互いに隣接するパネル部210A,210B同士を接続する連結部250を介して互いに隣接するパネル部210A,210Bの間にくさび力を導入することにより、補強対象部材2の周方向に沿って並ぶパネル部210A,210Bの間にくさび効果(くさび作用)を発現させることができる。これにより、パネル部210A,210Bの並び方向においてパネル部210A,210B間の相対的な変位が拘束される。このため、パネル部210A,210B間の連結の緩みが抑制される結果、パネル部210A,210Bの並び方向の全域にわたりパネル部210A,210B相互間の強固な連結状態を維持することができる。したがって、補強対象部材2の周方向の全周にわたる補強効果を持続させることができる。
【0098】
特に本実施形態によれば、幅狭部207-1A,207-2Aと幅狭部207-2B,207-1Bとの間に形成される空間部R1に挿入部270のくさび状部272を径方向の外側から挿入することによりくさび力を導入することができる。このため、補強作業の際に、補強対象部材2の外周側から挿入部270のくさび状部272を挿入する度合を調整することにより、幅狭部207-1A,207-2Aと幅狭部207-2B,207-1Bとを互いに引き離す向きの力を制御することができ、結果として、パネル部210A,210B間に導入するくさび力を容易に制御することができる。したがって、補強作業の作業効率を向上させるとともに、パネル部210A,210B間に所望のくさび効果を発現させることができる。
【0099】
[第4の実施形態]
図24は、本発明の第4の実施形態における補強構造物301を模式的に示す斜視図、図25は、平面図である。図24および図25に示すように、補強構造物301は、柱部材である補強対象部材2と、補強対象部材2を補強する補強システム303とを備えている。補強システム303は、補強対象部材2を、補強対象部材2の軸方向に直交する径方向の外側から包囲するパネルユニット304を備えている。このパネルユニット304は、補強対象部材2を径方向の外側から全周にわたり包囲するパネル体306を有している。パネル体306は、補強対象部材2の周方向に沿って並んで配置される2つのパネル部310A,310Bと、隣接するパネル部310A,310B同士を連結する連結部350と、隣接するパネル部310A,310B間に連結部350を介してくさび力を導入するくさび力導入部380とを有している。
【0100】
図26はパネルユニット304の分解斜視図である。図26に示すように、パネル部310A,310Bはそれぞれ略半円筒状の部材であり、互いに隣接して周方向に対向するように配置されている。図24から図26に示すように、連結部350は、隣接するパネル部310A,310Bにより円筒状のパネルユニット304が形成されるように、隣接するパネル部310A,310B同士を連結する一対の連結部350C,350Dを有している。連結部350Cは、隣接するパネル部310A,310Bのうち一方のパネル部310Bに形成された第1の連結部350C1と、他方のパネル部310Aに形成された第2の連結部350C2とを有している。なお、連結部350Cと連結部350Dとは同様の構成を有しているため、以下では主として連結部350Cについてのみ説明し、連結部350Dについての説明は省略するが、以下の説明は連結部350Dについても同様に当てはまるものである。
【0101】
図24および図25に示すように、くさび力導入部380は、隣接するパネル部310A,310B間に一対の連結部350C,350Dを介してくさび力を導入する一対のくさび力導入部380C,380Dを有している。くさび力導入部380Cは、第1の連結部350C1と第2の連結部350C2とが連結された際に形成される空間部R2(後述)に対して径方向の一方側から他方側に向けて挿入する挿入部270を含んでいる。この挿入部270は、上述した第3の実施形態において使用されたものと同様のものであり、挿入部270のくさび状部272は、第1の連結部350C1と第2の連結部350C2とが互いに押し当てられることにより隣接するパネル部310A,310B間にくさび力が導入されるように、第1の連結部350C1と第2の連結部350C2に対して互いに引き寄せる向きの力を付与するようになっている。なお、くさび力導入部380Cとくさび力導入部380Dとは同様の構成を有しているため、以下では主としてくさび力導入部380Cについてのみ説明し、くさび力導入部380Dについての説明は省略するが、以下の説明はくさび力導入部380Dについても同様に当てはまるものである。
【0102】
図27Aはパネル部310Aの拡大平面図、図27Bは背面図、図27C図27AのF-F線断面図、図27Dは左側面図である。図27Aから図27Dに示すように、パネル部310Aは、半円筒状の本体部311Aと、本体部311Aの下端部312Aから径方向の外側に延出するフランジ部313Aとを有している。フランジ部313Aには、パネル部310Aを地盤Gに固定するためのボルト5を挿通するための貫通孔314Aが周方向に沿って例えば等間隔に並んで形成されている。
【0103】
図27Aに示すように、パネル部310Aは、周方向において隣接するパネル部310Bに対向する対向部315-1Aおよび対向部315-2Aを含んでいる。また、パネル部310Aの本体部311Aは、径方向の外側を向いた半円状の外周壁397Aと、一方の対向部315-2Aにおいて外周壁397Aに対して径方向の内側に窪む凹部318-2Aと、凹部318-2Aの底面398-2Aに対して径方向の外側に突出する凸部316-2A(第1の凸部)と、径方向の内側を向いた半円状の内周壁319Aと、他方の対向部315-1Aにおいて内周壁319Aに対して径方向の外側に窪む凹部318-1Aと、凹部318-1Aの底面398-1Aに対して径方向の内側に突出する凸部316-1A(第2の凸部)とを含んでいる。
【0104】
図27Cに示すように、凸部316-1Aは、パネル部310Aの上端部317Aから下端部312Aまで軸方向Zに沿う方向(第1の方向)に延びている。また、図27Dに示すように、凸部316-2Aは、パネル部310Aの上端部317Aから下端部312Aまで軸方向Zに沿う方向(第1の方向)に延びている。
【0105】
図27Aに示すように、凸部316-1Aは、凹部318-1Aの底面398-1Aから対向直交方向Yに向かうにつれ対向方向Xに張り出す傾斜面341-1Aと、傾斜面341-1Aの対向直交方向Yの端部から対向方向Xに延びるとともに径方向の内側を向いた頂面340-1Aと、頂面340-1Aの対向方向Xの端部から、隣接するパネル部310Bと対向するように延びる端面342-1Aとを有している。
【0106】
また、凸部316-2Aは、凹部318-2Aの底面398-2Aから対向直交方向Yに向かうにつれ対向方向Xに張り出す傾斜面341-2Aと、傾斜面341-2Aの対向直交方向Yの端部から対向方向Xに延びるとともに径方向の外側を向いた頂面340-2Aと、頂面340-2Aの対向方向Xの端部から対向直交方向Yに延びるとともに隣接するパネル部310Bと対向する端面342-2Aとを有している。また、図27Dに示すように、パネル部310Aは、凸部316-2Aに対して周方向に連なる凹部306Aを有している。凹部306Aは、軸方向Zに沿って一定の間隔で配置されている。それぞれの凹部306Aには、ネジ290が螺合されるネジ孔360Aが形成されている。
【0107】
ここで、パネル部310Bはパネル部310Aと同様の構成を有しているため、上述したパネル部310Aの構成要素に対応するパネル部310Bの構成要素については、パネル部310Aの構成要素に付されていた符号中の添字「A」に代えて添字「B」を付すことで重複する説明を省略する。例えば、パネル部310Bの凸部316-2Bは、上述したパネル部310Aの凸部316-1Aと同様の構成を有する。
【0108】
2つのパネル部310A,310Bは、パネル部310Aの凸部316-1Aとパネル部310Bの凸部316-2Bとが互いに係合し、また、パネル部310Aの凸部316-2Aとパネル部310Bの凸部316-1Bとが互いに係合するように構成されている。例えば、パネル部310Aとパネル部310Bとを軸方向にずらした状態から互いに近づけることにより、パネル部310A,310Bを互いに係合させることができる。
【0109】
図28は、パネル部310A,310Bを互いに係合させた状態を示す部分破断斜視図である。図28に示すように、凸部316-1Aと凸部316-2Bとを周方向において互いに係合させ、凸部316-2Aと凸部316-1Bとを周方向において互いに係合させることにより、パネル部310Aとパネル部310Bとを互いに連結することができる。
【0110】
図28に示すように、パネル部310A,310Bが連結された状態においては、凹部306Bの側面307Bが凸部316-1Aの端面342-1Aに対向しており、凹部306Bの側面307Bと凸部316-1Aの端面342-1Aとの間に空間部R2(空間部)が形成されている。換言すれば、凸部316-1A(第2の凸部)は、凹部306Bに空間部R2を残した状態で凸部316-2B(第1の凸部)に接触するように配置されている。凹部306Bに残された空間部R2には、径方向の外側から内側に向けて挿入部270が挿入される。この挿入部270は上述した第3の実施形態で説明したものと同様の構成を有している。なお、図26においては、理解を容易にするために、一部の挿入部270およびネジ290のみ図示し、他の挿入部270およびネジ290については図示を省略している。
【0111】
本実施形態においては、挿入部270のくさび状部272の傾斜面271が、凹部306Bの側面307Bおよび凸部316-1Aの端面342-1Aに接触するようになっている。くさび状部272の貫通孔273にはネジ290が挿通され、このネジ290が凹部306Bのネジ孔360Bに螺合される。これにより、挿入部270がパネル部310Bに固定される。
【0112】
図29は、凸部316-1A,316-2B、凹部306B、および挿入部270の関係を模式的に示す図である。図29に示すように、凹部306Bの側面307Bと凸部316-1Aの端面342-1Aとの間に形成される空間部R2に挿入部270を径方向の外側から内側に向けて挿入し、挿入部270をネジ290によってパネル部310Bに固定することにより、凸部316-1Aと凸部316-2Bとを係合させて、パネル部310Aとパネル部310Bとを互いに連結することができる。
【0113】
ここで、空間部R2に対して挿入部270を径方向の外側から内側に向けて挿入する際に、くさび状部272の傾斜面271が凹部306Bの側面307Bおよび凸部316-1Aの端面342-1Aに接触した状態から、さらに挿入部270を空間部R2に対して径方向内側に向けて押し込むと、挿入部270のくさび状部272は、凸部316-1Aおよび凸部316-2Bに対して互いに引き寄せる向きの力を付与する。これにより、凸部316-1Aと凸部316-2Bとが互いに押し当てられ、隣接するパネル部310A,310B間にくさび力が導入される。
【0114】
また、同様に、凹部306Aの側面307Aと凸部316-1Bの端面342-1Bとの間に形成される空間部に挿入部270を径方向の外側から内側に向けて挿入することで、凸部316-2Aと凸部316-1Bとを係合させて、パネル部310Aとパネル部310Bとを互いに連結することができる。この空間部に対して挿入部270を径方向の外側から内側に向けて挿入する際に、挿入部270のくさび状部272の傾斜面271が凹部306Aの側面307Aおよび凸部316-1Bの端面342-1Bに接触した状態から、さらに挿入部270を空間部に対して径方向内側に向けて押し込むと、挿入部270のくさび状部272は、凸部316-2Aおよび凸部316-1Bに対して互いに引き寄せる向きの力を付与する。これにより、凸部316-2Aと凸部316-1Bとが互いに押し当てられ、隣接するパネル部310A,310B間にくさび力が導入される。
【0115】
このようにして、挿入部270をパネル部310A,310Bに固定することで隣接するパネル部310A,310B間にくさび力を導入した状態で補強対象部材2の周囲でパネルユニット304を組み立てることができる。パネルユニット304を組み立てた後、パネル部310A,310Bのフランジ部313A,313Bの貫通孔314A,314Bにボルト5を挿通してボルト5を地盤Gに固定することで、補強対象部材2をパネルユニット304によって補強することができる。
【0116】
上記のように、本実施形態においては、軸方向Zに沿う第1の方向に延びる凸部316-2Bおよび凸部316-2Bに対して周方向に連なる凹部306Bを含む対向部315-2Bと、凹部306Bに空間部R2を残した状態で凸部316-2Bに接触するように配置される凸部316-1Aを含む対向部315-1Aとが、連結部350Cとして機能する。したがって、連結部350Cは、軸方向Zに沿う第1の方向に延びる凸部316-2B(第1の凸部)および凸部316-2Bに対して周方向に連なる凹部306B(凹部)を含む対向部315-2B(第1の連結部)と、凹部306Bに空間部R2を残した状態で凸部316-2Bに接触するように配置される凸部316-1A(第2の凸部)を含む対向部315-1A(第2の連結部)とを含んでいる。また、本実施形態においては、軸方向Zに沿う第1の方向に延びる凸部316-2Aおよび凸部316-2Aに対して周方向に連なる凹部306Aを含む対向部315-2Aと、凹部306Aに空間部を残した状態で凸部316-2Aに接触するように配置される凸部316-1Bを含む対向部315-1Bとが、連結部350Dとして機能する。したがって、連結部350Dは、軸方向Zに沿う第1の方向に延びる凸部316-2A(第1の凸部)および凸部316-2Aに対して周方向に連なる凹部306A(凹部)を含む対向部315-2A(第1の連結部)と、凹部306Aに空間部を残した状態で凸部316-2Aに接触するように配置される凸部316-1B(第2の凸部)を含む対向部315-1B(第2の連結部)とを含んでいる。
【0117】
また、本実施形態においては、凸部316-2Bを凸部316-1Aに接触させたときに凹部306Bに残される空間部R2に対して径方向の外側(一方側)から内側(他方側)に向けて挿入される挿入部270のくさび状部272が、隣接するパネル部310A,310B間にくさび力を導入するくさび力導入部380Cとして機能する。したがって、くさび力導入部380Cは、凸部316-2B(第1の凸部)と凸部316-1A(第2の凸部)が互いに押し当てられることにより隣接するパネル部310A,310B間にくさび力が導入されるように、凸部316-2Bおよび凸部316-1Aに対して互いに引き寄せる向きの力を付与するくさび状部272(くさび状部)を含んでいる。また、本実施形態においては、凸部316-2Aを凸部316-1Bに接触させたときに凹部306Aに残される空間部に対して径方向の外側(一方側)から内側(他方側)に向けて挿入される挿入部270のくさび状部272が、隣接するパネル部310A,310B間にくさび力を導入するくさび力導入部380Dとして機能する。したがって、くさび力導入部380Dは、凸部316-2A(第1の凸部)と凸部316-1B(第2の凸部)が互いに押し当てられることにより隣接するパネル部310A,310B間にくさび力が導入されるように、凸部316-2Aおよび凸部316-1Bに対して互いに引き寄せる向きの力を付与するくさび状部272(くさび状部)を含んでいる。
【0118】
このように、本実施形態における補強システム303によれば、上述したくさび力導入部380によって、互いに隣接するパネル部310A,310B同士を接続する連結部350を介して互いに隣接するパネル部310A,310Bの間にくさび力を導入することにより、補強対象部材2の周方向に沿って並ぶパネル部310A,310Bの間にくさび効果(くさび作用)を発現させることができる。これにより、パネル部310A,310Bの並び方向においてパネル部310A,310B間の相対的な変位が拘束される。このため、パネル部310A,310B相互間の連結の緩みが抑制される結果、パネル部310A,310Bが並び方向の全域にわたりパネル部310A,310B相互間の強固な連結状態を維持することができる。したがって、補強対象部材2の周方向の全周にわたる補強効果を持続させることができる。
【0119】
特に本実施形態によれば、パネル部310A,310Bの凹部306A,306Bに残された空間部に挿入部270のくさび状部272を径方向の外側から挿入することによりくさび力を導入することができる。したがって、補強作業の際に、補強対象部材2の外周側から挿入部270のくさび状部272を挿入する度合を調整することにより、凸部316-1A,316-1Bと凸部316-2B,316-2Aとをそれぞれ引き寄せる向きの力を制御することができ、結果として、パネル部310A,310B間に導入するくさび力を容易に制御することができる。したがって、補強作業の作業効率を向上させるとともに、パネル部310A,310B間に所望のくさび効果を発現させることができる。
【0120】
図24に示すように、本実施形態においては、パネル部310A,310Bは、補強対象部材2に接触する内周壁319A,319Bを有している。この構成によれば、周方向に沿って並ぶパネル部310A,310Bの内周壁319A,319Bを補強対象部材2に密着させることができる。したがって、補強対象部材2とこれを包囲するパネルユニット304との間にモルタル等の充填材を充填する作業を省略することができる。上述した第1の実施形態から第3の実施形態におけるパネル部10A,10B,110A,110B,210A,210Bがこのような内周壁を有していてもよい。
【0121】
上述した実施形態においては、パネルユニットが2つのパネル部から構成される例を説明したが、パネル部の数は2つに限られるものではなく、3つ以上であってもよい。また、上述した実施形態のうち2つ以上の実施形態を組み合わせて1つのパネルユニットを構成してもよい。さらに、上述した実施形態におけるパネル部は、略半円筒状(曲板状)の部材により形成されているが、パネル部は、平板状の部材を含んでいてもよい。例えば、パネル部が、L字状に折れ曲がるように組み合わされた平板状の部材を含んでいてもよい。
【0122】
また、上述した実施形態においては、補強対象部材2が柱部材であるものとして説明したが、補強対象部材2は柱部材に限定されず、梁部材やその他の部材であってもよい。また、補強対象部材2が円筒状の部材であるものとして説明したが、補強対象部材2の形状はこれに限られるものではない。例えば、補強対象部材2は直方体状の部材であってもよい。そのような場合には、パネル部の形状も補強対象部材2を外側から包囲するような形状に例えば平板状の部材を含むように適宜変更される。
【0123】
上述した第3および第4の実施形態におけるパネルユニット204,304は、挿入部270を径方向外側から内側に向けて挿入するように構成されていたが、挿入部270を径方向内側から外側に向けて挿入するように構成することも可能である。
【0124】
本明細書において使用した用語「上」、「下」、「上方」、「下方」、その他の位置関係を示す用語は、図示した実施形態との関連において要素間の相対的な関係を特定するために使用されているだけであり、絶対的な位置関係を特定するものではない。したがって、補強対象部材2の位置や姿勢が変われば、それに応じてこれらの用語が意味する方向も変化することに留意されたい。
【0125】
これまで本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、その技術的思想の範囲内において種々異なる形態にて実施されてよいことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0126】
1,101,201,301 補強構造物
2 補強対象部材
3,103,203,303 補強システム
4,104,204,304 パネルユニット
5 ボルト
6 パネル体
7A 外周壁
10A,10B パネル部
11A,11B 本体部
12A,12B 下端部
13A,13B フランジ部
15-1A,15-2A 対向部
16-1A,16-1B,16-2A,16-2B 凸部
17A,17B 上端部
19-1A,19-1B,19-2A,19-2B 端面
20C,20D 凹部(第1の凹部)
21,22 係合部
21a,22a 傾斜面
24 溝(空間)
27 底面(第1の底面)
30-1,30-2 結合凸部(第1の結合凸部)
31-1,31-2 頂面(第1の頂面)
32-1,32-2 漸次拡大断面部(第1の漸次拡大断面部)
40-1A,40-1B,40-2A,40-2B 頂面
50 連結部
50C 第1の連結部
50D 第2の連結部
80,80C,80D くさび力導入部
105A,105B 中間部
107A 内周壁
110A,110B パネル部
112A,112B 下端部
115-1A,115-2A 対向部
116-1A,116-1B,116-2A,116-2B 凸部
117A,117B 上端部
119-1A,119-1B,119-2A,119-2B 端面
120C,120C’,120D,120D’ 凹部
121,122 係合部
124 溝
125,126 傾斜面
127 底面
130-1,130-2 結合凸部
131-1 頂面
132-1 第1の漸次拡大断面部
133-1 第2の漸次拡大断面部
140-1A,140-1B,140-2A,140-2B 頂面
150C,150D 連結部
206-1A,206-2A 切欠き
207-1A,207-1B,207-2A,207-2B 幅狭部
208-1A,208-1B,208-2A,208-2B 幅広部
209-1A,209-1B,209-2A,209-2B 端面
210A,210B パネル部
212A,212B 下端部
215-1A,215-2A 対向部
216-1A,216-1B,216-2A,216-2B 凸部
217A,217B 上端部
219-1A,219-1B,219-2A,219-2B 端面
220C,220D 接触部
221,222 規制部
224 溝
225,226 傾斜面
227 底面
240-1A,240-1B,240-2A,240-2B 頂面
250C,250D 連結部
260 ネジ孔
270 挿入部
271 傾斜面
272 くさび状部
273 貫通孔
290 ネジ
297A 内周壁
306A,306B 凹部
307A,307B 側面
310A,310B パネル部
315-1A,315-2A 対向部
316-1A,316-1B,316-2A,316-2B 凸部
319A,319B 内周壁
340-1A,340-2A 頂面
342-1A,342-2A 端面
350C,350D 連結部
397A 外周壁
G 地盤
R1,R2 空間部
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図5
図6A
図6B
図7
図8
図9
図10
図11A
図11B
図11C
図11D
図12
図13A
図13B
図14
図15
図16
図17
図18A
図18B
図18C
図18D
図19
図20A
図20B
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27A
図27B
図27C
図27D
図28
図29