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特開2024-113583超音波診断装置および医用データ処理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024113583
(43)【公開日】2024-08-22
(54)【発明の名称】超音波診断装置および医用データ処理方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 8/14 20060101AFI20240815BHJP
【FI】
A61B8/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023018669
(22)【出願日】2023-02-09
(71)【出願人】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤田 大広
【テーマコード(参考)】
4C601
【Fターム(参考)】
4C601EE02
4C601HH01
4C601JB45
(57)【要約】
【課題】ノイズを低減しつつフレームレートを維持すること。
【解決手段】実施形態に係る超音波診断装置は、切替部と、取得部と、除去部とを備える。切替部は、超音波を送受信していないブランク期間において、超音波の送受信スイッチを送信側から受信側へ切り替える。取得部は、ブランク期間において、送受信スイッチの切り替えに起因するスイッチングノイズを含むノイズデータを取得する。除去部は、ブランク期間に後続する超音波の送受信期間において、ノイズデータを用いて受信データからノイズを除去する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波を送受信していないブランク期間において、前記超音波の送受信スイッチを送信側から受信側へ切り替える切替部と、
前記ブランク期間において、前記送受信スイッチの切り替えに起因するスイッチングノイズを含むノイズデータを取得する取得部と、
前記ブランク期間に後続する前記超音波の送受信期間において、前記ノイズデータを用いて受信データからノイズを除去する除去部と
を具備する、超音波診断装置。
【請求項2】
前記除去部は、前記受信データから前記ノイズデータを減算することによって前記ノイズを除去する、
請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項3】
前記除去部は、前記送受信期間のうちの受信期間において、前記受信データから前記ノイズを除去する、
請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項4】
前記除去部は、前記ノイズデータの時間長に対応する期間において、前記受信データから前記ノイズを除去する、
請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項5】
前記ブランク期間および前記送受信期間は、ラスタ毎に規定される一つのレートに含まれる、
請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項6】
前記切替部は、前記送受信期間において、前記送受信スイッチを前記受信側から前記送信側へ切り替え、
前記取得部は、前記送受信期間のうちの受信期間において、前記受信データを取得する、
請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項7】
前記送受信スイッチを有する超音波送受信回路
を更に具備する、
請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項8】
前記ブランク期間において、前記ノイズデータを格納するメモリ、
を更に具備し、
前記除去部は、前記送受信期間において、前記メモリから読み出した前記ノイズデータを用いて前記受信データから前記ノイズを除去する、
請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項9】
前記ブランク期間は、検査部位に応じて変更される、
請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項10】
前記ブランク期間は、前記ノイズデータの状態に応じて変更される、
請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項11】
超音波を送受信していないブランク期間において、前記超音波の送受信スイッチを送信側から受信側へ切り替えることと、
前記ブランク期間において、前記送受信スイッチの切り替えに起因するスイッチングノイズを含むノイズデータを取得することと、
前記ブランク期間に後続する前記超音波の送受信期間において、前記ノイズデータを用いて受信データからノイズを除去することと
を具備する、医用データ処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書及び図面に開示の実施形態は、超音波診断装置および医用データ処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、超音波診断装置の小型化などにより、超音波送受信回路と送受信スイッチ(TRスイッチ)とが一体型のデバイスが用いられている。このようなデバイスにおいて、レートに同期したノイズが受信データに含まれることにより、ノイズに起因するアーチファクトが超音波画像に現れることがある。レートに同期したノイズは、例えば、レート毎に切り替えられるTRスイッチのスイッチングノイズである。
【0003】
受信データに混入したスイッチングノイズは、超音波画像のプローブ近傍付近(例えば、体表から1cm程度の位置)にアーチファクトとして現れる。このアーチファクトは、リウマチなどの体表付近の診断の場合、患部と重なる場合がある。よって、診断の妨げとなることから、受信データにノイズが混入することは、望ましくない。
【0004】
従来、上記のようなノイズを除去する方法として、ラスタ毎に、1番目のレート(第1のレート)で超音波を送信しない場合のノイズデータを取得し、後続する2番目のレート(第2のレート)で超音波を送信する場合の生体データを取得し、ノイズデータと生体データとの差分をとることでノイズを除去していた。しかし、この手法の場合、1本のラスタデータを作るのに2回分のレートが必要となるため、ノイズ除去をしない場合に比べて、フレームレートが半分になっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017-153814号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本明細書及び図面に開示の実施形態が解決しようとする課題の一つは、ノイズを低減しつつフレームレートを維持することである。ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態により解決しようとする課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置づけることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態に係る超音波診断装置は、切替部と、取得部と、除去部とを備える。切替部は、超音波を送受信していないブランク期間において、超音波の送受信スイッチを送信側から受信側へ切り替える。取得部は、ブランク期間において、送受信スイッチの切り替えに起因するスイッチングノイズを含むノイズデータを取得する。除去部は、ブランク期間に後続する超音波の送受信期間において、ノイズデータを用いて受信データからノイズを除去する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態に係る超音波診断装置の構成例を示すブロック図である。
図2図2は、実施形態における超音波送受信回路の構成例を示すブロック図である。
図3図3は、実施形態におけるノイズ除去処理を実行する処理回路の動作を説明するためのフローチャートである。
図4図4は、実施形態におけるノイズ除去処理を説明するタイムチャートである。
図5図5は、実施形態における信号処理回路の構成例を示すブロック図である。
図6図6は、実施形態における信号処理回路の制御を説明するタイムチャートである。
図7図7は、実施形態におけるノイズ除去処理を施した受信データを説明するための模式図である。
図8図8は、実施形態の応用例におけるノイズ除去処理を説明するタイムチャートである。
図9図9は、従来のノイズ除去処理を説明するタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
初めに、超音波診断装置の起動からスキャン開始までの流れについて説明する。超音波診断装置は、電源が投入されると初めにイニシャライズ設定を行う。イニシャライズ設定では、例えば、接続されている超音波プローブについて、素子の位置情報などのパラメータが設定される。イニシャライズ設定が行われた後、超音波診断装置は、ユーザから検査部位および患者情報などの入力を受け付け、検査開始の準備を完了する。
【0010】
ユーザにより検査開始の指示を受け付けると、超音波診断装置は、任意の走査線(ラスタ)に対して超音波の送受信を行う際に、超音波の送受信に関するパラメータを都度設定し、設定したパラメータを用いて超音波の送受信を行う。
【0011】
本明細書では、任意のラスタに関して、超音波の送受信に関するパラメータを設定するための期間をブランク期間と称し、超音波を送受信するための期間を送受信期間と称する。また、ブランク期間と、ブランク期間に後続する送受信期間とで規定される繰り返し周期をレートと称する。尚、ブランク期間では超音波の送受信が行われないため、ブランク期間は、超音波を送受信していない期間と呼ばれてもよい。また、レートは、フレームと呼ばれてもよい。
【0012】
送受信期間は、送信期間および受信期間に分けられてもよい。送信期間は、超音波を送信するための期間である。また、送信期間は、超音波の送信を許可する期間(超音波を送信することができる期間)に言い換えられてもよい。受信期間は、超音波を受信するための期間である。また、受信期間は、超音波の受信を許可する期間(超音波を受信することができる期間)に言い換えられてもよい。
【0013】
次に、送受信スイッチに関するスイッチングノイズについて説明する。送受信スイッチは、超音波プローブに接続される超音波送信回路および超音波受信回路を物理的に切り替えるスイッチである。スイッチングノイズは、送受信スイッチを受信側から送信側へ切り替える際に、或いは送受信スイッチを送信側から受信側へ切り替える際に発生する。
【0014】
例えば、送受信スイッチと超音波受信回路とが一体型のデバイスで構成されている場合、送受信スイッチを送信側から受信側へ切り替えた際、超音波受信回路によって受信する超音波の受信データにスイッチングノイズが混入することがある。スイッチングノイズが受信データに混入すると、受信データから超音波画像を生成した際に、超音波画像中にアーチファクトとして現れる。以降では、単に「スイッチングノイズ」と記載した場合、「送受信スイッチを送信側から受信側へ切り替えた際に発生するノイズ」であるものとする。
【0015】
次に、上記スイッチングノイズについて、従来のノイズ除去処理について図9を用いて説明する。図9は、従来のノイズ除去処理を説明するタイムチャートである。図9のタイムチャート900には、時間的に隣接する二回の超音波送受信に関する第1のレートおよび第2のレートの各時間について、送受信スイッチ(TRスイッチ)の位置を示す波形910と、送信制御のON/OFFを示す波形920と、受信制御のON/OFFを示す波形930とが示されている。先に図9を概説すると、タイムチャート900には、超音波診断装置が、第1のレートにおいてノイズを取得し、第1のレートに後続する第2のレートにおいて受信データに含まれるノイズを除去することが示されている。
【0016】
タイムチャート900において、第1のレートは、ブランク期間、送信期間、および受信期間を含む。ブランク期間は、時刻t10から時刻t20までの期間である。送信期間は、時刻t20から時刻t30までの期間である。受信期間は、時刻t30から時刻t40までの期間である。従って、第1のレートは、時刻t10から時刻t40までの期間である。
【0017】
時刻t10において、超音波診断装置は、TRスイッチを受信側に設定する。また、超音波診断装置は、送信制御および受信制御をそれぞれOFFに設定する。ブランク期間中において、送信制御および受信制御はONに設定されない。送信制御および受信制御がONにされない理由は、ブランク期間では超音波の送受信を必要としないためである。
【0018】
時刻t20において、超音波診断装置は、TRスイッチを受信側から送信側へ切り替える。この切り替えにより、超音波診断装置は送信期間となるが、第1のレートではノイズのみを取得するため、送信制御はOFFのままに設定される。よって、第1のレートの送信期間では、超音波診断装置は、超音波の送信を行わない。
【0019】
時刻t30において、超音波診断装置は、TRスイッチを送信側から受信側へ切り替える。この切り替えにより、超音波診断装置は受信期間となる。また、超音波診断装置は、受信制御をOFFからONに設定する。第1のレートの受信期間において、超音波診断装置は、TRスイッチを送信側から受信側へ切り替える際に発生するスイッチングノイズを含むノイズをノイズデータとして取得する。
【0020】
時刻t40において、超音波診断装置は、受信制御をOFFに設定し、第1のレートを終了する。第1のレートが終了した後、第2のレートに移行する。
【0021】
第2のレートは、時刻t40から時刻t50までの期間をブランク期間、時刻t50から時刻t60までの期間を送信期間、時刻t60から時刻t70までの期間を受信期間と規定している。従って、第2のレートは、時刻t40から時刻t70までの期間である。
【0022】
時刻t40において、超音波診断装置は、TRスイッチを受信側に設定する。また、超音波診断装置は、送信制御および受信制御をそれぞれOFFに設定する。
【0023】
時刻t50において、超音波診断装置は、TRスイッチを受信側から送信側へ切り替える。この切り替えにより、超音波診断装置は送信期間となる。また、超音波診断装置は、送信制御をOFFからONに設定する。よって、第2のレートの送信期間では、超音波診断装置は、超音波の送信を行う。
【0024】
時刻t60において、超音波診断装置は、TRスイッチを送信側から受信側へ切り替える。この切り替えにより、超音波診断装置は受信期間となる。また、超音波診断装置は、送信制御をONからOFFに設定し、受信制御をOFFからONに設定する。第2のレートの受信期間において、超音波診断装置は、TRスイッチを送信側から受信側へ切り替える際に発生するスイッチングノイズを含むノイズが重畳された、超音波の送信に伴う受信データを取得する。さらに、超音波診断装置は、第1のレートで取得したノイズデータを用いて、第2のレートで取得する受信データからノイズを除去する。
【0025】
時刻t70において、超音波診断装置は、受信制御をOFFに設定し、第2のレートを終了する。
【0026】
以上概説すると、従来のノイズ除去処理では、超音波診断装置は、任意のラスタについて、第1のレートにおいてノイズを取得し、第1のレートに後続する第2のレートにおいて受信データに含まれるノイズを除去する。よって、従来のノイズ除去処理は、2レートのうちの1レートしかデータを出力することができなかった。換言すると、従来のノイズ除去処理は、超音波の送受信を行わないレート(上記図9では第1のレート)を必要とするため、ノイズ除去処理をしない場合と比べ、フレームレートが略半分となっていた。
【0027】
以下、図面を参照しながら、超音波診断装置の実施形態について詳細に説明する。
【0028】
(実施形態)
図1は、実施形態に係る超音波診断装置の構成例を示すブロック図である。図1の超音波診断装置1は、装置本体100と、超音波プローブ101とを有している。装置本体100は、入力装置102および出力装置103と接続されている。また、装置本体100は、ネットワークNWを介して外部装置104と接続されている。外部装置104は、例えば、PACS(Picture Archiving and Communication Systems)を搭載したサーバなどである。
【0029】
超音波プローブ101は、例えば、装置本体100からの制御に従い、被検体である生体P内のスキャン領域について超音波スキャンを実行する。超音波プローブ101は、例えば、複数の圧電振動子、複数の圧電振動子とケースとの間に設けられる整合層、および複数の圧電振動子から放射方向に対して後方への超音波の伝搬を防止するバッキング材等を有する。超音波プローブ101は、例えば、複数の超音波振動子が所定の方向に沿って配列された一次元アレイリニアプローブである。超音波プローブ101は、装置本体100と着脱自在に接続される。超音波プローブ101には、オフセット処理、および超音波画像をフリーズさせる操作(フリーズ操作)等の際に押下されるボタンが配置されてもよい。
【0030】
複数の圧電振動子は、装置本体100が有する後述の超音波送信回路110から供給される駆動信号に基づいて超音波を発生する。これにより、超音波プローブ101から生体Pへ超音波が送信される。超音波プローブ101から生体Pへ超音波が送信されると、送信された超音波は、生体Pの体組織における音響インピーダンスの不連続面で次々と反射され、反射波信号として複数の圧電振動子にて受信される。受信される反射波信号の振幅は、超音波が反射される不連続面における音響インピーダンスの差に依存する。また、送信された超音波パルスが、移動している血流または心臓壁等の表面で反射された場合の反射波信号は、ドプラ効果により、移動体の超音波送信方向の速度成分に依存して、周波数偏移を受ける。超音波プローブ101は、生体Pからの反射波信号を受信して電気信号に変換する。
【0031】
図1には、一つの超音波プローブ101と装置本体100との接続関係を例示している。しかしながら、装置本体100には、複数の超音波プローブを接続することが可能である。接続された複数の超音波プローブのうちいずれを超音波スキャンに使用するかは、例えば、後述するタッチパネル上のソフトウェアボタンによって任意に選択することができる。
【0032】
装置本体100は、超音波プローブ101により受信された反射波信号に基づいて超音波画像を生成する装置である。装置本体100は、超音波送受信回路200と、内部記憶回路130と、画像メモリ140と、入力インタフェース150と、出力インタフェース160と、通信インタフェース170と、処理回路180とを有している。初めに、超音波送受信回路200について、図2を用いて説明する。
【0033】
図2は、実施形態における超音波送受信回路の構成例を示すブロック図である。図2の超音波送受信回路200は、超音波送信回路110と、超音波受信回路120と、送受信スイッチ210(TRスイッチ)と、信号処理回路500とを備える。
【0034】
超音波送信回路110は、超音波プローブ101に駆動信号を供給するプロセッサである。超音波送信回路110は、例えば、トリガ発生回路、遅延回路、およびパルサ回路等により実現される。トリガ発生回路は、所定のレート周波数で、送信超音波を形成するためのレートパルスを繰り返して発生する。遅延回路は、超音波プローブから発生される超音波をビーム状に集束して送信指向性を決定するために必要な複数の圧電振動子毎の遅延時間を、トリガ発生回路が発生する各レートパルスに対し与える。パルサ回路は、レートパルスに基づくタイミングで、超音波プローブ101に設けられる複数の超音波振動子へ駆動信号(駆動パルス)を印加する。遅延回路により各レートパルスに対し与える遅延時間を変化させることで、複数の圧電振動子の表面からの送信方向が任意に調整可能となる。
【0035】
また、超音波送信回路110は、駆動信号によって、超音波の出力強度を任意に変更することができる。超音波診断装置では、出力強度を大きくすることにより、生体P内での超音波の減衰の影響を小さくすることができる。超音波診断装置は、超音波の減衰の影響を小さくすることによって、受信時において、S/N比の大きい反射波信号を取得することができる。
【0036】
一般的に、超音波が生体P内を伝播すると、出力強度に相当する超音波の振動の強さ(これは、音響パワーとも称する)が減衰する。音響パワーの減衰は、吸収、散乱および反射などによって起こる。また、音響パワーの減少の度合いは、超音波の周波数および超音波の放射方向の距離に依存する。例えば、超音波の周波数を大きくすることにより、減衰の度合いは大きくなる。また、超音波の放射方向の距離が長くなるほど、減衰の度合いは大きくなる。
【0037】
超音波受信回路120は、超音波プローブ101が受信した反射波信号に対して各種処理を施し、受信信号を生成するプロセッサである。超音波受信回路120は、超音波プローブ101によって取得された超音波の反射波信号に対する受信信号を生成する。具体的には、超音波受信回路120は、例えば、プリアンプ、A/D変換器、復調器、およびビームフォーマ等により実現される。プリアンプは、超音波プローブ101が受信した反射波信号をチャネル毎に増幅してゲイン補正処理を行う。A/D変換器は、ゲイン補正された反射波信号をディジタル信号に変換する。復調器は、ディジタル信号を復調する。ビームフォーマは、例えば、復調されたディジタル信号に受信指向性を決定するのに必要な遅延時間を与えて、遅延時間が与えられた複数のディジタル信号を加算する。ビームフォーマの加算処理により、受信指向性に応じた方向からの反射成分が強調された受信信号が発生する。
【0038】
送受信スイッチ210は、超音波プローブ101に接続される超音波送信回路110と超音波受信回路120とを物理的に切り替えるスイッチである。本明細書では、超音波プローブ101と超音波送信回路110とが接続されている状態を「送受信スイッチ210が送信側の状態」と称し、超音波プローブ101と超音波受信回路120とが接続されている状態を「送受信スイッチ210が受信側の状態」と称する。例えば、送受信スイッチ210を受信側から送信側へ切り替えた場合、超音波プローブ101と超音波送信回路110とが接続される。また、送受信スイッチ210を送信側から受信側へ切り替えた場合、超音波プローブ101と超音波受信回路120とが接続される。尚、送受信スイッチ210の切り替えに関する指示は、後述する処理回路180の機能により行われる。
【0039】
信号処理回路500は、超音波受信回路120から出力される受信信号(受信データ)を受け取り、受信データに対してノイズ除去処理などの信号処理を施して、信号処理済みの受信データ(処理済みデータ)を処理回路180へと出力する。尚、信号処理回路500の具体的な説明は後述される。
【0040】
内部記憶回路130は、例えば、磁気的記憶媒体、光学的記憶媒体、または半導体メモリ等、プロセッサにより読み取り可能な記憶媒体等を有する。内部記憶回路130は、超音波送受信を実現するためのプログラム、後述するノイズ除去処理に関するプログラムおよび各種データ等を記憶している。プログラムおよび各種データは、例えば、内部記憶回路130に予め記憶されていてもよい。また、プログラムおよび各種データは、例えば、非一過性の記憶媒体に記憶されて配布され、非一過性の記憶媒体から読み出されて内部記憶回路130にインストールされてもよい。また、内部記憶回路130は、入力インタフェース150を介して入力される操作に従い、処理回路180で生成されるBモード画像データ、造影画像データ、および血流映像に関する画像データ等を記憶する。内部記憶回路130は、記憶している画像データを、通信インタフェース170を介して外部装置104等に転送することも可能である。
【0041】
なお、内部記憶回路130は、CDドライブ、DVDドライブ、およびフラッシュメモリ等の可搬性記憶媒体との間で種々の情報を読み書きする駆動装置等であってもよい。内部記憶回路130は、記憶しているデータを可搬性記憶媒体へ書き込み、可搬性記憶媒体を介してデータを外部装置104に記憶させることも可能である。
【0042】
画像メモリ140は、例えば、磁気的記憶媒体、光学的記憶媒体、または半導体メモリ等、プロセッサにより読み取り可能な記憶媒体等を有する。画像メモリ140は、入力インタフェース150を介して入力されるフリーズ操作直前の複数フレームに対応する画像データを保存する。画像メモリ140に記憶されている画像データは、例えば、連続表示(シネ表示)される。
【0043】
内部記憶回路130、および画像メモリ140は、必ずしもそれぞれが独立した記憶装置により実現されなくてもよい。内部記憶回路130、および画像メモリ140が単一の記憶装置により実現されてもよい。また、内部記憶回路130、および画像メモリ140のそれぞれが複数の記憶装置により実現されてもよい。
【0044】
入力インタフェース150は、入力装置102を介し、操作者からの各種指示を受け付ける。入力装置102は、例えば、マウス、キーボード、パネルスイッチ、スライダースイッチ、トラックボール、ロータリーエンコーダ、操作パネル、およびタッチコマンドスクリーン(TCS:Touch Command Screen)である。入力インタフェース150は、例えばバスを介して処理回路180に接続され、操作者から入力される操作指示を電気信号へ変換し、電気信号を処理回路180へ出力する。なお、入力インタフェース150は、マウスおよびキーボード等の物理的な操作部品と接続するものだけに限られない。例えば、超音波診断装置1とは別体に設けられた外部の入力機器から入力される操作指示に対応する電気信号を受け取り、この電気信号を処理回路180へ出力する回路も入力インタフェースの例に含まれる。
【0045】
出力インタフェース160は、例えば処理回路180からの電気信号を出力装置103へ出力するためのインタフェースである。出力装置103は、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、LEDディスプレイ、プラズマディスプレイ、CRTディスプレイ等の任意のディスプレイである。出力装置103は、入力装置102を兼ねたタッチパネル式のディスプレイでもよい。出力装置103は、ディスプレイの他に、音声を出力するスピーカーを更に含んでもよい。出力インタフェース160は、例えばバスを介して処理回路180に接続され、処理回路180からの電気信号を出力装置103に出力する。
【0046】
通信インタフェース170は、例えばネットワークNWを介して外部装置104と接続され、外部装置104との間でデータ通信を行う。
【0047】
処理回路180は、例えば、超音波診断装置1の中枢として機能するプロセッサである。処理回路180は、内部記憶回路130に記憶されているプログラムを実行することで、当該プログラムに対応する機能を実現する。処理回路180は、例えば、Bモード処理機能181と、ドプラ処理機能182と、画像生成機能183と、表示制御機能184と、切替機能185(切替部)と、取得機能186(取得部)と、除去機能187(除去部)と、システム制御機能188(制御部)とを有している。
【0048】
Bモード処理機能181は、超音波受信回路120から受け取った受信信号に基づき、Bモードデータを生成する機能である。Bモード処理機能181において処理回路180は、例えば、超音波受信回路120から受け取った受信信号に対して包絡線検波処理、および対数圧縮処理等を施し、信号強度が輝度の明るさで表現されるデータ(Bモードデータ)を生成する。生成されたBモードデータは、2次元的な超音波走査線(ラスタ)上のBモードRAWデータとして不図示のRAWデータメモリに記憶される。
【0049】
また、処理回路180は、Bモード処理機能181により、造影エコー法、例えば、コントラストハーモニックイメージング(Contrast Harmonic Imaging:CHI)を実行することができる。即ち、処理回路180は、造影剤が注入された生体Pの反射波データ(高調波成分または分周波成分)と、生体P内の組織を反射源とする反射波データ(基本波成分)とを分離することができる。これにより、処理回路180は、生体Pの反射波データから高調波成分または分周波成分を抽出して、造影画像データを生成するためのBモードデータを生成することができる。
【0050】
造影画像データを生成するためのBモードデータは、造影剤を反射源とする反射波の信号強度を輝度で表したデータとなる。また、処理回路180は、生体Pの反射波データから基本波成分を抽出して、組織画像データを生成するためのBモードデータを生成することができる。
【0051】
なお、CHIを行う際、処理回路180は、上述したフィルタ処理を用いた方法とは異なる方法により、ハーモニック成分(高調波成分)を抽出することができる。ハーモニックイメージングでは、振幅変調(AM:Amplitude Modulation)法や位相変調(PM:Phase Modulation)法、AM法及びPM法を組み合わせたAMPM法と呼ばれる映像法が行なわれる。
【0052】
AM法、PM法およびAMPM法では、同一の走査線に対して振幅や位相が異なる超音波送信を複数回行う。これにより、超音波受信回路120は、各走査線で複数の反射波データを生成し、生成した反射波データを出力する。処理回路180は、Bモード処理機能181により、各走査線の複数の反射波データを、変調法に応じた加減算処理することで、ハーモニック成分を抽出する。そして、処理回路180は、ハーモニック成分の反射波データに対して包絡線検波処理などを行って、Bモードデータを生成する。
【0053】
ドプラ処理機能182は、超音波受信回路120から受け取った受信信号を周波数解析することで、スキャン領域に設定されるROI(Region Of Interest:関心領域)内にある移動体のドプラ効果に基づく運動情報を抽出したデータ(ドプラ情報)を生成する機能である。生成されたドプラ情報は、2次元的な超音波走査線上のドプラRAWデータ(ドプラデータとも称する)として不図示のRAWデータメモリに記憶される。
【0054】
具体的には、処理回路180は、ドプラ処理機能182により、例えば移動体の運動情報として、平均速度、平均分散値、平均パワー値などを複数のサンプル点それぞれで推定し、推定した運動情報を示すドプラデータを生成する。移動体は、例えば、血流や、心壁などの組織、造影剤である。実施形態に係る処理回路180は、ドプラ処理機能182により、血流の運動情報(血流情報)として、血流の平均速度、血流速度の分散値、血流信号のパワー値などを、複数のサンプル点それぞれで推定し、推定した血流情報を示すドプラデータを生成する。
【0055】
さらに、処理回路180は、ドプラ処理機能182により、カラーフローマッピング(CFM:Color Flow Mapping)法とも呼ばれるカラードプラ法を実行することができる。CFM法では、超音波の送受信が複数の走査線上で複数回行われる。そして、CFM法では、例えば、同一位置のデータ列に対してMTI(Moving Target Indicator)フィルタを掛けることで、静止している組織、又は動きの遅い組織に由来する信号(クラッタ信号)を抑制して、血流に由来する信号を抽出する。そして、CFM法では、抽出した血流信号を用いて、血流の速度、血流の分散、血流のパワーなどの血流情報を推定する。後述する画像生成機能183では、推定した血流情報の分布を、例えば、2次元でカラー表示した超音波画像データ(カラードプラ画像データ)として生成する。以降では、カラードプラ法を用いた超音波診断装置のモードを血流映像モードと称する。尚、カラー表示とは、血流情報の分布を所定のカラーコードに対応させて表示させるものであり、グレースケールもカラー表示に含まれるものとする。
【0056】
血流映像モードには、所望する臨床情報によって様々な種類がある。一般的には、血流の方向や血流の平均速度が可視化可能な速度表示用血流映像モードや、血流信号のパワーを可視化可能なパワー表示用血流映像モードがある。
【0057】
速度表示用血流映像モードは、血流の方向や血流の平均速度によってドプラシフト周波数に対応した色を表示するモードである。例えば、速度表示用血流映像モードは、流れの方向として、向かってくる流れを赤系色、遠ざかる流れを青系色で表し、それぞれの速度の違いを色相の違いで表す。速度表示用血流映像モードは、カラードプラモードや、カラードプライメージング(Color Doppler Imaging:CDI)モードと呼ばれることもある。
【0058】
パワー表示用血流映像モードは、例えば、血流信号のパワーを赤系色の色相、色の明るさ(明度)または彩度の変化で表すモードである。パワー表示用血流映像モードは、パワードプラ(Power Doppler:PD)モードと呼ばれることもある。パワー表示用血流映像モードは、速度表示用血流映像モードと比べて高感度に血流を描出できることから、高感度血流映像モードと呼ばれてもよい。
【0059】
画像生成機能183は、Bモード処理機能181により生成されたデータに基づいて、Bモード画像データを生成する機能である。例えば、画像生成機能183において処理回路180は、超音波走査の走査線信号列を、テレビ等に代表されるビデオフォーマットの走査線信号列に変換(スキャンコンバート)し、表示用の画像データ(表示用画像データ)を生成する。具体的には、処理回路180は、RAWデータメモリに記憶されたBモードRAWデータに対してRAW-ピクセル変換、例えば、超音波プローブ101による超音波の走査形態に応じた座標変換を実行することで、ピクセルから構成される2次元Bモード画像データ(超音波画像データとも称する)を生成する。換言すると、処理回路180は、画像生成機能183により、超音波の送受信によって、連続する複数のフレームにそれぞれ対応する複数の超音波画像(医用画像)を生成する。
【0060】
また、処理回路180は、例えば、RAWデータメモリに記憶されたドプラRAWデータに対してRAW-ピクセル変換を実行することで、血流情報が映像化されたドプラ画像データを生成する。ドプラ画像データは、平均速度画像データ、分散画像データ、パワー画像データ、又はこれらを組み合わせた画像データである。処理回路180は、ドプラ画像データとして、血流情報がカラーで表示されるカラードプラ画像データ、および一つの血流情報がグレースケールで波形状に表示されるドプラ画像データを生成する。カラードプラ画像データは、前述の血流映像モードの実行時に生成される。
【0061】
表示制御機能184は、画像生成機能183により生成された各種超音波画像データに基づく画像を出力装置103としてのディスプレイに表示させる機能である。具体的には、例えば、処理回路180は、表示制御機能184により、画像生成機能183により生成されたBモード画像データ、ドプラ画像データ、又はこれらの両方を含む画像データに基づく画像のディスプレイにおける表示を制御する。
【0062】
より具体的には、処理回路180は、表示制御機能184により、例えば、超音波走査の走査線信号列を、テレビ等に代表されるビデオフォーマットの走査線信号列に変換(スキャンコンバート)し、表示用画像データを生成する。また、処理回路180は、表示用画像データに対し、ダイナミックレンジ、輝度(ブライトネス)、コントラスト、及びγカーブ補正、並びにRGB変換等の各種処理を実行してもよい。また、処理回路180は、表示用画像データに、種々のパラメータの文字情報、目盛り、ボディマーク等の付帯情報を付加してもよい。また、処理回路180は、操作者が入力装置により各種指示を入力するためのユーザインタフェース(GUI:Graphical User Interface)を生成し、GUIをディスプレイに表示させてもよい。
【0063】
切替機能185は、送受信スイッチ210を切り替える機能である。例えば、切替機能185において処理回路180は、予め決められたタイミングに基づいて、送受信スイッチ210を受信側から送信側へ、或いは送信側から受信側へ切り替える。具体的には、処理回路180は、超音波を送受信していないブランク期間において、送受信スイッチ210を送信側から受信側へ切り替える。また、処理回路180は、送受信期間において、送受信スイッチ210を受信側から送信側へ切り替える。
【0064】
取得機能186は、ノイズデータおよび受信データを取得する機能である。例えば、取得機能186において処理回路180は、所定の期間において、ノイズデータおよび受信データを取得する。具体的には、処理回路180は、ブランク期間において、送受信スイッチの切り替えに起因するスイッチングノイズを含むノイズデータを取得する。また、処理回路180は、受信期間において、受信データを取得する。尚、ノイズデータには、電源ノイズなどが含まれてもよい。
【0065】
除去機能187は、受信データからノイズを除去する機能である。例えば、除去機能187において処理回路180は、送受信期間において、ブランク期間で取得したノイズデータを用いて、受信データからノイズを除去する。具体的には、処理回路180は、受信データからノイズデータを減算することによってノイズを除去する。また、処理回路180は、受信期間において、受信データからノイズを除去する。また、処理回路180は、ノイズデータの時間長に対応する期間において、受信データからノイズを除去する。尚、処理回路180は、リアルタイムで取得している受信データからノイズを除去してもよい。また、ノイズデータは、メモリから読み出されてよい。
【0066】
なお、除去機能187によるノイズ除去は、信号処理回路500を制御することにより行われてもよい。例えば、除去機能187において処理回路180は、信号処理回路500へ制御信号(後述するメモリ選択信号および出力選択信号に相当)を出力することによって、信号処理回路500を制御し、受信データからノイズを除去する。
【0067】
システム制御機能188は、超音波診断装置1全体の動作を統括して制御する機能である。例えば、システム制御機能188において処理回路180は、超音波の送受信に関する超音波診断装置1の各部を制御する。具体的には、処理回路180は、超音波の送信制御および受信制御を行う。尚、システム制御機能188において処理回路180は、信号処理回路500を制御してもよい。
【0068】
以上、実施形態に係る超音波診断装置1の基本的な構成について説明した。次に、実施形態に係る超音波診断装置1の動作について、図3のフローチャートを用いて説明する。
【0069】
図3は、実施形態におけるノイズ除去処理を実行する処理回路の動作を説明するためのフローチャートである。実施形態のノイズ除去処理は、一つのレートにおいて、ノイズの取得と受信データに含まれるノイズの除去とを行う。よって、図3のフローチャートの説明では、一つのレートについての一連の流れを説明する。
【0070】
また、図3のフローチャートでは、ステップST110およびステップST120の処理がブランク期間で行われ、ステップST130からステップST170までの処理が送受信期間で行われる。よって、それぞれのステップの説明で、「ブランク期間において」および「送受信期間において」等の記載を省略する場合がある。図3に示すノイズ除去処理は、ユーザにより検査開始の指示を受け付けることにより開始される。
【0071】
(ステップST110)
ノイズ除去処理を開始すると、処理回路180は、切替機能185により、ブランク期間において、送受信スイッチ210(TRスイッチ)を送信側から受信側へ切り替える。
【0072】
(ステップST120)
TRスイッチを送信側から受信側へ切り替えた後、処理回路180は、取得機能186により、TRスイッチの切り替えに起因するスイッチングノイズを含むノイズデータを取得する。
【0073】
(ステップST130)
ノイズデータを取得した後、処理回路180は、切替機能185により、TRスイッチを受信側から送信側へ切り替える。
【0074】
(ステップST140)
TRスイッチを受信側から送信側へ切り替えた後、処理回路180は、超音波の送信を開始する。
【0075】
(ステップST150)
超音波の送信を開始した後、処理回路180は、切替機能185により、TRスイッチを送信側から受信側へ切り替える。
【0076】
(ステップST160)
TRスイッチを送信側から受信側へ切り替えた後、処理回路180は、超音波の受信を開始する。超音波の受信開始に伴い、処理回路180は、取得機能186により、受信データを取得する。
【0077】
(ステップST170)
超音波の受信を開始した後、処理回路180は、除去機能187により、ノイズデータを用いて受信データからノイズを除去する。ステップST170の後、処理は終了する。
【0078】
以上、実施形態に係る超音波診断装置1の動作について説明した。次に、実施形態におけるノイズ除去処理について、図4のタイムチャートを用いて説明する。
【0079】
図4は、実施形態におけるノイズ除去処理を説明するタイムチャートである。図4のタイムチャート400には、第1のレートの各時間について、送受信スイッチ(TRスイッチ)の位置を示す波形410と、送信制御のON/OFFを示す波形420と、受信制御のON/OFFを示す波形430とが示されている。図4を概説すると、タイムチャート400には、超音波診断装置が、第1のレートにおいて、ノイズを取得し、受信データに含まれるノイズを除去することを示している。尚、第1のレートのブランク期間、送信期間、および受信期間は、タイムチャート900の第1のレートと同様のため、説明を省略する。また、送信期間および受信期間は、一部の期間が重複していてもよい。
【0080】
時刻t10において、処理回路180は、TRスイッチを受信側に設定し、送信制御および受信制御をそれぞれOFFに設定する。時刻t10から所定の時間が経過した時刻t11において、処理回路180は、切替機能185により、TRスイッチを受信側から送信側に設定する。時刻t11から所定の時間が経過した時刻t12において、処理回路180は、切替機能185により、TRスイッチを送信側から受信側へ切り替える(ステップST110)。尚、時刻t10において、処理回路180は、TRスイッチを送信側に設定してもよい。この場合、時刻t11におけるTRスイッチの切り替えは不要となる。
【0081】
ブランク期間において(図4では時刻t12において)、TRスイッチが送信側から受信側へ切り替えられたことを契機として、処理回路180は、送信制御をOFFにしたまま受信制御のみONに設定し、取得機能186により、ノイズデータの取得を開始する(ステップST120)。ノイズデータの取得は、例えば、ブランク期間が終了する時刻t20まで行われる。よって、以下では、時刻t12から時刻t20までの期間をノイズデータ取得期間と呼ぶ。
【0082】
時刻t20において、処理回路180は、切替機能185により、TRスイッチを受信側から送信側へ切り替える(ステップST130)。この切り替えを契機として、処理回路180は、送信制御をONに設定し、受信制御をOFFに設定する。また、処理回路180は、超音波の送信を開始する(ステップST140)。
【0083】
時刻t30において、処理回路180は、切替機能185により、TRスイッチを送信側から受信側へ切り替える(ステップST150)。この切り替えを契機として、処理回路180は、送信制御をOFFに設定し、受信制御をONに設定する。また、処理回路180は、超音波の受信を開始し、取得機能186により、受信データを取得する(ステップST160)。受信データの取得と並行して、処理回路180は、除去機能187により、ノイズデータを用いて受信データからノイズを除去する(ステップST170)。受信データの取得は、例えば、受信期間が終了する時刻t40まで行われる。
【0084】
以上、実施形態におけるノイズ除去処理について説明した。次に、実施形態における信号処理回路の構成について、図5のブロック図を用いて説明する。
【0085】
図5は、実施形態における信号処理回路の構成例を示すブロック図である。図5の信号処理回路500は、例えば、図2の超音波送受信回路200に含まれる。信号処理回路500は、メモリ510と、減算器520と、マルチプレクサ530とを含む。尚、信号処理回路500は、超音波受信回路120に含まれてもよい。
【0086】
信号処理回路500は、ブランク期間において、超音波受信回路120から、スイッチングノイズを含むノイズデータを入力する。また、信号処理回路500は、受信期間において、超音波受信回路120から受信データを入力する。信号処理回路500は、受信期間において、ノイズデータを用いて受信データからノイズを除去した処理済みデータ、或いは処理が行われなかった受信データ(未処理データ)を処理回路180へと出力する。尚、信号処理回路500に入力されるノイズデータおよび受信データは入力データ(beam_in)と呼ばれてよく、信号処理回路500から出力される処理済みデータおよび未処理データは出力データ(beam_out)と呼ばれてよい。
【0087】
メモリ510は、超音波受信回路120から入力データを受け付ける。具体的には、メモリ510は、ブランク期間において、超音波受信回路120から入力データとしてのノイズデータを入力する。また、メモリ510は、超音波受信回路120からのノイズデータを記憶する。ノイズデータを記憶するか否かは、処理回路180からのメモリ選択信号(mem_sel)によって制御される。例えば、メモリ510は、メモリ選択信号「0」(disable)の場合、ノイズデータを記憶せず、メモリ選択信号「1」(enable)の場合、ノイズデータを記憶する。尚、メモリ510は、入力データとして受け取った受信データを記憶しない。
【0088】
減算器520は、受信期間において、超音波受信回路120から受信データを入力し、メモリ510からノイズデータを入力する。減算器520は、受信データからノイズデータを減算することによって、ノイズを除去した処理済みデータをマルチプレクサ530へと出力する。
【0089】
マルチプレクサ530は、ブランク期間において、超音波受信回路120からノイズデータを入力し、受信期間において、受信データ(未処理データ)および処理済みデータを入力する。入力したデータのいずれかを出力するか否かは、処理回路180からの出力選択信号(out_sel)によって制御される。例えば、マルチプレクサ530は、出力選択信号「0」(None)の場合、何れのデータも出力せず(或いはゼロデータを出力する)、出力信号「1」(beam_in)の場合、未処理データを出力し、出力信号「2」(out_sub)の場合、処理済みデータを出力する。
【0090】
以上、実施形態における信号処理回路の構成について説明した。次に、実施形態における信号処理回路の制御について、図6のタイムチャートを用いて説明する。
【0091】
図6は、実施形態における信号処理回路の制御を説明するタイムチャートである。図6のタイムチャート600には、第1のレートの各時間について、送受信スイッチ(TRスイッチ)の位置を示す波形610と、送信制御のON/OFFを示す波形620と、受信制御のON/OFFを示す波形630と、メモリ選択信号(mem_sel)の「0」または「1」を示す波形640と、出力選択信号(out_sel)の「0」「1」または「2」を示す波形650とが示されている。尚、タイムチャート600の第1のレートにおける、ブランク期間、送信期間、および受信期間は、タイムチャート900の第1のレートと同様のため、説明を省略する。また、波形610、波形620、および波形630は、タイムチャート400の波形410、波形420、および波形430と同様である。以下では、メモリ選択信号(mem_sel)および出力選択信号(out_sel)に関して説明する。
【0092】
メモリ選択信号(mem_sel)は、ブランク期間におけるノイズデータ取得期間(時刻t12から時刻t20まで)において「1」を出力し、それ以外の期間(時刻t10から時刻t12まで、および時刻t20から時刻t40まで)において「0」を出力する。よって、メモリ510は、メモリ選択信号に従い、ノイズデータ取得期間で取得されるノイズデータのみを記憶する。
【0093】
出力選択信号(out_sel)は、受信期間以外の期間(時刻t10から時刻t30まで)において「0」を出力し、時刻t30からノイズデータの時間長(これは、例えば、ノイズデータ取得期間と等しい)に対応する期間が経過した時刻t31までの期間において「2」を出力し、時刻t31から時刻t40までの期間において「1」を出力する。よって、マルチプレクサ530は、出力選択信号に従い、受信期間の内のノイズデータの時間長に対応する期間において処理済みデータを出力し、受信期間の内のその他の期間において未処理データを出力し、受信期間外においてゼロデータを出力する。
【0094】
以上、実施形態における信号処理回路の制御について説明した。次に、実施形態におけるノイズ除去処理を施した受信データについて、図7の模式図を用いて説明する。
【0095】
図7は、実施形態におけるノイズ除去処理を施した受信データを説明するための模式図である。図7には、(a)ノイズデータの波形710と、(b)ノイズを含む受信データの波形720と、(c)ノイズを除去した受信データの波形730とが示されている。
【0096】
具体的には、波形710は、時間長Δtを有する。時間長Δtは、図4および図6などにおける、ノイズデータ取得期間(時刻t12から時刻t20までの期間)である。波形710は、時刻t12において発生したスイッチングノイズのノイズデータを表す。波形720は、時刻t30において発生したスイッチングノイズを含む受信データを表す。波形730は、ノイズデータを用いてノイズを除去した受信データを表す。波形730では、波形720のノイズ部分(Δt=t31-t30)が低減されている様子が示されている。
【0097】
以上概説すると、実施形態のノイズ除去処理では、超音波診断装置は、ラスタ毎に規定される一つのレートにおいて、ノイズの取得および受信データに含まれるノイズの除去を行う。特に、ノイズの取得は、超音波の送受信が行われない期間に行われる。よって、実施形態における超音波診断装置は、ノイズ除去をしない場合と同様のフレームレートで、ノイズ除去を実現できる。
【0098】
以上説明したように、実施形態に係る超音波診断装置は、超音波を送受信していないブランク期間において、超音波の送受信スイッチを送信側から受信側へ切り替え、送受信スイッチの切り替えに起因するスイッチングノイズを含むノイズデータを取得し、ブランク期間に後続する超音波の送受信期間において、ノイズデータを用いて受信データからノイズを除去する。
【0099】
従って、実施形態に係る超音波診断装置は、一つのレート内でノイズの取得およびノイズの除去をするにより、ノイズを低減しつつフレームレートを維持することができる。また、実施形態に係る超音波診断装置は、例えば、レート毎にノイズの取得およびノイズの除去をしている場合、一つのノイズデータを複数のレート(例えば、1フレームの超音波画像を生成するのに必要なレート)のノイズ除去で使い回した場合と比べて固定ノイズの累積を低減することができる。
【0100】
(実施形態の応用例)
実施形態に係る超音波診断装置は、所定の時間長を有するブランク期間を設定していた。他方、実施形態の応用例に係る超音波診断装置は、ブランク期間を変更してもよい。具体的には、実施形態の応用例に係る超音波診断装置は、実施形態に係る超音波診断装置で設定される通常のブランク期間よりも、長いブランク期間を設定する。
【0101】
第1の実施形態の応用例では、処理回路180は、検査部位およびノイズデータの状態の少なくとも一方に応じてブランク期間を変更する。例えば、処理回路180は、検査部位に対応付けられたブランク期間を読み出し、読み出したブランク期間を設定してよい。また例えば、処理回路180は、ノイズデータの時間長に応じてブランク期間を設定してよい。ノイズデータの大部分をスイッチングノイズが占めているものと仮定する場合、処理回路180は、スイッチングノイズが観測される時間長に合わせてブランク期間を設定してよい。尚、処理回路180は、検査モードに応じてブランク期間を設定してもよい。
【0102】
図8は、実施形態の応用例におけるノイズ除去処理を説明するタイムチャートである。図8のタイムチャート800には、第1のレートの各時間について、送受信スイッチ(TRスイッチ)の位置を示す波形810と、送信制御のON/OFFを示す波形820と、受信制御のON/OFFを示す波形830とが示されている。図8を概説すると、タイムチャート800には、超音波診断装置が、第1のレートにおいて、ノイズを取得し、受信データに含まれるノイズを除去することを示している。
【0103】
タイムチャート800において、第1のレートは、ブランク期間、送信期間、および受信期間を含む。ブランク期間は、時刻t10から時刻t20’までの期間である。時刻t20’は、例えば、時刻t20よりも後の時刻である。よって、図8のブランク期間は、図4などの通常のブランク期間よりも長い。送信期間は、時刻20’から時刻t30’までの期間である。受信期間は、時刻t30’から時刻t40’までの期間である。従って、第1のレートは、時刻t10から時刻40’までの期間である。尚、図8の送信期間および受信期間のそれぞれは、図4の送信期間および受信期間のそれぞれと等しい。
【0104】
ブランク期間において(図8では時刻t12において)、TRスイッチが送信側から受信側へ切り替えられたことを契機として、処理回路180は、送信制御をOFFにしたまま受信制御のみをONに設定し、取得機能186により、ノイズデータの取得を開始する。ノイズデータの取得は、例えば、ブランク期間が終了する時刻t20’まで行われる。よって、実施形態の応用例では、時刻t12から時刻t20’までの期間をノイズデータ取得期間と呼ぶ。
【0105】
図4のタイムチャート400とタイムチャート800との違いは、ノイズデータ取得期間の長さである。タイムチャート400では、時刻t12から時刻t20までの期間をノイズデータ取得期間としていた。一方、タイムチャート800は、タイムチャート400よりも時間長t20’-t20だけノイズデータ取得期間が長い。延長された時間長は、そのままブランク期間にも対応する。即ち、タイムチャート800は、タイムチャート400よりも延長された時間長だけブランク期間が長い。
【0106】
ノイズデータの時間長は、例えば、ノイズデータ取得期間に対応する。ノイズデータ取得期間が長くなると、時間長の長いノイズデータを取得することができる。ノイズデータの時間長が長くなることにより、受信データにおけるノイズを除去する期間が長くなる。スイッチングノイズに着目すると、ノイズデータの時間長は、超音波画像のノイズを除去する深さに対応する。一方で、スイッチングノイズが超音波画像に影響しうる時間は長くないため、ノイズデータの時間長は、例えば、超音波画像においてノイズを除去したい深さ(例えば、5cm)に応じて決定されてもよい。
【0107】
以上説明したように、実施形態の応用例に係る超音波診断装置は、超音波を送受信していないブランク期間において、超音波の送受信スイッチを送信側から受信側へ切り替え、送受信スイッチの切り替えに起因するスイッチングノイズを含むノイズデータを取得し、ブランク期間に後続する超音波の送受信期間において、ノイズデータを用いて受信データからノイズを除去する。また、本超音波診断装置は、検査部位およびノイズデータの状態のいずれか一方に応じてブランク期間を変更してもよい。
【0108】
従って、本応用例に係る超音波診断装置は、ブランク期間を延長することにより、フレームレートが重要でない検査部位、或いは検査モードにおいて、ブランク期間を延長していない場合に比べて、超音波画像の深い領域までノイズを除去することができる。尚、ブランク期間を延長したとしても、延長したブランク期間は、レート期間に対して十分に小さい。よって、本応用例のノイズ除去処理は、従来のノイズ除去処理と比較した場合にフレームレートの低下を抑えることができる。
【0109】
以上説明した少なくとも一つの実施形態によれば、ノイズを低減しつつフレームレートを維持することができる。
【0110】
なお、上記説明において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、或いは、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))などの回路を意味する。プロセッサが例えばCPUである場合、プロセッサは記憶回路に保存されたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。一方、プロセッサが例えばASICである場合、プログラムが記憶回路に保存される代わりに、当該機能がプロセッサの回路内に論理回路として直接組み込まれる。なお、本実施形態の各プロセッサは、プロセッサごとに単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのプロセッサとして構成し、その機能を実現するようにしてもよい。さらに、図における複数の構成要素を1つのプロセッサへ統合してその機能を実現するようにしてもよい。
【0111】
加えて、実施形態に係る各機能は、前記処理を実行するプログラムをワークステーション等のコンピュータにインストールし、これらをメモリ上で展開することによっても実現することができる。このとき、コンピュータに前記手法を実行させることのできるプログラムは、磁気ディスク(ハードディスクなど)、光ディスク(CD-ROM、DVDなど)、半導体メモリなどの記憶媒体に格納して頒布することも可能である。
【0112】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、実施形態同士の組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0113】
1 超音波診断装置
100 装置本体
101 超音波プローブ
102 入力装置
103 出力装置
104 外部装置
110 超音波送信回路
120 超音波受信回路
130 内部記憶回路
140 画像メモリ
150 入力インタフェース
160 出力インタフェース
170 通信インタフェース
180 処理回路
181 Bモード処理機能
182 ドプラ処理機能
183 画像生成機能
184 表示制御機能
185 切替機能
186 取得機能
187 除去機能
188 システム制御機能
200 超音波送受信回路
210 送受信スイッチ
400,600,800,900 タイムチャート
410,420,430,610,620,630,640,650,710,720,730,810,820,830,910,920,930 波形
500 信号処理回路
510 メモリ
520 減算器
530 マルチプレクサ
beam_in 入力データ
beam_out 出力データ
mem_sel メモリ選択信号
out_sel 出力選択信号
Δt 時間長
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9