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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024113579
(43)【公開日】2024-08-22
(54)【発明の名称】フィルタ及びインフレータ
(51)【国際特許分類】
   B01D 39/20 20060101AFI20240815BHJP
   B60R 21/264 20060101ALI20240815BHJP
   B01J 7/00 20060101ALI20240815BHJP
【FI】
B01D39/20 A
B60R21/264
B01J7/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023018665
(22)【出願日】2023-02-09
(71)【出願人】
【識別番号】000237167
【氏名又は名称】富士フィルター工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000004086
【氏名又は名称】日本化薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085660
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 均
(74)【代理人】
【識別番号】100149892
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 弥生
(72)【発明者】
【氏名】大東 勉
(72)【発明者】
【氏名】松本 貴志
(72)【発明者】
【氏名】金治 基紘
(72)【発明者】
【氏名】関根 宏章
(72)【発明者】
【氏名】鹿浦 健司
【テーマコード(参考)】
3D054
4D019
4G068
【Fターム(参考)】
3D054DD18
3D054FF02
4D019AA01
4D019AA03
4D019BA02
4D019BB01
4D019CA03
4D019CB04
4D019CB06
4G068DA08
4G068DB14
4G068DC01
4G068DD11
(57)【要約】
【課題】フィルタの軸方向端部における金属線材の動きを制限して、フィルタの保形性を向上させる。
【解決手段】中空筒状のフィルタ200においては、一本又は複数本の連続する金属線材220が、螺旋状、多層状、且つ内外径方向に隣接する金属線材部分同士が互いに交差する方向に伸びるように巻き付けられている。金属線材は、その長手方向が斜め周方向に伸びると共に径方向に層状に重ねられてフィルタ本体230を形成する金属線材部分221…と、金属線材部分に対して長手方向に連接すると共に、フィルタ本体の軸方向の端面に重ねられた保持線部224と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一本又は複数本の連続する金属線材が、螺旋状、多層状、且つ内外径方向に隣接する金属線材部分同士が互いに交差する方向に伸びるように巻き付けられた中空筒状のフィルタであって、
前記金属線材は、該金属線材の長手方向が斜め周方向に伸びると共に径方向に層状に重ねられて筒形層状部を形成する第一部分と、前記第一部分に対して前記長手方向に連接すると共に、前記筒形層状部の軸方向の端面に重ねられた第二部分と、を備えることを特徴とするフィルタ。
【請求項2】
前記第二部分は、複数の線材層の各軸方向端縁に跨がって配置されていることを特徴とする請求項1に記載のフィルタ。
【請求項3】
複数の前記第二部分を有し、前記各第二部分は、異なる周方向位置に配置されていることを特徴とする請求項1に記載のフィルタ。
【請求項4】
前記第二部分は、前記筒形層状部の内周面よりも内径側に突出していないことを特徴とする請求項1に記載のフィルタ。
【請求項5】
前記筒形層状部は、外径側に外側筒部を、該外側筒部の内径側に内側筒部を備え、
該内側筒部は、軸方向の少なくとも一端部が前記外側筒部の軸方向の端面よりも軸方向の外方に突出した突出部を備えており、
前記突出部は、前記第二部分が前記筒形層状部の内周面よりも内径側に突出しないように、前記第二部分の位置を規制することを特徴とする請求項1に記載のフィルタ。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか一項に記載のフィルタを備えることを特徴とするインフレータ。
【請求項7】
前記第二部分が、前記筒形層状部と、前記フィルタを収容するハウジングとの間に挟圧保持されていることを特徴とする請求項6に記載のインフレータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルタ及びインフレータに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両等には、車両等の衝突時に生じる衝撃から乗員を保護するエアバッグ装置が装備されている。車両等の衝突時にエアバッグを瞬時に膨張および展開させるガス発生器は、車両等の衝突時にガス発生剤を燃焼させて多量のガスを瞬時に発生させ、これによりエアバッグを膨張および展開させる。ガス発生器には、ガス発生剤の燃焼によって生成される高温ガスの噴出を制御し、及び冷却するために金属製のフィルタが内蔵される。
【0003】
特許文献1には、金属線材を所定の巻き付け角度で巻き回すことにより形成された巻線型のインフレータ用フィルタが記載されている。巻線型のフィルタは、金属線材部分同士が密着状態で径方向に重なり合った複数の重なり部を有する。
特許文献1においては、フィルタを安価に製造するために、フィルタの全体に対して行う焼結等の熱処理が省略されている。このため、特許文献1のフィルタは複数の接合されていない重なり部を有する。特許文献1においては、フィルタの保形性を向上させるために、最外層とその内径側に隣接する隣接層とを構成する金属線材同士により構成される重なり部のうちの2つ以上を選択的に溶接等により固定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007-319781公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、巻線型のフィルタは金属線材の巻き付け方向が反転される反転部を軸方向の端部に有する。
巻線型フィルタでは、安定したフィルタ形状を維持することが難しい場合がある。即ち、巻線型フィルタでは反転部の周辺に位置する金属線材がフィルタの軸方向に動きやすく、ハンドリング時や輸送時にフィルタが受ける振動等の外力によってフィルタ形状が不安定になることが考えられる。
本発明は上述の事情に鑑みてなされたものであり、フィルタの軸方向端部における線材の動きを制限することにより、フィルタの保形性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明は、一本又は複数本の連続する金属線材が、螺旋状、多層状、且つ内外径方向に隣接する金属線材部分同士が互いに交差する方向に伸びるように巻き付けられた中空筒状のフィルタであって、前記金属線材は、該金属線材の長手方向が斜め周方向に伸びると共に径方向に層状に重ねられて筒形層状部を形成する第一部分と、前記第一部分に対して前記長手方向に連接すると共に、前記筒形層状部の軸方向の端面に重ねられた第二部分と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、フィルタの保形性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態に係るフィルタの基本構成を説明する模式的斜視図である。
図2】(a)、(b)は、本発明の第一の実施形態に係るフィルタを示す模式的斜視図である。
図3】(a)~(c)は、フィルタを構成する金属線材のうち終端部寄りの部分を展開して示した図である。
図4】フィルタの製造方法について説明する模式図である。
図5】本発明の一実施形態に係るフィルタが組み込まれたディスク型ガス発生器の概略図である。
図6】本発明の第二の実施形態に係るフィルタを示す模式的斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を図に示した実施形態を用いて詳細に説明する。但し、この実施形態に記載される構成要素、種類、組み合わせ、形状、その相対配置などは特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する主旨ではなく単なる説明例に過ぎない。また、各実施形態に示した構成は、矛盾しない限り適宜組み合わせて実施することができる。
【0010】
〔フィルタの概略形状〕
図1は、本発明の一実施形態に係るフィルタの基本構成を説明する模式的斜視図である。
本発明の実施形態に係る中空筒状のフィルタ(以下、フィルタ、という)200は、少なくとも一本の連続する金属線材220を、軸方向(図中上下方向)に対して一定の傾斜角度を有して、一定のピッチで螺旋状に、且つ多層状に巻き付けることにより形成される。ここで金属線材220が同じ方向に巻き付けられている個々の層を線材層L1、L2、L3・・・と称する。各線材層L1、L2、L3・・・を構成する金属線材は、正面視で中空筒状フィルタの軸方向(中心軸Ax1)に対して傾斜した同一方向へ延びており、また内外径方向に隣接する各線材層を構成する金属線材は互いに交差する方向に延びている(平行していない)。
【0011】
図1中における最外層の線材層Lnを構成する金属線材部分221(n)(厚みを図示省略)の延びる方向(金属線材部分221(n)の長手方向)は実線矢印で示した方向であり、その直ぐ内側の線材層Ln-1を構成する金属線材部分221(n-1)の延びる方向(金属線材部分221(n-1)の長手方向)は破線矢印で示した方向である。
即ちフィルタ200は、金属線材220を軸方向に対して一定の傾斜角度にて螺旋状に巻付けることにより形成した一つの線材層(例えば、線材層L1)と、一つの線材層L1の外周側に重ねて、且つ該一つの線材層L1を構成する金属線材とは異なる傾斜角度にて螺旋状に金属線材を巻付けることにより形成される他の線材層(例えば、線材層L2)と、を有する。一つの線材層L1とこれと隣接する他の線材層L2を夫々構成する金属線材同士は軸方向とは非平行であり、且つ互いに交差するように構成されている。
なお、線材層を構成する金属線材の軸方向に対する傾斜角度が一つの線材層中で変化するように構成してもよい。
【0012】
このフィルタ200は、液体や気体等の各種流体中から不要な物質等を除去し、また用途によっては同時にフィルタを通過する流体を冷却するために用いられる。また、このフィルタは、線材層が重なり合う方向、即ち、フィルタの径方向に流体が通過する流路を形成するように構成される。流体は、フィルタの内径側から外径側に通過させても、外径側から内径側に通過させてもよい。ここで径方向とは厳密な意味の直径方向(半径方向)ではなく、軸方向、周方向に対して、概ね径方向という意味である。
フィルタの大きさ(内径、外径、軸方向の各寸法等)は、フィルタが組み込まれる装置の構造や大きさに応じて適宜決定される。
このフィルタの材料となる金属の種類としては、鉄、軟鋼、ステンレス鋼、ニッケル合金、銅合金などを挙げることができ、中でもオーステナイト系ステンレス鋼(SUS304)が好適である。
【0013】
また、フィルタに使用される金属線材の太さ及び横断面形状(金属線材の長手方向に直交する方向における断面形状)は、フィルタの大きさ、フィルタが除去する物質、圧力損失等に応じて適宜決定される。例えば、ガス発生器用フィルタに使用される金属線材の断面積は0.03~0.8mm^2程度(横断面形状が真円形状の丸線を基準とすれば線径が0.2~1mm程度)とされる。
フィルタには、横断面形状が真円形状の金属素線を所定形状に圧延した金属線材が使用される。金属線材としては、横断面形状が偏平な矩形状となるように圧延された平角線や、横断面形状が概略V字状となるように圧延された異形線が使用される。フィルタ200において、金属線材220は捩れないように巻き付けられている。
【0014】
〔第一の実施形態〕
図2(a)、(b)は、本発明の第一の実施形態に係るフィルタを示す模式的斜視図である。
フィルタ200(200A、200B)は、概略筒状であり、外径側において周方向に伸びる外周面211と、内径側において周方向に伸びる内周面212と、軸方向の両端に位置すると共に外周面211と内周面212とを接続する2つの端面213、214とを備える。
本発明の実施形態に係るフィルタ200は、概略中空筒状のフィルタ本体(筒形層状部)230と、フィルタ本体230の形状をその軸方向の端部において保持する保持部240とを備える。
【0015】
フィルタ200において金属線材220は、捩れないように巻き付けられ又は重ね合わせられる。ここで「捩れないように」とは、金属線材220の始端部において折り返された部分を除いて、金属線材220の一方の面が一貫してフィルタ200の内部側を向くように巻き付けられ又は重ね合わせられた状態をいう。
フィルタ200の内部側とは、フィルタ本体230を構成する金属線材部分221については内径側を意味し、保持部240を構成する保持線部224についてはフィルタ200の軸方向の内側を意味する。
【0016】
金属線材220が捩れていないとは、金属線材220自体に撚りが発生していないことである。
横断面形状が偏平な矩形状となるように圧延された平角線については、仮に、金属線材220の一部分が、これよりも始端部寄りの金属線材の他の部分に対して面で接触していない場合(例えば幅方向の端縁で接触している場合)は、金属線材220が捩れているといえる。
但し「保持線部224が捩れていない」ことについては、保持線部224の長手方向の全体に亘って、保持線部224の一方の面がフィルタの軸方向の端面と平行していることまでを要求するものではなく、金属線材220に作用する張力等に起因して発生する保持線部224の幅方向における傾斜は許容するものである。
【0017】
なお、金属線材220の長手方向と幅方向は図3に示す通りである。金属線材220の面とは金属線材の長手方向と幅方向の双方によって規定できる面のことである。金属線材220の厚さ方向は、図3中、紙面に垂直な方向である。金属線材220は、その厚さ方向の一方側に一方の面を、他方側に他方の面を備える。
金属線材220が異形線である場合は、金属線材220はその一面側のみに、又は一面側と他面側の双方に、凹所、又は/及び、凸所を備える。この場合も上記と同様に、金属線材の一方の面(他方の面)を規定する。ただし、異形線の場合における一方の面(他方の面)は、金属線材の長手方向と幅方向の双方によって規定される仮想的な面とする。
【0018】
<フィルタ本体>
フィルタ本体230は、金属線材220の第一部分(金属線材部分221、221(n)、221(n-1)…)が斜め周方向に伸びると共に径方向に層状に重ねられた構成を備える。フィルタ本体230は、金属線材220がフィルタ200の斜め周方向に沿って巻き付けられ、或いは巻き回された部分である。フィルタ本体230は、主として上述したフィルタとしての機能を発揮する濾過部である。
フィルタ200の外周面211と内周面212は、夫々フィルタ本体230の外周面と内周面とによって規定される。
【0019】
フィルタ200はその軸方向の両端部に金属線材220の巻き付け方向が反転する複数の反転部222、222…を有する。反転部222は、フィルタ200の中心軸Ax1に対する金属線材220の傾斜角度が逆転する部分である。反転部222は、フィルタ本体230を構成する各金属線材部分221…が属する線材層Lが切り替わる部位である。フィルタ200では、反転部222を間に挟んでS巻きの線材層とZ巻きの線材層とが切り替わる。フィルタ本体230の軸方向の端面231(232、233)は、フィルタ本体230の軸方向の各端で巻き付け方向が反転する金属線材部分221の幅方向の端縁の集合体として規定される。
【0020】
<保持部>
<<基本構成>>
フィルタ200においては、金属線材220の第二部分(保持線部224)がフィルタ本体230の軸方向の端面231に添設されている。保持線部224は、端面231に接触した状態で端面231上に重ねられている。保持線部224は、フィルタ本体230の端面231に引っ掛けられている。保持線部224は、保持線部224に対してその長手方向に連接する(連続して隣接する)金属線材部分221…と協働して、フィルタ本体230の軸方向の端部における金属線材220のほつれを防止する保持部240として機能する。なお、フィルタ本体230の端部を保持する保持部240は、保持線部224と保持線部224の長手方向に隣接する金属線材部分221であってフィルタ本体230の端部に位置する部分を含む。保持線部224は、金属線材220に働く張力により端面231を軸方向に押さえつけて(加圧して)、端面231の形状(端面231における金属線材220の状態)を保持するように機能する。保持部240は、フィルタ本体230の軸方向端部の形状を保持するように機能する。
【0021】
上述の通り、フィルタ200では、反転部222を間に挟んでS巻きの線材層とZ巻きの線材層とが切り替わる。線材層が切り替わる部位を反転部222と表現するならば、保持線部224は反転部222である。フィルタ200が有する複数の反転部222…の一部は金属線材部分221によって構成され、他部が保持線部224によって構成される。即ち、複数の反転部222のうちフィルタ本体230の端面231上に重ねられた部分が保持線部224である。
【0022】
保持部240は1つ又は複数の保持線部224を含む。図2(a)に示すフィルタ200Aは、軸方向の一端面232に沿って伸びる1つの保持線部224を備える。図2(b)に示すフィルタ200Bは、軸方向の一端面232に沿って伸びる複数の保持線部224、224…を備える。このように、フィルタ200は、軸方向の一端面232のみに重ねられた1つ又は複数の保持線部224を備えることができる。
フィルタ200は、軸方向の両端部に保持部240、240を備えてもよい。フィルタ200は、軸方向の各端面232、233に重ねられた夫々1つ又は複数の保持線部224を保持部240、240として備えてもよい。
【0023】
保持線部224は、その一面が端面231に対向するように、或いは接するように、端面231上に重ねられる。保持線部224は端面231のみに添設されてもよい。フィルタ200が複数の保持線部224を備える場合、各保持線部224は、端面231のみに添設されてもよいし、一つ又は複数の他の保持線部224に添設される部分を有してもよい。
【0024】
保持線部224は、金属線材220のうちフィルタ本体230の軸方向の端面231を経由している部分である。保持線部224は、金属線材220が斜め周方向に巻き回される正規の巻回経路を逸脱して巻き回された迂回部分(或いは、ショートカット部分)である。夫々の保持線部224…はフィルタ本体230の端面231を部分的に覆う。
図2(a)に示す例では、金属線材220は、金属線材部分221(n-1)がフィルタ200の斜め周方向に沿って伸びるように巻き付けられた後、保持線部224がフィルタ本体230の軸方向の端面231上に乗り上げてから、金属線材部分221(n)が再びフィルタ200の斜め周方向に沿って伸びるように、巻き付けられ或いは巻き回される。
【0025】
保持線部224は、内周面212よりも内径側に突出しないように配置されている。即ち、保持線部224の全体が、フィルタ本体230の端面231内に位置する。ここで、図示するフィルタ本体230の端面231の形状は概略環状であり、保持線部224は該環状の面内に留まった状態で、この面内において所定の方向へ伸びる。これにより、保持線部224がフィルタ200の中空部内に配置される他の部品と干渉することを防止できる。
【0026】
フィルタ200が軸方向の少なくとも一方の端面231に複数の保持線部224、224…を備える場合、各保持線部224、224…が互いに異なる周方向位置に配置されると効果的である。このようにすることで、各保持線部224、224…が配置された各周方向位置(各保持線部224、224…が位置する周方向の範囲)においてフィルタの保形性が向上する。
更に、端面231の周方向に360度の範囲で保持線部224、224…が連続して(切れ目なく)出現するようにすると効果的である。このようにすることで、保持部240によるフィルタ200の保形性を向上させることができる。
【0027】
また、各保持線部224、224…の少なくとも一部が他の保持線部224と重なるように各保持線部224、224…を配置した場合は、より内側の(下位の)保持線部をより外側の(上位の)保持線部によって拘束できるため、より好ましい態様となる。
各保持線部224、224…を他の保持線部224と重ねる場合には、隣接する2つの保持線部224、224の長手方向の端部同士が重なるように配置することで、端面231の周方向に効率よく保持線部224を配置できる。
なお、各保持線部224…の長手方向の少なくとも一部は、他の保持線部が重なることなく、外部に露出した状態とされる。
【0028】
保持線部224は、その長手方向の適所をフィルタ200の軸方向端面に任意の方法により固定された固定部を有しうる。固定方法としては、溶接(冶金的接合)、接着材を用いた接着(化学的接合)、接着テープ等を用いた固定法等が挙げられる。
例えば保持線部224は、これが重なる金属線材220の部分に対して、溶接又は接着により直接的に接合される。或いは、保持線部224は、接着テープ等を介して隣接する他の金属線材の部分に対して間接的に位置固定される。なお、保持線部224の固定に際して、複数の固定方法が組み合わせられてもよい。
【0029】
ここで、保持線部224は金属線材部分221により構成されたフィルタ本体230に対して固定されることが望ましい。フィルタ本体230の端面は、フィルタ本体230を構成する反転部222の集合体として規定される。即ち、保持線部224をフィルタ本体230に対して固定するとは、保持線部224をフィルタ本体230内で反転部222を構成する金属線材部分の適所に対して固定するという意味である。
なお、保持線部224が他の保持線部224に対して上記に示す何れかの方法により固定されてもよい。
固定部は、一の保持線部224に対して複数箇所設けられてもよいし、一の保持線部224の全体に設けられてもよい。
【0030】
<<金属線材の展開図に基づく説明>>
図3(a)~(c)は、フィルタを構成する金属線材のうち終端部寄りの部分を展開して示した図である。図3(a)は、図2(a)のように軸方向の一端面に一つの保持線部224を備える例を示す。図3(b)は、図2(b)のように軸方向の一端面に複数の(ここでは二つの)保持線部224を備える例を示す。図3(c)は、軸方向の各端面に夫々複数の(二つの)保持線部224を備える例を示す。
保持線部224a、224bは、保持部240を構成する部分のうち、フィルタ本体230の一端面232に重ねられる部分である。保持線部224α、224βは、保持部240を構成する部分のうち、フィルタ本体230の軸方向の他端面233に重ねられる部分である。
【0031】
図2に示すフィルタ200において、金属線材220の終端部223は線材層Lnに属し、フィルタ本体230を構成する。なお、金属線材220の終端部223は、フィルタ本体230の適所に固定されている。具体的には、金属線材220の終端部223は、これよりも内径側に位置する線材層を構成する金属線材部分221の適所に対して溶接により固定されている。
【0032】
保持線部224は反転部222である。このため、夫々の保持線部224…の長手方向の両端には、夫々異なる線材層Lを構成する金属線材部分221が連続する。
例えば、図3に示す保持線部224aのうち終端部223側(巻き終わり側)には線材層Lnを構成する金属線材部分221(n)が連続し、始端部側(巻き始め側)には線材層Ln-1を構成する金属線材部分221(n-1)が連続する。
即ち、保持線部224は、異なる線材層を構成する2つの金属線材部分の間に位置する。
【0033】
金属線材220が図3(b)、(c)に示す構成を備える場合、フィルタ200の軸方向の少なくとも一端には、フィルタ200の外周側に位置する所定の線材層Lから最外周の線材層までの間において金属線材220の巻き付け方向が反転される毎に(線材層Lが変わる毎に)保持線部224が形成される。
【0034】
<<保持線部が複数の層に跨がる>>
図2に示すように、保持線部224は、複数の線材層(或いは、複数の線材層の軸方向の各端縁)に跨がって配置される。即ち、保持線部224は、巻き付け済みの金属線材部分221によって形成された最外の線材層から内径側に複数の線材層に跨がって配置される。
【0035】
保持線部224が複数の線材層に跨がることにより、保持線部224はその長手方向の両端に隣接する金属線材部分221、221と協働して、これよりも内径側の各線材層Lに属する複数の金属線材部分221の動きをフィルタ200の軸方向の端部において一括して規制できる。規制される金属線材部分221の動きには、金属線材のほつれ、ゆるみ、バラケ等が含まれる。
【0036】
上記効果を好適に発揮するために、保持線部224はできるだけ外周側に位置する線材層から複数の線材層を跨がるように配置されることが望ましい。即ち、図3に示すように、フィルタ200を構成する金属線材220は、少なくとも最外の線材層Lnを構成する金属線材部分221(n)に隣接する反転部222を保持線部224として含むことが望ましい。
例えば、金属線材220が、金属線材部分221(n)の始端側に隣接して配置された保持線部224aを有する場合、保持線部224aは、最外周の線材層から内径側に向かって、複数の線材層に跨がって各線材層の軸方向端縁を横断する。
【0037】
なお、金属線材220の最も終端側に位置した保持線部224が金属線材220の終端部223を含むことも可能である。この場合は、金属線材220の終端部223がフィルタ本体230の軸方向の端面231に固定されることとなる。この場合、最外の線材層Lnを構成する金属線材部分221(n)が、保持線部224の長手方向の始端側に連続する。
【0038】
何れの場合も、保持線部224の少なくとも1つは、最外の線材層Lnを構成する金属線材部分221(n)の長手方向に隣接することが好ましい。
【0039】
〔フィルタの製造方法〕
図4は、フィルタの製造方法について説明する模式図である。
フィルタ200を作製するには、まず巻付装置130を構成する心棒131の適所に金属線材220の一端(始端、巻き始め)を係止する。金属線材220に対して所定の張力を与えた状態にて、心棒131を、中心軸Ax2を中心として一定方向に所定速度で回転させると共に、金属線材220を供給するガイド部材132を心棒131の中心軸Ax2に沿って所定の速度で往復移動させる。この動作により、金属線材220は心棒131の外周に螺旋状、且つ多層状に巻付けられる。また、隣接する線材層を構成する金属線材同士が互いに交差して網目を形成する。
【0040】
例えば、心棒131の外周に直接巻き付けられる第1の金属線材層では、各金属線材220が心棒131の軸方向に対して所定角度θだけ時計回り方向へ傾斜しているとすると、第1の金属線材層の外周に巻き付けられる第2の金属線材層を構成する金属線材220は、心棒131の軸方向に対して所定角度θだけ反時計回り方向に傾斜する。
【0041】
心棒131の軸方向の一端側(図中右側)に保持された金属線材220の始端部は、金属線材220が心棒131に2層以上巻き付けられたタイミングで、心棒131の軸方向の他端方向(図中左方向)に折り返される。折り返された始端部に重ねて更に金属線材220を巻き付けることにより、始端部を隣接する線材層間に挟み込んで固定する。その後、金属線材220を所定回数(所定階層数)巻付ける。このとき、例えば、ガイド部材132を軸方向に地点A1-A1の範囲で往復移動させて、フィルタ本体230の内周側の部分を作製する。
【0042】
保持部240を作製する場合は、ガイド部材132の移動方向を例えば地点A2で反転させる。地点A2は、金属線材220が心棒131には巻き付かないが、フィルタ本体230の軸方向の端面に引っ掛かる位置に設定される。なお、保持部240が作製された後も、ガイド部材132が地点A1-A1の範囲内を移動すれば、この移動範囲内ではフィルタ本体230の外周側の部分が作製される。
【0043】
所定階層数を有したフィルタ本体230と、所定数の保持線部224を含む保持部240が作製された後、金属線材220の他端部(終端部、巻き終わり側)を、巻き付け済みの金属線材220の適所に対して抵抗スポット溶接により接合し、固定する。金属線材220を抵抗スポット溶接する溶接機150は、接合に必要な電流を流す電極151を備える。電極151は心棒131に対して進退可能に構成されており、金属線材220を所定の圧力で押圧でき、また押圧した状態で接合用の電流を流すことができる。
金属線材220の端部を接合した後、適宜の方法により金属線材220を切断して心棒131から取り外すことにより、中空筒状体を得る。
なお、各保持線部224は、必要に応じて適宜のタイミング及び方法にてフィルタ本体230の端面等に固定される。
【0044】
心棒131の軸方向に対する金属線材220の角度(巻付け角度)、及び軸方向に隣接する金属線材220同士の間隔(ピッチ)は、心棒131の回転速度とガイド部材132の移動速度との比率を適宜調節することにより変更することができる。金属線材の太さ、巻付け角度、ピッチ、巻付け回数を適宜変更することにより、フィルタを通過する流体の圧力損失を適切な値に制御することができる。
なお、心棒131は概略円柱状又は円筒状であり、一般的にステンレス鋼、銅合金、アルミニウム合金などの金属から形成される。フィルタ200の内径は心棒131の外径に相当する大きさとなり、フィルタ200の外径は金属線材220の太さ(厚さ)と巻き付け回数に応じて適宜に調整される。
【0045】
以上の方法により製造された中空筒状体は、その全体に対する焼結等の熱処理が実施されることなく、そのままの状態でフィルタとして使用される。
【0046】
〔フィルタが組み込まれるガス発生器〕
図5は、本発明の一実施形態に係るフィルタが組み込まれたディスク型ガス発生器の概略図である。
ディスク型ガス発生器1は、軸方向の両端面(図中上下端)が閉塞された略円筒状のハウジングを備える。ハウジングの内部に形成された収容空間内には、内部構成部品としての保持部30、点火器40、カップ状部材50、伝火薬59、ガス発生剤61、下側支持部材70、上側支持部材80、クッション材85およびフィルタ200等が収容される。また、ハウジングの内部に設けられた収容空間には、上述した内部構成部品のうちのガス発生剤61が主として収容された燃焼室60が位置している。
【0047】
ハウジングは、上端面が開口した(上面開口を有する)概略有底円筒状の下部側シェル10と、下端面が開口した(下面開口を有する)概略有底円筒状の上部側シェル20とを備える。下部側シェル10と上部側シェル20とは、ステンレス鋼や鉄鋼、アルミニウム合金、ステンレス合金等からなる金属板をプレス加工することにより成形される。
上面開口と下面開口とを対向させた状態にて、上部側シェル20の下端部に下部側シェル10の上端部を圧入すると共に、両者の当接部又はその近傍を電子ビーム溶接、レーザ溶接、又は摩擦圧接等により接合することによって、両者が一体化される。
上部側シェル20には、その下端縁から外径方向に突出したフランジ部25を備える。フランジ部25は、ディスク型ガス発生器1を外部の部材(たとえば、エアバッグ装置に設けられたリテーナ等)に固定するための部位である。
【0048】
下部側シェル10の底板部11の中央部からは、上部側シェル20の天板部21側に向かって突状筒部13が突出している。これによりハウジングの外部側、即ち突状筒部13の反対側には窪み部14が形成される。突状筒部13の天板部21側の端面には、ハウジングの内外を連通させる開口部15が形成されている。
開口部15を介して突状筒部13側と窪み部14側には点火器40を固定する保持部30が設けられる。保持部30は絶縁性樹脂からなり、インサート成形により形成される。
【0049】
点火器40は火炎を発生させる手段であり、点火薬とこの点火薬を着火させる抵抗体とを含む点火部41と、抵抗体に電力を供給する一対の端子ピン42とを備える。抵抗体はジュール熱を発生させて点火薬を発火させる。窪み部14には、端子ピン42と導通する雌型コネクタ部34が配置される。雌型コネクタ部34は、保持部30によって、収容空間内の気密性が担保された状態で固定される。
【0050】
底板部11には、突状筒部13、保持部30および点火器40を覆うようにカップ状部材50が組付けられている。カップ状部材50の中空部内には伝火薬59が収容される。
カップ状部材50は、点火器40が作動することによって伝火薬59が着火された場合に、その内部の空間の圧力上昇や発生した熱の伝導に伴って破裂、変形または溶融する。
ハウジングの内部の空間のうち、上述したカップ状部材50が配置された部分を取り巻く空間は、ガス発生剤61が収容された燃焼室60である。カップ状部材50の外側表面には、これに隣接してガス発生剤61が配置される。
ガス発生剤61が収容された燃焼室60をハウジングの径方向に取り巻く空間には、ハウジングの内周に沿って、本発明の実施形態に係るフィルタ200が配置されている。フィルタ200は、円筒状の形状を有しており、その中心軸Ax1がハウジングの軸方向と実質的に合致するように配置されている。
【0051】
フィルタ200は、燃焼室60にて発生したガスがこのフィルタ200中を通過する際に、ガスが有する高温の熱を奪い取ることによってガスを冷却する冷却手段として機能するとともに、ガス中に含まれる残渣(スラグ)等を除去する除去手段としても機能する。なお、フィルタ200は、ハウジングの周壁部を構成する下部側シェル10の周壁部12および上部側シェル20の周壁部22との間で所定の大きさの間隙部28が形成されるように、当該周壁部12、22から離間して配置されている。
フィルタ200に対面する部分の上部側シェル20の周壁部22には、複数個のガス噴出口23が設けられている。この複数個のガス噴出口23は、フィルタ200を通過したガスをハウジングの外部に導出するためのものである。なお、ガス噴出口23には、シールテープ24が貼り付けられている。シールテープ24は、燃焼室60の気密性を確保する。
【0052】
燃焼室60内の底板部11側には、フィルタ200をハウジングに固定すると共に、発生したガスがフィルタ200の軸方向端部下端と底板部11との間の隙間から流出することを防止する円環状の下側支持部材70が配置されている。また、燃焼室60内の天板部21側には、フィルタ200をハウジングに固定すると共に、発生したガスがフィルタ200の軸方向端部上端と天板部21との間の隙間から流出することを防止する円盤状の上側支持部材80が配置されている。下側支持部材70と上側支持部材80は、普通鋼や特殊鋼等の鋼板をプレス加工等することによって形成される。
【0053】
フィルタ200の軸方向の両端面213、214は、加圧された状態でハウジングの天板部21と底板部11とに夫々接触する。即ち、図中、フィルタ200の下部側に位置する保持線部224は、フィルタ本体230の軸方向の他端面233と底板部11との間に挟み込まれており、両者によって挟圧保持される。また、フィルタ200の上部側に位置する保持線部224は、フィルタ本体230の軸方向の一端面232と天板部21との間に挟み込まれており、両者によって挟圧保持される。
上側支持部材80とガス発生剤61との間には、ガス発生剤61を底板部11側に向けて押圧する円盤状のクッション材85が配置されている。クッション材85はロックウールや発泡樹脂等から構成され、振動等によるガス発生剤61の粉砕を防止する。
【0054】
ガス発生器1は以下のように動作する。まず、車両が衝突すると、コントロールユニットからの通電によって点火器40が作動する。点火器40の作動により伝火薬59が燃焼を開始する。カップ状部材50が破裂してガス発生剤61が燃焼し、多量のガスが発生する。ガスはフィルタ200の内部を通過し、間隙部28に流入する。ハウジング内の内圧上昇に伴ってガス噴出口23を閉鎖していたシールテープ24が開裂し、ガス噴出口23を介してガスがハウジングの外部に噴出する。噴出したガスはエアバッグを膨張させ、展開させる。
【0055】
〔第二の実施形態〕
図6は、本発明の第二の実施形態に係るフィルタを示す模式的斜視図である。この図では線材層Lの図示を省略している。第一の実施形態と同様の構成には同一の符号を付して適宜その説明を省略する。
図示するように、フィルタ200Cは、フィルタ本体230と、保持部240とを含み構成される。
【0056】
フィルタ本体230は、外径側に外側筒部235を、外側筒部235の内径側に内側筒部236を備える。外側筒部235は最外周の線材層Lnを含み、且つ最外周の線材層から内径側に所定数の線材層を含む。内側筒部236は、軸方向の少なくとも一端部が外側筒部235の軸方向の端面よりも軸方向の外方に突出した突出部237を備える。内側筒部236は、フィルタ200Cの内周面212を構成することができる。
フィルタ200において全ての保持線部224は、突出部237よりも外径側に位置するように配置される。即ち、全ての保持線部224は、外側筒部235の軸方向の端面231上に位置する。
【0057】
突出部237は、保持線部224がフィルタ200の内周面212を越えて内径側に位置しないように保持線部224の位置を規制することができればよい。突出部237の形状(軸方向への突出長さ、径方向長等)は、保持線部224の位置を規制可能な形状に設定される。
突出部237は、少なくとも保持線部224の位置を規制することが要求される側の軸方向端部に形成される。また、突出部237は保持線部224の位置を規制することが要求される周方向位置において軸方向に突出していればよい。
【0058】
図4を参照して、フィルタ200Cの製造方法について説明する。以下においては、フィルタ200Cに特徴的な部分についてのみ述べる。
まず、ガイド部材132を軸方向にA3-A3の範囲で往復移動させて、内側筒部236を作製する。続いて、ガイド部材132を軸方向にA1-A1の範囲で往復移動させて、外側筒部235を作製する。更に、ガイド部材132を軸方向にA2-A2の範囲で往復移動させて、保持部240及び外側筒部235を作製する。
【0059】
<第二の実施形態の変形例>
突出部237は、フィルタ本体230を構成する金属線材220とは別個の環状の部材(又は筒状の部材)をフィルタ本体230に固定したものであってもよい。上記環状部材の固定方法としては、溶接(冶金的接合)、接着材を用いた接着(化学的接合)、接着テープ等を用いた固定法等が挙げられる。
【0060】
突出部237は、保持線部224の位置を規制できればよく、上記環状部材は多孔状でも無孔状でもよい。
突出部237は、保持線部224の位置を規制することが可能となる径方向位置において、端面231から軸方向の外側に向けて突出すればよい。従って、突出部237を形成する環状部材は、フィルタ本体230の内周面212の軸方向の端部に固定されてもよいし、端面231の径方向適所に固定されてもよい。
【0061】
上記環状部材は、フィルタ本体230に対して永続的に固定されてもよい。又は、上記環状部材は、少なくとも保持線部224がフィルタ200の軸方向の端面に固定されるまでの間、フィルタ本体230に対して一時的に固定されてもよい。
突出部237は保持線部224の位置を規制することが要求される周方向位置において軸方向に突出していればよい。このため、突出部237を構成する部材として環状部材に代えて非環状の板状部材等を用いてもよい。
【0062】
〔本発明の実施態様例と作用、効果のまとめ〕
<第一の実施態様>
本態様は、一本又は複数本の連続する金属線材220が、螺旋状、多層状、且つ内外径方向に隣接する金属線材部分同士が互いに交差する方向に伸びるように巻き付けられた中空筒状のフィルタ200である。
金属線材は、金属線材の長手方向が斜め周方向に伸びると共に径方向に層状に重ねられて筒形層状部(フィルタ本体230)を形成する第一部分(金属線材部分221…)と、第一部分に対して長手方向に連接すると共に、筒形層状部の軸方向の端面に重ねられた第二部分(保持線部224)と、を備えている。
【0063】
巻線型のフィルタは金属線材の巻き付け方向が反転される反転部を軸方向の端部に有する。巻線型フィルタ、特に非熱処理の巻線型フィルタでは反転部の周辺に位置する金属線材がフィルタの軸方向に動きやすく、ハンドリング時や輸送時にフィルタが受ける振動等の外力によって金属線材がほつれてフィルタ形状が不安定になることが考えられる。
本態様によれば、フィルタ本体の軸方向の端面に重ねられた第二部分が、これに隣接する第一部分と協働して筒形層状部の軸方向端部を保持するので、フィルタの軸方向端部における金属線材の動きが抑制され、フィルタの保形性が向上する。
【0064】
<第二の実施態様>
本態様に係るフィルタ200において第二部分(保持線部224)は、複数の線材層Lの各軸方向端縁に跨がって配置されていることを特徴とする。
本態様によれば、各線材層に属する複数の金属線材の第一部分(金属線材部分221…)の動きを、フィルタの軸方向の端部において一括して規制できる。
【0065】
<第三の実施態様>
本態様に係るフィルタ200において、複数の第二部分(保持線部224)を有し、各第二部分は、異なる周方向位置に配置されていることを特徴とする。
本態様によれば、フィルタの軸方向の一端側の各周方向位置においてフィルタの保形性が向上する。
【0066】
<第四の実施態様>
本態様に係るフィルタ200において第二部分(保持線部224)は、筒形層状部(フィルタ本体230)の内周面212よりも内径側に突出していないことを特徴とする。
本態様によれば、第二部分がフィルタの中空部内に配置される他の部品と干渉することを防止できる。
【0067】
<第五の実施態様>
本態様に係るフィルタ200Cにおいて筒形層状部(フィルタ本体230)は、外径側に外側筒部235を、該外側筒部の内径側に内側筒部236を備え、該内側筒部は、軸方向の少なくとも一端部が外側筒部の軸方向の端面231よりも軸方向の外方に突出した突出部237を備えており、突出部は、第二部分(保持線部224)が筒形層状部の内周面212よりも内径側に突出しないように、第二部分の位置を規制することを特徴とする。
本態様によれば、第二部分がフィルタの中空部内に配置される他の部品と干渉することを防止できる。
なお、突出部は第二部分の位置を規制するべき位置に配置され、第二部分の位置を規制可能な形状に設定される。
【0068】
<第六の実施態様>
本態様は、上記フィルタ200を備えるインフレータ(ガス発生器1)を特徴とする。
本態様に係るインフレータは、上記フィルタの効果を享受できる。
【0069】
<第七の実施態様>
本態様に係るインフレータにおいて、第二部分(保持線部224)が、筒形層状部(フィルタ本体230)と、フィルタ200を収容するハウジング(特に底板部11、又は天板部21)との間に挟圧保持されていることを特徴とする。
本態様に係るインフレータは、上記フィルタの効果を享受できる。また、第二部分を筒形層状部とハウジングとの間で挟圧保持することで、インフレータの組み立て後においてもフィルタの形状を保持できる。
【符号の説明】
【0070】
1…(ディスク型)ガス発生器(インフレータ)、10…下部側シェル、11…底板部、12…周壁部、13…突状筒部、14…窪み部、15…開口部、20…上部側シェル、21…天板部、22…周壁部、23…ガス噴出口、24…シールテープ、25…フランジ部、28…間隙部、30…保持部、34…雌型コネクタ部、40…点火器、41…点火部、42…端子ピン、50…カップ状部材、59…伝火薬、60…燃焼室、61…ガス発生剤、70…下側支持部材、80…上側支持部材、85…クッション材、130…巻付装置、131…心棒、132…ガイド部材、150…溶接機、151…電極(押圧手段)、200…フィルタ、211…外周面、212…内周面、213、214…(軸方向の)端面、220…金属線材、221(n)、221(n-1)...…(線材層を構成する)金属線材部分(第一部分)、222…反転部、223…終端部(終端溶接部)、224…保持線部(金属線材の第二部分)、230…フィルタ本体、231…(軸方向の)端面、232…一端面、233…他端面、235…外側筒部、236…内側筒部、237…突出部、240…保持部、L1、L2...Ln…線材層、Ax1…(フィルタの)中心軸、Ax2…(心棒の)中心軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6