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特開2024-113599培地の性能評価方法および微生物特定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024113599
(43)【公開日】2024-08-22
(54)【発明の名称】培地の性能評価方法および微生物特定方法
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/06 20060101AFI20240815BHJP
   C12Q 1/04 20060101ALI20240815BHJP
【FI】
C12Q1/06
C12Q1/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023018710
(22)【出願日】2023-02-09
(71)【出願人】
【識別番号】501354912
【氏名又は名称】マイクロバイオ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095359
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 篤
(72)【発明者】
【氏名】小川 廣幸
【テーマコード(参考)】
4B063
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QA18
4B063QA20
4B063QQ05
4B063QR66
4B063QR69
4B063QR74
4B063QS36
4B063QS39
4B063QX01
(57)【要約】
【課題】評価する培地を選ばず、直接的に培地を評価可能な培地の性能評価方法および微生物特定方法を提供する。
【解決手段】微生物を培地で培養し、培地を透過した光が微生物によるコロニーに当たって形成される影像を計数することにより、所定時間ごとに微生物によるコロニー数を計数し、計数したコロニー数の増加傾向に基づき培地の性能を評価する。計数したコロニー数を経時グラフ化して表示する。微生物を培地で培養し、培地を透過した光が微生物によるコロニーに当たって形成される影像を影像の濃度勾配に基づき立体形状で表示し、立体形状に基づきコロニーの微生物の種類を特定する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
微生物を培地で培養し、所定時間ごとに前記微生物によるコロニー数を計数し、計数したコロニー数の増加傾向に基づき前記培地の性能を評価することを特徴とする培地の性能評価方法。
【請求項2】
計数した前記コロニー数を経時グラフ化して表示することを特徴とする請求項1記載の培地の性能評価方法。
【請求項3】
前記培地を透過した光が前記微生物によるコロニーに当たって形成される影像を計数することにより前記コロニー数を計数することを特徴とする請求項2記載の培地の性能評価方法。
【請求項4】
微生物を培地で培養し、前記培地を透過した光が前記微生物によるコロニーに当たって形成される影像を前記影像の濃度勾配に基づき立体形状で表示し、前記立体形状に基づき前記コロニーの微生物の種類を特定することを特徴とする微生物特定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、培地の性能評価方法および微生物特定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
寒天培地の性能は、対象となる微生物細胞が成長してコロニーを形成する状態から判断される。したがって、性能を定量的に評価するためには、培地に蒔いた試験菌の各細胞の成長過程を計測することが基本となる。その方法論は大きく2通りある。第一は、多数の細胞をランダムに蒔いて、個々の成長過程を合算して統計的に評価する方法である。プレート内の培地を一つの均質な媒体と考える方法で、培地成分評価、あるいは逆に複数の試験菌が共存する場合に、それを識別する場合などに適した方法である。第二は、比較的少数の細胞を、一定の間隔で蒔いて、個々の成長過程の単一コロニーレベルで比較する方法で、プレート内の培地成分が必ずしも均質ではないことを想定した評価に適した方法である。プレート内の培地の均質性は、少数生菌の検出に使用する培地では極めて重要となる。いずれの方法でも、個々の細胞の成長過程を同時計測する装置が必要となる。
【0003】
例えば、従来の培地の性能評価方法として、バイオセンサを用い、被検試料液を2つの反応試薬層に供給して被検試料液と酵素を電子受容体の存在下で反応させる工程、および酵素反応に伴って還元された電子受容体を電気化学的に測定する工程を含み、被検試料液中のグルコースおよび乳酸をそれぞれ定量することにより、培養の進行に伴って、グルコースを飼料とし、乳酸が生産される培地を評価する方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11-344460号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の方法では、評価できる培地がグルコースを飼料とし、乳酸が生産される培地に限定されているという課題があった。また、特許文献1に記載の方法は、グルコースおよび乳酸の濃度から間接的に培地を評価する方法であって、微生物の生育にとって適した培地かどうかを直接的に評価する方法ではなかった。
【0006】
本発明は、このような課題に着目してなされたもので、評価する培地を選ばず、直接的に培地を評価可能な培地の性能評価方法および微生物特定方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係る培地の性能評価方法は、微生物を培地で培養し、所定時間ごとに前記微生物によるコロニー数を計数し、計数したコロニー数の増加傾向に基づき前記培地の性能を評価することを特徴とする。
本発明に係る培地の性能評価方法は、微生物を培地で培養し、計数したコロニー数の増加傾向に基づき培地の性能を評価するので、評価する培地を選ばず、微生物の生育にとって適した培地かどうか直接的に培地を評価することができる。
【0008】
本発明に係る培地の性能評価方法では、計数した前記コロニー数を経時グラフ化して表示することが好ましい。
この場合、グラフから培地の性能を視覚的かつ直感的に把握することができる。
本発明に係る培地の性能評価方法では、前記培地を透過した光が前記微生物によるコロニーに当たって形成される影像を計数することにより前記コロニー数を計数することが好ましい。
この場合、培地の表面だけでなく、内部のコロニーによる影像も計数することができるので、培地の性能をより正確に評価することができる。
本発明において、培地は寒天培地であることが好ましい。
【0009】
本発明に係る微生物特定方法は、微生物を培地で培養し、前記培地を透過した光が前記微生物によるコロニーに当たって形成される影像を前記影像の濃度勾配に基づき立体形状で表示し、前記立体形状に基づき前記コロニーの微生物の種類を特定することを特徴とする。
本発明に係る微生物特定方法では、微生物が種類ごとに特定の立体形状のコロニーを形成することから、コロニーによる影像をその濃度勾配に基づき立体形状で表示し、その立体形状に基づき微生物の種類を特定することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、評価する培地を選ばず、直接的に培地を評価可能な培地の性能評価方法および微生物特定方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施の形態の培地の性能評価方法に用いるコロニー検出カウントグラフとコロニー影像の経時変化とコロニーの三次元影像とを示す説明図である。
図2】本発明の実施の形態の培地の性能評価方法に用いるタイムラプス影像解析の技術要素と処理フロー図である。
図3】本発明の実施の形態の培地の性能評価方法に用いる寒天培地の影像を示す概念図である。
図4】本発明の実施の形態の培地の性能評価方法に用いるタイムラプス計測を示す説明図である。
図5】本発明の実施の形態の培地の性能評価方法に用いるコロニーカウントグラフである。
図6】本発明の実施の形態の微生物特定方法に関するマイクロコロニーと食物残渣の3D影像データを示す図表である。
図7】本発明の実施の形態の培地の性能評価方法による寒天培地評価を示す説明図である。
図8】本発明の実施の形態の培地の性能評価方法に用いるヒストグラムである。
図9】本発明の実施の形態の培地の性能評価方法による寒天培地評価の性能が良い例を示すコロニーカウントグラフとヒストグラムである。
図10】本発明の実施の形態の培地の性能評価方法による寒天培地評価の性能が悪い例を示すコロニーカウントグラフとヒストグラムである。
図11】本発明の実施の形態の培地の性能評価方法による寒天培地の試験成績書を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面に基づき本発明の実施の形態について説明する。
本発明の実施の形態の培地の性能評価方法は、微生物を培地で培養し、所定時間ごとに微生物によるコロニー数を計数し、計数したコロニー数の増加傾向に基づき培地の性能を評価する方法である。
【0013】
培地の性能評価方法では、タイムラプス影像解析(TSIA)を用いる。その解析は、塗抹法または混釈法の寒天培地試料を培養しながら、その過程をミクロのレベルで継続的にタイムラプスモニターし、マイクロコロニーの段階でコロニー検出をし、増殖を確認してからカウントしてコロニーカウントグラフを自動的に作成するものであり、従来の寒天培地培養法(公定法)を、そのまま迅速化・自動化している。
【0014】
タイムラプス影像解析は、マイクロコロニーの検出とその増殖能の確認を確実にするため、直径90mmのシャーレ全域について、視野を確保しながら、複雑な操作なしに混釈法の寒天深度方向すべてに存在するコロニーに同時にピント(焦点)を合わせている。イメージセンサーをX-Y軸の面積を検出するものとして使用するだけでなく、Z軸の濃さ(高さ)を検出するものとして使用できるようにもしている。白色光で試料全体を透過させて影像を取得し、目視検査の培養と全く同じ培養を続けながらタイムラプスモニターを継続し、マイクロコロニーを検出してその増殖(増殖能)をリアルタイムで確認してから検出・計数している。(図1参照)
【0015】
タイムラプス影像解析は、次のような技術要素から構成されている。
技術要素
(a)影像検出(マイクロコロニー影像(3D)の取得)
(b)三次元ピント合わせ(寒天培地の培地上・培地中の全コロニーへの焦点合わせ)
(c)画像解析(マイクロコロニー影像の面積、高さ、体積での解析)
(d)コロニー分離計数アルゴリズム(コロニーが増殖して接触したときの分離計数)
(e)コロニー計数グラフ(コロニーカウントグラフ、ヒストグラムの自動生成)
試料は継続的に培養されるが、ミクロンレベルで出現したコロニーの3D影像が取得されて増殖が確認されるとともに自動的に検出・計数してグラフが生成される。タイムラプス影像解析は、これらの要素技術の組合せで構成される一連の流れ(図2参照)をタイムラプス計測として一定時間間隔で繰り返す。
【0016】
白色光を寒天培地に照射して、培地表面から培地中のコロニーの影をイメージセンサーに投影して影像(2Dカラー影像)をカラーカメラで取得する。この画像は光の透過率を表しているため、コロニーの立体情報(形態学的影像勾配)が得られる。X-Y画像は、エリアセンサーのサイズ(素子数)によって解像度が変わるので、素子数の多いイメージセンサーの方が2D影像としての解像度は高い。カラー影像から変換されたグレースケール画像は、通常画像は濃さを表すZ軸として256諧調ある。1諧調の違いは目視では判別できないが、コンピュータは1諧調でも異なっていれば判別できて各ピクセルが濃くなっていく事が確認できるので、マイクロコロニー増殖を確認するうえで有用である。(図3参照)
【0017】
検査をスタートすると培養を継続し、一定の時間間隔で影像を取り込んで画像解析して生きている微生物による目視確認できないレベルでのマイクロコロニーを検出(図4参照)しながらコロニーを計数して自動的にグラフを生成して逐次表示していく。継続的に培養をモニターするということは従来法を自動化しているということであり、培養法自体は変更せずに迅速なリアルタイム検出を実現することができる。
【0018】
培養しながらマイクロコロニーを検出していくと、目視確認できるまでには2つ以上のコロニーが接触して結合し、大きなコロニーを形成していくことが多い。このため、検査結果に使用されるコロニー計数単位はCFU(Colony Forming Unit)とされているが、タイムラプス影像解析の場合は、タイムラプス計測で培養開始からミクロンレベルで培養をモニターしているので計数結果は実質的に試料中の微生物数に相当している。これを実現するため、タイムラプス影像解析は“コロニー分離計数アルゴリズム”を持っており、通常はこの機能をONにしてコロニーカウントを実施している。
【0019】
タイムラプス計測を実施すると自動的にコロニーカウントグラフが生成されて描かれる。ヒストグラムも表示することができる。グラフにはリニア(Linear)とログ(Logarithmic(対数))の表示スケールがある。肉眼で目視確認ができるようになる前に、微生物コロニーの成長を検出・カウントして自動的にグラフが作成される。(図5参照)
マイクロコロニー法を実施する解析として開発されたタイムラプス影像解析は、市販の全自動微生物検出装置(製造元:マイクロバイオ株式会社、商品名「MicroBio μ3D」)により実施可能である。
【0020】
取得したカラー2D影像をグレースケール画像に変換すると、濃度勾配の諧調をもった3D陰影データとなる(図6)。また、コロニーは1μm以下の1微生物が分裂して形成されたものなので、円形やディスク状コロニーの2D影像は、木の年輪や地層のように、時間経過の累積結果を反映した記録でもあり、光の透過度を表す3D影像では円錐状かそれに近い形状を呈する。微生物の種類によってその形状が異なることが細かくわかる。コロニーと食物残渣の3D影像を比較すると、食品残渣の3D影像は、微生物のものとは異なっており、円形(円錐状)ではなく不規則な形状をしている。
【0021】
このように、微生物を培地で培養し、培地を透過した光が微生物によるコロニーに当たって形成される影像を影像の濃度勾配に基づき立体形状で表示し、立体形状に基づきコロニーの微生物の種類を特定することができる。図6に示すように、微生物が種類ごとに特定の立体形状のコロニーを形成することから、コロニーによる影像をその濃度勾配に基づき立体形状で表示し、その立体形状に基づき微生物の種類を特定することができる。
【0022】
全自動微生物検出装置を用いたタイムラプス影像解析では、寒天培地の培養状況を数値化しているので、「回収率」だけではなく、「性能の良さ」も同時に把握できる。
寒天培地を評価するには、評価するための標準となる生菌数が、あらかじめ正確に把握された標準菌株の生菌試料を使用することが好ましい。
【0023】
(a)バイオボール(BIOBALL)を使用する。
バイオボールは、特定菌株の正確な菌数を分取して、それをフリーズドライにした水溶性のボールであり、決まった菌数が必要な培地性能試験に利用されている。菌種と菌数により多種類の製品が提供されているが、菌種には限りがある。
(b)フローサイトメータを使用する。
フローサイトメータは、細管を通る微生物の浮遊液や懸濁液にレーザーを照射し、蛍光や散乱光を測定することで微生物を正確に計数できる装置である。どの菌種でも、生菌を含む培養液の菌数がその場で把握できる。
【0024】
あらかじめ試料の生菌数が確認できないときは、評価試験対象の寒天培地の他に標準寒天培地(Standard Plate Count 寒天培地)を使用しての全自動微生物検出装置による評価試験と同時に、試料の生菌数を同装置で把握する。性能評価に要するサンプル数は、正規分布を得るためには32以上が必要とされている。全自動微生物検出装置の計測レンジは10~10までと広く、1万個程度まで正確に計数できるが、希釈程度は目視でも同時に確認可能なレベルに調整しておく。
【0025】
寒天培地の性能を把握するときは、コロニーが培地のどこにあっても、同じように培養されるべきである。言い換えれば、表面塗抹では培地表面だけの性能であり、むしろ混釈法が3次元方向から養分などが供給されるので、カビのような好気性菌を除いては、試料は混釈法で用意した方がよい。
【0026】
寒天培地の性能は、標準菌株の生菌試料を混釈した寒天培地を全自動微生物検出装置で培養し、計数したコロニー数の増加傾向に基づき評価する。培地を透過した光が微生物によるコロニーに当たって形成される影像を計数することによりコロニー数を計数する。このため、培地の表面だけでなく、内部のコロニーによる影像も計数することができ、培地の性能をより正確に評価することができる。コロニー数の増加傾向に基づく評価は、コロニーカウントグラフとヒストグラムを取得して、その形状から判断する。(図7参照)
【0027】
菌検出が開始され始めて検出が完了した時間帯に検出されたコロニーは、混釈された寒天培地内のどこかに存在していたものである。コロニーカウントグラフの “0”個からの立ち上がり時点が検出対象となる培地での増殖したコロニーが検出され出した時点で、カウントグラフがプラトー(平らになった部分)になった時点で全コロニーが検出されたことになる。全自動微生物検出装置は培地全体を観察しているので、ヒストグラムの釣鐘形状の開き(コロニーカウントグラフでは傾斜の角度になる)は、コロニーの所在による検出時の時間差によるもので、培養が良好の場合は図8に示すような釣鐘形状となる。形状が崩れた場合は、コロニーを形成する上で増殖が満足にサポートされなかったことになり、培地の性能が悪いことを意味している。
【0028】
性能の良い培地は次の図9のようなグラフ形状を示す。
培養されて逐次検出されてくるコロニーは動的にグラフの形状を作り出すので、寒天培地が微生物の増殖をよくサポートしている場合は、コロニーカウントグラフの形状は、一段の階段状となり、ヒストグラムの形状は、釣鐘形状の正規分布となる(サンプリングが30分に1回の場合は、頂点が鋭角となる)。
【0029】
微生物を培養しているときの状況をグラフで表示できるようになったということは、その状況を数値化して可視化できたことを意味している。グラフで培養の性能を評価するということは、単に24時間や48時間というような培養時間を決めて培養し、培養された結果としてカウントしたコロニー数により回収率を求めたり、コロニーの大きさを確認したりするという静的なものではなく、培養されて逐次検出されてくるコロニーが動的に作り出したグラフの形状を培地性能の確認に利用できるということを意味している。
標準試料として添加する菌数が少ない場合は、グラフの形状が完全に形成されないため、添加菌数は多い方が好ましい。
【0030】
性能が悪い寒天培地の例(図10)を次に示す。
図10の条件と結果は以下のとおりである。
標準菌株:E. coli (NBRC3972)
寒天培地:デソキシコレイト寒天培地(塩分濃度1%)
試料形態:1ml試料、混釈、
培養温度:35℃、24時間培養
検出結果:回収率は20%以下で、グラフの形状が悪く、性能が悪い。
【0031】
デソキシコレイト寒天培地の塩分濃度を1%まで上げてその培養性能をE.coliの標準菌株で確認した。このデソキシコレイト寒天培地は塩分濃度が1%以上になると、24時間培養後で回収率も20%以下になることが分かる。
寒天培地の性能が平板培養法での正確で迅速な検出を決定するので、培地はタイムラプス影像解析評価法で評価され、添付される試験成績書には、図11のようなデータが添付されている方が好ましい。
【0032】
全自動微生物検出装置による培地の性能評価方法は、微生物を培地で培養し、計数したコロニー数の増加傾向に基づき培地の性能を評価するので、評価する培地を選ばず、微生物の生育にとって適した培地かどうか直接的に培地を評価することができる。
計数したコロニー数は、コロニーカウントグラフおよびヒストグラムにより経時グラフ化して表示されるので、グラフから培地の性能を視覚的かつ直感的に把握することができる。
【0033】
タイムラプス影像解析に基づいた全自動微生物検出装置が実用化できたことにより、微生物の迅速リアルタイム検出を実現している。そしてそれと同時に、センサーとしての寒天培地の性能を、標準菌株の生菌を使用して正確に評価できるようにもなった。
このことは、特性試験(characterization)も正確に実施できるようになったということである。培養の基本条件となる温度、pH、塩分濃度や、組成となる糖分や添加物(additive)などのパラメータを多次元に変化させて培地特性を得ることができるようになり、温度条件も含め、特定生菌の培養に対する寒天培地組成を最適化(optimization)できるようになったのである。
培地の最適化ができるということは、生菌検出の確実性を高めるとともに、検出をさらに迅速化できるということでもある。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11