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  • 特開-マイクロプラスチック回収システム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024113587
(43)【公開日】2024-08-22
(54)【発明の名称】マイクロプラスチック回収システム
(51)【国際特許分類】
   B01D 21/00 20060101AFI20240815BHJP
   B01D 21/26 20060101ALI20240815BHJP
   B01D 21/30 20060101ALI20240815BHJP
   B01D 36/04 20060101ALI20240815BHJP
   B03B 5/64 20060101ALI20240815BHJP
【FI】
B01D21/00 C
B01D21/26
B01D21/30 F
B01D36/04
B03B5/64
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023018680
(22)【出願日】2023-02-09
(71)【出願人】
【識別番号】000175272
【氏名又は名称】三浦工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000205535
【氏名又は名称】株式会社 商船三井
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(72)【発明者】
【氏名】井手 貴仁
(72)【発明者】
【氏名】福田 航平
(72)【発明者】
【氏名】松木 繁昌
(72)【発明者】
【氏名】真鍋 敦行
(72)【発明者】
【氏名】山田 将之
【テーマコード(参考)】
4D071
4D116
【Fターム(参考)】
4D071AA62
4D071AB52
4D071CA03
4D071CA05
4D071DA15
4D116AA07
4D116AA08
4D116BB01
4D116BC28
4D116KK06
4D116QA14B
4D116QA14D
4D116QA14E
4D116QA35C
4D116QA35D
4D116QA35G
4D116QA51C
4D116QA51D
4D116QA51G
4D116QA52C
4D116QA52D
4D116QA52G
4D116QA53C
4D116QA53D
4D116QA53G
4D116QC02B
4D116QC04A
4D116QC04B
4D116QC23A
4D116RR01
4D116RR05
4D116TT05
4D116TT06
4D116VV07
4D116VV10
4D116VV30
(57)【要約】
【課題】環境水からマイクロプラスチックを選択的に回収できるマイクロプラスチック回収システムを提供すること。
【解決手段】本発明の一態様に係るマイクロプラスチック回収システム1は、環境水からマイクロプラスチックを回収するマイクロプラスチック回収システムであって、環境水の上昇流を形成し、環境水から浮遊固形物の重質画分を沈降分離する沈降分離器20と、前記沈降分離器20により浮遊固形物の重質画分を除去した環境水をろ過するろ過器30と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
環境水からマイクロプラスチックを回収するマイクロプラスチック回収システムであって、
環境水の上昇流を形成し、環境水から浮遊固形物の重質画分を沈降分離する沈降分離器と、
前記沈降分離器により浮遊固形物の重質画分を除去した環境水をろ過するろ過器と、
を備える、マイクロプラスチック回収システム。
【請求項2】
前記沈降分離器における環境水の入口流速は、0.5m/s以上、1.5m/s以下である請求項1に記載のマイクロプラスチック回収システム。
【請求項3】
前記沈降分離器は、螺旋状の環境水の上昇流を形成する、請求項1または2に記載のマイクロプラスチック回収システム。
【請求項4】
前記沈降分離器の上流側に、環境水を、浮遊固形物の濃度を低下させた環境水と浮遊固形物の濃度を上昇させた環境水とに分離する一次分離器をさらに備え、
前記沈降分離器には、前記一次分離器から流出する浮遊固形物の濃度を上昇させた環境水が導入される、請求項1または2に記載のマイクロプラスチック回収システム。
【請求項5】
前記沈降分離器の環境水の入口よりも下方から浮遊固形物の重質画分を排出する排出ラインを備える、請求項1または2に記載のマイクロプラスチック回収システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロプラスチック回収システムに関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチックは海洋ごみのかなりの部分を占め、ますます大きな脅威となりつつある。特にマイクロプラスチック等を含む浮遊汚染物質による海洋の汚染に対処することは、喫緊の課題となっている。一般に、船舶では、冷却用水およびバラスト水として大量の環境水が取水され排水されるものの、環境水に含まれる浮遊汚染物質を効果的に回収し、処理することは行われていない。
【0003】
そこで、船舶に取り入れた環境水をフィルターでろ過し、マイクロプラスチックなどの浮遊汚染物質を回収することが提案されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-67738号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
環境水には、マイクロプラスチック以外にも例えば砂、木材や海藻の破片など自然環境由来の浮遊固形物も含まれている。このような自然由来の浮遊固形物をマイクロプラスチックと共に分離・回収すると、回収される物質量が増加し、処理コストが増大する。このため、本発明は、船舶等に広く適用でき、環境水からマイクロプラスチックを選択的に回収できるマイクロプラスチック回収システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係るマイクロプラスチック回収システムは、環境水からマイクロプラスチックを回収するマイクロプラスチック回収システムであって、環境水の上昇流を形成し、環境水から重質の浮遊固形物を沈降分離する沈降分離器と、前記沈降分離器により重質の浮遊固形物を除去した環境水をろ過するろ過器とを備える。
【0007】
上述のマイクロプラスチック回収システムにおいて、前記沈降分離器における環境水の入口流速は、0.5m/s以上、1.5m/s以下であってもよい。
【0008】
上述のマイクロプラスチック回収システムにおいて、前記沈降分離器は、螺旋状の環境水の上昇流を形成してもよい。
【0009】
上述のマイクロプラスチック回収システムは、前記沈降分離器の上流側に、環境水を、浮遊固形物の濃度を低下させた環境水と浮遊固形物の濃度を上昇させた環境水とに分離する一次分離器をさらに備え、前記沈降分離器には、前記一次分離器から流出する浮遊固形物の濃度を上昇させた環境水が導入されてもよい。
【0010】
上述のマイクロプラスチック回収システムにおいて、前記沈降分離器の環境水の入口よりも下方から浮遊固形物の重質画分を排出してもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、船舶等に広く適用でき、環境水からマイクロプラスチックを選択的に回収できるマイクロプラスチック回収システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の第1実施形態に係るマイクロプラスチック回収システムの構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るマイクロプラスチック回収システム1の構成を示す模式図である。
【0014】
マイクロプラスチック回収システム1は、環境水(海水、河川水、湖沼水等)からマイクロプラスチックを除去して回収するマイクロプラスチック回収システムである。マイクロプラスチック回収システム1は、環境水を取り込んで、例えばバラストタンク、冷却装置等の需要設備に導入する経路に設けられてもよく、需要設備から使用済みの環境水を環境に放出する経路に設けられてもよい。
【0015】
マイクロプラスチック回収システム1は、環境水(原水)を、浮遊固形物の濃度を低下させた環境水(低濃度水)と浮遊固形物の濃度を上昇させた環境水(高濃度水)とに分離する一次分離器10と、環境水(高濃度水)の上昇流を形成し、環境水から浮遊固形物の重質画分(沈降速度が大きい浮遊固形物)を沈降分離し、浮遊固形物の軽質画分を含む中間処理水を流出させる沈降分離器20と、沈降分離器20により浮遊固形物の重質画分を除去した環境水(中間処理水)をろ過するろ過器30とを備える。
【0016】
これらの構成要素を機能させるために、マイクロプラスチック回収システム1は、環境水を一次分離器10に供給する一次供給ライン40と、一次分離器10から流出する高濃度水を沈降分離器20に導入する二次供給ライン50と、一次分離器10から流出する低濃度水を系外に導出する主排出ライン60と、沈降分離器20を通過した中間処理水をろ過器30に導入する中間ライン70と、ろ過器30を通過したろ過水を導出するろ過水ライン80と、沈降分離器20の下部から重質画分を系外に排出するスラッジ排出ライン90と、二次供給ライン50から高濃度水を主排出ライン60またはろ過水ライン80に流出させるバイパスライン100と、を備える。
【0017】
一次分離器10は、例えば流路構成により旋回流を形成して被処理水に遠心力を作用させるサイクロン分離器、モータの回転により被処理水に遠心力を作用させる連続遠心分離機、分離膜を用いて低濃度水と高濃度水とに分離する分離装置等が用いられ得る。図1において、一次分離器10は、サイクロン分離器が企図されている。
【0018】
沈降分離器20は、マイクロプラスチックの沈降速度よりも高速な上昇流を形成し、例えば砂等のマイクロプラスチックよりも沈降速度が大きい浮遊固形物の重質画分を沈降させ、沈降速度が低い浮遊固形物の軽質画分を流出させる。つまり、沈降分離器20は、一次分離器10から流出する高濃度水から重質画分を除去し、ここで、浮遊固形物は比重、形状、大きさにより水流から受ける影響が異なる。例えば、同じ比重であっても板状固体は塊状固体より水流の影響を強く受け、水流に同伴されやすい。上昇流による沈降分離器20は、マイクロプラスチックが上昇流に同伴されやすいことで単なる比重分離或いは単なる沈降分離に比べてマイクロプラスチックと土壌粒子等とを効果的に分離することができる。
【0019】
沈降分離器20は、螺旋状の環境水の上昇流を形成することが好ましい。円周方向の流れを形成することで、直線的な上昇流の場合に存在する壁面付近での粒子の脱落を抑制できる。これにより、環境水の滞留時間のバラツキを抑制し、浮遊固形物の分離効果を高めることができる。沈降分離器20における環境水の入口流速としては、0.5m/s以上、1.5m/s以下が好ましい。例として、沈降分離器20の入口部を呼び径25A、沈降分離器20の本体を呼び径100Aのパイプで形成する場合、上向き成分の流速は、0.042m/sから0.085m/sの間となる。このような旋回成分を含む上昇流を形成することによって、重力に加えて水流によって浮遊固形物を分離する効果が得られる。
【0020】
ろ過器30は、中間処理水中の浮遊固形物を捕集する。ろ過器30としては、例えばバケット型の濾材を有するストレーナ、カートリッジフィルター等、捕集した浮遊固形物を容易に回収できるような構成を有することが好ましい。マイクロプラスチック回収システム1は、運転を継続しながらろ過器30のろ材の交換を行うことができるよう、並列に配設される複数のろ過器30を備えてもよい。また、フィルターを逆洗するタイプのろ過器と、その逆洗水から浮遊固形物をろ過するカートリッジフィルターとを組み合わせてもよい。ろ過器30またはその前後の流路はろ過器30の閉塞を検出するために差圧計31を有する。ろ過器30の閉塞の検出は、バイパスライン100の使用の必要性を判定に用いられてもよい。
【0021】
一次供給ライン40は、一次分離器10に環境水を供給する。一次供給ライン40には、必要に応じて、例えば不図示のポンプ、流量計、圧力計、バルブ等の機器が設けられてもよい。
【0022】
二次供給ライン50は、一次分離器10から流出する高濃度水を沈降分離器20に導入するよう構成される。二次供給ライン50は、一次分離器10からの高濃度水の流出量を遮断する遮断弁51を有する構成とされ得る。
【0023】
主排出ライン60は、一次分離器10から流出する低濃度水を導出する。サイクロン分離器からなる一次分離器10は、閉塞することがなく、常時、主排出ライン60に浮遊固形物の濃度を低下させた環境水を流出させられる。
【0024】
中間ライン70は、沈降分離器20で高濃度水から浮遊固形物の重質画分が除去され、浮遊固形物中のマイクロプラスチックの比率を高めた中間処理水をろ過器30に導入する。中間ライン70は、ろ過器30のメンテナンスのために流路を遮断する遮断弁71を有することが好ましい。
【0025】
ろ過水ライン80は、本実施形態では、ろ過器30において浮遊固形物が除去されたろ過水を主排出ライン60に導入するが、ろ過水を別途系外に排出してもよい。例として、ろ過水ライン80は加圧ポンプ(図示せず)を備え、ろ過水を主排出ライン60に導入するよう構成されてもよい。また、主排出ライン60は環境水を需要設備に供給し、ろ過水ライン80は、ろ過水を系外に排出するよう構成されてもよい。二次供給ライン50は、ろ過器30からのろ過水の流出量、ひいては一次分離器10からの高濃度水の流出量および沈降分離器20からの中間処理水の流出量を調整する調整弁81を有することが好ましい。
【0026】
スラッジ排出ライン90は、沈降分離器20の環境水の入口よりも下方から、沈降した浮遊固形物の重質画分を少量の排水と共に排出する。スラッジ排出ライン90は、浮遊固形物を含む環境水の排出量を調整するために調整弁91を有してもよい。スラッジ排出ライン90は、間欠的に浮遊固形物の重質画分を排出してもよく、沈降分離器20から中間ライン70に排出される環境水の流量に対して十分に小さい流量で連続的に重質画分を含む排水を排出してもよい。スラッジ排出ライン90から排出される重質画分は、産業廃棄物として処理されてもよいが、砂等を主体とすると考えられるため環境に放出してもよい。スラッジ排出ライン90により、沈降分離器20の底部から浮遊固形物の重質画分を排出することで、沈降分離器20の分離能力の低下を防止できる。
【0027】
バイパスライン100は、ろ過器30の閉塞時や、ろ過器30から浮遊固形物を回収する作業を行う間、一次分離器10から流出する高濃度水を二次供給ライン50からろ過水ライン80に直接流出させる。図示する実施形態において、バイパスライン100は、差圧計31が所定の圧力を検出したときに開放される自動弁101を有する。これにより、ろ過器30の閉塞を自動的に検知し、フィルター交換等の必要な作業を行うことができる。なお、一次分離器10を通さずに一次供給ライン40から主排出ライン60に環境水を直接流入させることもできるが、二次供給ライン50にバイパスライン100を設けることで、比較的小径の配管によりバイパスライン100を構成できる。
【0028】
マイクロプラスチック回収システム1では、沈降分離器20により砂等の浮遊固形物の重質画分を沈降分離してからろ過器30によりろ過することで、ろ過器30において回収される浮遊固形物におけるマイクロプラスチックの割合を高めることができる。これにより、ろ過器30の負荷を軽減し閉塞を抑制できるので、環境水からマイクロプラスチックを効率的に回収できる。
【0029】
さらに、マイクロプラスチック回収システム1は、沈降分離器の上流側に一次分離器10をそなえるため、一次分離器10において環境水をマイクロプラスチックの含有量が小さい低濃度水とマイクロプラスチックの含有量が大きい高濃度水とに分離する一次処理を行うことができる。これにより、マイクロプラスチックの含有量が大きい高濃度水は環境水と比べて大幅に減容(例えば環境水量の5%以下)されるので、環境水の処理量に比して沈降分離器20を小型化することができ、システム全体のコストを低減できる。また、沈降分離器、ろ過器、或いはそれらを連結する配管で閉塞等が発生した場合でも、環境水への影響を抑制できる。
【0030】
以上、本発明の各実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、種々の変更および変形が可能である。例として、マイクロプラスチック回収システム1は、一次分離器、一次供給ラインおよび主排出ラインを備えていなくてもよい。また、マイクロプラスチック回収システム1において、バイパスラインも手動で切り替えるなど任意の構成である。
【符号の説明】
【0031】
1 マイクロプラスチック回収システム
10 一次分離器
20 沈降分離器
30 ろ過器
31 差圧計
40 一次供給ライン
50 二次供給ライン
51 遮断弁
60 主排出ライン
70 中間ライン
71 遮断弁
80 ろ過水ライン
81 調整弁
90 スラッジ排出ライン
91 調整弁
100 バイパスライン
101 自動弁
図1