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特開2024-113594平板状食品の衝撃耐性を評価する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024113594
(43)【公開日】2024-08-22
(54)【発明の名称】平板状食品の衝撃耐性を評価する方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 3/00 20060101AFI20240815BHJP
   G01N 33/02 20060101ALI20240815BHJP
   A23G 4/02 20060101ALN20240815BHJP
【FI】
G01N3/00 K
G01N33/02
A23G4/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023018704
(22)【出願日】2023-02-09
(71)【出願人】
【識別番号】307013857
【氏名又は名称】株式会社ロッテ
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100136799
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 亜希
(74)【代理人】
【識別番号】100128668
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 正巳
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 大輔
(72)【発明者】
【氏名】杉本 沙紀
(72)【発明者】
【氏名】浦部 達弘
(72)【発明者】
【氏名】三好 良幣
(72)【発明者】
【氏名】水谷 隼人
(72)【発明者】
【氏名】新谷 哲平
【テーマコード(参考)】
2G061
4B014
【Fターム(参考)】
2G061AA02
2G061AB04
2G061BA19
2G061CA09
2G061CB01
2G061EA01
2G061EA02
4B014GB13
4B014GE01
4B014GK03
4B014GK05
4B014GP02
4B014GP27
4B014GQ01
4B014GQ07
4B014GQ10
(57)【要約】
【課題】粘弾性測定装置により板ガム等の平板状食品の損失正接を測定し、当該平板状食品の衝撃に対する耐性を評価する方法の提供に向けたものである。
【解決手段】平板状食品の衝撃耐性を評価する方法であって、前記食品の損失正接(tanδ)を指標とする評価方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平板状食品の衝撃耐性を評価する方法であって、前記食品の損失正接(tanδ)を指標とする評価方法。
【請求項2】
前記平板状食品の厚さが0.1mm以上10mm以下である請求項1に記載の評価方法。
【請求項3】
評価対象の平板状食品の損失正接(tanδ)をtanδ(対象)とし、基準とする平板状食品の損失正接(tanδ)をtanδ(基準)とし、
衝撃耐性指数=tanδ(対象)/tanδ(基準)
に基づいて、前記評価対象の平板状食品の衝撃耐性を評価する評価方法。
【請求項4】
板ガムの衝撃耐性を評価する方法であって、前記板ガムの損失正接(tanδ)を指標とする評価方法。
【請求項5】
評価対象の板ガムの損失正接(tanδ)をtanδ(対象板ガム)とし、基準とする板ガムの損失正接(tanδ)をtanδ(基準板ガム)とし、
これらの関数として、F2(tanδ(対象板ガム)、tanδ(基準板ガム))を定め、
前記F2(tanδ(対象板ガム)、tanδ(基準板ガム))により求めた衝撃耐性指数に基づいて、
前記評価対象の板ガムの衝撃耐性を評価する評価方法。
【請求項6】
前記関数が、下記式(1)~(3)のいずれか1つである、請求項5に記載の評価方法。
F2(tanδ(対象板ガム)、tanδ(基準板ガム))=|tanδ(対象板ガム)-tanδ(基準板ガム)| 式(1)
F2(tanδ(対象板ガム)、tanδ(基準板ガム))=tanδ(対象板ガム)/tanδ(基準板ガム) 式(2)
F2(tanδ(対象板ガム)、tanδ(基準板ガム))=tanδ(基準板ガム)/tanδ(対象板ガム) 式(3)
【請求項7】
前記関数が
F2(tanδ(対象板ガム)、tanδ(基準板ガム))=tanδ(対象板ガム)/tanδ(基準板ガム) 式(2)
であり、
前記評価対象の板ガム及び前記基準とする板ガムが砂糖系ガムであり、
前記衝撃耐性指数が0.80以上1.60以下であれば、前記衝撃耐性があるとする、請求項6に記載の衝撃耐性を評価する評価方法。
【請求項8】
前記関数が
F2(tanδ(対象板ガム)、tanδ(基準板ガム))=tanδ(対象板ガム)/tanδ(基準板ガム) 式(2)
であり、
前記評価対象の板ガム及び前記基準とする板ガムが非砂糖系ガムであり、
前記衝撃耐性指数が1.00以上1.30以下であれば、前記衝撃耐性があるとする、請求項6に記載の衝撃耐性を評価する評価方法。
【請求項9】
前記衝撃耐性が割れにくさである請求項1から8のいずれか1項に記載の評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平板状食品の衝撃耐性を評価する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
工場で大量生産される食品は、多くの場合、包装された状態で出荷され、様々な流通段階を経て、スーパーマーケット等の小売店で販売される。このような食品は、製造、包装、積載、輸送、販売等、複数の工程を経て、消費者の手に渡る。これらの工程において、破損が生じることがある。特にビスケット、クラッカー、板チョコ、板ガムといった平板状の食品は、ひびが入る、割れる、変形する、といった破損を生じやすい。破損をなるべく防ぐため、対象となる食品が、想定される衝撃に対し、十分な耐性を有するか評価することは重要である。
【0003】
特許文献1に記載の通り、従来、食品にどの程度割れが生じるかは、破断強度等の物性値や落下試験の結果によって評価されてきた。
【0004】
一方、食品によっては、従来の試験の結果と破損しやすさの相関性はあまり高くない。例えば、平板状食品においては、物性値や落下試験等では衝撃耐性が同等と評価される試料間においても、例えば、包装工程において割れが生じる割合に差がある場合があった。
板ガムにおいて、エステルガム、ワックス、油脂の配合量が割れやすさに影響を与えることが知られる。しかし、エステルガム、ワックス、油脂以外の成分も衝撃耐性には影響を与えているため、これらの配合量のみから、衝撃耐性を評価することはできない。また、特許文献2は、チューインガム組成物の硬さを増加させるために固結防止剤を使用することを開示し、固結防止剤として微小粉化シリカを示す。しかし、板ガムは、組成や製造方法によって、その衝撃耐性は異なるため、固結防止剤の添加量だけで、衝撃耐性を評価することはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2022-068103号公報
【特許文献2】特表2016-530885号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、平板状食品の衝撃耐性を評価する方法の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
平板状食品の衝撃耐性を評価する方法であって、前記食品の損失正接(tanδ)を指標とする評価方法を提供する。
【発明の効果】
【0008】
平板状食品について、簡易で、信頼性の高い評価方法が提供される。また、本発明の方法によれば、少ない試料数で評価ができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、好適な実施の形態を挙げて、本発明を詳細に説明する。
本発明の一実施形態によれば、平板状食品の衝撃耐性を評価する方法であって、前記食品の損失正接(tanδ)を指標とする評価方法が提供される。
【0010】
本発明の一実施形態によれば、評価対象の平板状食品の損失正接(tanδ)をtanδ(対象)とし、基準とする平板状食品の損失正接(tanδ)をtanδ(基準)とし、
衝撃耐性指数=tanδ(対象)/tanδ(基準)
に基づいて、前記評価対象の平板状食品の衝撃耐性を評価する評価方法が提供される。
本発明の一実施形態によれば、板ガムの衝撃耐性を評価する方法であって、前記板ガムの損失正接(tanδ)を指標とする評価方法が提供される。
本発明の一実施形態によれば、評価対象の板ガムの損失正接(tanδ)をtanδ(対象板ガム)とし、基準とする板ガムの損失正接(tanδ)をtanδ(基準板ガム)とし、
これらの関数として、F2(tanδ(対象)、tanδ(基準))を定め、
前記F2(tanδ(対象)、tanδ(基準))により求めた衝撃耐性指数に基づいて、前記評価対象の板ガムの衝撃耐性を評価する評価方法が提供される。
【0011】
製品の破損は、包装、積載、輸送、販売等、様々な工程において生じる。平板状食品は個包装されることがあるが、特にその包装工程においては、食品に負荷がかかることがあり、ここで生じる割れは問題となる。特に板ガムは、板ガムの包装機の工程では、ガムを1枚の大きさに切り個包装されるが、高速作業の為に板ガムに負荷がかかる工程があり、割れが生じることがある。
【0012】
本発明者らは、鋭意研究の結果、平板状食品の割れにくさを推定するための衝撃耐性の評価方法として、以下の方法を利用できることを見出した。具体的には、粘弾性測定装置により平板状食品の損失正接を測定し、衝撃に対する耐性を評価する方法である。さらに、評価対象の損失正接と基準とする食品の損失正接の比率を算出することにより、衝撃に対する耐性を評価することができる。この方法によれば、少数のサンプルから、試験結果と割れにくさの高い相関性のあるデータが得られる。これにより、平板状食品のような割れにくさが課題となりやすい食品について、割れにくさ、すなわち衝撃耐性を推定することができる。特に、板ガムの割れにくさ、すなわち衝撃耐性を評価できる。
【0013】
<平板状食品>
本実施形態において評価される平板状食品は、平らな板のような形状の食品のことである。平板状食品の例としては、板ガム、板チョコ、及びクッキーが挙げられる。
【0014】
平板状食品の厚さは、特に限定されないが、0.1mm以上10mm以下が好ましく、さらには1mm以上5mm以下が好ましい。評価対象である平板状食品の厚さが0.1mm以上10mm以下であると、本発明の評価方法がより有効に用いられる。また、評価対象である平板状食品の厚さが0.1mm以上10mm以下であると、後述する粘弾性測定装置で測定しやすい。また、平板状食品の面は、凹凸がないか、あっても0.1mm以下であることが好ましい。
平板状食品の形状は特に限定されず、例として、正方形、長方形、三角形、多角形、楕円形、及び円形等が挙げられる。その他、動物やモチーフの形状等でもよく、あらゆる形状を用いることができる。
平板状食品の大きさは、短辺又は短径が20mm以上であることが好ましい。
【0015】
水分の含有量の低い食品については、特に割れ等の破損が生じやすいため、本実施形態に係る評価方法の対象となりやすい。したがって、平板状食品は好ましくは水分含有量が10重量%以下であり、より好ましくは5重量%以下である。
中でも、本実施形態に係る評価方法は、特に、板ガムの衝撃耐性の評価に好ましく用いることができる。
【0016】
<板ガム>
板ガムとは、板状のチューインガムを指す。板ガムは、チューインガム原料からつくられ、チューインガム原料は、ガムベース、甘味料、香料、酸味料、色素、その他添加物等を含むことができる。
【0017】
チューインガム原料として、ガムベースは必須であり、特に限定されるものではないが、例えば、チューインガム中5重量%~70重量%含有させることができる。ガムベースの原料としては、チクル、ジェルトン等の天然樹脂、ポリ酢酸ビニル、エステルガム、ワックス、天然ゴム、ポリイソブチレン、炭酸カルシウム等、一般的なものを適宜使用できる。
【0018】
チューインガム原料に含有され得る甘味料としては、特に限定されるものではないが、例えば、グルコース、フルクトース等の単糖類、マルトース、ラクトース、スクロース(ショ糖)等の二糖類、オリゴ糖、水飴、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、マルチトール、エリスリトール、還元パラチノース、還元水飴等の糖アルコール、アセスルファムKやアスパルテーム等の高甘味度甘味料、粉末果汁等が挙げられる。
【0019】
チューインガム原料に含有され得る香料としては、特に限定されるものではないが、例えば、ペパーミント油、スペアミント油、オレンジ油、レモン油、グレープフルーツ油、ライム油、ラベンダー油、ジャスミン油、セージ油、ローレル油、カモミール油、バジル油、キヤラウェイ油、カルダモン油、シナモン油、ショウガ油、コリアンダー油、ゼラニウム油、ヒソップ油、オリス油、ダバナ油、エレミ油等の精油類、パプリカオレオレジン、バニラエキストラクト等の香辛料抽出物類、l-メントール、カルボン、オイゲノール、イソオイゲノール、エステル類、イオノン、バニリン、エチルバニリン、マルトール等の合成香料等が挙げられる。
【0020】
チューインガム原料に含有され得る酸味料としては、特に限定されるものではないが、例えば、アジピン酸、イタコン酸、クエン酸、クエン酸一カリウム、クエン酸三カリウム、クエン酸三ナトリウム、グルコノデルタラクトン、グルコン酸、グルコン酸カリウム、グルコン酸ナトリウム、コハク酸、コハク酸一ナトリウム、コハク酸二ナトリウム、酢酸ナトリウム、DL-酒石酸、L-酒石酸、DL-酒石酸ナトリウム、L-酒石酸ナトリウム、乳酸、乳酸ナトリウム、氷酢酸、フィチン酸、フマル酸、フマル酸一ナトリウム、DL-リンゴ酸、DL-リンゴ酸ナトリウム、及びリン酸等が挙げられる。
【0021】
チューインガム原料には、上記した原料以外にも、食塩、酸化防止剤、各種色素、保存料、ビタミン、ミネラル等の添加剤を適宜含有させることができる。
【0022】
また、板ガムは、含有する甘味料の種類によって、砂糖系ガムと非砂糖系ガムに分けられる。砂糖系ガムは砂糖系甘味料を主甘味料とするガムを指し、非砂糖系ガムは非砂糖系甘味料を主甘味料とするガムを指す。具体的には、本実施形態において、砂糖系ガムは、砂糖系甘味料を主甘味料とし、非砂糖系甘味料がガム製品中に0~13重量%程度併用される場合があるガムを指す。非砂糖系ガムは、砂糖をはじめとした糖類を使用していないガムを指す。本実施形態においては、砂糖系甘味料の例としては、ショ糖、ブドウ糖、麦芽糖等が挙げられるが、これらに限定されるものではなく、非砂糖系甘味料の例としては、糖アルコール(キシリトール、マルチトール、還元パラチノース等)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0023】
板ガムは好ましくは長辺の長さが20mm以上100mm以下、短辺の長さが20mm以上100mm以下、厚さが0.1mm以上10mm以下である。多くの場合板ガムは、紙またはアルミシートで内包装され、その上から紙等のラベルを巻き付けられ、さらに、5~12枚を一組として、紙またはアルミシートで外包装されて商品となる。
【0024】
<衝撃耐性>
本実施形態において、衝撃耐性は衝撃に対する耐性をいい、例えば、平板状食品の壊れやすさ、割れにくさをいう。本実施形態において、衝撃耐性は、例えば、包装、積載、輸送の工程における衝撃耐性である。
本明細書中、「衝撃耐性がある」とは、十分に衝撃耐性が高いことを指す。
【0025】
<損失正接(tanδ)>
平板状食品の衝撃耐性を評価する方法として、食品の損失正接(tanδ)を指標とする評価方法を用いることができる。
特に、板ガムの衝撃耐性を評価する方法として、板ガムの損失正接(tanδ)を指標とする評価方法を用いることができる。
本実施形態において、損失正接(tanδ)は、粘弾性測定装置で測定したときに、損失正接(tanδ)として算出される値を用いる。
一般的に損失正接(tanδ)は下記式で求められる。
G”(損失弾性率)/G’(貯蔵弾性率)=tanδ(損失正接)
損失弾性率(G”)は、粘弾性を表す物理量の一つであり、物体に外力とひずみにより生じたエネルギーのうち外部へ拡散する成分である。なお、物体に外力とひずみにより生じたエネルギーのうち物体の内部に保存する成分を貯蔵弾性率(G’)という。G’が大きいほど物質の状態は固体(弾性)であり、逆にG”が大きいほど液体(粘性)である。
【0026】
<評価方法>
本実施形態において、平板状食品の衝撃耐性を当該食品の損失正接(tanδ)を指標として評価することができる。また、板ガムの衝撃耐性を当該板ガムの損失正接(tanδ)を指標として評価することができる。評価の具体例として以下を挙げることができる。
【0027】
1)損失正接(tanδ)をそのまま衝撃耐性の指標とすることができる。その場合、当該損失正接(tanδ)が大きいと、衝撃耐性が高く、当該損失正接(tanδ)が小さいと、衝撃耐性が低いと評価することができる。あるいは、損失正接(tanδ)が大きいと、衝撃耐性が低く、損失正接(tanδ)が小さいと、衝撃耐性が高いと評価することができる。
【0028】
2)損失正接(tanδ)を含む関数F1(tanδ)を使って衝撃耐性を評価することができる。この関数には、tanδ以外のパラメーターを含んでもよい。
F1(tanδ)の値から、衝撃耐性の程度を判断してもよいし、あらかじめ、測定対象の種類や組成等によって、F1(tanδ)の範囲がどの程度であれば、衝撃耐性があるか定めておき、測定対象の衝撃耐性指数から求められるF1(tanδ)がその範囲内にあるかどうかで、衝撃耐性があるかどうか判断ができる。
【0029】
3)基準とする平板状食品の損失正接(tanδ)をさらに用いて、衝撃耐性指数を求め、これに基づいて衝撃耐性を評価することができる。
【0030】
具体例として以下を挙げられる。
基準とする平板状食品として十分な衝撃耐性を有する平板状食品を準備する。評価対象の平板状食品と、基準とする平板状食品について、粘弾性測定装置を用いて、それぞれの損失正接(tanδ)を求める。
基準とする平板状食品は、適宜選択することができ、例えば十分な衝撃耐性を有する平板状食品を選択することができる。好ましくは、基準とする平板状食品は、評価対象の平板状食品と、種類が同じで、組成が同等であることが好ましい。
【0031】
評価対象の平板状食品のtanδをtanδ(対象)とし、基準とする平板状食品のtanδをtanδ(基準)とする。衝撃耐性指数は、これらの関数として、F2(tanδ(対象)、tanδ(基準))のように定められる。この関数には、tanδ(対象)、tanδ(基準)以外のパラメーターを含んでもよい。衝撃耐性指数の値から、衝撃耐性の程度を判断してもよいし、あらかじめ、測定対象の種類や組成等によって、F2(tanδ(対象)、tanδ(基準))の範囲がどの程度であれば、衝撃耐性があるか定めておき、測定対象の衝撃耐性指数から求められる、F2(tanδ(対象)、tanδ(基準))がその範囲内にあるかどうかで、衝撃耐性があるかどうか判断ができる。
【0032】
例えば、F2(tanδ(対象)、tanδ(基準))の例として以下を挙げられる。
F2(tanδ(対象)、tanδ(基準))=|tanδ(対象)-tanδ(基準)| 式(4)
F2(tanδ(対象)、tanδ(基準))=tanδ(対象)/tanδ(基準) 式(5)
F2(tanδ(対象)、tanδ(基準))=tanδ(基準)/tanδ(対象) 式(6)
【0033】
なかでも好ましい例として
F2(tanδ(対象)、tanδ(基準))=tanδ(対象)/tanδ(基準)とすることができ、すなわち、
衝撃耐性指数=tanδ(対象)/tanδ(基準)
とすることができる。例えば求められる衝撃耐性指数が高いと、衝撃耐性が高く、衝撃耐性指数が低いと、衝撃耐性が低いと評価することができる。あるいは、例えば、衝撃耐性指数が0.80以上1.60以上の場合は衝撃耐性があると評価することができる。
【0034】
特に、評価する平板状食品が板ガムの場合、評価対象の板ガムのtanδをtanδ(対象板ガム)とし、基準とする板ガムのtanδをtanδ(基準板ガム)とし、関数F2(tanδ(対象板ガム)、tanδ(基準板ガム))によって衝撃耐性指数を算出し、これに基づいて評価対象の板ガムの衝撃耐性を評価することができる。基準とする板ガムとしては、適宜選択することができ、例えば十分な衝撃耐性を有する板ガムを選択することができる。
【0035】
例えば、F2(tanδ(対象板ガム)、tanδ(基準板ガム))の例として以下を挙げられる。
F2(tanδ(対象板ガム)、tanδ(基準板ガム))=|tanδ(対象板ガム)-tanδ(基準板ガム)| 式(1)
F2(tanδ(対象板ガム)、tanδ(基準板ガム))=tanδ(対象板ガム)/tanδ(基準板ガム) 式(2)
F2(tanδ(対象板ガム)、tanδ(基準板ガム))=tanδ(基準板ガム)/tanδ(対象板ガム) 式(3)
【0036】
なかでも好ましい例として、
F2(tanδ(対象板ガム)、tanδ(基準板ガム))=tanδ(対象板ガム)/tanδ(基準板ガム) 式(2)
とすることができ、すなわち
衝撃耐性指数=tanδ(対象板ガム)/tanδ(基準板ガム)
とすることができる。
【0037】
例えば、当該衝撃耐性指数が高いと、衝撃耐性が高く、当該衝撃耐性指数が低いと、衝撃耐性が低いと評価することができる。
【0038】
あらかじめ、測定対象の種類や組成等によって、衝撃耐性指数の範囲がどの程度であれば、衝撃耐性があるか決めておき、測定対象の衝撃耐性指数がその範囲内にあれば、衝撃耐性があるとすることができる。
板ガムは、砂糖系と非砂糖系で、衝撃耐性の傾向に違いがみられる場合が多い。
特に、関数が
F2(tanδ(対象板ガム)、tanδ(基準板ガム))=tanδ(対象板ガム)/tanδ(基準板ガム) 式(2)
であり、評価対象の板ガム及び基準とする板ガムが砂糖系ガムであり、衝撃耐性指数が0.80以上1.60以下であれば、衝撃耐性があると評価することができる。
また、関数が
F2(tanδ(対象板ガム)、tanδ(基準板ガム))=tanδ(対象板ガム)/tanδ(基準板ガム) 式(2)
であり、評価対象の板ガム及び基準とする板ガムが非砂糖系ガムであり、衝撃耐性指数が1.00以上1.30以下であれば、衝撃耐性があると評価することができる。
【0039】
実施例
以下、本発明を実施例に基づき具体的に説明する。
【0040】
<板ガムの製造>
対象板ガムは以下の様に製造した。すなわち、精製機中で植物性樹脂に熱を加え溶かして精製した。精製した原料に他の原料を加え、ガムベースを製造した。混合機にガムベースを入れ、甘味料、香料等を加えて練り、ガムを生成した。押し出されたガムをローラで板状にのばし、さい断機にて板状になったガムをカットした。その後、冷却室の中で一晩冷やし固めた。冷やし固めたガムを厚さ約1.6mm×約73mm×約20mmの板ガム形状にカットし、試料とした。試料のうち、砂糖系板ガムを砂糖系対象板ガム1~9とし、非砂糖系板ガムを非砂糖系対象板ガム1~6とした。上記砂糖系板ガム及び非砂糖系板ガムは、上記製造方法により製造されたが、甘味料等の組成はそれぞれ適宜変更した。加えて、同様に、基準とする板ガムとして砂糖系基準板ガム1及び非砂糖系基準板ガム1を上記方法により製造した。砂糖系基準板ガム1及び非砂糖系基準板ガム1は、包装工程における衝撃耐性が十分にあることを確認した。
【0041】
<損失正接(tanδ)の測定方法>
上記砂糖系対象板ガム1~9、非砂糖系対象板ガム1~6、砂糖系基準板ガム1及び非砂糖系基準板ガム1を製造した後、一日経過後に、上記対象板ガム及び基準板ガムについて粘弾性測定装置MCR102(アントンパール社製)を用いて下記の条件で損失正接(tanδ)の測定を行った。測定の際、それぞれの板ガムの一部を粘弾性測定装置のプレートに収まるよう、直径12mmに丸く型でくり抜いた。
・上部プレート:φ12mmパラレル
・サンプル厚さ:1.6mm
・歪み:0.001%
・角周波数:f=100Hz(0.01-100Hzの周波数分散)
・温度条件:20℃
【0042】
角周波数は板ガムを治具に噛み合わせるため、0.01Hzから徐々に数値を上げた。測定結果はf=100Hzの時の損失正接(tanδ)を用いた。
【0043】
<衝撃耐性指数の算出方法>
評価する対象板ガムのtanδをtanδ(対象板ガム)とし、基準板ガムのtanδをtanδ(基準板ガム)とし、下記式によって衝撃耐性指数を算出した。このとき、対象板ガムが砂糖系対象板ガムであるときは砂糖系基準板ガム1を使用し、対象板ガムが非砂糖系対象板ガムであるときは非砂糖系基準板ガム1を使用した。
衝撃耐性指数=tanδ(対象板ガム)/tanδ(基準板ガム)
【0044】
<衝撃耐性評価>
砂糖系ガム1~9及び非砂糖系ガム1~6の割れにくさを下記基準に従って評価した。ここでは、衝撃は、包装工程において受ける衝撃とした。
A:衝撃に対して特に強い(特に割れにくい)
B:衝撃に対して強い(割れにくい)
C:衝撃に対して弱い(割れやすい)
【0045】
砂糖系ガム1~9及び非砂糖系ガム1~6の衝撃耐性指数及び衝撃耐性評価のデータを表1に示す。
【0046】
【表1】
【0047】
本発明の実施形態は以下を含む。
(1)平板状食品の衝撃耐性を評価する方法であって、前記食品の損失正接(tanδ)を指標とする評価方法。
(2)前記平板状食品の厚さが0.1mm以上10mm以下である請求項1に記載の評価方法。
(3)評価対象の平板状食品の損失正接(tanδ)をtanδ(対象)とし、基準とする平板状食品の損失正接(tanδ)をtanδ(基準)とし、
衝撃耐性指数=tanδ(対象)/tanδ(基準)
に基づいて、前記評価対象の平板状食品の衝撃耐性を評価する評価方法。
(4)板ガムの衝撃耐性を評価する方法であって、前記板ガムの損失正接(tanδ)を指標とする評価方法。
(5)評価対象の板ガムの損失正接(tanδ)をtanδ(対象板ガム)とし、基準とする板ガムの損失正接(tanδ)をtanδ(基準板ガム)とし、
これらの関数として、F2(tanδ(対象板ガム)、tanδ(基準板ガム))を定め、
前記F2(tanδ(対象板ガム)、tanδ(基準板ガム))により求めた衝撃耐性指数に基づいて前記評価対象の板ガムの衝撃耐性を評価する評価方法。
(6)前記関数が、下記式(1)~(3)のいずれか1つである、(5)に記載の評価方法。
F2(tanδ(対象板ガム)、tanδ(基準板ガム))=|tanδ(対象板ガム)-tanδ(基準板ガム)| 式(1)
F2(tanδ(対象板ガム)、tanδ(基準板ガム))=tanδ(対象板ガム)/tanδ(基準板ガム) 式(2)
F2(tanδ(対象板ガム)、tanδ(基準板ガム))=tanδ(基準板ガム)/tanδ(対象板ガム) 式(3)
(7)前記関数が
F2(tanδ(対象板ガム)、tanδ(基準板ガム))=tanδ(対象板ガム)/tanδ(基準板ガム) 式(2)
であり、
前記評価対象の板ガム及び前記基準とする板ガムが砂糖系ガムであり、
前記衝撃耐性指数が0.80以上1.60以下であれば、前記衝撃耐性があるとする、(6)に記載の衝撃耐性を評価する評価方法。
(8)前記関数が
F2(tanδ(対象板ガム)、tanδ(基準板ガム))=tanδ(対象板ガム)/tanδ(基準板ガム) 式(2)
であり、
前記評価対象の板ガム及び前記基準とする板ガムが非砂糖系ガムであり、
前記衝撃耐性指数が1.00以上1.30以下であれば、前記衝撃耐性があるとする、(6)に記載の衝撃耐性を評価する評価方法。
(9)前記衝撃耐性が割れにくさである(1)から(8)のいずれかに記載の評価方法。